JPH07151816A - フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法 - Google Patents

フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法

Info

Publication number
JPH07151816A
JPH07151816A JP29857593A JP29857593A JPH07151816A JP H07151816 A JPH07151816 A JP H07151816A JP 29857593 A JP29857593 A JP 29857593A JP 29857593 A JP29857593 A JP 29857593A JP H07151816 A JPH07151816 A JP H07151816A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
filament
current
state
vacuum
magnitude
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP29857593A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Okutsu
弘 奥津
Shigehiko Masubuchi
成彦 増渕
Hisashi Suzuki
尚志 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ulvac Inc
Original Assignee
Ulvac Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ulvac Inc filed Critical Ulvac Inc
Priority to JP29857593A priority Critical patent/JPH07151816A/ja
Publication of JPH07151816A publication Critical patent/JPH07151816A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Fluid Pressure (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 フィラメントの劣化状態を測定する方法と、
そのフィラメントの交換時期を示す方法を提供する。 【構成】 フィラメント2にフィラメント電流Ifを通
電して熱電子10を放出させる際、エミッション電流I
eを一定に保つためフィラメント電流Ifを制御すると共
にその値を検出してフィラメントの劣化状態を測定し、
また、測定した劣化状態と予め設定された劣化状態とを
比較して、フィラメント2の交換時期を指示すことを特
徴とする。 【効果】 真空を破壊することなく、また、フィラメン
トの使用される真空装置を稼働状態におきながらフィラ
メントの劣化状態が測定でき、また、交換時期を指示す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】真空中に置かれたフィラメントか
ら放出される熱電子を用いる技術分野一般に広く用いる
ことができる。
【0002】
【従来の技術】従来より、フィラメントを真空中に置
き、これにフィラメント電流を通電して加熱し、高温状
態にして熱電子を放出させることは行われており、この
熱電子を測定試料に照射して試料表面の拡大像を得たり
(電子顕微鏡)、熱電子を気体分子に衝突させ、これによ
り生成したイオンの数を計測して、そのフィラメントの
置かれた雰囲気の真空度を測定したり(熱陰極型電離真
空計)、真空機器のリークの有無を判別したり(リークデ
ィテクター)、生成イオンをマスフィルタにかけて残留
ガスの成分を測定し、その組成を分析したり(四重極質
量分析計)する等、広範な用途に供せられている。
【0003】これらのうち、熱陰極管型電離真空計を例
にとり、フィラメントにフィラメント電流が通電されて
発熱し、熱電子が放出される状態を説明する。
【0004】一般に、熱陰極型電離真空計は高真空領域
の圧力測定では欠かすことのできない真空計であり、フ
ィラメントから放出された熱電子が気体分子に衝突して
生成せしめたイオンをイオンコレクタで収集し、その時
に該イオンコレクタに流れた電流の大きさを測定し、こ
れにより生成イオンの数を計測して気体の密度、即ち真
空度の測定を行っている。
