JPH0712825A - 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ

Info

Publication number
JPH0712825A
JPH0712825A JP5156410A JP15641093A JPH0712825A JP H0712825 A JPH0712825 A JP H0712825A JP 5156410 A JP5156410 A JP 5156410A JP 15641093 A JP15641093 A JP 15641093A JP H0712825 A JPH0712825 A JP H0712825A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
probe
sample
bias voltage
scanning
force
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5156410A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Yamazaki
謙治 山▲崎▼
Ban Nakajima
蕃 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP5156410A priority Critical patent/JPH0712825A/ja
Publication of JPH0712825A publication Critical patent/JPH0712825A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01QSCANNING-PROBE TECHNIQUES OR APPARATUS; APPLICATIONS OF SCANNING-PROBE TECHNIQUES, e.g. SCANNING PROBE MICROSCOPY [SPM]
    • G01Q10/00Scanning or positioning arrangements, i.e. arrangements for actively controlling the movement or position of the probe
    • G01Q10/04Fine scanning or positioning
    • G01Q10/06Circuits or algorithms therefor
    • G01Q10/065Feedback mechanisms, i.e. wherein the signal for driving the probe is modified by a signal coming from the probe itself

Abstract

(57)【要約】 【目的】 走査型プローブ顕微鏡において、精度が高く
空間分解能の高い像を高速に観察できるようにする。 【構成】 試料1と探針2a間の相対的位置を、ディジ
タルシグナルプロセッサ11により試料1の面内方向に
変化させながら、試料1表面に垂直な方向に変化させ
る。この時に、レーザー発振器2cと光検出器2dによ
り試料1と探針2a間に働く力を検出し、これが最小と
なるバイアス電圧を、微分回路3dと比較器3eの合図
で検出する。これにより、試料1表面に電荷が集まって
いない状態での測定を可能にし、不均一性の激しい試料
でもフィードバックループの応答速度の制限を受けるこ
となく精度の高い像を高速に観察できるようにし、ま
た、バイアス電圧の正負に依存して、試料1表面に集ま
る電荷の種類や、電荷の集まり方が異なったりする場合
などでも、正確な電位の測定を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋭く尖らせた探針を試
料表面に接近させ、探針先端と試料表面との距離に依存
する物理量を検出することにより、表面形状の測定や材
料分析などを高い空間分解能で行う走査型プローブ顕微
鏡に関するもののうち、探針先端と試料表面に働く静電
引力等の電磁気的力を検出して試料表面の電子的情報を
高分解能で測定する走査型マックスウェル応力顕微鏡
と、探針先端の試料表面に働く原子間力等の力を検出し
て表面形状を測定する原子間力顕微鏡およびその制御方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡の一種である走査
型マックスウェル応力顕微鏡(以下SMMと略記する)
は物質の表面電位を高分解能で観察でき、また、原子間
力顕微鏡(以下AFMと略記する)は物質の表面形状を
原子オーダーの高分解能で観察できるということで注目
されており、以下の原理に基づいている。すなわち、A
FMでは、鋭く尖らせた探針の先端を試料表面から1n
m程度以下の距離に接近させると、試料・探針間に原子
間力やその合成力である接触力等が働く。これらの力は
試料・探針間距離に大きく依存するので、探針をXY方
向にラスタースキャン状に掃引させながらこの力を検出
し、これが一定になるように探針をZ方向にフィードバ
ック制御することにより、原子オーダーで試料の表面形
状が観察できる。AFMや走査型トンネル顕微鏡(以下
STMと略記する)等の走査型プローブ顕微鏡の構成や
動作については、精密工学会誌第53巻(1987)1
811頁から1844頁に解説されており、AFMの原
理や実際の測定方法については固体物理第27巻(19
92)531頁から539頁に解説されている。
【0003】SMMでは、AFMと同様に試料・探針間
に働く力を検出する機能があるが、探針先端は導電性材
料とし、試料・探針間距離は試料表面の水分などによる
吸着力が働かないように数十nm程度以上離して測定す
る(一度この吸着力に引き寄せられるとマックスウェル
応力の測定が続けられなくなる為である)。SMMの例
の一つでは、試料と探針の間に周期的な波形のバイアス
電圧を印加することによって働くマックスウェル応力を
検出するために、このバイアス電圧の周期と同じ周期の
力の成分の信号や2倍周期の力の成分の信号などを取り
出す。これらの信号を走査の信号と関連づけて表示する
ことにより、試料表面の微視的な電位、電荷、分極の様
子を示した像を観察することができる。SMMの原理や
測定結果等は電子情報通信学会技術研究報告第92巻
(1992)OME92−3(13頁から18頁)(以
下、文献1と略記する)で説明されている。また、静電
引力や静電引力勾配の測定により試料表面の電荷像や電
位像を測定する方法がいくつか報告されているが(第5
3回応用物理学会学術講演会(平成4年秋期)講演予稿
集16p−ZY−7,8,9(383頁から384頁)
(1992))、静電力がマックスウェル応力の一種で
あるということから、これらもマックスウェル応力顕微
鏡の一種であると言える。これらのマックスウェル応用
顕微鏡の空間分解能は、文献1またはH.Rohrer
