JPH07163606A

JPH07163606A - 人工骨補填材

Info

Publication number: JPH07163606A
Application number: JP5343389A
Authority: JP
Inventors: Katsutoshi Totsugi; 勝利戸次; Masaaki Hattori; 昌晃服部; Kazuo Kondo; 和夫近藤; Tadashi Kojima; 忠士小島
Original assignee: NGK Spark Plug Co Ltd
Current assignee: Niterra Co Ltd
Priority date: 1993-12-15
Filing date: 1993-12-15
Publication date: 1995-06-27

Abstract

(57)【要約】【目的】人工股関節への置換後に生じる寛骨の欠損の
補填に使用されるサポートリングに代え、補填後の弛緩
を生じにくい人工骨補填材を提供する。【構成】寛骨Ｋに取着される側が凸とする凸球面２を
なし、人工骨頭５２を包み込むソケット５３に取着され
る側が凹とする凹球面３をなす人工骨補填材１で、凹球
面３の球心Ｃ２と凸球面２の球心Ｃ１とを異ならせる。
人工骨頭５２の揺動によりソケット５３を介して凸球面
２に作用する力Ｐの方向は、人工骨頭５２の球心Ｃ２と
凸球面２の球心Ｃ１とが異なるため、凸球面２の接線方
向とならない。したがって、人工骨補填材１が弛緩しに
くい。この人工骨補填材１を水酸アパタイト製で、骨ね
じＮをねじ込んで寛骨Ｋにねじ止めして固定するように
すると、水酸アパタイトの生体親和性により生体骨が凸
球面２に密着するので接合が強固になる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、人工骨補填材に関し、
詳しくは変形性股関節症等により股関節が人工股関節に
置換（手術）された後に、この人工股関節を構成するソ
ケット（臼蓋ソケット）が、取着されている生体骨（骨
盤の寛骨）部位の骨粗鬆症等による欠損により弛緩した
ようなとき、その欠損部位を補填するために使用される
人工骨補填材に関する。

【０００２】

【従来の技術】人体の大腿骨等の骨頭が骨折や変形性股
関節症等によって損傷を受けた場合の治療に使われる人
工股関節として、図５に示したものが知られている。こ
のものは、大腿骨に打込まれる支柱５１の端部に設けら
れている人工骨頭５２と、これを揺動自在に包み込む中
空半球状をなすソケット５３からなり、置換はこのソケ
ット５３の外周面を介して寛骨Ｋに取着することで行わ
れる。一方、この手術後、長期間たち骨粗鬆症が進行す
るなどにより、ソケット５３が取着されている寛骨Ｋの
部位が徐々に欠損して広がり、正規の位置から移動やず
れたりして弛緩を起すことがある。

【０００３】こうした場合、そのソケット５３を正規の
位置に保持するための治療が必要となるが、その治療に
は、サポートリング６１と呼ばれる金属（ステンレス
鋼）製の人工骨補填材が使用される。このものは、同図
に示したように、貫通孔６２を備えて略中空半球状（お
椀状）をしており、欠損した部位、つまりソケット５３
に接する欠損した寛骨Ｋの部位に、隙間に自己の骨や骨
セメントといわれる医療用の接着剤（人工骨材）Ｊを補
填することなどにより配置され、人工股関節を正規の位
置に保持するようにしたものである。このサポートリン
グ６１は、その凸球面６３を骨セメントＪを介する等し
て寛骨Ｋに対し正規の位置となるようにして固定し、そ
の凹球面６４をもって寛骨の代用とするものである。な
お、この際貫通孔６２により余剰の骨セメントＪが内側
の凹球面６４側に押し出される。そして、サポートリン
グ６１の取着後は、その凹球面６４に当初の置換と同様
にして骨セメントＪを流し込む等してソケット５３およ
び人工骨頭５２を再度置換していた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このサポート
リング６１には次のような問題があった。すなわち、歩
行時などに人工骨頭５２がソケット５３の内面を揺動す
るときは、摩擦によってソケット５３に回転力が作用
し、この回転力はソケット５３に一体化されたサポート
リング６１にもその凸球面６３において接線方向に力Ｐ
として作用する。つまり、人工骨頭５２の球心（中心）
Ｃとサポートリング６１の凸球面６３の球心Ｃが同一の
ため、サポートリング６１は、処置された部位において
その内周面に沿うようにして回転する作用を受ける。こ
のように、サポートリング６１は、患者が日常生活をす
る上で、その凸球面６３において接線方向に正逆（前
後）方向に繰返し回転作用を受けるため、凸球面（外周
面）６３と寛骨Ｋ側との接合が弛緩を生じ、やがて分離
してしまうといった問題があった。すなわち、上記従来
のサポートリング６１による場合には、その構造上、再
置換（手術）後に緩みが生じやすく、したがって、再々
置換（手術）を要することがあった。

