JPH07236962A - 金属複合線の製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 特に高い架線張力を要する高速鉄道用トロリ
線等に適した金属複合線を安定して、生産性良く、安価
に製造できる装置を提供する。 【構成】 被覆層となる金属をるつぼ１内で加熱溶融さ
せる手段、前記るつぼ１の下方に位置し前記るつぼ１と
直結され横方向から芯線17を貫通させる入口ガイド孔部
８を有した水冷鋳型３及び前記水冷鋳型３内で凝固した
金属複合線15を横方向に断続的に引張り移送させる手段
を設け、前記芯線17を貫通させる入口ガイド孔部８内面
の少なくとも出口側の所定長さ部分が出口に向けて先太
りのテーパー状に形成されている。 【効果】 芯線17を貫通させる入口ガイド孔部８内面の
少なくとも出口側の所定長さ部分を出口に向けて先太り
のテーパー状に形成したので、入口ガイド孔部８内で溶
湯２が凝固したりして、芯線17が入口ガイド孔部８を通
過できなくなるようなことがない。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、金属芯線の周囲に前記
芯線よりも融点の低い金属を被覆した金属複合線の製造
装置に関し、特に高張力で架線する高速鉄道用トロリ線
又は高強度高導電性電線等の製造に適した金属複合線の
製造装置である。

【０００２】

【従来の技術】従来、鉄道用トロリ線、配電線等には、
導電性に優れた銅線又は銅合金線が使用されていた。し
かしながら高速鉄道用トロリ線等には、更に強度の高い
導電材料が要求され、鋼線の周りに銅を被覆した銅被覆
鋼線が開発された。この銅被覆鋼線の製造には、鋼線の
周囲に銅溶湯を付着凝固させて複合鋳塊となし、これを
溝圧延する方法（ディップ法、特開平3-268832）が提案
された。しかし、前記方法を実施する装置は構造が複雑
であり、又原料の溶解炉を別に必要とした。更に鋳型を
使用せずに鋳造を行う為複合鋳塊の外径寸法及び鋼線位
置が変動した。鋼線位置の変動は、銅又は銅合金層と鋼
線との変形抵抗の差が大きい為複合鋳塊をダイスで引抜
加工しても改善されなかった。又原料を別の炉で溶解し
移送していた為作業が繁雑で人手を要し、品質的にも問
題があった。

【０００３】このようなことから、図４に示すような横
型の連続鋳造装置が開発されている（特願平5-317324
号）。この装置は被覆層となる金属を加熱溶融するるつ
ぼ１、前記るつぼ１の下方に位置し前記るつぼ１と直結
され横方向から芯線17を貫通させる入口ガイド孔部８を
有した水冷鋳型３及び前記水冷鋳型３内で凝固した金属
複合鋳塊15を横方向に断続的に引張り移送させるピンチ
ロール16から構成されている。そして、この装置によれ
ば、高品質の金属複合線を人手を要さずに、低コストで
製造することができる。尚、図４で、２は溶湯、４は原
料線材、９、10は、水冷鋳型３のそれぞれ溶湯貯留部及
び鋳造部、18は凝固層である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この装置では、入口ガ
イド孔部８内面と芯線17のクリアランスが大きい場合
は、クリアランスに溶湯２が差し込み、この溶湯２がガ
イドの入口側で冷却されて凝固して鋼線が供給できなく
なり、又前記クリアランスが小さい場合は、芯線17の曲
がりや芯線17と入口ガイド孔部８部材との熱膨張差等に
より、芯線17が入口ガイド孔部８を通過できなくなる等
のトラブルが発生することがあった。

【０００５】

【課題を解決する為の手段】本発明は、このような状況
に鑑み鋭意研究を行いなされたもので、その目的とする
ところは、高品質の金属複合線を安定して、生産性良
く、安価に製造し得る金属複合線の製造装置を提供する
ことにある。即ち、被覆層となる金属をるつぼ内で加熱
溶融させる手段、前記るつぼの下方に位置し前記るつぼ
と直結され横方向から芯線を貫通させる入口ガイド孔部
を有した水冷鋳型および前記水冷鋳型内で凝固した金属
複合線を横方向に断続的に引張り移送させる手段を設
け、前記芯線を貫通させる入口ガイド孔部内面の少なく
とも出口側の所定長さ部分が出口に向けて先太りのテー
パー状に形成されていることを特徴とするものである。

