JPH0718454Y2 - チャンファ成形装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はチャンファ成形装置に関するものである。

（従来の技術） 一般に変速機の同期噛合装置に用いられるハブスリーブ
には、第５図に展開図示するように、その内周面にスプ
ラインが設けられている。そして、このスプライン51の
各スプライン歯52,52,・・の軸方向端部52aには、これ
と噛合するナイザーリングのスプライン歯との噛合性を
高めるために軸方向外方に向って鋭角状に突出するチャ
ンファ53が形成されている。

このチャンファは、通常、直歯状に形成されたスプライ
ン歯の端部にその両側から切削加工を行うことによって
鋭角状に成形されるものであるため、その頂部53aはス
プライン歯52の歯高方向に稜線をもつ角ばった形状とな
っている。

ところが、このようにチャンファ頂部53aが角ばった形
状であると、これをナイザーリングのスプライン歯に噛
合させる場合に該ナイザーリングそのものに喰付いてこ
れらの噛合が困難になるおそれがあるため、この頂部53
aを同図に鎖線図示するように、弧面状に丸めて（いわ
ゆるＲ加工をして）喰付きを防止する必要がある。

このようなチャンファ頂部53aに対するＲ加工の方法と
しては、同図の上部に示すように、ハブスリーブ50の各
スプライン歯52,52,・・に対応する位置にそれぞれチャ
ンファ頂部53aに嵌合する弧面状の成形凹部54を所定間
隔で環状に形成してなる一体形のパンチ55を用い、これ
を押圧機構（図示省略）によってハブスリーブ50の各ス
プライン歯52,52,・・のチャンファ頂部53aに押し付け
て塑性変形によりこれを丸めるパンチ加工が一般的であ
る。

（考案が解決しようとする課題） ところが、チャンファ53は上述のように切削加工によっ
て形成するものであるため、同図に符号53′で示すよう
に、頂部53aの左右への振り分けに加工上のバラツキが
生じ易い。このようにチャンファ頂部53aの左右への振
り分けに誤差が生じた場合には、このチャンファ頂部53
aとこれに対応するパンチ加工55の成形凹部54の中心と
の間にハブスリーブ50の周方向に寸法Ｓだけズレが生
じ、従って、パンチ55をハブスリーブ50側に押圧しても
このズレが生じているスプライン歯52においてはそのチ
ャンファ頂部53aをうまくＲ加工することができず、結
果的にハブスリーブ50の加工精度が低下するという問題
が生じることとなる。

そこで本考案では、このようにチャンファ頂部53aの振
り分けにバラツキが生じたような場合であっても確実に
そのチャンファ頂部53aに対してＲ加工を施しもって加
工精度の向上を図れるようにしたチャンファ成形装置を
提供せんとするものである。

（課題を解決するための手段） 本考案ではかかる課題を解決するための具体的手段とし
て、周方向に所定間隔で列設された各スプライン歯の軸
方向端部にそれぞれ形成された鋭角状のチャンファの頂
部に対して、その内面を弧状の成形面とした成形凹部を
有するパンチをスプライン軸方向から押圧し上記各成形
凹部をして上記各チャンファ頂部をそれぞれ弧面状に塑
性変形させるようにしたチャンファ成形装置において、
上記パンチを、上記各成形凹部毎に周方向に分断された
複数のパンチピースを、その周方向に相対移動可能なる
如く環状に配置して構成したことを特徴としている。

（作用） 本考案ではこのような構成であるから、 成形凹部を備えた複数のパンチピースによって構成さ
れたパンチを、その各パンチピースの形成凹部をスプラ
インの各チャンファにそれぞれ対応させた状態で押圧す
ることによって、該各チャンファの頂部は上記成形凹部
の成形面によってそれぞれ弧面状にＲ加工される、 上記の場合において、例えば、加工上各スプライン
歯におけるチャンファの左右の振り分け状態にバラツキ
が生じ、該各チャンファの頂部相互間における周方向間
隔とこれに対応するパンチの各成形凹部の周方向間隔と
にズレがあったとしても、該各パンチピースはパンチ周
方向に相対移動可能とされているため、チャンファ頂部
がパンチピースの成形凹部に臨んでその成形面の周方向
の一方側と当接すると、該成形面がガイド面として作用
しパンチピースは上記チャンファ頂部の位置ズレ方向に
相対的に移動し、該チャンファ頂部とパンチピースの成
形凹部とが周方向において可及的に合致せしめられる、 等の作用が得られる。

（考案の効果） 従って、本考案のチャンファ成形装置によれば、スプラ
インの各チャンファの加工上の振り分け誤差が各パンチ
ピースの周方向への相対移動によって吸収され該各チャ
ンファに対してパンチの各成形凹部が適正状態で対応し
得るところから、該各チャンファの頂部を的確に弧面状
に丸めることができ、それだけ該スプラインの加工精度
が向上するという実用的な効果が得られる。

