JPH07126814A - 石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金 - Google Patents
石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金Info
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- JPH07126814A JPH07126814A JP29462493A JP29462493A JPH07126814A JP H07126814 A JPH07126814 A JP H07126814A JP 29462493 A JP29462493 A JP 29462493A JP 29462493 A JP29462493 A JP 29462493A JP H07126814 A JPH07126814 A JP H07126814A
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- coal gasification
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 石炭ガス化プラント、特に石炭ガス化複合発
電プラントの合成ガス冷却機器に配設される過熱器等の
伝熱管用材料に適する耐食合金を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.10%、Si:1.5〜3.
5%、Mn:0.20%以下、Cr:26〜32%、N
i:25〜35%、Mo:0.5〜3%、N:0.1〜
0.35%、希土類元素を0.02〜0.10%、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
さらに必要に応じて、所定量のNb、Ti、Zr、M
g、Ca、Al、Bの1種以上を添加する。
電プラントの合成ガス冷却機器に配設される過熱器等の
伝熱管用材料に適する耐食合金を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.10%、Si:1.5〜3.
5%、Mn:0.20%以下、Cr:26〜32%、N
i:25〜35%、Mo:0.5〜3%、N:0.1〜
0.35%、希土類元素を0.02〜0.10%、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
さらに必要に応じて、所定量のNb、Ti、Zr、M
g、Ca、Al、Bの1種以上を添加する。
Description
【0001】本発明は石炭ガス化プラント、特に石炭ガ
ス化複合発電プラントの合成ガス冷却機器に配設される
過熱器等の伝熱管の構造材料として好適な耐食合金に関
する。
ス化複合発電プラントの合成ガス冷却機器に配設される
過熱器等の伝熱管の構造材料として好適な耐食合金に関
する。
【0002】近年、地球環境問題の観点から、クリーン
な燃料を用いた高効率発電への指向が一段と強まってい
る。天然ガス(LNG)を燃料とする高効率のガスター
ビン複合発電はすでに実用化され、現在いくつかの発電
機が稼働中であるが、エネルギー資源の安定確保の点か
ら天然ガスに換えて石炭を燃料とする高効率発電の実用
化が強く望まれている。石炭ガス化複合発電は石炭加圧
流動床ボイラによる発電とともに石炭利用の高効率発電
が可能な有力なシステムであり、世界的に見ても実証プ
ラントがオランダにおいて建設をほぼ終えた段階にまで
到達している。
な燃料を用いた高効率発電への指向が一段と強まってい
る。天然ガス(LNG)を燃料とする高効率のガスター
ビン複合発電はすでに実用化され、現在いくつかの発電
機が稼働中であるが、エネルギー資源の安定確保の点か
ら天然ガスに換えて石炭を燃料とする高効率発電の実用
化が強く望まれている。石炭ガス化複合発電は石炭加圧
流動床ボイラによる発電とともに石炭利用の高効率発電
が可能な有力なシステムであり、世界的に見ても実証プ
ラントがオランダにおいて建設をほぼ終えた段階にまで
到達している。
【0003】石炭ガス化複合発電において、発電効率を
さらに飛躍的に高めるためには、900℃以上の高温の
合成ガスの顕熱を有効に活用して蒸気を過熱する過熱器
を設置する必要がある。しかしながら、過熱器では伝熱
管と高温で接触する合成ガスは多量のCO,H2を含有
する強い還元性を示し、炭種によっては極めて腐食性の
強いH2S,HClを含むため、かかる機器は高温硫化
腐食を受けることおよび高温硫化腐食は伝熱管のメタル
温度に強く依存し、メタル温度が高いほど腐食は厳しい
ことが知られている。(例えば、S.Araki et al.“Eval
uation for Corrosion Resistance of Tube Material i
n Coal Gasification Atmosphere”Proc. ASM Material
Workshop '87, pp 97〜104) なお、合成ガスの組成は、例えば、次のとおりである。
H2:約30%、H2O:約20%、CO:約40%、C
O2:約10%、H2S:約0.5%、HCl:約0.1
%。
さらに飛躍的に高めるためには、900℃以上の高温の
合成ガスの顕熱を有効に活用して蒸気を過熱する過熱器
を設置する必要がある。しかしながら、過熱器では伝熱
管と高温で接触する合成ガスは多量のCO,H2を含有
する強い還元性を示し、炭種によっては極めて腐食性の
強いH2S,HClを含むため、かかる機器は高温硫化
腐食を受けることおよび高温硫化腐食は伝熱管のメタル
温度に強く依存し、メタル温度が高いほど腐食は厳しい
ことが知られている。(例えば、S.Araki et al.“Eval
uation for Corrosion Resistance of Tube Material i
n Coal Gasification Atmosphere”Proc. ASM Material
