JPH07134912A

JPH07134912A - 自己潤滑性絶縁電線

Info

Publication number: JPH07134912A
Application number: JP27953993A
Authority: JP
Inventors: Nobuo Wachi; 信夫和知; Masatada Fukushima; 正忠福島; Masaru Kanemitsu; 大金光
Original assignee: Showa Electric Wire and Cable Co
Current assignee: SWCC Corp
Priority date: 1993-11-09
Filing date: 1993-11-09
Publication date: 1995-05-23

Abstract

(57)【要約】【目的】表面の滑り性を向上させることができ、しか
も、耐熱性や電気特性などの特性低下、外観不良を招く
ことがなく、さらに、製造に際して作業性が良好で製造
コストを上昇させることもない自己潤滑性絶縁電線を提
供する。【構成】導体上に直接または他の絶縁被膜を介して、
焼付塗膜形成用樹脂 100重量部あたり、チタン原子に結
合する親水基および親油基を有するチタン酸エステルを
0.1〜10重量部添加してなる絶縁塗料の塗布焼付層を設
ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電気機器のコイル成形
品に用いられる絶縁電線に係り、さらに詳しくは、表面
の滑り性を高めて巻線加工性を向上させた自己潤滑性絶
縁電線に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、モータ、トランスなどの電気機器
の小型化、高性能化、低コスト化が進められ、これにと
もない、このような電気機器のコイル成形品に用いる絶
縁電線は、高速かつ高密度でコイル巻きされる傾向にあ
る。このため、かかる用途に用いる絶縁電線には、高速
でコイル巻き作業を行っても、被膜が傷付いたり特性が
低下することがなく、また、スロット内での占積率を高
めることができるよう、被膜表面の滑り性の向上が強く
求められている。

【０００３】従来、このような滑り性を高める方法とし
ては、（イ）絶縁塗料に、滑性物質として、たとえば、
モンタン酸ワックス、カルナバワックス、パラフィンワ
ックスなどのワックス類、シリコーンオイルなどの潤滑
油、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの
粉末を添加する、（ロ）電線表面に、潤滑性の高いナイ
ロン樹脂、または上記のような滑性物質を添加したナイ
ロン樹脂を被覆する、（ハ）電線表面に、セラックやカ
ルナバワックスなどの減摩材のアルカリ水分散液を塗布
し焼き付ける、（ニ）電線表面に、流動パラフィン、ス
ピンドル油などの潤滑油を塗布するなどの方法が知られ
ている。

【０００４】しかしながら、このような方法では次のよ
うな問題があった。すなわち、（イ）の方法では、滑り
性を改善するためには滑性物質を多量に配合しなければ
ならず、そのために被膜の透明性が失われたり、塗料に
分離、沈殿を招くおそれがある。しかも、十分な滑り性
が得られない。さらに、滑性物質が粉末のものでは、被
膜表面にざらつきを生じ外観不良を招く。

【０００５】（ロ）の方法では、軟化温度が低下するう
え、滑性物質を添加したものでは、上記と同様の問題を
生じる。また、被膜厚さが増大するため、占積率の点で
も好ましくない。

【０００６】（ハ）の方法では、コイル加工時に断線な
どのトラブルを生ずるおそれがある。（ニ）の方法で
は、均一に塗布することが難しいうえ、滑り性も不十分
である。さらに、（ロ）〜（ニ）の方法では、塗料焼付
後、再度、塗布や焼付工程を行う必要があるため、作業
性が低下し、また、製造コストの上昇を招く。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このように、絶縁電線
において、巻線加工性を高めるために滑り性向上の要求
があるが、従来の方法では、十分な滑り性が得られない
うえ、耐熱性や電気特性などの特性が損なわれる、外観
が不良となる、作業性の低下や、製造コストの上昇を招
くなどの難点があった。

【０００８】本発明はこのような従来の事情に対処して
なされたもので、滑り性が向上し、かつ、耐熱性や電気
特性などの特性低下、外観不良などを招くことがなく、
さらに、製造も容易な自己潤滑性絶縁電線を提供するこ
とを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような
自己潤滑性絶縁電線を得るべく鋭意研究を重ねた結果、
ある特定のチタン酸エステルが、被膜の滑り性の改善に
有効であり、これを配合した絶縁塗料を用いることによ
り、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完
成するに至った。

