JPH07150293A - 黒鉛複合快削鋼 - Google Patents

黒鉛複合快削鋼

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JPH07150293A
JPH07150293A JP29666793A JP29666793A JPH07150293A JP H07150293 A JPH07150293 A JP H07150293A JP 29666793 A JP29666793 A JP 29666793A JP 29666793 A JP29666793 A JP 29666793A JP H07150293 A JPH07150293 A JP H07150293A
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JP
Japan
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steel
graphite
machinability
graphitization
effect
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JP29666793A
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English (en)
Inventor
Toshiyuki Hoshino
俊幸 星野
Akihiro Matsuzaki
明博 松崎
Kenichi Amano
虔一 天野
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】黒鉛化に際し、前処理としての焼き入れが不要
で、しかも少量の快削元素の添加により、従来の快削元
素添加鋼に比べて極めて優れた被削性を有する黒鉛複合
快削鋼を得る。 【構成】 C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt
%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5 wt%、
B:0.0003〜0.0150wt%、 N:0.0015〜0.0150wt
%、O:0.0030wt%以下を含み、かつ S:0.03〜0.25
wt%、 Pb:0.03〜0.3 wt%、 Bi:0.01〜0.3 wt
%、 Te:0.002 〜O.5 wt%、 Se:0.003 〜0.10wt
%、 P:0.03超〜0.15wt%およびCa:0.0002〜0.30wt
%のうちから選ばれる1種又は2種以上を主として含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成よりなり、か
つ金属組織を主としてフェライトおよび黒鉛の組織とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、機械部品の素材とし
て用いられる機械構造用鋼、即ち黒鉛複合快削鋼に関
し、とくにその被削性の一層の向上を図らんとして開発
したものである。
【0002】
【従来の技術】機械部品に用いられる鋼材のうち、切削
加工によって所定の形状を得るものには、優れた被削性
が要求される。かかる鋼材については、従来、機械構造
用炭素鋼にPb, Te, Bi, PおよびCa等の快削性元素を単
独または複合添加して、その被削性の向上を図ってき
た。なかでもPbは、その添加によって鋼材の機械的性質
の劣化を伴わず、また、TeやBi等に比較して安価なこと
から、快削性元素として賞用されている。
【0003】しかし、Pbは一般に、人体に有害であるこ
とから、鋼材の製造工程のみならず、これを用いた機械
部品の製造工程において、大がかりな排気設備を必要と
し、また鋼材のリサイクルの上からも多くの問題があっ
た。このため従来から、Pbを添加しないか、従来より少
ない添加量でも、Pb添加鋼と同等程度の被削性を有する
鋼材の開発が望まれていた。これに対して最近、Pbを含
有しない快削鋼についての研究がすすみ、その代替材料
としての黒鉛鋼が注目されている。
【0004】こうした黒鉛を用いた快削鋼としては、例
えば特開昭49-67816号、特開昭49−103817号および特開
昭50-96416号各公報に開示の鋼が知られている。これら
の鋼材は、鋼中のCを黒鉛として存在させ、その切欠き
および潤滑効果を利用することにより、Pbを用いること
なしに被削性を改善することとしたものである。しか
し、これらの鋼材は、鋼中のCを黒鉛化するために、い
ずれも前処理としての焼入れが不可欠であり、必ずしも
経済的とは言えなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、従来技術
が抱えている上記の問題を有利に克服できる技術の開発
を目的としており、黒鉛化に際し、前処理としての焼入
れが不要で、しかも少量の快削性元素の添加により、従
来の快削性元素を添加した快削鋼よりも著しく優れた被
削性を有する黒鉛複合快削鋼を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】さて発明者らは、上記の
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、鋼中にAlおよ
びBを複合添加すると共に、鋼中のC、Si、Mn、Nおよ
びSの量を調整したうえ、少量のPb、Se、Ca およびTe
などの快削性元素を複合して添加すれば、前処理として
焼入れを行わずとも熱間圧延ままで黒鉛化を行うことが
可能となり、しかも被削性も格段に向上することを知見
した。この発明は、上記の知見に立脚してなされたもの
である。
【0007】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、
Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5wt %、B:
0.0003〜0.0150wt%、N:0.0015wt〜0.0150wt%、O:
0.0030wt%以下を含み、かつPb:0.03〜0.3 wt%、
S:0.03〜0.25wt%、Bi:0.01〜0.3 wt%、 T
e:0.002〜 O.5wt%、Se:0.003 〜0.10wt%、 P:
0.03超〜0.15wt%およびCa:0.0002〜0.30wt%のうちか
ら選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部がFeおよび
不可避的不純物の組成からなり、組織が主としてフェラ
イトと黒鉛からなることを特徴とする被削性に優れた黒
鉛複合快削鋼(第1発明)。
【0008】2.第1発明において、さらにNi:0.10〜
3.0 wt%、 Cu:0.1 〜3.0 wt%、Cr:0.05〜1.0
wt% 及び Mo:0.05〜0.5 wt%のうちから選ばれる1
種又は2種以上を、含有させた被削性に優れた黒鉛複合
快削鋼(第2発明)。
【0009】3.第1発明において、さらにV:0.05〜
0.5 wt%、 Nb:0.001 〜O.05 wt %、及び Ti:0.
