JPH07188288A - ニンジン根部に特異的に発現しうる分子量16kDのタンパク質、その遺伝子およびその遺伝子を含有するプラスミド - Google Patents

ニンジン根部に特異的に発現しうる分子量16kDのタンパク質、その遺伝子およびその遺伝子を含有するプラスミド

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JPH07188288A
JPH07188288A JP5327943A JP32794393A JPH07188288A JP H07188288 A JPH07188288 A JP H07188288A JP 5327943 A JP5327943 A JP 5327943A JP 32794393 A JP32794393 A JP 32794393A JP H07188288 A JPH07188288 A JP H07188288A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 配列番号1のアミノ酸配列を有する分子量1
6kDのタンパク質、該タンパク質のアミノ酸配列をコ
ードする領域を含む遺伝子および該遺伝子を含有するプ
ラスミド。 【効果】 ニンジン根部において特異的に存在する本タ
ンパク質を高発現させることにより高タンパク質化ニン
ジンを育種することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ニンジン根部に特異的
に発現しうる分子量16kDのタンパク質、その遺伝子
およびその遺伝子を含有するプラスミドに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】植物体の地下部の組織について、芋等の
貯蔵組織における貯蔵タンパク質では、サツマイモ、ジ
ャガイモ等で存在が明かとなっているが、一方根部を食
用としている作物である根菜類、例えばニンジンでは、
この地下組織における貯蔵タンパク質の存在は明かとさ
れていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ニンジン根部は、植物
体の生長に従い、肥大する組織であり、その根部組織は
根菜として食用されている。しかしながら、ニンジン根
部にはごくわずかなタンパク質しか含まれていない。こ
のため、ニンジンにおいて日常生活に必要なエネルギー
と栄養素、特に健康維持に欠かせないタンパク質の含量
を高めることが望まれている。そこでニンジン根部にお
いて特異的に存在するタンパク質を高発現させることに
よって、高タンパク質化ニンジンを育種することをめざ
した。このために、あらかじめニンジン根部において特
異的に発現しうるタンパク質およびその遺伝子を明らか
にする必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような状況下で、本
発明者らは鋭意検討を行った結果、ニンジン根部におい
て特異的に発現しうる可溶性タンパク質を見い出し、該
タンパク質をコードするcDNAのクローニングに成功
した。そして該cDNAの塩基配列を解析することによ
って、該タンパク質のアミノ酸配列を決定し、本発明を
完成した。すなわち、本発明は、配列番号1で示される
アミノ酸配列を有する分子量16kDのタンパク質(以
下、本発明タンパク質と記す。)、該タンパク質のアミ
ノ酸配列をコードする領域を含む遺伝子(以下、本発明
遺伝子と記す。)および該遺伝子を含有するプラスミド
(以下、本発明プラスミドと記す。)を提供するもので
ある。
【0005】以下、さらに詳細に本発明を説明する。本
発明で用いられる“遺伝子”とは、たとえばゲノムDN
A、これに対応するmRNAおよびこれに対応するcD
NAを含めた、遺伝情報を有する対応するすべての核酸
を意味する。そして、本発明遺伝子には、配列番号2で
示される塩基配列以外の塩基配列である、配列番号1で
示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のアミノ酸配
列をコードする領域を含む遺伝子も含まれる。本発明タ
ンパク質は、たとえば「黒田五寸」、「アーリーチャン
テネー」、「インペレーター」、「ナンテススカレーレ
ット」等のニンジン(Daucus carotaL.) の多くの品種
に広く存在しており、しかもその根部に特異的に存在し
