JPH07236897A - 外来微生物生残法およびそれを用いた環境浄化法 - Google Patents

外来微生物生残法およびそれを用いた環境浄化法

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JPH07236897A
JPH07236897A JP6323010A JP32301094A JPH07236897A JP H07236897 A JPH07236897 A JP H07236897A JP 6323010 A JP6323010 A JP 6323010A JP 32301094 A JP32301094 A JP 32301094A JP H07236897 A JPH07236897 A JP H07236897A
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ecosystem
microorganisms
microorganism
equilibrium
soil
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JP6323010A
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Masanori Sakuranaga
昌徳 桜永
Kazusane Tanaka
和實 田中
Tsunehiro Sugano
恒裕 菅野
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Canon Inc
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  • Processing Of Solid Wastes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 複数種の微生物種が共存する排水や土壌等の
生態系において、その系内の微生物生態系の平衡を攪乱
させる手段を講じるとともに、その系内に存在しない外
来微生物を導入し、環境浄化等を行う。 【効果】 生態系を一時的に非平衡状態にさせる手段を
講じることにより、外来微生物を含めた微生物の新たな
平衡状態が構築できるので、導入後に追加補給等を実施
することなく外来微生物を定着させ生残させることが可
能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多様な微生物が共存す
る排水や土壌等の生態系に外来微生物を導入し生残させ
る方法に関し、特に、外来微生物の補充や栄養源の補給
等をすることなく外来微生物を生残させる方法および該
方法により水処理あるいは土壌浄化等の環境浄化を効率
的に実施する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】排水処理の分野では活性汚泥を用いて分
解対象物を微生物の活性を利用して分解することが広範
に行われている。また、土壌汚染や地下水汚染の修復に
おいても、その汚染した場所に汚染物を分解する微生物
を導入して浄化することが試みられている。
【0003】しかしながら、微生物はそれが置かれた環
境に対して概して受動的であり、かつ敏感に反応する場
合が多く、導入された環境にただちに適応することがで
きずに、その分解活性を失ったり死滅することがある。
【0004】また、複数種の微生物種からなる生態系に
おいては、もとより存在する微生物種の間で生態系のニ
ッチが既に占有され、新たに導入される外来微生物の生
残、増殖を容易に許さないことが一般的に観察されてい
る。
【0005】これらの場合、排水あるいは土壌中に導入
した外来微生物が新たな環境に適応せず、固体数が急激
に減少して目的物の分解が困難となったり、また当初は
新たな環境に適応したとしても、その後様々な環境因子
の変化によって固体数が減少し分解浄化の機能低下、さ
らには中断を生じることが見られる。例えば、排水中に
分解微生物に有害な物質が混入すれば、活性汚泥の活性
が低下し目的物の分解ができなくなる。
【0006】また、該活性汚泥の汚染物質分解能を回復
させるために分解微生物を新たに導入しても、既存の微
生物種により形成されている生態学的ニッチに割り込ん
で導入微生物が生残、増殖を図ることは困難である。
【0007】さらに、対象とする微生物生態系が、土壌
や地下水系を含む土壌水系である場合には、活性汚泥な
どの系よりも微生物と環境成分との結合が強固であり、
通常の方法で単純に外来菌を導入した場合、その土壌生
態系内で外来菌が安定に増殖を続けて、汚染物分解に必
要な菌濃度を保つことは一層困難である。
【0008】そこで、このような分解微生物の減少に対
しては、さらに過剰の分解微生物を浄化槽あるいは土壌
等の環境中に追加導入して分解微生物量を増加させるこ
とが行われる。さらに、導入する微生物の成育が良好と
なる様に、導入微生物に対して栄養源となる物質や酸素
ガスを含む成分を生態系に補給して導入微生物量の増加
を促進する方法が採られている。
【0009】このように、外来微生物を浄化槽あるいは
土壌等の環境中に導入すると、導入した微生物の数量が
急速に減少して分解浄化の機能を果たせなくなる問題点
があり、一方、この問題点を解決するために行われる外
来微生物の追加や栄養源、酸素等の補給は手間がかか
り、また外来微生物や栄養源が高価になればコスト上昇
につながる。また、外来微生物の減少が常に起こり得る
ことから、外来微生物や栄養源の補給のタイミングを把
握するために、外来微生物の数量やあるいは該微生物の
分解能を頻繁に計測し定量的な判断をしなければなら
ず、利用上極めて煩雑である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的
は、上記従来技術の有する問題点に鑑み、複数種の微生
物種が共存し平衡状態を保っている生態系に外来微生物
を導入する際に、該生態系に特定の処理を施すことによ
り、外来微生物の生残、増殖を促進させ、その後の補給
等を不要とする外来微生物生残法を提供することにあ
る。
【0011】また、本発明の他の目的は、かかる外来微
