JPH07188874A - 高剛性鉄基合金およびその製造方法 - Google Patents

高剛性鉄基合金およびその製造方法

Info

Publication number
JPH07188874A
JPH07188874A JP5354467A JP35446793A JPH07188874A JP H07188874 A JPH07188874 A JP H07188874A JP 5354467 A JP5354467 A JP 5354467A JP 35446793 A JP35446793 A JP 35446793A JP H07188874 A JPH07188874 A JP H07188874A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
iron
powder
boride
rigidity
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP5354467A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3314505B2 (ja
Inventor
Taku Saito
卓 斎藤
Koji Tanaka
浩司 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP35446793A priority Critical patent/JP3314505B2/ja
Priority to DE69434357T priority patent/DE69434357T2/de
Priority to EP94120574A priority patent/EP0659894B1/en
Publication of JPH07188874A publication Critical patent/JPH07188874A/ja
Priority to US08/785,087 priority patent/US5854434A/en
Application granted granted Critical
Publication of JP3314505B2 publication Critical patent/JP3314505B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 高ヤング率を有し、構造用高剛性金属材料と
して有用な高剛性鉄基合金、および該鉄基合金を得るた
めの部品製造上実用的な高剛性鉄基合金の製造方法を提
供する。 【構成】 鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該
マトリックス中に分散させた4A族元素を主体とする硼
化物の少なくとも一種以上とからなる高剛性鉄基合金、
およびその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高剛性鉄基合金および
その製造方法に関し、さらに詳しくは、高ヤング率を有
し、構造用高剛性金属材料として有用な鉄基合金および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、構造用金属材料として、鋼または
鉄合金がもっとも広く利用されている。これら金属材料
は、合金元素添加や熱処理によって極めて多様な組織変
化を示し、強度および靱延性などの機械的性質を幅広く
制御することが可能である。しかし、実部品の設計にお
いて重要となる剛性は、原子間の結合力に直接関与した
物質固有の値であるため、剛性を大幅に向上させること
は困難であると考えられてきた。
【0003】これら鋼および鉄合金の高剛性化に関する
研究例は、あまり多く見られない。そのうちの一つとし
て、鋼および鉄合金の集合組織を利用し、特定方向のみ
のヤング率を向上させる方法が、古くから提案されてい
る(例えば、 J. L. Lyttonof Applied Physics, 35-8
(1964), 2397.)。しかし、この方法は薄板への適用の
みに限定され、バルク材へ適用できる実用技術ではない
という問題を有している。
【0004】一方、マグネシウム合金やアルミニウム合
金、チタン合金等の近年注目されている軽量金属をマト
リックスとする複合材料では、強化繊維や粒子を複合化
させることによって高強度化または高剛性化が図られて
おり、実用レベルでの研究開発が進んでいる。すなわ
ち、上記軽量金属をマトリックスとする複合材料におい
ては、高ヤング率粒子の分散によってバルク材の高剛性
化を実現している。
【0005】しかしながら、鋼または鉄合金において
は、上記軽量合金の高剛性化の考え方を適用することは
は困難である。なぜなら、鉄合金中において熱力学的に
安定な強化粒子は、一部の炭化物や窒化物に限られてお
り、このような物質の粒子の分散では、大幅なヤング率
の向上は望めないからである。例えば、従来鋼(特に工
具鋼など)では、モリブデン系、バナジウム系、クロム
系、タングステン系等の各種炭化物粒子を析出させるこ
とにより、主に耐摩耗性を強化している。しかし、これ
ら炭化物は、何れも化学式MC、M3C、M6C、M7
C3、M23C6等で表される、鉄合金中で熱力学的に
安定な炭化物であるが、鉄合金中では多量の鉄を固溶す
ることにより、高剛性化に寄与するほどの高ヤング率を
有さなくなってしまう。
【0006】ところで、各種化合物粒子のうち、遷移金
属元素の硼化物には、比較的高ヤング率のものが多い。
しかし、これら硼化物の鉄合金中における熱力学的安定
性は、十分に解明されていないのが現状であり、複合化
・分散させたときの高剛性化の効果についてもほとんど
知られていない。
【0007】上記のように、鉄合金において、高剛性化
を意図して硼化物等の化合物粒子を分散させた研究開発
例は数少ないが、ミオドウニク等は、クロム系およびモ
リブデン系硼化物を分散させた高剛性鉄基合金を報告し
ている(N.J.Saunders, L.M.Pan, K.Clay, C.Small and
A.P.Miodownik; In User Aspects of Phase Diagrams,
Inst. Materials, UK, (1991), 64.)。これは、急冷凝