【０００５】また、上記したように、サポートリングは
金属製であるため、生体親和性がなく、したがって寛骨
に対する固定は骨セメントなどの接着剤による接合によ
らざるを得ないが、この場合にはその硬化（固化）過程
における反応熱により生体骨が冒されるといった指摘や
腐食による耐久性も問題視されていた。

【０００６】本発明は、この様な問題点に鑑みて案出さ
れたものであり、その目的とするところは、人工股関節
への置換後において生じる寛骨の欠損の補填に使用され
る上記サポートリングに代えて、補填後における弛緩の
生じにくい人工骨補填材を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明は、人工骨頭を包み込むソケットと寛骨等と
の間に取着され、その寛骨等に取着される側を凸とする
凸球面をなすと共に前記ソケットに取着される側を凹と
する凹球面をなす人工骨補填材において、前記凹球面の
球心と前記凸球面の球心とを異ならせたことにある。そ
して、この人工骨補填材は、ねじ部材をねじ込んで寛骨
等にねじ止めするために前記凸球面に開口する貫通孔を
備え、かつ水酸アパタイト製とするとよい。さらに、前
記凹球面に、前記凸球面に貫通しない凹部を形成してお
くのが好ましい。

【０００８】

【作用】本発明に係る人工骨補填材によれば、ソケット
に取着される側の凹球面の球心、すなわち人工骨頭の球
心と、寛骨等に取着される側の凸球面との球心が異なっ
ているために、患者に置換された後、人工骨頭の揺動
（回転運動）によりソケットを介して作用する回転力の
作用方向は人工骨補填材の凸球面においてその接線方向
には働かない。つまり凸球面における力の作用方向と凸
球面の接線方向とが異なる。したがって、人工骨補填材
の回転作用が寛骨等の内周面に沿う周方向には作用しな
いから、弛緩が防止される。

【０００９】また、水酸アパタイト製で前記貫通孔を有
する人工骨補填材にあっては、骨ねじ（手術用に使用さ
れるタッピングスクリュー）で生体骨（寛骨）にねじ込
んだ後、所定時間経過後に水酸アパタイトによる生体骨
との親和性によって凸球面が寛骨（生体骨）に強固に密
着、一体化する。その上に、このものにあっては、従来
のように骨セメントの硬化過程における反応熱により生
体骨が冒されるといった問題もなくなる。さらに、前記
凹球面に凸球面に貫通しない凹部の形成されたものにあ
っては、骨セメントで凹球面とソケットの外周面とを接
着したとき、その凹部に骨セメントが入り込むことがで
きる。したがって、凹部に入り込んだ骨セメントがその
固化、接着後において回り（ズレ）止め作用をなすの
で、この間における人工骨補填材とソケットとの弛緩や
ズレも防止される。そして、凹部は凸球面に貫通してい
ないために、凸球面側つまり生体骨（寛骨）に骨セメン
トが接することもなく、したがって生体骨が冒されるこ
ともない。

【００１０】

【実施例】次に本発明に係る人工骨補填材を具体化した
一実施例について、図１ないし図４を参照して詳細に説
明する。ただし、本例のものは、水酸アパタイト製で、
図１に示したように、大腿骨の人工骨頭５２を包み込む
ソケット５３と寛骨Ｋとの間に取着する場合を例示す
る。図中１は、本例に係る人工骨補填材であって、球心
Ｃ１，Ｃ２が相互に異なる凸球面２と凹球面３をもち、
図２ないし図４に示した形に形成されている。すなわ
ち、本例では人工骨補填材１は、略半球体を１つの平面
（略１／２半円）４でもってカットしてなる略１／３球
体をベースに、凸球面２の球心Ｃ１に対して偏在した点
を球心Ｃ２として他方の略半円状の平面５を凹ませるよ
うにして凹球面３を形成する一方、凸球面２の両側（図
２Ａの左右両側）が、前記平面４に略垂直となるように
カットされた扇形面６，６を備えている（図２Ｂ参
照）。そして、凹球面３の球心Ｃ２は人工骨頭５２（お
よびソケット）の球心と一致するようになっている。た
だし、凹球面３の半径Ｒ２は、ソケット５３の外周面の
半径（Ｒ球）より若干大きい半径（Ｒ球）に、また凸球
面２の半径Ｒ１は、寛骨Ｋの欠損状況に応じた適宜の大
きさに、それぞれ設定されている。

