JPH07113143A - オーステナイト系耐熱鋳鋼 - Google Patents
オーステナイト系耐熱鋳鋼Info
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- JPH07113143A JPH07113143A JP25983693A JP25983693A JPH07113143A JP H07113143 A JPH07113143 A JP H07113143A JP 25983693 A JP25983693 A JP 25983693A JP 25983693 A JP25983693 A JP 25983693A JP H07113143 A JPH07113143 A JP H07113143A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】950℃での引張り強さが90MPa程度以上
を確保でき、しかも被削性を著しく向上させたオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼を提供する。 【構成】重量比率にて、C:0.2〜0.4%、Si:
1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、P:
0.05%以下、S:0.03%未満、Cr:16〜1
8%、Ni:13〜20%、及びN:0.05〜0.3
0%を含み、残部不可避不純物とFeからなるオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼。NbやMoが添加されていないの
で、金属組織中に被削性を低下させるNbCやMoCの
塊状炭化物が析出することがない。Ni及びNが特定量
添加されることにより、高温強度が向上されるととも
に、基地のオーステナイト相の安定化により切削時に生
じる加工誘起マルテンサイトの形成が阻止される。S:
0.03〜0.50%とすれば、MnSの析出によりさ
らに被削性を向上させることができる。
を確保でき、しかも被削性を著しく向上させたオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼を提供する。 【構成】重量比率にて、C:0.2〜0.4%、Si:
1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、P:
0.05%以下、S:0.03%未満、Cr:16〜1
8%、Ni:13〜20%、及びN:0.05〜0.3
0%を含み、残部不可避不純物とFeからなるオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼。NbやMoが添加されていないの
で、金属組織中に被削性を低下させるNbCやMoCの
塊状炭化物が析出することがない。Ni及びNが特定量
添加されることにより、高温強度が向上されるととも
に、基地のオーステナイト相の安定化により切削時に生
じる加工誘起マルテンサイトの形成が阻止される。S:
0.03〜0.50%とすれば、MnSの析出によりさ
らに被削性を向上させることができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はオーステナイト系耐熱鋳
鋼に関する。本発明の耐熱鋳鋼は自動車エンジン用排気
系部品等に利用して好適である。
鋼に関する。本発明の耐熱鋳鋼は自動車エンジン用排気
系部品等に利用して好適である。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車エンジンの出力向上、及び
低燃費化の動向に伴い、自動車エンジン用排気系部品の
耐熱性を向上させる要求が非常に大きい。現在、自動車
エンジン用排気系部品にフェライト系耐熱鋳鋼を用いる
のが主流であるが、フェライト系耐熱鋳鋼の高温強度の
向上を図ることは限界に達しつつある。このため、高温
強度の向上がさらに期待できるオーステナイト系耐熱鋳
鋼の開発が望まれる。
低燃費化の動向に伴い、自動車エンジン用排気系部品の
耐熱性を向上させる要求が非常に大きい。現在、自動車
エンジン用排気系部品にフェライト系耐熱鋳鋼を用いる
のが主流であるが、フェライト系耐熱鋳鋼の高温強度の
向上を図ることは限界に達しつつある。このため、高温
強度の向上がさらに期待できるオーステナイト系耐熱鋳
鋼の開発が望まれる。
【0003】このようなオーステナイト系耐熱鋳鋼とし
て、例えば特開昭62−260044号公報には、重量
比率にて、C:0.3〜2.0%、Si:2.0%以
下、Mn:1〜6%、P:0.05%以下、S:0.0
5%以下、Cr:13〜27%、Ni:5〜14%、M
o:0.5〜3%、Nb:0.5〜3%、及び残部Fe
からなるものが開示されている。
て、例えば特開昭62−260044号公報には、重量
比率にて、C:0.3〜2.0%、Si:2.0%以
下、Mn:1〜6%、P:0.05%以下、S:0.0
5%以下、Cr:13〜27%、Ni:5〜14%、M
o:0.5〜3%、Nb:0.5〜3%、及び残部Fe
からなるものが開示されている。
【0004】上記オーステナイト系耐熱鋳鋼は、高温、
具体的には700℃以上での強度、及び鋳造性、特に湯
流れ性の双方の要求を満たすものである。しかし、高
温、とくに900℃以上でのさらなる強度向上が望まれ
る。また、オーステナイト系耐熱鋳鋼は、フェライト系
耐熱鋳鋼に比べて、高温強度や耐酸化性に優れる反面、
被削性に劣る。オーステナイト系鋳鋼が被削性に劣るの
は、一般に靱性を向上させるNi等を多量に含むためと
と考えられる。
具体的には700℃以上での強度、及び鋳造性、特に湯
流れ性の双方の要求を満たすものである。しかし、高
温、とくに900℃以上でのさらなる強度向上が望まれ
る。また、オーステナイト系耐熱鋳鋼は、フェライト系
耐熱鋳鋼に比べて、高温強度や耐酸化性に優れる反面、
被削性に劣る。オーステナイト系鋳鋼が被削性に劣るの
は、一般に靱性を向上させるNi等を多量に含むためと
