JPH07186207A - 射出成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ゲートブッシュとバルブケーシングとの間を
良好にシールし得て、両者の断熱性を向上させることが
できる射出成形用金型を提供する。 【構成】 ゲートブッシュ（２４）のゲート（２４ａ）
につながるテーパー状孔（４７）とそれに対向するバル
ブケーシング（２６）の先端のテーパー部（４７）との
間に形成される間隙（４８）に耐熱樹脂製のシールリン
グ（４９）が介在されている。 【効果】 樹脂は金属に比べて弾性域が数段広くなるの
で、ゲートブッシュとバルブケーシングとの良好なシー
ル性が確保できる。したがって、ゲートブッシュとバル
ブケーシングとの間の隙間に溶融樹脂が流れ込んで、ゲ
ートブッシュとバルブケーシングとの断熱が悪化すると
いった不具合の発生を防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はゲートを開閉するピン状
のバルブを備えた射出成形用金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種の射出成形用金型として特開平５
ー１７７６６４号公報に次の構造のものが開示されてい
る。図３において符号１は固定型板、２は可動型板、３
は固定型板１と可動型板２との間に形成されるキャビテ
ィ、４は固定型板１に嵌合されかつキャビティ３を臨む
ように形成されたゲート４ａを備えるゲートブッシュ、
６はバルブケーシング、７はゲート４ａを開閉するバル
ブである。バルブ７は、上部をバルブケーシング本体６
ａに固定されたガイドブッシュ８に案内されるととも
に、下部をバルブケーシング本体６ａの下部にキャップ
６ｂを介して固定されたバルブホルダ６ｃに案内される
ことにより、ゲート４ａに対して同軸状に保持されなが
ら上下動する。バルブケーシング本体６ａの外周にはバ
ンドヒーター９が設けられ、このバンドヒータ９の外周
側はヒーターカバー１０によって覆われている。

【０００３】前記バルブホルダ６ｃは、バルブケーシン
グ６の内周面に嵌合される外環部と、バルブ７を摺動自
在に案内する内環部と、外環部と内環部とを連結する複
数の羽根部とから構成され、羽根部の間はバルブケーシ
ング本体６ａ内の樹脂通路１３をゲート４ａに連通させ
る連通路１４を形成する。

【０００４】前記ゲートブッシュ４の中央は下方に向か
って円錐状に突出されていて、その突出部分が前記固定
型板のテーパー状孔に嵌合している。また、ゲートブッ
シュ４の中央部内周面はテーパー状孔１６とされてお
り、このテーパー状孔１６と対向するように前記バルブ
ケーシング６の先端であるキャップ６ｂの外周部には円
錐状のテーパー部１７が形成されている。そして、前記
テーパー状孔１６とテーパー部１７との間に形成される
テーパー状の間隙１８に金属製のシールリング１８ａが
介装されている。なお、１９は固定型板とゲートブッシ
ュ４との間との間に形成された冷却水用の通路である。

【０００５】前記射出成形用金型では、可動型板２を上
昇させて図中実線で示すように型締状態とし、バルブ７
を上昇させてゲート４ａを開放させ、図示せぬ射出成形
機本体のノズルから溶融樹脂を、バルブケーシング６内
の樹脂通路１３及びバルブホルダ６ｃの連通路１４を介
してキャビティ３内に射出させる。充填終了後には、図
中２点鎖線で示すように、バルブ７を下降させてゲート
４ａを閉塞する。そして、キャビティ３内の樹脂が冷却
固化した後、可動型板２を下降させて型開し、成形品を
取り出すようになっている。