Workshop '87, pp 97〜104) なお、合成ガスの組成は、例えば、次のとおりである。
H2:約30%、H2O:約20%、CO:約40%、C
O2:約10%、H2S:約0.5%、HCl:約0.1
%。
【0004】従来技術ではメタル温度で350〜400
℃前後の伝熱管の設置がせいぜいで、高効率発電が狙え
る蒸気温度600℃クラスの過熱器の伝熱管は、400
〜650℃の温度域で耐高温硫化性を有し、かつ高温強
度にも優れたボイラチューブ材が見当たらないため、設
置できない状況にあった。そして、それ以上の高温度で
硫化腐食に耐える過熱器の伝熱管用の材料は未だ開発さ
れていない。
℃前後の伝熱管の設置がせいぜいで、高効率発電が狙え
る蒸気温度600℃クラスの過熱器の伝熱管は、400
〜650℃の温度域で耐高温硫化性を有し、かつ高温強
度にも優れたボイラチューブ材が見当たらないため、設
置できない状況にあった。そして、それ以上の高温度で
硫化腐食に耐える過熱器の伝熱管用の材料は未だ開発さ
れていない。
【0005】石炭ガス化用機器の内部には停缶時に水分
が結露してClを含む酸が生成する。その酸水溶液は、
例えば、HCl:0.06%、H2SO4:0.2%、N
a:0.05%を含み、pH約4.5である。このため、
市販のステンレス鋼、耐食合金では孔食を発生しやすい
腐食環境に曝されることも知られており(例えば W.T.B
akker et al.“Laboratory Study of Superheater Corr
osion in Coal Gasification Power Plants”April 17
〜21,1989, pp525〜525/13)、かかる部位には高温強度
に加え高温硫化腐食とともに酸露点腐食に対しても優れ
た抵抗性を有する伝熱管用の材料が必要となる。
が結露してClを含む酸が生成する。その酸水溶液は、
例えば、HCl:0.06%、H2SO4:0.2%、N
a:0.05%を含み、pH約4.5である。このため、
市販のステンレス鋼、耐食合金では孔食を発生しやすい
腐食環境に曝されることも知られており(例えば W.T.B
akker et al.“Laboratory Study of Superheater Corr
osion in Coal Gasification Power Plants”April 17
〜21,1989, pp525〜525/13)、かかる部位には高温強度
に加え高温硫化腐食とともに酸露点腐食に対しても優れ
た抵抗性を有する伝熱管用の材料が必要となる。
【0006】石炭ガス化機器用材料としては種々の合金
がすでに提案されているが,メタル温度が600℃を超
える高温硫化環境に耐えかつ酸露点腐食に対しても優れ
た抵抗性を有するとともに、伝熱管用として高温強度も
あり、長時間の使用による加熱脆化も少なく、耐圧部材
として安心して使用できる経済的な合金は見当たらない
のが現状である。
がすでに提案されているが,メタル温度が600℃を超
える高温硫化環境に耐えかつ酸露点腐食に対しても優れ
た抵抗性を有するとともに、伝熱管用として高温強度も
あり、長時間の使用による加熱脆化も少なく、耐圧部材
として安心して使用できる経済的な合金は見当たらない
のが現状である。
【0007】従来の知見、例えば特開昭58−8195
3号公報によれば、Nbを6〜20%含み残部が鉄から
なる合金が提案されたが、この合金は通常の製管プロセ
スでは伝熱管に製造できない。また、特開昭59−22
9468号公報では、Al添加合金が提案されている
が、高温における耐食性は良好なものの、Mo、Nを含
有しないことから、酸露点腐食に弱い欠点を有する。ま
た、特開昭60−215747号公報および特開昭62
ー164852号公報の合金の中で、Alが高いものは
高温での硫化腐食に優れた性能を有し、なかでも前者の
請求項2の合金は酸露点腐食に対しても良好な耐食性能
を示すが、オーステナイトを形成させ高温強度を付与す
るNiおよび高温硫化腐食及び酸露点腐食に対する抵抗
性を与えるCrの含有量が低すぎるために、高温に長時
間曝されると靭性劣化が著しく、また高温強度もはなは
だ不足するため、伝熱管として使用できない。
3号公報によれば、Nbを6〜20%含み残部が鉄から
なる合金が提案されたが、この合金は通常の製管プロセ
スでは伝熱管に製造できない。また、特開昭59−22
9468号公報では、Al添加合金が提案されている
が、高温における耐食性は良好なものの、Mo、Nを含
有しないことから、酸露点腐食に弱い欠点を有する。ま
た、特開昭60−215747号公報および特開昭62
ー164852号公報の合金の中で、Alが高いものは
高温での硫化腐食に優れた性能を有し、なかでも前者の
請求項2の合金は酸露点腐食に対しても良好な耐食性能
を示すが、オーステナイトを形成させ高温強度を付与す
るNiおよび高温硫化腐食及び酸露点腐食に対する抵抗
性を与えるCrの含有量が低すぎるために、高温に長時
間曝されると靭性劣化が著しく、また高温強度もはなは
だ不足するため、伝熱管として使用できない。
【0008】また、特開昭61−551号公報では、C
rとNi+Coを含む合金に冷間加工を施した合金が提
案されているが、本発明の後述の設計思想、、お
よびそれに関連した成分元素の組合せおよび含有量の限
定については全く意図されていない。また、本発明にお
ける石炭ガス化では腐食環境は高温酸化でなく高温硫化
のみが重要となるが、特開昭61−551号公報の場合
は高温硫化に対する課題解決手段が明かでなく、そのた
め特開昭61−551号公報の耐高温硫化性は芳しくな
く使用に耐えない。また、特開昭61−56263号公
報で提案されている合金は、酸露点腐食に対して良好な
耐食性能を示すものの、高温硫化腐食に対して耐食性が
十分でなく、また高温強度も不十分である。
rとNi+Coを含む合金に冷間加工を施した合金が提
案されているが、本発明の後述の設計思想、、お