と考えられる。
【0005】そこで、本出願人は高温強度をさらに高
め、かつ、被削性を向上させたオーステナイト系耐熱鋳
鋼を開発し、先に出願している(特開平4−35015
0号公報)。このオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比
率にて、C:0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5
%、Mn:0.09〜5.0%、P:0.05%以下、
S:0.03〜0.5%、Cr:16〜18%、Ni:
13〜15%、N:0.05〜0.15%、及びNb:
0.3〜0.7%を含み、残部Feからなるもので、N
の特定量の添加により高温強度が向上され、かつ、Mn
及びSの特定量の添加により被削性が向上されている。
また、高温強度をさらに向上させる目的で、上記組成に
さらにMo:1.0〜3.0%添加したものも開示され
ている。
め、かつ、被削性を向上させたオーステナイト系耐熱鋳
鋼を開発し、先に出願している(特開平4−35015
0号公報)。このオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比
率にて、C:0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5
%、Mn:0.09〜5.0%、P:0.05%以下、
S:0.03〜0.5%、Cr:16〜18%、Ni:
13〜15%、N:0.05〜0.15%、及びNb:
0.3〜0.7%を含み、残部Feからなるもので、N
の特定量の添加により高温強度が向上され、かつ、Mn
及びSの特定量の添加により被削性が向上されている。
また、高温強度をさらに向上させる目的で、上記組成に
さらにMo:1.0〜3.0%添加したものも開示され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開平4
−350150号公報に開示されたオーステナイト系耐
熱鋳鋼は、Moを添加していないものでも、950℃で
の引張り強さが約90MPa以上であり、高温強度を十
分に向上させることができたが、被削性の面で要求性能
を必ずしも満足するものではなく、さらなる被削性向上
が望まれる。
−350150号公報に開示されたオーステナイト系耐
熱鋳鋼は、Moを添加していないものでも、950℃で
の引張り強さが約90MPa以上であり、高温強度を十
分に向上させることができたが、被削性の面で要求性能
を必ずしも満足するものではなく、さらなる被削性向上
が望まれる。
【0007】本発明は、950℃での引張り強さが90
MPa程度以上を確保でき、しかも被削性をさらに向上
させたオーステナイト系耐熱鋳鋼を提供することを解決
すべき技術課題とするものである。
MPa程度以上を確保でき、しかも被削性をさらに向上
させたオーステナイト系耐熱鋳鋼を提供することを解決
すべき技術課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記特開平
4−350150号公報に開示されたオーステナイト系
耐熱鋳鋼において、被削性をさらに向上させるべく研究
の結果、NbやMoが塊状の炭化物(NbCやMoC)
となって金属組織中に析出しており、この塊状炭化物が
被削性の向上を妨げていることを解明し、本発明を完成
した。
4−350150号公報に開示されたオーステナイト系
耐熱鋳鋼において、被削性をさらに向上させるべく研究
の結果、NbやMoが塊状の炭化物(NbCやMoC)
となって金属組織中に析出しており、この塊状炭化物が
被削性の向上を妨げていることを解明し、本発明を完成
した。
【0009】すなわち、上記課題を解決する本第1発明
のオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:
0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:
0.09〜5.0%、P:0.05%以下、S:0.0
3%未満、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、
及びN:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純
物とFeからなることを特徴とするものである。
のオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:
0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:
0.09〜5.0%、P:0.05%以下、S:0.0
3%未満、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、
及びN:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純
物とFeからなることを特徴とするものである。
【0010】上記第1発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。なお、以下の説明において各合金元素の添加量
は全て重量%にて表示する。Cは高温強度の向上と鋳造
性の改善に有効であるが、Cの添加量を0.2%未満に
するとその効果が充分でなく、0.4%超過にすると耐
酸化性が悪化する。
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。なお、以下の説明において各合金元素の添加量
は全て重量%にて表示する。Cは高温強度の向上と鋳造
性の改善に有効であるが、Cの添加量を0.2%未満に
するとその効果が充分でなく、0.4%超過にすると耐
酸化性が悪化する。
【0011】Siは耐酸化性と鋳造性の改善に有効であ
るが、Siの添加量を1.5%未満にするとその効果が
充分でなく、2.5%超過にすると靱性が低下する。M
