JPH07209444A - ステンレス鋼製時計部品の製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼製時計部品の製造方法

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JPH07209444A
JPH07209444A JP135794A JP135794A JPH07209444A JP H07209444 A JPH07209444 A JP H07209444A JP 135794 A JP135794 A JP 135794A JP 135794 A JP135794 A JP 135794A JP H07209444 A JPH07209444 A JP H07209444A
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JP
Japan
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stainless steel
cutting
chromium
free
heat treatment
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JP135794A
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English (en)
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Ryuzo Okamoto
龍蔵 岡本
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Seiko Instruments Inc
Original Assignee
Seiko Instruments Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フェライト系ステンレス鋼製時計部品の耐食
性を改善する。 【構成】 フェライト系ステンレス鋼の素材または成形
加工、機械加工などの工程のあとの適当な工程で非窒化
性雰囲気中で熱処理を施し、炭化物の再固溶と表面の窒
化によるクロムの欠乏を回復させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、時計部品に好適な製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、時計部品すなわちケース、裏ぶ
た、ガラスぶち、りゅうず、バンドにはステンレス鋼、
黄銅などが使われてきた。このうちステンレス鋼はクロ
ム、ニッケルを添加した、いわゆるオーステナイト系ス
テンレス鋼がほとんどであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のオース
テナイト系ステンレス鋼を使った時計部品にはニッケル
アレルギーの問題がある。すなわち、ニッケルは3大金
属アレルギー源の一つに数えられ、ニッケルを含有する
金属を長時間肌に接触させた場合、人によって肌に発疹
を起こすことがあるとされている。そのため、ニッケル
を含有しないクロム系ステンレス鋼で時計を製造する技
術が求められている。ニッケルを含有しないフェライト
系ステンレス鋼製時計は耐食性に問題がありその改善が
不可欠である。
【0004】
【課題を解決するための手段】フェライト系ステンレス
鋼製時計部品は、その過酷な携帯条件により錆びること
がある。その腐食形態は粒界腐食であり、ステンレス鋼
の結晶粒の粒界が選択的に腐食脱落する。
【0005】しかも、何らかの原因で1つの結晶粒が腐
食すると、それを起点として近接する結晶粒が腐食し腐
食域が拡大することが知られている。実験の結果、この
腐食を阻止するには非窒化性雰囲気中で600〜110
0℃の温度範囲に加熱し、冷却する熱処理が有効である
ことが明らかになった。
【0006】
【作用】フェライト系ステンレス鋼製時計部品の腐食の
原因は、結晶粒界にクロム炭化物(Cr23C6)が析
出し、その分素地のクロムが欠乏し耐食性が低下する、
熱処理工程中の窒化性雰囲気によりステンレス鋼表面
のクロムが窒化され、その分素地の金属クロムが欠乏し
耐食性が低下する、の2つと考えられる。
【0007】このクロムの欠乏を回復させるには、上
記クロム炭化物、クロム窒化物を分解させステンレス鋼
素地に再固溶させる、クロム濃度は結晶粒内の中央部
(高濃度)、外周部(低濃度)で濃度差があり低濃度の
外周部のクロム濃度を回復させる、の2つの方法が考え
られる。
【0008】実験によれば600〜1100°Cの温度
