JPH07191243A - 光ファイバケーブル用ジェリー混和物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 非対称ヒンダードフェノール基を有する酸化
防止剤を添加してなる光ファイバケーブル用ジェリー混
和物。 【効果】 本発明の光ファイバケーブル用ジェリー混和
物を光ファイバケーブルのチューブ内に充填しておく
と、低温においても該ジェリー混和物の稠度が適正な範
囲に維持されているので、ケーブルが屈曲されるなどの
物理変化を受けた場合に、各テープ心線がチューブ内面
からの側圧を受けても、各テープ心線はチューブ内を動
くことによって側圧を回避でき、光伝送特性の劣化や光
ファイバの断線が生じることを防止できる。また、高温
においても該ジェリー混和物から油分が分離することが
なく、この油分に起因する光伝送特性の劣化が生じるこ
とを防止でき、さらに、該ジェリー混和物が固くなりす
ぎることがなく光ファイバの断線が生じることも防止で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は光ファイバケーブルのチ
ューブ内の空隙部に充填されるジェリー混和物に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来から光通信の分野では多数本の光フ
ァイバ心線で構成された光ファイバケーブルが用いられ
ている。このような光ファイバケーブルの一種に、図１
に示すような多心テープ収納型ルースチューブケーブル
が提案されている。図１中符号１は、抗張力体であり、
この抗張力体１の周囲にはテープユニット２が収納され
たチューブ３が複数本配列され、さらにコンパウンド４
を隔てて押さえ巻５、ポリエチレンシース６が被覆され
ており、また、このシース６にはリップコード７が添設
されている。上記テープユニット２は、複数本の光ファ
イバ心線を並列に並べて一括被覆層により一体化したテ
ープ心線８を積層してなるものである。このテープユニ
ット２とチューブ３内面との間の空隙にはジェリー混和
物５５が充填されている。

【０００３】この構造の光ファイバケーブルにおいて、
ジェリー混和物５５は、ベースオイルにシリカ等の稠度
調節剤等を添加して稠度を適正な範囲に調整されてなる
ものである。ここでジェリー混和物５５の稠度が適正な
範囲に調整されるのは、稠度が小さすぎると、ジェリー
混和物５５が固くなりすぎて、ケーブルが屈曲されるな
どの物理変化を受けた場合に、各テープ心線８がチュー
ブ３内面からの側圧を受けることに起因して光伝送特性
が劣化したり、さらには光ファイバが断線してしまう恐
れがあり、一方、稠度が大きすぎると、ジェリー混和物
５５が液状のようになり、ケーブルの製造が困難である
ことや、ケーブルの端末からドリップしてしまうため、
これらの不都合を回避するためである。

【０００４】ところで、光ファイバケーブルは、寒冷地
で使用されたり、電力ケーブルと一体化されて複合ケー
ブルとして使用されたりするため、チューブ内のジェリ
ー混和物には−４０℃〜＋９０℃程度の広い温度範囲に
おいてその特性を維持することが望まれる。しかしなが
ら、上記ジェリー混和物５５にあっては特に低温におけ
る稠度低下や高温における熱劣化が生じることが問題と
なっていた。それは、稠度低下が生じると、ジェリー混
和物５５の固さが増し、上述したようにケーブルが屈曲
されるなどの物理変化を受けた場合に、光伝送特性が劣
化したり、さらには光ファイバが断線してしまう恐れが
あるからである。一方、熱劣化が生じると、ジェリー混
和物５５から油分が分離し、この油分が光ファイバ内に
入って光伝送特性が劣化し、さらにジェリー混和物５５
が固くなりすぎると、光ファイバが断線してしまう恐れ
があるからである。

【０００５】そこで、耐熱性を改善するために上記ジェ
リー混和物５５にさらに酸化防止剤を添加してなるジェ
リー混和物が考えられている。ここでの酸化防止剤とし
ては、従来、下記構造式（Ｉ）で示されるペンタエリス
リチル−テトラキス〔３−（３，５−ジ−ターシャリブ
チル−４−ヒドロキシフェニール）プロピオネート〕が
用いられていたが、耐熱性を改善するのに効果的な添加
量を加えると、ジェリー混和物５５の元の稠度に比べて
稠度が大きく変動してしまったり、得られるジェリー混
和物の稠度の温度依存性を大きく変化させてしまうとい
う問題があった。

【０００６】

【化１】

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたもので、酸化防止剤が添加されたときの
ジェリー混和物の稠度の変動量が小さく、−４０℃〜＋
９０℃程度の広い温度範囲において稠度の変動量が小さ
く、かつ熱劣化が生じることがないジェリー混和物を提
供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】かかる課題は、光ファイ
バケーブルに用いられるジェリー混和物に、非対称ヒン
ダードフェノール基を有する酸化防止剤を添加すること
で解決される。