固アモルファス箔を原料とし、熱間押し出し+熱処理に
よって上記鉄基合金を得るもので、25,000 kgf/mm2前後
のヤング率が示されている。
【0008】また、高剛性化のために化合物粒子を分散
させた他の例として、20 vol%以下の高ヤング率粒子
をFe基金属マトリックスに分散させた「高剛性材料お
よびその製造方法」(特開平5−239504号公報)が提案
されている。この材料は、一般的な高ヤング率粒子をメ
カニカルアロイング法により分散させることにより、ヤ
ング率22,500 kgf/mm2以上、衝撃値8kgf-m/cm2 以上の
高剛性かつ靱延性を備えた粒子分散鉄基合金材料が得ら
れるとしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ミオドウニク
等により提案された高剛性鉄基合金における硼化物は、
鉄合金マトリックスとの反応により形成された鉄−クロ
ム−モリブデン系複硼化物であり、該複硼化物のヤング
率は、単純組成のクロム硼化物およびモリブデン硼化物
に対して大幅に劣る。また、その製造方法において原料
となるアモルファス箔は、高濃度の硼素を強制的に固溶
させるため特殊な作製手法を必要とし、既設の設備を用
いて容易に製造することができないという問題を有して
いる。
【0010】また、特開平5−239504号公報に記載され
た高剛性材料は、共有結合性結晶構造を有する炭化物、
硼化物、窒化物等多様な化合物粒子について開示してい
るが、これら粒子の鉄合金中における熱力学的安定性に
ついては、全く開示されていない。一般に、遷移金属元
素の炭化物、窒化物は、それ自体高ヤング率でありなが
ら、鉄合金マトリックス中においては、遷移金属原子と
マトリックスの鉄原子とが置換することによって、ヤン
グ率が著しく低下する。従って、特開平5−239504号公
報の実施例に開示されたヤング率のような配合則通りの
高剛性化は達成されない。また、これら粒子が例え安定
に存在したとしても、配合則に一致することは通常あり
得ず、Materials Science and Technology vol. 8, (19
92), 922. にも理論的に述べられているように、強度特
性は粒子の体積率に対して配合則を下回る曲線にそって
変化するのが妥当である。
【0011】なお、前記ミオドウニク等によって提案さ
れた鉄基合金、および前記特開平5−239504号公報に記
載の高剛性材料において、高ヤング率粒子の分散により
高剛性化を図るという考え方は、前述のように複合材料
における高剛性化として既に公知の概念である。
【0012】そこで、本発明者らは、上述のごとき従来
技術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実
験を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。
【0013】(発明の目的)本発明の目的は、高ヤング
率を有し、構造用高剛性金属材料として有用な高剛性鉄
基合金、および該鉄基合金を得るための部品製造上実用
的な高剛性鉄基合金の製造方法を提供するにある。
【0014】本発明者らは、上述の従来技術の問題に対
して、以下のことに着眼した。すなわち、高ヤング率粒
子の分散により高剛性化を図ることに加え、上記従来の
強化粒子分散型鉄基合金において問題であった,マトリ
ックス中での該粒子の熱力学的安定性を向上させること
に着眼した。即ち、如何に高ヤング率を有する粒子であ
っても、マトリックスとの反応により金属原子の一部が
鉄原子と置換したり、他の複合化合物が形成されること
によってその特性が低下する場合には、期待される十分
な高剛性化効果が得られないことから、これらのことを
考慮して、これまでとは異なった新しい強化粒子分散型
高剛性鉄基合金の材料設計を行った。
【0015】その結果、ヤング率が高く,複合化・分散
による高剛性化の効果が大きい各種化合物粒子のうち、
4A族元素を主体とする硼化物が、鉄合金マトリックス
中で熱力学的に安定に存在できることを見い出した。そ
こで、これらを分散させた高剛性鉄基合金について、硼
化物やマトリックス組成を最適化するため、金属組織学
的研究を重ね、本発明の高剛性鉄基合金を成すに至っ
た。また、該高剛性鉄基合金のバルク材を得るための工
程においては、特殊な手法を用いない従来より周知の製
造技術によって安価に提供することを重視し、該鉄基合
金が部品化に直結する実用金属材料として有用な材料と
なるように留意した。これにより、本発明の高剛性鉄基
合金の製造方法を成すに至った。
【0016】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)本発明の高剛性鉄基合金は、鉄また
は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に
分散させた4A族元素を主体とする硼化物の少なくとも
一種以上とからなることを特徴とする。
【0017】(第2発明の構成)本発明の高剛性鉄基合
金の製造方法は、鉄粉末または鉄合金粉末と,4A族元
素を主体とする硼化物の少なくとも一種以上からなる硼
化物粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末とする原
料粉末混合工程と、該混合粉末を所定形状に成形して成
形体とする成形工程と、該成形体を焼結して焼結体とす
る焼結工程とからなり、鉄粉末または鉄合金粉末からな
るマトリックス中に,4A族元素を主体とする硼化物の
少なくとも一種以上を分散させたことを特徴とする。
【0018】(第3発明の構成)本発明の高剛性鉄基合
金の製造方法は、鉄粉末または鉄合金粉末と,フェロボ
ロン粉末と,4A族元素の少なくとも一種以上を含むフ
ェロアロイ粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末と
する原料粉末混合工程と、該混合粉末を所定形状に成形
して成形体とする成形工程と、該成形体を焼結して焼結
体とする焼結工程とからなり、鉄粉末または鉄合金粉末
からなるマトリックス中に,4A族元素を主体とする硼
化物の少なくとも一種以上をフェロボロンとフェロアロ
イとの反応により生成・分散させたことを特徴とする。