よびそれに関連した成分元素の組合せおよび含有量の限
定については全く意図されていない。また、本発明にお
ける石炭ガス化では腐食環境は高温酸化でなく高温硫化
のみが重要となるが、特開昭61−551号公報の場合
は高温硫化に対する課題解決手段が明かでなく、そのた
め特開昭61−551号公報の耐高温硫化性は芳しくな
く使用に耐えない。また、特開昭61−56263号公
報で提案されている合金は、酸露点腐食に対して良好な
耐食性能を示すものの、高温硫化腐食に対して耐食性が
十分でなく、また高温強度も不十分である。
【0009】また、特開昭61−113748号公報の
合金は、オーステナイトを形成させ高温強度を付与する
Niおよび高温硫化腐食及び酸露点腐食に対する抵抗性
を与えるCrの含有量が低すぎるために、高温に長時間
曝されると靭性劣化が著しく、また高温強度もはなはだ
不足する。また、高温で使用中に極めて脆い相(シグマ
相)が析出し、使用中にガラスのように脆化してしま
い、伝熱管のような耐圧容器用材料としては危なくてと
ても使用できない。特開昭62−164854号公報)
および特開昭62−164855号公報の合金は高温で
の耐硫化腐食性は良好なものの、NiおよびCrの含有
量が低すぎるために、高温強度、酸露点腐食に対する抵
抗性が劣る欠点を有する。
合金は、オーステナイトを形成させ高温強度を付与する
Niおよび高温硫化腐食及び酸露点腐食に対する抵抗性
を与えるCrの含有量が低すぎるために、高温に長時間
曝されると靭性劣化が著しく、また高温強度もはなはだ
不足する。また、高温で使用中に極めて脆い相(シグマ
相)が析出し、使用中にガラスのように脆化してしま
い、伝熱管のような耐圧容器用材料としては危なくてと
ても使用できない。特開昭62−164854号公報)
および特開昭62−164855号公報の合金は高温で
の耐硫化腐食性は良好なものの、NiおよびCrの含有
量が低すぎるために、高温強度、酸露点腐食に対する抵
抗性が劣る欠点を有する。
【0010】また、特開昭62−235459号公報の
合金はCoを8〜30%を含むため、熱間変形抵抗が高
まり、通常の製管プロセスでは非常に作りにくい。さら
にCoは非常に高価な合金元素であるため、材料コスト
が著しく上昇し、伝熱管として極めて高価なものとなっ
てしまう。特開昭62−270751号公報ではMnを
2〜30%、Tiを2〜5%含む合金が提案されている
が、NiおよびCrの含有量が低すぎるために、高温強
度、酸露点腐食に対する抵抗性が劣るという欠点を有
し、また、本合金は高温で使用中にCr炭化物が著しく
析出し、脆化してしまう欠点をも有する。
合金はCoを8〜30%を含むため、熱間変形抵抗が高
まり、通常の製管プロセスでは非常に作りにくい。さら
にCoは非常に高価な合金元素であるため、材料コスト
が著しく上昇し、伝熱管として極めて高価なものとなっ
てしまう。特開昭62−270751号公報ではMnを
2〜30%、Tiを2〜5%含む合金が提案されている
が、NiおよびCrの含有量が低すぎるために、高温強
度、酸露点腐食に対する抵抗性が劣るという欠点を有
し、また、本合金は高温で使用中にCr炭化物が著しく
析出し、脆化してしまう欠点をも有する。
【0011】このように、高温の硫化環境における耐食
性、酸露点腐食に対する耐食性とともに長時間使用時の
組織安定性、高温強度、さらには施工性(曲げ加工性、
溶接性)、経済性等の点を勘案すると、すべての性能を
満足する耐食合金は未だないのが実情であった。
性、酸露点腐食に対する耐食性とともに長時間使用時の
組織安定性、高温強度、さらには施工性(曲げ加工性、
溶接性)、経済性等の点を勘案すると、すべての性能を
満足する耐食合金は未だないのが実情であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このような状況に鑑
み、石炭ガス化複合プラントにおいて、メタル温度で6
50℃までの温度域で伝熱管として過熱器に使用可能な
経済性に優れた耐食合金の開発が待ち望まれており、特
に、通常の製管プロセスで容易に製管でき、耐食性は従
来使用されているAlloy 800(NCF800)あるいはAlloy 2
8 の10倍以上、高温強度はSUS 347 H と同等以上で、
長時間使用に際して著しい加熱脆化がなく、通常の施工
法で溶接、曲げ加工が可能な経済性にも優れた伝熱管用
材料材の開発が期待されてきたところである。
み、石炭ガス化複合プラントにおいて、メタル温度で6
50℃までの温度域で伝熱管として過熱器に使用可能な
経済性に優れた耐食合金の開発が待ち望まれており、特
に、通常の製管プロセスで容易に製管でき、耐食性は従
来使用されているAlloy 800(NCF800)あるいはAlloy 2
8 の10倍以上、高温強度はSUS 347 H と同等以上で、
長時間使用に際して著しい加熱脆化がなく、通常の施工
法で溶接、曲げ加工が可能な経済性にも優れた伝熱管用
材料材の開発が期待されてきたところである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な課題解決のために、鋭意研究の結果、 高温硫化腐食に対する抵抗性を、図3に示すような
極めて強固な保護性を有する上層がCr2O3で下層がS
iO2の二層被膜(以下、Cr2O3/SiO2二層被膜と
称す)を合金表面に生成させることで達成する、 酸露点腐食に対する抵抗性はCrとMoとNの複合
添加により確保する、 高温強度は母材を完全オーステナイト組織にすると
ともに、CとN添加で確保する、 との設.計思想に基づいて本発明を完成した。
な課題解決のために、鋭意研究の結果、 高温硫化腐食に対する抵抗性を、図3に示すような
極めて強固な保護性を有する上層がCr2O3で下層がS
iO2の二層被膜(以下、Cr2O3/SiO2二層被膜と
称す)を合金表面に生成させることで達成する、 酸露点腐食に対する抵抗性はCrとMoとNの複合
添加により確保する、 高温強度は母材を完全オーステナイト組織にすると