【０００９】以下、本発明を詳しく説明する。本発明の
光ファイバケーブル用ジェリー混和物は、光ファイバケ
ーブルに用いられるジェリー混和物に、非対称ヒンダー
ドフェノール基を有する酸化防止剤を添加してなるもの
である。上記光ファイバケーブルに用いられるジェリー
混和物は、酸化防止剤が添加されていないジェリー混和
物であり、例えば４１５ＤＰＬ（商品名；シンコファッ
クス社製）等が用いられる。

【００１０】上記非対称ヒンダードフェノール基を有す
る酸化防止剤としては、例えば、下記構造式（II）で示
される１，３，５−トリス（４−ｔ−ブチル−３−ヒド
ロキシ−２，６−ジメチルベンジル）イソシアヌル酸な
どが用いられる。

【００１１】

【化２】

【００１２】この非対称ヒンダードフェノール基を有す
る酸化防止剤は、酸化防止効果が高く、従来用いていた
上記構造式（Ｉ）で示されるペンタエリスリチル−テト
ラキス〔３−（３，５−ジ−ターシャリブチル−４−ヒ
ドロキシフェニール）プロピオネート〕に比べて１／３
の添加量で十分な酸化防止効果が得られる。このように
非対称ヒンダードフェノール基を有する酸化防止剤が酸
化防止性能が優れているのは、ヒンダードフェノール基
のまわりの嵩高さによる影響が大きいためであると考え
られる。

【００１３】非対称ヒンダードフェノール基を有する酸
化防止剤の光ファイバケーブル用のジェリー混和物への
添加量は、好ましくは１０００ｐｐｍ以上とされる。添
加量が１０００ｐｐｍ以上であると、耐熱性がより優れ
た光ファイバケーブル用ジェリー混和物を提供すること
ができる。

【００１４】この光ファイバケーブル用ジェリー混和物
にあっては、酸化防止剤として非対称ヒンダードフェノ
ール基を有するものを用いたことにより、酸化防止剤が
添加されたときのジェリー混和物の稠度の変動量が小さ
く、−４０℃〜＋９０℃程度の広い温度範囲における稠
度の変動量が小さく、かつ熱劣化が生じることを防止で
きる。ここで高温における温度の変動が小さいのは、非
対称ヒンダードフェノール基を有する酸化防止剤が部分
的に融解してジェリー混和物中に溶け出し全体の稠度を
変化させることと、従来の酸化防止剤である上記構造式
（Ｉ）で示されるペンタエリスリチル−テトラキス〔３
−（３，５−ジ−ターシャリブチル−４−ヒドロキシフ
ェニール）プロピオネート〕に比べて融点が約３０℃程
度高いためである。

【００１５】

【実施例】

（実施例１）４１５ＤＰＬ（商品名；シンコファックス
社製）に、非対称ヒンダードフェノール基を有する酸化
防止剤としてサイアノックス１７９０（商品名；アメリ
カンサイアナミド社製）を１００ｐｐｍ添加してジェリ
ー混和物を得た。 （実施例２）サイアノックス１７９０（商品名；アメリ
カンサイアナミド社製）の添加量を１０００ｐｐｍとし
た以外は実施例１と同様にしてジェリー混和物を得た。 （実施例３）サイアノックス１７９０（商品名；アメリ
カンサイアナミド社製）の添加量を１００００ｐｐｍと
した以外は実施例１と同様にしてジェリー混和物を得
た。

【００１６】（比較例１） ４１５ＤＰＬ（商品名；シ
ンコファックス社製）のみからなるものをジェリー混和
物とした。 （比較例２） ４１５ＤＰＬ（商品名；シンコファック
ス社製）にイルガノックス１０１０（商品名；チバガイ
ギー社製）を添加して得られる４１５ＤＰＬＮ（商品
名；長瀬産業株式会社製）からなるものをジェリー混和
物とした。

【００１７】（比較例３） ４１５ＤＰＬ（商品名；シ
ンコファックス社製）にイルガノックス１０１０（商品
名；チバガイギー社製）を１００ｐｐｍ添加してジェリ
ー混和物を得た。 （比較例４）イルガノックス１０１０（商品名；チバガ
イギー社製）の添加量を１０００ｐｐｍとした以外は比
較例３と同様にしてジェリー混和物を得た。 （比較例５）イルガノックス１０１０（商品名；チバガ
イギー社製）の添加量を１００００ｐｐｍとした以外は
比較例３と同様にしてジェリー混和物を得た。

【００１８】実施例１〜３および比較例１〜５におい
て、予め４１５ＤＰＬ（商品名；シンコファックス社
製）の元の稠度をＪＩＳ Ｋ２２２０に規定される貯蔵
稠度測定法に準じて測定した。その結果、稠度は４１５
ｍｍであった。また、上記実施例１〜３および比較例２
〜５において、４１５ＤＰＬ（商品名；シンコファック
ス社製）に酸化防止剤を配合したときの稠度の変動量を
調べた。その結果を下記表１に示す。ここでの稠度の測
定も、ＪＩＳ Ｋ２２２０に規定される貯蔵稠度測定法
に準じて行った。