【００１１】そして本例においては、前記平面４から凸
球面２に向けて直線的に貫通する貫通孔７が図２Ｂにお
ける中央縦線（図示せず）に関し対称に、３箇所、同平
面４に傾斜して形成されている。ただし、骨ねじＮを沈
頭方式で挿通できるように、同平面４よりの開口部付近
が段付き状に拡径されている。また、凹球面３側にはそ
の球心Ｃ２からみて半径方向に３か所、凸球面２に貫通
しない円形断面をなす凹部８が図２Ａにおける中央縦線
に関し対称的に形成されている。こうして、本例の人工
骨補填材１は、その外観が図３及び図４に示す形状をな
すよう、水酸アパタイトからなる成形体を焼成すること
により形成されている。

【００１２】このように構成された本例の人工骨補填材
１は、手術により、患者の寛骨Ｋの悪化部位を凸球面２
と合致するように球面に処置した後、補填される。この
際、寛骨Ｋへの固定は骨ねじＮを貫通孔７に挿通してね
じ込むことによる。また、凹球面３とソケット５３との
一体化（固定）は、その間に所定の骨セメントＪを流し
込んで、それを固化させればよい。

【００１３】かくては、図１に示したように、骨セメン
トＪはそれが凹部８に入り込んで固化し、これが回り止
め作用を果たすので、ソケット５３と人工骨補填材１と
は強固に一体化される。そして、退院後に患者が歩行
し、人工骨頭５２の（回転）力Ｐがソケット５３を介し
て人工骨補填材１に作用しても、その力Ｐは凸球面２の
接線方向には作用しないので、寛骨Ｋにおける弛緩が防
止される。しかも、本例においては水酸アパタイト製と
したため、その生体骨との親和性により所定の期間（時
間）経過後は、寛骨Ｋの生体骨が凸球面２に密着する。
したがって、骨セメントによる接着力以上の強度でもっ
て強固に寛骨Ｋと一体化する。これにより、寛骨Ｋと人
工骨補填材１、そして人工骨補填材１とソケット５３
（人工股関節）とが強固に固定される。その上に、上記
したように、人工骨頭５２の回転による人工骨補填材１
の凸球面２における力Ｐの作用方向がその接線方向（周
方向）に作用しないから、高い耐久性が得られる。な
お、本例では凹球面３とソケット５３の外周面とは骨セ
メントＪで固定されているが、それが生体骨に触れるこ
とがない。したがって、生体骨への悪影響も回避でき
る。

【００１４】なお、本例では、生体骨との密着性を高め
るために水酸アパタイト製としたが、その密着性を高め
るためには、凸球面２の表面（粗度）はなるべく粗い方
がよい。また、本例では、骨ねじＮ用の貫通孔７を半円
状の平面４から凸球面２に貫通して開口させたが、同様
にして骨ねじを沈頭方式で挿通できるようにした貫通孔
としておけば凹球面３から凸球面２に貫通して開口させ
ることも可能である。なお、貫通孔の数や配置は、人工
骨補填材１のサイズなどに応じて適宜に設定すればよ
い。凹球面３の凸球面２に貫通しない凹部８について
は、骨セメントＪが入り込んで固化したときに回り止め
作用が果たされるものであればよく、その径ないし断面
形状或るいは深さなどは適宜に設計すればよい。

【００１５】上記実施例では、水酸アパタイト製とし
て、生体骨との固定を両者の親和性による密着によるも
のとし、所定期間の経過をまって両者が密着、一体化す
るように、手術時に骨ねじで固定しておくための構造を
例示したが、本発明においては、骨ねじ用の貫通孔を設
けずに、骨セメントで寛骨に取着することも可能であ
る。生体骨への影響はあるものの、人工骨補填材の回転
作用が寛骨の取着されている内周面に沿う周方向には作
用しないから、弛緩の防止には有効である。ただしこの
場合には、水酸アパタイト製とすることなく、その他の
セラミック製、或るいは人体適合性のある金属（ステン
レス鋼、チタン合金）製など、適宜の材質を選択して使
用すればよい。