nはオーステナイト地を安定にする効果があるが、Mn
の添加量を0.09%未満にするとそれらの効果が充分
でない。一方、Mnを多量に添加すると粒界に偏析して
脆化を引き起こすため、Mnの添加量の上限は5.0%
とした。MnはSと結合してMnSとなり被削性を改善
する効果があるが、本第1発明のオーステナイト系鋳鋼
においては、Sの添加量が0.03%未満と少量である
ためMnSが析出しない。
るが、Siの添加量を1.5%未満にするとその効果が
充分でなく、2.5%超過にすると靱性が低下する。M
nはオーステナイト地を安定にする効果があるが、Mn
の添加量を0.09%未満にするとそれらの効果が充分
でない。一方、Mnを多量に添加すると粒界に偏析して
脆化を引き起こすため、Mnの添加量の上限は5.0%
とした。MnはSと結合してMnSとなり被削性を改善
する効果があるが、本第1発明のオーステナイト系鋳鋼
においては、Sの添加量が0.03%未満と少量である
ためMnSが析出しない。
【0012】Pを多量に添加すると加熱、冷却の繰り返
しによる熱劣化が発生しやすくなり、更に靱性も低下す
るため、Pの添加量の上限は0.05%とした。Sは不
純物元素として考えて0.03%未満とした。Crは耐
酸化性、高温強度の向上に有効であるが、Crの添加量
を16%未満にするとその効果が充分でない。一方、C
rを多量に添加すると、Crがフェライト地を安定にさ
せる性質をもつので、オーステナイト地を不安定にし、
更にσ相の析出により脆化を引き起こす。このため、C
rの添加量の上限は18%とした。
しによる熱劣化が発生しやすくなり、更に靱性も低下す
るため、Pの添加量の上限は0.05%とした。Sは不
純物元素として考えて0.03%未満とした。Crは耐
酸化性、高温強度の向上に有効であるが、Crの添加量
を16%未満にするとその効果が充分でない。一方、C
rを多量に添加すると、Crがフェライト地を安定にさ
せる性質をもつので、オーステナイト地を不安定にし、
更にσ相の析出により脆化を引き起こす。このため、C
rの添加量の上限は18%とした。
【0013】NiはCrと共存することにより耐酸化
性、高温強度の向上に寄与し、またオーステナイト地を
安定にし、さらには切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成を阻止して被削性の向上に寄与するが、Ni
の添加量を13%未満にするとその効果が充分でない。
一方、Niを多量に添加すると、鋳造性が悪化しコスト
アップにもなるので、Niの添加量の上限は20%とし
た。
性、高温強度の向上に寄与し、またオーステナイト地を
安定にし、さらには切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成を阻止して被削性の向上に寄与するが、Ni
の添加量を13%未満にするとその効果が充分でない。
一方、Niを多量に添加すると、鋳造性が悪化しコスト
アップにもなるので、Niの添加量の上限は20%とし
た。
【0014】Nは高温強度の向上に寄与し、またオース
テナイト地を安定にし、さらには切削時に生じる加工誘
起マルテンサイトの形成を阻止して被削性の向上に寄与
するが、Nの添加量を0.05%未満にするとその効果
が充分でなく、0.30%超過にすると鋳造性に対して
悪影響を与える。上記課題を解決する本第2発明のオー
ステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:0.2〜
0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜
5.0%、P:0.05%以下、S:0.03〜0.5
0%、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、及び
N:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純物と
Feからなることを特徴とするものである。
テナイト地を安定にし、さらには切削時に生じる加工誘
起マルテンサイトの形成を阻止して被削性の向上に寄与
するが、Nの添加量を0.05%未満にするとその効果
が充分でなく、0.30%超過にすると鋳造性に対して
悪影響を与える。上記課題を解決する本第2発明のオー
ステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:0.2〜
0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜
5.0%、P:0.05%以下、S:0.03〜0.5
0%、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、及び
N:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純物と
Feからなることを特徴とするものである。
【0015】上記第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。C、Si、Mn、P、Cr、Ni、及びNにつ
いては、上記第1発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼にお
ける添加量と同様であり、その範囲限定理由も同様であ
る。以下、Sの限定理由を説明する。
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。C、Si、Mn、P、Cr、Ni、及びNにつ
いては、上記第1発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼にお
ける添加量と同様であり、その範囲限定理由も同様であ
る。以下、Sの限定理由を説明する。
【0016】被削性には、MnとSとが結合して鋳鉄中
に存在するMnS化合物が関与する。すなわち、鋳鉄中
にMnS化合物が存在すると被削性が向上し、また鋳鉄
中に存在するMnS化合物の量が多いほど、被削性が向