内で真空中で加熱後窒素またはアルゴンガスの噴射によ
る急冷でも鋭敏化すなわち炭化物、窒化物の生成は阻止
され、耐食性が向上することが明らかになった。すなわ
ち、真空中で加熱されるため媒体による反応はなく、窒
素またはアルゴンガスの噴射による冷却は、アルゴンガ
スが不活性ガスであるため反応性はなく、窒素も不活性
ガスに類似して窒化反応はない。
【0009】問題は時計産業で多用されているアンモニ
ア分解ガスを利用した還元性雰囲気炉の場合であり、ア
ンモニアが水素、窒素に分解し、このときの活性窒素が
時計部品と接触すると表面に窒化反応が起きる。そのた
め、一切アンモニア分解ガスを使わず真空炉やアルゴン
ガス雰囲気炉を使うのがよいが、生産性、採算性からは
数回の熱処理の最後の1回アルゴンガス雰囲気炉を使え
ば耐食性が改善されることが明かになった。これはその
熱処理によって、粒界炭化物は粒内に溶け込み、表
面クロムの窒化による粒界近傍のクロム欠乏は、粒内か
らのクロムの拡散によって均等化される、の2つの効果
を同時に実現できるためである。
【0010】
【実施例】以下、実施例により発明の詳細を説明する。 (実施例1)一般にフェライト系ステンレス鋼、例えば
17Cr(非快削)鋼板を用い時計部品のケース(胴)
を製造する場合、プレス成形の途中2〜3回の中間熱処
理を挿入し加工硬化を除去し、プレス成形をする。その
後切削、研磨工程を経てケースに仕上げられる。この熱
処理には、時計製造ではアンモニア分解ガス雰囲気のベ
ルト炉が多用されている。この材料を使い、この工程で
製造した胴と最後の3回目の熱処理に替えて真空炉で1
000℃10分保持後アルゴンガス噴射により急冷し、
後工程を同じくした胴の2種類を作成した。
【0011】3回の熱処理とも従来のアンモニア分解ガ
ス雰囲気炉だけを経た胴と、最後の1回を上記温度の真
空炉で加熱急冷した胴との金属組織を比較した。前者で
は結晶粒界にクロム炭化物が観察されたが、後者につい
ては観察されなかった。また、クロム窒化物は組織上か
らは観察できなかったが、AES分析で最表面の窒素濃
度は内部にくらべ約3倍高いことから窒素が表面から拡
散していることが明かになった。
【0012】次に両試料の耐食性を調べるため、塩水噴
霧試験48時間を行った。その結果、前者の胴側面数カ
所に粒界腐食が観察されたが、後者では1箇所も観察さ
れず、耐食性の向上が認められた。 (実施例2)22Cr非快削鋼板を使い、実施例1と同
じ工程で時計部品の裏蓋を製造した。熱処理は3回と
も、および最後の1回だけ真空炉を用い加熱後窒素ガス
急冷したもの、従来通り3回ともアンモニア分解ガス雰
囲気のベルト炉を経たもの3種類を製造した。組織観察
では、従来工程の裏蓋では炭化物が観察されたが、前2
者では炭化物は観察されなかった。塩水噴霧試験48時
間では従来工程の裏蓋は錆びが発生したが、前2者では
錆びは観察されなかった。
【0013】(実施例3)18Cr非快削鋼板を使い、
実施例1と同じ工程で時計部品のガラスぶちを製造し
た。熱処理は最後の1回だけ真空炉を用い加熱後アルゴ
ンガス急冷したもの、従来通り3回ともアンモニア分解
ガス雰囲気のベルト炉を経たもの2種類を製造した。組
織観察では、従来工程の裏蓋ではほとんど粒界に炭化物
が観察されなかったが、AES分析で最表面の窒素濃度
は内部にくらべて約2.5倍高いことから窒素が表面か
ら拡散していることが明らかになった。ガラスぶち試料
の上記と同じ耐食性試験の結果、炭化物はほとんど観察
されないにもかかわらず、数カ所の錆びが観察された。
これに対して最後の1回だけ真空炉を用いた熱処理によ
る試料には錆は発生しなかった。
【0014】これは炭化物のほか、表面からの窒素の拡
散も耐食性を悪くさせている要因であることを示してい
るといえる。 (実施例4)フェライト系ステンレス鋼19Cr−2M
o−0.2Pb−0.3S−0.1Se快削棒鋼(φ4
mm)に、棒のままローレット溝14条を切削により加
工し、次の熱処理では窒素雰囲気中で600℃に加熱し
たあと同雰囲気中で徐冷した。この熱処理済み棒鋼を自
動機に取り付け切削加工し、頭部を研磨して、時計部品
のりゅうずに仕上げた。さらに、仕上がったりゅうずに
金合金めっき(Au−Fe)を厚さ2μm被覆した。
【0015】これと熱処理を施さない従来工程のりゅう
ずを製造し、これにも上記と同じめっきを被覆した。こ
のりゅうずの組織観察では、従来工程のりゅうずでは炭
化物が観察されたが、熱処理を施したりゅうずでは炭化
物は観察されなかった。すなわち、棒鋼段階で炭化物が
粒界に生成していた。
【0016】塩水噴霧試験では従来工程でめっきあり、
なしともロ−レット溝の谷部に粒界腐食による錆びが発
生し、特にめっきありの場合に腐食が著しかった。これ
