JPH07128077A - 円偏光とファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ - Google Patents

円偏光とファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ

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JPH07128077A
JPH07128077A JP29728493A JP29728493A JPH07128077A JP H07128077 A JPH07128077 A JP H07128077A JP 29728493 A JP29728493 A JP 29728493A JP 29728493 A JP29728493 A JP 29728493A JP H07128077 A JPH07128077 A JP H07128077A
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light
magnetic field
fiber
coil
circular polarizer
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JP29728493A
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Yozo Nishiura
洋三 西浦
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の光ファイバジャイロは、圧電素子にフ
ァイバを巻き付けて光弾性効果によりファイバ中を通る
光に位相変調を与えている。また偏光子で光を直線偏光
にしてからファイバコイルに通す。このようなものはフ
ァイバに係る応力により光の偏光面が回転する。位相変
調と同じ周期で偏光面の変調が起こる。これは出力のド
リフトを引き起こす。ドリフトのない光ファイバジャイ
ロを提供する。 【構成】 光の偏光状態を揃えるために偏光子を使わ
ず、円偏光子を用いる。これにより光源からの光を右廻
りまたは左廻りの円偏光にする。位相変調として圧電素
子や電気光学素子を用いない。ファイバ中に軸方向の磁
場を与えて光の偏光面を回転させる。円偏光であるの
で、偏光面が回転すると、円偏光子を逆に通る位相の異
なる直線偏光になる。位相変調と同様の変調を与えるこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、円偏光とファラデ−
効果を利用した光ファイバジャイロに関する。光ファイ
バジャイロは、シングルモ−ドファイバをコイル状に巻
き回してこれの両端に光を導入し右廻り、左廻りに伝搬
させこれらの光の位相差からファイバコイルの回転角速
度を求めるものである。
【0002】
【従来の技術】一般に光ファイバジャイロは図2に示す
ような構成を備える。光源1から出た単色光あるいは準
単色光がカップラ2を通り、偏光子3を通過する。ここ
で直線偏光になり、カップラ4でふたつの光に分岐す
る。それぞれの分岐光はファイバコイル5の両端のファ
イバ端6に入射する。ファイバコイル5はシングルモー
ドファイバを多数回巻き回してコイルとしたものであ
る。
【0003】ふたつに分けられた光はファイバコイル5
の中を時計廻り光、反時計廻り光として廻り、カップラ
4で合一し、偏光子3を反対向きに通過してカップラ2
で反射され受光素子8に入る。受光素子8で時計廻り光
と反時計廻り光が干渉する。もしもファイバコイルが回
転していると、回転角速度に比例する位相差Φr(Sagn
ac位相差)が発生する。位相差があれば干渉光の強度が
変化する。そこで受光素子の出力を検出すればファイバ
コイルの回転角速度が分かるのである。
【0004】信号光を全く変調しない場合は、受光素子
の出力がΦrを余弦の形で含む。これでは感度が悪いの
で、何らかの変調をする。位相変調、周波数変調、周波
数シフトなどの変調方式がある。ここではファイバコイ
ル5の近くに位相変調器7を設けてここを通る光を位相
変調している。
【0005】図2に示す構成は光ファイバジャイロの必
須構成要素のみを含み、minimum config
urationと呼ばれる。これらの構成要素の内、偏
光子と位相変調器は本発明に強い関連を持つので予め詳
しく説明する。
【0006】偏光子3は任意の偏光状態の光を特定の方
向の直線偏光にするものである。時計廻り光と反時計廻
り光が干渉するためには偏波面が同一であることが望ま
しい。干渉光の強度は、ふたつの光の偏波面のなす角度
の余弦に比例するからである。偏波面が直交している場
合はまったく干渉しない。そこでファイバコイルに入る
光と、ファイバコイルから出た光を同じ方向に偏波面を
持つ直線偏光にして、時計廻り光と反時計廻り光とが常
に干渉できるようにしている。つまりふたつの光の偏光
状態を揃えるために偏光子が必要であった。偏光状態を
揃えることにより、時計廻り光と反時計廻り光に相反性
を与えているのである。偏光状態が同一であれば、相反
性があるので非回転の場合に光路長の差が生じないはず
である。
【0007】偏光子としてはバルク型の偏光プリズム
や、ファイバ型の偏光子、金属誘電体多層膜をファイバ
中に埋め込んだ偏光子等がある。ファイバ型の偏光子は
複屈折性ファイバをコイル状に巻き一方の偏波の光に減
衰を高めたものである。これらいずれの偏光子も特定の
直線偏光のみを通し、これと直交する偏波の光を減衰さ
せたりファイバから追い出したりするものである。
【0008】位相変調器はファイバ中を伝搬する光に位
相の変化を与えるものである。反時計廻り光も反時計廻
り光も位相変調器を通過する。ところが両方の光におい
て、位相変調を受ける時期がファイバコイルを通過する
時間だけ異なるので、両方の光を干渉させた時に位相変
調の影響が打ち消されない。位相変調の影響は受光素子
の出力に含まれる。受光素子の出力は、位相変調の周波
数のあらゆる高調波を含む。n次の高調波の係数は位相
変調度のn次ベッセル関数である。
【0009】そこで、位相変調周波数のn倍の周波数の
キャリヤによって受光素子の出力を同期検波すると、n
次高調波を得ることができる。キャリア周波数を適当に
与えることにより、任意の次数の高調波を求めることが
できる。奇数次の高調波は時計廻り光、反時計廻り光の
位相差Δθを正弦の形で含む。偶数次の高調波はΔθを
余弦の形で含む。これにより位相差の検出感度を高める
ことができる。
【0010】位相変調器は、光が伝搬する光路の一部を
実効的に伸縮して位相を変化させるものである。これは
光弾性効果を利用したものと、電気光学効果を利用した
ものがある。
【0011】光弾性効果を利用したものの代表的な素子
は、円筒または円柱の圧電振動子に光ファイバを巻き付
けたものである。圧電振動子には電極があり交流電圧を
印加するようになっている。交番電界の作用で圧電振動
子が膨張圧縮を繰り返す。これにより光ファイバが伸び
縮みするので光ファイバに掛かる応力が変化する。光弾
性効果によりファイバの屈折率が変化する。このために
ファイバ中を伝搬する光の位相が変化するのである。
【0012】電気光学効果を利用するものは、主にLi
NbO3 などの電気光学結晶を用いて作られる。これは
ポッケルス効果を利用する素子である。結晶に光導波路
を形成しこの両側に電極を設ける。電極に交番電圧を印
加すると、光導波路の屈折率が変化するので、光の位相
が変化する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】偏光子で光を直線偏光
にして、ファイバコイルに通し、光弾性効果または電気
光学効果により位相変調を加える従来の光ファイバジャ
イロにはなお次に説明するような欠点がある。
【0014】第1は偏波変調の問題である。圧電振動子
に光ファイバを巻き付けた形式の位相変調器は、圧電振
動子による光ファイバに対する応力の加わり方が軸対称
でない。ために応力に比例した複屈折が発生する。複屈
折により偏波面が回転する。
【0015】位相変調信号と同じ周期、同じ位相で複屈
折が発生し、偏波面回転する。偏波面が順逆方向に回転
することをここでは偏波変調と呼ぶことにする。つまり
圧電振動子を用いた位相変調器においては、位相変調と
ともにこれに同期して偏波変調が起こるのである。偏波