【0019】
【作用】本発明の鉄基合金およびその製造方法により、
優れた特性を有する高剛性鉄基合金が何故得られるかに
ついては、そのメカニズムが未だ必ずしも明らかではな
いが、次のように考えられる。
【0020】(第1発明の作用)本発明の高剛性鉄基合
金は、鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マト
リックス中に分散させた4A族元素を主体とする硼化物
の少なくとも一種以上とからなる。該高剛性鉄基合金に
おいて、マトリックス中に分散した4A族元素を主体と
する硼化物は、規則的な結晶構造を成し、構成原子が強
固に結合した化合物であるため、その結合力が直接反映
されるヤング率は極めて高いものとなっている。また、
本発明の前記硼化物は、鉄合金中で熱力学的に安定であ
るので、異種原子の侵入・置換、あるいは他の複合化合
物の形成など、前記硼化物とマトリックスとの反応に起
因する結晶学的な変化を起こすことがない。この結果、
本発明における4A族元素を主体とする硼化物は、鉄合
金中でも強固な結合力を維持し、高ヤング率のまま変化
しないため、鉄基合金の高剛性化に寄与する強化粒子と
して、その優れた特性を十分に発揮することができる。
これより、本発明の鉄基合金は、極めて高いヤング率を
有するものと考えられる。
【0021】(第2発明の作用)本発明の高剛性鉄基合
金の製造方法は、先ず、鉄粉末または鉄合金粉末と、4
A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以上から
なる硼化物粉末とをそれぞれ準備し、これらの原料粉末
を混合して混合粉末とする(原料粉末混合工程)。本工
程においては、周知の粉末混合方法を採用することがで
きるため、なんら特殊な手段あるいは前処理を実施する
ことなく、各原料粉末の均一な混合粉末を得ることがで
きる。
【0022】次に、前記原料粉末混合工程により得られ
た混合粉末を所定形状に成形して成形体とする(成形工
程)。上記混合粉末は、圧縮性に富む鉄粉末または鉄合
金粉末をベースとしているので、成形は周知の金属粉末
成形手法を利用し、それぞれの通常圧力で実施すること
により、取扱いに十分な強度を持った所望の形状の成形
体を容易に得ることができる。
【0023】次いで、前記成形工程により得られた成形
体を加熱して焼結する(焼結工程)。上記成形体は、焼
結性の良好な鉄粉末または鉄合金粉末をベースとしてい
るため、焼結は真空または保護性雰囲気の炉内で通常の
温度・時間内にて実施することができる。高温の焼結温
度域において、鉄相と4A族元素を主体とする硼化物相
とが熱力学的に平衡するため、焼結中も該硼化物は均一
分散した状態のまま安定に存在する。従って、本工程に
より、意図する組織を有した焼結体が得られ、所望の形
状のバルク材とすることができる。これより、鉄粉末ま
たは鉄合金粉末からなるマトリックス中に,4A族元素
を主体とする硼化物の少なくとも一種以上を分散させた
高剛性鉄基合金を容易に得ることができるものと考えら
れる。また、本製造方法は、通常の粉末冶金技術に沿っ
た製造方法であり、入手の容易な原料粉末と既設の設備
を用いることができるので、高剛性鉄基合金を安価に製
造することができる。
【0024】(第3発明の作用)本発明の高剛性鉄基合
金の製造方法は、先ず、鉄粉末または鉄合金粉末と、フ
ェロボロン粉末と、4A族元素の少なくとも一種以上を
含むフェロアロイ粉末とをそれぞれ準備し、これらの原
料粉末を混合して混合粉末とする(原料粉末混合工
程)。本工程においては、周知の粉末混合方法を採用す
ることができるため、なんら特殊な手段あるいは前処理
を実施することなく、各原料粉末の均一な混合粉末を得
ることができる。
【0025】次に、前記原料粉末混合工程により得られ
た混合粉末を所定形状に成形して成形体とする(成形工
程)。上記混合粉末は、圧縮性に富む鉄粉末または鉄合
金粉末をベースとしているので、成形は周知の金属粉末
成形手法を利用し、それぞれの通常圧力で実施すること
により、取扱いに十分な強度を持った所望の形状の成形
体を容易に得ることができる。
【0026】次いで、前記成形工程により得られた成形
体を加熱して焼結する(焼結工程)。上記成形体は、焼
結性の良好な鉄粉末または鉄合金粉末をベースとしてい
るため、焼結は真空または保護性雰囲気の炉内で通常の
温度・時間内にて実施することができる。このとき、フ
ェロボロン粉末は、鉄系焼結体の緻密化を促進する。ま
た、高温の焼結温度域において、鉄相と4A族元素を主
体とする硼化物相とが熱力学的に平衡するため、焼結中
にフェロアロイ粉末とフェロボロン粉末との反応によっ
て、新たに4A族元素を主体とする硼化物が形成され、
該硼化物が均一に分散した状態のまま安定となる。従っ
て、本工程により、意図する組織を有した焼結体が得ら
れ、所望の形状ののバルク材とすることができる。これ
より、鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス中
に、4A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以
上をフェロボロンとフェロアロイとの反応により生成・
分散させた高剛性鉄基合金を容易に得ることができるも
のと考えられる。また、本製造方法は、前記第2発明の
製造方法よりも安価な原料粉末を使用することができ、
またフェロボロン添加により緻密化促進を図ることがで
きるので、高剛性鉄基合金をより安価に、より容易に製
造することができるものと考えられる。
【0027】
【発明の効果】
(第1発明の効果)本発明の鉄基合金は、極めて高いヤ
ング率を有する高剛性鉄基合金である。すなわち、鉄合
金マトリックス中に均一に分散させた4A族元素を主体
とする硼化物が、高ヤング率であるとともに、熱力学的
に安定であるため、強化粒子としての優れた特性が十分
発揮される。従って、同じ体積率の粒子を分散させた場
合でも、その高剛性化に及ぼす効果は従来の強化粒子分
散型鉄基合金に比べて大きい。
【0028】(第2発明の効果)本発明の製造方法によ
り、鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス中