【００１０】すなわち、本発明の自己潤滑性絶縁電線
は、導体上に直接または他の絶縁被膜を介して、焼付塗
膜形成用樹脂 100重量部あたり、チタン原子に結合する
親水基および親油基を有するチタン酸エステルを 0.1〜
10重量部添加してなる絶縁塗料の塗布焼付層を設けてな
ることを特徴とするものである。

【００１１】本発明に使用される絶縁塗料には、ホルマ
ール系、ポリエステル系、ポリエステルイミド系、ポリ
ウレタン系、ポリアミドイミド系、ポリイミド系、ナイ
ロン系、あるいはこれらの混合系など、一般に絶縁被膜
形成用塗料として知られる絶縁塗料すべてが適用可能で
ある。

【００１２】本発明においては、このような絶縁塗料
に、チタン原子に結合する親水基および親油基を有する
チタン酸エステル（以下、単にチタン酸エステルと称す
る。）が添加される。この成分は、絶縁塗料本来の特性
を損なうことなしに、被膜に優れた滑り性を付与し、得
られる絶縁電線の巻線加工性を向上させる効果を有す
る。このようなチタン酸エステルを具体的に例示する
と、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプ
ロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピル
トリオレオイルチタネート、イソプロピルトリパルミト
イルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンス
ルホニルチタネート、イソプロピルトリ（ジオクチルピ
ロホスフェート）チタネート、イソプロピルジメタクリ
ルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステ
アロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ（ジ
オクチルホスフェート）チタネート、ビス（ジオクチル
ピロホスフェート）オキシアセテートチタネート、ビス
（ジオクチルピロホスフェート）エチレンチタネート、
ジイソステアロイルエチレンチタネート、テトライソプ
ロピルビス（ジオクチルホスファイト）チタネート、テ
トラオクチルビス（ジトリデシルホスファイト）チタネ
ート、テトラ（2,2-ジアリルオキシメチル-1- ブチル）
ビス（ジ- トリデシルホスファイト）チタネートなどが
あげられ、なかでもイソプロピルトリイソステアロイル
チタネート、イソプロピルトリ（ジオクチルピロホスフ
ェート）チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチ
タネートなどが好適に使用される。市販品を例示する
と、味の素社製のプレンアクト KR TTS［イソプロピル
トリイソステアロイルチタネートの商品名］、プレンア
クト KR46B ［テトラオクチルビス（ジトリデシルホス
ファイト）チタネートの商品名］などがある。これら
は、 1種を単独で使用してもよく、 2種以上を混合して
使用してもよい。

【００１３】なお、本発明においては、このようなチタ
ン酸エステルとともに、シリコーンオイルやワックス類
などの公知の潤滑剤を、本発明の効果を阻害しない範囲
で併用してもよい。

【００１４】本発明において、上記チタン酸エステルの
絶縁塗料における添加量を、焼付塗膜形成用樹脂 100重
量部あたり、 0.1〜10重量部に限定した理由は、これら
の成分が 0.1重量部未満では、添加による効果が十分得
られず、逆に、10重量部を超えると、被膜の透明度が低
下するようになるからである。より好ましい範囲は、焼
付塗膜形成用樹脂 100重量部あたり、 0.5〜8 重量部で
ある。

【００１５】本発明の自己潤滑性絶縁電線は、上記チタ
ン酸エステルを上記範囲で添加した絶縁塗料を、導体上
に、直接または他の絶縁被膜を介して塗布焼付すること
により得られ、得られる自己潤滑性絶縁電線は、チタン
酸エステルの作用により、滑り性に優れた絶縁被膜が形
成される結果、巻線加工性の良好な、すなわち、高速か
つ高密度でコイル巻き可能なものとなる。しかも、チタ
ン酸エステルは、その配合によって、耐熱性や電気特性
などの特性低下、外観不良などの不都合を招くこともな
いので、得られる絶縁電線は、他の特性については、従
来の絶縁電線に少なくとも匹敵し、滑り性については特
性が大幅に向上したものとなる。さらに、製造に際して
は、上記したように、新たな塗布や焼付工程を要しない
ため、作業性の低下や、製造コストの上昇を招くことも
ない。