生物生残法に基づき、環境浄化のための物質変換能を有
する外来微生物を生態系に施用することにより、環境に
与える負荷を少なく、かつ効率的に環境を浄化する方法
を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明は、複数種の微生物種が共存する生態系に対して、
該生態系の平衡に攪乱を生じさせて、該生態系を一時的
に非平衡状態にさせる手段を講じるとともに、その系内
に予め存在しない外来微生物を導入することを特徴とす
る外来微生物生残法である。
【0013】外来微生物を導入する際に、平衡状態にあ
る生態系を一時的に非平衡状態に移行させることによ
り、各種微生物よりなる生態系のニッチの占有状態にゆ
らぎが生ずる。その非平衡状態にある生態系に外来微生
物を導入することにより、外来微生物を含めた各種微生
物の間で新たな平衡状態に移行する過程で、導入された
外来微生物は生態系の中で新たにニッチの獲得が図ら
れ、導入後に外来微生物や栄養物質等の追加補給等を実
施することなく外来微生物を定着させ生残させることが
可能となる。
【0014】また、本発明は、生態系を非平衡状態にさ
せる手段が、微生物固体数を低減させるものである上記
の外来微生物生残法である。さらに本発明は、各種微生
物個体数を低減させる手段として、該生態系の限定的な
殺菌、および該微生物を捕食する生態的に上位の生物種
の該生態系内への導入、である上記の外来微生物生残法
である。
【0015】また、本発明は、生態系を非平衡状態にさ
せる手段が、各種微生物個体数を増加させるものである
上記の外来微生物生残法である。各種微生物個体数を増
加させる手段としては、該微生物の増殖促進物質等の添
加を講ずることができる。
【0016】上記の手段を用いることにより生態系を非
平衡状態にさせることにより、効率的に外来微生物の生
残を達成することができる。
【0017】さらに、本発明は、上記の外来微生物生残
法に基づき、環境浄化のための物質変換能を有する外来
微生物を生態系に施用することにより環境を浄化するこ
とを特徴とする外来微生物による環境浄化法である。該
生残法により、汚染物質等の分解に際して、外来微生物
の物質変換能を効率よく利用することができるので、汚
染された環境を迅速にかつ低労力で浄化することができ
る。
【0018】活性汚泥や土壌環境内には、数多くの種類
の微生物が共存して生態系を構成していることは広く知
られている。このような生態系での微生物種の分布は、
種々の因子によって支配されていると予測され、その因
子として微生物種間の競合や共生の作用を挙げることが
できる。
【0019】換言すれば、ある環境中での特定の微生物
種の個体数は、その環境の物理化学的条件だけでなく、
他の微生物種の分布に大きく依存している。本発明者ら
は、このような生態系の相互作用に着目することによ
り、従来行われている外来微生物の追加補給あるいは栄
養源の添加とはまったく異なった原理に基づく方法によ
り、外来微生物を生残維持する方法を見出し、本発明に
至った。
【0020】すなわち、微生物の生態系は前述した相互
作用のもとで、一定の物理化学的条件下、各種微生物の
相対的な個体数比、または絶対的な個体数に関して常に
ほぼ一定の分布を保っているか、あるいは概周期的に変
動を繰り返したりしながらも安定しており、このような
生態系はいわば平衡状態にあると見ることができる。
【0021】平衡状態にある生態系に対して、一時的に
平衡状態を攪乱する摂動因子を作用させると微生物間の
相互作用のバランスが一時的に崩れ、各種微生物よりな
る生態系のニッチの占有状態にゆらぎが生じて非平衡状
態に移行し、新たな平衡状態への移行圧力がかかる。
【0022】この過程で、生態系に外来微生物を導入し
てみると、驚くべきことに、生態系の中に外来微生物が
受け入れられる余地が生じて外来微生物がニッチを獲得
し、それを取込んだ形で新たな平衡状態が構築されるこ
とを発見し本発明に至った。
【0023】以下、本発明を詳述する。
【0024】本発明において、複数種の微生物種が共存
する生態系とは、各種の微生物の相対的な個体数比、ま
たは絶対的な個体数が平衡状態にある天然または人工の
環境をいい、ここに微生物とは、酵母、かび、きのこ等
の真菌、細菌、放線菌、単細胞藻類、ウイルス、原生動
物、さらには動物又は植物の分化していない細胞及び組
織培養物を包含するものである。
【0025】例えば、排水処理に使用される活性汚泥に
は多種の微生物が含まれ、経時的に変動したとしてもあ
る平衡状態を保っている。このような系に外来微生物を
導入する意義は、浄化槽としてある特定の能力を備えた
微生物を新たに導入し生存させることにより、その微生
物に排水中の特定物質を分解浄化させることができるこ
とである。
【0026】特に、排水中に難分解性の有機化合物が混
入している時に、その浄化槽中にその化合物を分解する
特定のバクテリアを生存させたり、あるいは特定の物質
を吸着する微生物を生存させたりするのは有効である。
【0027】また、土壌環境は通常1グラム土壌中に約
1万種総数1億個体の微生物が共存しているといわれる
微生物生態系であるが、このような系に外来微生物を導
入する意義は、新たに特定の微生物を導入し生存させる
ことにより土壌内で新たな物質変換をさせることができ
ることである。特に、土壌内の汚染物質を特定の外来微
生物によって浄化させる場合に極めて有益である。
【0028】本発明において、生態系を一時的に非平衡
状態にさせる手段とは、該生態系を構成する各種微生物
の相対的な個体数比を変化させるか、または絶対的な個
体数を増加または減少させる、すなわち該生態系の平衡
に攪乱を生じさせることを云う。平衡状態にある生態系
においては、該生態系を構成する各種微生物はそれぞれ
固有の生態学的ニッチを獲得、占有している。
【0029】本発明において生態学的ニッチとは、生態
系を構成する上位または下位の階層に属する微生物種と
の間の捕食−被捕食、または同一階層に属する微生物と
の間での餌をめぐっての競合、などの微生物種間で形成
される競合、共生関係の中で確保されている、ある微生
