JPH07113143A - オーステナイト系耐熱鋳鋼 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋳鋼

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JPH07113143A
JPH07113143A JP25983693A JP25983693A JPH07113143A JP H07113143 A JPH07113143 A JP H07113143A JP 25983693 A JP25983693 A JP 25983693A JP 25983693 A JP25983693 A JP 25983693A JP H07113143 A JPH07113143 A JP H07113143A
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喜和 弦間
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Abstract

(57)【要約】 【目的】950℃での引張り強さが90MPa程度以上
を確保でき、しかも被削性を著しく向上させたオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼を提供する。 【構成】重量比率にて、C:0.2〜0.4%、Si:
1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、P:
0.05%以下、S:0.03%未満、Cr:16〜1
8%、Ni:13〜20%、及びN:0.05〜0.3
0%を含み、残部不可避不純物とFeからなるオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼。NbやMoが添加されていないの
で、金属組織中に被削性を低下させるNbCやMoCの
塊状炭化物が析出することがない。Ni及びNが特定量
添加されることにより、高温強度が向上されるととも
に、基地のオーステナイト相の安定化により切削時に生
じる加工誘起マルテンサイトの形成が阻止される。S:
0.03〜0.50%とすれば、MnSの析出によりさ
らに被削性を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はオーステナイト系耐熱鋳
鋼に関する。本発明の耐熱鋳鋼は自動車エンジン用排気
系部品等に利用して好適である。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車エンジンの出力向上、及び
低燃費化の動向に伴い、自動車エンジン用排気系部品の
耐熱性を向上させる要求が非常に大きい。現在、自動車
エンジン用排気系部品にフェライト系耐熱鋳鋼を用いる
のが主流であるが、フェライト系耐熱鋳鋼の高温強度の
向上を図ることは限界に達しつつある。このため、高温
強度の向上がさらに期待できるオーステナイト系耐熱鋳
鋼の開発が望まれる。
【0003】このようなオーステナイト系耐熱鋳鋼とし
て、例えば特開昭62−260044号公報には、重量
比率にて、C:0.3〜2.0%、Si:2.0%以
下、Mn:1〜6%、P:0.05%以下、S:0.0
5%以下、Cr:13〜27%、Ni:5〜14%、M
o:0.5〜3%、Nb:0.5〜3%、及び残部Fe
からなるものが開示されている。
【0004】上記オーステナイト系耐熱鋳鋼は、高温、
具体的には700℃以上での強度、及び鋳造性、特に湯
流れ性の双方の要求を満たすものである。しかし、高
温、とくに900℃以上でのさらなる強度向上が望まれ
る。また、オーステナイト系耐熱鋳鋼は、フェライト系
耐熱鋳鋼に比べて、高温強度や耐酸化性に優れる反面、
被削性に劣る。オーステナイト系鋳鋼が被削性に劣るの
は、一般に靱性を向上させるNi等を多量に含むためと
と考えられる。
【0005】そこで、本出願人は高温強度をさらに高
め、かつ、被削性を向上させたオーステナイト系耐熱鋳
鋼を開発し、先に出願している(特開平4−35015
0号公報)。このオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比
率にて、C:0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5
%、Mn:0.09〜5.0%、P:0.05%以下、
S:0.03〜0.5%、Cr:16〜18%、Ni:
13〜15%、N:0.05〜0.15%、及びNb:
0.3〜0.7%を含み、残部Feからなるもので、N
の特定量の添加により高温強度が向上され、かつ、Mn
及びSの特定量の添加により被削性が向上されている。
また、高温強度をさらに向上させる目的で、上記組成に
さらにMo:1.0〜3.0%添加したものも開示され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開平4
−350150号公報に開示されたオーステナイト系耐
熱鋳鋼は、Moを添加していないものでも、950℃で
の引張り強さが約90MPa以上であり、高温強度を十
分に向上させることができたが、被削性の面で要求性能
を必ずしも満足するものではなく、さらなる被削性向上
が望まれる。
【0007】本発明は、950℃での引張り強さが90
MPa程度以上を確保でき、しかも被削性をさらに向上
させたオーステナイト系耐熱鋳鋼を提供することを解決
すべき技術課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記特開平
4−350150号公報に開示されたオーステナイト系
耐熱鋳鋼において、被削性をさらに向上させるべく研究
の結果、NbやMoが塊状の炭化物(NbCやMoC)
となって金属組織中に析出しており、この塊状炭化物が
被削性の向上を妨げていることを解明し、本発明を完成
した。
【0009】すなわち、上記課題を解決する本第1発明
のオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:
0.2〜0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:
0.09〜5.0%、P:0.05%以下、S:0.0
3%未満、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、
及びN:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純
物とFeからなることを特徴とするものである。
【0010】上記第1発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。なお、以下の説明において各合金元素の添加量
は全て重量%にて表示する。Cは高温強度の向上と鋳造
性の改善に有効であるが、Cの添加量を0.2%未満に
するとその効果が充分でなく、0.4%超過にすると耐
酸化性が悪化する。
【0011】Siは耐酸化性と鋳造性の改善に有効であ
るが、Siの添加量を1.5%未満にするとその効果が
充分でなく、2.5%超過にすると靱性が低下する。M
nはオーステナイト地を安定にする効果があるが、Mn
の添加量を0.09%未満にするとそれらの効果が充分
でない。一方、Mnを多量に添加すると粒界に偏析して
脆化を引き起こすため、Mnの添加量の上限は5.0%
とした。MnはSと結合してMnSとなり被削性を改善
する効果があるが、本第1発明のオーステナイト系鋳鋼
においては、Sの添加量が0.03%未満と少量である
ためMnSが析出しない。
【0012】Pを多量に添加すると加熱、冷却の繰り返
しによる熱劣化が発生しやすくなり、更に靱性も低下す
るため、Pの添加量の上限は0.05%とした。Sは不
純物元素として考えて0.03%未満とした。Crは耐
酸化性、高温強度の向上に有効であるが、Crの添加量
を16%未満にするとその効果が充分でない。一方、C
rを多量に添加すると、Crがフェライト地を安定にさ
せる性質をもつので、オーステナイト地を不安定にし、
更にσ相の析出により脆化を引き起こす。このため、C
rの添加量の上限は18%とした。
【0013】NiはCrと共存することにより耐酸化
性、高温強度の向上に寄与し、またオーステナイト地を
安定にし、さらには切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成を阻止して被削性の向上に寄与するが、Ni
の添加量を13%未満にするとその効果が充分でない。
一方、Niを多量に添加すると、鋳造性が悪化しコスト
アップにもなるので、Niの添加量の上限は20%とし
た。
【0014】Nは高温強度の向上に寄与し、またオース
テナイト地を安定にし、さらには切削時に生じる加工誘
起マルテンサイトの形成を阻止して被削性の向上に寄与
するが、Nの添加量を0.05%未満にするとその効果
が充分でなく、0.30%超過にすると鋳造性に対して
悪影響を与える。上記課題を解決する本第2発明のオー
ステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率にて、C:0.2〜
0.4%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜
5.0%、P:0.05%以下、S:0.03〜0.5
0%、Cr:16〜18%、Ni:13〜20%、及び
N:0.05〜0.30%を含み、残部不可避不純物と
Feからなることを特徴とするものである。
【0015】上記第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
における各合金元素の添加量の範囲限定理由について説
明する。C、Si、Mn、P、Cr、Ni、及びNにつ
いては、上記第1発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼にお
ける添加量と同様であり、その範囲限定理由も同様であ
る。以下、Sの限定理由を説明する。
【0016】被削性には、MnとSとが結合して鋳鉄中
に存在するMnS化合物が関与する。すなわち、鋳鉄中
にMnS化合物が存在すると被削性が向上し、また鋳鉄
中に存在するMnS化合物の量が多いほど、被削性が向
上する。このように、Sは被削性の向上に有効である
が、Sの添加量を0.03%未満にするとMnと結合し
てMnSとして析出することがほとんどないため被削性
向上の効果が充分でなく、一方0.5%超過にすると、
加熱、冷却の繰り返しによる熱劣化が発生しやすくな
り、更に靱性も低下する。したがって、Sの添加量は
0.03〜0.5%とした。
【0017】なお、上記第2発明のオーステナイト系鋳
鋼において、引張り強さを向上させる観点からは、Mn
の添加量をSの添加量の3倍以上にすることが好まし
い。これは、Mnの添加量がSの添加量の3倍より少な
いと、SがMnS化合物にならずに母相中に溶け込み靱
性が低下するためと考えられる。
【0018】
【発明の作用及び効果】上記構成を有する本第1発明及
び第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、NbやM
oが添加されていないので、金属組織中にNbCやMo
Cの塊状炭化物が析出することがなく、この塊状炭化物
により被削性が低下されることがない。また、Ni及び
Nが特定量添加されることにより、基地のオーステナイ
ト相の安定化により切削時に生じる加工誘起マルテンサ
イトの形成が阻止される。このため、本第1発明及び第
2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼では、被削性を著し
く向上させることができる。
【0019】また、Ni及びNが特定量添加されること
により、高温強度及び耐酸化性を向上させることがで
き、NbやMoを添加しないことによるこれらの特性低