ている。分子量は16kD(アミノ酸配列に基づいた計
算値は16125.03)である。そして本発明タンパク質の配
列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、さらに、たと
えば配列番号2で示される塩基配列を有している。この
ような本発明タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺
伝子を利用することにより、たとえば高タンパク質化ニ
ンジンの育種を可能にし、また本遺伝子を他の根菜類作
物、たとえば、ダイコン、カブ、サトウダイコン、ゴボ
ウ等に導入し、発現させることによりタンパク質を増長
した品種改良を行なうこともできる。さらに、本発明タ
ンパク質をコードする塩基配列およびアミノ酸配列と相
同性の高い遺伝子およびアミノ酸配列を、EMBL、N
BRF等のデータベースで検索することにより、たとえ
ば、(1)病害抵抗性に関与するタンパク質の遺伝子お
よびアミノ酸配列と相同性が高い場合には、本発明タン
パク質のアミノ酸配列をコードする領域を含む遺伝子を
用いた通常の遺伝子工学的手法により、病害に抵抗性を
付与する品種改良や病害抵抗性機構の解明、(2)各種
植物ホルモンの変化に対応して発現、誘導されるタンパ
ク質の遺伝子およびアミノ酸配列と相同性が高い場合に
は、本発明タンパク質のアミノ酸配列をコードする領域
を含む遺伝子を用いた通常の遺伝子工学的手法により、
ストレス応答やホルモン応答を利用した種々の品種改
良、(3)花粉アレルギータンパク質の遺伝子およびア
ミノ酸配列と相同性が高い場合には、本発明タンパク質
のアミノ酸配列をコードする領域を含む遺伝子を用いた
通常の遺伝子工学的手法により、花粉の改良、発現量の
抑制等がなされた非アレルギー性の品種改良、(4)ヒ
ートショックタンパク質の遺伝子およびアミノ酸配列と
相同性が高い場合には、本発明タンパク質のアミノ酸配
列をコードする領域を含む遺伝子を用いた通常の遺伝子
工学的手法により、有用タンパク質のホールディングを
補助して保存性を向上させたり、有用タンパク質の輸送
を改良させる品種改良に有効に利用できる。
【0006】本発明タンパク質は、市販されているニン
ジンの多くの品種、例えば「黒田五寸」、「アーリーチ
ャンテネー」、「インペレーター」、「ナンテススカー
レット」等の根部組織に存在し、これらの根部組織より
抽出される可溶性タンパク質の一つである。本発明タン
パク質を分離・精製または検出するには、たとえば以下
の方法をあげることができる。まず、根部組織を市販の
ミキサーや、ワーリングブレンダー等で、リン酸カリウ
ム溶液、ホウ酸ナトリウム溶液等の通常用いられる可溶
性タンパク質抽出バッファーとともに十分に粉砕し、組
織残渣をガーゼによる濾過や10,000rpm 、10分程度の
遠心分離操作等で除き、本発明タンパク質の粗抽出液を
得る。なお、上記の可溶性タンパク質抽出バッファーに
は、必要に応じてアスコルビン酸や2−メルカプトエタ
ノール等の還元剤を添加してもよい。根部組織から本発
明タンパク質を抽出する際に用いられる可溶性タンパク
質抽出バッファーの量は、たとえば根部組織5gに対し
て約10mlから約100ml程度、好ましくは約10mlか
ら約25mlをあげることができる。得られた本発明タン
パク質の粗抽液は、Centriprep−10(Amicon製)等を
用いる限外濾過により適宜濃縮することもできる。この
ようにして得られた本発明タンパク質の粗抽出液から本
発明タンパク質を分子量差で分離・精製するには、SD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(Laemmli, U.
K. Nature, 227, 680(1970)) やゲル濾過による液体ク
ロマトグラフィー等による通常の方法を用いることがで
きる。これらの方法を用いると本発明タンパク質は分子
量的に16kDのサイズに分離される。さらに本発明タ
ンパク質は、ゲル濾過による液体クロマトグラフィー法
で分離・精製した画分や、SDS−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動法でゲル中で分離後切り出した画分等を抗
原として調製したポリクローナル抗体あるいはモノクロ
ーナル抗体を用いる免疫学的方法によって簡単に検出す
ることができる。
【0007】本発明遺伝子は、例えばJ.Sambrook、E.F.