Scanning Tunneling Micro
scopy and Related Methods
(Kluwer,Dordrecht,1990)pp
1−25によると、 2・21/2・β・(s+R)1/2・s1/2 (1) によって大まかに表すことができる。ここで、βは1の
オーダーの数、sは試料・探針間の距離、Rは探針先端
の曲率半径であり、高い分解能を得るためには試料・探
針間の距離および探針先端の曲率半径が小さな値をとる
ことが重要であることがわかる。
【0004】また、STMやAFMの制御方法の改良と
して、試料・探針間距離をこれらがほとんど接触してい
る状態から離れた状態にまで大きく変化させながら測定
する方法が提案されている(第40回応用物理学関係連
合講演会(1993年春期)講演予稿集31a−M−
6、J.Appl.Phys.65巻5237頁から5
239頁など)。これらの方法では、像データのピクセ
ル間の探針移動を、フィードバック制御を行いながら試
料表面をなぞるように行うのではなく、一旦試料表面か
ら遠ざけて直線的に次のピクセルの位置に移動させた後
フィードバック制御を再開し試料・探針間距離を近づけ
るという制御を行う。これにより、STMでは大きな視
野の測定時間が短縮でき、AFMではこれに加え試料・
探針間に働く水平方向および垂直方向の力を小さくし試
料と針の損傷を防ぐ効果があるとしている。
【0005】さて、従来の走査型プローブ顕微鏡の構成
と動作のうち、文献1に示されているSMMの例を、該
文献に従って、図8を用いて説明する。この従来例を構
成するものとして、80は試料、81aは探針、81b
は板バネ、81cはレーザー発振器、81dは光検出
器、81eは試料80をX,Y,Z軸方向へ駆動するX
YZ軸圧電素子、82aは正弦波発生器、82b,82
cはロックインアンプ、82d,82eはフィードバッ
ク回路、90aはA/D変換器、90b,90cはD/
A変換器、91はディジタルシグナルプロセッサ(以下
DSPと略記する)、92は制御用コンピュータであ
る。探針81a、板バネ81bの表面には白金がコート
され、正弦波発生器82aと電気的に接続されている。
なお、XYZ軸圧電素子81eのXY軸方向は試料80
の面内の座標軸方向を示し、Z軸方向は試料80に垂直
な方向を示す。また、DSP91は、データ転送機能
と、走査制御機能を内在している。
【0006】この従来例の動作は以下の通りである。正
弦波発生器82aが発生したバイアス電圧が試料80と
探針81aの間に印加された状態で、試料80に対し探
針81aの先端を試料80の表面から数十nmないし数
百nm程度に接近させると、マックスウェル応力(ある
いは単純に静電引力と言っても良い)が試料80・探針
81a間に働く。この力により探針81aと一体となっ
ている板バネ81bがたわみ、このたわみ量はレーザー
発振器81cから発振されたレーザー光の進路を変え、
これが光検出器81dにより検出され、試料80・探針
81a間に働く力の信号(以下これを力信号と呼ぶこと
とする)として出力される。つまり、光検出器81dを
構成する左右2つの光検出部分の各光検出量の差信号
が、板バネ81bのたわみを高感度で検出する。正弦波
発生器82aは周波数ωを持つ正弦波のバイアス電圧信
号を出力しており、これによって試料80と探針81a
の間に働くマックスウェル応力も周期的に変化するが、
この力のうち印加したバイアス電圧の周波数ωと同周波
数ωの成分は試料80表面の探針81a先端付近の電位
と探針81a間の電位の差に主に依存し、バイアス電圧
のωの周波数の2倍周波数である2ωの成分は試料80
・探針81a間距離に依存する。そこで、この力に対応
した信号を2つのロックインアンプ82b,82cに入
力し、順にωおよび2ωの周波数成分を取り出す。これ
により、試料80・探針81a間の電位差および試料8
0・探針81a間の距離に対応した信号が取り出せる。
距離に対応した信号はロックインアンプ82cからフィ
ードバック回路82dに入力され、該信号が一定の値を
取るようにXYZ軸圧電素子81eのZ端子にフィード
バックされる。電位差に対応した信号はロックインアン
プ82bからフィードバック回路82eに入力され、該
信号がゼロ(V)となるように正弦波発生器82aに出
力され、正弦波の電圧信号にオフセット電圧として加え
られる。このフィードバック回路82eが出力する電圧
信号は、そのまま試料80・探針81a間の電圧差を示
しており、A/D変換器90aを介してDSP91に入
力される。制御用コンピュータ92は、DSP91に試
料80・探針81a間の相対的位置を水平方向にラスタ
ースキャンするための情報を予め出力しており、ラスタ
ースキャンの情報とDSP91より入力した試料80の
電位の情報を関連づけて記憶・表示する。DSP91
は、その走査制御機能により、D/A変換器90b,9
0cを介して、ラスタースキャンをするための信号をX
YZ軸圧電素子81eに出力し、A/D変換器90aか
ら入力された試料80・探針81a間の電位差の信号を
データ転送機能により制御用コンピュータ92へ出力す
る。このような動作により、試料80・探針81a間の
距離を一定に保った状態での試料の微視的な電位分布が
観察できる。
【0007】上記において、探針と板バネが一体となっ
た部分はプローブと呼ばれるが、図9にこれら従来のS
MMで用いられているプローブの構成図を示す。この従
来例を構成するものとして、100は探針、101は板
バネ、102はおもて面導電性膜、103は裏面レーザ
ー反射膜である。以下便宜的に、プローブの探針100
がある側の面をおもて面、その反対の面を裏面と呼ぶこ
ととする。探針100先端を導電性材料とし、かつここ
にバイアス電圧を印加するための電気的導通を取る必要
があるため、プローブおもて面全体にスパッタなどによ
り白金などの金属薄膜を付け、おもて面導電性膜102
としている。また、プローブ裏面ではレーザー光を効率
よく反射させるため、金などの金属薄膜をコートし、裏
面レーザー反射膜103としている。バイアス電圧はお
もて面の金属薄膜(102)に直接印加されるか、ある
いはおもて面・裏面間に導通を取って裏面の金属薄膜
(103)に印加される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、試料電位
を測定するために試料・探針間に印加するバイアス電圧
のオフセットをフィードバックの結果により決める方法
では、不均一性の激しい試料についてはフィードバック
ループの応答速度の制限から、精度の高い像が得られな
いという問題がある。つまり、フィードバックのゲイン
を上げすぎると出力信号が発振してしまうため、発振し
ない程度にフィードバックゲインを抑えるが、その結果
フィードバック出力が試料電位の変化に十分追従でき
ず、測定精度がある程度以上上げられないとう問題があ
る。または、フィードバックを十分追従させるために
は、ラスタースキャンの速度を遅くしなければならず、
観察時間が長くなるという問題がある。