005 〜O.05 wt %のうちから選ばれる1 種又は2種以上
を、含有させた被削性に優れた黒鉛複合快削鋼(第3発
明)。
【0010】4.第1発明において、さらにNi:0.10〜
3.0 wt%、 Cu:0.1 〜3.0 wt%、Cr:0.05〜1.0
wt% 及び Mo:0.05〜0.5 wt%のうちから選ばれる1
種又は2種以上と、V:0.05〜0.5 wt%、 Nb:0.00
1 〜O.05 wt %、及び Ti:0.005 〜O.05 wt %のうち
から選ばれる1種又は2種以上とを、含有させた被削性
に優れた黒鉛複合快削鋼(第4発明)。
【0011】
【作用】この発明の着想の基本は、低C系鋼において、
AlとBを複合添加した場合、前処理としての焼入れなし
でも、黒鉛化を迅速に進行させることができるというこ
との知見にある。この理由については、まだ明確に解明
されたわけではないが、次のとおりと考えられる。すな
わち、まず、鋼中のO量を0.0030以下に制限することに
より、被削性に有害なAl2O3 が減少するとともに固溶Al
量が増加することが挙げられる。そして、この固溶Alが
焼鈍時にAlNを形成しやすくする。一方でこのAlNは、
鉄炭化物安定化元素である固溶Nを減少させ、このこと
により、鉄炭化物は不安定な状態となる。そして、焼鈍
時の鉄炭化物の分解を早めると同時に黒鉛の結晶化の核
を提供することとなる。またBはBNを形成し、このB
Nが焼鈍時に黒鉛結晶化の核を提供することになる。こ
のような理由から、Al, BおよびNを複合添加すること
により、黒鉛化が著しく速くなるのである。なお、この
発明においては、上述した黒鉛形成による被削性の向上
と相まってSその他、Pb、Se、Ca、Te、PおよびBiの1
種または2種以上を添加することによって、被削性の一
層の向上が可能となる。
【0012】以上説明したように、この発明では、熱間
圧延後そのまま黒鉛化処理を施すことが可能となり、従
来、黒鉛化促進のために不可欠とされた前処理としての
焼入れを施すことなしに、従来のPb快削鋼またはPb複合
快削鋼に比べて、より優れた被削性を有する機械構造用
鋼が得られるのである。なお、この発明において、潤滑
作用に基づく快削性の点からは、組織中に少なくとも体
積率で0.3 %以上の黒鉛相を含有させることが望まし
い。この理由は、C量として重量%で0.08%以上の黒鉛
が存在しないと、被削性改善の効果が小さく、この時の
黒鉛の体積率は0.3 %であるからである。
【0013】次に、この発明において、上述した技術思
想に基づいた各成分組成を限定した理由につき以下に説
明する。 C:0.1 〜1.5 wt% Cは、黒鉛相を形成する上で不可欠なだけでなく、機械
部品の強度を確保する上で必須の元素であるが、含有量
が 0.1wt%未満ではその効果が小さく、一方 1.5wt%を
超えて多量に含有させてもその効果が飽和するので、
0.1〜1.5 wt%の範囲に限定した。
【0014】Si:0.5 〜 2.0wt% Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用するだけでなく、
鋼中の鉄炭化物を不安定にして黒鉛化を促進する働きも
あるので、積極的に添加する。この含有量が 0.5wt%未
満ではその効果に乏しく、一方 2.0wt%を超えて含有さ
せると熱間圧延時に脱炭を増大し焼き入れ焼き戻し後の
機械的性質を低下させるので、 0.5〜2.0 wt%の範囲で
含有させるものとした。
【0015】Mn:0.1 〜2.0 wt% Mnは、鋼材の強度を確保する上でも有用な元素であると
ともに、MnS、MnSe、MnTeを形成し、これが黒鉛形成の
核となり、被削性の向上に寄与するが、含有量が0.1 %
wt未満ではその効果が小さく、一方 2.0wt%を超えて含
有させると黒鉛化が阻害されるので 0.5〜2.0 wtwt%の
範囲で含有さるものとした。
【0016】B:0.0003〜0.0150wt% Bは、BNを形成し黒鉛の結晶化の核となると同時にそ
れ自信の潤滑作用により被削性を向上させるとともに、