Frisch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング
第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドス
プリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harb
or Laboratory)発行、1989年等に記載の通常の遺伝
子工学的方法に準じて得られる。具体的にはまず、各種
の植物の植物組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシ
アネート等の強力なタンパク変性剤を含む溶液中で粉砕
し、そして遠心分離操作やフェノール、クロロホルム等
でタンパク質等を除去後、エタノール沈澱等でRNAを
回収する塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェ
ノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の
通常の方法によって全RNAを抽出する。なお、これら
の方法に基づいたキットとしては、例えばISOGEN(ニッ
ポンジーン製)、Extraction-A-PLANT T M RNA ISOLATI
ON KIT (CLONTECH製))が市販されている。得られた全R
NAからmRNAのみを精製するには、mRNAのポリ
A鎖とセルロースに結合したオリゴdT鎖とのハイブリ
ダイゼーションを利用したアフィニティークロマトグラ
フィーが有効である。オリゴ(dT)セルロースは、フ
ァルマシア社やコラボレイティブ社等から市販されてい
る。カラムから抽出されたポリA鎖をもつmRNAはエ
タノール沈澱により回収される。このポリA鎖をもつm
RNAからのcDNAの合成法としては、たとえば、
mRNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをポリA鎖
にアニールさせ、逆転写酵素により、ファーストストラ
ンドcDNAを合成し、大腸菌RNaseHを用いてR
NA鎖にニックとギャップを入れた後、RNAの断片を
次のプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを
用いたダブルストランドのcDNAを合成する、更に
両末端はT4 DNAポリメラーゼにより平滑化され
る。そして得られたcDNAはフェノール、クロロホル
ム抽出、エタノール沈澱等で精製、回収する通常の方法
(Gubler, U, B.J.Hoffman, Gene,25,263(1983) やOkay
ama,H.,P.Berg やMol.Cell.Biol,2,161(1982) 等に記載
されている)をあげることができる。なお、これらの方
法に基づいたキットとしては、例えば、cDNA合成シ
ステム、プラス(アマシャム社製)が市販されている。
このようにして得られたcDNAは、両平滑末端にT4
DNAリガーゼを用いて適当なリンカーやアダプター
を結合させ、余分な遊離リンカーやアダプターをゲル濾
過法等で分離し、λファージ由来のベクター等の適当な
ベクターアームに連結させる。さらに in vitro パッケ
ージング操作により形成されたファージ粒子を大腸菌に
感染させて培地上でプラークを作らせる。これによりc
DNAライブラリーが作製できる。cDNAライブラリ
ーから本発明タンパク質のアミノ酸配列をコードする領
域を含むcDNAクローンを選択するには、λgtIIなど
のベクター系においては本発明タンパク質に対する抗体
によるイムノスクリーニングや、λgt10などのベクター
系においては本発明タンパク質のアミノ酸配列から予想
される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、
これをRIや蛍光試薬で標識して得られるプローブを用
いたプラークハイブリダイゼーション等が有効である。
またcDNAを有するファージのDNAを精製し、DN
Aプローグを用いたサザンプロットハイブリダイゼーシ
ョン等でも選択することができる。なお、上記のプロー
ブは、精製した本発明タンパク質をエドマン分解法に基
づいたアミノ酸シークエンサー(例えば、ABI製 ア
ミノ酸シークエンサー 473A)で解析することによ
りN末端側の数+アミノ酸配列を決定し、そのアミノ酸
配列情報から考えられる塩基コドンに置きかえる通常の
方法によって作製することができる。このようにして得
られた本発明タンパク質のアミノ酸配列をコードする領
域を含むcDNAクローンは、DNA調製や解析が容易
なプラスミドベクター(例えば、市販されるpUC18)
等にサブクローニングし、プラスミドDNAを調製し、
Maxam Gilbert 法 (Maxam, A.M&W.Gilbert Proc.Natl.A
cad.Sci.,74,560,1977) やSanger法(Sanger,F.&A.R.Co
ulson, J.Mol Biol 94. 441,1975、Sanger, F,& Nickle
n and A.R. Coulson.Proc.Natl.Acad.Sci.74,5463,197
7) により本発明タンパク質のcDNA塩基配列を決定
することができる。