【0009】また、このように、バイアス電圧を一定の
正弦波とし、静電引力(またはマックスウェル応力、以
下同様)のω成分をゼロ(V)とする方法では、試料が
半導体である場合など、試料・探針間の印加電圧の正負
に依存して、試料表面に集まる電荷の種類が異なったり
電荷の集まり方が異なったりする場合には、電位差の絶
対値が等しくても静電引力が異なる場合があり、正確な
電位が測定できない、という問題がある。
【0010】また、試料・探針間距離が数十から数百n
mと完全に非接触の状態を保って測定するため、試料・
探針間距離をこれ以上小さくできず、空間分解能は数十
nm程度かもっと悪い状況であり、同時に得ることがで
きる表面形状の像も同様の空間分解能でAFMに比べる
とはるかに劣るという問題がある。
【0011】また、測定中に試料と探針が一旦接触する
と、試料表面の水分等による吸着力が働き、同様の制御
では測定を継続できないという問題があった。
【0012】さらに、プローブにおいては、探針おもて
面全体に金属をコートしているため、探針先端以外の金
属部分と試料表面の間に働く静電引力が無視できず、や
はり空間分解能を落とす原因となっていた。
【0013】本発明は、上記問題を解決するためになさ
れたものであり、その目的は、バイアス電圧の制御や試
料電位の検出、探針の構成および方法を改良することに
より、精度が高く空間分解能の高い像を高速に観察でき
る走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプロ
ーブを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、試料を載置する試料台と、先端が導電性
である探針と、前記試料と前記探針間の相対的位置を前
記試料の面内方向に変化させる走査制御部と、前記相対
的位置を前記試料表面に垂直な方向に変化させるフィー
ドバック制御部と、前記試料と前記探針の間にバイアス
電圧を印加するバイアス電圧制御部と、前記試料と前記
探針の間に働く力を検出する検出部を有する走査型プロ
ーブ顕微鏡において、請求項1の発明では、前記試料と
探針の間に働く力が、極小となる前記バイアス電圧を検
出する手段を有する構成とし、請求項3の発明では、前
記フィードバック制御部が、前記試料と前記探針間の前
記試料表面に垂直方向の距離を繰り返し変化させる手段
を有し、前記垂直方向の距離の変化に伴って変化する前
記試料と前記探針間に働く力の最大値を検出する手段を
有する構成とし、請求項5の発明では、上記請求項3の
発明の走査型プローブ顕微鏡において、前記検出部が、
前記試料の表面および前記探針を非導電性液体中に保つ
為の容器を有するか、または前記試料の表面および前記
探針を真空中に保つ為の容器を有する構成としている。
【0015】また同じく、上記の目的を達成するため、
本発明は、まず、試料と探針の間の相対的位置を前記試
料の面内方向に制御し、次に、前記試料と前記探針の間
にバイアス電圧を印加し、次に、前記試料と前記探針の
間に働く力を検出し、次に、前記検出した出力に基づい
てフィードバック制御により前記試料と前記探針の前記
試料表面に垂直方向の相対的位置を制御する走査型プロ
ーブ顕微鏡の制御方法において、請求項2の発明では、
前記試料と前記探針の間に働く力が、極小となる前記バ
イアス電圧を検出する構成とし、請求項4の発明では、
前記フィードバック制御により、前記試料と前記探針間
の前記試料表面に垂直方向の距離を繰り返し変化させ、
前記試料と前記探針の間に働く力を、前記垂直方向の距
離の関数として検出し、その結果に基づいて、前記試料
と前記探針の間に働く力の最大値を求める構成とし、請
求項6の発明では、請求項4の発明の走査型プローブ顕
微鏡の制御方法において、前記試料の表面および前記探
針を非導電性液体中に保つか、または前記試料の表面お
よび前記探針を真空中に保つ構成としている。
【0016】さらに同じく、上記の目的を達成するた
め、本発明の請求項7の発明では、探針と、板バネを有
する走査型プローブ顕微鏡のプローブにおいて、前記探
針の本体および前記板バネの本体が非導電性材料で構成
され、前記探針の先端が導電性材料で構成されており、
前記探針先端部に電圧を印加するため、前記探針先端部
に接続されている配線部を有する構成としている。
【0017】
【作用】請求項1および請求項2の発明の走査型プロー
ブ顕微鏡およびその制御方法では、検出部が検出する試
料・探針間に働く引力が最小となるバイアス電圧を、検
出部もしくはバイアス電圧制御部等が検出することを特
徴としている。これにより、電荷が試料表面に集まって
いない状態での測定を可能にし、不均一性の激しい試料
についてもフィードバックループの応答速度の制限を受
けることなく、精度の高い像を高速に観察することを可
能とし、また、試料が半導体である場合など、試料・探
針間の印加電圧の正負に依存して、試料表面に集まる電
荷の種類が異なったり電荷の集まり方が異なったりする
場合など、電位差の絶対値が等しくても静電引力が異な
るという場合でも、正確な電位の測定を可能としてい
る。
【0018】また、請求項3および請求項4の発明の走
査型プローブ顕微鏡およびその制御方法では、フィード
バック制御部が、試料・探針間の距離を、試料と探針が
接触している状態から数nm程度以上離れている状態へ
と変化させることを繰り返し、検出部またはフィードバ
ック制御部が、試料・探針間の距離の変化に伴って変化
する試料・探針間に働く引力の最大値を検出することを
特徴としている。これにより、試料・探針間の距離が非
常に小さい状態での静電引力の測定を可能として、SM
M像の空間分解能を高め、同時にAFMの原理による高
分解能での試料形状の像を得る。
【0019】また、請求項5および請求項6の発明の走
査型プローブ顕微鏡およびその制御方法では、試料の表
面および探針を非導電性液体中か、あるいは真空中に保
つことを特徴としている。これにより、試料と探針が接
触している状態から数nm程度以上離れている状態へと
変化させる際に、試料・探針間に働く吸着力を抑え、高
い精度のSMM像を得る。
【0020】また、請求項7の発明のプローブでは、探
針のうち先端を除くほとんどの部分および、板バネのう
ち裏面を除くほとんどの部分が非導電性材料でできてお
り、探針の先端の導電性部分から板バネ裏面へ細い配線
により電気的導通が取られていることを特徴としてい
る。これにより、静電引力として探針先端とその直下の
試料表面の間に働く力以外の力をほとんどなくして、高
い空間分解で静電引力(又はマックスウェル応力)を検
出する。
【0021】
【実施例】以下に、図面を参照して本発明の実施例を説
明する。
【0022】[実施例1]図1は本発明の第1の実施例
を示すSMMの構成図であって、1は試料、2aは探
針、2bは板バネ、2cはレーザー発振器、2dは光検
出器、2eは試料1をX,Y,Z方向に駆動するXYZ
軸圧電素子、3aは正弦波発生器、3bはロックインア
ンプ、3cはフィードバック回路、3dは微分回路、3
