JPH0714265A - 回転磁気ヘッド装置用固定ドラムの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 入口バルジを有する固定ドラムを迅速かつ精
度良く形成できる回転磁気ヘッド装置用固定ドラムの製
造方法を提供すること。 【構成】 磁気ヘッドと一体に回転する回転ドラムに対
して、磁気テープの走行を案内する回転磁気ヘッド装置
用固定ドラムの製造方法において、上記ドラムの母材で
ある円筒状のドラム母材１０外周面に、このドラム母材
の第１の端面から第２の端面側に向かって、前記磁気テ
ープの走行案内用のターニング面１１を形成し、次い
で、このターニング面端部に形成された前記ドラム母材
の段部に沿って、溝を有したリード部１２を形成し、こ
の溝入れのさい、ドラム母材の端面１０ａ近傍で、ター
ニング面が形成されていない箇所まで溝入れすることに
より、ドラム母材１０に上記リード部１２とともに、入
口バルジ１３を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はビデオテープレコーダ
（ＶＴＲ）等の磁気記録再生装置に使用される回転磁気
ヘッド装置用固定ドラムの製造方法に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】ＶＴＲ等に使用される回転磁気ヘッド装
置は、図５で示されるように、磁気ヘッド３と一体に回
転する回転ドラム１と、この回転ドラム１と重ねるよう
にして、互いの中心が一致するように配置され、磁気テ
ープＴの走行を案内する固定ドラム２を有している。

【０００３】この固定ドラム２の外周面には、回転ドラ
ム１と同径で磁気テープＴが摺動しつつ移動するターニ
ング面１１が形成され、このターニング面１１の端部に
は、この磁気テープＴをこの固定ドラム２の周囲に斜め
に巻き付けられるように、リード部１２が斜めに形成さ
れている。

【０００４】このリード部１２は、ターニング面１１よ
り僅かに外側に突出する段部を有するように形成され、
磁気テープＴの側端部を案内するリード面１２ｂと、こ
のリード面１２ａを確保するために、ターニング面１１
内方に所定深さ（例えば２０μｍ）だけ切り込まれる鋭
角状の溝部１２ａとを有している。

【０００５】そして、この回転磁気ヘッド装置では、回
転ドラム１及び固定ドラム２に、この固定ドラム２のリ
ード部１２に沿って例えば１８０度の巻き付け角で磁気
テープＴを斜状に巻き付けて走行させつつ、回転ドラム
１を回転させることにより、磁気ヘッド３が、磁気テー
プＴを斜めに走査して、この磁気テープＴ上に所望の映
像信号や音声信号を記録し再生できるようになってい
る。

【０００６】ここで、業務用やＳＶＨＳ等の高性能なＶ
ＴＲでは、固定ドラム２のターニング面１１上の、磁気
ヘッド３が磁気テープＴに接触し始める位置（以下これ
を突入端と呼ぶ）には、数十μｍ程度の隆起量を有した
入口バルジ１３が形成されている。

【０００７】この入口バルジ１３は突入端における磁気
ヘッド３の磁気テープＴに対する接触面圧の急激な変動
を緩和して、磁気テープＴの振動によるインパクトエラ
ーを防止し、これにより再生信号中に含まれる磁気テー
プＴの振動によるジッダの発生を未然に防止するように
している。

【０００８】この固定ドラム２の入口バルジ１３は、従
来より、図６の（ａ）で示されるように、固定ドラム２
の外周部の一部に変形容易な薄肉部３０を形成し、この
薄肉部３０を図６の（ｂ）で示されるように、内側から
所定の工具等で外側に叩き出すことにより形成されてい
る。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、入口バ
ルジ１３を叩き出しにより形成する場合、この入口バル
ジ１３の突出量にバラつきが生じ、多数の固定ドラム２
に入口バルジ１３を正確に形成することができないとい
う問題があった。