【0005】この熱陰極型電離真空計の構造を図3に示
す。aはフィラメント電流の通電により発熱して熱電子
を放出するフィラメントであり、グリッドb(陽極)とイ
オンコレクタcと共にガラス管4内に気密に保持されて
いる。
【0006】この熱陰極型電離真空計は、成膜装置等の
真空機器に気密に取り付けられており、その真空系の真
空度を計測しうるように、前記ガラス管4の内部はその
真空機器内と同じ真空系に置かれている。
【0007】前記フィラメントaと前記グリッドbの間
には電圧が印加されており、フィラメントaから放出さ
れた熱電子はグリッドbに向かって加速される。この放
出された熱電子は、飛行中に残留気体分子と衝突すると
これを電離させ、正イオンと電子を生成せしめつつ前記
グリッドbに到達し、前記フィラメントaと前記グリッ
ドbの間にエミッション電流Ieを生じさせる。
【0008】一方、前記イオンコレクタcは前記グリッ
ドbより低い電位に置かれており、従って、前記生成し
た正イオンはイオンコレクタcに捕らえられ、他方、電
子は高い電位に置かれたグリッドbに捕らえられ、イオ
ンコレクタcとグリッドbの間にイオン電流Iiを生じ
させる。
【0009】この時、前記フィラメントaから放出され
る熱電子の数、即ちエミッション電流Ieの大きさを一
定に保っておけば、前記イオン電流Iiの大きさは残留
気体の密度に比例するようになる。従って、このイオン
電流Iiの大きさを測定することは残留気体の密度を計
測することと等価であり、これによりフィラメントaが
置かれた真空系の真空度を測定することが可能となる。
【0010】ところで、一般的な熱陰極型電離真空計で
は、図3に示すように、グリッドbがフィラメントaを
中心として螺旋状に巻かれている。この螺旋の間隔は、
例えば3mm程度等、放出電子の大きさよりも極めて大き
くなるように構成されている。このように、前記螺旋の
間隔が極めて広いため、加速された電子は直ちにグリッ
ドbに捕えられずに、むしろグリッドbの周辺を何回も
往復して漸くグリッドbに到達すると考えられる。そし
て、このような往復の回数が多い程熱電子の飛行距離も
長くなり、同じ大きさのエミッション電流で生成しうる
イオンの数、即ちイオン生成確率が高まるので、効率の
面からは好ましい。
【0011】但し、前述したように、熱陰極型電離真空
計ではエミッション電流Ieの大きさを一定に保つ必要
がある。このため前記エミッション電流Ieの電流の値
を測定すると共に、フィラメント電流Ifの供給源にフ
ィードバック系を接続し、これによりフィラメント電流
Ifを制御して、エミッション電流Ieを一定値に保って
いる。
【0012】このような熱陰極型電離真空計は成膜装置
内の成膜条件を監視したり、プロセスフローの制御を行
う場合の真空度の測定等に広く用いられており、例えば
スパッタ装置や蒸着装置等の他、真空を取り扱う機器に
は広く不可欠のものとなっている。
【0013】しかしながら、かかるフィラメントは無限
に寿命があるものではなく、通電量の増加により徐々に
劣化して、ついには断線して使用不能となったり、所定
のエミッション電流が得られなくなって使用不能となっ
たりする等、一定の寿命を有している。
【0014】例えばタングステン(W)フィラメント等の
金属フィラメントでは、通電量の増加、即ち通電時間の
経過により劣化し、所望のエミッション電流を得るため
に必要なフィラメント電流は減少するが、ある時突然断
線に到り使用不能となることが一般に知られている。
【0015】一方、例えばイリジウム(Ir)母材の表面
に酸化トリウム(ThO2)や酸化イットリウム(Y23)
等の酸化物をコーティングしたフィラメントでは、劣化
の進行につれて所望のエミッション電流を得るために必
要なフィラメント電流が増加することが知られており、
劣化の進行に伴って、所望のエミッション電流を得るた
めに必要なフィラメント電流を電源が供給できなるとそ
のフィラメントは使用不能となってしまうので、事実上
寿命が尽きることとなる。
【0016】ところで、そのような劣化現象は、フィラ
メントの通電時間の経過により進行するので、フィラメ
ントへの通電を行っている最中に突然使用不能状態が発
生するのが普通であり、熱陰極形電離真空計ではフィラ
メント交換が不可能な真空度の測定中に、四重極管質量
分析器では真空系の残留ガス分析中に、電子顕微鏡では
試料の観察中によく発生する。そして、この使用不能状
態が発生すると、一旦真空を破壊してフィラメントを交
換し、再度真空状態を作って作業を再開しなければなら
ない等、作業に支障を来してしまう。
【0017】特に、熱陰極型電離真空計においては、タ