に、4A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以
上を分散させた高剛性鉄基合金を容易に製造することが
できる。また、上記高剛性鉄基合金を安価に得ることが
できる。
【0029】(第3発明の効果)本発明の製造方法によ
り、鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス中
に、4A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以
上をフェロボロンとフェロアロイとの反応により生成・
分散させた高剛性鉄基合金を容易に製造することができ
る。また、上記高剛性鉄基合金をより安価に得ることが
できる。
【0030】
【実施例】先ず、上記第1発明の高剛性鉄基合金、第2
発明の高剛性鉄基合金の製造方法、および第3発明の高
剛性鉄基合金の製造方法について、さらに具体的にした
発明(その他の発明)について説明する。
【0031】(その他の発明の説明)
【0032】構造用金属材料において、高剛性化に対す
るニーズは高い。現在、各種構造部材・部品として圧倒
的な適用実績を占める鋼あるいは鉄合金は、実用金属材
料のうちで最も高い剛性を持ちながらも、さらに高い剛
性が求められている。例えば、自動車用部品において一
つには、燃費向上を目的とする軽量化の観点から、小型
/薄肉/細軸化部品を設計する際に必要な強度を確保す
るための高剛性化が挙げられる。実際、従来の鋼や鉄合
金部品の剛性を20%程度向上させるだけでも、その設
計自由度は大幅に拡大すると言われている。さらに、乗
り心地を重視する観点から、振動特性の改善に有効な高
剛性化が求められている。従来の鋼や鉄合金、あるいは
強化粒子分散型鉄基合金は、これらニーズを満足する高
剛性を有するものは無かったが、本発明の高剛性鉄基合
金は、これらニーズを満足させることができる。従っ
て、本発明の高剛性鉄基合金は、このような要求を課せ
られるような部品等に適用することができ、例えば、自
動車用エンジン部品、シャーシ部品、サスペンション部
品があり、その他、各種シャフト類や音響部品などへの
適用が可能である。
【0033】従来より、強化相を複合化・分散させるこ
とにより、強度、剛性、耐摩耗性の向上を図ることは、
複合材料において良く知られている概念である。しか
し、金属基複合材料の場合、マトリックスとの複合化工
程、あるいは固化してバルク材とする工程において、拡
散ならびに反応の容易な高温領域でのプロセスを必要と
する点に注意しなければならない。すなわち、製造時に
強化相とマトリックスとが反応して、互いに変質した
り、界面に脆弱な反応層が形成されるなどの変化が起こ
りやすく、これに伴ってその特性は通常劣化するため、
理想的な複合則から計算される理論値を大きく下回るこ
ととなる。これに対し、本発明者らは、4A族元素を主
体とする硼化物が、鉄合金中で安定に存在しうることを
見いだし、これにより、従来では考えられないほど高剛
性の鉄基合金を実現するに至った。
【0034】本発明にかかる硼化物は、4A族元素(チ
タン〔Ti〕、ジルコニウム〔Zr〕、ハフニウム〔H
f〕)を主体とする硼化物の一種以上である。該硼化物
は、単体としてのヤング率が少なくとも 25,000 kgf/mm
2 以上であれば、その分散により確かな高剛性化効果が
得られるが、中でも化学式MB2 (M:4A族元素)で
示される二硼化物はヤング率が特に高く、本発明の目的
にとって特に好ましい。また、これら硼化物は、単体と
して安定で比較的に入手し易いので、本発明の製造方法
の原料として用いるのに好適である。
【0035】本発明の高剛性鉄基合金においては、硼化
物が該合金中で粒径100μm以下の微粒子となって均
一に分散していることが好ましい。硼化物の粒径を10
0μm以下とすることにより、該鉄基合金全体に実用レ
ベルの機械的性質(強度、靱延性)を確保することがで
きる。なお、該粒径が20μm以下の場合は、より優れ
た機械的性質を有する合金を得ることができるので、よ
り好ましい。
【0036】また、硼化物の含有量は、5〜50体積%
であることが好ましい。該含有量を上記範囲内とするこ
とにより、十分な高剛性効果を発揮させることができ
る。なお、該含有量が5体積%未満の場合は十分な高剛
性化効果が得られず、また50体積%を超えると硼化物
どうしの凝集や合体が生じ、鉄基合金の機械的性質が著
しく低下する虞がある。
【0037】また、本発明の高剛性鉄基合金のマトリッ
クスを構成する鉄合金としては、フェライト系、オース
テナイト系、マルテンサイト系など、広範囲なものが使
用可能であるが、炭素含有量が0.1重量%以下のもので
あることが好適である。該マトリックス中の炭素含有量
を0.1重量%以下とすることにより、マトリックス中に
分散させた4A族元素を主体とする硼化物の鉄合金中に
おける熱力学的安定性をより向上させ、高温において
も、硼化物中の4A族元素と含有炭素とが優先的に反応
して炭化物や炭硼化物を形成することが無く、より優れ
た高剛性化効果を実現することができる。
【0038】次に、上記高剛性鉄基合金の製造方法につ
いて述べる。先ず、該合金の製造方法の一つとして、鉄
粉末または鉄合金粉末と,4A族元素を主体とする硼化
物の少なくとも一種以上からなる硼化物粉末とを含む原
料粉末を混合して混合粉末とし(原料粉末混合工程)、
次に該混合粉末を所定形状に成形して成形体とし(成形
工程)、次いで該成形体を焼結して焼結体とし(焼結工
程)、これにより鉄粉末または鉄合金粉末からなるマト
リックス中に4A族元素を主体とする硼化物の少なくと
も一種以上を分散させた高剛性鉄基合金を得ることがで
きる(第1の製造方法)。
【0039】上記原料粉末混合工程において用いる鉄粉
末または鉄合金粉末の原料は、市販のもの、あるいは公
知の方法により作製されたものなど、何れを使用しても
よい。例えば、アトマイズ法等により製造された市販の
純鉄粉、ステンレス粉などの安価な粉末を、入手のまま
使用することができる。なお、該粉末の粒径は、市販の
ものはおよそ150μm(−♯100)以下に調整した
ものが多いが、45μm(−♯330)以下の場合は焼
結体の緻密化および硼化物粒子の均一な分散を容易にす