焼入れ性を高めることから添加するが、含有量が0.0003
%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.0150wt%を超
えて含有させてもその効果が飽和するので、0.0003〜0.
0150wt%の範囲に限定した。
【0017】Al:0.01〜0.5 wt% Alは、脱酸に寄与するだけでなく、黒鉛化を促進させる
有用元素でもある。この含有量が0.01%に満たないとそ
の添加効果に乏しく、一方 0.5wt%を超えて含有させる
と熱間変形能の低下を招くのみでなく、溶製も困難とな
るので、0.01〜0.5 wt%の範囲で含有させるものとし
た。
【0018】N:0.0015〜0.0150wt% Nは、Al, Bと結合してAlN、BNを形成し、これらが
黒鉛の結晶化の核として作用することにより黒鉛化を促
進するので添加するが、0.0015wt%未満ではその効果に
乏しく、0.0015wt%以上の添加とする。一方、0.0150wt
%を超えて含有させると、熱間加工性が低下して鋼材の
割れ、疵の原因となるので0.0150wt%を上限とする。
【0019】O:0.0030wt%以下 Oは、Alと結合してAl2O3 を形成すると前述したAl添加
効果を減殺し、黒鉛化作用を阻害する。その上、酸化物
系非金属介在物は機械部品の疲労強度を低下させ、また
熱間および冷間における加工性を劣化させる。このた
め、Oは極力低減させることが望ましいが、0.0030wt%
までの含有は許容される。
【0020】P:0.03超〜0.15wt% Pは、フェライト相を脆化させることにより被削性を向
上させるので添加する。0.03wt%以下ではその効果がな
い。しかしながら、0.15wt%を超えると黒鉛化を阻害
し、むしろ被削性の低下をもたらすので0.03超〜0.15
wt%とする。
【0021】S:0.03〜0.25wt% Sは、MnSを形成して、チップブレーカーとして作用し
被削性を向上させるほか、黒鉛形成の際に核として作用
して黒鉛化を促進させることにより、被削性を向上させ
る。また黒鉛を細粒化する作用も有する。この含有量が
0.03wt%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.25wt%
を超えても効果が飽和するので、0.03〜0.25wt%の範囲
で含有させるものとした。
【0022】Pb:0.03〜0.3 wt% Pbは、金属または硫化物に付着した状態で存在して切削
時の加工熱で溶融し、液体潤滑効果により切削性を向上
させる。その効果を得るには、0.03wt%以上の添加が必
要であるが、0.3 wt%を超えると黒鉛化を阻害し、むし
ろ被削性を低下させ、延性、靭性が劣化するので、0.03
〜0.30wt%とする。
【0023】Bi:0.01〜0.3 wt% Biは、Pbと同様に液体潤滑効果により切削性を向上させ
る。その効果は0.01wt%の添加で得られるが、0.3 wt%
を超えると黒鉛化を阻害し、むしろ被削性を低下させる
と同時に靭性を劣化させるので、0.01〜0.3 wt%に限定
する。
【0024】Te:0.002 〜0.5wt % Teは、MnTeを形成し、これが切削時のチップブレーカー
として作用し被削性を向上させる。この効果は0.002 wt
%以上の含有量で得られるが、0.5wt %を超えて含有す
ると黒鉛化を阻害し、むしろ被削性を低下させ、さらに
靭性を劣化させるので、 0.002〜0.5 wt%に限定する。
【0025】Se:0.003 〜0.10wt% Seは、MnSe形成し、これが切削時のチップブレーカーと
して作用するとともに、黒鉛化の核となり黒鉛化促進の
作用をして、被削性を改善する。さらに、黒鉛の細粒化
にも寄与する。この効果を得るには、0.003 wt%以上の
含有量が必要であるが、0.10wt%を超えて添加してその
効果が飽和するので0.003 〜0.10wt%に限定する。
【0026】Ca:0.0002〜0.30wt% Caは、Ca-Al 系の酸化物を形成し、黒鉛化の核として作