（実施例） 以下、添付図面を参照して本考案の好適な実施例を説明
する。

第１図には、本考案の実施例にかかるチャンファ成形装
置Ｚの要部が示されている。このチャンファ成形装置Ｚ
は、その外周部を係合溝39を有するスリーブ本体41と
し、またその内周部を複数のスプライン歯43,43,・・を
有するスプライン42とした環状のハブスリーブ40をワー
クとし、該ハブスリーブ40の各スプライン歯43,43,・・
の軸方向両端部に形成されたチャンファ44,44の鋭角状
の頂部にパンチ加工によって丸みを付けるためのもので
あって（第３図及び第４図の鎖線図示部分参照）、押圧
成形を行う押圧ユニットＸと、上記ハブスリーブ40を加
工状態で保持する治具ユニットＹとを有している。

押圧ユニットＸ 押圧ユニットＸは、上下方向に向けて配置された油圧ユ
ニット５を備えている。この油圧ユニット５は、油圧シ
リンダで構成されるものであって、その押圧ロッド４に
は、カラー７を介して円板状の押圧板２が嵌挿され、さ
らにこの押圧板２の外端側には該押圧板２より小径円板
状の支持板３が、該支持板３と上記押圧板２との間に形
成される隙間部25内に後述のパンチ１を介在させた状態
で嵌挿されている。そして、これら押圧ロッド４の軸方
向に順次嵌挿配置されたカラー７と押圧板２と支持板３
とは、該押圧ロッド４の軸端部に螺着した止めナット６
によって相互に軸方向に締結固定されている。

上記パンチ１は、第１図ないし第４図にそれぞれ示すよ
うに、上記ハブスリーブ40のスプライン歯43のチャンフ
ァ44を成形するための弧面状の成形凹部12をその外端部
下面に凹設した略三角小片状のパンチピース11を、該ス
プライン歯43の数に相当する個数だけ順次その側方に列
設して構成され、全体として円板状形態を有している。
そして、このパンチ１を構成する各パンチピース11,11,
・・相互間には、それぞれ適度の弾性を有する板状の弾
性部材10が介在されている。

このように構成されたパンチ１は、第１図に示すよう
に、上記押圧板２と支持板３との間の隙間部25内に配置
される。そして、この状態においては、上記押圧板２と
支持板３とによってその押圧方向（即ち、パンチ１の厚
さ方向）の位置保持がされる。尚、この場合、上記隙間
部25の高さ寸法は、パンチ１の厚さ寸法よりも若干大き
目に設定されている。また、このパンチ１は、上記隙間
部25内への配置状態においては、上記押圧板２の外周部
に下方に向けて突設した外れ止めリング９によってその
径方向への移動が規制されるようになっている。

従って、パンチ１を構成する各パンチピース11,11,・・
は、これに周方向への荷重が作用した場合には、該各パ
ンチピース11,11,・・相互間に配置された弾性部材10を
弾性変形させてそれぞれその周方向に変位可能とされ
る。

尚、この実施例においては、この各パンチピース11,11,
・・の周方向への変位を容易ならしめる為に、上記押圧
板２の下面と支持板３の上面にそれぞれその径方向に延
びる第１油溝17と第２油溝18を形成し、これら各油溝1
7,18を、上記押圧板２のボス８の内周面に形成した第２
油溝18及び上記カラー７の内周面に形成した第４油溝20
をそれぞれ介して該カラー７の上端面7aに開口した注油
口15に連通させ、該注油口15に注油された潤滑油をパン
チ１の上下両面側に供給し得るようにしている。

このように構成された油圧ユニットＸは、上記油圧ユニ
ット５により上記パンチ１を上下方向（矢印Ａ−Ｂ方
向）に移動させ、該パンチ１の下動位置（第１図に鎖線
図示する位置。符号１′）において後述するように上記
ハブスリーブ40の各スプライン歯43,43,・・のチャンフ
ァ頂部に押圧成形を行うことができるようになってい
る。

治具ユニットＹ 治具ユニットＹは、上記ハブスリーブ40を横に寝かせた
状態で載置し且つこれを上下方向（即ち、軸方向）、横
方向（即ち、径方向）及び周方向に支持するワーク支持
台31と、該ワーク支持台31を球面軸受33を介して三軸方
向に揺動可能に支持する基台32とを有している。尚、第
１図において符号34はワーク支持台31と基台32との周方
向の位置決めを行う回り止めキー34である。

また、上記ワーク支持台31によるハブスリーブ40の軸方
向の支持は該ワーク支持台31の上面31aとハブスリーブ4
0のスリーブ本体下面41aとが当接することによって、ま
た径方向の支持は該ワーク支持台31の上面上に突出する
突起部31bがハブスリーブ40のスプライン42の内周側に
嵌入してその外周面31cが該スプライン41の内周面に当
接することによって、さらにハブスリーブ40の周方向の
支持（位置決め）は上記突起部31bの適所に突設した突
片31dが上記スプライン42の一つの歯間に係入すること
によって、それぞれ行なわれる。