eは比較器、3fはサンプルホールド回路(以下S/H
回路と略記する)、10aはA/D変換器、10b,1
0cはD/A変換器、11はDSP、12は制御用コン
ピュータである。なお、XYZ軸圧電素子2cのXY軸
方向は試料1の面内の座標軸方向を示し、Z軸方向は試
料1に垂直な方向を示す。また、DSP11は、データ
転送機能と、走査制御機能を内在している。
【0023】上記構成の実施例の動作は次のとおりであ
る。正弦波発生回路3aから周波数ωの正弦波のバイア
ス電圧が試料1に印加された状態で、試料1と探針2a
の先端が数十から数百nm程度に接近すると、これらの
間に静電引力が働く。この力は板バネ2bをたわませ、
このたわみは、レーザー発振器2cから発振されたレー
ザーが板バネ2bの裏面で反射して、光検出器2dに到
達することにより、検出される。結局、光検出器2dか
ら試料1・探針2a間の力に対応した力信号が、ロック
インアンプ3bおよび微分回路3dに出力される。この
力信号の周波数2ωの成分は試料1・探針2a間の距離
に依存するので、ロックインアンプ3bにより2ω成分
が抽出され、この信号が一定になるようにフィードバッ
ク回路3cでXYZ軸圧電素子2eのZ端子にフィード
バックされることで、試料1・探針2a間距離が一定に
保たれる。力信号は微分回路3dで微分され、比較回路
3eに出力される。この信号を比較回路3eはゼロと比
較し、一致した瞬間にS/H回路3fに合図を出力す
る。S/H回路3fはこの合図を受けた瞬間に正弦波発
生回路3aから入力したバイアス電圧の値を保持し、A
/D変換器10aを介してDSP11に出力する。DS
P11は、予め制御用コンピュータ12から指示された
方法で、その走査制御機能によりD/A変換器10b,
10cを介してXYZ軸圧電素子2eのX端子およびY
端子に走査信号を出力することによって、試料1を水平
方向にラスタースキャンをしながら、A/D変換器10
aを介してS/H回路3fより入力した、力信号の微分
がゼロとなった(つまり力信号が極値をとった)瞬間の
バイアス電圧値を、データ転送機能により制御用コンピ
ュータ12に転送する。制御用コンピュータ12はDS
P11に指示した走査の情報とDSP11より入力した
バイアス電圧値の情報を関連付け、記憶、表示する。ま
た、正弦波発生回路3aは出力する正弦波が極値を取っ
たときにS/H回路3fがバイアス電圧をサンプルホー
ルドしないように、適当なon/off信号をS/H回
路3fに出力する。
【0024】次に、(試料表面の静電荷や分極が十分小
さい場合には)力信号が極値を取るバイアス電圧が試料
表面の電位を示していることを、図2(a−1),(a
−2),(a−3),(b)を用いて説明する。図2
(a−1),(a−2),(a−3)は試料が半導体で
ある場合の試料・探針間のバンド図の例であり、図2
(b)はバイアス電圧と静電引力の関係の例を示した図
である。ここで、eは電気素量、φMは探針先端の導電
性材料の仕事関数、φSは半導体試料の仕事関数、EF
フェルミレベル、Vは試料に印加するバイアス電圧、+
−は各電荷を意味する。一般に異なった物質では仕事関
数が異なるため、異なる物質よりなる試料と探針を近づ
けた場合、バイアス電圧Vがゼロ(V)ではなく、(φ
S−φM)の電圧を印加した場合(図2(a−1))に試
料・探針間の空間の準位(真空準位)が水平となり、試
料・探針の表面に電荷が集まっていない状態となる(こ
の状態をフラットバンドという)。図2(a−2),
(a−3)に示したように、バイアス電圧がこの電圧
(φS−φM)より、大きくても小さくても、試料先端お
よびその直下の試料表面に電荷が集まることにより試料
・探針間に静電引力が働く。静電引力はこれらの状態よ
りバイアス電圧の絶対値が大きくなるにつれて単調に大
きくなるので、バイアス電圧と力信号の関係は図2
(b)のグラフで表した様に下に凸の曲線となる。この
曲線で力信号が最小となる(つまり極値をとる=微分が
ゼロとなる)バイアス電圧を求めることにより、φs
φMつまり試料・探針間の電位が求められる。また、φM
が分かっていればφSを求めることができる。
【0025】試料1と探針2aの水平方向の相対的位置
をラスタースキャンさせながら、上記の電位測定の動作
を繰り返すことにより、試料表面の正確な電位分布の像
を観察することができる。
【0026】このように、試料・探針間に働く引力が、
最小となるバイアス電圧を検出することにより、不均一
性の激しい試料についてもフィードバックループの応答
速度の制限を受けることなく、精度の高い電位像を高速
に観察することが可能となる。また、試料が半導体であ
る場合など、試料・探針間のバイアス電圧の正負に依存
して、試料表面に集まる電荷の種類が異なったり電荷の
集まり方が異なったりする場合など、電位差の絶対値が
等しい際の静電引力が異なる場合でも、正確な電位の測
定が可能となる。
【0027】本実施例では、バイアス電圧を一定の正弦
波とし、アナログ回路で力信号の微分がゼロとなる瞬間
のバイアス電圧を検出する方法を述べたが、ディジタル
回路を用いて力信号が最小となるバイアス電圧を検出す
る回路構成としたり、全入出力をD/A変換器等でディ
ジタル化し力信号が最小となるバイアス電圧を数値的に
求める機能をDSPに持たせたり、アナログ回路でもピ
ークホールド回路などを用いて力信号が最小となるバイ
アス電圧を直接検出したり、バイアス電圧を三角波など
他の波形としたり、最小となるバイアス電圧の値により
バイアス電圧のオフセットをフィードバック制御させた
りしてもよいことは言うまでもない。
【0028】この場合、アナログ制御を多用した装置
は、全ディジタル制御の装置に比べて、ディジタル制御
部分の汎用性が高く、全体として安価に作製できるとい
う利点があり、全ディジタル制御化しDSPに多くの機
能を持たせた装置では、ソフトウエアを書き換えること
によりSTMなど他の種類の走査型プローブ顕微鏡と制
御部分のハードウエアを共用できたり、ソフトウエアを
工夫することにより慣れない作業者でも簡単に操作でき
る装置としたりすることができるという利点がある。
【0029】[実施例2]図3は本発明の第2の実施例
を示すプローブの構成図であって、上記第1の実施例の
探針2aおよび板バネ2bの部分に相当する部品であ
り、一般にSMMで用いるためのものである。この実施
例を構成するものとして、30は探針、30aは探針先
端部、30bは探針本体、31は板バネ本体、32は配
線部、33は裏面レーザー反射膜である。探針先端部3
0a、配線部32および、裏面レーザー反射膜33は導
電性材料で形成されている。
【0030】この様なプローブは、LSIプロセス技術
を用いて、非導電性材料で作られている市販のAFM用
のプローブに、収束イオンビーム装置(またはFIB)
を用いて探針先端部30aおよび配線部32となる所
に、金属を付着させることにより、作製することができ
る。
【0031】動作させる際には、プローブを固定する治
具から、配線部32、裏面レーザー反射膜33を介して