【００１０】また、入口バルジ１３の形成に、叩き出し
工程が別工程として必要となるため、固定ドラム２の製
作に時間を要してしまうという欠点もあった。さらに、
入口バルジ１３形成のための叩き出しにより、固定ドラ
ム２に変形や歪みが残ってしまうという問題もある。

【００１１】本発明は、以上の課題を解決するためにな
されたもので、入口バルジを有する固定ドラムを迅速か
つ精度よく形成できる回転磁気ヘッド装置用固定ドラム
の製造方法を提供することを目的としている。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明によ
れば、磁気ヘッドと一体に回転する回転ドラムに対し
て、磁気テープの走行を案内する回転磁気ヘッド装置用
固定ドラムの製造方法において、上記ドラムの母材であ
る円筒状のドラム母材外周面に、このドラム母材の第１
の端面から第２の端面側に向かって、前記磁気テープの
走行案内用のターニング面を形成し、次いで、このター
ニング面端部に形成された前記ドラム母材の段部に沿っ
て、溝を有したリード部を形成し、この溝入れのさい、
ドラム母材の端面近傍で、ターニング面が形成されてい
ない箇所まで溝入れすることにより、ドラム母材に上記
リード部とともに、入口バルジを形成するようにした、
回転磁気ヘッド装置用固定ドラムの製造方法により達成
される。

【００１３】好ましくは、前記リード部は、前記ドラム
母材のターニング面端部に形成された段部より、ドラム
の軸方向に沿って所定距離位置をずらして形成するよう
にする。

【００１４】好ましくは、前記リード部および前記入口
バルジが、前記ドラム母材を回転しつつ、刃具をこのド
ラム母材の軸方向に移動させることによって形成され
る。

【００１５】また、好ましくは、前記刃具はフライスカ
ッタである。

【００１６】

【作用】上記構成によれば、まず、ドラム母材の第１の
端面から第２の端面側に向かってターニング面を形成す
る。ターニング面はドラム母材の外周面の一部を切削し
て形成されるため、このターニング面端部にはドラム母
材の外周面との間に凸状の段部が形成される。つぎに、
この段部に沿って、ターニング面の内方に溝を有したリ
ード部を形成する。この場合、ドラム母材の第１の端面
近傍のターニング面が形成されていない箇所に溝入れす
る。

【００１７】これにより、ドラム母材にリード部が形成
されるとともに、ドラム母材の周方向に形成されたリー
ド部とドラム母材の第１の端面間に、ターニング面より
所定量だけ突出した入口バルジが形成される。

【００１８】

【実施例】以下、この発明の好適な実施例を添付図面に
基づいて詳細に説明する。尚、以下に述べる実施例は、
本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種
々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説
明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、
これらの態様に限られるものではない。

【００１９】なお、本実施例が適用される回転磁気ヘッ
ド装置の全体構成は、図５で説明したものと同じである
から、重複す説明は省略し、相違点を中心に説明する。

【００２０】まず、回転磁気ヘッド装置用固定ドラム２
の製造工程を図１及び図２を参照しつつ説明する。図１
の（ａ）はシリカ（Ｓｉ）を含有する硬いアルミニウム
（Ａｌ）等により構成された円筒形ドラム母材１０の外
周面所定位置に、ターニング面１１を形成する工程の説
明図である。

【００２１】このターニング面１１はドラム母材１０の
第１の端面である上端面１０ａから第２の端面である下
端面１０ｂ側に向かって形成され、このターニング面１
１端部とドラム母材１０の母材外周面１０ｃとの境界部
には、上端面１０ａから下端面１０ｂ側に向かって斜め
に延びていて、ターニング面１１より僅かに外方に突出
した段部１１ａが形成される。

【００２２】この場合、ターニング面１１の加工に用い
るターニング刃具２０Ａの先端部は、滑らかな平面を形
成できるように丸くなっており、このため、段部１１ａ
はアールを有した形状となっている（図２参照）。