ングステンフィラメントが断線すると、真空が破壊され
た状態を示す信号と同様の信号を発生させてしまうため
事態は一層深刻である。即ち、成膜装置等の真空機器に
はインターロック等の安全装置が設けられているのが普
通であり、真空が破壊された状態を示す信号がこの安全
装置を作動させると装置の運転を緊急停止させてしまう
こととなる。そして、かかる緊急停止があった場合は、
実際には真空状態が破壊されていなくても、その時に真
空機器内にあった製品が不良品になってしまう等、損害
を被ることも少なくなかった。
【0018】このように、従来技術ではフィラメントの
使用中にその寿命が突然に尽きるため、その前にフィラ
メントの劣化状態を知る技術の開発が望まれていた。し
かも、金属フィラメントと酸化物がコーティングされた
フィラメントでは、その寿命も、前者は断線で、後者は
電源の電流供給能力で決まるため、これらを統一的に取
り扱う技術が不可欠であるとされた。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
の不都合に鑑みて創作されたもので、その目的は、真空
状態を破壊しなくてもフィラメントの劣化状態を測定す
ることができるフィラメント劣化状態測定方法を提供す
ることにあり、また、その測定したフィラメントの劣化
状態と予め設定された状態とを比較して、フィラメント
の交換時期を示すフィラメント交換時期指示方法を提供
することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に請求項1記載の発明は、フィラメント電流の通電によ
り発熱して熱電子を放出するフィラメントの、通電量の
増加により劣化する状態を測定するフィラメント劣化状
態測定方法であって、前記フィラメントを真空雰囲気に
置き、前記フィラメント電流を制御して、前記熱電子の
流れにより作られるエミッション電流を所望の大きさに
保ったときの前記フィラメント電流の大きさを検出して
そのフィラメントの劣化状態を測定することを特徴と
し、請求項2記載の発明は、フィラメント電流の通電に
より発熱して熱電子を放出するフィラメントの、通電量
の増加により劣化する状態を測定するフィラメント劣化
状態測定方法であって、前記フィラメントを真空雰囲気
に置き、前記フィラメント電流を制御して、前記熱電子
の流れにより作られるエミッション電流を所望の大きさ
に保ったときの前記フィラメント電流の大きさを検出し
てそのフィラメントの劣化状態を測定し、該フィラメン
トの劣化状態と、予め設定された劣化状態とを比較して
フィラメントの交換時期を示すことを特徴とする。
【0021】
【作用】フィラメントにフィラメント電流を通電すれ
ば、ジュール熱が発生してそのフィラメントは発熱す
る。このとき、そのフィラメントが真空状態に置かれて
いれば、熱電子が放出されるので、この熱電子の流れに
よりエミッション電流が形成される。
【0022】前記フィラメント電流を調節し温度制御を
行えば、前記熱電子の放出量を調節することができるの
で、これにより前記エミッション電流を所望の大きさに
保つことができる。そして、通電量の増加に従って前記
フィラメントは劣化するが、所望のエミッション電流を
保つために必要なフィラメント電流の大きさは、使用し
たフィラメントがタングステンフィラメント等の金属フ
ィラメントであれば劣化に伴って減少し、酸化物をコー
ティングしたフィラメントであれば劣化に伴って増加す
るので、フィラメントに通電している状態でフィラメン
ト電流の大きさを検出すれば、使用フィラメントの種類
に基いて、フィラメントの劣化状態を測定することがで
きる。
【0023】更に、前記エミッション電流の制御限界
や、電源能力等により決まる使用限界の劣化状態を予め
設定しておき、その劣化状態と、測定した劣化状態とを
比較すれば、フィラメントの交換時期を示すことができ
る。
【0024】
【実施例】本発明の実施例を、図1に示す熱陰極型電離
真空計を用いて説明する。図1を参照して、2は熱陰極
型電離真空計のフィラメントであり、その一端は第1電
流計3を介して可変電源4のプラス端子側に接続されて
おり、他端は前記可変電源4のマイナス端子側に接続さ
れると共に第2電流計5を介して接地されており、該フ
ィラメント2は、グリッド11、イオンコレクタ16と
共に真空状態に置かれている。前記可変電源4の起動に
より前記フィラメント2にフィラメント電流Ifが流れ
ると、フィラメント2は発熱し、熱電子10が放出され
るようになる。
【0025】前記グリッド11は、マイナス端子側を接
地させた電源12のプラス端子に接続され、前記フィラ