上する。このように、Sは被削性の向上に有効である
が、Sの添加量を0.03%未満にするとMnと結合し
てMnSとして析出することがほとんどないため被削性
向上の効果が充分でなく、一方0.5%超過にすると、
加熱、冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくな
り、更に靱性も低下する。したがって、Sの添加量は
0.03〜0.5%とした。
に存在するMnS化合物が関与する。すなわち、鋳鉄中
にMnS化合物が存在すると被削性が向上し、また鋳鉄
中に存在するMnS化合物の量が多いほど、被削性が向
上する。このように、Sは被削性の向上に有効である
が、Sの添加量を0.03%未満にするとMnと結合し
てMnSとして析出することがほとんどないため被削性
向上の効果が充分でなく、一方0.5%超過にすると、
加熱、冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくな
り、更に靱性も低下する。したがって、Sの添加量は
0.03〜0.5%とした。
【0017】なお、上記第2発明のオーステナイト系鋳
鋼において、引張り強さを向上させる観点からは、Mn
の添加量をSの添加量の3倍以上にすることが好まし
い。これは、Mnの添加量がSの添加量の3倍より少な
いと、SがMnS化合物にならずに母相中に溶け込み靱
性が低下するためと考えられる。
鋼において、引張り強さを向上させる観点からは、Mn
の添加量をSの添加量の3倍以上にすることが好まし
い。これは、Mnの添加量がSの添加量の3倍より少な
いと、SがMnS化合物にならずに母相中に溶け込み靱
性が低下するためと考えられる。
【0018】
【発明の作用及び効果】上記構成を有する本第1発明及
び第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、NbやM
oが添加されていないので、金属組織中にNbCやMo
Cの塊状炭化物が析出することがなく、この塊状炭化物
により被削性が低下されることがない。また、Ni及び
Nが特定量添加されることにより、基地のオーステナイ
ト相の安定化により切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成が阻止される。このため、本第1発明及び第
2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、被削性を著し
く向上させることができる。
び第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、NbやM
oが添加されていないので、金属組織中にNbCやMo
Cの塊状炭化物が析出することがなく、この塊状炭化物
により被削性が低下されることがない。また、Ni及び
Nが特定量添加されることにより、基地のオーステナイ
ト相の安定化により切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成が阻止される。このため、本第1発明及び第
2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、被削性を著し
く向上させることができる。
【0019】また、Ni及びNが特定量添加されること
により、高温強度及び耐酸化性を向上させることがで
き、NbやMoを添加しないことによるこれらの特性低
下を補うことができる。さらに、Sが0.03〜0.5
0%添加された本第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
では、SとMnとの結合によりMnSが析出しているの
で、被削性をさらに向上させることができる。
により、高温強度及び耐酸化性を向上させることがで
き、NbやMoを添加しないことによるこれらの特性低
下を補うことができる。さらに、Sが0.03〜0.5
0%添加された本第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
では、SとMnとの結合によりMnSが析出しているの
で、被削性をさらに向上させることができる。
【0020】したがって、本第1発明及び第2発明のオ
ーステナイト系耐熱鋳鋼は、耐熱性の必要な自動車の排
気系部品等の薄肉化を可能とし、燃費向上及び動力性能
の向上に寄与するとともに、機械加工の高能率化、及び
工具の耐久性向上に寄与することができる。
ーステナイト系耐熱鋳鋼は、耐熱性の必要な自動車の排
気系部品等の薄肉化を可能とし、燃費向上及び動力性能
の向上に寄与するとともに、機械加工の高能率化、及び
工具の耐久性向上に寄与することができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)表1に示すように、本発明の請求項1記載
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を鋳造により得た。この鋳造は、50kg高周波
溶解炉を用いて大気溶解を行い、Fe−Si(75重量
%)により脱酸処理した後、1550℃で鋳型に注湯す
ることにより行った。
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を鋳造により得た。この鋳造は、50kg高周波
溶解炉を用いて大気溶解を行い、Fe−Si(75重量
%)により脱酸処理した後、1550℃で鋳型に注湯す
ることにより行った。
【0022】
【表1】 (実施例2)表2に示すように、本発明の請求項2記載
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を上記実施例1と同様にして得た。
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を上記実施例1と同様にして得た。
【0023】
【表2】 (比較例)表3に示す組成の比較例としての耐熱鋳鋼の
各試材を上記実施例1と同様にして得た。なお、比較材