導通の取れている探針先端部30aへ、バイアス電圧を
印加する。その状態で、探針先端部30aにマックスウ
ェル応力等の力が働くと、その力に応じて板バネ本体3
1がたわむ。裏面レーザー反射膜33は、このたわみ量
に応じて照射されているレーザー光の進路を変化させ
る。
【0032】図4(a)は、本発明の第2の実施例であ
るプローブの動作時の電荷分布の例を示す図であって、
図4(b)に示した従来のプローブの動作時の電荷分布
の例を示す図と比較することにより、本発明の特徴を示
すものである。ここで、40,40′は試料、41,4
1′は探針、42は探針先端部、43は配線部であり、
+−は各電荷を意味する。
【0033】図4(b)の従来のプローブでは探針4
1′全体の表面が導電性材料より成り、試料40′・探
針41′間にバイアス電圧が印加されると、探針41′
先端だけでなく探針41′表面全体に電荷が集まり、よ
って試料40′表面にも広い範囲に渡って電荷が分布す
る。その結果、探針41′先端だけでなく探針41′全
体と試料40′の広い範囲の間で静電引力が働くため、
測定される力は試料40′の広い範囲の情報を重ね合わ
せたものとなる。一方、図4(a)に示した本発明の実
施例では、探針先端部42(および配線部43)のみが
導電性であるため、試料40・探針41間にバイアス電
圧が印加された際に、探針41の先端のみ(および配線
部43の一部)に電荷が集まり、よって試料40表面で
も探針先端部43付近に電荷がより局在する。その結
果、探針41先端と電荷が局在した試料40表面の間で
のみ静電引力が働くため、測定される力は、試料40の
より狭い範囲の情報しか含まず、SMMの空間分解能を
向上させることが可能となる。
【0034】このように、探針の先端を除くほとんどの
探針の部分および、板バネの裏面を除くほとんどの板バ
ネの部分が非導電性材料でできており、探針の先端の導
電性部分から板バネ裏面へ細い配線により電気的導通が
取られていることによって、探針全体に静電引力が働き
試料表面の広い領域の情報をひろうことにより、分解能
が下がってしまうことが防げ、探針先端部とその直下の
試料表面の間に働く力以外の力がほとんどなくなり、高
い空間分解能で静電引力を検出することが可能となる。
【0035】本実施例では、FIBを用いて探針先端部
および配線部を形成する例を述べたが、探針や板バネを
作製する際にLSIプロセス技術を用いて探針先端部お
よび配線部を形成し、プローブを作製してもよいことは
言うまでもない。また、本実施例を示した図3では配線
部を板バネの先端方向に伸ばした例を示したが、板バネ
の横方向あるいは根元方向に伸ばしても良いことは言う
までもない。
【0036】[実施例3]図5は本発明の第3の実施例
を示すSMMの制御方法を実現する装置の構成図であっ
て、50は試料、51aは探針、51bは板バネ、51
cはレーザー発振器、51dは光検出器、51eは試料
50をX,Y,Z方向に駆動するXYZ軸圧電素子、5
1fは試料50と探針51aおよび板バネ51bを水中
に浸す為の容器、60aはA/D変換器、60b〜60
eはD/A変換器、61はDSP、62は制御用コンピ
ュータである。なお、XYZ軸圧電素子51eのXY軸
方向は試料50の面内の座標軸方向を示し、Z軸方向は
試料50に垂直な方向を示す。また、DSP61は、デ
ータ収集処理機能と、バイアス電圧制御機能と、走査制
御機能と、フィードバック等Z電圧制御機能とを内在し
ている。本実施例では、DSP61に内在されデータ収
集処理機能を実現している機能手段が、本発明における
試料・探針間に働く力の最大値を求める手段を兼ねてい
る。
【0037】DSP61は、予め制御用コンピュータ6
2より指示された方法で、D/A変換器60b〜60d
を介して、バイアス電圧制御機能により探針51aにバ
イアス電圧の信号を出力すると同時に、走査制御機能に
よりXYZ軸圧電素子51eのX端子およびY端子に走
査信号を出力する。また、予め制御用コンピュータ62
より指示された方法で、A/D変換器60aを介してデ
ータ収集処理機能により光検出器51dから力信号を入
力し、フィードバックの計算を実行した結果などをD/
A変換器60eを介してフィードバック等Z電圧制御機
能によりXYZ軸圧電素子のZ端子に出力する。試料5
0・探針51a間に働く力が力信号に変換される動作は
第1の実施例の説明中に述べたものと同じである。ただ
し、容器51fは純水で満たされ、試料50、探針51
aおよび板バネ51bは純水に浸してある。
【0038】次に、試料・探針間距離と試料・探針間に
働く力の関係がSMMやAFMでどのように測定される
かについて、説明する。図6(a)は試料・探針間距離
sと試料・探針間に働く力Fの関係の例を示す図であ
り、図6(b)は試料位置をZ方向に駆動するZ印加電
圧Zと試料・探針間に働く力Fの信号の関係の例を示す
図である。図6(a)の関係と板バネのバネ定数が分か
っていれば、図6(b)の関係は一義的に求めることが
できる。
【0039】図6(a)に示すように、試料・探針間距
離s(以下sと略記する)が非常に小さい(接触してい
る)際には、試料・探針間に働く力F(以下Fと略記す
る)は斥力の原子間力の合算により大きな斥力となり、
これはsが小さくなるにつれて急激に大きくなる。sが
多少大きい際には、試料・探針間に働く引力の原子間力
や、静電引力あるいは試料表面にある水分や炭化水素物
の層の吸着力が働きFは引力となる。この引力はsが大
きくなるにつれ徐々に小さくなる(以下この曲線をs−
F曲線と呼ぶ)。図6(a)に示した(イ)、(ロ)
は、バネ定数[力/距離]の傾きを持ち、s−F曲線に
接する直線であり、図6(b)で示した測定系の通過す
る経路をs−F平面上に記したものである。実際の測定
系では、板バネのたわみ量の制御ができないので、図6
(b)に示したようにZ印加電圧Z(以下Zと略記す
る、試料のZ方向の変位距離に直接対応する)とFの関
係を測定する。このZ−Fの関係はZの増加時と減少時
で異なった経路を取りヒステリシスを示す。図6(a)
および(b)に示した(1)〜(6)の記号は各々対応
している。まず、Zが十分大きい時点(1)から徐々に
Zを小さくしていくと、Fとしては引力が徐々に大きく
なっていくが、(2)に達すると一挙に板バネがたわみ
探針は試料に引き付けられ(3)の位置に移動する。更
に、Zを小さくするとFは引力から斥力領域に入り、
(4)の時点ではsはほとんど変化せず図6(b)のZ
−F平面上では直線を描く。ここでZを増加の方向へ反
転させると再び引力領域に戻っていくが、今度は(5)
の位置まで引きつけあい、(5)から(6)へ一挙に離
れ、(1)に戻る。
【0040】この様に、Zを変化させてFとの関係を測
定することで、s−F曲線の情報が得られるが、特徴的
でありかつ測定が容易なパラメータは、Z−F曲線にお
けるFの最大値FMである。FMは図6(a)に示した様
に、大きな引力領域のs−F曲線とバネ定数の傾きの直
線との接点の値である。試料・探針間に働く引力のう