【００１６】また、凹球面における凸球面に貫通しない
凹部は必ずしも設けなくともよいが、ソケットとの接合
強度の向上のため、なるべく設けるとよい。なお、この
凹部に代えて、凹球面に、縦又は横に、或るいは斜めに
所定ピッチ（又はランダム）で凹凸を設けておく技術も
例示できる。つまり、凹球面に凹凸が形成されており、
固化した接着剤が入り込んでソケットの外周面に対して
滑らないようにすることでも同様の効果が期待される。

【００１７】なお、凸球面と凹球面の球心は、なるべく
離れているのが人工骨頭の回転作用を凸球面における接
線方向に作用させないために好ましい。なお、本発明に
おける凸球面、凹球面をなす球面は、真球面はもちろん
のこと、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、あら
まし球面をなすようなものも含む。本発明に係る人工骨
補填材は、その適用範囲は人工股関節用に限定されるも
のでなく、その他の人工関節に適用できる。

【００１８】

【発明の効果】本発明に係る人工骨補填材の効果は次の
ようである。この人工骨補填材が患者に置換された後、
人工骨頭の揺動（回転運動）によりソケットを介して凸
球面に作用する力は、凸球面の接線方向には働かない。
つまり、人工骨補填材を寛骨の内周面に沿う方向に回転
させようとする作用が従来のサポートリングに比べて小
さくなる。したがって、その分、弛緩し難くくなる。こ
の結果、再々弛緩が不要となるなど、長期間安定した使
用が確保でき、患者にとっては福音となる。

【００１９】とくに、水酸アパタイト製で貫通孔を有す
るものにあっては、骨ねじをねじ込むことで寛骨に固定
ができるので手術時間の短縮が図れる。しかも置換後に
おいては水酸アパタイトの生体骨との親和性により、所
定時間経過後に凸球面が寛骨（生体骨）と一体化するの
で、強度の高い固定が得られる。その上に、従来のよう
に骨セメントの硬化過程における反応熱により生体骨が
冒されるといったこともなくなる。さらに、凹球面に凸
球面に貫通しない凹部があるものにあっては、骨セメン
トでソケットを固定し時、骨セメントが生体骨に触れる
ことなく硬化し、その硬化後は回り止め作用をなすの
で、生体骨を冒すことなくかつ強固な固定が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る人工骨補填材の実施例の人工股関
節への取着状態を説明する縦断正面図である。

【図２】図１に使用した人工骨補填材を示すもので、Ａ
は凹球面側から見た正面図、Ｂは同正面図に対する底面
図、ＣはＡにおける中央（Ａ−Ａ線）縦断面矢視図であ
る。

【図３】図２の人工骨補填材を凸球面側から見た斜視図
である。

【図４】図２の人工骨補填材を凹球面側から見た斜視図
である。

【図５】従来の人工骨補填材（サポートリング）の人工
股関節への取着状態を説明する縦断正面図である。

【符号の説明】

１人工骨補填材２凸球面３凹球面７凸球面に開口する貫通孔８凸球面に貫通しない凹部Ｃ１凸球面の球心Ｃ２凹球面の球心Ｎねじ部材５２人工骨頭５３ソケットＫ寛骨

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者小島忠士宮城県仙台市泉区虹の丘１丁目６番10号

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】人工骨頭を包み込むソケットと寛骨等と
の間に取着され、その寛骨等に取着される側を凸とする
凸球面をなすと共に前記ソケットに取着される側を凹と
する凹球面をなす人工骨補填材において、前記凹球面の
球心と前記凸球面の球心とを異ならせたことを特徴する
人工骨補填材。
【請求項２】ねじ部材をねじ込んで寛骨等にねじ止め
するために前記凸球面に開口する貫通孔を備え、かつ水
酸アパタイト製とした請求項１記載の人工骨補填材。
【請求項３】前記凹球面に、前記凸球面に貫通しない
凹部を形成した請求項１又は２記載の人工骨補填材。