【0008】本発明タンパク質cDNAからゲノムDN
Aの塩基配列を決定するには、たとえば葉部、茎部、根
部等の植物組織を液体窒素で瞬時に凍結した後、乳鉢と
乳棒あるいはワーリングブレンダー等を用いて十分に磨
砕して得られた磨砕物から、たとえば渡辺格監修、杉浦
昌弘編集:「クローニングとシークエンス(植物バイオ
テクノロジー実験マニュアル)」、農村文化社、東京
(1989年)等に記載の通常の方法に準じて、ゲノム
DNAを抽出する。得られたゲノムDNAは適当な制限
酵素で切断した後、ショ糖密度勾配遠心法や塩化ナトリ
ウム密度勾配遠心法等の公知の方法でDNA断片を分画
する。この分画されたDNA断片に対して、本発明タン
パク質のcDNAをプローブとした通常のサザンハイブ
リダイゼーション法(ゲノミックサザン法)を行ない、
目的とする情報をコードする遺伝子領域を決定する。さ
らにこの遺伝子領域を、市販のプラスミド、ファージ、
コスミド等の適当なベクターにライゲーションすること
によりゲノムDNAライブラリーを作製する。このライ
ブラリーに対して、本発明タンパク質cDNAをプロー
ブとして、ハイブリダイゼーションによる通常のスクリ
ーニングを行い、本発明タンパク質のアミノ酸配列をコ
ードする領域を含むゲノムDNAクローンを取得する。
得られたゲノムDNAクローンは遺伝子配列の解析に適
当なベクター、例えばプラスミド等にサブクローニング
した後、通常の方法に準じて塩基配列を解析することに
より、本発明タンパク質のアミノ酸配列をコードする領
域を含むゲノムDNA塩基配列を決定することができ
る。さらにBina-Stem, Met al, Pro. Natl.Acad.Sci.US
A,76,731(1979)や Sollner-Webb & Reeder, R.H.,Cell,
18, 485(1979)等に記載されるプライマーエクステンシ
ョン法またはBerk, A.J.& Sharp,P.A.,Cell,12, 721(19
77) や Berk, A.J.& Sharp, P.A.,Proc.Natl.Acad.Sci
USA, 75,1274(1978)等に記載されるS1マッピング法等
により、本発明タンパク質のゲノムDNAの転写開始点
を決定することができる。このようにして決定された転
写開始点の上流には、転写開始に必要なTATA配列が
存在する。通常この転写開始点の上流約1kbから約1
0kbに遺伝子発現の制御を荷負うプロモーター配列が
存在する。本発明遺伝子のプロモーター部位は、本発明
遺伝子のプロモーターが根部において特異的に働くこと
を利用して決定することができる。たとえば、あらかじ
め種々の長さのプロモーター領域を有する遺伝子断片を
GUS等のレポーター遺伝子に接続し、これを導入した
トランスジェニック植物を作製し、作製された植物の各
組織におけるレポーター遺伝子の発現有無を調べること
により、本発明遺伝子のプロモーター部位を最終的に決
定することができる。一方、ターミネーター配列は、終
止ユドンの下流の3′末端非翻訳領域に存在するpoly
(A)付加シグナル(AATAAAとコンセンサス配列とす
る)のさらに下流に通常存在するpoly A配列下流に相
当するゲノムDNA領域に存在し、効率的な転写終結の
機能を有している。
【0009】
【実施例】以上、実施例により詳細に説明するが、本発
明はこれに限定されるものではない。
【0010】実施例1 (本発明タンパク質の分離およ
び検出) 市販されるニンジン(品種名:黒田五寸)の根部組織5
gに12.5mlの可溶性タンパク質抽出用バッファー〔0.
1M リン酸カリウム(pH8.0)、1mMEDTA、
0.1% アスコルビン酸、0.25% 2−メルカプトエタ
ノール〕を加えた混合物をワーリングブレンダー(日本
精機製)を用いて、2000rpm、氷中、5分間磨砕し
た。得られた磨砕物をガーゼ4枚を用いてろ過し、得ら
れたろ液を遠心分離(10,000rpm、10分、4℃)す
ることにより上清を得た。そして該上清はフィルターろ
過装置〔Centriprep−10(Amicon製) とウルトラフリ
ーCLユニット(Millipore 製) 〕により約1〜2mgタ
ンパク質/mlの濃度まで濃縮された。得られた濃縮物を
試料として、アクリルアミド10-20%の濃度勾配であるS
DS−ポリアクリルアミドゲル「SDS−PAGプレー
ト10/20 」(第一化学社製)、0.0625Mトリス−
塩酸(pH6.8)、2%SDS、10%グリセロー
ル、5% 2−メルカプトエタノール、0.001%ブ
ロモフェノールブルー)、泳動バッファー1リットル
(0.02Mトリス、0.192Mグリシン、0.1%
SDS、pH8.4)、60mA定電流,60minの
条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を
行なうことにより、各種のタンパク質を分子量的に分離
した。そして分離されたタンパク質は、市販の銀染色用
キットである、2D- 銀染色試薬・II「第一」( 第一化学
社製) を用いて銀染色し、タンパク質の分離パターンを
観察した。その結果を図1に示す。本発明タンパク質は
16kDaの分子量位置に検出され、その存在割合は目
視により観察した結果、根部組織から抽出された全タン
パク質の約10%であった。