【０００６】本発明は、横型連続鋳造装置の芯線を貫通
させる入口ガイド孔部内面の少なくとも出口側の所定長
さを出口に向けて先太りのテーパー状に形成して、入口
ガイド孔部内で溶湯が凝固したりして、芯線が入口ガイ
ド孔部内に固着するのを防止したものである。水冷鋳型
には通常黒鉛を用いるので、磨耗の激しい入口ガイド孔
部に耐磨耗性に優れたスリーブを装着することにより、
水冷鋳型全体の寿命を改善し生産性を向上できる。スリ
ーブの材料には、高温において芯線及び溶湯と反応しな
い材料が好ましく、特に窒化ボロン等のセラミックスが
好適で、通常多用される材料である。

【０００７】前記スリーブの態様を図を参照して具体的
に説明する。図２イに示すスリーブ19は、その内面が入
口から出口にかけて一様に拡径するテーパー状に形成さ
れたものである。図２ロに示すものは、スリーブ19の内
面が入口から途中まで同じ内径で形成され、途中から出
口に向けて一様に拡径されてテーパー状に形成されたも
のである。スリーブの寿命を考慮すると、途中から拡径
した図２ロに示したものの方が、溶湯漏れが起き難く好
ましい。途中からテーパーを付ける場合のテーパー部分
の長さは、入口ガイド孔部全長の1/3 〜2/3 が適当であ
る。前記入口ガイド孔部（スリーブ）内面のテーパー角
度θは 0.1度未満ではその効果が十分でなく、１度を超
えると金属複合線断面内における芯線位置の寸法精度が
低下する。従って前記テーパー角度θは 0.1〜１度にす
るのが好ましい。

【０００８】本発明装置は、被覆層となる金属をるつぼ
内で加熱溶融させた後、前記るつぼの下方に位置し前記
るつぼと直結され横方向から芯線を貫通させる入口ガイ
ド部を有した水冷鋳型内で凝固させることにより金属複
合線を得、これを横方向に断続的に引張り移送させて製
出させるものである。このように、本発明装置では、芯
線を横方向から直線的に供給するので、芯線の前処理
（ブラシング、整直）、及び得られる金属複合線の引出
し・巻取り等の工程が極めて容易に行え、又金属複合線
断面における芯線位置も精度よく制御できる。又被覆金
属と芯線との間に高い接合強度が得られる。ここが、芯
線を下方より供給する従来技術（ディップ法）に比べ
て、特に優位な点である。

【０００９】本発明装置において、鋳型はるつぼの下方
に位置し、るつぼと鋳型とは直結されている為、溶湯は
撹拌されることなく重力により定常的に移送される。従
って、得られる金属複合線は品質的に良好なものとな
る。

【００１０】本発明装置により製造される金属複合線の
芯線には、鋼、鉄、銅、アルミ、チタン、ニッケル等の
金属線又はこれらの合金線等が用いられる。又被覆金属
には、銅、アルミ、銀、錫、鉛等の金属又はこれらの合
金で、複合する芯線よりも融点の低い金属材料が用いら
れるが、これらに限るものではなく、用途により任意の
金属が適用できる。芯線の形状は、丸線、角線、異型線
等任意である。金属複合線の形状も同様に任意である。