変調は故意にしているのではなく、位相変調をすること
に伴って自然に発生する。
【0016】偏波変調は次のようにノイズの原因にな
る。偏波面回転を受けた光が偏光子を通るから、光の強
度が変化する。つまり偏波面の変調は、偏光子により、
光の強度変調に変換される。位相変調方式の光ファイバ
ジャイロは位相変調の信号と同じ周波数、位相のキャリ
ヤにより受光素子の出力を同期検波するが、光の強度が
変化していると、これが同期検波の結果にそのまま影響
を及ぼす。つまり位相変調器の偏波変調は出力信号のド
リフトを引き起す。
【0017】電気光学効果を用いた位相変調器でも偏波
変調が起こる。LiNbO3 などの電気光学結晶は一般
に複屈折性をもっている。しかも電気光学定数が結晶方
位によって異なる。もしも結晶の光学軸と光の偏波面の
角度がずれていると光の偏波面が結晶に印加している電
界の大きさによって変動する。つまり電気光学効果によ
る位相変調器も、位相変調に同期して偏波変調が起こる
ということである。偏波変調は、受光素子出力の変動を
引き起こす。
【0018】第2の問題は、圧電振動子の共振特性であ
る。位相変調の大きさは圧電振動子の膨張収縮の振幅に
よる。光ファイバに十分な大きさの位相変調を与えるた
めには膨張収縮の振幅を大きく取らなくてはならない。
このためには圧電振動子を共振周波数の近くで駆動しな
ければならない。
【0019】一方、圧電振動子は温度により周波数特性
が著しく変化する。共振周波数自体も温度により変化す
る。圧電振動子を共振周波数の近くで駆動していると、
温度の変化により、圧電振動子の振幅や位相が大きく変
動する。振幅や位相が変化すると、位相変調度が異なる
し、キャリヤ信号の位相がずれてくる。ためにスケ−ル
ファクタ−が変動する。
【0020】スケ−ルファクタ−というのは、受光素子
の同期検波出力をファイバコイルの回転角速度で割った
もので、光ファイバジャイロの感度である。スケ−ルフ
ァクタ−が変動すると、回転角速度の測定に誤差をもた
らすようになる。つまり圧電振動子は共振周波数の近く
で使うがここは温度による変化を最も受けやすい領域で
あり、温度の変動と共にスケ−ルファクタ−が揺らぐ。
【0021】第3の問題は、位相変調を大きく取るため
には、ファイバ長を長くするか、あるいは位相変調の周
波数を高くする必要があるということである。位相変調
方式の光ファイバジャイロの基本波出力Wは次の式で与
えられる。
【0022】 W=PJ1(ξ) sin(Φr) (1)
【0023】ここでPは光のパワ−、Φrは時計廻り光
と反時計廻り光の位相差である。これはファイバコイル
の回転角速度に比例する。比例定数はファイバコイルの
巻き数、コイルの断面積などによる。Φrを求めること
が目的になる。J1(ξ) は1次ベッセル関数である。ξ
は位相変調の強さを表すパラメ−タである。
【0024】 ξ=2bsin(ΩnL/2c) (2)
【0025】bは位相変調度である。これは変調電圧に
比例する。Ωは位相変調周波数である。光の位相変化分
は、bsin(Ωt)によって与えられる。Lはファイ
バコイルを構成する光ファイバの長さ、nは光ファイバ
コアの屈折率、cは真空中での光速である。nL/c
は、ファイバコイルの中を光が通過するに要する時間で
ある。ξを大きくするためには、変調電圧を増やしてb
を大きくするか、あるいはΩやLを大きくして、ΩnL
/2cをπ/2に近付けなければならない。
【0026】しかし通常用いることのできるファイバ長
や変調周波数ではΩnL/2cはπ/2よりずっと小さ
い。もしも実際的に用いられるものよりも長いファイバ
長Lを用いると当然コスト高になる。位相変調の周波数
Ωを大きくすると信号処理回路の設計、部品選定が困難
となる。また変調周波数を高くすると、時間分解能の低
さが問題になり、検出精度が悪くなる。
【0027】位相変調器を変えればこのような問題を克
服できるはずである。圧電素子や電気光学結晶の他に、
位相変調器として、熱光学効果や、ファラデ−効果を利
用した位相変調器が新しく提案されている。しかしこれ
らの位相変調器は尚現実的に利用されていない。熱光学
効果というのは温度上昇により屈折率が変化する事を言
う。
【0028】熱光学効果を利用する位相変調器がもしも
存在したとしても次の難点がある。屈折率の変化がヒー
タの発熱量つまり消費電力に比例するので、印加電圧の
2乗に比例する。印加電圧に対して屈折率変化が非線形
になる。それだけでなく熱変化により屈折率を制御する
ので、応答が遅いという難点がある。高い変調周波数で
変調をすることができない。
【0029】ファラデ−効果を用いた位相変調器という
のは、ファラデ−効果のある結晶に光を通し、交番磁場
を印加することにより光の偏波面を回転させ、複屈折物
質に通すことにより、屈折率変化とするものである。屈
折率が変化すると位相が変わるので位相変調器となる。
複屈折物質では偏波面の方向により屈折率が変わること
を利用する。つまりこれはファラデ−効果と複屈折の両
方を利用するものである。しかしこれも実用化されてい
ない。
【0030】もしも実用化されても次の難点がある。フ
ァラデ−効果により直線偏光の偏波面が回転する。偏波
面の回転による位相変化量は、ファイバの複屈折の大き
さに依存する。通常のシングルモードファイバは複屈折
を示すがこれは制御できる複屈折ではない。曲げや応力
によりシングルモードファイバには複屈折が発生する。
これは偶然的であり制御できない。従ってこの場合の位
相変調は非常に不安定で再現性のないものになる。
【0031】単なるシングルモードファイバは複屈折性
が偶然的で不安定であるので、これに代えて偏波面保存
ファイバ(複屈折ファイバ、定偏波ファイバ)を用いる
と複屈折性は顕著で安定する。しかし複屈折ファイバを
用いると、ファイバは強い偏波面保持能力があるので磁
界を印加しても偏波面の回転が起こらない。
【0032】このように位相変調方式の光ファイバジャ
イロには位相変調器が設けられるが、位相変調器はそれ
ぞれ難点がある。位相変調器のために偏波面回転が起こ
ると偏光子のためにこれが光の強度変化になるから、干
渉光の強度が変動する。このためにスケ−ルファクタ−
が揺らぐということになる。
【0033】本発明は、従来の光ファイバジャイロの難
点を克服し、偏波面変調によるドリフトのない、光ファ
イバジャイロを提供することを目的とする。また変調周
波数をファイバ長からの制約を受けることなく設定でき
る光ファイバジャイロを提供することが第2の目的であ
る。
【0034】
【課題を解決するための手段】本発明の光ファイバジャ
イロは、偏光子の代わりに、円偏光子を設ける。そして
ファイバコイルの全体または一部に交番磁界を掛けるよ
うにする。円偏光子という言葉は発明者が命名したもの
であるが、これは任意の偏光状態の光を、右廻りまたは
左廻りの円偏光に変換する素子と定義する。交番磁界の
強度は制御可能とする。つまり、本発明の光ファイバジ
ャイロは、従来の構成の内、偏光子を円偏光子に、位相
変調器を磁界発生手段に置き換えたものである。光源か
らでた光を直線偏光にせず、円偏光にするのはこれまで
に類例がない。全く新規の光ファイバジャイロである。
【0035】図1に本発明の光ファイバジャイロの原理
構成を示す。光源1から出た光は、カップラ2を通過し
て、円偏光子9を通る。円偏光子は新規な光学部品であ
る。円偏光子を通ることにより光は右廻りまたは左廻り
のいずれかの円偏光になる。ここで、右廻りというの
は、光軸に沿って進行方向に向かって偏波面が右廻りに
回転する偏波面の状態をいう。左廻りというのは、光軸
に沿って進行方向に向かって偏波面が左廻りに回転する
偏波面の状態をいう。
【0036】円偏光がカップラ4でふたつの光に分離す
る。一方の光は、ファイバコイル5の一端6Aに入り、
ファイバコイルを時計廻り光として伝搬する。他方の光
は、ファイバコイル5の他端6Bに入り、ファイバコイ
ル5を反時計廻り光として伝搬する。ファイバコイルの
端のファイバ、またはファイバコイルの全体或いは一部
に磁界発生手段が設けられる。何れの光も磁界発生手段
10を通過するから、磁界による変調を受ける。
【0037】磁界はファイバの軸方向に発生している。
光の偏光面が回転する。時計廻り光、反時計廻り光はカ
ップラ4で合体されて、円偏光子9を反対に通る。帰り
の光が円偏光子9を通過する時は、始めの円偏光と同じ
成分のみが通過する。カップラ2で分岐して、受光素子