物個体または微生物種の生存の形態を云う。さらには、
微生物は他の微生物との相互作用に加えて、それを取り
巻く物理化学的な環境の要因に直接的に影響を受ける。
【0030】物理化学的な環境因子は、微生物の生理活
性に鋭敏な反応を引き起こすほかに、例えば、土壌塊の
わずかな間隙に特定の微生物種の生残にとって有利な生
息の場を与えたりもする。このように、本発明において
生態学的ニッチとは、生物的要因、物理化学的要因を問
わず、生態系の環境中での微生物個体または微生物種の
生存の形態を云う。
【0031】生態系を構成する各種微生物の相対的な個
体数比を変化させるか、または絶対的な個体数を増加ま
たは減少させる手段を講ずることによって、系は非平衡
状態に移行し、各種微生物はその占有していた生態学的
ニッチを一時的に失い、他の微生物種が新たにその生態
学的ニッチを獲得する余地が生ずる。
【0032】この時に、該生態系に外来微生物を導入す
ると、非占有状態となったニッチをめぐって、該生態系
にもとより存在していた土着の微生物に加えて、外来微
生物との間で競合が生じる。しかしながら、一旦ニッチ
を失った土着微生物は新たに該生態系の中でニッチを獲
得するに際して、外来微生物に対する優位性を多かれ少
なかれ失う。
【0033】この結果、生態系が平衡状態にあるときに
導入したときには、既にニッチを獲得している土着微生
物に排除されて生残を果たすことができなかった外来微
生物が、該生態系の物理化学的環境にたいする適応度に
応じて土着微生物とニッチの獲得をめぐって拮抗し、生
残を果たす可能性が増大するに至るのである。
【0034】本発明において、各種微生物の相対的な個
体数比、または絶対的な個体数を変化させて、生態系を
非平衡状態にさせる手段の該当する技術分野としては、
物理学的、物理化学的、化学的、生物化学的、生物学的
手段であるとを問わない。また、生物的、非生物的手段
であるとを問わない。
【0035】すなわち、物理学的、物理化学的手段とし
ては、電場、磁場等の印加;赤外、可視、紫外光等の光
線の照射;X線、α線、γ線などの放射線の照射;極低
周波から超高周波に至る音波や機械的振動の印加;加
熱、冷却、加湿、乾熱などの温度、温度変化の印加;力
学的な攪拌による攪乱;さらには、系の一部の物理的な
マスの引き抜き、削除;などが該当する。
【0036】化学的、生物化学的手段としては、微生物
の生理活性に変化を及ぼしたり水系や土壌団粒の性状に
影響を及ぼす金属塩化合物;糖類、イーストエキストラ
クト、ペプトンなどの蛋白質加水分解物、ヴィタミンな
どの栄養物質;蛋白質変性剤、酸化剤、アルキル化剤、
蛋白質分解酵素、脂質分解酵素、界面活性剤、有機溶剤
など微生物に対して抑制または殺菌作用を有する物質;
などの系への添加が該当する。
【0037】さらに生物的手段としては、細菌を捕食す
る原生動物などを系に添加することにより生態学的平衡
を攪乱することができる。
【0038】以上に列挙したように、本発明において
は、各種微生物の相対的な個体数比、または絶対的な個
体数を変化させて、生態系を非平衡状態にさせるもので
あるならばいかなる手段でも用いうる。しかしながら、
これらの手段は生態系に対して施用されるわけであるか
ら、該生態系にもとより存在する土着微生物および該生
態系に導入される外来微生物双方に影響を及ぼす。
【0039】土着微生物に対して抑制作用を現す手段
は、外来微生物に対しても抑制作用を現しえるし、逆
に、外来微生物に対して増殖作用を現す手段は、土着微
生物に対しても増殖作用を現しうる。しかし、このこと
は本発明の利点を否定するものではない。
【0040】本発明においては、生態学的に平衡にある
系に対して、該生態系を一時的に非平衡状態にさせる手
段を講ずることによって、系のニッチの占有状態を一時
的に解消し、土着微生物の導入外来微生物に対する相対
的な優位性を抑制する点に新規性がある。その際に用い
る手段として、環境に対する負荷が少なく、コストの低
い手段を選ぶことができることが本発明の長所である。
【0041】本発明において、生態系を非平衡状態にさ
せる手段としては、系を構成する各種微生物の個体の総
数を低減、もしくは増加させることが容易な達成手段で
ある。自然の生態系は膨大な微生物種から構成されてい
るので、各種ごとに個体数を増減させて系全体の微生物
種の個体数比を制御することは困難である。
【0042】そこで、該生態系を構成する各種微生物に
対して、各々の個体数を増加または減少させる手段が容
易である。また、ある手段に対する各種微生物の反応
が、個体数を増加させる種と減少させる種、さらには反
応を示さない種が共存するものであってもよい。
【0043】この場合には、系を構成する微生物種の絶
対的な個体数の変化は増加、減少または不変の場合が想
定されるが、各種微生物の相対的な個体数は変化するわ
けであり、系の平衡は攪乱される。
【0044】本発明の趣旨からすれば、ある手段が土着
の微生物種に与える効果と、導入する外来微生物種に与
える効果は独立であり、各々の効果は同様の傾向であっ
ても、反対の傾向であってもよいことは明らかである。
【0045】ある手段が仮に外来微生物にとってその個
体数を減じる傾向のあるものであっても、土着の微生物
生態系に対して何らかの摂動を与えるものであるなら
ば、外来微生物に対して生態学的ニッチを提供しうるも
のであり、生残法として用いることができる。
【0046】さらに、本発明において、生態系の微生物
数を増加または低減するとは、その系の全体的分布にお
いて、または局所的に増加または低減すること等をい
う。また、低減には、完全に撲滅させる程度から極限定
的に僅かに減らす程度までを包含する。
【0047】ここで、対象とする生態系の空間的範囲の
画定は、例えば土壌等においては必ずしも明確ではない
が、その土壌が汚染させていると考えられ領域を対象と
する生態系の範囲とし、また浄化槽においては、排水の
処理を実際に行う処理担体を生態系の範囲とする。
【0048】生態系の微生物を低減させる場合に、低減
する微生物の程度は、生態系中の微生物濃度、導入する
外来微生物の濃度、定着させる外来微生物の目的濃度、
外来微生物の定着難易度(培養環境)等により、適宜、