【0011】実施例2 (本発明タンパク質のN末端ア
ミノ酸配列の決定) 実施例1で得られたニンジン根部可溶性タンパク質の濃
縮物を、実施例1に記載されたものと同様な電気泳動法
により分離した後、分離されたタンパク質は、Matsudai
ra.P、The Journal of Biological Chemistry (1987)記
載の方法に準じて染色された。すなわち、ゲル中のタン
パク質は、ブロッティングバッファー〔10mM CA
PS(3−Cyclohexylaminopropane sulfonic acid) −
10%メタノール (pH11.0)〕中で、100V、
1時間の条件下で市販のポリビニリデンジフルオリド
(polyvinylidene difluoride)膜にブロッティングさ
れ、0.1%クーマジーブリリアントブル−(CBB)R
250/50%メタノールで染色し、50%メタノール
−10%酢酸中で脱色し、タンパク質の分離を行った。
CBB試薬で染色されたPVDF膜上の本発明タンパク
質のバンドをカッターで切り出し、本発明タンパク質を
回収した。回収された本発明タンパク質のうち、300
p mole をアミノ酸シークエンサー473A(ABI
製)を用いてエドマン分解法に準じて、アミノ酸配列を
解析した。この結果を図2に示す。本発明タンパク質の
N末端に存在する35個のアミノ酸の配列を決定した。
【0012】実施例3 (ニンジン根部cDNAライブ
ラリーの作製) 市販されるニンジン(品種名、黒田五寸)の根部組織
(播種後9週目)10g新鮮重を液体窒素10ml中で凍
結させた後、木づちで組織をあらかじめ砕き、ワーリン
グブレンダー(日本精機製)を用い、液体窒素を数mlず
つ追加しながら1,500 rpm 、25分間粉砕し、細かい粉
末にした。液体窒素を気化させた後、市販のRNA抽出
キット〔Extract-A-PLANT T M RNA ISOLATION KIT(CLO
NTECH 製)〕を用いてRNA抽出を行い、この抽出液か
らエタノール沈澱により全RNAを回収し、520 μgの
全RNAを得た。得られた全RNAを市販のOligo dTカ
ラム(5′→3′製)で分画し、4.8μgのポリA R
NAを得た。該ポリA末端RNA 1μgから市販のc
DNA合成キット(cDNA合成システムプラス、アマ
シャム製)を用いてcDNA合成を行ない、63ngの
cDNAを得た。該cDNAを市販のT4 ligase (宝
酒造製)を用いて EcoRI-NotI-BamHI アダプター(宝酒
造製)にライゲーションした後、EcoRI digested λ Z
APII (Stratagene製) と、さらに市販の in vitro パッ
ケージングキット(GIGA PACK II Gold(Stratagene 製)
を用いて Escherichia coli K−12株由来の XL1-BLUE
株を宿主とする、ラムダファージからなるcDNAラ
イブラリーを作製した。
【0013】実施例4 (本発明タンパク質のcDNA
クローンのスクリーニング) 実施例2で決定された本発明タンパク質のN末端アミノ
酸配列をもとにして、予想されるDNA塩基配列 (1)プローブ1: 5′−GGT GCC CAG AGC CAT GTI CTC GAG ATC ACT TCT TCA GTC TCC GCA GAG AA A ATA TTC AGC GGC ATT GTC CTT GAT GTT GAT ACA GTT ATT CCC AAG GCT GCC CC C −3′ (2)プローブ2(混合プローブ): 5′−GGG GCG CAG AGG CAC GTG CTC GAG ATC −3′ A を有する2種の合成プローブDNAを合成した。これら
の合成プローブDNAを市販の放射性標識キット(MAGA
LABEL 、宝酒造製) を用いて放射性標識した合成プロー
ブDNAを調製した。宿主であるEscherichia coli X
LI−BLUEにファージcDNAライブラリー5.0×10
4 pfu を加え、37℃、15分間インキュベートした後、φ
150mm のNZYプレート(1%NZアミン、0.5% Yea
st Extract、0.5% NaCl、1.5%寒天)にプレー
ティングし、37℃、7時間インキュベートした。プレー
トを4℃、2hrs冷却した後、市販のナイロンフィル
ター、Hybord−N(アマシャム製)にプラークを移し
た。フィルターを風乾後、アルカリ変性液(0.5M N
aOH,1.5M NaCl)2分、中和液(0.5M Tri
s-HCl,pH8.0、1.5MNaCl)2分、3×SSC
(0.45M NaCl、0.105 M クエン酸ナトリウ
ム)2分の順でフィルターを変性させ、風乾した後、U
V光を照射してフィルターのDNAを固定した。ポリエ
チレン袋にフィルター10枚を入れ、プレハイブリダイ
ゼーションバッファー〔6×SSC(0.9M NaC
l、0.21Mクエン酸ナトリウム)、5×Denhardt's溶
液(0.1% フィコール400、0.1%ポリビニルピロ
リドン、0.1%BSA)、0.1%SDS,100μg/
ml変性サケ精子DNA〕25mlを加えて、45℃、2時
間インキュベートした後、プレハイブリダイゼーション
バッファーを捨て、新たに6mlのプレハイブリダイゼー
ションバッファーを加えた。更に前記方法で得られたR