8に入る。受光素子は、時計廻り、反時計廻り光の干渉
光の強度を検出する。
【0038】
【作用】本発明の作用を説明する。まず一般には馴染み
のない、円偏光の合成による任意の偏光状態の表示方法
について説明する。全ての偏光状態が、直線偏光の合成
によって表せることはよく知られており、直観的に理解
しやすい。しかし、直線偏光よりも複雑な円偏光によ
り、任意の偏光状態を表現できるということはあまり知
られていない。そこでこれが可能であることを、先ず説
明する。
【0039】ここで証明しようとすることは、全ての偏
光状態は、楕円偏光で表すことができ、任意の楕円偏光
は、右廻りの円偏光と、左廻りの円偏光の合成として表
すことができるということである。これは本発明が成立
する上で基本となる原理であるので、特に説明するので
ある。
【0040】本発明の要旨はこの原理にあるのではな
い。またこの原理が新規であると主張するのでもない。
本発明を理解するのに、この原理が必要であるから予備
的に説明するのである。
【0041】光は電界と磁界が互いに直交する方向に振
動しながら、何れにも直角な方向に伝搬する電磁波であ
る。、光の偏光というのは光の電界の方向をいう。電界
ベクトルEを持つ任意の楕円偏光は直交する直線偏光の
合成として次のように表現される。
【0042】 E=[Axy ]=[ax ,ay exp(iδ)] (3)
【0043】ここでAx 、Ay は直交するX軸、Y軸方
向の光の電界の成分である。ax 、ay は電界の振幅で
ある。δはAx を基準にした場合のAy の位相の進みで
ある。電界の振幅ax とay が異なるので楕円偏光にな
る。これは波動関数で書くとすると、Ax =ax cos
(ωt)、Ay =ay cos(ωt+δ)である。これ
を(3)のように表現しているのである。
【0044】δがあるので任意の歪みの楕円偏光にな
る。もしもδが0ならば、上の式は任意の方向に偏波面
をもつ直線偏光を表す。δがπ/2ならば円偏光であ
る。δが0でもπ/2でもないときは楕円偏光になる。
【0045】本発明は基礎となる状態を円偏光とするの
で任意の偏波状態を、円偏光に還元するようにする。単
位振幅の右廻り円偏光Erの電界は、
【0046】 Er=2-1/2[1,exp(iπ/2)]=2-1/2[1,i] (4)
【0047】によって表される。波動関数で表現すると
x =cosωt、Ay =−sinωtである。X成分
を実数、Y成分を虚数とする複素数で表現すると、Ax
+iAy =exp(−iωt)。同様に単位振幅の左廻
り円偏光Elの電界は、
【0048】 El=2-1/2[1,exp(−iπ/2)]=2-1/2[1,−i] (5)
【0049】によって表すことができる。波動関数表示
するとAx =cosωt、Ay =sinωtである。A
x +iAy =exp(iωt)。(3)の楕円偏光は、
(4)と(5)の線形結合で表される。
【0050】 [ax ,ay exp(iδ)]=α[1,i]+β[1,−i] (6)
【0051】ここで、αとβは複素数である。これは
(3)の楕円偏光が、右廻り円偏光がαと、左廻り円偏
光がβとの割合で足しあわせることにより得られるとい
うことである。これから次の関係がある。
【0052】 α+β=ax (7)
【0053】 i(α−β)=ay exp(iδ) (8)
【0054】(8)より、 α−β=ay exp{i(δ−π/2)} (9)
【0055】ここでθ=δ−π/2として、
【0056】 α=(ax +ay cosθ+iay sinθ)/2 (10)
【0057】 β=(ax −ay cosθ−iay sinθ)/2 (11)
【0058】となる。あるいはδの式に戻すと、
【0059】 α=(ax +ay sinδ−iay cosδ)/2 (12)
【0060】 β=(ax −ay sinδ+iay cosδ)/2 (13)
【0061】となる。これはつまり、任意の楕円偏光
が、右廻り円偏光と左廻り円偏光の一次結合として表さ
れるということを意味する。最初に述べていた原理が証
明されたことになる。本発明はこの原理を利用するが、
本発明がこの原理そのものを提案しているのではない。
【0062】次に円偏光を用いた場合の相反性について
考える。従来の光ファイバジャイロは図2に示すように
偏光子を途中に入れてファイバコイルの前に光をある方
向に偏波面を持つ直線偏光にし、ファイバコイルを通過
した後の光を同じ偏光子に通して同じ偏波面に揃えてい
る。こうすると時計廻り光の偏波面が回転した時に同時
に反時計廻り光も偏波面回転するので、光路長の差がな
い。これは相反性があるという。これについては本発明
者による、
【0063】西浦洋三、「光ファイバジャイロと光コン
ポ−ネント」エレクトロニクス5月号、P94(199
3)
【0064】に説明がある。つまり往きと帰りで偏波面
を揃えるので、時計廻り光と反時計廻り光の光路長が同
じになる。こうなるのを目的として、偏光子を挿入する
のである。
【0065】本発明は直線偏光ではなく、円偏光を用い
る。任意の偏光状態は二つの直線偏光の線形結合として
表現される。同様に、任意の偏光状態は、二つの円偏光
の線形結合として表現される。先に任意の楕円偏光がふ
たつの円偏光の線形結合として表されるということを証
明した。楕円偏光は最も一般的な偏波状態である。これ
がふたつの円偏光の線形結合で表されるのであるから任
意の偏光状態が、ふたつの基本的な円偏光の線形結合に
なるのは当然である。例えば直線偏光が左廻りと右廻り
円偏光の1:1の和であることは明らかである。
【0066】そこでファイバ中を伝搬する光を円偏光の
集まりとして考えることもできる。これは全く新しい考
え方である。従って幾つかの原理を明確にしておく必要
がある。ふたつの回転の概念がある。ファイバコイルを
光が廻る場合は時計廻り、反時計廻りということにす
る。
【0067】偏波面が光軸の廻りに進行方向に向いて右
廻りに回転するのを右廻り、進行方向に向かって左廻り
に回転するのを左廻りという。任意の光は、右廻りの円
偏光と、左廻りの円偏光に分けて考えることができる。
光ファイバジャイロでいえば、時計廻り光は右廻りの円
偏光と左廻りの円偏光の和として考えられる。同様に反
時計廻り光も、右廻りの円偏光と左廻りの円偏光の和と
して観念される。
【0068】ファイバ中の光の伝搬定数は、偏光状態に
依存するが光の伝搬の向きには依らない。また、直線偏
光におけるエネルギ−の結合の場合と同じように、右廻
り円偏光と、左廻り円偏光に同じ地点において同じ確率
で起こる。
【0069】従って、ファイバ中の任意の点において、
反時計廻りの右廻りの円偏光も時計廻りの右廻りの円偏
光も同じ伝搬定数を持つ。ファイバ中では材料的な揺ら
ぎや、応力の分布により伝搬定数が異なったとしても、
右廻り円偏光と、左廻り円偏光に共通に起こる。結局、
右廻り円偏光の、時計廻り光、反時計廻り光について相
反性が保たれる。また左廻り円偏光の、時計廻り光、反
時計廻り光についても相反性が保たれる。つまり、いず
れか一方の円偏光で入射し、ファイバコイルを伝搬さ
せ、同じ円偏光として取り出せば、時計廻り、反時計廻
りの光の間の相反性は保持できるのである。
【0070】つまり言い換えれば、微視的なバランスの
原理である。ひとつの円偏光はシングルモードファイバ
が完全であればひとつの安定な固有状態である。しかし
ファイバには材料的な不均一や応力不均一、磁場、電場
などの分布があるので、右廻り円偏光が左廻り円偏光に
遷移することがある。しかしこの遷移は、時計廻りと反
時計廻り光で同一点で起こるはずである。時計廻り光と
反時計廻り光について、同じ点で、右廻り円偏光が左廻
り円偏光に遷移する。
【0071】このような微視的な釣り合いがあるので、
はじめに右廻り円偏光としてファイバコイルに入射しフ
ァイバコイルを通過した後、右廻りの円偏光として取り
出すことにすれば、時計廻り光と反時計廻り光では、光
路長の差がない。つまり、はじめと終わりの円偏光の状
態を固定しておけば、時計廻り光と反時計廻り光の間で
の相反性が確保される。つまり直線偏光の場合の相反性
と同じようなことが円偏光についても言えるのである。
【0072】さて、ファイバコイルに磁界を掛けた場合
の作用について説明する。ある種の非対称性を持つ物質
に磁界を掛けると偏光面が磁界に比例して回転する。こ
の現象をファラデ−効果と呼ぶ。光ファイバは石英でで
きており通常はファラデ−効果はないのであるが、組成