メント2に対して高い電位に設定されている。従って、
前記フィラメント2から放出された熱電子10は該グリ
ッド11に向けて加速され、前記グリッド11に到達し
てエミッション電流Ieを生じさせる。該熱電子10は
また、前記グリッド11に到達する前に、気体分子に衝
突するとこれを電離させ、正イオン14と電子を生成さ
せる。
【0026】前記イオンコレクタ16は第3電流計17
を介して接地されており、前記グリッド11に対して低
い電位に設定されているので、このとき生成された正イ
オン14は該イオンコレクタ16に集められる。また、
同時に生成された電子は電位の高い前記グリッド11に
集められるから、前記グリッド11と前記イオンコレク
タ16の間にイオン電流Iiが生じるので、前記第3電
流計17でその値を検出すれば、前記フィラメント2、
前記グリッド11及び前記イオンコレクタ16が置かれ
た真空系の真空度を測定することができる。
【0027】このとき、前記エミッション電流Ieの値
が一定でないと、フィラメントが置かれた真空系の真空
度に変化がなくても、前記イオン電流Iiの値が変わっ
てしまい、真空度の測定が行えなくなる。
【0028】そこで、前記第2電流計と前記可変電源4
の間に比較器21を設け、基準信号発生器22の出力す
る信号を所望のエミッション電流Ieの大きさに設定し
ておいて、この信号値と、前記第2電流計5で測定した
実際に流れているエミッション電流Ieの値とを前記比
較器21に入力し、両信号値を比較して誤差分を打ち消
すように前記可変電源4の出力値を変化させ、前記フィ
ラメント電流Ifの値を制御することで、前記エミッシ
ョン電流Ieを所望の大きさに保つようにしている。な
お、このようにエミッション電流Ieを所望の大きさに
保つ必要があるのは、四重極管質量分析器や電子顕微鏡
においても同様である。
【0029】ところで、一般に、タングステンフィラメ
ントの線径は、特にその熱電子を放出している部分は、
通電量の増加、即ち使用時間の経過につれて細くなって
いき、ついには真空度の測定中等のフィラメント通電中
に突然断線してしまう。このような不都合を回避するた
めには、フィラメント使用前、即ちフィラメント周囲の
雰囲気を真空状態にする前に、フィラメントの線径を直
接測定したり、フィラメントの抵抗値を測定して線径を
求めたりすることも理論上は可能である。
【0030】しかしながら、フィラメント周囲にはグリ
ッドが配置されていたり、フィラメントが容器内に納め
られていたりする等、現実には直接線径を測定すること
は不可能である。また、常温ではフィラメントの抵抗値
自体が小さいため、真空機器に取り付けられたフィラメ
ントの経時変化を正確に測定することは困難である。一
方、フィラメントを加熱して抵抗値を測定する場合に
は、大気中で行うとフィラメント自体が燃え尽きてしま
うため、結局は真空度を測定するときと同じ状態に置か
なければ抵抗値の測定が行えない。
【0031】そこでフィラメントの劣化状態を測定する
ために線径や抵抗値に代わる物理量を検出することが必
要になる。
【0032】ところで、フィラメント電流Ifとその時
にフィラメントから放射される熱量Q(W/m2)との
間には、真空中では次の関係があることが知られてい
る。
【0033】
【数1】
【0034】ここで、ρは比抵抗(Ω・m)、rは半径
(m)(線径は 2・r となる。)である。
【0035】上式において、エミッション電流を一定に
保っている間はフィラメント電流も一定であるので、フ
ィラメントから放射される熱Qは理想的には一定であ
る。従って、フィラメント電流Ifとフィラメントの半
径rとの間には次の関係が成立することとなる。
【0036】
【数2】
【0037】しかしながら上式は、真空度を考慮してい
ない理論式である。即ち、フィラメントが真空状態に置
かれていても、現実には真空中にも残留気体分子が存在
するため、フィラメントとこの残留気体分子との間で熱
交換が生じると、フィラメント電流Ifと半径rとの関
係が(2)式からずれる虞がある。
【0038】そこで、予め用意した種々の線径のタング
ステンフィラメントを用いて真空度Pを変化させ、フィ
ラメントの線径 2・r とフィラメント電流Ifの関係
に与える残留気体(真空度)の影響を測定した。この時は
エミッション電流Ieが1mAに成るようにフィラメン
ト電流Ifを制御しており、その測定結果を表1に示
す。
【0039】 (圧力Pの単位はパスカル)圧力P(単位 パスカル)が
変わってもフィラメント電流Ifと線径 2・r との間
の関係に大きな変化はないことがわかる。なお、このと
きの周囲温度は20〜26℃、測定ガスはN2であり、