判断されるものである。微生物数を低減しその結果とし
て、生態系の平衡状態が攪乱される程度であれば、限定
的な低減であってもよい。
【0049】生態系の微生物分布にはある程度の許容性
があり、その極一部が死滅しても、全体として新たな平
衡状態に移行することなくその変化を吸収してしまう場
合があるが、本発明においてはその状態を越えて微生物
数を低減することを意味する。
【0050】例えば、土壌を例にとれば画定された生態
系内の微生物総数を5〜30%程度にまで低減すると、
外来微生物が定着できる程度に平衡状態を壊すことがで
きる。また、特定の微生物の数のみを低減する手段を用
いることにより、外来微生物と競合しその生存を阻害す
ると考えられる特定微生物種のみを殺菌してもよい。
【0051】また、微生物数の低減は画定生態系内全領
域において実施する必要はなく、局所的に低減してもよ
い。局所的とは、例えば全領域の5〜30%程度の領域
をいう。この領域における微生物数の低減程度は上記し
た程度、またはその領域の微生物をほぼ死滅させる程度
がよい。
【0052】実用的には全ての微生物を死滅させるので
はなく、上述のような限定的殺菌がよい。限定的殺菌の
目安としては例えば、対象生態系の一般生菌数を基準に
して、殺菌の程度を把握してもよい。一般生菌数でいえ
ば、限定的殺菌は例えば当初の画定生態系の5〜30%
程度まで低減するとよい。
【0053】浄化槽や土壌にみられる生態系は、多数の
微生物種の分担により分解・浄化を行っているものであ
り、また、多数の微生物の共存により各微生物が必要と
する栄養素の物質循環を行っている。従って、全体的な
滅菌を生態系に実施することは、この系の分解・浄化能
力を不完全にしたり、各種の微生物密度を安定に維持す
ることが不可能になるので不都合である。
【0054】限定的殺菌方法には様々な方法を用いるこ
とができる。簡便な方法として、化学的薬剤を加える方
法が挙げられる。そのような薬剤としては、ホルマリ
ン、尿素、石炭酸などの蛋白質変性剤;過酸化水素、ハ
ロゲンなどの酸化剤;エチレンイミン、エチレンオキサ
イド、ナイトロゲンマスタード、ベータプロピオラクト
ンなどのアルキル化剤;トリプシン、プロナーゼ、リパ
ーゼ、パパイン等の分解酵素;アセトン、メチルアルコ
ール、エチルアルコール等の有機溶剤;デゾキシコール
酸、ラウリル硫酸塩、NP40、Tween−80等の
界面活性剤;ペニシリン、カナマイシン、ストレプトマ
イシン等の抗生物質;等を挙げることができる。
【0055】使用できる薬剤はここに挙げたものに限定
されるのではなく、殺菌効果を持つものであれば利用で
き、それぞれの生態系に適したもの、すなわち殺菌対象
とする微生物種の耐性等を考慮して適当なものを選定す
ればよい。これらを用いて限定的に殺菌するには、対象
となる生態系例えば活性汚泥や土壌の一部に上記薬剤を
散布・拡散することでよい。また、薬剤濃度を希薄にし
て散布・拡散することでもよい。
【0056】また、物理化学的な処理を生態系に加える
ことも簡便である。例えば、火炎・高熱空気に曝す乾熱
処理;煮沸や蒸気による湿熱処理が容易である。その他
にも、凍結融解処理、pH変化、塩類濃度変化、ろ過等
の手段を採ることができる。
【0057】さらに、物理的手段を加えることも有効で
ある。例えば、音波、高圧、表面張力変化を与える機械
的処理;可視光線や紫外線等の照射処理;X線、α線、
γ線などの放射線照射を挙げることができる。
【0058】これらを用いて限定的に殺菌するには、対
象となる生態系例えば活性汚泥や土壌の一部に上記処理
を施すことが達成される。また、上記処理での物理化学
的もしくは物理的入力強度あるいは量を小さくして加え
たり、加える時間を短時間にしても勿論構わない。これ
らは、技術常識に基づいて実施することができる。
【0059】さらに、生物学的な手段を用いて細菌類の
微生物個体数を低減する手段として、生態系において細
菌よりも上位の食物連鎖の階層に属する原生動物を用い
ることができる。原生動物は水系もしくは水分含量の高
い土壌において活動し、細菌類を餌として繁殖するの
で、原生動物を微生物生態系に投与すると、細菌類との
間で捕食−被捕食の関係が生じ、生態系の平衡に攪乱を
引き起こす。
【0060】微生物は特に土壌の系において、土壌団粒
等の土壌構造の中に住処を形成し、原生動物による捕食
を免れていることが知られている。したがって、原生動
物の投与によって導入した外来微生物を含めた微生物種
がすべて捕食されてしまうのではなく、生態系の平衡が
一時的に攪乱されて、さらにまた別の平衡状態に移行し
て行くだけである。
【0061】原生動物は、自然環境から採取して大量培
養することが可能であり、本発明における微生物の低減
の手段として好適に用いられる。
【0062】生態系の土着の微生物個体数を増加させる
ことによっても、系の平衡を攪乱することが可能であ
る。驚くべきことに、この場合でも生態学的ニッチの占
有状態に一時的な混乱が起こり、導入した外来微生物が
その隙に乗じてニッチを獲得し、何の手段も講じずに投
与した場合に比べて生残率を向上させることができるこ
とが判明した。
【0063】微生物の個体数を増加させる手段として
は、微生物の増殖に必要な栄養物質を添加するほかに、
微生物にとっての物理化学的生育環境の最適化などによ
っても達成される。
【0064】微生物の生育、増殖を促す栄養物質として
は、基本的な細胞体の構成成分である、炭素、窒素、リ
ンを含む化合物がまず挙げられる。たとえば、糖類、脂
肪族、芳香族等の炭化水素、アミノ酸、蛋白質およびそ
の加水分解物、無機リン酸塩化合物等が挙げられる。ヴ
ィタミンなどの補酵素も本発明における栄養物質に含ま
れる。さらに、カリウム、ナトリウム、カルシウムなど
の金属塩化合物も必須の栄養物質である。
【0065】また、土着の微生物が好気性微生物である
場合には、酵素もしくは酸素を放出しうる物質は該微生
物の増殖に必須であるので、本発明における栄養物質に
該当する。
【0066】微生物の増殖に関わる物理化学的環境因子
とは、温度、浸透圧、含水比、pH、酸化還元電位など
であり、微生物種は各々別個の至適な環境因子の条件を