I標識した上記の合成プローグDNAを107 cpm加
え、45℃、一晩インキュベートした。フィルターを取
り出して、50mlの6×SSC中で室温、5分間インキ
ュベート、100mlの6×SSC中で室温、5分間イン
キュベート、100mlの6×SSC−10%SDS中で
45℃、5分間インキュベートの洗浄後、フィルター上
のRI活性により本発明タンパク質のcDNAを含むプ
ラークが得られた。得られたシグナルプラークは、パス
ツールピペットを用いて500μl SM(50mM
Tris−HCl, pH7.5 、0.1M NaCl、7mM
MgSO4 、0.01%ゼラチン)と20μlクロロホル
ムを含む溶液中に単離した。更にシングルクローンを得
るため、宿主であるEscherichia coli XLI−BLUEと
ファージ液103 −10 2 pfu を混合し、37℃、15
分インキュベート後、φ90mmのNZYプレートにプレ
ーティングし、37℃、一晩インキュベートしたプレー
トを前記の方法でナイロンメンブレンにトランスファー
し、上記同様の合成プローグDNAを用いたプラークハ
イブリダイゼーション法によって2つの本発明タンパク
質のcDNAクローンを単離した。
【0014】実施例5 (本発明タンパク質cDNAク
ローンのインサートの解析および本発明タンパク質をコ
ードする塩基配列とアミノ酸配列の決定) 実施例4で得られた2つのcDNAクローンは、J. Sam
brook 、E.F.Fritsch、T.Maniatis著:「Molecular Clo
ning Second Edition」、Cold Spring HarborLaborator
y Press(1989年)に記載されている通常の方法により、
プラスミドベクターpBluescript SK(−)にサブクロ
ーニングし、プラスミドcDNAクローンpC16−1
及びpC16−2を得た。そして該cDNAクローンの
インサートの塩基配列を、Taq Dye Primer Cycle Seque
ncing Kit 及びTaq Dye DeoxyTerminator Cycle Sequen
cing Kit (Applied Biosystems 製) を用いてAppliedBi
osystems製の373A DNA Sequencerにより決定し
た。pC16−1とpC16−2はいずれも同一塩基配
列のインサートを有していた。このため、これらのプラ
スミドは同一であり、pC16と命名した(図3参
照)。なお、pC16は、Escherichia coli XL1-BLUE/
pC16(FERM BP-4469)として工業技術院生命工学工業技術
研究所にブダペスト条約下で寄託されている(平成5年
11月17日受託)。インサートのサイズは739塩基であ
り(配列番号3参照)、うち14番目から478番目ま
での465塩基がニンジン根部に特異的に発現する分子
量16kDのタンパク質をコードする領域であった。4
79番目から717番目の塩基は3’非翻訳領域であ
り、718番目から739番目の22個のアデニンはポ
リA末端であることが判明した。さらにニンジン根部に
特異的に発現する分子量16kDのタンパク質をコード
する領域の塩基配列から該タンパク質の全アミノ酸配列
を決定した(配列番号2参照)。本発明タンパク質は1
54個のアミノ酸(配列番号1参照)からなり、分子量
は16125.02と計算された。
【0015】実施例6 (本発明タンパク質の組織特異
性発現) 市販されるニンジン(品種名:黒田五寸)の種子を温室
内でポットに播種し、栽培した。播種後、4週目、7週
目、9週目および21週目毎に植物体を採取し、植物体
を根部(地下部)組織と葉部(地上部)組織に分けてそ
れぞれの組織の全タンパク質を実施例1に記載した同様
な方法で抽出、濃縮後、1レーン当り1μgのタンパク
質を試料として、実施例1に記載されたものと同様な条
件下でのSDS−ポリアクリルアミド電気泳動を行うこ
とにより、各種のタンパク質を分子量的に分離し、本発
明タンパク質の発現を比較した。この結果を図4に示
す。4週目の全植物体と7、9、21週目の根部と葉部
の全タンパク質を比較すると本発明タンパク質の発現が
顕著に異なることがわかる。即ち、本発明タンパク質
は、幼植物体及び各葉部組織では発現しておらず、根部
組織でのみ発現しており、さらに根部組織が生長するの
に伴って全タンパク質に対する割合が増加する貯蔵性の
タンパク質であることが明らかである。
【0016】実施例7 (本発明タンパク質の品種間比
較) 市販されるニンジンの各種品種(品種名:黒田五寸、ア
ーリーチャンテネー、インペレーター、ナンテススカー
レット)の根部組織から実施例1に記載した同様な方法
により全タンパク質を抽出、濃縮後、1レーン当り1μ
gのタンパク質を試料として、実施例1に記載されたも
のと同様な条件下でのSDS−ポリアクリルアミド電気
泳動を行なうことにより、各種のタンパク質を分子量的
に分離し、本発明タンパク質の発現を比較した。その結
果を図5に示す。品種の種類に係わらず、本発明タンパ
ク質は全タンパク質の約10%を占める最も主要なタン
パク質であることがわかった。
【0017】実施例8 (本発明タンパク質の相同性) 実施例5で決定された本発明タンパク質をコードする塩
