JPH07207306A - 粉末焼結ステンレス鋼 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 粉末焼結ステンレス鋼が、その気孔に低融点
の金属または合金からなる溶浸材を溶浸含有している。 【効果】 粉末焼結品の欠点であった耐食性の低減を大
きく改善する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、粉末焼結ステンレス
鋼に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、
焼結体表面の開放気孔を溶浸材によって封孔して耐食性
を改善した粉末焼結ステンレス鋼に関するものである。

【０００２】

【従来の技術とその課題】従来より、水噴霧法あるいは
ガス噴霧法による金属粉末の製造技術の発展にともなっ
て、この方法によって得られる金属粉末を用いた焼結材
が各種の用途に用いられてきている。そして、この焼結
材製造のための方法についても、プレス、鋳込成形、射
出成形等による成形品を脱脂した後に焼結する工程を基
本としつつ、様々な改良、工夫が加えられてきている。

【０００３】このような粉末製造方法と、その粉末によ
る治金方法の発展により、各種ステンレス鋼の粉末も安
価に入手できるようになり、特に、３１６Ｌに代表され
るオーステナイト系ステンレスは、機械部品、装飾品な
どに、その需要を拡大しつつある。しかしながら、粉末
焼結材はその宿命として残留気孔が存在するため、ステ
ンレス鋼の基本的な要求性能である耐食性が著しく損わ
れる場合があり、この点での性能改善が望まれていた。

【０００４】このような欠点を克服するために、この発
明の発明者らも、すでに耐食性に及ぼす気孔の存在につ
いて検討し、その改善策として、ステンレス鋼粉末にア
ルミニウム等の異種金属で、耐食性の向上が期待される
粉末をプレミックスして焼結する方法を開発した。しか
しながら、この改善策によっては、その耐食性の向上は
必ずしも充分ではなく、かえって、異種金属の過剰添加
によって逆に耐食性が悪化することが明らかになってき
た。

【０００５】このため、現状においては、粉末焼結ステ
ンレス鋼の耐食性の改善についての有効策を見出し得て
いないのが実情であった。この発明は、以上の通りの事
情に鑑みてなされたものであって、従来技術の欠点を改
善し、粉末焼結ステンレス鋼の耐食性をより向上するこ
とのできる新しい耐食性粉末焼結ステンレス鋼を提供す
ることを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、粉末焼結ステンレス鋼が、その
気孔に低融点の金属または合金からなる溶浸材を溶浸含
有していることを特徴とする粉末焼結ステンレス鋼を提
供する。この発明が対象としている粉末としてのステン
レス鋼については、従来の水噴霧法、あるいはガス噴霧
法によって製造されたものの任意のものが使用される。
焼結品の強度、伸び等の特性においては水噴霧法によっ
て製造したものが好適であり、また、コスト的にも水噴
霧法によるものが有利である。

【０００７】しかし、この水噴霧法による粉末は、焼結
時の寸法収縮が大きいこと等からも、製品の目的、用
途、コスト等の観点を考慮して、適宜に水噴霧法による
粉末とガス噴霧法による粉末とを混合して使用してもよ
い。ステンレス鋼粉末の粒径は、通常は１００メッシュ
以下程度のものが好ましい。

【０００８】これらの粉末は、あらかじめ成形、焼結す
るが、このための工程は従来同様とすることができる。
すなわち、たとえば、粉末を潤滑剤と混合してプレス成
形し、得られた成形体を、真空、不活性ガス雰囲気下等
の大気圧、もしくは微圧下において脱脂焼結する方法等
である。その他、粉末をポリマー有機バインダーと混合
して射出成形し、その後脱脂、焼結する方法もある。

【０００９】焼結に対し、この発明においては、その焼
結品の気孔に溶浸材を溶浸含有させることになる。溶浸
材は、母材のステンレス鋼の融点よりも低い融点の金属
もしくは合金の適宜な種類を使用できる。たとえば、Ｃ
ｕ、Ｓｎ、Ｚｎ、Ｐｂ、Ａｌ等の金属もしくはその合金
の１種以上のものを使用することができる。