【００２３】図１の（ｂ）はターニング面１１が形成さ
れたドラム母材１０にリード部１２と入口バルジ１３と
を形成する工程の説明図である。リード部１２はターニ
ング面１１の段部１１ａより所定距離Ｌだけ母材外周面
１０ｃ側に寄った位置から、この段部１１ａに沿って形
成される。

【００２４】したがって、図２に示されているように、
磁気テープＴの側端面を案内するリード部１２のリード
面１２ａは、段部１１ａより図において下方に距離Ｌだ
け寄った位置に形成される。また、リード部１２はター
ニング面１１内方に鋭角状に切り込まれる溝部１２ａを
有しているため、リード部１２とターニング面１１との
境界には凸ライン１２ｃが形成される。

【００２５】この場合、リード部１２を図１の下から上
へ刃具を相対的に移動させるように形成する。ここで、
このリード部１２は、ドラム母材１０の上端面１０ａま
で形成せず、この上端面１０ａ近傍で矢印で示すように
向きを変え、ドラム母材１０の周方向に向かって形成す
るようにする。

【００２６】これによって、ドラム母材１０の上端面１
０ａ近傍では、リード部１２とターニング面１１間の凸
ライン１２ｃは、ドラム母材１０の上端面１０ａに平行
な状態この段部１１ａ及び母材外周面１０ｃがリード部
１２の溝部１２ａの傾斜に沿って斜めに削り込まれた状
態となる。

【００２７】すなわち、ドラム母材１０の上端面１０ａ
の近傍には、ターニング面１１よりは外側に僅かに突出
し、母材外周面１０ｃよりは内方に位置する入口バルジ
１３が形成される。そして、リード部１２のリード面１
２ａは、図１（ｂ）において、段部１１ａより下側に形
成されるため、側端面がリード面１２ａに案内される磁
気テープＴは必ずこの入口バルジ１３に沿って移動する
こととなる。

【００２８】この場合、リード部１２の加工に用いるリ
ード刃具２０Ｂの先端部は、鋭角状の溝部１２ａが形成
できるように、尖ったものが用いられる。

【００２９】以上のように、ドラム母材１０から固定ド
ラム２を形成するに当たり、ターニング面１１とリード
部１２との形成時に、入口バルジ１３をも形成できるた
め、固定ドラム２を迅速に形成できることとなる。

【００３０】この場合、入口バルジ１３は機械加工によ
って形成されるため、従来の叩き出し形成の場合に比
べ、正確な寸法のものが容易に形成できるとともに、固
定ドラム２に叩き出しに起因する不要な変形や歪等を生
じさせることもない。

【００３１】つぎにドラム母材１０からのターニング面
１１、リード部１２、入口バルジ１３の具体的形成方法
を図３を参照しつつ説明する。図において、２１はドラ
ム母材１０をその軸を中心に所定速度で回転させる回転
駆動源であり、２２はターニング面１１及びリード部１
２形成用の刃具２０Ａ，２０Ｂをドラム母材１０の軸方
向及び径方向に移動させる刃具移動手段である。そし
て、上記回転駆動源２１及び刃具移動手段２２はコント
ローラ２３によってＮＣ制御される。

【００３２】すなわち、回転駆動源２１により、ドラム
母材１０を所定速度で回転させつつ、刃具移動手段２２
により、ターニング刃具２０Ａの先端部をドラム母材１
０の径方向の所定位置まで移動させた後、このターニン
グ刃具２０Ａをドラム母材１０の軸方向に所定速度で移
動させることにより、ターニング面１１が形成される。
また、リード刃具２０Ｂの先端部を、段部１１ａから所
定距離Ｌだけずらした状態で、ドラム母材１０の径方向
所定位置まで移動させた後、このリード刃具２０Ｂをド
ラム母材１０の軸方向に所定速度で移動させることによ
り、リード部１２が形成される。