測定は、フィラメントに3時間以上通電した後に行っ
た。
【0040】なお、表1をグラフ化したものを図4に示
す。
【0041】表1の測定値と(1)、(2)式から算出され
るフィラメント電流Ifの理論値とを比較する。測定値
には表1の圧力1×10- 3パスカルのものを用いて対
比して記載すると表2のようになる。
【0042】 この測定値と理論値とをグラフ化すると図5のようにな
る。理論値は実線で表し、測定値は白丸(○)で示す。
【0043】図5からわかるように、タングステンフィ
ラメントの場合は、エミッション電流Ieを一定に保っ
ていれば、フィラメント電流Ifはフィラメントの線径
2・r に依存する量となる。このように、真空度が多
少異なっても、測定値は理論式に良く一致している。従
って、フィラメント電流Ifを測定すれば、フィラメン
ト線径 2・r を検出することができることとなる。
【0044】次に、タングステンフィラメントの線径
2・r とそのフィラメントの劣化状態の関係を検討す
る。
【0045】エミッション電流Ieの大きさに支配的な
要因は、物理的には熱電子を放出するフィラメントの温
度であり、従って、エミッション電流Ieを一定に保つ
ことはフィラメントの温度を一定に保つことと等価であ
ると言える。ところが、タングステンフィラメント等の
金属フィラメントにおいては、前記エミッション電流I
eはフィラメントの全長に亘って放出されているのでは
ない、と考えられている。即ち、フィラメントの中でも
周囲に比して特に温度が高い部分から熱電子が主として
放出されるからであり、そのような高温部分はフィラメ
ントのうちで線径が細い部分である、と予想される。細
い部分は抵抗値が大きいため、通電した場合には、周囲
に比して特にその部分だけが高温になり易いからであ
り、そして、高温部分は残留気体との反応、蒸発も激し
いので、線径の細い部分は一層細くなり、そして、細く
なると更にその部分の温度が上がり易くなるという正帰
還ループが形成され、最終的に断線に到ると考えられ
る。
【0046】これをエミッション電流Ieとフィラメン
ト電流Ifの関係に置き換えてみると、タングステンフ
ィラメント等の金属フィラメントを使用してエミッショ
ン電流Ieを所望の一定値に保つ場合には、熱電子を放
出する部分のフィラメントの温度は一定である。そし
て、劣化の進行につれて、フィラメントのうち熱電子を
放出する部分の線径が次第に細くなるため、その部分を
所定温度にするために必要なフィラメント電流Ifは次
第に小さくなっていくこととなる。従って、このフィラ
メント電流Ifの大きさを測定することが、フィラメン
トのうちの最も細い部分の線形を測定していることとな
り、それはフィラメントの劣化状態を測定していること
と等価である。
【0047】そこで、一本のタングステンフィラメント
を使用して、これに継続して通電を行う場合のフィラメ
ント電流Ifの経時変化を測定した。この時の測定圧力
は約3×10- 1(パスカル)であり、周温を20〜26
℃に設定した。但し、表1におけるのと異なり、Arに
20%のO2を添加した測定ガスを用い、一種の加速試
験と言える状態でフィラメント電流Ifの経時変化の状
態を測定した。
【0048】測定結果を図2に示す。白丸(○)は測定
値であり、実線は測定値のうちで線形性が保たれている
ものを結んだ理想直線である。通電時間の経過につれ、
フィラメントは劣化し、所定のエミッション電流Ieを
流すのに必要なフィラメント電流Ifが減少している。
【0049】上記測定状態と同じ状態で、このフィラメ
ントと異なる線径のフィラメントを用いてフィラメント
電流Ifの測定を行う場合でも、例えばフィラメント電
流Ifの初期値が約3Aのフィラメントは、図2の経過
時間10hの点から劣化が開始され、そのフィラメント
電流Ifは前記直線に従った変化をすることが確認され
ている。
【0050】そして図2では、劣化の進行につれ、フィ
ラメント電流Ifの大きさが1Aを下回ったところのS1
点で断線に至っているが、前記フィラメント電流Ifの
値が約1.8Aになった時(S2点)を超えて通電する
と、測定値が前記理想直線から乖離し初めていることが
わかる。この理想直線からの乖離は、フィラメントに電
流を供給する電源の能力や、フィードバック系等の電流
制御系の性能により決まるものである。従って、この電
源と電流制御系を用いて、エミッション電流Ieを所望
の大きさに保つ実際の使用状態において、フィラメント
電流Ifを適宜検出していることで、そのフィラメント
の劣化状態を測定できるばかりでなく、その劣化状態と