るので好ましい。しかし、極端に細かい微粉の場合は、
取扱いが難しく、成形工程を著しく困難にするので好ま
しくない。また、4A族元素を主体とする硼化物粉末
は、市販のもの、公知の方法により作製されたものな
ど、何れを使用してもよい。なお、該硼化物粉末は数μ
m程度のものを用いるのが好ましく、それより大きな粉
末のものを入手した場合には、ボールミル、振動ミル、
アトライタなどの各種の粉砕機で所望の粒度まで粉砕・
調整して用いることが好ましい。
【0040】上記混合工程において、混合方法は特に制
約されるものでは無く、V型混合機、ボールミル、振動
ミルなどを用いることができる。但し、硼化物粒子が二
次粒子などの凝集の著しい粉末である場合には、アトラ
イタなどの高エネルギーボールミルにて不活性ガス雰囲
気中で破砕処理することが、該粒子の微細均一分散に対
して効果的であるので好適である。
【0041】上記成形工程において、成形方法としては
所望の形状を得ることができる方法であればどの様な方
法でもよく、金型成形、CIP成形などの何れの方法を
用いてもよい。なお、成形圧力は、2 ton/cm2以上の場
合には、得られた成形体を焼結したときの緻密化が十分
となるので好適である。
【0042】上記焼結工程において、雰囲気は、真空
中、不活性ガス、還元性ガス雰囲気であることが好まし
い。また、焼結は、1000℃〜1200℃の温度範囲
で、1〜4時間程度行うことが好ましい。1000℃未
満および0.5時間未満の焼結では、焼結体密度が十分に
向上しないため、好ましくない。また、4時間を超える
焼結を行っても、さらなる緻密化が期待できないうえ
に、エネルギ的にも不経済である。また、1200℃を
超える温度での焼結は、硼化物によっては多量の液相を
生じ、焼結体形状を維持できなくなるので好ましくな
い。
【0043】次に、上記高剛性鉄基合金の他の製造方法
について述べる。すなわち、先ず、鉄粉末または鉄合金
粉末と,フェロボロン粉末と,4A族元素の少なくとも
一種以上を含むフェロアロイ粉末とを含む原料粉末を混
合して混合粉末とし(原料粉末混合工程)、次に該混合
粉末を所定形状に成形して成形体とし(成形工程)、次
いで該成形体を焼結して焼結体とし(焼結工程)、これ
により、鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス
中に,4A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種
以上をフェロボロンとフェロアロイとの反応により生成
・分散させた高剛性鉄基合金を得ることができる(第2
の製造方法)。
【0044】上記原料粉末混合工程において用いる鉄粉
末または鉄合金粉末の原料は、前記高剛性鉄基合金の製
造方法の説明における鉄粉末および鉄合金粉末と同様の
ものを用いることができ、市販のもの、あるいは公知の
方法により作製されたものなど、何れを使用してもよ
く、例えば、市販の純鉄粉、ステンレス粉などの安価な
粉末を入手のまま使用することができる。次に、フェロ
ボロン粉末、および4A族元素を含むフェロアロイ粉末
は、市販のもの、公知の方法により作製されたものな
ど、何れを使用してもよい。これらは、種々の組成のイ
ンゴットから粉砕して市販されているが、何れもそれぞ
れの金属間化合物組成に近いものであることが好まし
い。このような組成の粉末を用いれば、ボールミル、振
動ミル、アトライタなどの各種粉砕機を用いて、容易に
粒度調整を行うことができる。
【0045】また、混合工程、成形工程、焼結工程は、
前記高剛性鉄基合金の製造方法の説明におけるそれぞれ
の工程と同様である。なお、混合工程において、フェロ
ボロン粉末とフェロアロイ粉末の配合比は、両者の反応
によって形成される硼化物の体積率を各組成から計算し
て決定する必要がある。また、焼結工程において、フェ
ロボロンによる焼結時の緻密化促進効果のため、焼結工
程はよりゆるやかな条件で実施することも可能である。
【0046】なお、前記高剛性鉄基合金の製造方法の第
1の製造方法および第2の製造方法において、焼結工程
の後に、熱間加工を施してなることが好ましい。すなわ
ち、前記第1の製造方法および第2の製造方法におい
て、焼結工程のみでは緻密化が不十分な場合、またはさ
らに十分な緻密化が必要な場合には、焼結体に種々の熱
間加工を施すことにより、容易に真密度にまで緻密化す
ることができる。熱間加工法としては、熱間鍛造、押し
出し、スエージ等が用いられる。加工温度は、900℃
〜1200℃の範囲で行うことが好ましい。900℃未
満での加工では変形抵抗が大きく、1200℃を超える
場合には液相を生ずる可能性があるため、好ましくな
い。また、熱間加工を行わず、HIP処理により緻密化
することができる。この場合の条件は、雰囲気ガスとの
反応性、緻密化挙動、経済性などを考慮して適宜処理条
件を設定するが、900℃〜1200℃、500〜20
00気圧、1〜10時間の範囲内で行うことが好まし
い。
【0047】以下に、本発明の実施例を説明する。
【0048】(第1実施例)原料粉末として、市販の S
US430 ステンレス鋼粉末(−♯ 330)およびチタン二硼
化物粉末(平均粒径:4μm)を用意した。次に、 SUS
430 ステンレス鋼粉末とチタン二硼化物粉末を表1に示
す割合で配合した粉末を、アルゴン雰囲気のアトライタ
中にて10分間混合した。この混合粉末を、直径12.7
mm、高さ12mmの円柱状に圧力4ton/mm2 で金型成形
し、次いでこの成形体を1×10-5torrの雰囲気の真空
炉にて1時間焼結した。さらに、焼結体の緻密化を促進
するため、熱間加工再現装置により、1×10-5torrの
真空中で、1150℃にて加工速度0.05mm/s、圧下率
75%まで圧縮加工した。この結果、直径約25mmの円
盤状の試験片を得た(試料番号:1〜3)。
【0049】
【表1】
【0050】得られた鉄基合金焼結体の金属組織を示す
顕微鏡写真図(倍率:600倍)を、図1(試料番号:
2)に示す。図1より明らかの如く、その組織は、SUS4
30ステンレスのフェライト相マトリックス中に、直径1
μm〜数μmの微細な硼化物粒子が均一に分散した組織
となっていることが分かる。また、該硼化物粒子の体積
率を測定した結果を、表1に併せて示す。また、これら