【００３３】そして、ドラム母材１０の上端面１０ａ側
近傍において、リード刃具２０Ｂのドラム母材１０の軸
方向に沿った移動を停止して、ドラム母材１０２の回転
によって、リード部１２をさらにドラム母材１０の周方
向に沿って形成する。このことによって、前述のよう
に、ドラム母材１０に入口バルジ１３が形成される。

【００３４】この場合、入口バルジ１３のターニング面
１１からの突出量Ｈ（図２参照）は、リード刃具２０Ｂ
をドラム母材１０の周方向に移動させる場合の、このド
ラム母材１０の上端面１０ａとリード刃具２０Ｂとの間
の距離や、ターニング面１１に対するリード刃具２０Ｂ
の傾斜角θ（図１の（ｂ）参照）を変えることにより、
容易に変更できる。

【００３５】ここで、入口バルジ１３のターニング面１
１からの突出量は、磁気ヘッド３のターニング面１１か
らの突出量によって種々に変更する必要があるが、一般
には８ｍｍＶＴＲの場合２０〜２５μｍ程度であり、ベ
ータカムの場合４０〜４５μｍ程度である。

【００３６】なお、図４で示されるように、回転刃具で
あるフライスカッタ２０Ｃを用いて、リード部１２や入
口バルジ１３を形成するようにしてもよい。

【００３７】また、上記実施例では、ドラム母材１０に
ターニング面１１を形成後、リード部１２を形成するよ
うにしたが、ドラム母材１０にリード部１２を形成後、
ターニング面１１を形成するようにしてもよい。

【００３８】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、入
口バルジを有する固定ドラムを迅速かつ精度良く形成で
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例に係る固定ドラムの製造工
程の説明図である。

【図２】図１の（ｂ）のＡ−Ａ断面図である。

【図３】図１の固定ドラムの具体的形成方法の説明図で
ある。

【図４】図１の固定ドラムのリード部をフライスカッタ
で形成する場合の説明図である。

【図５】回転磁気ヘッド装置の斜視図である。

【図６】入口バルジの従来の形成方法の説明図である。

【符号の説明】

１ 回転ドラム ２ 固定ドラム ３ 磁気ヘッド １０ ドラム母材 １０ａ 上端面（第１の端面） １０ｂ 下端面（第１の端面） １１ ターニング面 １１ａ 段部 １２ リード部 １２ａ 溝部 １３ 入口バルジ Ｔ 磁気テープ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁気ヘッドと一体に回転する回転ドラム
   に対して、磁気テープの走行を案内する回転磁気ヘッド
   装置用固定ドラムの製造方法において、 上記ドラムの母材である円筒状のドラム母材外周面に、
   このドラム母材の第１の端面から第２の端面側に向かっ
   て、前記磁気テープの走行案内用のターニング面を形成
   し、 次いで、このターニング面端部に形成された前記ドラム
   母材の段部に沿って、溝を有したリード部を形成し、 この溝入れのさい、ドラム母材の端面近傍で、ターニン
   グ面が形成されていない箇所まで溝入れすることによ
   り、 ドラム母材に上記リード部とともに、入口バルジを形成
   することを特徴とする、回転磁気ヘッド装置用固定ドラ
   ムの製造方法。
2. 【請求項２】 前記リード部は、前記ドラム母材のター
   ニング面端部に形成された段部より、ドラムの軸方向に
   沿って所定距離位置をずらして形成することを特徴とす
   る、請求項１に記載の回転磁気ヘッド装置用固定ドラム
   の製造方法。
3. 【請求項３】 前記リード部および前記入口バルジが、
   前記ドラム母材を回転しつつ、刃具をこのドラム母材の
   軸方向に移動させることによって形成されることを特徴
   とする、請求項１記載の回転磁気ヘッド装置用固定ドラ
   ムの製造方法。
4. 【請求項４】 前記刃具がフライスカッタであることを
   特徴とする、請求項２記載の回転磁気ヘッド装置用固定
   ドラムの製造方法。