ち、原子間力はsが非常に小さい時しか働かず、また静
電引力に比べてかなり小さいので、FMとは余り関係し
ない。実際の測定では、特に大気中の測定では試料表面
にある水分や炭化水素物の層の吸着力が、FMに大きく
影響を与える。この吸着力と静電引力を加えた力の増減
を、FMは反映する。吸着力がバイアス電圧や測定履歴
に関係しなければ、FMのバイアス電圧依存性は静電引
力のバイアス電圧依存性を反映する。
【0041】試料や探針の材質にも依るが、実際には水
分などによる吸着力は測定履歴や物理的ゆらぎにより変
化することが多いので、大気中での測定は難しい場合が
多い。しかし、この吸着力は試料表面および探針全体を
水中または油中に浸した場合、または真空中で清浄な表
面が保たれている場合は、大気中に比べ非常に小さくな
ることはよく知られている。よって、この様な環境下で
測定することにより、FMは静電引力を良い精度で反映
し、高い精度のSMM観察が可能となる。また、水中で
測定する場合、電流が流れないよう絶縁性の良い純水を
用いるのが適当である。
【0042】ところで、FMの値は、図6(a)に示し
たs0の様に1〜2nm程度の非常に小さいsでの値で
あり、SMMの空間分解能を大まかに示す式(1)から
SMMの空間分解能を高めることに利用できることが分
かる。
【0043】図7は本発明の第3の実施例を示すSMM
の制御方法を示すフローチャート図であって、DSP6
1が行う走査制御、フィードバック制御、データ収集お
よびデータ処理の方法について説明するものである。こ
こでFは力信号の値、ZはZ印加電圧信号の値、Vはバ
イアス電圧信号の値、ΔZはZ印加電圧信号の変化分、
ΔZ1はΔZを変化させる際の最大値、Z(F,Fs)
はFからZを求めるフィードバック関数、Vaはフィー
ドバック制御をする際のバイアス電圧信号の値、V0
1はバイアス電圧を変化させる際の順に最小値および
最大値、NVはバイアス電圧を変化させるサンプル数、
Fsは力信号が一定の値となる様に制御する際に試料を
Z方向にフィードバック制御する設定基準値であり、力
信号がFsのときには試料と探針が接触している状態と
なる力の値である。
【0044】DSP61は、まず走査範囲、フィードバ
ック関数、バイアス電圧およびZ印加電圧の変化分等の
データを制御用コンピュータ62から入力し、初期値と
して、走査範囲の開始点に対応する走査信号、バイアス
電圧信号Vaを出力し、Z印加電圧信号の変化分ΔZを
ゼロとする。次に、フィードバック制御として、力信号
Fを入力し、FがFsに一致する様にフィードバック関
数Z(F,Fs)で求めた値をZ印加電圧信号として出
力する。力信号FがFsに十分近づくまでこのフィード
バック制御を繰り返す。次に、このときのZをZ’と
し、DSP61はバイアス電圧V=V0を出力する。Δ
ZをゼロからΔZ1まで変化させてZ=Z’+ΔZの値
をZ印加電圧信号として出力しながら、力信号Fを入力
する。このとき、Z=Z’+ΔZ1のZ印加電圧では、
試料・探針間距離は数nm程度以上離れるようにΔZ1
の値を定める(ここで、試料・探針間には静電引力など
の引力が働くためΔZ1は数nmではなく(最大引力)
/(板バネのバネ定数)程度以上としなければならな
い)。次に、入力した、これらの力信号Fの列{F}の
うち最大(引力方向で数値が大きくなるものとする)の
値をFM(V0)として記憶する。このような、Zを変化
させながら最大のFM(V)を記憶する動作を、バイア
ス電圧信号をV0からV1まで(V1−V0)/(NV
1)ずつ変化させながら繰り返す。次に、記憶されたN
V個のFM(V)が最小となるVmを求め、このVmおよび
Z’の値を制御用コンピュータ62に出力する。以上
の、フィードバック制御、ΔZを変化させながらのFの
入力およびFM(V)とVmの算出と出力を、X,Yの走
査を進めながら繰り返すことにより、Vmのデータから
SMM像が得られ、Z’のデータからAFM像が得られ
る。
【0045】このように、試料・探針間の距離を、試料
と探針が接触している状態から数nm程度以上離れてい
る状態へと変化させることを繰り返し、試料・探針間の
距離の変化に伴って変化する試料・探針間に働く引力の
最大値を検出することにより、sが非常に小さい状態で
の静電引力の測定が可能となり、SMM像の空間分解能
を高めることができ、同時にAFMの原理による高分解
能の試料形状の像を得ることができる。また、試料の表
面および探針を非導電性液体中に保つことにより、試料
と探針が接触している状態から数nm程度以上離れてい
る状態へと変化させる際に、試料・探針間に働く吸着力
を抑えることができ、高い精度のSMM像を得ることが
できる。また、この様に全ての入出力をディジタル化し
コンピュータで一括して制御し、ソフトウェアを工夫す
ることにより、慣れない作業者でも簡単に操作できる装
置とすることができるという利点が得られる。
【0046】本実施例では、DSPでVmの算出を測定
と同時に行い、Vmのみを表示する方法を述べたが、D
SPが入力した力信号Fを全てまたはFM(V)の信号
列を制御用コンピュータに転送し、データ収集後に制御
用コンピュータがVmの算出と表示を行ったり、Fデー
タから求められるVm以外のパラメータを算出・表示し
たりしてもよいことは言うまでもない。たとえば、FM
(V)のVmを中心とした対称性から、半導体試料表面
に集まる電荷の種類の違いや電荷の集まり方の違いによ
り、半導体の不純物種類(p型、n型)を測定したり、
半導体の不純物濃度は仕事関数と直接対応しているの
で、探針の仕事関数が分かっていれば電位分布を測定す
ることにより半導体の不純物濃度分布を観察したりする
ことが可能である。
【0047】また、本実施例では、FがFsに十分近づ
くまで繰り返しフィードバック制御を行う例を述べた
が、X,Yの各点で1度だけフィードバック制御を行っ
てもよいことは言うまでもない。
【0048】なお、以上に挙げた本発明の実施例は、本
発明により考え得る実施例の極一部であり、SMM、A
FMに関する既存の方法や上に挙げた実施例中に述べた
方法の組み合わせにより、本発明は多数の実施態様を取
り得るものである。
【0049】具体的な組み合わせの方法は、観察する試
料や目的に応じて最適なものを選択するべきであるが、
適切な組み合わせにより同様の効果が得られるものであ
る。
【0050】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
請求項1および請求項2の発明の走査型プローブ顕微鏡
およびその制御方法によれば、試料・探針間に働く引力
が、最小となるバイアス電圧を検出することにより、精
度の高い電位像を高速に観察することが可能となり、ま
た、試料が半導体である場合など、試料・探針間のバイ
アス電圧の正負に依存して、電位差の絶対値が等しい際
の静電引力(またはマックスウェル応力)が異なる場合
でも、正確な電位の測定が可能となる。
【0051】また、本発明の請求項3および請求項4の