さらに、上記ワーク支持台31に設けたブラケット27に
は、上記押圧ロッド４と平行方向に向けてガイドロッド
28が立設されている。そして、このガイドロッド28の上
部は上記押圧板２側に設けたブラケット29の係合溝30内
に係入されており、該ガイドロッド28と係合溝39との係
合により上記パンチ１とハブスリーブ40との周方向の相
対的な位置決めが行なわれる。

チャンファ成形作業 続いて、上記チャンファ成形装置Ｚを使用してのチャン
ファ頂部のＲ成形作業をその作業手順を追って説明す
る。

先ず、第１図に示すように、パンチ１をその上動位置
（実線図示位置）に設定した状態において、治具ユニッ
トＹのワーク支持台31上にハブスリーブ40をセットす
る。この場合、ハブスリーブ40の各スプライン歯43,43,
・・のチャンファ44は、第４図に示すように、鋭角状に
尖った状態となっている。また、第４図に示すように、
各スプライン歯43,43,・・の上方にはパンチ１の各成形
凹部12,12,・・が対応せしめられている。

この状態で、油圧ユニット５を作動させて、第１図及び
第４図にそれぞれ鎖線図示するように、パンチ１をその
上動位置から下動位置に降下させて該油圧ユニット５の
押圧力により該パンチ１の各成形凹部12,12,・・を対応
するスプライン歯43,43,・・のチャンファ44上に当接さ
せ且つこれをさらに押圧し該各成形凹部12,12,・・の弧
面状の成形面をして該各チャンファ44,44,・・の頂部44
aをそれぞれ塑性変形させて丸める（Ｒ成形）。

このＲ成形時において、上記各成形凹部12,12,・・と各
チャンファ44,44,・・の頂部44aとが上下方向において
正確に対応していれば何等問題はない訳であるが、加工
上の誤差によって例えば、第４図の中央のスプライン歯
43のように、そのチャンファ44の頂部44aの左右方向の
振り分けが狂っているような場合には、該チャンファ頂
部44aとこれに対応する成形凹部12の中心との間に周方
向に寸法S₀のズレが生じる。このような場合において、
例えば、従来のようにパンチ１が一体的に構成されてい
ると上記ズレを吸収することができないために正確なＲ
成形が行えないことは既述の通りである。

ところが、この実施例のものにおいては、上述のよう
に、パンチ１が各成形凹部12,12,・・毎に周方向に分断
形成され、しかもこの各パンチピース11,11,・・がその
左右両側に配置された弾性部材10,10の弾性変形によっ
て左右方向（パンチ１の周方向）に移動可能とされてい
るため、パンチ１の下動に伴って振り分け誤差のあるチ
ャンファ44の頂部44aがこれに対応する成形凹部12の左
右いずれか一方側の成形面に当接した場合に、該成形面
にパンチピース11を周方向に押圧する力が作用し、この
パンチピース11該成形面をガイド面として振り分け誤差
が生じている方向に回転され、結果的に該パンチピース
11の成形凹部12は第４図に鎖線図示するように、振り分
け誤差のあるチャンファ44に対して確実に嵌合し、その
頂部44aをＲ成形する。

即ち、この実施例のチャンファ成形装置Ｚによれば、ス
プライン歯43のチャンファ振り分け誤差の如何にかかわ
らず、各チャンファ44,44,・・に対して精度の良いＲ成
形を行うことができるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例にかかるチャンファ成形装置の
要部縦断面図、第２図は第１図に示したパンチの拡大斜
視図、第３図はパンチピースとこれに対応するチャンフ
ァの状態を示す拡大斜視図、第４図は実施例のチャンフ
ァ成形装置を使用してのＲ加工の作業状態説明図、第５
図は従来のチャンファ成形装置を使用してのＲ加工の作
業状態説明図である。 １……パンチ ２……押圧板 ３……支持板 ４……押圧ロッド ５……油圧ユニット 10……弾性部材 11……パンチピース 12……成形凹部 40……ハブスリーブ 41……スリーブ本体 42……スプライン 43……スプライン歯 44……チャンファ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】周方向に所定間隔で列設された各スプライ
   ン歯の軸方向端部にそれぞれ形成された鋭角状のチャン
   ファの頂部に対して、その内面を弧状の成形面とした成
   形凹部を有するパンチをスプライン軸方向から押圧し上
   記各成形凹部をして上記各チャンファ頂部をそれぞれ弧
   面状に塑性変形させるようにしたチャンファ成形装置で
   あって、上記パンチが、上記各成形凹部毎に周方向に分
   断された複数のパンチピースをその周方向に相対移動可
   能なる如く環状に配置して構成されていることを特徴と
   するチャンファ成形装置。