に対して、熱処理ありの場合の腐食はめっきあり、なし
とも皆無であり、耐食性の改善効果は顕著であった。快
削フェライト鋼りゅうずの腐食が非快削鋼にくらべて著
しいのは、快削成分である硫化マンガン(MnS)その
他の快削成分の表面露出部分が起点になり腐食が進行す
るためである。
【0017】(実施例5)フェライト系ステンレス鋼1
8Cr−2Mo−0.2Pb−0.1S快削棒鋼(φ6
mm)を使い実施例1と同じ方法で胴に仕上げた。次の
熱処理では窒素雰囲気中で900℃に加熱したあと窒素
ガス噴射により急冷した。これを使って実施例3と同じ
方法でりゅうずに仕上げた。これと熱処理を施さない従
来工程のりゅずを製造し両者の組織観察を行った。従来
工程のりゅうずでは炭化物が観察されたが、熱処理を施
したりゅうずでは炭化物は観察されなかった。
【0018】また、塩水噴霧試験では従来工程のりゅう
ずにはロ−レット溝の谷部に粒界腐食による錆びが発生
したが、熱処理ありの場合の腐食は皆無であり耐食性の
改善効果が認められた。上記実施例では熱処理は成形加
工、ローレット加工などの強加工のすぐ後の工程で行っ
たが、部品完成前の最終工程で行っても全く効果に変わ
りはない。ただしその場合は熱処理工程が1工程増える
ため、コスト上は好ましくない。
【0019】(実施例6)フェライト系ステンレス鋼2
0Cr−2.1Mo−0.15S−0.3Mn快削鋼板
(厚さ8mm)に実施例5と同じ方法で加工しりゅうず
に仕上げた。3回の熱処理とも従来のアンモニア分解ガ
ス雰囲気炉だけを経た胴と、最後の1回を上記温度の真
空炉で加熱急冷した胴との金属組織を比較した。前者で
は結晶粒界にクロム炭化物が観察されたが、後者につい
ては観察されなかった。
【0020】また、塩水噴霧試験では前者の胴側面数カ
所に粒界腐食が観察されたが、後者では1箇所も観察さ
れず、快削性を付与させた上、耐食性の向上が認められ
た。 この発明で諸条件を限定した理由 (1)熱処理温度600℃〜1100℃の範囲 1100℃を越えると結晶粒が粗大化脆化し、600℃
以下では炭化物の再固溶とCrの拡散による濃度の回復
が進まず、耐食性の改善に無効であるためである。好ま
しくは800〜1000°Cが適している。
【0021】(2)フェライトステンレス鋼のCrの成
分17〜22%の範囲Cr17%以下ではCrの絶対量
が不足し時計としての耐食性を満たさない。22%を越
えると材料費は高くなり、加工性は悪くなるが、耐食性
は十分であり熱処理の必要はなくなるためである。
【0022】(3)快削成分中の硫黄を0.2%以下、
Mnを0.3%以下に限定 硫黄が0.2%、マンガンが0.3%を越えると快削性
は増すが、耐食性が悪化するためである。すなわち、両
元素は化合物MnSとして鋼中に存在しこれが脆いため
バイト等の刃具に当たるとそこから切粉が破断され快削
性を発揮する。そのため硫黄とマンガンの比は相対的で
あるためその上限だけを限定した。
【0023】なお、この発明は時計部品だけでなく、肌
につける装飾品にも適用できる。表1は以上の実施例を
一覧表にしたものである。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】この発明は以上に説明したように、フェ
ライトステンレス鋼製時計部品に熱処理を施すことによ
り、その耐食性を著しく向上させることができるという
効果がある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 素材としてフェライト系ステンレス鋼を
    用い、前記素材を成形または切削加工工程、熱処理工
    程、切削加工工程、研磨工程を経て製造する時計部品の
    製造工程において、熱処理が非窒化性雰囲気中、温度6
    00℃〜1100℃の範囲で加熱、冷却することを特徴
    とする、フェライト系ステンレス鋼製時計部品の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 フェライト系ステンレス鋼が17〜22
    クロム系ステンレス鋼であり、その成分に少なくとも硫
    黄、鉛、セリウムの1または2以上を添加した快削性フ
    ェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする、請求
    項1の時計部品の製造方法。
  3. 【請求項3】快削成分が硫黄の場合その硫黄が0.2%
    以下であり硫黄に対応するマンガンが0.3%以下であ
    ることを特徴とする請求項2の快削フェライト系ステン
    レス鋼を使った時計部品の製造方法。
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