【００１１】

【作用】本発明装置は、被覆層となる金属をるつぼ１内
で加熱溶融させる手段、前記るつぼ１の下方に位置し前
記るつぼ１と直結され横方向から芯線17を貫通させる入
口ガイド孔部８を有した水冷鋳型３および前記水冷鋳型
３内で凝固した金属複合線15を横方向に断続的に引張り
移送させる手段を設けたものなので、安価に製造するこ
とができる。又前記入口ガイド孔部８内面の少なくとも
出口側の所定長さが出口に向けて先太りのテーパー状に
形成されているので、入口ガイド孔部８内面と芯線17の
クリアランスが大きい場合に、このクリアランスに溶湯
２が差し込み入口側で冷却され凝固しても、芯線17の走
行を妨げる程の抵抗が生じない。又前記入口ガイド孔部
８内の凝固層18はクリアランス内に差し込む溶湯２に触
れて再溶解し、鋳型３内で凝固して健全な被覆層を形成
する。従って品質的に何等問題にならない。又入口ガイ
ド孔部８内面に先太りのテーパーが形成されているの
で、芯線17の曲がりや芯線17とガイド部材の熱膨張差等
による抵抗も小さくなり、芯線17が通過できなくなるよ
うなことがない。

【００１２】

【実施例】以下に本発明を実施例により詳細に説明す
る。 実施例１ 図１は本発明装置の第１の実施例を示す縦断面図であ
る。図で１はるつぼ、８は芯線17を貫通させる入口ガイ
ド孔部、９は溶湯貯留部、10は鋳造部で、これらの溶湯
と接する側は黒鉛で一体に構成されている。るつぼ１の
上方に、原料線材４をるつぼ１内に移送するピンチロー
ル５が、又溶湯２直上に溶湯レベルを検知するセンサ６
がそれぞれ配置されている。センサ６は前記ピンチロー
ル５に連動されていて、溶湯レベルがほぼ一定に保たれ
る。水冷鋳型３は、芯線17を貫通させる入口ガイド孔部
８と、るつぼ１の溶湯２を導入する溶湯貯留部９と、溶
湯２を凝固させる鋳造部10とから構成されている。そし
て入口ガイド孔部８には窒化ボロン製のスリーブ19が装
着されている。このスリーブ19の内面の途中から出口に
向けて拡径するテーパーが形成されている。るつぼ１の
外周に、高周波誘導加熱コイル７が配置されている。

【００１３】このスリーブ19を装着した入口ガイド孔部
８と鋳造部10の外周にはそれぞれ水冷ジャケット11,12
が配置されている。前記スリーブ19の手前にはナイロン
ブラシ13と整直機14とが配置されており、鋳造部10の後
方には金属複合線15を引出すピンチロール16が設置され
ている。金属複合線15の芯となる芯線17はナイロンブラ
シ13にて表面を浄化されたのち、整直機14にて整直され
スリーブ19内に供給される。溶湯貯留部９と鋳造部10を
通る間に凝固層18が成長して金属複合線15が形成され
る。この金属複合線15はピンチロール16により水冷鋳型
３から断続的に引出される。

【００１４】前記装置を用いて銅被覆鋼線（外径16mm
φ, 鋼線径 9mmφ）を製造した。銅被覆鋼線15は、ピン
チロール16により 0.1秒移送、 0.5秒停止、平均速度10
00mm／分の条件で引出した。溶湯２の凝固位置は、鋳造
部10の壁部温度を測定し、水冷ジャケット12の水量を増
減して制御した。鋼線17は表面をナイロンブラシ13で浄
化し整直機14で整直したのち、スリーブ19に導入した。
前記スリーブ19の後端側は水冷ジャケット11により冷却
して鋼線17の温度上昇を抑えると同時に、鋼線17の温度
上昇部分に窒素ガスを吹きつけて酸化防止を計った。原
料は直径８mmφの銅線４を断続的に自動供給した。るつ
ぼ１内の溶湯レベルは、ピンチロール５を溶湯レベルセ
ンサ６と連動させて一定に制御した。スリーブには、図
２イ、ロに示した２種類を使用した。図２ロのテーパー
部の長さはスリーブ全長の2/3 にした。