ともに、CとN添加で確保する、 との設.計思想に基づいて本発明を完成した。
【0014】この二層被膜は、本発明合金の使用時に不
働態被膜として生成し合金地金を環境から遮断する結
果、耐食性が確保されるものである。この二層被膜の構
造は図3に模式的に示すとおりであり、地金の上に形成
されたほぼ純粋なSiO2下層とさらにその上に形成さ
れたほぼ純粋なCr2O3の上層から成るものである。
働態被膜として生成し合金地金を環境から遮断する結
果、耐食性が確保されるものである。この二層被膜の構
造は図3に模式的に示すとおりであり、地金の上に形成
されたほぼ純粋なSiO2下層とさらにその上に形成さ
れたほぼ純粋なCr2O3の上層から成るものである。
【0015】本願発明の最大特徴は項に示したように
保護性のCr2O3/SiO2二層被膜の耐久性を合金中
のMn量の現象および希土類元素添加の相乗効果により
飛躍的に高めた点にある。とくにMnの作用については
本願発明で初めて明らかにしたもので、以下のメカニズ
ムに基づくものである。すなわち、Mnは酸素との親和
力が強いため、高温の使用環境では合金表面に酸化物と
して濃縮するが、Cr2O3などの保護性酸化スケールが
同時に形成されると、MnOはCr2O3/SiO2二層
被膜中に固溶してしまい、保護被膜の安定性を損ねる作
用のあることを明かにした。そこで本願では合金中のM
n量を意図的に低めることで保護性Cr2O3/SiO2
二層被膜の環境遮断特性を飛躍的に高めることに成功し
たのである。
保護性のCr2O3/SiO2二層被膜の耐久性を合金中
のMn量の現象および希土類元素添加の相乗効果により
飛躍的に高めた点にある。とくにMnの作用については
本願発明で初めて明らかにしたもので、以下のメカニズ
ムに基づくものである。すなわち、Mnは酸素との親和
力が強いため、高温の使用環境では合金表面に酸化物と
して濃縮するが、Cr2O3などの保護性酸化スケールが
同時に形成されると、MnOはCr2O3/SiO2二層
被膜中に固溶してしまい、保護被膜の安定性を損ねる作
用のあることを明かにした。そこで本願では合金中のM
n量を意図的に低めることで保護性Cr2O3/SiO2
二層被膜の環境遮断特性を飛躍的に高めることに成功し
たのである。
【0016】また、Mn含有量を低下させることで、合
金の加熱脆化の一因となる脆いシグマ相の析出挙動が顕
著に抑制され、長時間の加熱脆化特性が著しく改善され
る良好な結果も付随して得られた。
金の加熱脆化の一因となる脆いシグマ相の析出挙動が顕
著に抑制され、長時間の加熱脆化特性が著しく改善され
る良好な結果も付随して得られた。
【0017】課題解決手段としての本発明の構成は、以
下のとおりである。 (1) C:0.01〜0.10%、Si:1.5〜3.5
%、Mn:0.20%以下、Cr:26〜32%、N
i:25〜35%、Mo:0.5〜3%、N:0.1〜
0.35%、希土類元素を0.02〜0.10%、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする石
炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金。
下のとおりである。 (1) C:0.01〜0.10%、Si:1.5〜3.5
%、Mn:0.20%以下、Cr:26〜32%、N
i:25〜35%、Mo:0.5〜3%、N:0.1〜
0.35%、希土類元素を0.02〜0.10%、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする石
炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金。
【0018】(2) さらにNb、Ti、Zrのうちか
ら選ばれた1種または2種以上を合計で0.1〜1%含
有することを特徴とする上記1記載の石炭ガス化プラン
ト伝熱管用耐食合金。
ら選ばれた1種または2種以上を合計で0.1〜1%含
有することを特徴とする上記1記載の石炭ガス化プラン
ト伝熱管用耐食合金。
【0019】(3)さらにMg:0.001〜0.01
%、Ca:0.001〜0.01%およびAl:0.02
〜0.1%のうちの1種以上を含有することを特徴とす
る上記1または2記載の石炭ガス化プラント伝熱管用耐
食合金。
%、Ca:0.001〜0.01%およびAl:0.02
〜0.1%のうちの1種以上を含有することを特徴とす
る上記1または2記載の石炭ガス化プラント伝熱管用耐
食合金。
【0020】(4)さらにBを0.001〜0.01%を
含有することを特徴とする上記1、2または3記載の石
炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金。
含有することを特徴とする上記1、2または3記載の石
炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金。
【0021】
【作 用】つぎに、本発明の耐食合金の成分元素の含有
量を数値限定した理由について説明する。Cは高温強度
を高めるために通常添加される。この効果は0.01%
以上で発揮されるが、0.1%を超えて添加すると、高
温使用中に結晶粒界を中心に塊状のCr炭化物を析出
し、耐食性を劣化させるとともに靱性低下も招くことか
ら、上限を0.1%とした。
量を数値限定した理由について説明する。Cは高温強度
を高めるために通常添加される。この効果は0.01%
以上で発揮されるが、0.1%を超えて添加すると、高
温使用中に結晶粒界を中心に塊状のCr炭化物を析出
し、耐食性を劣化させるとともに靱性低下も招くことか
ら、上限を0.1%とした。
【0022】Siは上述のように高温硫化腐食環境下
で、Crとともに合金に優れた耐食性を付与する元素で
あり、この効果は1.5%を超える含有量で顕著となる
ことから下限を1.5%とした。3.5%を超える添加で
加熱時にシグマ相が生成し脆化を招くとともに溶接時の