の揺らぎ、応力の揺らぎにより非対称性が発生するの
で、ファラデ−効果を示す。ファイバコイルに磁界を掛
けると光の偏光面が回転する。これは直線偏光の偏光面
の回転である。
【0073】先に直線偏光(ax =1,ay =0:ax
+iay =1)は二つの円偏光(右廻りexp(−iω
t):左廻りexp(+ωt))の1:1の組合せによ
り得られるということを述べた。
【0074】直線偏光の偏光面の回転(ax =cos
Θ,ay =sinΘ:ax +iay =exp(iΘ))
は、二つの円偏光の段階で考えると、二つの円偏光(右
廻りexp(−iωt):左廻りexp(+ωt))の
間に位相差Θが発生した(右廻りexp(iΘ−iω
t):左廻りexp(iΘ+ωt))ということに等し
い。直線偏光の偏光面がΘだけ回転したということは、
これを構成する二つの円偏光の間に2Θの位相差が発生
したということと等価である。
【0075】つまり偏光面がΘだけ左廻りに回転したと
いうことは、これを構成する二つの円偏光のうち左廻り
円偏光がΘだけ位相が進み(exp(iΘ+ωt))、
右廻り円偏光がΘだけ位相が遅れた(exp(−i(ω
t−iΘ))ということである。
【0076】ファラデ−素子に直線偏光を入射した場
合、偏光面が回転する。直線偏光は、円偏光の合成によ
って得られるので、左廻り円偏光はΘだけ位相が進み、
右廻り円偏光はΘだけ位相が遅れるのである。従ってい
ずれか一方の円偏光に注目すると、ファラデ−素子は磁
界に比例した位相変調を加える位相変調器として機能し
ていることになる。
【0077】ファラデ−効果の大きな特徴は、非相反性
である。相反的というのは、順方向に進む光と、逆方向
に進む光が同じ道筋を取るということである。偏波面回
転等の変動が同じ場所で、逆方向に起こるので道筋が等
しくなる。ところがファラデ−効果は順逆に進む光が同
じ方向に偏光面回転させるので、相反的でない。
【0078】偏光面の回転は、旋光性によっても起こ
る。これとファラデ−効果を比較すると、ファラデ−効
果の非相反性が理解される。旋光性、光弾性効果、電気
光学効果などは、全て光の進行方向を基準として発生す
る。右廻り旋光性というのは、直線偏光を入射した時、
進行方向に関して偏光面が右廻りすることである。反対
側から光を入れても、進行方向に関して右廻りする。
【0079】ファラデ−効果は違う。偏光面が回転する
が、この回転は、光の進行方向を基準として右廻り、左
廻りとなるのではなく、物質に固定した座標系を基準と
して起こる。ファラデ−効果の場合、光の進行方向を反
転すると、光の進行方向からみた偏光面の回転方向は逆
になる。ある方向に進む光が進行方向に向かって右廻り
に偏光面を回転させるとすると、反対方向に進む光は、
進行方向に向かって左廻りに偏光面を回転させる。
【0080】これは次のようなことを意味する。一方か
ら光を入れた場合に、右廻り円偏光の位相が遅れ、左廻
り円偏光の位相が進む場合、反対方向から光を入れる
と、右廻り円偏光の位相が進み、左廻り円偏光の位相が
遅れるということである。
【0081】このことは、1本のファイバ中に反対方向
に光を進行させるようにした光ファイバジャイロにおい
ては極めて重要な性質である。つまり特定の円偏光に注
目すれば、時計廻り光、反時計廻り光の間に、非相反的
な位相差を、ファラデ−効果によって簡単に作れるとい
うことを意味しているのである。
【0082】従来光ファイバジャイロでは、オ−プンル
−プにしろ、クロ−ズドル−プにしろ、位相変調器はフ
ァイバコイルの中央部に設けることはできない。ファイ
バコイルのどちらかの端に設ける。従来の位相変調器は
ファイバの中を通過する光に位相の変化を与える。位相
変化はファイバを左に進む光にも、右に進む光にも同じ
だけ起こる。もしもファイバコイルの中央で位相を変え
たとしても、これが同じ距離だけ進んで合体すると位相
の相対的な変化はない。つまり位相変調が掛からない。
【0083】ファイバコイルの一端で位相変調すると、
一方の光は位相変調されてからファイバコイルを廻り、
他方の光はファイバコイルを回ってから位相変調され
る。位相変調を受ける時刻がΩLn/c(L:ファイバ
コイルの長さ、n:屈折率、Ω:位相変調角周波数、
c:真空中光速)だけ異なる。このために位相変調度ξ
=2bsin(ΩLn/2c)が0でない値になる。つ
まり従来の位相変調は、一方の光がファイバコイルを通
過する時間Ln/cを利用して、位相変調が打ち消さな
いようにしている。
【0084】これはファイバを実効的に伸縮させること
による位相変調が相反的であることによる。ファイバコ
イルに対して非対称の位置に位相変調器を設けることに
より非相反性を得ているのである。これは交流的な位相
変調に対する非相反性である。直流的な差を与えること
は全くできない。
【0085】ところがファラデ−効果は非相反的な作用
である。これにより互いに反対向きに伝搬する光に反対
の作用を及ぼすことができる。ファラデ−効果は偏光面
を回転させるものである。位相を変えるものではない。
位相変調のための作用ではない。
【0086】これまでファラデ−回転を位相変調に用い
たものはない。しかしファラデ−効果により位相変調を
与えることができれば、従来の光路の実効的な変化によ
るものよりも優れたものになるはずである。ファラデ−
効果ははじめから時計廻り光と、反時計廻り光に正反対
の作用を及ぼすことができるからである。直流的な位相
差を与えることもできよう。また従来の位相変調器に存
した設計上の制約も克服できる。
【0087】もちろんファラデ−素子だけでは、偏光回
転を位相の変化にすることができない。二つの円偏光を
分離できないからである。しかし本発明は光路の途中に
円偏光子を設けている。これによって光源からの光を左
廻り円偏光、或いは右廻り円偏光にしており、ファイバ
コイルを通った光も同じ円偏光子を通るようにしてい
る。これによって実効的に位相変調を与えることができ
る。
【0088】先にファラデ−効果で直線偏光の偏光面を
左廻りにΘだけ回転させるということが、直線偏光を構
成する円偏光のうち、左廻り円偏光は位相がΘ増え、右
廻り円偏光は位相がΘ減るということと等価でることを
説明した。
【0089】本発明では円偏光子を於いて、左廻りまた
は右廻り円偏光のみを通るようにしている。ここでは左
廻り円偏光子の場合を例にする。ファイバの時計廻りの
軸方向に磁場を発生させると、時計廻り光は磁場の方向
に進み、位相がΘ進む。反時計廻り光は磁場の方向と反
対向きに進み、位相がΘ遅れる。両方の光がカップラで
合体し、受光素子に戻る。
【0090】受光素子においては、2Θの位相差が発生
していることになる。偏光面を回転させる場合はもとも
と非相反的であるので、反対向きに進む光に反対向きの
位相の変化を与えることができる。Θは直流的な位相で
あっても良い。従ってファラデ−効果を使う本発明の方
法では、直流的な位相差を時計廻り、反時計廻り光に与
えることもできる。直流バイアスを与えることは従来の
位相変調では不可能であった。
【0091】それだけではない。ファラデ−効果を利用
する位相変調は、設計上の制約を大幅に緩和できる。従
来の位相変調は相反的であるので、時計廻り光、反時計
廻り光の電界ECW、ECCW は次の式のようであった。
【0092】 Ecw=E1 sin{ωt+bsin(Ωt+Φm/2)+Φr/2} (14)
【0093】 Eccw =E2 sin{ωt+bsin(Ωt−Φm/2)−Φr/2}(15)
【0094】Φrは角速度を表すSagnac位相差である。
Φmがこれまで述べてきたファイバコイルの中を光が通
過する時間長さによる非相反性の項で、Φm=nLΩ/
c、ξ=2bsin(Φm/2)である。
【0095】これに反して、本発明のようにファラデ−
回転による位相変調は、時計廻り光、反時計廻り光の電
界が次のようになる。
【0096】 Ecw=E1 sin{ωt+bsin(Ωt+Φm/2)+Φr/2} (16)
【0097】 Eccw =E2 sin{ωt−bsin(Ωt−Φm/2)−Φr/2}(17)
【0098】Eccw の式のうち、bの項が負号になって
いる。非相反的というのはこれのことである。Φmは先
の式に合わせて式中に含めている。これは時計廻り、反
時計廻りの変調を受ける時間の差にΩを掛けたものであ
る。磁場変調をファイバコイルの端に加えるとこうな
る。
【0099】しかし本発明では、ファイバコイルの中央