硼化物粒子中の各元素濃度を、EPMAにより局所分析
を行った結果、鉄:1.0、クロム:0.2、チタン:6
9.0、硼素:29.7(重量%)であった。この結果から
明らかなように、該硼化物粒子は、マトリックスの構成
元素である鉄およびクロムをほとんど含まず、X線回折
からもチタン二硼化物であることが確かめられた。以上
より、原料粉末に配合したチタン二硼化物は、鉄合金中
で熱力学的に安定で、高温での焼結および熱間加工を伴
う本実施例の上記製造方法によっても、結晶構造変化お
よび大幅な組成変化が起こっていないことが分かる。
【0051】また、得られた鉄基合金のヤング率を測定
した。まず、試験片として1mm×2mm×11.2mmの角柱
を切り出し、水晶振動子を用いた複合振動子法により、
ヤング率をそれぞれ測定した。その結果を、表1に併せ
て示す。表1より明らかなごとく、試料番号1〜試料番
号3のチタン二硼化物を分散させた鉄基合金は、ヤング
率は硼化物粒子の体積率増加に伴い向上し、約30体積%
でおよそ29,000kgf/mm2 に達することが分かる。これ
は、従来の鉄合金に比較して4割以上の向上率である。
なお、チタン二硼化物の密度は、鉄合金よりはるかに小
さく、これらが分散してなる鉄基合金の密度は、その体
積率増加とともに低下するため、比ヤング率ではさらに
大きな6割以上の向上率が達成されている。これは、該
硼化物を分散させた高剛性鉄基合金を用いれば、小型化
/薄肉化による軽量化とともに、比重低下によって一層
の軽量化が達成されることを意味している。
【0052】(第2実施例)原料粉末として、市販の S
US430 ステンレス鋼粉末(−♯ 330)、チタン二硼化物
粉末(平均粒径:4μm)、およびグラファイト粉末を
用意した。次に、 SUS430 ステンレス鋼粉末とチタン二
硼化物粉末とグラファイト粉末とを表1に示す割合で配
合した粉末を、前記第1実施例と同様に混合、成形、焼
結、熱間圧縮加工を施して、直径約25mmの円盤状の鉄
基合金焼結体試験片を得た(試料番号:4)。得られた
鉄基合金焼結体のヤング率を、第1実施例と同様に測定
した。その結果を、表1に併せて示す。表1より明らか
のごとく、試料番号4の鉄基合金焼結体は、従来の鉄合
金に比較して約2割向上している。しかし、第1実施例
の試料番号2と同じ比率でチタン二硼化物が配合されて
いながら、炭素の存在によりヤング率は約7.3%低下し
ていることが分かる。
【0053】(比較例1)原料粉末として市販の SUS43
0 ステンレス鋼粉末(−♯ 330)のみを用いた他は、前
記第1実施例と同様にして混合、成形、焼結、熱間圧縮
加工を施して、直径約25mmの円盤状の比較用鉄基合金
焼結体試験片を得た(試料番号:C1)。得られた比較
用鉄基合金焼結体のヤング率を、第1実施例と同様に測
定した結果を、表1に併せて示す。表1より明らかのご
とく、試料番号C1の比較用鉄基合金焼結体のヤング率
は20,250kgf/mm2 と低いヤング率であることが分かる。
【0054】(比較例2)原料粉末として、市販の SUS
430 ステンレス鋼粉末(−♯ 330)およびモリブデン硼
化物粉末(平均粒径:1.7μm)を用意した。次に、 S
US430 ステンレス鋼粉末とモリブデン硼化物粉末を表1
に示す割合で配合した粉末を、前記第1実施例と同様に
混合、成形、焼結、熱間圧縮加工を施して、直径約25
mmの円盤状の比較用鉄基合金焼結体試験片を得た(試料
番号:C2)。得られた比較用焼結体の金属組織を示す
顕微鏡写真図(倍率:600倍)を、図2に示す。図2
より明らかの如く、その組織は、SUS430ステンレスのフ
ェライト相マトリックス中に、直径数μmの硼化物粒子
が分散した組織となっている。また、該硼化物粒子の体
積率を測定した結果を、表1に併せて示す。また、これ
ら硼化物粒子中の各元素濃度を、EPMAにより局所分
析を行った結果、鉄:19.0、クロム:3.8、モリブデ
ン:69.3、硼素:8.2(重量%)であった。この結果
から明らかのように、該硼化物粒子は、マトリックスの
構成元素である鉄を多量に含み、また、クロムも数重量
%含んでいることが認められた。さらに、X線回折の結
果、化学式Mo2 (Fe,Cr)B2 で表される鉄−ク
ロム−モリブデン系複硼化物に変化していることが認め
られた。すなわち、原料粉末に配合したモリブデン硼化
物は、鉄合金中で熱力学的に安定でなく、本発明の効果
を奏しないことが分かった。また、得られた鉄基合金の
ヤング率を、第1実施例と同様に測定した。その結果
を、表1に併せて示す。試料番号C2のモリブデン硼化
物を分散させた鉄基合金は、試料番号C1に比べて硼化
物の分散によりヤング率が向上しているが、硼化物を2
6.2体積%含みながらもその値は24,580kgf/mm2 に止ま
っている。
【0055】(比較例3)原料粉末として、市販の SUS
430 ステンレス鋼粉末(−♯ 330)およびチタン炭化物
粉末(平均粒径:2μm)を用意した。次に、 SUS430
ステンレス鋼粉末とチタン炭化物粉末を表1に示す割合
で配合した粉末を、前記第1実施例と同様に混合、成
形、焼結、熱間圧縮加工を施して、直径約25mmの円盤
状の比較用鉄基合金焼結体試験片を得た(試料番号:C
3)。得られた比較用焼結体中の炭化物粒子の体積率を
測定した結果を、表1に併せて示す。また、これら炭化
物粒子中の各元素濃度を、EPMAにより局所分析を行
った結果、鉄:10.4、クロム:2.3、チタン:71.
3、炭素:16.0(重量%)であった。この結果から明
らかのように、該炭化物粒子は、マトリックスの構成元
素である鉄を多量に含み、またクロムも数重量%含んで
いることが認められた。この結果と、X線回折結果によ
り、該炭化物は、その主たる構成元素であるチタン原子
とマトリックスの鉄原子とが大幅に置換していることが
認められた。すなわち、原料粉末に配合したチタン炭化
物は、熱力学的に安定ではなく、本発明の効果を奏して
いないことが分かった。また、得られた鉄基合金のヤン
グ率を、第1実施例と同様に測定した。その結果を、表
1に併せて示す。試料番号C3のチタン炭化物を添加し
た鉄基合金は、炭化物の分散によりヤング率が向上して
いるが、炭化物を33.5体積%含みながらもその値は2