高温割れ感受性が顕著になるため、上限を3.5%とし
た。
で、Crとともに合金に優れた耐食性を付与する元素で
あり、この効果は1.5%を超える含有量で顕著となる
ことから下限を1.5%とした。3.5%を超える添加で
加熱時にシグマ相が生成し脆化を招くとともに溶接時の
高温割れ感受性が顕著になるため、上限を3.5%とし
た。
【0023】Mnはオーステナイト形成元素であるとと
もに脱酸剤として、また溶解原料からの混入の形で従来
技術では通常0.5〜1.5%程度添加される。しかしな
がら本願発明では上述のように高温硫化に対し保護被膜
として作用するCr2O3/SiO2二層被膜の安定性を
飛躍的に高めるため、その含有量を0.2%以下とし
た。またMn含有量を0.2%以下とすることで、靱性
低下を引き起こす原因の一つとなるシグマ相の析出が抑
制され、加熱脆化特性の改善効果も得られる。このMn
の限定は、本願の合金では脱酸を主としてSiで行うこ
とが可能なため、経済性を犠牲にすることなく可能とな
った。
もに脱酸剤として、また溶解原料からの混入の形で従来
技術では通常0.5〜1.5%程度添加される。しかしな
がら本願発明では上述のように高温硫化に対し保護被膜
として作用するCr2O3/SiO2二層被膜の安定性を
飛躍的に高めるため、その含有量を0.2%以下とし
た。またMn含有量を0.2%以下とすることで、靱性
低下を引き起こす原因の一つとなるシグマ相の析出が抑
制され、加熱脆化特性の改善効果も得られる。このMn
の限定は、本願の合金では脱酸を主としてSiで行うこ
とが可能なため、経済性を犠牲にすることなく可能とな
った。
【0024】Crは高温硫化腐食および酸露点腐食に対
する抵抗性を改善するために添加する。高温硫化腐食に
対する抵抗性は前述のSi、Mn希土類元素の組合せに
より発揮されるが、その効果は26%以上で保護性を有
するCr2O3/SiO2二層被膜の均一生成が顕著とな
る。反面32%を超える添加だと長時間加熱に脆いα−
Cr相が析出し、材料が脆化するため、上限を32%と
した。
する抵抗性を改善するために添加する。高温硫化腐食に
対する抵抗性は前述のSi、Mn希土類元素の組合せに
より発揮されるが、その効果は26%以上で保護性を有
するCr2O3/SiO2二層被膜の均一生成が顕著とな
る。反面32%を超える添加だと長時間加熱に脆いα−
Cr相が析出し、材料が脆化するため、上限を32%と
した。
【0025】Niはオーステナイト形成元素であり、金
属をオーステナイト組織にするために添加される。本願
の発明ではNi含有量が25%より低くなると部分的に
δ−フェライト組織が生成することから、下限を25%
とした。材料をオーステナイト組織にするのは、主とし
て高温強度を確保するためである。Niは高価な合金元
素でもあることから、この上限を35%とした。
属をオーステナイト組織にするために添加される。本願
の発明ではNi含有量が25%より低くなると部分的に
δ−フェライト組織が生成することから、下限を25%
とした。材料をオーステナイト組織にするのは、主とし
て高温強度を確保するためである。Niは高価な合金元
素でもあることから、この上限を35%とした。
【0026】Niは酸露点腐食環境下で管まげ部や溶接
継手部などの応力集中部で発生する危険性のある応力腐
食割れに対して極めて有効な合金元素でもあり、Niを
25%以上含有する合金においては応力割れは実質上発
生しなくなる。このため、本発明鋼では管まげ部や溶接
継手部の応力除去焼鈍を実施する必要がなく、施工コス
トの低減が可能である。
継手部などの応力集中部で発生する危険性のある応力腐
食割れに対して極めて有効な合金元素でもあり、Niを
25%以上含有する合金においては応力割れは実質上発
生しなくなる。このため、本発明鋼では管まげ部や溶接
継手部の応力除去焼鈍を実施する必要がなく、施工コス
トの低減が可能である。
【0027】Moは通常湿食環境でステンレス鋼の耐食
性を改善するために添加される元素であり、本発明の様
な石炭ガス化プラントにおいても酸露点腐食に対する抵
抗性をCrとNとともに高めるために添加する。その効
果は0.5%以上で顕著となり、3%を超える添加でそ
の効果が飽和するため上限を3%とした。
性を改善するために添加される元素であり、本発明の様
な石炭ガス化プラントにおいても酸露点腐食に対する抵
抗性をCrとNとともに高めるために添加する。その効
果は0.5%以上で顕著となり、3%を超える添加でそ
の効果が飽和するため上限を3%とした。
【0028】Nはオーステナイト組織の安定化に寄与す
るのみならず、高温強度を高める作用を有する。また、
酸露点腐食における耐食性を高める作用もある良好な合
金元素である。その作用は0.1%を超える含有量で顕
著となるので下限を0.1%とした。本発明の成分系で
は通常の溶製法では0.35%を超える含有量とするこ
とが困難であることから、上限を0.35%とした。
るのみならず、高温強度を高める作用を有する。また、
酸露点腐食における耐食性を高める作用もある良好な合
金元素である。その作用は0.1%を超える含有量で顕
著となるので下限を0.1%とした。本発明の成分系で
は通常の溶製法では0.35%を超える含有量とするこ
とが困難であることから、上限を0.35%とした。
【0029】Y、Ce、La等の希土類元素は鋼中の微
量Sを固定してCr2O3等の保護被膜の密着性を改善
し、高温硫化腐食などに対する保護性Cr2O3 スケー
ルの安定性を改善させ、耐食性を向上させることから添
加する。この効果は0.02%以上で発揮されるが、0.
1%を超える添加で脆い金属間化合物が析出するため、
その上限を0.1%とした。ミッシュメタルとして相当
量を添加してもよい。
量Sを固定してCr2O3等の保護被膜の密着性を改善
し、高温硫化腐食などに対する保護性Cr2O3 スケー
ルの安定性を改善させ、耐食性を向上させることから添
加する。この効果は0.02%以上で発揮されるが、0.