【００１０】溶浸は、真空下、大気圧、あるいは微圧下
に、不活性ガス雰囲気、水素ガス雰囲気等として加熱に
よって焼結体に接触させた低融点の金属または合金のプ
レート、箔等を溶解し、焼結品の気孔に溶浸させること
で実施する。この溶浸によって表面気孔は封孔されるこ
とになる。もちろん、加熱温度は溶浸材融点よりも高
く、母材のステンレス鋼の融点よりも低くする。

【００１１】なお、この溶浸については、脱脂焼結時に
同時に行うこともできる。この場合には、プレス成形体
に溶浸材のプレートや箔を配置し、加熱によって溶浸さ
せ、同時に脱脂焼結する。溶浸は、通常は、粉末焼結ス
テンレス鋼の気孔の１０〜１２０容量％の溶浸材を用い
て行うのが好ましい。より好適には、その気孔の７０〜
９０容量％程度とすることである。

【００１２】溶浸によって耐食性が向上する理由につい
ては、焼結体表面の開放気孔の封孔、溶浸材（たとえば
Ｚｎ）の優先的溶解による母材ステンレス鋼の保護、あ
るいは不活性金属（たとえばＳｎ）溶浸材の表面被覆に
よる母材ステンレス鋼の保護等が考えられる。一般的に
は、溶浸材は合金化し、ステンレス鋼焼結品の表面には
残らないが、場合によっては残してもよい。

【００１３】金属の溶浸技術は、これまでは、強度の向
上や、接合を目的としたものが主なものであるが、この
発明においては、焼結ステンレス鋼の耐食性の改善とし
て表面改質を実現するものである。以下、実施例を示
し、さらに詳しくこの発明について説明する。

【００１４】

【実施例】水噴霧法により製造した３１６Ｌオーステナ
イト系ステンレス鋼の粉末を用いて成形し、これを脱脂
焼結した。３１６Ｌ粉末の金属組成は、重量％で表１の
通りであった。

【００１５】

【表１】

【００１６】成形には、１００メッシュアンダーの粉末
を用い、潤滑剤としてのステアリン酸亜鉛を１．０ｗｔ
％混合してフローティング形式のダイセットを用いた。
成形圧力は５ｔ／ｃｍ² とした。得られた成形品を、窒
素ガス雰囲気下に１２００℃に加熱して焼結した。得ら
れた焼結品の気孔率、すなわち、焼結体密度と真密度と
の比は、約１０％であった。成形圧力を７ｔｏｎ／ｃｍ
² とする場合には約６％であった。

【００１７】そこで、気孔率１０％の粉末焼結ステンレ
ス鋼に対し、溶浸処理を行った。この場合、気孔の８０
％の容量を占める割合の溶浸材を用い、水素ガス雰囲気
下において１１００℃の温度で、３０分間処理した。得
られた溶浸ステンレス鋼の表面を研磨し、ＪＩＳＺ２３
７１に準拠して５％ＮａＣｌ溶液の９６時間噴霧による
耐食性試験を行った。その結果を、溶浸材の種類ととも
に示したものが表２である。

【００１８】実施例１〜４のこの発明のステンレス鋼の
場合には、その耐食性が著しく改善されていることが表
２より明らかである。

【００１９】

【表２】

【００２０】

【発明の効果】この発明によって、以上詳しく説明して
きた通り、粉末焼結ステンレス鋼の耐食性を大きく改善
することが可能となる。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 粉末焼結ステンレス鋼が、その気孔に低
   融点の金属または合金からなる溶浸材を溶浸含有してい
   ることを特徴とする粉末焼結ステンレス鋼。
2. 【請求項２】 気孔の１０〜１２０容量％の低融点の金
   属または合金からなる溶浸材を溶浸含有している請求項
   １のステンレス鋼。
3. 【請求項３】 溶浸材が、Ｃｕ、Ｓｎ、Ｚｎ、Ｐｂ、お
   よび／またはＡｌの金属、もしくはそれらの合金である
   請求項１または２のステンレス鋼。