【００１９】そして、実施例１〜３および比較例１〜５
のジェリー混和物を雰囲気温度＋９０℃中に２４時間放
置した時と雰囲気温度−４０℃中に２４時間放置した時
の状態と稠度について評価した。その結果を下記表１に
示す。ここでの稠度の測定も、ＪＩＳ Ｋ２２２０に規
定される貯蔵稠度測定法に準じて行った。

【００２０】また、実施例１〜３および比較例１〜５の
ジェリー混和物の酸化誘導期間（O.I.T.）を測定した。
酸化誘導期間の測定は、示差走査熱量計としてDIFFEREN
TIALSCANNING CALORIMETER（島津製作所株式会社製、型
式ＤＴ−３０）を用い、上記実施例１〜３および比較例
１〜５のジェリー混和物をそれぞれ窒素雰囲気下で２１
０℃まで昇温し、酸素（１００％）に置換してから発熱
反応するまでの時間を測定した。

【００２１】

【表１】

【００２２】表１中、＋９０℃または−４０℃中に２４
時間放置したときのジェリー混和物の状態の評価基準
は、次の通りである。 ◎・・・・・・透明でほとんど元の状態と変化なし。 ○・・・・・・やや白濁しているが着色はない。 △・・・・・・かなり白濁しているが着色はない。 ×・・・・・・褐色に変色し、ジェリー本体と油分とに分離。

【００２３】また、＋９０℃または−４０℃中に２４時
間放置したのち室温に戻した時のジェリー混和物の稠度
の評価基準は、次の通りである。 ◎ ・・・・・・４００〜４２５ｍｍの適性範囲内。 × ・・・・・・４２６ｍｍ以上。 ××・・・・・・４００ｍｍ以下。

【００２４】また、稠度変動量の評価基準は、次の通り
である。 ◎ ・・・・・・変動量が０ｍｍ以上〜１０ｍｍ未満。 × ・・・・・・変動量が１０〜５０ｍｍ。 ××・・・・・・変動量が５０ｍｍ以上。

【００２５】上記表１に示した結果から明らかなよう
に、比較例２〜５においては、酸化防止剤を配合した時
の稠度の変動量が多く、また、比較例１〜５で得られた
ジェリー混和物は高温および／または低温における稠度
の変動量が大きい。これに比べて、実施例１〜３におい
ては、酸化防止剤を配合した時の稠度の変動量が小さ
く、実施例１〜３で得られたジェリー混和物は、高温に
おいて分離したりすることがなく、高温および低温にお
ける稠度の変動量が少ない。また、比較例３で得られた
ジェリー混和物と実施例１で得られたジェリー混和物を
比較すると、添加量が同量であっても、用いた酸化防止
剤が異なるため、酸化誘導期間が格段に異なることが分
る。また、実施例２〜３のジェリー混和物は、酸化防止
剤の添加量を１０００ｐｐｍ以上とすることで、実施例
１のジェリー混和物よりも酸化誘導期間も長く、高温に
おける変色も生じておらず、耐熱性が優れていることが
分る。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように本発明の光ファイバ
ケーブル用ジェリー混和物は、酸化防止剤として非対称
ヒンダードフェノール基を有するものを用いたことによ
り、酸化防止剤が添加されたときのジェリー混和物の稠
度の変動量が小さく、−４０℃〜＋９０℃程度の広い温
度範囲における稠度の変動量が小さく、かつ熱劣化が生
じることがない。

【００２７】従って、本発明の光ファイバケーブル用ジ
ェリー混和物を光ファイバケーブルのチューブ内に充填
しておくと、低温においても該ジェリー混和物の稠度が
適正な範囲に維持されているので、ケーブルが屈曲され
るなどの物理変化を受けた場合に、各テープ心線がチュ
ーブ内面からの側圧を受けても、各テープ心線はチュー
ブ内を動くことによって側圧を回避でき、光伝送特性の
劣化や光ファイバの断線が生じることを防止できる。ま
た、高温においても該ジェリー混和物から油分が分離す
ることがなく、この油分に起因する光伝送特性の劣化が
生じることを防止でき、さらに、該ジェリー混和物が固
くなりすぎることがなく、光ファイバの断線が生じるこ
とも防止できるという利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 光ファイバケーブルの例を示す断面図であ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 一成 千葉県佐倉市城内町109−２ タザマハイ ツ102

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非対称ヒンダードフェノール基を有する
   酸化防止剤を添加してなる光ファイバケーブル用ジェリ
   ー混和物。
2. 【請求項２】 非対称ヒンダードフェノール基を有する
   酸化防止剤の添加量が１０００ｐｐｍ以上であることを
   特徴とする請求項１記載の光ファイバケーブル用ジェリ
   ー混和物。