発明の走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法によれ
ば、試料・探針間の距離を、試料と探針が接触している
状態から数nm程度以上離れている状態へと変化させる
ことを繰り返し、試料・探針間の距離の変化に伴って変
化する試料・探針間に働く引力の最大値を検出すること
により、試料・探針間の距離が非常に小さい状態での静
電引力(またはマックスウェル応力)の測定が可能とな
り、SMM像の空間分解能を高めることができ、同時に
AFMの原理による高分解能の試料形状の像を得ること
ができる。
【0052】また、本発明の請求項5および請求項6の
走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法によれば、試
料の表面および探針を非導電性液体中に保つことによ
り、試料と探針が接触している状態から数nm程度以上
離れている状態へと変化させる際に、試料・探針間に働
く吸着力を抑えることができ、高い精度のSMM像を得
ることができる。
【0053】さらに、本発明の請求項7の発明のプロー
ブによれば、探針の先端を除くほとんどの探針の部分お
よび、板バネの裏面を除くほとんどの板バネの部分が非
導電性材料でできており、探針の先端の導電性部分から
板バネ裏面へ細い配線により電気的導通が取られている
ことによって、探針全体に静電引力(またはマックスウ
ェル応力)が働き試料表面の広い領域の情報をひろうこ
とにより分解能が下がってしまうことが防げ、探針先端
部とその直下の試料表面の間に働く力以外の力がほとん
どなくなり、高い空間分解能で静電引力(マックスウェ
ル応力)を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1の実施例を示すSMMの構成図
【図2】(a−1),(a−2),(a−3)は上記第
1の実施例の動作を説明するための、試料が半導体であ
る場合の試料・探針間のバンド図の例、(b)は上記第
1の実施例の動作を説明するための、バイアス電圧と静
電引力の関係の例を示した図
【図3】本発明第2の実施例を示すプローブの構成図
【図4】(a)は上記第2の実施例の動作時の電荷分布
の例を示す図、(b)はプローブの従来例の動作時の電
荷分布の例を示す図
【図5】本発明第3の実施例を示すSMMの制御方法を
実現する装置の構成図
【図6】(a)は本発明第3の実施例を説明するため
の、試料・探針距離と試料・探針間に働く力の関係の例
を示す図、(b)は本発明の実施例を説明するための、
試料位置をZ方向に駆動するZ印加電圧と試料・探針間
に働く力の信号の関係の例を示す図
【図7】本発明の第3の実施例を示すSMMの制御方法
を示すフローチャート図
【図8】従来の走査型プローブ顕微鏡のうち、文献1に
示されているSMMの構成例を示す図
【図9】従来の走査型プローブ顕微鏡に用いられている
プローブの構成図
【符号の説明】
1…試料 2a…探針 2b…板バネ 2c…レーザー発振器 2d…光検出器 2e…XYZ軸圧電素子 3a…正弦波発生器 3b…ロックインアンプ 3c…フィードバック回路 3d…微分回路 3c…比較器 3f…S/H回路 10a…A/D変換器 10b,10c…D/A変換器 11…DSP 12…制御用コンピュータ 30…探針 30a…探針先端部 30b…探針本体 31…板バネ本体 32…配線部 33…裏面レーザー反射膜 40…試料 41…探針 42…探針先端部 43…配線部 50…試料 51a…探針 51b…板バネ 51c…レーザー発振器 51d…光検出器 51e…XYZ軸圧電素子 51f…容器 60a…A/D変換器 60b〜60e…D/A変換器 61…DSP 62…制御用コンピュータ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料を載置する試料台と、先端が導電性
    である探針と、前記試料と前記探針間の相対的位置を前
    記試料の面内方向に変化させる走査制御部と、前記相対
    的位置を前記試料表面に垂直な方向に変化させるフィー
    ドバック制御部と、前記試料と前記探針の間にバイアス
    電圧を印加するバイアス電圧制御部と、前記試料と前記
    探針の間に働く力を検出する検出部を有する走査型プロ
    ーブ顕微鏡において、 前記試料と探針の間に働く力が、極小となる前記バイア
    ス電圧を検出する手段を有することを特徴とする走査型
    プローブ顕微鏡。
  2. 【請求項2】 まず、試料と探針の間の相対的位置を前
    記試料の面内方向に制御し、次に、前記試料と前記探針
    の間にバイアス電圧を印加し、次に、前記試料と前記探
    針の間に働く力を検出し、次に、前記検出した出力に基
    づいてフィードバック制御により前記試料と前記探針の
    前記試料表面に垂直方向の相対的位置を制御する走査型
    プローブ顕微鏡の制御方法において、 前記試料と前記探針の間に働く力が、極小となる前記バ
    イアス電圧を検出することを特徴とする走査型プローブ
    顕微鏡の制御方法。
  3. 【請求項3】 試料を載置する試料台と、先端が導電性
    である探針と、前記試料と前記探針間の相対的位置を前
    記試料の面内方向に変化させる走査制御部と、前記相対
    的位置を前記試料表面に垂直な方向に変化させるフィー
    ドバック制御部と、前記試料と前記探針の間にバイアス
    電圧を印加するバイアス電圧制御部と、前記試料と前記
    探針の間に働く力を検出する検出部を有する走査型プロ
    ーブ顕微鏡において、 前記フィードバック制御部が、前記試料と前記探針間の
    前記試料表面に垂直方向の距離を繰り返し変化させる手
    段を有し、 前記垂直方向の距離の変化に伴って変化する前記試料と
    前記探針間に働く力の最大値を検出する手段を有するこ
    とを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  4. 【請求項4】 まず、試料と探針の間の相対的位置を前
    記試料の面内方向に制御し、次に、前記試料と前記探針
    の間にバイアス電圧を印加し、次に、前記試料と前記探
    針の間に働く力を検出し、次に、前記検出した出力に基
    づいてフィードバック制御により前記試料と前記探針の
    前記試料表面に垂直方向の相対的位置を制御する走査型
    プローブ顕微鏡の制御方法において、 前記フィードバック制御により、前記試料と前記探針間
    の前記試料表面に垂直方向の距離を繰り返し変化させ、 前記試料と前記探針の間に働く力を、前記垂直方向の距
    離の関数として検出し、その結果に基づいて、前記試料
    と前記探針の間に働く力の最大値を求めることを特徴と
    する走査型プローブ顕微鏡の制御方法。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の走査型プローブ顕微鏡に