で変調を加えても良い。それだけでなくファイバコイル
の全体に同じ磁場を掛けても良い。この場合、Φmが0
である。Φm=δLΩn/cである。ここでδLは、時
計廻り、反時計廻り光の偏波面回転してから、合体する
までの距離の差である。変調がファイバコイルの外で加
われば、δL=Lである。変調がファイバコイルの中央
で加わればδL=0である。
【0100】本発明は非相反性をΦmの項に頼らないの
で、これが0であったとしても差し支えない。受光素子
において、時計廻り、反時計廻り光二つの光が干渉する
と、やはりΩのすべての高調波を含む出力が発生する。
n次高調波の係数はやはりn次ベッセル関数Jn(ξ)
である。ところがベッセル関数のパラメ−タであるξが
違う。
【0101】 ξ=2bcos(ΩnδL/2c) (18)
【0102】従来の位相変調(ξ=2bsin(Ωnδ
L/2c))ではsinになっていたのが、本発明では
cosになっている。またLの代わりにδLが入ってい
る。ちょっとした違いのようであるがそうでない。これ
は大きな相違である。cosであるからこの中が0であ
ったとしても位相変調度ξが0にならない。むしろco
sの中が0であるほうが、大きく位相変調されるという
ことである。ファイバコイルの中央で磁場を掛けるか、
ファイバコイルの全体に磁場を掛けるかするとcosの
中の値が0になる。
【0103】従来の位相変調では、sin(ΩnL/2
c)を大きくするために、Ω、Lを大きくする必要があ
った。本発明ではΩを低くすることができる。より低周
波の位相変調で良いことになる。またファイバコイルの
ファイバ長Lを短くすることもできる。いずれも光ファ
イバジャイロ製造に有利な条件である。
【0104】最後に述べる利点は、本発明の最も大きい
長所である。従来の位相変調はファイバを伸縮させてフ
ァイバに応力を加えるから偏波面が位相変調に同期して
回転し出力がドリフトする欠点があった。ファラデ−効
果による位相変調の場合、従来の位相変調で問題になっ
ていた偏波変調を原因とするドリフトがなくなる。ファ
ラデ−効果による変調では、右廻り円偏光と、左廻り円
偏光の間に位相差を作り出すが、両者の間でエネルギ−
が交換されない。
【0105】たとえば右廻り円偏光を作り出す円偏光子
を用いたとする。ファイバコイルの近くで磁場により右
廻り円偏光の位相が増減する。このとき左廻り円偏光に
エネルギ−が移らない。左廻り円偏光が発生しないし、
右廻り円偏光のパワ−が変化しない。直線偏光子に通す
のではないから偏波面の回転が出力変動を引き起こさな
い。変調周波数に同期した強度変化が起こらない。従っ
て本発明によれば偏光面回転によりドリフトが発生しな
い。これが大きい効果である。ドリフトが少ないので、
正確な角速度測定を行なうことができる。
【0106】
【実施例】
[実施例1]図3は本発明の実施例を示す。前述のMini
mumu configurationの光学系において、偏光子を円偏光
子に置き換え、圧電素子による位相変調器を、ファラデ
−素子による位相変調器に置き換えたものである。ファ
ラデ−素子は、ファイバコイル5のファイバの一部に磁
界印加用コイル11を巻いたことによって構成されてい
る。変調電流発生回路12により、磁界印加用コイル1
1に交番電流を流すことにより、ファイバの中に軸方向
の交番磁界を作り出す。
【0107】石英ファイバにはファラデ−効果があるの
でここではファラデ−回転材料として利用している。但
し石英のベルデ定数は小さいのでコイルの巻き数を多く
して磁場を大きくする必要がある。そうではなくて、よ
りファラデ−効果の大きい材を使ってもよい。この場合
は、ファラデ−素子材料を円柱形にまたは角柱形に切り
これにコイルを巻き付ける。ファイバコイルの端部のフ
ァイバを切りこれをファラデ−材料の両端に接着する。
いずれのファラデ−素子でもよい。
【0108】コイルに一定周波数の変調電流を流す。電
流に比例して磁場が発生し、磁場に比例して偏光面が回
転する。変調周波数をΩとする。受光素子には、Ωを含
む出力が表れるので、Ωで同期検波することにより、s
inΦrを求めることができる。
【0109】図3において、光源1から出射した光は、
カップラ2を通り、円偏光子9を通る。ここで、一定方
向に偏波面が回転する円偏光になる。この円偏光はカッ
プラ4でふたつに分かれて、ファイバコイル5の両端に
入射する。一端6Aに入射した光は、ファイバコイル5
を時計廻り光として伝搬する。ファイバコイル5を出た
後、磁界印加用コイル11の発生する磁界により偏光面
が回転する。コイル他端6Bに入った光は、磁界により
偏光面回転してから、ファイバコイル5を反時計廻り光
として伝搬する。
【0110】同時に、磁界印加用コイル11を通過した
両方向に向かう光は、同様に偏光面回転するが、それら
の進行方向に関して回転方向が同一でない。ある方向に
向かって回転方向が共通するが、ここの光の光軸に関し
ては方向が反対になる。つまりこれが非相反的というこ
とである。
【0111】ファラデ−効果による直線偏光の偏光面の
回転角度Θは、
【0112】 Θ=VHL0 (19)
【0113】によって表される。ここでVは光が通過す
る材料のベルデ定数である。Hはファイバ中に発生した
磁界、L0 は磁界と光が相互作用する長さである。実際
には、磁場Hはコイルの全長において一定ではないし、
0 はコイルの長さに等しいとも言えない。しかし、電
流によって、発生する磁界を線積分したものは、電流と
巻き数の積に等しい。磁場と偏光面の回転が比例するな
ら、電流と巻き線の積で全回転角を正確に決めることが
できる。つまり(12)は磁場の積分に回転角が比例す
るといっているので、正確な評価ができるのである。
【0114】石英のベルデ定数は、633nmの光に対
して、V=4.6×10-6rad/A)である。無限長
のソレノイドコイルが、コイルの中心に形成する磁界H
は、
【0115】 H=N0 I (AT/m) (20)
【0116】によって表現される。Iはコイル電流、N
0 は1m当たりの巻き数である。現実のコイルは有限長
である。しかし先程述べたように、偏光面の回転が、磁
界の積分に比例し、磁界の積分は、巻き数と電流の積と
して正確に与えられるのであるから、正確にΘを計算で
きる。コイルの前巻き数をNとすると、N=N00
あるので、(13)と(12)から、
【0117】 Θ=VNI (21)
【0118】となる。これは正確な式である。例えば磁
界発生用のコイルとして1mm当たり5巻き(N=5)
して、L0 =150mmの長さのコイルとすると、総巻
き数N=750タ−ンとなる。ベルデ定数を掛けて、Θ
=3.45×10-3(rad/A)となる。これは直線
偏光を入れたときの偏波面の回転角である。先に説明し
たように、円偏光を通した場合、これは位相の変化量に
なる。
【0119】次に、位相変調度ξと、電流の関係につい
て検討する。(18)式において、cos(ΩnL/2
c)は括弧の中を小さくすることにより1に近付けるこ
とができる。これを1とすると、ξ=2bとなる。ここ
でbは位相変調の振幅であるから、2bは最大位相変位
である。bの単位はradである。オ−プンル−プであ
っても、クロ−ズドル−プであっても、ξは2程度に設
定されるのが一般的である。従って、b=1(rad)
程度とすれば良い。
【0120】つまり、上記の位相の遅れあるいは進みΘ
を1radにしようとすると、必要な電流の振幅は、I
=1/3.45×10-3=289Aということになる。
これは極めて大きい電流値である。しかし非現実的とい
うわけでもない。制御可能な電流値である。これは一つ
には石英のベルデ定数が低いことに起因する。
【0121】また一つにはファイバ1本に磁界発生用の
コイルを巻いているからである。よりベルデ定数の大き
い材料を使えばより小さい電流で、所望の位相変調を実
現できる。これは当然である。
【0122】複数本のファイバにコイルの巻き線をすれ
ば、巻き数に比例してファイバ中に発生する磁場が増え
るので、極めて有効である。ファイバの数に比例して電
流値を減らすことができる。丁度、角速度検出のため
に、ファイバをコイル状に巻いてファイバコイルとして
いる。このファイバコイルを、磁場発生のために有効利
用できる。つまり、ファイバコイルの全体に、電線のコ
イルを巻き付けるのである。ファイバコイルの巻き数が
Mであるとする。これに電線を巻くと発生する全磁場が
M倍になる。