用するので黒鉛化を促進し、また黒鉛の細粒化にも寄与
すると同時にCaO などの酸化物が工具寿命を延長する
が、0.0002wt%未満ではその効果に乏しく、一方0.30wt
%を超えて添加すると多量の酸化物系非金属介在物が形
成されて、機械部品の疲労強度を低下させる。したがっ
て、その含有量は0.0002〜0.30wt%とする。
【0027】以上、基本成分について説明したが、この
発明では、さらに強度改善元素としてNi、Cu、Crおよび
Moのうちから選んだ一種または二種以上を、また強度改
善および組織微細化元素としてV、NbおよびTiのうちか
ら選んだ一種または二種以上を添加してもよい。
【0028】Ni:0.1 〜3.0 wt% Niは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ・焼戻し処理による
組織強化により、またCuとの複合添加の場合は、フェラ
イト相の析出強化により、強度強度改善に有用なだけで
なく、黒鉛化の促進にも有効に寄与するが、 0.1wt%未
満ではその添加効果に乏しく、3.0 wt%を超えて添加し
てもその効果が飽和するので、 0.1〜3.0 wt%の範囲に
限定した。
【0029】Cu:0.1 〜3.0 wt% Cuは、鋼の焼入れ性を高めて焼入れ・焼戻し処理による
組織強化と共に、Niとの複合添加における析出強化によ
り、強度向上に有効に寄与し、また黒鉛化の促進にも有
用な元素である。しかしながら、含有量が 0.1wt%に満
たないとその添加効果に乏しく、一方 3.0wt%を超えて
添加すると熱間変形能を劣化させるので、 0.1〜3.0 wt
%の範囲に限定した。
【0030】Cr:0.05〜1.0 wt%の範囲に限定する。Cr
は、鋼の焼入れ性を高めて焼入れ・焼戻し処理による強
度向上に寄与するが、0.05wt%未満では添加効果に乏し
く、1.0 wt%を超えて添加するとセメンタイトの安定化
により黒鉛化が妨げられるので0.05〜1.0 wt%の範囲に
限定する。
【0031】Mo:0.05〜0.5 wt% Moは、鋼の焼入れ性を高めて焼入れ・焼戻し処理による
強度向上に寄与するが、0.05wt%未満では添加効果に乏
しく、0.5 wt%を超えて添加するとセメンタイトの安定
化により黒鉛化が妨げられるので0.05〜0.5 wt%の範囲
に限定する。
【0032】V:0.05〜0.5wt % Vは、鋼の焼入れ性を高めて焼入れ・焼戻し処理による
強度向上と、微細なV炭窒化物の析出による強度向上に
寄与する。また、熱間圧延後の組織を微細化し、黒鉛化
促進に寄与する。含有量が 0.05wt %に満たないとその
添加効果に乏しく、一方0.5wt %を超えて添加しても効
果が飽和するので0.05〜0.5wt %の範囲に限定した。
【0033】Nb:0.001 〜0.05wt% Nbは、Vと同様、鋼の焼入れ性を高めて焼入れ・焼戻し
処理による強度向上と、微細なNb炭窒化物の析出による
強度向上に寄与する。また、熱間圧延後の組織を微細化
し、黒鉛化促進に寄与する。含有量が 0.001wt%に満た
ないとその添加効果に乏しく、一方0.05wt%を超えて添
加しても効果が飽和するので、 0.001〜0.05wt%の範囲
に限定した。
【0034】Ti:0.005 〜0.05wt% Tiは、TiNを形成することによりBの焼き入れ性効果を
助長し、またTiCを形成しフェライト中に析出して強度
向上に寄与する。また、熱間圧延後の組織を微細化し、
黒鉛化促進に寄与する。含有量が 0.005wt%に満たない
とその添加効果に乏しく、一方0.05wt%を超えて添加し
ても効果が飽和するので、0.001 〜0.05wt%の範囲に限
定した。
【0035】上記の成分組成範囲に調整することによっ
て、前処理としての焼入れの必要なしに金属組織が主に
フェライトと黒鉛からなる被削性に優れた鋼材を得るこ
とができる。またこの発明では、成分組成のみならず、
金属組織が重要であり、上述したように、主にフェライ
トと黒鉛の組織とする必要がある。というのは、黒鉛の
潤滑作用により切削時に切削工具の温度上昇を抑制し、