5,330kgf/mm2 に止まっている。
【0056】(ヤング率分析)前記第1実施例、第2実
施例、比較例2および比較例3により得られた鉄基合金
についてヤング率を測定した結果を、それぞれの硼化物
体積率に対して整理し、 Materials Science and Techn
ology vol.8, (1992), 922. に述べられている複合材料
のヤング率理論式によって計算した値と比較したもの
を、図3に示す。図3より明らかのごとく、チタン二硼
化物を分散させた鉄基合金は、計算値とほぼ一致したヤ
ング率を示しており、強化粒子としての優れた特性が十
分発揮された、理論通りの高剛性化効果が得られてい
る。一方、比較例2のモリブデン硼化物を分散させた鉄
基合金のヤング率は、計算値には大きく及ばないことが
分かる。これは、前記考察により明らかのように、鉄合
金中でモリブデン硼化物が鉄−クロム−モリブデン系複
硼化物へ変化することによって、そのヤング率が大幅に
低下し、十分な高剛性化効果が得られなかったことを示
している。また、比較例3の炭化物を分散させた鉄基合
金のヤング率は、やはり計算値に及ばないことが分か
る。これは、前記考察により明らかなように、鉄合金中
でチタン炭化物のチタン原子とマトリックスの鉄原子が
大幅に置換することによって、そのヤング率が低下し、
十分な高剛性化効果が得られなかったことを示してい
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において得られた鉄基合金
焼結体の金属組織を示す顕微鏡写真図(倍率:600
倍)である。
【図2】比較例2において得られた比較用鉄基合金焼結
体の金属組織を示す顕微鏡写真図(倍率:600倍)で
ある。
【図3】本発明の第1実施例、第2実施例、比較例2、
比較例3において得られた鉄基合金焼結体に関し、実測
値と理論式によるヤング率計算値とを比較した線図であ
る。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄または鉄合金からなるマトリックス
    と、該マトリックス中に分散させた4A族元素を主体と
    する硼化物の少なくとも一種以上とからなることを特徴
    とする高剛性鉄基合金。
  2. 【請求項2】 炭素含有量が0.1重量%以下であること
    を特徴とする請求項1記載の高剛性鉄基合金。
  3. 【請求項3】 マトリックス中の硼化物の含有量が、5
    〜50体積%であることを特徴とする請求項1記載の高
    剛性鉄基合金。
  4. 【請求項4】 鉄粉末または鉄合金粉末と,4A族元素
    を主体とする硼化物の少なくとも一種以上からなる硼化
    物粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末とする原料
    粉末混合工程と、 該混合粉末を所定形状に成形して成形体とする成形工程
    と、 該成形体を焼結して焼結体とする焼結工程とからなり、 鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス中に,4
    A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以上を分
    散させたことを特徴とする高剛性鉄基合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 鉄粉末または鉄合金粉末と,フェロボロ
    ン粉末と,4A族元素を少なくとも一種以上を含むフェ
    ロアロイ粉末とを含む原料粉末を混合して混合粉末とす
    る原料粉末混合工程と、 該混合粉末を所定形状に成形して成形体とする成形工程
    と、 該成形体を焼結して焼結体とする焼結工程とからなり、 鉄粉末または鉄合金粉末からなるマトリックス中に,4
    A族元素を主体とする硼化物の少なくとも一種以上をフ
    ェロボロンとフェロアロイとの反応により生成・分散さ
    せたことを特徴とする高剛性鉄基合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 焼結工程の後に、熱間加工を施してなる
    ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の高剛
    性鉄基合金の製造方法。
JP35446793A 1993-12-27 1993-12-27 高剛性鉄基合金およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3314505B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35446793A JP3314505B2 (ja) 1993-12-27 1993-12-27 高剛性鉄基合金およびその製造方法
DE69434357T DE69434357T2 (de) 1993-12-27 1994-12-23 Legierung auf Stahlbasis mit hohem Modul und Verfahren zu deren Herstellung
EP94120574A EP0659894B1 (en) 1993-12-27 1994-12-23 High-modulus iron-based alloy and a process for manufacturing the same
US08/785,087 US5854434A (en) 1993-12-27 1997-01-21 High-modulus iron-based alloy with a dispersed boride

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35446793A JP3314505B2 (ja) 1993-12-27 1993-12-27 高剛性鉄基合金およびその製造方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002038999A Division JP2002285303A (ja) 2002-02-15 2002-02-15 高剛性鉄基合金およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07188874A true JPH07188874A (ja) 1995-07-25