【００１５】比較例１ 内面にテーパーをつけていないスリーブ19を用いた他
は、実施例１と同じ方法及び条件により銅被覆鋼線を製
造した。

【００１６】得られた銅被覆鋼線について、鋼線の位置
ずれを調べた。鋼線の位置ずれは、銅被覆鋼線の中心点
と鋼線の中心点との距離で表した。又１スリーブ当たり
の鋳造量を調べた。結果は表１に示した。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１より明らかなように、本発明例品（N
o.1〜9)は、いずれも鋼線の位置ずれが小さく、１スリ
ーブ当たりの鋳造量も３〜５トンと多かった。尚、No.8
はテーパー角度が大きかった為、芯線の位置ずれが若干
増加した。又鋳造量も図２イの中では少なかった。これ
は、テーパー角度が大きい分、鋼芯の入側が磨耗し易い
こと、溶湯が流出し易いことに起因している。又No.9は
テーパー角度が小さい為、鋼芯がやや通り難くなって、
鋳造量が幾分減少した。スリーブのテーパー形状につい
ては、図２ロに示したものの方が、図２イに示したもの
より鋼芯の位置ずれが少なく、又鋳造量が若干多かっ
た。これは図２ロに示した構造のものの方が湯漏れし難
い為である。他方、比較例品のNo10はスリーブ内で溶湯
が凝固したりすることが多く、１スリーブ当たりの鋳造
量が大幅に減少し、生産性が低かった。

【００１９】実施例２ 図３に示した横型連続鋳造装置を用いて、実施例１に示
したのと同じ条件により銅被覆鋼線（外径16mmφ, 鋼線
径 9mmφ）を製造した。この装置は、るつぼ１に水冷鋳
型３をネジ込んで構成し、損耗し易い水冷鋳型３の交換
を容易にしたものである。るつぼ１と水冷鋳型３間の溶
湯漏れはパッキン20により防止した。水冷鋳型３の入口
ガイド孔部８には図２イ又はロに示したスリーブ19を装
着した。得られた銅被覆鋼線について、実施例１と同じ
ようにして鋼線の位置ずれ及び１スリーブ当たりの鋳造
量を調査した。鋼線の位置ずれ及び鋳造量とも実施例１
と同様に優れた値を示した。

【００２０】以上、入口ガイド孔部にスリーブを装着し
た場合について説明したが、スリーブを用いず、水冷鋳
型の入口ガイド孔部内面に直接テーパーを形成した場合
にも同様の効果が得られる。尚、本発明例品はいずれ
も、真円度、銅層と鋼層の密着性等の特性が良好で、ト
ロリー線加工後も強度、品質等に優れた特性を示した。

【００２１】

【効果】以上述べたように、本発明装置によれば、高品
質の金属複合線を安定して、生産性良く、安価に製造す
ることができ、工業上顕著な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の金属複合線の製造装置の実施例を示す
縦断面図である。

【図２】本発明の金属複合線の製造装置を構成するスリ
ーブの実施例を示す縦断面図である。

【図３】本発明の金属複合線の製造装置の他の実施例を
示す縦断面図である。

【図４】従来の横型連続鋳造装置の縦断面図である。

【符号の説明】

１ るつぼ ２ 溶湯 ３ 水冷鋳型 ４ 原料線材 ５,16 ピンチロール ６ 溶湯レベルセンサ ７ 高周波誘導加熱コイル ８ 入口ガイド孔部 ９ 溶湯貯留部 10 鋳造部 11,12 水冷ジャケット 13 ナイロンブラシ 14 整直機 15 金属複合線 17 芯線 18 凝固層 19 スリーブ 20 パッキン

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被覆層となる金属をるつぼ内で加熱溶融
   させる手段、前記るつぼの下方に位置し前記るつぼと直
   結され横方向から芯線を貫通させる入口ガイド孔部を有
   した水冷鋳型および前記水冷鋳型内で凝固した金属複合
   線を横方向に断続的に引張り移送させる手段を設け、前
   記芯線を貫通させる入口ガイド孔部内面の少なくとも出
   口側の所定長さ部分が出口に向けて先太りのテーパー状
   に形成されていることを特徴とする金属複合線の製造装
   置。
2. 【請求項２】 入口ガイド孔部内面のテーパー角度θが
   0.1〜１度であることを特徴とする請求項１記載の金属
   複合線の製造装置。