1%を超える添加で脆い金属間化合物が析出するため、
その上限を0.1%とした。ミッシュメタルとして相当
量を添加してもよい。
【0030】Nb、TiおよびZrはいずれも炭化物を
形成しやすいので、炭化物析出による合金の高温強度を
さらに向上させるとともに、鋼中のCを固定して、Cr
炭化物の析出を抑制し、酸露点腐食に対する抵抗性の劣
化を防止する作用を有する。これらの元素の含有量が1
種または2種以上の合計で0.1%未満の場合は添加の
高価が得られず、1%を超えて添加させると効果が飽和
するため上限を1%とした。
形成しやすいので、炭化物析出による合金の高温強度を
さらに向上させるとともに、鋼中のCを固定して、Cr
炭化物の析出を抑制し、酸露点腐食に対する抵抗性の劣
化を防止する作用を有する。これらの元素の含有量が1
種または2種以上の合計で0.1%未満の場合は添加の
高価が得られず、1%を超えて添加させると効果が飽和
するため上限を1%とした。
【0031】Mg、Ca、Alは活性元素で、熱間加工
性を悪化させる主要因である合金中のSやOを固定する
作用を有するため、熱間加工性の向上を目的として添加
する。Mg、Caについては合計で0.001%以上の
添加が有効であるが、0.01%を超える添加で低融点
のMg−Ni、Ca−Ni化合物を形成し、逆に熱間加
工性を悪化させるため上限を0.01%とした。また、
Alについては、0.02%以上の添加が熱間加工性の
向上のために有効であるが、0.1%を超えるとクリー
プ延性が低下するので、その上限値を0.1%とする。
性を悪化させる主要因である合金中のSやOを固定する
作用を有するため、熱間加工性の向上を目的として添加
する。Mg、Caについては合計で0.001%以上の
添加が有効であるが、0.01%を超える添加で低融点
のMg−Ni、Ca−Ni化合物を形成し、逆に熱間加
工性を悪化させるため上限を0.01%とした。また、
Alについては、0.02%以上の添加が熱間加工性の
向上のために有効であるが、0.1%を超えるとクリー
プ延性が低下するので、その上限値を0.1%とする。
【0032】Bは結晶粒界を強化する作用を有するの
で、合金の高温強度を高める目的で添加する。その効果
は0.001%以上で顕著となるが、0.01%と超える
と溶接高温割れ感受性が高まるため、上限を0.01%
とした。
で、合金の高温強度を高める目的で添加する。その効果
は0.001%以上で顕著となるが、0.01%と超える
と溶接高温割れ感受性が高まるため、上限を0.01%
とした。
【0033】上述のように、酸露点腐食に対する抵抗性
は、CrとMoとNの複合添加により、確保するもので
あるが、この詳細な酸露点腐食防止のメカニズムは未だ
完全には明らかになっていない。しかし、この抵抗性は
複合添加されたCrとMoとNの相乗作用によって発揮
されるもので、下記の式を満足する場合に顕著となるこ
とが実験的に確認されている。
は、CrとMoとNの複合添加により、確保するもので
あるが、この詳細な酸露点腐食防止のメカニズムは未だ
完全には明らかになっていない。しかし、この抵抗性は
複合添加されたCrとMoとNの相乗作用によって発揮
されるもので、下記の式を満足する場合に顕著となるこ
とが実験的に確認されている。
【0034】
【数1】Cr+3Mo+10N≧30
【0035】
【実施例】表1に化学成分を示す41種の合金1〜41
(合金1〜36は本発明合金、比1〜5は比較合金)を
真空溶解炉で500kgづつ溶製し、得られた外径18
5mmの丸インゴットをそのまま外径180mm、内径40
mmの中空ビレットに切削加工し、この中空ビレットを1
250℃の温度で加熱しユジーンセジュルネ方式の熱間
押出機で外径61.5mm、肉厚5.75mmの押出素管を製
造した。素管は冷間抽伸後成品熱処理を1150℃でそ
れぞれ行い、外径50.8mm、肉厚8mmの伝熱管を製造
した。
(合金1〜36は本発明合金、比1〜5は比較合金)を
真空溶解炉で500kgづつ溶製し、得られた外径18
5mmの丸インゴットをそのまま外径180mm、内径40
mmの中空ビレットに切削加工し、この中空ビレットを1
250℃の温度で加熱しユジーンセジュルネ方式の熱間
押出機で外径61.5mm、肉厚5.75mmの押出素管を製
造した。素管は冷間抽伸後成品熱処理を1150℃でそ
れぞれ行い、外径50.8mm、肉厚8mmの伝熱管を製造
した。
【0036】
【表1】
【0037】従来石炭ガス化プラントの加熱器の伝熱管
に用いられたNCF800合金を既1、Alloy 28合金を既2と
して示す。既1の合金は本発明合金とSi、Mn、C
r、Mo、N、RE、Alの成分範囲が異なる。また既
2の合金はSi、Mn、Mo、RE、N、Cuの成分範
囲が異なる。
に用いられたNCF800合金を既1、Alloy 28合金を既2と
して示す。既1の合金は本発明合金とSi、Mn、C
r、Mo、N、RE、Alの成分範囲が異なる。また既
2の合金はSi、Mn、Mo、RE、N、Cuの成分範
囲が異なる。
【0038】表2に高温硫化および酸露点腐食に対する
抵抗性を、また時効後靱性を示す。各特性の評価法とし
てそれぞれ次の方法を用いた。
抵抗性を、また時効後靱性を示す。各特性の評価法とし
てそれぞれ次の方法を用いた。
【0039】耐高温硫化腐食性は管肉厚中央部から採取
した長さ25mm、幅15mm、厚3mmの腐食試験片をガス
化炉の合成ガスを模擬した30%H2−15%H2O−4
0%CO−10%CO2−1%H2S−0.1%Cl−b
al.N2混合ガス気流中 650℃で100時間加熱
し、脱スケールによる腐食減量を測定した。
した長さ25mm、幅15mm、厚3mmの腐食試験片をガス
化炉の合成ガスを模擬した30%H2−15%H2O−4
0%CO−10%CO2−1%H2S−0.1%Cl−b
al.N2混合ガス気流中 650℃で100時間加熱
し、脱スケールによる腐食減量を測定した。
【0040】
【表2】
【0041】耐酸露点腐食性は、石炭ガス化実炉の蒸発
管付着灰を試験片に塗布後、水蒸気を飽和させた恒温槽
中に90℃で100時間加熱保持して、試験後縦断面の
最大孔食深さを光学顕微鏡で観察することによって評価