【0123】例えば、ファイバコイルのファイバの長さ
を100mとし、コイルの直径を50mmとする。ファ
イバコイルの巻き数は、M=636巻きとなる。図8の
ように、ファイバコイルの全長に渡って電線のコイルを
巻き付けると、1radの位相変調のために必要な電流
は289A/636=0.454mAとなる。これは十
分に小さい電流である。通常の回路で容易に制御できる
電流である。このような変調をコイルに加えると、円偏
光の偏波面が回転する。電線コイルとファイバコイルの
ふたつのコイルが存在するので混同してはならない。
【0124】電流は交番電流であるので、偏光面の回転
自体が時間的に変化する。交番電流の角周波数をΩとす
る。角度振幅をΘとする。偏光のベクトルをRx 、Ry
で示すと、左廻り円偏光の場合、時計廻り光は次のよう
になる。
【0125】 Rx =cos(ΘsinΩt+ωt) (22)
【0126】 Ry =sin(ΘsinΩt+ωt) (23)
【0127】左廻り円偏光で、反時計廻り光は、
【0128】 Lx =cos(−ΘsinΩt+ωt) (24)
【0129】 Ly =sin(−ΘsinΩt+ωt) (25)
【0130】これはさらに、円偏光素子を通過するが、
ここでは左廻り円偏光がそのまま通る。直線偏光子のよ
うに位相差により透過量が変動することがない。
【0131】[実施例2]図4は他の実施例を示してい
る。これは交番電流だけではなくて、直流電流を加えて
直流磁界を発生させる。直流レベル制御回路16があっ
て、これが変調電流発生回路12に直流電流を与える。
直流電流の大きさは同期検波回路14の基本波成分が0
になる値である。
【0132】ファイバ中の光に与えられる磁界は、交流
磁界+直流磁界となる。交流磁界はこれまで説明したも
のと同じように実効的に時計廻り、反時計廻り光の位相
を変えて受光素子に位相変調成分を発生させる。そして
同期検波により基本波を取り出せるようにするものであ
る。
【0133】直流電流は直流バイアスを時計廻り光と反
時計廻り光の間に発生させるものである。この直流バイ
アスを適当に与えることにより、ファイバコイルの回転
による位相差Φr(Sagnac位相差)を、直流磁界によっ
て発生する位相差ΔΦによって完全に打ち消すようにす
ることができる(Φr+ΔΦ=0)。
【0134】時計廻り光と反時計廻り光の位相差がなく
なったことは、同期検波回路14の出力から分かる。位
相差がなくなった時の直流バイアス磁界から、回転角速
度を求めることができる。
【0135】同期検波回路、磁場変調器、直流レベル制
御回路が閉じた系をなすので、このような検出方法をク
ロ−ズドル−プ方式と呼ぶ。本発明は、新たな光学素子
を追加することなく、簡単にクロ−スドル−プ方式の光
ファイバジャイロを実現することができる。これも磁場
という非相反的な偏光面制御手段を用いているからであ
る。
【0136】[実施例3]図5は本発明の他の実施例を
示す。これは本発明者が先に発明した「信号検出方法お
よび位相変調度変動検出方式」(特願平4−61169
号:93年2月24日出願)に本発明を適用したもので
ある。光学系の構成は図1と同じものでよい。これは同
期検波をしないで、受光素子の出力に表れる変調された
正弦波の周期T1 、T2 を測定する。全く新規な検出方
である。
【0137】まず、位相変調の原理を顧みる。ファイバ
コイルを伝搬する正弦波状の光に非相反的位相変調を加
える。ファイバコイルの一方の端で位相変調器により位
相変調を与える。時計廻り光と、反時計廻り光に対して
位相変調のタイミングが違うので位相変調が打ち消し合
わない。受光素子の出力は、変調周波数の全ての高調波
を含む。M次高調波がM次ベッセル関数を係数として含
むような無限級数になる。従来は、位相変調周波数のキ
ャリヤを用いて同期検波していたのである。
【0138】ところが先の発明は、同期検波しない。受
光素子出力をコンデンサを通して直流成分を落とす。交
流成分のみにする。奇数番目の周期T1 と偶数番目の周
期T2 を測定する。この差T1 −T2 が、角速度に比例
する位相差Φrをある関数形で含むことから、Φrを求
めることができる。図5の横に書いてある波形のように
出力が歪む。正の半波は一定のものである。負の半波が
違う。一方は縮み、他方が延びる。このために周期が異
なってくる。
【0139】周期が奇数番目と偶数番目で違うというの
はおかしいようであるが、実際の周期はT1 +T2 であ
って、直流を落とすことにより、ふたつの波のように見
えるのである。このような事実を発見したのは本発明者
である。この発見に基づいて先記の発明がなされてい
る。本発明は前記のものに適用できる。この場合、周期
1 、周期T2 を精度よく測定することが必須である。
角速度測定分解能が、周期の測定精度に依存する。
【0140】そうすると、位相変調の周波数は低いほう
が良いということになる。従来の位相変調方式のものは
この点不利であった。圧電素子を位相変調に使うので、
これが大きい振幅を与える共振点に近くに変調周波数を
設定する。これはかなり高い周波数である。ために従来
方ではT1 、T2 が短くて時間測定の精度が不十分であ
った。
【0141】本発明は圧電素子を使わないので変調周波
数に対する制約が少ない。低い変調周波数に設定でき
る。すると時間測定の精度が上がる。この方式の長所を
生かすことができる。
【0142】[実施例4]図6は他の実施例を示す。本
発明者は先に「光源から信号を取り出す光ファイバジャ
イロ」(特願平5−57756号:1993年2月22
日出願)を提案している。これは専用の受光素子を省い
ている。光源の発光特性変化または光源の裏側にあるモ
ニタ用の受光素子から、Sagnac位相差Φrを得る。
【0143】従来は、図2、図1などに示すようにふた
つのカップラを必要としていた。カップラ4は時計廻り
光と反時計廻り光に分岐するためのカップラである。カ
ップラ2は、相反性を崩さず、信号検出用の受光素子8
へ光を導くためのカップラである。カップラはファイバ
カップラやビ−ムスプリッタなどがあるが、高価な光学
部品である。これをひとつ減らすと部品価格を大きく下
げることができる。先記の発明は、光源の特性変化また
はモニタ用の受光素子から出力を取ることにより、カッ
プラをひとつ減少できるようにしたものである。このよ
うな光源信号型の光ファイバジャイロにも本発明を矛盾
なく適用できる。
【0144】図6において光源1は、発光素子21と、
モニタ用の受光素子17を含む。これは通常の光ファイ
バジャイロでも同様である。発光素子21から出た光が
円偏光子9を通過する。これである方向に偏光面が回転
する円偏光になる。円偏光が、ファイバの端に入射し、
カップラ20でふたつに分岐する。ファイバコイル5の
両端6A、6Bからファイバコイル5に入る。ファイバ
の一部または全体に電線による磁界印加用コイル11が
巻いてある。変調電流発生回路12が、磁界印加用コイ
ル11にある変調角周波数Ωの電流を流す。これにより
ファイバの軸方向に磁場が発生する。
【0145】ここを通る円偏光の偏光面の角度が変化す
る。時計廻り光と反時計廻り光は同じ方向に回転する円
偏光である。ファラデ−効果によるので、偏光面が反対
方向に回転する。これが円偏光子9を通り発光素子に戻
る。発光素子は、戻り光により発光状態が変化する。発
光素子21の光は、後のモニタ用の受光素子17によっ
て検出される。発光状態の変化は、モニタ用の受光素子
17の信号として得られる。
【0146】本発明では円偏光子の使用が必須である。
本発明を適用する際に好適な円偏光子の構造を図7に示
す。これは直線偏光子22と位相板23を張り合わせた
ものである。直線偏光子は任意の偏光状態のビ−ムを直
線偏光に変えるものである。直線偏光子は、複屈折物質
を用いたもの、誘電体金属多層膜を用いたもの、その他
どのようなものであっても良い。
【0147】位相板は1/4波長板、3/4波長板など
を用いる。1/4波長板は、複屈折があり、異常光線と
常光線の光路長差d(nx −ny )=λ/4になってい
るということである。dは厚み、nx 、ny はX方向、
Y方向に偏光を持つ光の屈折率、λは光源の波長であ
る。
【0148】ここでは、位相板23の主軸と直線偏光子
の透過軸が45°になるように接着してある。つまり位
相板23のX軸とY軸の二等分線に平行になるように、
直線偏光が入ってくる。この光はX軸、Y軸に偏光面を