11はフェライト系耐熱鋳鋼の一般材(SCH1;JI
SG 5122に規格)であり、比較材12はオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼の一般材(HK40;ASTM A2
97に規格)である。
各試材を上記実施例1と同様にして得た。なお、比較材
11はフェライト系耐熱鋳鋼の一般材(SCH1;JI
SG 5122に規格)であり、比較材12はオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼の一般材(HK40;ASTM A2
97に規格)である。
【0024】
【表3】 (被削性の評価)上記実施例1、2、及び比較例に係る
各試材の被削性について評価した。これは、各試材につ
いて、切削速度:100m/min、送り量:0.2m
m/rev、切り込み:1.5mm、トータル切削長
さ:1000mの切削条件で被削性(連続旋削)試験を
行い、刃具摩耗量を調べて行った。この結果を図1に示
す。
各試材の被削性について評価した。これは、各試材につ
いて、切削速度:100m/min、送り量:0.2m
m/rev、切り込み:1.5mm、トータル切削長
さ:1000mの切削条件で被削性(連続旋削)試験を
行い、刃具摩耗量を調べて行った。この結果を図1に示
す。
【0025】図1からも明らかなように、本実施例1に
係る本発明材No.1〜4は、快削元素としてのSが
0.03%未満添加されているにすぎないが、快削元素
としてのSが0.03〜0.10%添加された比較例に
係る比較材No.8〜10と同等の被削性を有してい
る。ここで、本実施例1に係る本発明材No.1の金属
組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)、及び比較例に
係る比較材No.10の金属組織を示す光学顕微鏡写真
(400倍)を、それぞれ図2及び図3に示す。これら
の図からも明らかなように、比較材No.10において
は、硬質な塊状炭化物としてのNbCやMoCの析出が
観察されたのに対して、本発明材No.1においては、
粒状の炭化物としてのCr7 C3 のみが観察された。こ
れにより、本発明材の被削性向上に対して、炭化物の形
態が大きく寄与していることが明確となった。すなわ
ち、本発明材は、炭化物形成元素であるMoやNbを添
加していないので、硬質な塊状炭化物が析出せず、これ
により被削性を著しく向上させることができた。
係る本発明材No.1〜4は、快削元素としてのSが
0.03%未満添加されているにすぎないが、快削元素
としてのSが0.03〜0.10%添加された比較例に
係る比較材No.8〜10と同等の被削性を有してい
る。ここで、本実施例1に係る本発明材No.1の金属
組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)、及び比較例に
係る比較材No.10の金属組織を示す光学顕微鏡写真
(400倍)を、それぞれ図2及び図3に示す。これら
の図からも明らかなように、比較材No.10において
は、硬質な塊状炭化物としてのNbCやMoCの析出が
観察されたのに対して、本発明材No.1においては、
粒状の炭化物としてのCr7 C3 のみが観察された。こ
れにより、本発明材の被削性向上に対して、炭化物の形
態が大きく寄与していることが明確となった。すなわ
ち、本発明材は、炭化物形成元素であるMoやNbを添
加していないので、硬質な塊状炭化物が析出せず、これ
により被削性を著しく向上させることができた。
【0026】また、本実施例1に係る本発明材No.1
〜4に対して、快削元素としてのSを添加した本実施例
2に係る本発明材No.5〜7は、本発明材No.1〜
4、及び比較材No.8〜10と比べて被削性が著しく
向上した。ここで、本実施例2に係る本発明材No.6
の金属組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)を、図4
に示す。図4からも明らかなように、本発明材No.6
においては、粒状の炭化物としてのCr7 C3 と、Mn
Sの析出とが観察された。これにより、MnSによる被
削性向上の効果が確認された。
〜4に対して、快削元素としてのSを添加した本実施例
2に係る本発明材No.5〜7は、本発明材No.1〜
4、及び比較材No.8〜10と比べて被削性が著しく
向上した。ここで、本実施例2に係る本発明材No.6
の金属組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)を、図4
に示す。図4からも明らかなように、本発明材No.6
においては、粒状の炭化物としてのCr7 C3 と、Mn
Sの析出とが観察された。これにより、MnSによる被
削性向上の効果が確認された。
【0027】(高温強度の評価)本発明材No.1〜
7、及び比較材No.8〜12の各試材について、高温
引張試験を行った。この試験は、JIS Z 2241
の規定に準拠し、950℃の温度で行った。この結果を
図5に示す。図5からも明らかなように、本発明材は9
50℃での引張り強さが90MPa以上であり、比較材
と同等の高温強度を有する。
7、及び比較材No.8〜12の各試材について、高温
引張試験を行った。この試験は、JIS Z 2241
の規定に準拠し、950℃の温度で行った。この結果を
図5に示す。図5からも明らかなように、本発明材は9
50℃での引張り強さが90MPa以上であり、比較材
と同等の高温強度を有する。
【図1】 本発明材と比較材の連続旋削試験の結果を示
すグラフである。
すグラフである。
【図2】 本発明材No.1の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
鏡写真(400倍)である。
【図3】 比較材No.10の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
鏡写真(400倍)である。