それにより切削工具の寿命を向上させようとするのが、
この発明に必須の要件だからである。ここに、鋼中にお
けるCの黒鉛化度は、50%以上とするのが好ましい。
【0036】次に、この発明の製造方法について説明す
る。まず素材の製造については、従来公知の転炉、電気
炉などで溶製した後、連続鋳造法または造塊・分塊法に
よってスラブとする。ついで熱間圧延により所定の形状
にしたのち、黒鉛化焼なましを施して、金属組織中に所
定量の黒鉛相を析出させて製造できる。本発明鋼は所定
の部品形状に成形後、機械部品とする。なお窒化処理を
施して製品とする場合もある。
【0037】ここで、熱間圧延条件としては、快削元素
により熱間加工性が劣化するので1000℃以上の加熱と85
0 ℃以上での圧延を行うのが望ましく、また圧延後の冷
却速度は、BNの粗大析出による黒鉛の粗大化を防ぐた
めに、0.01℃/S以上とするのが望ましい。黒鉛化のため
の熱処理としては、600 ℃〜Ac1の温度に5 〜30時間保
持するのみで十分である。
【0038】
【実施例】表1および表2に示す化学組成の鋼を転炉に
て溶製し、連続鋳造によりブルームとしたのち、150mmn
角ビレットとし、さらにビレット圧延を経て、52mmφの
棒鋼とした。ついで 700℃, 10hの加熱後、空冷による
黒鉛化処理を施したのち、黒鉛化率、硬さおよび被削性
について調査した。表1および表2で、P, Sは不純物
としての値であり、P* , S* は被削性向上のために添
加した場合の値である。被削性試験は、高速度工具鋼SK
H4を用いて、切り込み:2mm、送り速度:0.25mm/rev.
および切削速度:70 m/minの条件で実施し、切削不能と
なるまでの時間(工具寿命)で評価した。得られた調査
結果を表3に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】表1, 表2のNo.1〜31は発明鋼、No.32 〜
46は比較鋼、No.47 はPb−S−Pの複合快削鋼( SAE 規
格の12L14相当鋼)であり、NO.48 はPbを添加した快削
鋼である。
【0043】表3から明らかなように、発明鋼はいずれ
も、黒鉛化処理後、鋼中Cは 50 %以上黒鉛化してい
る。このため発明鋼は被削性に優れ、工具寿命が66.3 m
in以上の極めて良好な寿命を示す。これに対し従来のPb
快削鋼の工具寿命は著しく劣り、またこの発明の適正範
囲を逸脱した比較鋼のそれはいずれも、工具寿命が63.0
min以下となっている。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
多量のPbを用いることなく、従来のPb快削鋼に比較して
格段に優れた被削性を得ることができるので、環境に著
しい悪影響を及ぼすことなしに、機械部品の工業的製造
が可能となる。また、この発明鋼は、黒鉛化焼鈍前に前
処理としての焼入れが不要で、圧延ままで黒鉛化が達成
されるので、生産性の向上に対する寄与が極めて大き
い。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】P:0.03超〜0.15wt% Pは、フェライト相を脆化させることにより被削性を向
上させるので添加する。0.03wt%以下ではその効果がな
い。しかしながら、0.15wt%を超えると黒鉛化を阻害
し、むしろ被削性の低下をもたらし、また延性, 靱性を
劣化させるので、0.03超〜0.15wt%とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】
【表1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正内容】
【0042】表1, 表2のNo.1〜36は発明鋼、No.37 〜
51は比較鋼、No.52 はPb−S−Pの複合快削鋼( SAE 規
格の12L14相当鋼)であり、NO.53 はPbを添加した快削
鋼である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.