持つ二つの直線偏光に等分配される。直線偏光は別個の
光として進み位相板の終点で、X軸に偏波面を持つ部分
光がπ/2だけ先行する。すると左廻りの円偏光にな
る。
【0149】3/4波長板は、やはり複屈折があるが、
d(nx −ny )=3λ/4という関係がある。位相板
を直線偏光子と45°の角度をなして接着する点も同じ
である。位相板の終点でX軸偏光が3π/2先行するの
で右廻りの円偏光になる。
【0150】このように円偏光子は、直線偏光子とλ/
4、3λ/4位相板を45°の角度をなすように張り付
けたものである。例えば右廻りの円偏光子を採用する
と、光源から出た光が、ここで右廻りの円偏光になる。
これがファイバコイルを伝搬する。伝搬した光は反対に
同じ円偏光子9に入る。
【0151】左廻りの円偏光が経路の途中でもし発生し
たとしても、位相板を通過すると複屈折のために直線偏
光になる。しかし、直線偏光子の主軸とは直交する方向
に偏波面があるような直線偏光になる。これは直線偏光
子を通過できない。
【0152】右廻り円偏光も位相板の複屈折のために直
線偏光に変わる。この直線偏光は直線偏光子の主軸と平
行である。ためにこの光は直線偏光として、直線偏光子
を殆ど無損失で透過できる。つまり円偏光子は往復の両
方において選択性があるということである。右廻り円偏
光を選択すれば、帰りの光も右廻り円偏光のみがここを
通るのである。ファイバコイルの中で何らかの原因で左
廻りの円偏光が発生したとしてもこれは円偏光子を透過
できない。
【0153】直線偏光子と異なり円偏光子は本発明では
じめて提案するものである。原理を説明する必要があろ
う。光の進行方向をZ軸にとる。直線偏光の透過軸をX
軸、Y軸に45°の角度をなす方向とする。光源からの
光が直線偏光、楕円偏光、円偏光のいずれであっても、
直線偏光子を抜けたあとの光の電界成分Fx 、Fy
X、Y軸に対して同じ成分を持つので次のように書け
る。
【0154】 Fx =Asinωt,Fy =Asinωt (26)
【0155】1/4位相板の場合を例にして説明しよ
う。位相板ではX方向の直線偏光の位相がπ/2だけ進
むので、
【0156】 Fx =Asin(ωt+π/2)=Acosωt,Fy =Asinωt(27)
【0157】となる。これがカップラで2つに分岐しフ
ァイバコイルを回る。時計廻り、反時計廻りいずれの光
でもよい。同じことである。ファイバコイル回転してお
らず磁場も掛かってない場合を考える。すると、どちら
の直線偏光も同じ位相差を保ちながら、円偏光子に戻っ
てくる。ところが光軸の向きが反対になっているので、
位相板に入るときの波動は、Fx の符号、Fy の符号の
いずれかに−が付く。つまり位相がπだけ進む(遅れる
といっても良い)。つまり、
【0158】 Fx =Asin(ωt+π/2+π),Fy =Asinωt (28)
【0159】である。この位相板を通り抜けると、X方
向成分がπ/2だけ位相が進むので、
【0160】 Fx =Asin(ωt+π/2+π+π/2)=Asinωt (29)
【0161】 Fy =Asinωt (30)
【0162】となる。これはX、Y軸に45°の角度を
なす直線偏光に他ならない。X成分、Y成分が同一だか
らである。これはX、Yに45°の角をなす主軸を持つ
直線偏光子22を完全に透過できる。以上が左廻り円偏
光が円偏光子を逆に抜けることができることの証明であ
る。
【0163】もしもファイバコイルを透過するときに右
廻りの円偏光(Fx =Acos(ωt+π)、Fy =A
sinωt)が発生したとすると、これは、位相板に戻
ったときに、Fx =Acos(ωt+π+π)、Fy
Asinωtとなる。位相板を通過すると、X成分がπ
/2だけ位相が進むので、Fx =Acos(ωt+π+
π+π/2)=−Asinωt、Fy =Asinωtと
なる。
【0164】これは偏波面がX軸と135°(または−
45°)をなす方向にある直線偏光である。直線偏光子
22の透過軸と直角である。つまり左廻り円偏光は直線
偏光子を通過できない。以上の説明はλ/4位相板に関
するものである。3λ/4位相板の場合は、右廻り円偏
光としこれを逆方向にも通すようになる。いずれにして
も同じようなものである。
【0165】直線偏光子と位相板を組み合わせた円偏光
子は、任意の偏波面状態の光をある方向に回転する円偏
光にし、同じ方向の円偏光が戻ってくるとこれを反対方
向に通すということである。ファラデ−効果を利用した
光アイソレ−タとは違う。
【0166】直線偏光子の性能は消光比で表す。透過軸
方向の偏光の透過パワ−で、禁止軸方向の偏光の透過パ
ワ−を割ったものである。円偏光子も何らかの特性を定
義しこれによって性能を評価する必要がある。直線偏光
子の類推で、禁止方向に回転する円偏光パワ−を、許容
方向の円偏光パワ−で割った値を消光比と定義する。円
偏光子の消光比を決定する要素は、次の3点である。
【0167】円偏光子を構成する直線偏光子の消光
比。 円偏光子を構成する直線偏光子と位相板との相対角度
誤差。 光源の波長変動
【0168】これらのパラメ−タの変動の原因を考え
る。円偏光子の性能が本発明の光ファイバジャイロの性
能を左右するからである。は偏光子の種類の選び方に
よって変わる。通常の光ファイバジャイロでは25dB
〜30dBのものが用いられる。この程度のものは容易
に入手できる。
【0169】は直線偏光子の透過軸と、位相板(複屈
折性物体)の光学主軸とのなす角度の45°からのずれ
により発生する。交角の45°からのずれは最大1°程
度に押さえるのは容易である。これによる消光比の影響
を計算しよう。交角が1°ずれていると仮定する。禁止
方向に回転する円偏光は、位相板に反対方向から入射す
るときに、透過軸となす角度が89°である。振幅はc
os89°=0.017となる。パワ−はこれの2乗に
比例するので、3×10-4となる。透過光のパワ−はs
in89°の2乗で、ほぼ1である。禁止方向パワ−と
透過方向パワ−の比は3×10-4=−35dBになる。
つまり軸ずれによる消光比はこれより小さい。
【0170】は光源の波長変動に基づくものである。
1λ/4板、3λ/4板というのは複屈折率の差が波長
の1/4、3/4というものである。波動関数に入るの
は、sin{2πd(nx −ny )/λ}の形である。
1/4波長板なら、正弦関数の中は、π/2になる。3
/4波長板なら3π/4になる。sinの値は1または
−1である。簡単のため1/4波長板を例にする。光源
の波長が変動すると、sinの中がπ/2(90°)か
らずれる。すると、位相板を通り抜けたときに、禁止方
向に回転する偏光面の光が存在する。
【0171】波長の設計値λ0 からのずれをΔλ(λ=
λ0 +Δλ)とすると先の波動関数は、sin{2πd
(nx −ny )/λ}=1−{π2 /8}(Δλ/λ)
2 となる。つまり禁止方向に回転する円偏光成分が{π
2 /8}(Δλ/λ)2 含まれるようになる。波長ずれ
と波長の比(Δλ/λ)の2乗に1.2を掛けたものが
禁止方向成分である。これは振幅の比であるから、パワ
−の比はその2乗である。
【0172】波長の設計値を例えば840nmとし、実
際の波長が800nmと仮定する。Δλ/λ=0.05
である。禁止方向の成分の、許容方向成分に対する比
は、10-5=−50dBである。通常の波長ばらつき
は、0.05より小さいから、波長による消光比の増分
は、−50dBより小さい。
【0173】これらの考察の結果を並べると、は25
〜30dB、は35dB、は50dBの程度であ
る。結局、円偏光子の性能を最も強く制限するものは直
線偏光子の性能であることがわかる。やは円偏光子
の性能を下げる原因には殆どならない。入手できる直線
偏光子の性能に殆どよってしまう。
【0174】これは逆にいえば、円偏光子による偏光状
態の選択が、従来の偏光子による偏光状態の選択と同程
度の精度を持っているということである。円偏光子を採
用することにより従来のものより消光比が悪くなること
がない。
【0175】
【発明の効果】本発明は円偏光子を用いて、光源の光を
ある方向の円偏光としこれをふたつの光線に分けてファ
イバコイルに通している。ファイバコイルでは交番磁場
を加えて偏波面変調している。光弾性効果を利用した位
相変調器と、偏光子を利用した従来の位相変調方式の光
ファイバジャイロに比較して、次の利点がある。
【0176】偏波変調によるドリフトがなくなる。 変調周波数をファイバ長の制約を受けることなく設定