【０００６】また、運転中においてバルブケーシング６
は、内部の樹脂を常時溶融状態に保つために、バンドヒ
ータ９により加熱される。これに対し、ゲートブッシュ
４は、キャビティ３内に充填された樹脂を速やかに冷却
・固化させるために、冷却水用連路１９に流される冷却
水により冷却される。このとき、特にゲート４ａの近傍
において、ゲートブッシュ４とバルブケーシング６との
間に形成される隙間Ｓにより、これらゲートブッシュ４
とバルブケーシングとが互いに断熱される。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前記した従
来の射出成形用金型にあっては、次の問題があった。す
なわち、ゲートブッシュ４とキャップ６ｂとの間にはシ
ールリング１８ａが介装され、これによりゲート４ａ近
傍の溶融樹脂が隙間Ｓ内に流れ込まないようになってい
るが、従来のシールリング１８ａは金属製であるため弾
性域が狭く、温度差が激しいバルブケーシング本体６ａ
およびキャップ６ｂの熱変形を十分には吸収することが
できず、ときとして、ゲートブッシュ４とキャップ６ｂ
との間に隙間が生じ、ここから樹脂漏れが発生するおそ
れがあった。

【０００８】なお、上記のように樹脂漏れが生じてゲー
トブッシュ４とバルブケーシング６との間の隙間Ｓに溶
融樹脂が流れ込むと、ゲートブッシュ４とバルブケーシ
ングとの断熱が良好に行なえなくなり、ひいては、運転
中においてバルブケーシング６内の温度が低下したり、
あるいは、充填後においてキャビティ３内に充填された
樹脂の速やかな冷却が行なえなくなる不具合が生じる。

【０００９】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、ゲートブッシュとバルブケーシングとの間を良好に
シールし得て、両者の断熱性を向上させることができる
射出成形用金型を提供することを目的とするものであ
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】係る目的を達成するため
に本発明では、一対の型板間にキャビティが形成され、
一方の型板に前記キャビティを臨むゲートを有するゲー
トブッシュと、ゲートと同軸状に配されて該ゲートを介
して前記キャビティに連通する樹脂通路を備えた筒状の
バルブケーシングとが設けられ、前記バルブケーシング
の樹脂通路内にピン状のバルブが軸線方向に移動可能に
配置され、該バルブが軸線方向に移動することにより前
記ゲートを開閉する射出成形用金型において、前記ゲー
トブッシュの前記ゲートにつながるテーパー状孔とそれ
に対向する前記バルブケーシングの先端のテーパー部と
の間に形成される間隙に樹脂製のシールリングが介在さ
れる構成とした。

【００１１】

【作用】本発明では、ゲートブッシュとバルブケーシン
グとの間に形成される空間に耐熱樹脂製のシールリング
を介在させており、樹脂は金属に比べて弾性域が数段広
くなるので、ゲートブッシュとバルブケーシングとの良
好なシール性が確保できる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。これらの図において符号２０は固定型板であ
り、この固定型板２０に対向して可動型板２１が開閉自
在に設けられている。そして、これら固定型板２０及び
可動型板２１間に成形品形状をなすキャビティ２２が形
成される。固定型板２０は、第１受け板２３ａおよび第
２受け板２３ｂを介して図示せぬ固定取付板に固定さ
れ、可動型枠２１も図示せぬ可動取付板に固定されてい
る。

【００１３】固定型板２０の嵌合孔２０ａにはゲートブ
ッシュ２４が埋め込まれた状態で固定されている。ゲー
ドブッシュ２４は、下側先端がキャビティ２２に露出し
ており、このキャビティ２２に露出する開口がゲート２
４ａとされている。

【００１４】前記固定型板２０及び受け板２３ａ，２３
ｂの内部には、バルブケーシング２６が先端側を下向き
となるように配置されている。バルブケーシング２６の
内部には上下方向に延びる樹脂通路２７が形成され、樹
脂通路２７の下部は、前記ゲートブッシュ２４のゲート
２４ａを通じてキャビティ２２に連通されるとともに、
樹脂通路２７の上部はバルブケーシング２６の上部を斜
めに貫通する連通路２７ａを介してマニホールド３０内
の樹脂通路３０ａに連通され、ここから溶融樹脂が供給
されるようになっている。

【００１５】また、バルブケーシング２６の外周にはバ
ンドヒーター３２が設けられ、このバンドヒータ３２の
外周側はヒーターカバー３３によって覆われている。ま
た、バルブケーシング２６の外周には縦溝３４が設けら
れ、この縦溝３４には温度センサー３５が装着されてい
る。温度センサ３５から延びるリード線３５ａは第２の
受け板２３ｂに形成された孔３６を通って外部所定箇所
へ延びている。３７はバンドカバー３３の外側に配され
た外筒である。