    0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5wt %、 B:0.0003〜0.0150wt%、 N:0.0015wt〜0.0150wt%、O:0.0030wt%以下 を含み、かつS:0.03〜0.25wt%、 Pb:0.03〜0.
    3 wt%、 Bi:0.01〜0.3 wt%、 Te:0.002〜 O.5wt%、 Se:0.003 〜0.10wt%、 P:0.03超〜0.15wt%およ
    びCa:0.0002〜0.30wt%のうちから選ばれる1種又は2
    種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成
    からなり、組織が主としてフェライトと黒鉛からなるこ
    とを特徴とする被削性に優れた黒鉛複合快削鋼。
  2. 【請求項2】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.
    0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5wt %、 B:0.0003〜0.0150wt%、 N:0.0015wt〜0.0150wt%、O:0.0030wt%以下を含
    み、かつS:0.03〜0.25wt%、 Pb:0.03〜0.3 wt
    %、 Bi:0.01〜0.3 wt%、 Te:0.002〜 O.5wt%、 Se:0.003 〜0.10wt%、 P:0.03超〜0.15wt%およ
    びCa:0.0002〜0.30wt% のうちから選ばれる1 種又は2種以上を含み、さらにN
    i:0.10〜3.0 wt%、 Cu:0.1 〜3.0 wt%、 Cr:0.05〜1.0 wt% 及び Mo:0.05〜0.5 wt%のうち
    から選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部がFeおよ
    び不可避的不純物の組成からなり、組織が主としてフェ
    ライトと黒鉛からなることを特徴とする被削性に優れた
    黒鉛複合快削鋼。
  3. 【請求項3】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.
    0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5wt %、 B:0.0003〜0.0150wt%、 N:0.0015wt〜0.0150wt%、O:0.0030wt%以下を含
    み、かつS:0.03〜0.25wt%、 Pb:0.03〜0.3 wt
    %、 Bi:0.01〜0.3 wt%、 Te:0.002〜 O.5wt%、 Se:0.003 〜0.10wt%、 P:0.03超〜0.15wt%およ
    びCa:0.0002〜0.30wt%のうちから選ばれる1 種又は2
    種以上を含み、さらにV:0.05〜0.5 wt%、 Nb:0.
    001 〜O.05 wt %、及び Ti:0.005 〜O.05 wt %のう
    ちから選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部がFeお
    よび不可避的不純物の組成からなり、組織が主としてフ
    ェライトと黒鉛からなることを特徴とする被削性に優れ
    た黒鉛複合快削鋼。
  4. 【請求項4】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.
    0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 Al:0.01〜0.5wt %、 B:0.0003〜0.0150wt%、 N:0.0015wt〜0.0150wt%、O:0.0030wt%以下を含
    み、かつS:0.03〜0.25wt%、 Pb:0.03〜0.3 wt
    %、 Bi:0.01〜0.3 wt%、 Te:0.002〜 O.5wt%、 Se:0.003 〜0.10wt%、 P:0.03超〜0.15wt%およ
    びCa:0.0002〜0.30wt%のうちから選ばれる1種又は2
    種以上を含み、さらに Ni:0.10〜3.0 wt%、 Cu:0.1 〜3.0 wt%、 Cr:0.05〜1.0 wt% 及び Mo:0.05〜0.5 wt%のうち
    から選ばれる1 種又は2種以上を含み、さらにまたV:
    0.05〜0.5 wt%、 Nb:0.001 〜O.05 wt %、及び
    Ti:0.005 〜O.05 wt %のうちから選ばれる1種又は
    2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組
    成からなり、組織が主としてフェライトと黒鉛からなる
    ことを特徴とする被削性に優れた黒鉛複合快削鋼。
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