    おいて、 前記検出部が、前記試料の表面および前記探針を非導電
    性液体中に保つ為の容器を有するか、または前記試料の
    表面および前記探針を真空中に保つ為の容器を有するこ
    とを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の走査型プローブ顕微鏡の
    制御方法において、 前記試料の表面および前記探針を非導電性液体中に保つ
    か、または前記試料の表面および前記探針を真空中に保
    つことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の制御方法。
  7. 【請求項7】 探針と、板バネを有する走査型プローブ
    顕微鏡のプローブにおいて、 前記探針の本体および前記板バネの本体が非導電性材料
    で構成され、前記探針の先端が導電性材料で構成されて
    おり、前記探針先端部に電圧を印加するため、前記探針
    先端部に接続されている配線部を有していることを特徴
    とするプローブ。
JP5156410A 1993-06-28 1993-06-28 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ Pending JPH0712825A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5156410A JPH0712825A (ja) 1993-06-28 1993-06-28 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5156410A JPH0712825A (ja) 1993-06-28 1993-06-28 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0712825A true JPH0712825A (ja) 1995-01-17

Family

ID=15627141

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5156410A Pending JPH0712825A (ja) 1993-06-28 1993-06-28 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0712825A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170010902A (ko) * 2009-12-01 2017-02-01 브루커 나노, 인코퍼레이션. 스캐닝 프로브 현미경을 작동하는 방법 및 장치

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170010902A (ko) * 2009-12-01 2017-02-01 브루커 나노, 인코퍼레이션. 스캐닝 프로브 현미경을 작동하는 방법 및 장치
KR20180043410A (ko) 2009-12-01 2018-04-27 브루커 나노, 인코퍼레이션. 스캐닝 프로브 현미경을 작동하는 방법 및 장치

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2915554B2 (ja) バリアハイト測定装置
Howland et al. A Practical Guide: To Scanning Probe Microscopy
US5210410A (en) Scanning probe microscope having scan correction
EP0410131B1 (en) Near-field lorentz force microscopy
USRE33387E (en) Atomic force microscope and method for imaging surfaces with atomic resolution
US5289004A (en) Scanning probe microscope having cantilever and detecting sample characteristics by means of reflected sample examination light
US4724318A (en) Atomic force microscope and method for imaging surfaces with atomic resolution
US5081390A (en) Method of operating a scanning probe microscope to improve drift characteristics
US5204531A (en) Method of adjusting the size of the area scanned by a scanning probe
JP2966189B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JPH06213910A (ja) 形状を除く表面のパラメータを正確に測定し、または形状に関連した仕事を行うための方法および相互作用装置
US7658097B2 (en) Method and apparatus of high speed property mapping
KR20050043885A (ko) 주사 탐침 현미경
CN111413519A (zh) 多集成尖端扫描探针显微镜
US5185572A (en) Scanning tunneling potentio-spectroscopic microscope and a data detecting method
JP3070216B2 (ja) 表面顕微鏡及び顕微方法
JPH0712825A (ja) 走査型プローブ顕微鏡およびその制御方法およびプローブ
EP0449221B1 (en) Scanning probe microscope
US6145374A (en) Scanning force microscope with high-frequency cantilever
JPH07325090A (ja) 光てこ方式の走査型プローブ顕微鏡及び原子間力顕微鏡
JP4497665B2 (ja) プローブの走査制御装置、該走査制御装置による走査型プローブ顕微鏡、及びプローブの走査制御方法、該走査制御方法による測定方法
JPH0850872A (ja) 試料表面の観察方法、原子間力顕微鏡、微細加工方法および微細加工装置
JP3121619B2 (ja) 走査型トンネル顕微鏡の画像処理方法
Manfredotti Imaging at the Nanoscale: Scanning Probe Microscopies Applied to Semiconductors
JPH09171027A (ja) 走査型プローブ顕微鏡