【００１６】バルブケーシング２６の樹脂通路２７内に
は、その中心軸線に沿ってマニホールド３０を貫通して
延びるピン状のバルブ３８が上下方向に移動可能に配置
され、図示しない移動板により上下駆動される。バルブ
３８は、バルブ本体３８ａと、該バルブ本体の３８ａの
先端に形成されゲート２４ａの開口径よりも僅かに小さ
い外径に設定された円柱状のゲート閉塞部３８ｂと、そ
れらバルブ本体３８ａとゲート閉塞部３８ｂとの間に形
成された円錐部３８ｃとからなっている。そして、この
バルブ３８は、バルブ本体３８ａの上部をバルブケーシ
ング２６固定されたガイドブッシュ３９に案内されると
ともに、バルブ本体３８ａの下部（先端部）をバルブケ
ーシング本体２６ａの下部に固定されたバルブホルダ２
６ｂに案内されることにより、ゲート２４ａに対して同
軸状に保持される。

【００１７】前記バルブホルダ２６ｂは、バルブケーシ
ング本体２６ａの下部に形成された嵌合孔に挿入され、
下側からバルブケーシング本体２６ａの嵌合孔に螺合さ
れたキャップ２６ｃにより固定されるものである。ここ
で、前記バルブケーシング２６は、バルブケーシング本
体２６ａと、バルブホルダ２６ｂと、キャップ２６ｃと
から構成される。バルブホルダ２６ｂは、外環部と内環
部とそれら両者を連結する複数の羽根部とから構成さ
れ、羽根部の間にはバルブケーシング２６内の樹脂通路
２７をゲート２４ａに連通させる連通路４３が形成され
る。

【００１８】前記ゲートブッシュ２４の中央は下方に向
かって円錐状に突出されていて、その突出部分が固定型
板２０のテーパー状孔に嵌合している。また、ゲートブ
ッシュ２４の中央部内周面はテーパー状孔４６とされて
おり、このテーパー状孔４６と対向するように前記バル
ブケーシング２６の先端であるキャップ２６ｃの外周部
には円錐状のテーパー部４７が形成されている。そし
て、前記テーパー状孔４６とテーパー部４７との間に形
成されるテーパー状の間隙４８に耐熱樹脂製のシールリ
ング４９が介装されている。

【００１９】耐熱樹脂製のシールリング４９は、全芳香
族ポリイミド樹脂の粉末を成形して得られるもので、耐
熱性（連続使用温度２８８℃、断続使用温度４８０℃）
及び耐摩耗性（無潤滑下でのＰＶ限界値は一般のエンジ
ニアリングプラスチックの１０倍以上）を有するもので
ある（例えば、ベスペルＳＰー１（登録商標、ディポン
社）が挙げられる）。また、その特性は、引っ張り強さ
８７８ｋｇ／ｃｍ２，引っ張り破断伸び７、５％，曲げ
強さ１１２５ｋｇ／ｃｍ２等である。

【００２０】また、シールリング４９は、図２に示すよ
うにゲートブッシュ２４のテーパー部４６の略中央に形
成されたリング溝４６ａに嵌挿されるもので、断面略正
方形状で、前記キャップ２６ｃのテーパー部４６に対向
する角部は該テーパー部４７に平行となるように面取り
され、しかもそれと対向する逆側の角部円弧状に削り取
られ、リング溝４６ａとの間に隙間５０が形成されてい
る。また、シールリング４９がリング溝４６ａのコーナ
ー隅部に嵌挿されたときに、シールリング４９の前記テ
ーパー部４７に対向する面にはテーパー部４７との間に
０．１ｍｍ程度の締付代Ｍが得られるように、シールリ
ング４９の大きさが設定されており、シールリング４９
の面取りされた部分が前記テーパー部４７によって締付
代の分押圧されたとき、樹脂の余分な部分は前記隙間５
０に膨出する。図２中２点鎖線はシールリング４９がリ
ング溝４６ａに装着された状態を示し、実線はその後キ
ャップ２６ｃにより押圧されて変形された状態を示す。
なお、５１は固定型板とゲートブッシュ４との間との間
に形成された冷却水用の通路である。

【００２１】次に、前記構成の射出成形用金型の作用に
ついて説明する。前記金型で所定形状の樹脂成形品を得
るには、まず、可動型板２１を上昇させて図中実線で示
すように型締状態とする。そして、バルブ３８を上昇さ
せてゲート２４ａを開放し、図示せぬ射出成形機本体の
ノズルから溶融樹脂を、マニホールド３０内の樹脂通路
３０ａ、バルブケーシング２６内の樹脂通路２７ａ，２
７及びバルブホルダ２６ｂの連通路４３およびゲート２
４ａを介してキャビティ２２内に射出させる。充填終了
後には、図中２点鎖線で示すように、バルブ３８を下降
させてゲート２４ａを閉塞する。そして、キャビティ２
２内の樹脂が冷却固化した後、可動型板２１を下降させ
て型開し、キャビティ２２から成形品を取り出す。

【００２２】ここで、ゲートブッシュ２４とバルブケー
シング２６との間に形成されるテーパー状の隙間４８に
耐熱樹脂製のシールリング４９を介在させており、樹脂
は金属に比べて弾性域が数段広くなるので、ゲートブッ
シュ２４とバルブケーシング２６との間の良好なシール
性が確保できる。したがって、ゲートブッシュ２４とバ
ルブケーシング２６との間に形成された隙間Ｓに溶融樹
脂が流れ込んで、ゲートブッシュ２４とバルブケーシン
グ２６との断熱が悪化するといった不具合の発生を未然
に防止できる。

【００２３】また、従来のように金属製のシールリング
を用いる場合では、シールリングの弾性域が小さい分、
バルブケーシング２６側のテーパー部４７であるキャッ
プ２６ｃのテーパー当接面の表面粗さを相当高精度で仕
上げる必要があったが、本願発明のように樹脂製のシー
ルリング４９を用いる場合では、弾性域が大きくなる分
その必要がなく、例えば、８μｍ〜５０μｍ程度と通常
の機械加工の仕上げで十分足りる。

【００２４】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ことなく実施にあたり適宜変形可能である。例えば、前
記実施例ではシールリング４９を一重にしか設けていな
いが、シールリング４９を多重に設けてもよい。

【００２５】

【発明の効果】本発明によれば、ゲートブッシュとバル
ブケーシングとの間に形成される空間に耐熱樹脂製のシ
ールリングを介在させており、樹脂は金属に比べて弾性
域が数段広くなるので、ゲートブッシュとバルブケーシ
ングとの良好なシール性が確保できる。したがって、ゲ
ートブッシュとバルブケーシングとの間の隙間に溶融樹
脂が流れ込んで、ゲートブッシュとバルブケーシングと
の断熱が悪化するといった不具合の発生を防止でき、し
かも、シールリングに対向するバルブケーシング側の当
接面を高精度に仕上げる必要がなくなる等の優れた効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の要部を示す断面図である。

【図２】同実施例の要部を示す拡大断面図である。

【図３】従来の射出成形用金型の一例を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

２０ 固定型板 ２１ 可動型板 ２２ キャビティ ２４ａ ゲート ２６ バルブケーシング ２７ 樹脂通路 ３８ バルブ ４０ バルブホルダ ４６ テーパー状孔 ４７ テーパー部 ４８ テーパー状の間隙 ４９ 耐熱樹脂製のシールリング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一対の型板間にキャビティが形成され、
   一方の型板に前記キャビティを臨むゲートを有するゲー
   トブッシュと、ゲートと同軸状に配されて該ゲートを介
   して前記キャビティに連通する樹脂通路を備えた筒状の
   バルブケーシングとが設けられ、前記バルブケーシング
   の樹脂通路内にピン状のバルブが軸線方向に移動可能に
   配置され、該バルブが軸線方向に移動することにより前
   記ゲートを開閉する射出成形用金型において、 前記ゲートブッシュの前記ゲートにつながるテーパー状
   孔とそれに対向する前記バルブケーシングの先端のテー
   パー部との間に形成される間隙に耐熱樹脂製のシールリ
   ングが介在されていることを特徴とする射出成形用金
   型。