JP3314505B2 JP3314505B2 (ja) 2002-08-12

Family

ID=18437760

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35446793A Expired - Fee Related JP3314505B2 (ja) 1993-12-27 1993-12-27 高剛性鉄基合金およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3314505B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004218069A (ja) * 2002-12-26 2004-08-05 Aichi Steel Works Ltd 溶製法で製造可能な高剛性鋼及びその製造方法
JP2016102262A (ja) * 2014-11-14 2016-06-02 株式会社豊田中央研究所 高剛性鉄基焼結合金およびその製造方法
JP2020164916A (ja) * 2019-03-29 2020-10-08 新日本電工株式会社 造形用粉末、この粉末の製造方法及び造形品の製造方法
JP2021085051A (ja) * 2019-11-26 2021-06-03 山陽特殊製鋼株式会社 高剛性低熱膨張合金用の粉末

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004218069A (ja) * 2002-12-26 2004-08-05 Aichi Steel Works Ltd 溶製法で製造可能な高剛性鋼及びその製造方法
JP2016102262A (ja) * 2014-11-14 2016-06-02 株式会社豊田中央研究所 高剛性鉄基焼結合金およびその製造方法
JP2020164916A (ja) * 2019-03-29 2020-10-08 新日本電工株式会社 造形用粉末、この粉末の製造方法及び造形品の製造方法
JP2021085051A (ja) * 2019-11-26 2021-06-03 山陽特殊製鋼株式会社 高剛性低熱膨張合金用の粉末

Also Published As

Publication number Publication date
JP3314505B2 (ja) 2002-08-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3689009B2 (ja) 高耐食性高強度オーステナイト系ステンレス鋼とその製法
US20060127266A1 (en) Nano-crystal austenitic metal bulk material having high hardness, high strength and toughness, and method for production thereof
TW200914628A (en) Ultra-hard composite material and method for manufacturing the same
JPH0583624B2 (ja)
KR20190143164A (ko) 금속간화합물 강화된 고엔트로피 합금, 및 그 제조방법
US4797155A (en) Method for making metal matrix composites
JP3367269B2 (ja) アルミニウム合金およびその製造方法
US5854434A (en) High-modulus iron-based alloy with a dispersed boride
CN106834872A (zh) 一种高强韧高耐磨TiN钢结硬质合金的制备方法
CN114318039B (zh) 三峰晶粒结构金属基复合材料的元素合金化制备方法
CN1621184A (zh) 一种颗粒增强钛基复合材料的粉末冶金方法
JP3314505B2 (ja) 高剛性鉄基合金およびその製造方法
JPH055142A (ja) チタン基複合材料およびその製造方法
JP2000219924A (ja) TiC分散チタン合金複合材料の形成方法及びTiC分散チタン合金複合層の形成方法
CN106811655A (zh) 一种高强韧高耐磨vc钢结硬质合金的制备方法
JP3379203B2 (ja) 高剛性鉄基合金およびその製造方法
JPH0625386B2 (ja) アルミニウム合金粉末及びその焼結体の製造方法
JP3898387B2 (ja) 高剛性鋼
JP2004143596A (ja) 高硬度・高強度で強靱なナノ結晶金属バルク材及びその製造方法
CN106591674A (zh) 一种高强韧耐热TiN钢结硬质合金的制备方法
JP3837332B2 (ja) 耐摩耗性複合材料のインサイチュ粉末冶金製造方法
JP2002285303A (ja) 高剛性鉄基合金およびその製造方法
JP2000096193A (ja) 高強度高耐食性フェライト鋼の製造方法
Kumar et al. Physical and mechanical properties of powder-metallurgy-processed titanium alloys and composites: a comparative analysis
JPS62287041A (ja) 高合金鋼焼結材料の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080607

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090607

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090607

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100607

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees