JP4144206B2 - X線装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線装置に係わり、特に、開放型X線管を搭載した工業用X線検査装置などに関する。
【0002】
【従来の技術】
微細な内部構造を非破壊検査法で観察する手法が各分野で要求されている。例えば半導体パッケージングの開発や実装検査・品質保証のために、微小焦点を有するX線管を使って内部の欠陥などが調べられている。このX線管は開放型構造で、ターゲットに厚さが薄いタングステンプレートを使用し、収束された電子ビームをこのターゲットに打ち込み、そこで発生するX線を放射するものである。検査部品の微細な構造を観察するため、焦点寸法は微小なものが使われている。このX線管はマイクロフォーカスX線管と呼ばれ、真空容器内で熱陰極から出射した電子ビームを、電子レンズにより収束させてターゲット上の1〜200μmの寸法の微小領域に打ち込み、そこで生じるX線を利用するものである。マイクロフォーカスX線管のうち、特に焦点寸法が微小化できるものは、開放型と呼ばれるタイプのものである。開放型のX線管は、真空容器の開閉機構と真空排気ポンプを具備しており、熱陰極やターゲット材を交換できるという特徴をもつ。このため、開放型のマイクロフォーカスX線管では熱陰極(フィラメント)やターゲットの寿命を犠牲にして陰極のフィラメントの温度を上げて焦点寸法を微細化し、高管電圧、高管電流の条件で焦点寸法を微細化することが可能である。
開放型のX線管は、さらに透過型と反射型と呼ばれる2つのタイプに分類される。透過型では、ターゲット面から見て電子ビームと出力X線が反対側に位置するのに対し、反射型では、ターゲット面から見て電子ビームと出力X線が同じ側に位置する。透過型、反射型とも、電子ビームをターゲット上の微小領域に収束してX線の焦点寸法を微細化する構造は同じである。
【0003】
図5に、開放型X線管10を用いたX線装置の構成を示す。この開放型X線管10は、カソード部のフィラメント1と、ウェネルト電極2と、真空度を測定する真空計12aと、電子ビームを加速する陽極3と、電子ビームの方向を偏向する偏向コイル4と、偏向された電子ビームを集束する集束コイル5と、X線透過窓上に設けられたターゲット6とから構成されている。そして、各部はO−リング(図示せず)で互いに真空気密に連結されており、ターボ分子ポンプとロータリーポンプ(図示せず)による2段引きがされたX線管容器を形成している。
陰極側に高圧ケーブルが挿し込まれ、高電圧電源13から陰極のフィラメント1に負の高電圧が印加される。陽極3側のターゲット6及びX線管容器の外装は接地電位に保たれている。高圧ケーブルを介して陰極のフィラメント1に、フィラメント電流設定部14cで設定された電流値で、フィラメント電流供給部13aから電圧が印加され電流が流れ加熱されると熱電子が放出され、陽極3に向かって加速され、電子ビームを形成する。電子ビームはウェネルト電極2を通り、加速されて陽極3の中央に設けられた円筒部に入り、制御ユニット14bにより制御される偏向コイル4により電子ビームの進行方向が調整される。そして、制御ユニット14bにより制御される集束コイル5によって、微小な径の電子ビームに収束され、ターゲット6に突入する。アルミニウムの厚みT=0.5mm程度のX線出力窓上の内側に、ターゲット6がマウントされている。ターゲット6は、例えば、厚さが50μm程度のタングステンが使われたり、ターゲット材をX線透過窓に直接成膜したりしている。このターゲット6に電子ビームが突入するとそこでX線を放射する。放射されるX線のうちX線透過窓を透過する方向のX線ビームが試料台7に載せられた試料8に照射されて、その透過X線がX線像検出装置9に入射し、その出力信号がPC15bに入力されて信号処理され、モニタ16bにX線画像として表示される。マイクロフォーカスX線管のX線条件は、管電圧が5〜225kV、管電流が〜2mA程度で、焦点寸法は1〜200μm程度のものが使われ、フィラメント通電時間が制御ユニット14bのフィラメント通電時間表示部14dに表示されている。そして、開放型X線管10と試料8がセットされる試料台7とX線像検出装置9は、散乱X線防護のためにX線防護ボックス17a内に格納されている。
上記は熱陰極にタングステン材のフィラメント1を用いたものであるが、熱陰極として、高温度でより高密度の電子放射を可能にした6ほう化ランタン(LaB)熱陰極や6ほう化セリウム(CeB)熱陰極のチップが用いられたものがある。これらはタングステンのフィラメント1の熱陰極に比べて10倍の輝度が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のX線装置は以上のように構成されているが、このX線装置の電子銃の陰極のフィラメント1は、点灯時間経過とともにタングステンが蒸発し、線径が徐々に細くなって切断される。
フィラメント1の寿命は、残留ガス分子の衝突と、高温での蒸発によって定まると言われているが、切れたフィラメント1を観察すると、図6(上田良二、1982年発行、電子顕微鏡、共立出版株式会社から引用)(a)に示すように、主に蒸発による場合は一箇所に集中して切断しているが、残留ガスが主原因のときは、(b)に示すように、フィラメント1のかなりの部分が細くなっているのがわかる。切断されるまでの時間を寿命とすると、その寿命は真空度と陰極のフィラメント温度により決定されるが、真空度が10−5Torrより高真空の場合は、(a)の温度による蒸発によって寿命が決まるといわれている。
また、高密度電子放射を得るために用いられる6ほう化ランタン(LaB)熱陰極や6ほう化セリウム(CeB)熱陰極の場合は、切れることはないものの、タングステン材のフィラメント1の陰極と同様に、真空度と陰極温度に依存してチップが消耗することが確かめられている。
しかし、運転中にフィラメント1の温度を測定することは実際上難しい。フィラメント加熱電流の測定によって、温度を推定することがしばしば行なわれるが、一定の電流でも周辺の温度変化に伴って、フィラメント1の温度はかなり大きく変化する。
図7(上田良二、1982年発行、電子顕微鏡、共立出版株式会社から引用)に、V字形フィラメントについて、Bloomerによるフィラメント温度と寿命および軸上輝度の測定結果を示す。横軸にフィラメント温度、縦軸に寿命及び軸上の測定輝度/理論輝度を示す。フィラメント温度が2600Kから2900Kにわたって温度上昇すると、急激に寿命が低下する。このように寿命になるとフィラメント1の交換が必要となる。交換時にはX線管容器の内部を大気圧状態にし、陰極部の電子銃のフィラメント1の部分を外部に取出し、フィラメント1を新しいものに交換する。そして再び、X線管容器にフィラメント1を取付け、内部を真空に排気する。
しかし、タングステン材のフィラメント1の場合、線材が蒸発して線径が細くなっても、極端に装置の性能が低下することがないため、X線装置の画像からフィラメント寿命を推測することは難しい。また、装置にはフィラメント通電時間(点灯時間)が制御ユニット14bのフィラメント通電時間表示部14dに表示されているが、同じ真空度、同じ陰極温度でフィラメント1を点灯する場合には、寿命の目安となるが、例えば、低真空状態で点灯してしまった場合や、低温度で点灯しておこなった場合等、通常と異なる条件で動作させた場合には、陰極寿命の推測は難しくなる。寿命が近いのにそのまま使用した場合には、測定直前もしくは測定中にフィラメント1が切れたりすると、X線装置の検査ラインがストップすることになり、検査に支障をきたすという問題がある。
また、6ほう化ランタン(LaB)熱陰極や6ほう化セリウム(CeB)熱陰極の場合は、切れることがなく、一般的にタングステン材のフィラメント1より寿命が長い。しかし、蒸発による陰極チップ形状の大幅な変形が、電子源特性の低下を招き、電子ビームのスポット径が大きくなり、装置の分解能の低下を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フィラメントの寿命が近いのにそのまま使用することがないように、また、蒸発による陰極チップ形状の変形により、装置の分解能の低下を招くことがないように、測定直前もしくは測定中に陰極寿命を予測することができるX線装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のX線装置は、真空中で通電加熱され熱電子を放出する陰極を備え、その陰極の交換が可能な開放型X線管を搭載したX線装置において、真空度を測定する手段、あるいは、陰極温度を直接的または間接的に測定する手段と、陰極通電時間を計測する手段と、真空度あるいは陰極温度と陰極通電時間のファクタによる過去の陰極寿命のデータを記憶した寿命係数記憶部と、前記真空度あるいは陰極温度のいずれかもしくはその両方と前記陰極通電時間を組合せて前記寿命係数記憶部のデータから陰極の寿命を演算するコンピュータと、演算された寿命をモニタ上に指数として表示する寿命指数表示部もしくは装置上にその陰極を交換指示する陰極交換指示器とを備えるものである。