基配列及びアミノ酸配列と相同性の高い遺伝子及びアミ
ノ酸配列を、データベースEMBL及びNBRFで検索
した結果、本発明遺伝子及びアミノ酸配列は数種の植物
病害抵抗性に関与するタンパク質の遺伝子及びアミノ酸
配列と最も高い相同性を示した(図6参照)。最も相同
性の高かったタンパク質は、ニンジンと同じセリ科のパ
セリのPathogenesis-related Protein (PR-Protein) 1
−3、1−1、1−2であった(図参照)。また、マウ
スのヒートショックタンパク質であるHSP60の3T
3−7、3T3−9、3T3−M1クローンのmRNA
とも比較的高い相同性が認められた。
【0018】
【発明の効果】ニンジン根部において特異的に存在する
本発明タンパク質を高発現させることにより高タンパク
質化ニンジンを育種することが可能となる。
【配列表】
【0019】配列番号:1 配列の長さ:154 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:タンパク質 配列の特徴 起源 生物名:ニンジン(Daucus carota L.) 品種名:黒田五寸 組織の種類:根部(地下部) 特徴を表す記号:peptide 存在位置:1..154 特徴を決定した方法:E Met Gly Ala Gln Ser His Ser Leu Glu Ile Thr Ser Ser Val Ser Ala 1 5 10 15 Glu Lys Ile Phe Ser Gly Ile Val Leu Asp Val Asp Thr Val Ile Pro 20 25 30 Lys Ala Ala Pro Gly Ala Tyr Lys Ser Val Asp Val Lys Gly Asp Gly 30 40 45 Gly Ala Gly Thr Val Arg Ile Ile Thr Leu Pro Glu Gly Ser Pro Ile 50 55 60 Thr Ser Met Thr Val Arg Thr Asp Ala Val Asn Lys Glu Ala Leu Thr 65 70 75 80 Tyr Asp Ser Thr Val Ile Asp Gly Asp Ile Leu Leu Glu Phe Ile Glu 85 90 95 Ser Ile Glu Thr His Met Val Val Val Pro Thr Ala Asp Gly Gly Ser 100 105 110 Ile Thr Lys Thr Thr Ala Ile Phe His Thr Lys Gly Asp Ala Val Val 115 120 125 Pro Glu Glu Asn Ile Lys Phe Ala Asp Ala Gln Asn Thr Ala Leu Phe 130 135 140 Lys Ala Ile Glu Ala Tyr Leu Ile Ala Asn 145 150 154
【0020】配列番号:2 配列の長さ:465 配列の型:核酸 鎖の数:2本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA 配列の特徴 起源 生物名:ニンジン(Daucus carota L.) 品種名:黒田五寸 組織の種類:根部(地下部) 特徴を表す記号:peptide 存在位置:1..465 特徴を決定した方法 ATG GGT GCC CAG AGC CAT TCA CTC GAG ATC ACT TCT TCA GTC TCC GCA 48 GAG AAA ATA TTC AGC GGC ATT GTC CTT GAT GTT GAT ACA GTT ATT CCC 96 AAG GCT GCC CCC GGA GCT TAC AAG AGT GTC GAT GTT AAA GGA GAC GGT 144 GGA GCT GGA ACC GTC AGA ATT ATC ACC CTT CCC GAA GGT AGC CCA ATC 192 ACC TCA ATG ACG GTT AGG ACT GAT GCA GTG AAC AAG GAG GCC TTG ACA 240 TAC GAT TCC ACA GTC ATT GAT GGA GAC ATC CTT CTA GAA TTC ATC GAA 288 TCC ATT GAA ACC CAT ATG GTA GTT GTG CCA ACT GCT GAC GGA GGT AGC 336 ATT ACC AAG ACC ACT GCC ATA TTC CAC ACC AAA GGC GAT GCC GTG GTT 384 CCT GAG GAG AAC ATC AAG TTT GCA GAT GCT CAG AAC ACT GCT CTT TTC 432 AAG GCT ATT GAG GCC TAC CTC ATT GCT AAT TAA 465