した。
管付着灰を試験片に塗布後、水蒸気を飽和させた恒温槽
中に90℃で100時間加熱保持して、試験後縦断面の
最大孔食深さを光学顕微鏡で観察することによって評価
した。
【0042】時効後靱性は、700℃で5192時間の
時効処理後、JIS4号試験片を用いたハーフシャルピ
ー試験により0℃シャルピー衝撃値を測定して評価し
た。上記の時効処理の温度と時間は、下記の式で表され
るラーソン−ミラー(Larson−Miller)パ ラメーター
では650℃で105hに相当するものである。
時効処理後、JIS4号試験片を用いたハーフシャルピ
ー試験により0℃シャルピー衝撃値を測定して評価し
た。上記の時効処理の温度と時間は、下記の式で表され
るラーソン−ミラー(Larson−Miller)パ ラメーター
では650℃で105hに相当するものである。
【0043】
【数2】ラーソン−ミラーパ ラメーター=(T+27
3)×(20+logt) Tは温度(℃)、tは時間(h)
3)×(20+logt) Tは温度(℃)、tは時間(h)
【0044】表2によると、本発明合金1〜36は、い
ずれも高温硫化腐食による腐食減量は1mg/cm2以下で
既存合金(既1、既2)がそれぞれ53.9mg/cm2、2
8.4mg/cm2であることを勘案すると、高温硫化腐食に
対する抵抗性は本発明合金では既存合金の10倍以上で
あることが確認された。また酸露点に対する抵抗性も本
発明合金は最大孔食深さがいずれも5μm以下で問題が
ないことがわかる。また時効後靱性は105h使用を想定
した加熱条件で本発明合金はいずれも68J/cm2以上の
値を示し、本発明合金1〜36は耐高温硫化腐食性、耐
酸露点腐食性、時効後靱性に優れたオーステナイト合金
である。
ずれも高温硫化腐食による腐食減量は1mg/cm2以下で
既存合金(既1、既2)がそれぞれ53.9mg/cm2、2
8.4mg/cm2であることを勘案すると、高温硫化腐食に
対する抵抗性は本発明合金では既存合金の10倍以上で
あることが確認された。また酸露点に対する抵抗性も本
発明合金は最大孔食深さがいずれも5μm以下で問題が
ないことがわかる。また時効後靱性は105h使用を想定
した加熱条件で本発明合金はいずれも68J/cm2以上の
値を示し、本発明合金1〜36は耐高温硫化腐食性、耐
酸露点腐食性、時効後靱性に優れたオーステナイト合金
である。
【0045】また本発明合金はクリープ破断強度も良好
であり、例えば符号1の合金でラーソン−ミラーパラメ
ーター法による650℃クリープ破断強度の105h外挿
値は90MPaであり、SUS 347 Hの650℃クリープ
破断強度の105h外挿値の77MPaよりやや高い値を
有している。
であり、例えば符号1の合金でラーソン−ミラーパラメ
ーター法による650℃クリープ破断強度の105h外挿
値は90MPaであり、SUS 347 Hの650℃クリープ
破断強度の105h外挿値の77MPaよりやや高い値を
有している。
【0046】これに対し既存合金(既1、既2)では耐
高温硫化腐食性、耐酸露点腐食性、時効後靱性のいずれ
かで問題点を有している。
高温硫化腐食性、耐酸露点腐食性、時効後靱性のいずれ
かで問題点を有している。
【0047】表1に比較合金(比1〜5)を掲げた。こ
れらの合金から本発明と同じ工程で伝熱管を製造をした
ものである。比1、比2の合金はCr、Mo、Nを所定
量含むため酸露点腐食に対する抵抗性は優れるものの、
Mnが0.51%、1.49%と高いため、耐高温硫化腐
食性および時効後靱性に問題がある。比3の合金は希土
類元素の添加がないため、耐酸露点腐食性、時効後靱性
は優れるものの、保護性酸化スケールの安定性が劣るた
め、耐高温硫化性が悪い。比4、比5の合金もSi量が
不十分なため、酸露点、時効後靱性については問題がな
いものの耐高温硫化腐食性は芳しくなく、既存合金より
は耐食性は良好なものの本発明合金よりは顕著に劣る。
れらの合金から本発明と同じ工程で伝熱管を製造をした
ものである。比1、比2の合金はCr、Mo、Nを所定
量含むため酸露点腐食に対する抵抗性は優れるものの、
Mnが0.51%、1.49%と高いため、耐高温硫化腐
食性および時効後靱性に問題がある。比3の合金は希土
類元素の添加がないため、耐酸露点腐食性、時効後靱性
は優れるものの、保護性酸化スケールの安定性が劣るた
め、耐高温硫化性が悪い。比4、比5の合金もSi量が
不十分なため、酸露点、時効後靱性については問題がな
いものの耐高温硫化腐食性は芳しくなく、既存合金より
は耐食性は良好なものの本発明合金よりは顕著に劣る。
【0048】本発明合金、比較合金および既存合金につ
いて、Mn量と耐高温硫化腐食性の関係をプロットする
と図1のようになる。図1から、Mn含有量を低減させ
ると合金表面に生成するCr2O3/SiO2二層被膜の
保護性が飛躍的に改善され、耐高温硫化腐食性が向上
し、Mn量が0.2%以下で優れた耐食性が得られるこ
とがわかる。
いて、Mn量と耐高温硫化腐食性の関係をプロットする
と図1のようになる。図1から、Mn含有量を低減させ
ると合金表面に生成するCr2O3/SiO2二層被膜の
保護性が飛躍的に改善され、耐高温硫化腐食性が向上
し、Mn量が0.2%以下で優れた耐食性が得られるこ
とがわかる。
【0049】次に本発明合金および比較合金についてM
n量と時効後靱性の関係をプロットし、図2に示した。
Mn量を減少させるに従い、脆いシグマ相の析出が抑え
られ、時効後靱性が向上するため、Si含有合金でも優
れた組織安定性が得られるようになる。この図2から、
650℃で105h時効に相当する加熱条件(700℃で
5192h)では、Mn含有量が0.2%以下で68J/c
m2以上のシャルピー衝撃値が得られ、過熱器等の伝熱管
材料として十分使用に耐えることがわかる。
n量と時効後靱性の関係をプロットし、図2に示した。
Mn量を減少させるに従い、脆いシグマ相の析出が抑え
られ、時効後靱性が向上するため、Si含有合金でも優
れた組織安定性が得られるようになる。この図2から、
650℃で105h時効に相当する加熱条件(700℃で
5192h)では、Mn含有量が0.2%以下で68J/c
m2以上のシャルピー衝撃値が得られ、過熱器等の伝熱管