下を補うことができる。さらに、Sが0.03〜0.5
0%添加された本第2発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼
では、SとMnとの結合によりMnSが析出しているの
で、被削性をさらに向上させることができる。
【0020】したがって、本第1発明及び第2発明のオ
ーステナイト系耐熱鋳鋼は、耐熱性の必要な自動車の排
気系部品等の薄肉化を可能とし、燃費向上及び動力性能
の向上に寄与するとともに、機械加工の高能率化、及び
工具の耐久性向上に寄与することができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)表1に示すように、本発明の請求項1記載
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を鋳造により得た。この鋳造は、50kg高周波
溶解炉を用いて大気溶解を行い、Fe−Si(75重量
%)により脱酸処理した後、1550℃で鋳型に注湯す
ることにより行った。
【0022】
【表1】 (実施例2)表2に示すように、本発明の請求項2記載
のオーステナイト耐熱鋳鋼に係る組成をもつ耐熱鋳鋼の
各試材を上記実施例1と同様にして得た。
【0023】
【表2】 (比較例)表3に示す組成の比較例としての耐熱鋳鋼の
各試材を上記実施例1と同様にして得た。なお、比較材
11はフェライト系耐熱鋳鋼の一般材(SCH1;JI
SG 5122に規格)であり、比較材12はオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼の一般材(HK40;ASTM A2
97に規格)である。
【0024】
【表3】 (被削性の評価)上記実施例1、2、及び比較例に係る
各試材の被削性について評価した。これは、各試材につ
いて、切削速度:100m/min、送り量:0.2m
m/rev、切り込み:1.5mm、トータル切削長
さ:1000mの切削条件で被削性(連続旋削)試験を
行い、刃具摩耗量を調べて行った。この結果を図1に示
す。
【0025】図1からも明らかなように、本実施例1に
係る本発明材No.1〜4は、快削元素としてのSが
0.03%未満添加されているにすぎないが、快削元素
としてのSが0.03〜0.10%添加された比較例に
係る比較材No.8〜10と同等の被削性を有してい
る。ここで、本実施例1に係る本発明材No.1の金属
組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)、及び比較例に
係る比較材No.10の金属組織を示す光学顕微鏡写真
(400倍)を、それぞれ図2及び図3に示す。これら
の図からも明らかなように、比較材No.10において
は、硬質な塊状炭化物としてのNbCやMoCの析出が
観察されたのに対して、本発明材No.1においては、
粒状の炭化物としてのCr7 3 のみが観察された。こ
れにより、本発明材の被削性向上に対して、炭化物の形
態が大きく寄与していることが明確となった。すなわ
ち、本発明材は、炭化物形成元素であるMoやNbを添
加していないので、硬質な塊状炭化物が析出せず、これ
により被削性を著しく向上させることができた。
【0026】また、本実施例1に係る本発明材No.1
〜4に対して、快削元素としてのSを添加した本実施例
2に係る本発明材No.5〜7は、本発明材No.1〜
4、及び比較材No.8〜10と比べて被削性が著しく
向上した。ここで、本実施例2に係る本発明材No.6
の金属組織を示す光学顕微鏡写真(400倍)を、図4
に示す。図4からも明らかなように、本発明材No.6
においては、粒状の炭化物としてのCr7 3 と、Mn
Sの析出とが観察された。これにより、MnSによる被
削性向上の効果が確認された。
【0027】(高温強度の評価)本発明材No.1〜
7、及び比較材No.8〜12の各試材について、高温
引張試験を行った。この試験は、JIS Z 2241
の規定に準拠し、950℃の温度で行った。この結果を
図5に示す。図5からも明らかなように、本発明材は9
50℃での引張り強さが90MPa以上であり、比較材
と同等の高温強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明材と比較材の連続旋削試験の結果を示
すグラフである。
【図2】 本発明材No.1の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
【図3】 比較材No.10の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
【図4】 本発明材No.6の金属組織を示す光学顕微
鏡写真(400倍)である。
【図5】 本発明材と比較材の高温引張試験の結果を示
すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比率にて、C:0.2〜0.4%、
    Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、
    P:0.05%以下、S:0.03%未満、Cr:16
    〜18%、Ni:13〜20%、及びN:0.05〜
    0.30%を含み、残部不可避不純物とFeからなるこ
    とを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
  2. 【請求項2】 重量比率にて、C:0.2〜0.4%、
    Si:1.5〜2.5%、Mn:0.09〜5.0%、
    P:0.05%以下、S:0.03〜0.50%、C
    r:16〜18%、Ni:13〜20%、及びN:0.
    05〜0.30%を含み、残部不可避不純物とFeから
    なることを特徴とするオーステナイト系耐熱鋳鋼。
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