【図4】 本発明材No.6の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
鏡写真(400倍)である。
【図5】 本発明材と比較材の高温引張試験の結果を示
すグラフである。
すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比率にて、C:0.2〜0.4%、
Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、
P:0.05%以下、S:0.03%未満、Cr:16
〜18%、Ni:13〜20%、及びN:0.05〜
0.30%を含み、残部不可避不純物とFeからなるこ
とを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。 - 【請求項2】 重量比率にて、C:0.2〜0.4%、
Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、
P:0.05%以下、S:0.03〜0.50%、C
r:16〜18%、Ni:13〜20%、及びN:0.
05〜0.30%を含み、残部不可避不純物とFeから
なることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5259836A JP2976777B2 (ja) | 1993-10-18 | 1993-10-18 | オーステナイト系耐熱鋳鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5259836A JP2976777B2 (ja) | 1993-10-18 | 1993-10-18 | オーステナイト系耐熱鋳鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07113143A true JPH07113143A (ja) | 1995-05-02 |
JP2976777B2 JP2976777B2 (ja) | 1999-11-10 |
Family
ID=17339667
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5259836A Expired - Lifetime JP2976777B2 (ja) | 1993-10-18 | 1993-10-18 | オーステナイト系耐熱鋳鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2976777B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2014147463A1 (en) * | 2013-03-22 | 2014-09-25 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Austenitic heat-resistant cast steel and method for manufacturing the same |
WO2019107699A1 (ko) * | 2017-11-28 | 2019-06-06 | 포항공과대학교 산학협력단 | 크롬(cr) 저감을 통한 상온 및 고온강도가 우수한 오스테나이트강 |
CN110551952A (zh) * | 2018-05-30 | 2019-12-10 | 盖瑞特交通一公司 | 不锈钢合金、由不锈钢合金形成的涡轮增压器部件及其制造方法 |
-
1993
- 1993-10-18 JP JP5259836A patent/JP2976777B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014208875A (ja) * | 2013-03-22 | 2014-11-06 | トヨタ自動車株式会社 | オーステナイト系耐熱鋳鋼およびその製造方法 |
CN105074031A (zh) * | 2013-03-22 | 2015-11-18 | 丰田自动车株式会社 | 奥氏体耐热铸钢及其制造方法 |
US20160068936A1 (en) * | 2013-03-22 | 2016-03-10 | Aisin Takaoka Co., Ltd. | Austenitic heat-resistant cast steel and method for manufacturing the same |
US10626487B2 (en) | 2013-03-22 | 2020-04-21 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Austenitic heat-resistant cast steel and method for manufacturing the same |
DE112014001570B4 (de) | 2013-03-22 | 2023-04-27 | Aisin Takaoka Co., Ltd. | Austenitischer hitzebeständiger Stahlguss und Verfahren zu dessen Herstellung |
WO2019107699A1 (ko) * | 2017-11-28 | 2019-06-06 | 포항공과대학교 산학협력단 | 크롬(cr) 저감을 통한 상온 및 고온강도가 우수한 오스테나이트강 |
CN110551952A (zh) * | 2018-05-30 | 2019-12-10 | 盖瑞特交通一公司 | 不锈钢合金、由不锈钢合金形成的涡轮增压器部件及其制造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2976777B2 (ja) | 1999-11-10 |
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