前記S2点における状態(ここでは電流値1.8A)との
比較を行い、測定状態が前記S2点の状態になった時を
フィラメントの交換時期として指示すれば、エミッショ
ン電流Ieの制御性の良い範囲内でフィラメントを使用
することができるので、このフィラメントを用いて測定
した真空度等の精度も良く、また、真空度測定中等のフ
ィラメントへの通電中に突然断線するようなこともな
い。
【0051】具体的には図1において、フィラメント電
流Ifの電流値を測定する第1電流計3に表示部を設
け、フィラメントの劣化状態をフィラメント電流Ifの
大きさとして表示すると共に、制御部31にこのフィラ
メント電流Ifの電流値を入力し、その値と、予め設定
しておいた前記S2点のフィラメント電流の値とを、制
御部31の内部に設けた比較器で比較して、使用中のフ
ィラメントが前記S2点に到るまで劣化したか否かを検
出し、交換時期に到った時はその旨を表示装置32で表
示するように構成した。
【0052】このように、エミッション電流Ieを所望
の大きさに保つ場合は、その時のフィラメント電流If
を検出して使用中のフィラメントの劣化状態を測定でき
る。そして一般的に、フィラメント電流Ifの大きさ
は、フィラメントの初期状態での線径の大きさによら
ず、測定時のフィラメントの最も細い部分の線径で決定
されると考えられるから、異なる種類の線径のフィラメ
ントについても、エミッション電流Ieを同じ大きさで
使用するのであれば、フィラメント電流Ifを検出する
ことは、そのフィラメントの客観的な劣化状態測定して
いると言える。
【0053】一方、例えばイリジウム(Ir)母材の表面
に酸化トリウム(ThO2)や酸化イットリウム(Y23)
等の酸化物をコーティングしたフィラメントでは、通電
時間の経過につれて進行する劣化状態は、主として酸化
物の剥離や蒸発等の酸化物の脱落に起因する。しかしな
がら、そのような脱落がフィラメントの高温部、即ち熱
電子の放出能力が高い部分で生じているとは限らず、従
って、酸化物の脱落が生じている部分の位置と、熱電子
の放出能力が高い部分の位置との相対的な位置関係が異
なると、エミッション電流Ieを一定に保った場合のフ
ィラメント電流Ifの変化の様子が異なり得る。しかも
酸化物が脱落して全く消失した裸線部分から熱電子が放
出される状態もあり得るため、この点で金属フィラメン
トよりも劣化現象は複雑であり、線径や酸化物の脱落状
態と熱電子の放出状態とを正確に関連づけて捉えるのは
困難である。
【0054】しかしながら経験上、酸化物がコーティン
グされたフィラメントの場合は、劣化の進行に伴って、
エミッション電流Ieを一定値に保つ場合に必要なフィ
ラメント電流Ifの大きさは増加することが知られてい
る。従って、図1に示した熱陰極型電離真空計に、この
ような酸化物がコーティングされたフィラメントを使用
するような場合には、前記第1電流計3の検出するフィ
ラメント電流Ifが大きくなるにつれて劣化が進行して
いることとなる。そして、このフィラメント電流If
が、電源の電流供給能力を超えて大きくなると、そのフ
ィラメントは事実上使用できなくなる。そのような事態
を回避するためには、前記制御部31内の基準信号に、
電源が供給し得る電流の上限を示す大きさを予め設定し
ておき、この基準信号と、検出したフィラメント電流I
fの大きさとを比較して、フィラメント電流Ifの値が増
加して前記基準信号に達したときをフィラメント交換時
期として、前記表示装置32でその旨を表示するように
構成すればよい。
【0055】なお、熱電子を放出させるためにフィラメ
ントに流すフィラメント電流Ifは必ずしも直流である
必要はなく、例えば交流や、その導通角が制御されたも
のでもよい。そして、そのようなフィラメント電流If
を制御してエミッション電流Ieを所望の大きさに保ち
たい場合には、前記第1電流計3はフィラメント電流の
実効値を測定するものを使用し、その実効値を検出して
フィラメントの劣化状態を測定するようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、従来は不明であったフ
ィラメントの劣化状態を、フィラメントの使用を中断す
ることなく測定することができる。従って、真空を破壊
したりフィラメントを取り外したりする必要がない。
【0057】また、使用中のフィラメントの劣化状態を
測定し、その状態と、予め定められた劣化状態とを比較
してフィラメントの交換時期を指示することができるの
で、真空度の測定中等のフィラメント使用中に突然フィ
ラメントが断線したり、必要なフィラメント電流が電源
の供給能力を超えてしまい、所望のエミッション電流を
流すことができなくなるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を説明するための図
【図2】 通電によりフィラメント電流Ifが変化した
状態を示す図
【図3】 一般的な熱陰極型電離真空計の外形図
【図4】 真空度、フィラメントの線径、及びフィラメ
ント電流Ifの測定値をグラフ化した図
【図5】 フィラメントの線径とフィラメント電流If
の測定値と理論値の関係を示す図
【符号の説明】
2……フィラメント 3……電流計 10…
…熱電子 11……グリッド 14……正イオン 16
……イオンコレクタ 31……制御部 32……表示装置 If……フィラメント電流 Ie……エミッション電流
Ii……イオン電流

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィラメント電流の通電により発熱して
    熱電子を放出するフィラメントの、通電量の増加により
    劣化する状態を測定するフィラメント劣化状態測定方法
    であって、 前記フィラメントを真空雰囲気に置き、前記フィラメン
    ト電流を制御して、前記熱電子の流れにより作られるエ
    ミッション電流を所望の大きさに保ったときの前記フィ
    ラメント電流の大きさを検出してそのフィラメントの劣
    化状態を測定することを特徴とするフィラメント劣化状
    態測定方法。
  2. 【請求項2】 フィラメント電流の通電により発熱して
    熱電子を放出するフィラメントの、通電量の増加により
    劣化する状態を測定するフィラメント劣化状態測定方法
    であって、 前記フィラメントを真空雰囲気に置き、前記フィラメン
    ト電流を制御して、前記熱電子の流れにより作られるエ
    ミッション電流を所望の大きさに保ったときの前記フィ
    ラメント電流の大きさを検出してそのフィラメントの劣
    化状態を測定し、該フィラメントの劣化状態と、予め設
    定された劣化状態とを比較してフィラメントの交換時期
    を示すことを特徴とするフィラメント交換時期指示方
    法。
JP29857593A 1993-11-29 1993-11-29 フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法 Pending JPH07151816A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29857593A JPH07151816A (ja) 1993-11-29 1993-11-29 フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29857593A JPH07151816A (ja) 1993-11-29 1993-11-29 フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07151816A true JPH07151816A (ja) 1995-06-16

Family

ID=17861525

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29857593A Pending JPH07151816A (ja) 1993-11-29 1993-11-29 フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07151816A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE112008001297T5 (de) 2007-05-15 2010-04-08 ULVAC, Inc., Chigasaki-shi Massenspektrometrieeinheit
US8115166B2 (en) 2007-04-16 2012-02-14 Ulvac, Inc. Method of controlling mass spectrometer and mass spectrometer
DE112010001207T5 (de) 2009-03-18 2012-09-20 Ulvac, Inc. Sauerstoffdetektionsverfahren, Luftleckbestimmungsverfahren,Gaskomponentendetektionsgerät und Vakuumverarbeitungsvorrichtung