【0007】
また、請求項2に記載された発明のX線装置は、熱電子を放出する陰極の材質がタングステンからなるフィラメントであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載された発明のX線装置は、熱電子を放出する陰極の材質が6ほう化ランタンもしくは6ほう化セリウムであることを特徴とする。
【0009】
本発明のX線装置は上記のように構成されており、開放型X線管に熱陰極のタングステン材からなるフィラメント、または、6ほう化ランタンもしくは6ほう化セリウムからなるチップが用いられ、装置の制御ユニットに、真空度を測定する真空度計測部、あるいは、陰極温度を直接的または間接的に測定するフィラメント温度計測部、例えばフィラメント抵抗を計測して温度を推測する計測部と、陰極通電による点灯時間を計測するフィラメント通電時間計測部とを設け、陰極寿命データ、例えば、あらかじめ実験したデータ、文献などから取得した真空度、陰極温度、陰極通電時間及び陰極材の物理的な特性等による関連データなどをコンピュータの寿命係数記憶部に記憶して、コンピュータが、測定された真空度と、陰極温度(間接的にフィラメント抵抗測定によって算出した温度)のいずれか、もしくはその両方と陰極通電時間を組合せて、寿命係数記憶部に記憶されたデータを参照して陰極の寿命を演算する。そして演算された寿命をモニタ上に指数として寿命指数表示部に表示し、もしくは装置上に設けられた陰極交換指示器に、寿命が近づくと陰極を交換するように指示表示する。
そのため、X線装置の開放型X線管をさまざまな真空度と陰極温度で陰極を点灯させた場合でも、その条件に合せた寿命の推測がおこなわれ、演算された寿命がモニタ上の寿命指数表示部に表示され、もしくは装置の陰極交換指示器に陰極交換の指示表示がでるので、それを見て使用者は測定前に陰極を新しいものに交換することができ、測定中にフィラメントが切れたりすることがなくなり、X線装置の検査ラインを正常に運用することができる。また、蒸発による陰極チップ形状の大幅な変形がなくなり、正常な分解能で検査することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のX線装置の一実施例を図1を参照しながら説明する。図1は本発明のX線装置の構成を示す図である。本X線装置は、熱電子を放出する陰極(フィラメント1)を備え交換が可能な開放型X線管10と、制御ユニット14に設けられ真空計12で真空度を測定する真空度計測部20と、フィラメント1の温度を直接的または間接的に測定するフィラメント温度計測部18と、フィラメント1の点灯時間を計測するフィラメント通電時間計測部19と、PC15に設けられ真空度とフィラメント1の温度と点灯時間のファクタによる過去のフィラメント1の寿命のデータを記憶した寿命係数記憶部15aと、測定された前記真空度とフィラメント1の温度のいずれかもしくはその両方と前記フィラメント1の点灯時間を組合せて前記寿命係数記憶部15aのデータを参照しフィラメント1の寿命を演算するPC15と、X線画像を表示するモニタ16上に演算された寿命を指数として表示する寿命指数表示部16a、もしくは装置上にそのフィラメント1を交換指示するフィラメント交換指示器11と、開放型X線管10のフィラメント1に供給する電流がフィラメント電流設定部14aで設定されフィラメント1に負の高電圧とフィラメント電流を供給する高電圧電源13とフィラメント電流供給部13aと、X線が試料台7に載せられた試料8を透過し試料のX線透過像を検出するX線像検出装置9とから構成されている。
【0011】
本X線装置と従来のX線装置と異なるところは、本X線装置には、開放型X線管10のフィラメント1の寿命予測値(ここでは寿命指数と表現)が、モニタ16のX線画像上に寿命指数表示部16aとして表示され、さらに、寿命が近づくとX線防護ボックス17側に「フィラメントを交換してください」という指示がフィラメント交換指示器11に表示される点にある。
本X線装置のPC15は、寿命係数記憶部15aに、過去のフィラメント1の寿命の関連データ、例えば、文献や実験などで得られた真空度と陰極温度と寿命のデータや、陰極温度と真空度と材料損失率のデータや、陰極温度と輝度と寿命のデータが記憶され、制御ユニット14に設けられた真空度計測部20からの真空度のデータと、フィラメント温度計測部18でフィラメント電圧と電流から抵抗が算出され過去のデータから推測されたフィラメント1の温度データと、フィラメント通電時間計測部19からのフィラメント1が点灯された点灯時間データとを取込んで、寿命係数記憶部15aのデータを参照し、寿命指数を算出し、モニタ16上の寿命指数表示部16aに表示する。そして、X線防護ボックス17側に「フィラメントを交換してください」という指示をフィラメント交換指示器11に表示する。
【0012】
次に、本X線装置の動作について説明する。開放型X線管10は、従来型のX線装置に用いられているものと同じ構造であり、各部はO−リング(図示せず)で互いに真空気密に連結されており、ターボ分子ポンプとロータリーポンプ(図示せず)による2段引きで高真空にされる。制御ユニット14に設けられた真空度計測部20は、その真空度を真空計12によって計測し記憶する。
高電圧電源13から陰極のフィラメント1に負の高電圧が印加され、制御ユニット14のフィラメント電流設定部14aで設定された電流で、フィラメント電流供給部13aからフィラメント1に電流が供給され、陽極3側のターゲット6及びX線管容器の外装は接地電位に保たれている。フィラメント1が加熱されると熱電子が放出され、陽極3に向かって加速され、電子ビームはウェネルト電極2を通り、加速されて陽極3の中央に設けられた円筒部に入り、偏向コイル4により電子ビームの進行方向が調整され、集束コイル5によって、微小な径の電子ビームに収束され、ターゲット6に突入する。制御ユニット14のフィラメント通電時間計測部19は、フィラメント1に電流が流されている間の点灯時間を計測し記憶する。同時に、フィラメント温度計測部18は、フィラメント1の電流と電圧からフィラメント1の動作抵抗を算出し、寿命係数記憶部15aに記憶された過去のデータを参照してフィラメント1の温度を推測し記憶する。
ターゲット6はアルミニウムのX線出力窓上の内側にマウントされ、電子ビームが突入するとそこでX線を放射する。放射されるX線のうちX線透過窓を透過する方向のX線ビームが試料台7に載せられた試料8に照射されて、そのX線透過像がX線像検出装置9に入力され、その出力信号がPC15に入力されて信号処理され、モニタ16にX線画像として表示される。
X線像検出装置9は、イメージインテンシファイア(I.I.)とCCDカメラを組合せたX線像検出装置である。イメージインテンシファイア(I.I.)の出力像をCCDカメラで撮像するもので、その出力はX線の画像信号として取出すことができる。また、これを半導体フラットパネルの撮像装置に置き換えて構成しても良い。
PC15は、制御ユニット14の真空度計測部20からの真空度データ、フィラメント温度計測部18からのフィラメント1の温度データ、フィラメント通電時間計測部19からのフィラメント1の点灯時間データを取込み、寿命係数記憶部15aに記憶された過去のデータを参照し、寿命指数、例えば、寿命に関するパラメータを0〜100で表示し、これを寿命指数として、PC15はこの寿命指数を算出し、モニタ16上の寿命指数表示部16aに表示する。そして、寿命が近づくと、制御ユニット14を介してX線防護ボックス17側に「フィラメントを交換してください」という指示をフィラメント交換指示器11に表示する。通常、開放型X線管10のX線条件は、管電圧が5〜225kV、管電流が〜2mA程度で、焦点寸法は1〜200μm程度のものが使われる。そして、開放型X線管10と、試料8がセットされる試料台7と、X線像検出装置9は、散乱X線防護のためにX線防護ボックス17内に格納される。
【0013】
図2(a)(B.N.Bloomer et al;The lives of electron microscope filaments、B.J.of Applied Physics、vol8、pp83‐85、1956、8/20から引用)に、タングステン材のフィラメント1における真空度と寿命の関係を、図2(b)(B.N.Bloomer et al;The lives of electron microscope filaments、B.J.of Applied Physics、vol8、pp83‐85、1956、8/20から引用)に、2900Kの寿命を1とした場合の各温度での係数を示す。例えば、フィラメント1の線径0.006(in)、フィラメント1の温度2900K、真空度0.2(μHg)を基準とすると、図2(a)からフィラメント寿命は30時間である。寿命に関するパラメータを0〜100で表示し、これを寿命指数:仮にLと定義し、Lが0からスタートして100になれば寿命となるようにする。この点灯条件の場合には、寿命は30時間なので、これを対応させると、1時間点灯に付、寿命指数Lが約3.3ずつ、カウントアップすることになる。仮に途中で真空度0.6(μHg)で3時間動作させてしまったとすると、図2(a)から寿命は基準条件の1/3になるので、この期間の寿命指数Lは、1時間点灯する毎に10(≒3.3×3)ずつ、カウントアップすることになる。
フィラメント1の点灯の時間経過と共に、寿命指数Lが100に近づいていき、例えば、「97」になった場合にはあと「3」、上記基準条件では1時間以内に寿命になる、という計算になる。次回のX線装置の検査時間が5時間あるとすれば、あらかじめフィラメント1を交換しておいたほうが良い、という判断が可能である。このときはフィラメント交換指示器11に「フィラメントを交換してください」という指示が表示される。
上記は真空度が基準状態から変わった場合の例であるが、フィラメント1の温度が変わった場合においても、同様に、図2(b)記載の係数をかけて寿命を算出すればよい。
実際には、真空度やフィラメント1の温度が基準状態から変わった場合の寿命のデータは、図2に示すデータを参照しても良く、また、X線装置ごとに実験的に求めても良い。いずれにしても、あらかじめX線装置内もしくはこれに接続されているPC15内の寿命係数記憶部15aに各条件毎の寿命に関するデータ(係数など)をテーブルとして記憶しておき、装置の設定値、実測値から寿命が推測できるパラメータを算出して、寿命指数表示部16aに数値化表示、もしくはフィラメント交換指示器11などに指示して可視化表示することが本X線装置の特徴である。
【0014】
図3(「LaB6CATHODE」、電気化学工業株式会社、カタログから引用)は、6ほう化ランタンもしくは6ほう化セリウムからなるチップが陰極に用いられた場合の陰極温度と真空度と材料損失率の関係を示す図である。陰極温度の上昇と共に、同時に、真空度の低下と共に、陰極材料の損失率が高くなることが分る。これらの各陰極材料メーカが公表しているデータシートを参照して、チップの消耗度を算出し、あらかじめ計測した、チップが消耗した場合のX線装置の画像分解能の低下のデータと照合して寿命を推測し、表示させることができる。
【0015】
図4(「LaB6CATHODE」、電気化学工業株式会社、カタログから引用)は、タングステン材のフィラメント1と、6ほう化ランタンを陰極に用いた場合の動作温度による輝度と寿命との関係を示すデータである。タングステンのフィラメント1に比べて6ほう化ランタンを陰極にした場合は、10倍の輝度が得られ、長寿命であるが、いずれも温度を高くして高輝度で使用すると、寿命が短くなる。これらのデータを寿命係数記憶部15aに記憶させておき、参照データとして用いることができる。
【0016】
上記の実施例では、寿命指数Lを0〜100の数値でカウントアップして表示したが、カウントダウンして表示してもよい。また、寿命指数を定義せずに実際の時間表示にしてもよい。
また、フィラメント温度計測部18では間接的にフィラメント1の電圧、電流からフィラメント1の動作抵抗を算出し、過去のデータを参照してフィラメント1の温度を推測したが、オプティカル・パイロメータ等を装置に装備したもので直接フィラメント1の温度を計測することもできる。
また、本X線装置では寿命指数表示部16aとフィラメント交換指示器11を設けた例で説明したが、最も簡素化したシステムのX線装置では「寿命」つまり陰極交換の指示ランプをX線装置内もしくは接続されたモニタ16の画面内に設けてもよい。
【0017】
【発明の効果】