【００１６】本発明の自己潤滑性絶縁電線は、このよう
に、滑り性に優れ、かつ、耐熱性や電気特性などの特性
も良好であるため、近年のモータ、トランスなどの電気
機器の小型化、高性能化、低コスト化を進めるうえで非
常に有用である。

【００１７】

【作用】このように本発明の自己潤滑性絶縁電線におい
ては、特定のチタン酸エステルを所定量添加した絶縁塗
料を用いたことにより、滑り性の良好な絶縁被膜が形成
され、巻線加工性を大きく向上させることができる。し
かも、被膜は、耐熱性、電気特性などの特性が低下する
ことがなく、外観も良好である。さらに、製造にあたっ
ても、新たな塗布や焼付工程を要しないため、従来のも
のに比べ、作業性が低下したり、製造コストが大きく上
昇することもない。

【００１８】

【実施例】以下、本発明の実施例を記載する。実施例１ポリエステルワニス（東芝ケミカル社製商品名 TVE 5
350 ）に、その樹脂分100重量部あたり 1重量部のイソ
プロピルトリイソステアロイルチタネート（商品名プ
レンアクト KR-TTS 表中、チタン酸エステルＡと表
記）を添加混合して調製した絶縁塗料を、 1mmφの銅線
上に膜厚が約38μｍとなるように塗布焼付けて自己潤滑
性絶縁電線を得た。なお、焼付は、炉長 6ｍの焼付機を
用いて、線速11m/分、温度 370℃の条件で行った。

【００１９】実施例２〜８絶縁塗料の組成、および絶縁塗料の焼付条件を表１に示
すように変えた以外は、実施例１の場合と同様にして絶
縁塗料を調製し、 1mmφの銅線上に塗布焼付けて自己潤
滑性絶縁電線を得た。なお、ここで使用した絶縁ワニス
は、実施例１で用いたポリエステルワニスの他、ポリエ
ステルイミドワニス（日触スケネクタディ社製商品名
アイソミッド40SH）、ポリウレタンワニス（東特塗料
社製商品名 TPU 5242）であり、また、チタン酸エス
テルとしては、実施例１で用いたイソプロピルトリイソ
ステアロイルチタネートの他、テトラオクチルビス（ジ
トリデシルホスファイト）チタネート（商品名プレンア
クト KR-46B 表中、チタン酸エステルＢと表記）を使
用した。

【００２０】上記各実施例で得られた自己潤滑性絶縁電
線の特性を表１に示す。

【００２１】また、比較のために、実施例で用いた 3種
の絶縁ワニスをそれぞれ単独で 1mmφの銅線上に、表１
に示す条件で塗布焼付け、従来構造の絶縁電線を得た
（比較例１〜４）。これらの絶縁電線の特性を表１に併
せ示す。

【００２２】

【表１】表１からも明らかなように、本発明の自己潤滑性絶縁電
線は、比較例のものに比べ、滑り性、耐摩耗性が向上し
ており、耐熱性その他の特性についても比較例に匹敵す
る良好な特性を有している。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の自己潤滑
性絶縁電線によれば、滑り性、耐摩耗性が向上し、高速
かつ高密度のコイル巻きが可能となる。しかも、耐熱性
や電気特性、外観が良好で、さらに、製造に際しても、
作業性が良好で、製造コストが大きく上昇することもな
い。

【００２４】したがって、モータ、トランスなどの電気
機器の製造に有用で、これら機器の小型化、高性能化、
低コスト化を図ることができる。

【００２５】

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】導体上に直接または他の絶縁被膜を介し
て、焼付塗膜形成用樹脂 100重量部あたり、チタン原子
に結合する親水基および親油基を有するチタン酸エステ
ルを 0.1〜10重量部添加してなる絶縁塗料の塗布焼付層
を設けてなることを特徴とする自己潤滑性絶縁電線。