US11069503B2 (en) 2019-09-19 2021-07-20 Canon Anelva Corporation Electron generating apparatus and ionization gauge

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8115166B2 (en) 2007-04-16 2012-02-14 Ulvac, Inc. Method of controlling mass spectrometer and mass spectrometer
DE112008001297T5 (de) 2007-05-15 2010-04-08 ULVAC, Inc., Chigasaki-shi Massenspektrometrieeinheit
US8138473B2 (en) 2007-05-15 2012-03-20 Ulvac, Inc. Mass spectrometry unit
DE112010001207T5 (de) 2009-03-18 2012-09-20 Ulvac, Inc. Sauerstoffdetektionsverfahren, Luftleckbestimmungsverfahren,Gaskomponentendetektionsgerät und Vakuumverarbeitungsvorrichtung
US8288715B2 (en) 2009-03-18 2012-10-16 Ulvac, Inc. Oxygen detection method, air leakage determination method, gas component detection device, and vacuum processing apparatus
US11069503B2 (en) 2019-09-19 2021-07-20 Canon Anelva Corporation Electron generating apparatus and ionization gauge

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4568321B2 (ja) 冷陰極電離真空計
JP5455700B2 (ja) 電界放出電子銃及びその制御方法
JP5016031B2 (ja) 質量分析ユニット
US7728498B2 (en) Industrial hollow cathode
JP5054226B2 (ja) 酸素の検出方法,空気リークの判別方法,ガス成分検出装置,及び真空処理装置
US6380685B2 (en) Design and manufacturing processes of long-life hollow cathode assemblies
US6903499B2 (en) Electron gun and a method for using the same
US10614994B2 (en) Electron microscope
JP2004165034A (ja) イオン源のフィラメント寿命予測方法およびイオン源装置
JP4206598B2 (ja) 質量分析装置
KR960009353B1 (ko) 전리진공계
JPH07151816A (ja) フィラメント劣化状態測定方法及びフィラメント交換時期指示方法
JP2007517233A (ja) 冷陰極イオン真空計
JP4144206B2 (ja) X線装置
JP2005259606A (ja) 熱電子放出用フィラメント
WO2015053300A1 (ja) 電子顕微鏡
JP2011076753A (ja) 電子源及び電子機器
WO2019172433A1 (en) Device including an ionizer
JP4196367B2 (ja) 電離真空計
US6829920B1 (en) Design and manufacturing processes of long-life hollow cathode assemblies
WO2000068970A1 (fr) Appareil a faisceau electronique, et inspection d'un canon a electrons
WO2004073010A1 (ja) 電子銃
JP3276804B2 (ja) 電界放出型電子銃の立ち上げ方法
JP2008128994A (ja) 電離真空計及びこれを用いた質量分析計
JP2005172611A (ja) 荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の圧力測定方法