材料として十分使用に耐えることがわかる。
【0050】
【発明の効果】以上に述べたように本発明合金は、石炭
ガス化プラントの過熱器等の伝熱管の腐食環境でメタル
温度が650℃までの温度範囲で優れた耐食性を有する
とともに優れたクリープ破断強度、組織安定性を有す
る。本発明合金の600〜650℃のクリ−プ破断強度
はSUS 347 Hと同等以上であり、溶接施工性(耐溶接高
温割れ性)、管のまげ加工性もSUS 347 H並である。本
発明合金を過熱器等の伝熱管に施工するに際しても、施
工条件は従来鋼であるSUS 347 Hと同じでよく、既存の
設備で充分施工が可能である。本発明合金は応力腐食割
れに対する抵抗性を飛躍的に高める合金元素のNiを2
5%以上含むため、過熱器等の伝熱管パネルに管を施工
する際必要な溶接継手部や冷間曲げ部の応力除去焼鈍が
不要となり、施工コスト上も有利である。このように本
発明合金を用いることで品質上、経済上はもとより施工
面でもきわめて有用な効果がもたらされる。
ガス化プラントの過熱器等の伝熱管の腐食環境でメタル
温度が650℃までの温度範囲で優れた耐食性を有する
とともに優れたクリープ破断強度、組織安定性を有す
る。本発明合金の600〜650℃のクリ−プ破断強度
はSUS 347 Hと同等以上であり、溶接施工性(耐溶接高
温割れ性)、管のまげ加工性もSUS 347 H並である。本
発明合金を過熱器等の伝熱管に施工するに際しても、施
工条件は従来鋼であるSUS 347 Hと同じでよく、既存の
設備で充分施工が可能である。本発明合金は応力腐食割
れに対する抵抗性を飛躍的に高める合金元素のNiを2
5%以上含むため、過熱器等の伝熱管パネルに管を施工
する際必要な溶接継手部や冷間曲げ部の応力除去焼鈍が
不要となり、施工コスト上も有利である。このように本
発明合金を用いることで品質上、経済上はもとより施工
面でもきわめて有用な効果がもたらされる。
【図1】本発明の合金のMn含有量と高温の硫化環境に
おける腐食減量との関係を示すグラフである。
おける腐食減量との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の合金のMn含有量と長時間時効後のシ
ャルピ−衝撃値との関係を示すグラフである。
ャルピ−衝撃値との関係を示すグラフである。
【図3】Cr2O3/SiO2二層被膜の構造を示す概念
図である。
図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 C:0.01〜0.10%、Si:1.5
〜3.5%、Mn:0.20%以下、Cr:26〜32
%、Ni:25〜35%、Mo:0.5〜3%、N:0.
1〜0.35%、希土類元素を0.02〜0.10%、残
部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
る石炭ガス化プラント伝熱器用耐食合金。 - 【請求項2】 さらにNb、Ti、Zrのうちから選ば
れた1種または2種以上を合計で0.1〜1%含有する
ことを特徴とする請求項1記載の石炭ガス化プラント伝
熱管用耐食合金。 - 【請求項3】 さらにMg:0.001〜0.01%、C
a:0.001〜0.01%およびAl:0.02〜0.1
%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項
1または2記載の石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合
金。 - 【請求項4】 さらにBを0.001〜0.01%を含有
することを特徴とする請求項1、2または3記載の石炭
ガス化プラント伝熱管用耐食合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29462493A JPH07126814A (ja) | 1993-10-29 | 1993-10-29 | 石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29462493A JPH07126814A (ja) | 1993-10-29 | 1993-10-29 | 石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07126814A true JPH07126814A (ja) | 1995-05-16 |
Family
ID=17810170
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29462493A Pending JPH07126814A (ja) | 1993-10-29 | 1993-10-29 | 石炭ガス化プラント伝熱管用耐食合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07126814A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100486378B1 (ko) * | 2002-09-24 | 2005-04-29 | 서정식 | 코크스 제조용 오븐 도어의 연와 고정용 리테이너 합금강 |
CN105509539A (zh) * | 2015-12-21 | 2016-04-20 | 江苏格林威尔金属材料科技有限公司 | 一种新型钛合金散热器 |
-
1993
- 1993-10-29 JP JP29462493A patent/JPH07126814A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100486378B1 (ko) * | 2002-09-24 | 2005-04-29 | 서정식 | 코크스 제조용 오븐 도어의 연와 고정용 리테이너 합금강 |
CN105509539A (zh) * | 2015-12-21 | 2016-04-20 | 江苏格林威尔金属材料科技有限公司 | 一种新型钛合金散热器 |
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