【0021】配列番号:3 配列の長さ:739 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列の特徴 起源 生物名:ニンジン(Daucus carota L.) 品種名:黒田五寸 組織の種類:根部(地下部) 特徴を表す記号:peptide 存在位置:14..478 特徴を決定した方法:E CATTCTAAAT ATC 13 ATG GGT GCC CAG AGC CAT TCA CTC GAG ATC ACT TCT TCA GTC TCC GCA 61 GAG AAA ATA TTC AGC GGC ATT GTC CTT GAT GTT GAT ACA GTT ATT CCC 109 AAG GCT GCC CCC GGA GCT TAC AAG AGT GTC GAT GTT AAA GGA GAC GGT 157 GGA GCT GGA ACC GTC AGA ATT ATC ACC CTT CCC GAA GGT AGC CCA ATC 205 ACC TCA ATG ACG GTT AGG ACT GAT GCA GTG AAC AAG GAG GCC TTG ACA 253 TAC GAT TCC ACA GTC ATT GAT GGA GAC ATC CTT CTA GAA TTC ATC GAA 301 TCC ATT GAA ACC CAT ATG GTA GTT GTG CCA ACT GCT GAC GGA GGT AGC 349 ATT ACC AAG ACC ACT GCC ATA TTC CAC ACC AAA GGC GAT GCC GTG GTT 397 CCT GAG GAG AAC ATC AAG TTT GCA GAT GCT CAG AAC ACT GCT CTT TTC 445 AAG GCT ATT GAG GCC TAC CTC ATT GCT AAT TAA 478 GCTGAGCTCT CAACTTCCGT AATTTTATGA GTGAGTGGAG GAATTGCAAC 528 GTTTTCTTTT GTGTTTTGTT TTCGAGCAAC TTCATAATTT ACAGAGTGAG 578 TGACAGTCAG TGACAGAATT GCAACTTTCT CTTTGTACTT TGTTGTGACT 628 TGTGATGAAT AACTTCATCT GGCTGGTAAT GTATGCGATC TTTTTAAATA 678 ATATGCACTA TTATTAAACC AATAATCATA TTCATTCTCA AAAAAAAAAA 728 AAAAAAAAAA A 739
【図面の簡単な説明】
【図1】ニンジン根部に存在する全タンパク質を試料と
して、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(銀染色)
を行なった結果を示す図である。レーンMは分子量マー
カー、レーン1は試料である。矢印は本発明タンパク質
のバンドを示す。
【図2】本発明タンパク質のN末端アミノ酸配列(一文
字表示)を示す図である。なおこの配列は配列番号1で
示されるアミノ酸配列の2番目から36番目に相当して
いる。
【図3】本発明タンパク質の遺伝子を含有するプラスミ
ドであるpC16を示す図である。
【図4】本発明タンパク質の組織特異性を検討するため
にSDS−ポリアクリルアミド電気泳動(銀染色)を行
った結果を示す図である。レーンMは分子量マーカー、
レーン1は播種後、4週間目の全植物体に存在する全タ
ンパク質試料、レーン2は播種後、7週間目の葉部に存
在する全タンパク質試料、レーン3は播種後、7週間目
の根部に存在する全タンパク質試料、レーン4は播種
後、9週間目の葉部に存在する全タンパク質試料、レー
ン5は播種後、9週間目の根部に存在する全タンパク質
試料、レーン6は播種後、21週間目の根部に存在する
全タンパク質試料である。矢印は本発明タンパク質のバ
ンドを示す。
【図5】本発明タンパク質の品種間比較を調べるために
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(銀染色)を行な
った結果を示す図である。レーンMは分子量マーカー、
レーン1は「黒田五寸」の根部に存在する全タンパク質
試料、レーン2は「アーリーチャンテネー」の根部に存
在する全タンパク質試料、レーン3は「インペレータ
ー」の根部に存在する全タンパク質試料、レーン4は
「ナンテススカーレット」の根部に存在する全タンパク
質試料である。矢印は本発明タンパク質のバンドを示
す。
【図6】本発明タンパク質の相同性を検討するためにデ
ータベースEMBLおよびNBRFで検索した結果を示
す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号1で示されるアミノ酸配列
    を有する分子量16kDのタンパク質。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のタンパク質のアミノ
    酸配列をコードする領域を含む遺伝子。
  3. 【請求項3】 配列番号2で示される塩基配列を有
    する分子量16kDのタンパク質遺伝子。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の遺伝子を含有するプ
    ラスミド。
JP32794393A 1993-12-24 1993-12-24 ニンジン根部に特異的に発現しうる分子量16kDのタンパク質、その遺伝子およびその遺伝子を含有するプラスミド Expired - Fee Related JP3435775B2 (ja)

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