示すが、条件を選ぶことにより系の微生物の総個体数を
より多くするように設定することが可能である。
【0067】また、生態系の微生物個体数の低減の場合
に見られる、平衡を攪乱する手段と微生物生態系全体の
維持の問題が、微生物個体数を増加させる場合にも生ず
る。すなわち、浄化槽や土壌にみられる生態系は、多数
の微生物種の分担により分解・浄化を行っているもので
あり、また、多数の微生物の共存により各微生物が必要
とする栄養素の物質環境を行っている。
【0068】したがって、系全体にわたって微生物個体
数が過剰に増殖すると、生態系そのものが破滅し、この
系の分解・浄化能力を利用したり、活性化することが不
可能になるので不都合である。
【0069】このような生態系の破滅を防ぎ、かつ系の
平衡を攪乱して外来微生物の生残をはかるためには、生
態系を限定的に殺菌するときと同様に、たとえば、対象
となる生態系例えば活性汚泥や土壌の一部に上記栄養物
質を散布・拡散したり、また、栄養物質濃度を希薄にし
て散布・拡散することでもよい。
【0070】また、上記処理での物理化学的もしくは物
理的入力強度あるいは量を小さくして加えたり、加える
時間を短時間にしても勿論同様に構わない。これらは、
技術常識に基づいて実施することができる。
【0071】次に、本発明において、外来微生物として
は、上述生態系における微生物と同様に、酵母、かび、
きのこ、細菌、放線菌、単細胞藻類、ウイルス、原生動
物、さらには動物又は植物の分化していない細胞及び組
織培養物を包含するが、実用性、作用効果の観点から、
細菌、放線菌等が好ましい。
【0072】例えば、有機化合物(例えば、石油系の炭
化水素等)の分解に利用されるPseudomonas
属の細菌の他に、各種有害物質の分解能を有することが
知られているMethylosinus,Methyl
omonas,Methylobactelium,A
lkaligenes,Mycobactelium,
Nitrosomonas,Xanthomonas,
Spirillum,Vibrio,Bacteriu
m,Acromobacter,Acinetobac
ter,Flavobacterium,Chromo
bacterium,Desulfotomaculu
m,Micrococcus,Sarcina,Bac
illus,Streptomyces,Nocard
ia,Corynebacterium,Pseudo
bacterium,Arthrobacter,Br
avibaterium,Saccharomyce
s,Lactobacillusの各属に属する微生物
等を用いることができる。
【0073】なお、導入する外来微生物としては、既に
単離されているもの、環境から目的に応じてスクリーニ
ングしたものが利用でき、複数の株の混合系でもよい。
さらに、スクリーニングにより分離したものの場合それ
が未同定のものでもよい。また、変異や融合および遺伝
子組換え等により、野生型と異なる微生物株としたもの
であってもよい。
【0074】外来微生物としては上述のものに限られる
ことはなく、導入しようとする浄化槽あるいは土壌等の
環境に元来生存していない微生物であればどのようなも
のを用いてもよい。さらに本発明における外来微生物と
しては、導入しようとする生態系に予め存在する土着の
微生物であって、環境浄化のための物質変換能を有する
ものも含まれる。汚染された生態系においては、しばし
ば該汚染物質を資化する微生物群が集積することが知ら
れている。該生態系においてその個体数が該微生物の能
力を発揮するに足らない場合には、該微生物を単離して
培養して増殖させ、改めて該生態系に導入することが行
われる。この場合においても、平衡状態にある生態系は
土着の微生物種であっても特定の微生物種の個体数の増
加を抑制する性質を備えているので、本発明における導
入微生物の生残方法を有効に適用することができる。い
ずれにせよ、上記のどの微生物であっても、当該生態系
を一時的に非平衡状態にさせる手段を講じる際に導入さ
れたときに定着し、新たな平衡状態を構築できる繁殖力
を有するものがよい。
【0075】導入する外来微生物の数は、該微生物に期
待する物質変換能、分解目的物質の濃度等により適宜、
判断すればよい。このため、実際に導入する前に、試験
的または実験的にモデル系で導入テストを行っておき、
必要な数量を算定しておくとよい。目安としては、導入
する外来微生物数は、その微生物の種類にもよるが、画
定生態系1ミリリットル当り105 〜1010CFU、好
ましくは107 〜10 10CFU程度がよい。
【0076】導入量が少な過ぎれば、外来微生物の生残
は可能であるが、対象物質を分解する効果を認め難い。
一方、導入量が多過ぎれば、栄養源の不足や急激な嫌気
状態の発生などが起り導入菌の大幅な減少を起し、効果
を著しく減ずる。
【0077】このように導入された外来微生物は、当初
に、導入された他、特に追加補充をしたり、別途栄養源
を補給しなくとも、定着し生残することができる。
【0078】上述した外来微生物生残方法を利用するこ
とにより、環境浄化を効率的にかつ環境負荷の少ない手
段を選んで実施することができる。この場合は、外来微
生物として特に環境浄化に必要な物質変換能を有する有
効なものを選定すればよく、目的とする物質に応じて適
宜選定すればよい。
【0079】該微生物の施用方法は、該微生物の培養液
をそのままあるいは希釈して対象生態系に散布したり、
土壌等においては対象土壌と混合したり、あるいは該微
生物を担体に担持させて、これを分散する等により行う
ことができる。微生物の定着性からすれば粘土鉱物、活
性炭、ポリマー等の担体に担持させたものが好ましい。
【0080】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。実施例1 ベクターpHSG298とpHSG396を組換えて作
製した、カナマイシンおよびクロラムフェニコール両耐
性ベクターpUSO800を用いて、塩化カルシウム法
でE.coliHB101株を形質転換した。
【0081】これをLB培地(バクトペプトン10g/
l,イーストエキストラクト5g/l,塩化ナトリウム
10g/l,pH7.5)10mlに接種し37℃で対
数増殖に至るまで振盪培養した。
【0082】活性汚泥100gをフラスコにとって、こ
れに過酸化水素水3%溶液10mlを加え2時間放置
し、活性汚泥の限定的殺菌を実施し、この殺菌の前後で
平板希釈法により菌数を計数し、その結果、該生態系に
おける微生物は当初(生菌数約6×108 )の約30%
程度まで低減できた。その後、先に調製したHB101
形質転換株を接種したLB培地10mlを加えて、穏や
かに振盪した。
【0083】この活性汚泥から1週間ごとにサンプル
(1g)を採取しカナマイシン添加プレートにまき週間
毎にこの形質転換株すなわちE.coliの菌数を求め
た。その結果、E.coli導入後1週間目の菌数は約
107 CFUとなり、その後7週間にわたって菌濃度は
ほぼ一定であり、外来微生物であるE.coliが生態
系に生残していることが確認できた。
【0084】また、比較例として、当該実施例で得られ
たHB101を、活性汚泥100gに接種し、同様にし
て1週間毎のE.coliのコロニー数を計算し、増殖
菌濃度を調べた。その結果、菌濃度は1週間毎に減少し
ていくことが確認された。
【0085】図1に、実施例と比較例の結果を対比して
示した。この結果から、過酸化水素で限定的に殺菌した
活性汚泥では、明らかに、E.coliの菌濃度が上昇
し、安定に生存していることが確認された。実施例2 黒ボク土200gに3%過酸化水素水10mlを滴下
し、約2時間放置し、限定的に殺菌し当初の生菌数(3
×108 /グラム土)の約5%程度まで微生物を低減し
た。この土壌サンプルをガラスカラムに充填し、実施例
1に示したE.coli形質転換株をカラム上面より接
種し、LB培地を加えて土壌を浸した後穏やかに振盪し
た。
【0086】実施例1と同様にして、土壌サンプル中の
週間毎のE.coli菌濃度を計量した。その結果、
E.coli導入後1週間目の菌数は約2×106 CF
U/グラム土となり、その後7週間にわたって菌濃度は
ほぼ一定であり、外来微生物であるE.coliが生態
系に定着し生残していることが確認できた。
【0087】また、比較例として、当該実施例と同じ黒
ボク土200gを過酸化水素で処理することなく、ガラ
スカラムに充填し、同様にしてE.coli形質転換株
の接種実験を行い週間毎の菌濃度を計量した。当該実施
例および比較例の結果を対比して図2に示した。
【0088】この結果から、過酸化水素で処理した土壌
において菌濃度が上昇し、安定に生存することが確認さ
れた。実施例3 Pseudomonas cepacia KK01株
(通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、寄託番号
FERM BP−4235)をフェノール0.05%を
含有させたM9培地10mlに接種し30℃でO.D.
が約0.7になるまで培養した。
【0089】黒ボク土200gを試験土壌として、その
うち100gをとり120℃で1時間乾燥殺菌し、残り
の土壌と該殺菌した土壌を混ぜ(菌数は約30%まで低
減)、M9培地に浸しさらに1000ppmフェノール
を拡散させてフェノール汚染土壌をつくり、先に調製し
たKK01株10mlを接種した。
【0090】上記土壌中のフェノール濃度をHPLCに
より定量し、フェノール残存率を計測し、実験開始時を
1とした時の比を求めた。その結果、KK01株導入後
1週間目のフェノール残存率は0.62となり、その後
5週間にわたってフェノール残存率は減少しており、す
なわち外来微生物であるKK01株が生態系に定着し徐
々にフェノールを分解して生残していることが確認でき
た。
【0091】また、比較例として、試験土壌200gを
M9培地に浸し、1000ppmフェノールを拡散させ
た無殺菌処理汚染土壌サンプルを調製し、KK01株を
同様に接種した。当該実施例と同様にしてフェノール濃
度の変化を測定し、この変化を該実施例と対比して図3
に示した。
【0092】この結果から、限定的に殺菌した場合にフ
ェノール除去能が高くなっていることが確認された。実施例4 バイアル瓶に30mlの3ppmトリクロロエチレン
(TCE)、50ppmのフェノールおよび0.05%
イーストエキストラクトを含むM9培地を用意した。こ
れに、実施例3で示した様に限定的に殺菌した黒ボク土
を水面まで加え、さらにKK01株を含む培養液0.1
mlを接種し、ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉
した後、30℃で培養した。
【0093】所定の培養日数経過時にバイアル瓶中のT
CE量をガスクロマトグラフィーを用いたヘッドスペー
ス法により定量しTCEの残存率を求めた。また、比較
例として、当該実施例と同様にして、殺菌処理しない黒
ボク土をバイアル瓶中に浸しTCE残存率を測定した。
この結果を当該実施例で測定した残存率と対比して図4
に示した。この結果から、限定的に殺菌した場合には、
高いTCE除去能を示すことが確認された。実施例5 繊毛虫類に属する原生動物であるColpodaを野外
の用水路より採取し、培養、増殖させた。黒ボク土20
0gを未処理のままガラスカラムに充填し、Colpo
daを100匹/ml含む懸濁液を50ml、および実
施例1に示した形質転換株E.coliHB101をL
B培地とともにカラム上面より接種し、土壌を浸した後
室温において穏やかに振盪した。土壌サンプル中の週間
毎のE.coli菌数および土着菌数を計数した。その
結果を図5に示す。
【0094】ColpodaおよびE.coli導入直
後には、Colpodaの捕食作用により土着菌、導入
菌ともに急速に個体数を減らしたが、餌となる系の細菌
の個体数の減少とともにColpodaの活性が低下す
るとともに、再び系の総菌数も上昇して平衡状態に至
り、その中で導入した外来菌はニッチを獲得して約2×
106 CFU/グラム土の個体数を維持していることを
確認した。実施例6 活性汚泥100gをフラスコにとり、土着の菌数を計数
したところ、生菌数約6×108 CFU/gであった。
【0095】その後、実施例1に示した形質転換株E.
coliHB101を約2×104CFUを接種し、5
倍濃度のLB培地10mlを土着、外来双方の菌の増殖
のための栄養源として加え、激しく振盪培養して酸素を
供給した。この活性汚泥から1日ごとにサンプル(1
g)を採取し、カナマイシン添加/非添加LB培地プレ
ートにまき、E.coliおよび土着菌の菌数を求め
た。
【0096】その結果、外来菌導入後、土着菌およびそ
れに遅れて外来菌も増殖しはじめ、4日後には外来菌の
菌数は107 CFU/gとなり、その後7日間にわたっ
て各菌濃度はほぼ一定で平衡状態に達し、外来微生物で
あるE.coliが生態系に生残していることが確認で
きた。
【0097】比較例として、栄養培地を加えず、培養時
の振盪も穏やかにして酸素の供給を制限した実験では、
導入菌の菌数は7日後で102 CFU/gに留まり、有
効な生残を果たすことはできなかった。
【0098】実施例7 黒ボク土200gを野外より採取してガラス容器に充填
した。このときの野外における土壌の温度は16℃であ
った。また土着菌の菌数は、3×108 CFU/グラム
土であった。Pseudomonas cepacia
KK01株(通産省工業技術院生命工学工業技術研究
所、寄託番号FERM BP−4235)を2×YT培
地(5%グルタミン酸ナトリウム添加)で培養し、約1
6 CFUを培地5mlとともに容器に充填した土壌に
添加した。この容器を30℃に保たれた恒温室に静置し
て培養をおこない、1週間ごとに土着菌と外来菌の計数
を行った。KK01株はフェノールを単一炭素源として
生育することが確認されており、該土壌試料中のKK0
1株の菌数をフェノール選択培地において希釈平板法に
より、コロニーの形状から推定することができる。
【0099】培養の結果、培養温度の上昇によって菌の
活性は上昇し、土着菌の菌数は、3週間後には6×10
9 CFU/グラム土にも達した。一方、外来菌であるK
K01株は、1週間後には2×103 CFU/グラム土
にすぎなかったが、その後増殖し、3週間後には7×1
8 CFU/グラム土に達した。
【0100】3週間後に土壌を充填した容器を、別の1
5℃に保たれた恒温室に移し変え、さらに週を追って菌
数を計数した。温度の低下と、経時による栄養分の消費
によって菌数は減少をはじめたが、5週間後の菌数は、
土着菌、外来菌各々2×10 7 CFU/グラム土、6×
106 CFU/グラム土であった。
【0101】比較例として、並行して30℃での培養を
行わずに15℃でのみ培養を行った土壌容器において
は、土着菌の菌数に変化はなく、導入したKK01株の
菌数は、1週間後に3×102 CFU/グラム土、5週
間後には約102 CFU/グラム土となり、土着菌の保
持しているニッチを奪うことができず、汚染物質を分解
するために有効な濃度の生残を図ることができなかっ
た。この結果は、培養の中途で30℃の処理を行ったこ
とに起因し、系の平衡状態の攪乱が外来菌の導入、生残
に有効であることを示している。
【0102】実施例8 実施例7において、比較例として実施した試験土壌にお
いては、導入したKK01株は培養5週間後において約
102 CFU/グラム土となり有効な濃度の生残を果た
すことができなかった。しかし、該試験土壌をさらに8
週間放置してKK01株の菌数を計測したところ、9×
101 CFU/グラム土を維持していた。また、この時
の土着菌の総数は8×107 CFU/グラム土であっ
た。KK01株はこのような微小な濃度ではあるがわず
かながら生残しており、この時点で、事実上土着菌とし
て該試験土壌に生息しているということができる。この
試験土壌にさらにKK01株を外部より添加し、併せて
該系の平衡状態を攪乱する操作を行って、KK01株の
該試験土壌における菌数を増大させ、汚染物質の分解に
有効な濃度にまで高めることを試みた。
【0103】Pseudomonas cepacia
KK01株(通産省工業技術院生命工学工業技術研究
所、寄託番号FERM BP−4235)を、新たに2
×YT培地(5%グルタミン酸ナトリウム添加)で培養
し、増殖させた。
【0104】KK01株を土着菌として含む上記試験土
壌試料200gに0.1%次亜塩素酸ナトリウム液10
mlを噴霧し、約2時間放置して限定的に殺菌したとこ
ろ、当初の総生菌数(8×107 CFU/グラム土)の
25%程度まで微生物が低減した。この土壌サンプルを
ガラスカラムに充填した。培養して4×107 CFU/
mlとなるように菌濃度を調整したKK01株の菌液
(2×YT培地)10mlをカラム上面より接種し、土
壌を浸した後穏やかに振盪した。
【0105】土壌サンプル中の週間毎のKK01株の菌
数を計数した。その結果、KK01株導入後1週間目の
菌数は3×107 CFU/グラム土となり、その後増加
を続けて5週間後には6×109 CFU/グラム土に達
し、以降は菌濃度はほぼ一定を保つようになった。
【0106】また、比較例として、当該実施例と同じ由
来の黒ボク土試料200gを次亜塩素酸ナトリウム液で
処理することなくガラスカラムに充填し、同様にしてK
K01株の接種実験を行い、週間毎の菌濃度を計数し
た。当該実施例および比較例の結果を対比して図6に示
した。KK01株は実施例6の実験の結果、土着の微生
物として生息していたが、菌数は9×101 CFU/グ
ラム土に過ぎず、本実施例の限定的殺菌の結果、新たに
導入したKK01株が生態系に定着し、増殖して生残し
ていることが確認できた。
【0107】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によって、
複数種の微生物種が共存し平衡状態を保っている生態系
に外来微生物を導入する際に、該生態系に対して、各種
微生物の相対的な個体数比、または絶対的な個体数、す
なわち該生態系の平衡に攪乱を生じさせて、該生態系を
一時的に非平衡状態にさせる手段を講じることにより、
外来微生物の生残、増殖を促進させ、その後の補給等を
不要とすることを可能とする。
【0108】また、生態系における微生物個体数の低減
もしくは増加を行うことにより、効率的に外来微生物の
生残を達成することができる。
【0109】また、該生残法により、汚染物質等を外来
微生物の物質変換能を効率よく、かつ環境に対する負荷
を抑制して利用することができるので、浄化が必要な環
境を迅速にかつ低労力で浄化することができる。
【0110】このように、本発明によれば、多種の微生
物が共存している生態系、例えば活性汚泥や土壌等に外
来微生物を十分な量を安定に生存させることができ、外
来微生物の物質変換能を利用して環境の浄化を速やかに
行うことを可能とし、微生物の減少に伴う微生物補給や
微生物濃度や活性の頻繁な計量を低減することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における外来微生物の生存数
(菌濃度比)と時間(週)の経過との関係を示す図であ
る。
【図2】本発明の実施例2における外来微生物の生存数
(菌濃度比)と時間(週)の経過との関係を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例3におけるフェノールの残存率
(残存比)と時間(日)の経過との関係を示す図であ
る。
【図4】本発明の実施例4におけるトリクロロエチレン
の残存率(残存比)と時間(日)の経過との関係を示す
図である。
【図5】本発明の実施例5における、導入した外来菌と
土着菌の菌数と、時間(週)の経過との関係を示す図で
ある。
【図6】本発明の実施例8において、限定的に殺菌した
土壌と無殺菌処理土壌における菌濃度と時間との関係を
示す図である。

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の微生物種が共存して成立している
    平衡な系に、平衡を破るための攪乱手段を一旦与え、次
    いでその系に新たな微生物種を導入し、その微生物の生
    育条件を維持する事を特徴とする外来微生物生残法。
  2. 【請求項2】 1種以上の複数種の微生物種が共存する
    生態系に対して、該生態系の平衡に攪乱を生じさせて、
    該生態系を一時的に非平衡状態にさせる手段を講じると
    共に、その系内に予め存在しない外来微生物を導入する
    事を特徴とする外来微生物生残法。
  3. 【請求項3】 微生物の相対的な個体数比を変化させて
    生態系の平衡に攪乱を生じさせる請求項1に記載の外来
    微生物生残法。
  4. 【請求項4】 微生物の絶対的な個体数を変化させて生
    態系の平衡に攪乱を生じさせる請求項1に記載の外来微
    生物生残法。
  5. 【請求項5】 生態系を非平衡状態にさせる手段が、各
    種微生物個体数を低減させるものである、請求項1記載
    の外来微生物生残法。
  6. 【請求項6】 各種微生物個体数を低減させる手段が、
    該生態系の限定的な殺菌である、請求項4記載の外来微
    生物生残法。
  7. 【請求項7】 各種微生物個体数を低減させる手段が、
    該微生物を捕食する生態的に上位の生物種を該生態系内
    に導入するものである、請求項4記載の外来微生物生残
    法。
  8. 【請求項8】 生態系を非平衡状態にさせる手段が、各
    種微生物個体数を増加させるものである、請求項1記載
    の外来微生物生残法。
  9. 【請求項9】 各種微生物個体数を増加させる手段が、
    該各種微生物の栄養物質の添加である、請求項7に記載
    の外来微生物生残法。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の外来微生物生残法に基
    づき、環境浄化のための物質変換能を有する外来微生物
    を生態系に施用することにより環境を浄化することを特
    徴とする外来微生物による環境浄化法。
  11. 【請求項11】 汚染環境の微生物浄化方法であって、
    処理対象環境で成立している微生物生態系の平衡状態を
    破るための攪乱手段を一旦与え、次いでその系に汚染物
    質の浄化能力を有する微生物を導入し、その微生物の生
    育条件を維持する事を特徴とする方法。
  12. 【請求項12】 攪乱手段が微生物の相対的な固体数比
    を変化させる手段である事を特徴とする請求項11に記
    載の方法。
  13. 【請求項13】 攪乱手段が微生物の絶対的な固体数を
    変化させる手段である事を特徴とする請求項11に記載
    の方法。
  14. 【請求項14】 攪乱手段が微生物の固体数を低減させ
    る手段である事を特徴とする請求項11に記載の方法。
  15. 【請求項15】 攪乱手段が該微生物生態系の限定的な
    殺菌である事を特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 攪乱手段が微生物を捕食する生物種の
    該生態系への導入である事を特徴とする請求項14に記
    載の方法。
  17. 【請求項17】 攪乱手段が微生物の固体数を増加させ
    る手段である事を特徴とする請求項11に記載の方法。
  18. 【請求項18】 攪乱手段が微生物の栄養物質の該生態
    系への添加である事を特徴とする請求項17に記載の方
    法。
  19. 【請求項19】 1種以上の複数種の微生物種が共存す
    る生態系に対して、該生態系の平衡に攪乱を生じさせ
    て、該生態系を一時的に非平衡状態にさせる手段を講じ
    るとともに、その系内にある特定の微生物を導入するこ
    とを特徴とする外来微生物生残法。
  20. 【請求項20】 導入するある特定の微生物が土着の微
    生物である、請求項19に記載の外来微生物生残法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006263642A (ja) * 2005-03-25 2006-10-05 Sumitomo Chemical Co Ltd 微生物の馴養方法および馴養した微生物による有機性排水の処理方法
JP2008296094A (ja) * 2007-05-29 2008-12-11 Ritsumeikan バイオレメディエーションのための方法及びシステム

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