本発明のX線装置は上記のように構成されており、開放型X線管の熱陰極にタングステン材からなるフィラメント、または、6ほう化ランタンもしくは6ほう化セリウムからなるチップが用いられ、真空度が真空計から計測され、陰極温度が間接的に陰極抵抗測定等によって算出され、陰極通電による点灯時間が計測され、一方、予め実験データ、文献などにより取得した真空度、陰極温度、陰極通電時間などの過去のデータがコンピュータの寿命係数記憶部に記憶され、コンピュータが、測定された真空度と、陰極温度のいずれか、もしくはその両方と陰極通電時間を組合せて、記憶された過去のデータと参照し、陰極の寿命を演算する。そしてモニタ上に寿命指数が表示され、もしくは、陰極を交換するように指示表示されるので、使用者は測定前に陰極を新しいものに交換することができる。そのため、測定中にフィラメントが切れたり、蒸発による陰極チップ形状の大幅な変形がなくなり、X線装置の検査ラインを正常に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のX線装置の一実施例を示す図である。
【図2】 本発明のX線装置のタングステンフィラメントの寿命データを示す図である。
【図3】 本発明のX線装置の6ほう化ランタン熱陰極の真空度に対する温度と材料損失の関係を示す図である。
【図4】 本発明のX線装置の6ほう化ランタン熱陰極及びタングステンフィラメントの温度に対する寿命と輝度の関係を示す図である。
【図5】 従来のX線装置を示す図である。
【図6】 切れたフィラメントの先端の状態を示す図である。
【図7】 V字型フィラメントの温度と寿命及び軸上輝度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1…フィラメント
2…ウェネルト電極
3…陽極
4…偏向コイル
5…集束コイル
6…ターゲット
7…試料台
8…試料
9…X線像検出装置
10…開放型X線管
11…フィラメント交換指示器
12、12a…真空計
13…高電圧電源
13a…フィラメント電流供給部
14、14b…制御ユニット
14a、14c…フィラメント電流設定部
15、15b…PC
15a…寿命係数記憶部
16、16b…モニタ
16a…寿命指数表示部
17、17a…X線防護ボックス
18…フィラメント温度計測部
19…フィラメント通電時間計測部
20…真空度計測部

Claims (4)

  1. 真空中で通電加熱され熱電子を放出する、6ほう化ランタン又は6ほう化セリウムからなる材質の陰極を備え、その陰極の交換が可能な開放型X線管を搭載したX線装置において、
    真空度を測定する手段および陰極通電時間を計測する手段と、真空度および陰極通電時間の2 つのファクタによる過去の陰極寿命のデータを記憶した寿命係数記憶部と、
    前記手段により測定された真空度および前記手段により計測された陰極通電時間を組み合わせて前記寿命係数記憶部のデータから陰極の寿命を演算するコンピュータと、
    演算された寿命をモニタ上に指数として表示する寿命指数表示部とを備えることを特徴とするX線装置。
  2. 真空中で通電加熱され熱電子を放出する、6ほう化ランタン又は6ほう化セリウムからなる材質の陰極を備え、その陰極の交換が可能な開放型X線管を搭載したX線装置において、
    真空度を測定する手段陰極温度を直接的または間接的に測定する手段、および陰極通電時間を計測する手段と、真空度陰極温度、および陰極通電時間の3つのファクタによる過去の陰極寿命のデータを記憶した寿命係数記憶部と、
    前記手段により測定された真空度、前記手段により測定された陰極温度、および前記手段により計測された陰極通電時間を組み合わせて前記寿命係数記憶部のデータから陰極の寿命を演算するコンピュータと、
    演算された寿命をモニタ上に指数として表示する寿命指数表示部とを備えることを特徴とするX線装置。
  3. 請求項1記載の X 線装置において、寿命指数表示部に替えて、装置上にその陰極を交換指示する陰極交換指示器を備えることを特徴とするX線装置
  4. 請求項2記載の X 線装置において、寿命指数表示部に替えて、装置上にその陰極を交換指示する陰極交換指示器を備えることを特徴とするX線装置
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