することができる。 低い周波数の変調で済むため、干渉光強度の交流成分
の位相情報に着目した検出方式での精度が向上する。
【0177】直流的な非相反位相バイアスを与えるこ
とができる。クロ−ズドル−プが容易に実現できる。 共振周波数付近での使用でないために安定である。温
度特性もリニアであるために、スケールファクタの補正
が容易になる。 圧電素子にファイバを巻くのは時間と手数の掛かる作
業である。本発明は磁界発生用のコイルにファイバを通
せば良いので材料コスト、加工コストの点で有利であ
る。
【0178】このように従来の位相変調方式の光ファイ
バジャイロが抱えていた大きな欠点を一挙に解決でき
る。優れた画期的な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバジャイロの原理的構成図。
【図2】従来例に係る光ファイバジャイロの原理的構成
図。
【図3】本発明の実施例に係る光ファイバジャイロの概
略構成図。
【図4】同期検波出力により、直流磁場の大きさを制御
するようにした本発明の他の実施例に係る光ファイバジ
ャイロの概略構成図。
【図5】受光素子出力の交流成分の奇数番目の波の周期
と偶数番目の周期の違いにより角速度を求めるようにし
た本発明の他の実施例に係る光ファイバジャイロを示す
概略構成図。
【図6】光源から信号を取るようにした本発明の他の実
施例に係る光ファイバジャイロの概略構成図。
【図7】本発明で用いる円偏光子の例を示す図。
【図8】ファイバコイルに対して磁場印加用コイルの巻
き方を示す正面図。
【符号の説明】
1 光源 2 カップラ 3 偏光子 4 カップラ 5 ファイバコイル 6A ファイバ端 6B ファイバ端 7 位相変調器 8 受光素子 9 円偏光子 10 磁界発生手段 11 磁界印加用コイル 12 変調電流発生回路 13 発振器 14 同期検波回路 16 直流レベル制御回路 17 受光素子 18 カウンタ 20 カップラ 21 発光素子 22 直線偏光子 23 位相板

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、
    磁場発生手段により周期的に変動する交番磁場、または
    直流磁場と交番磁場を発生させ、受光素子の出力からフ
    ァイバコイルの角速度を求めることを特徴とする円偏光
    とファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ。
  2. 【請求項2】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段と、受光素子
    の出力を同期検波する同期検波回路とよりなり、磁場発
    生手段により周期的に変動する交番磁場を発生させ、受
    光素子の出力を交番磁場の周期またはこれの整数倍の周
    期のキャリヤにより同期検波し、同期検波の出力よりフ
    ァイバコイルの角速度を求めることを特徴とする円偏光
    とファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ。
  3. 【請求項3】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、
    磁場発生手段は、ファイバコイルの全体または一部に巻
    き付けた電線コイルと、電線コイルに電流を流す電源よ
    りなり、磁場発生手段により周期的に変動する交番磁場
    を発生させ、受光素子の出力を交番磁場の周期またはこ
    れの整数倍の周期のキャリヤにより同期検波し、同期検
    波子出力よりファイバコイルの角速度を求めることを特
    徴とする円偏光とファラデ−効果を利用した光ファイバ
    ジャイロ。
  4. 【請求項4】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、
    円偏光子は、直線偏光子と、1/4波長或いは3/4波
    長の位相板を直線偏光子の透過軸に対して位相板の光学
    軸が45°捻れているように張りつけたものであり、磁
    場発生手段により周期的に変動する交番磁場、または直
    流磁場と交番磁場を発生させ、受光素子の出力からファ
    イバコイルの角速度を求めることを特徴とする円偏光と
    ファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ。
  5. 【請求項5】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、
    磁場発生手段により周期的に変動する交番磁場を発生さ
    せ、受光素子の出力の交流成分の、奇数番目の波の周期
    1 と、偶数番目の波の周期T2 の差T2 −T1 からフ
    ァイバコイルの角速度を求めることを特徴とする円偏光
    とファラデ−効果を利用した光ファイバジャイロ。
  6. 【請求項6】 単色光或いは準単色光を発生する発光素
    子とこれの出力を監視するため発光素子の後方に設置さ
    れたモニタ用の受光素子とを含む光源と、シングルモ−
    ドファイバを多数回巻き回したファイバコイルと、光源
    から出た光をある方向に回転する偏光を持つ円偏光に変
    換するための円偏光子と、円偏光子を通過した光を2分
    し、ファイバコイルの両端に導きファイバコイルを通過
    した光を統合して光源に戻すためのカップラと、ファイ
    バ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファイバ
    軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、光源
    から出た光が、ファイバコイルを時計廻り、反時計廻り
    に伝搬してのち光源に戻るようにし、磁場発生手段によ
    り周期的に変動する交番磁場を発生させ、光源のモニタ
    用の受光素子の出力または発光素子の駆動電流、電圧の
    変化から時計廻り光、反時計廻り光の干渉光の強度を検
    出し、これを交番磁場の周期またはこれの整数倍の周期
    のキャリヤにより同期検波してファイバコイルの回転角
    速度を求めることを特徴とする円偏光とファラデ−効果
    を利用した光ファイバジャイロ。
  7. 【請求項7】 単色光或いは準単色光を発生する光源
    と、シングルモ−ドファイバを多数回巻き回したファイ
    バコイルと、光源から出た光をある方向に回転する偏光
    を持つ円偏光に変換するための円偏光子と、円偏光子を
    通過した光を2分し、ファイバコイルの両端に導くカッ
    プラと、ファイバコイルを右廻り光、左廻り光として伝
    搬し、光源と円偏光子の間に設けられ円偏光子を逆に通
    った光を2分して受光素子に導くためのカップラと、フ
    ァイバ中を伝搬する光の偏光面を回転させるためにファ
    イバ軸方向に磁場を印加する磁場発生手段とよりなり、
    磁場発生手段により周期的に変動する交番磁場と直流磁
    場を発生させ、受光素子の出力を交番磁場の周波数に等
    しい周波数のキャリヤにより同期検波し、同期検波出力
    が0になるように直流磁場の大きさを変化させ、その直
    流磁場の大きさからファイバコイルの角速度を求めるこ
    とを特徴とする円偏光とファラデ−効果を利用した光フ
    ァイバジャイロ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010523336A (ja) * 2007-04-05 2010-07-15 プレシテク オプトロニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 加工装置および材料加工方法
KR20160050922A (ko) * 2014-10-31 2016-05-11 에스케이텔레콤 주식회사 사냑 간섭계 기반의 위상 변조 장치
WO2018169165A1 (ko) * 2017-03-13 2018-09-20 서강대학교 산학협력단 편광 빛살 가르게를 이용한 광섬유 사냑 간섭계

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