JPH07110040A - 自動変速機のクラッチ組立体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クラッチ機構において、その動作方向に保た
れるすき間をクラッチの構成部品を変更することなく自
在に調整可能とした自動変速機のクラッチ組立体を提供
する。 【構成】 クラッチドラム（５）の内筒部に固定された
クラッチプレート（４）を有し、クラッチドラム（５）
内にクラッチ（４）を接続状態とするためのクラッチピ
ストン（１）を摺動自在に収容する自動変速機のクラッ
チ組立体であって、クラッチピストン（１）および／ま
たはクラッチドラム（５）にクラッチ（４）のすき間の
調整が可能な調整手段（ねじ部材３）を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動変速機のクラッチ
組立体に関し、詳しくは、複数のクラッチプレートをド
ラムの内周部に保持し、油圧によってクラッチの接続・
しゃ断が行われるようにした自動変速機のクラッチ組立
体に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動変速機はアクセルペダルの踏込み操
作と車両の走行状態とに応じて自動的に変速を行うもの
で、その基本的な構成としては、回転動力の伝達と共に
トルク変換の働きをする流体伝動装置（トルクコンバー
タ）と、プラネタリギアユニットを含む変速機構（トラ
ンスミッション）と、油圧を利用して変速機構の変速操
作およびその潤滑を行うように制御する油圧制御装置と
を有している。ところで、かかる自動変速機では一般に
トルクコンバータを介して入力される入力側と、車両を
駆動するために取出される出力側との間に変速機構にか
かわる複数組のクラッチが設けられており、変速操作の
レンジに応じてこれらクラッチの切換えが油圧によって
行われ、制御されるように構成されている。

【０００３】なお、上述の複数組のクラッチは互いにプ
ラネタリギアを介して出力軸側に連結されるが、これら
のクラッチにあってドラムの内周部に保持されるクラッ
チプレートでは車種の仕様によってその枚数やサイズが
異なってくる。そこで、クラッチ組立体としても、仕様
に応じてその都度ドラムを含めその構成部品の寸法を変
更する必要があり、特開昭６１−４５１１８号公報では
クラッチプレートの枚数やサイズが異なる場合でも、こ
れに応じて容易に汎用可能なクラッチ用油圧サーボドラ
ムの構成を開示している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
６１−４５１１８号公報に開示されているような従来例
では、クラッチプレートの枚数やサイズが仕様によって
異なる場合、その油圧サーボドラムを構成する要素のう
ち、その内周部のインナスプラインに複数のクラッチプ
レートを保持する中筒筒状部材を変えるだけで他のクラ
ッチ構成要素を変えることなく油圧サーボドラムを構成
することができるものの、中筒筒状部材を異なる仕様に
応じて複数種類用意しておかねばならず、それだけ管理
費用がかかる。また、クラッチを動作させるためにピス
トンのストロークとして設けられるピストンとクラッチ
プレートとの間の一定すき間の設定が重要であり、実測
に応じて基準値を超えた場合はクラッチフランジを選択
して組換える必要があった。特にこのような場合に備え
て準備しておくクラッチフランジの種類を少なくするに
は、それに関連する部品の寸法公差に対し厳しい管理が
要求される。

【０００５】本発明の目的は、上述したような従来の問
題に着目し、その解決を図るべく、クラッチ機構の動作
方向に保たれるすき間を、クラッチの構成部品を変更す
ることなく自在に調整可能とした自動変速機のクラッチ
組立体を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明は、クラッチドラムの内筒部に固定された
クラッチプレートを有し、該クラッチプレートを介して
クラッチを接続状態とするためにオイルによって駆動さ
れるクラッチピストンを前記クラッチドラム内に摺動自
在に収容してなる自動変速機のクラッチ組立体におい
て、前記クラッチピストンおよび／または前記クラッチ
ドラムに、前記クラッチプレートに関連して前記クラッ
チに要求されるすき間の調整が可能な調整手段を設けた
ことを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】本発明によれば、クラッチプレートに関連して
要求されるクラッチのすき間が、クラッチピストンおよ
び／またはクラッチドラムに設けた調整手段によって調
整されるため、クラッチの仕様等によって異なる所定の
すき間が要求されてもクラッチ構成部品を選択したりす
ることなく、組立の過程ですき間を自在に調整すること
ができる。

【０００８】

【実施例】以下に、図面に基づいて本発明の実施例を詳
細かつ具体的に説明する。

【０００９】図１は本発明の第１実施例を示す。本例は
その一例として、自動変速機の変速機構に設けられるク
ラッチの１つにおいてクラッチピストン１に貫通したね
じ孔２を設け、このねじ孔２に立て込み用のねじ部材３
をクラッチ４の側から螺合すると共にその螺合の仕方に
よりねじ部材３の頭部をピストン受圧面１Ａ側から突出
させ、その突出量により摩擦係合クラッチ４に設けるす
き間が所望の一定値に保たれるよう調整可能としたもの
である。なおここで、５はその内筒部５Ａが不図示のセ
ンタサポートに回転自在に支承されると共に、その外筒
部５Ｂに不図示のベルトブレーキが巻架されるクラッチ
ドラムであり、６はクラッチドラム５の内周部に嵌合さ
れると共に自体の内周部に複数のクラッチプレート４Ａ
が植設されている中筒部材、７はリテーナリング８とク
ラッチピストン１との間に介装され、クラッチ４のしゃ
断時にクラッチピストン１をクラッチドラム５の環状壁
部５Ｃに向けて偏倚されている復帰ばねである。

【００１０】また、クラッチドラム５の内筒部５Ａには
オイル供給孔９が設けられていて、このオイル供給孔９
を介してクラッチピストン１の受圧面１Ａ側にオイルが
供給され、その油圧によりクラッチピストン１を復帰ば
ね９のばね力に抗してクラッチ４の方向に摺動せしめ、
クラッチ４を接続状態とする。１０はクラッチピストン
１に設けられているチェック弁であり、クラッチ４のし
ゃ断時にのみオイルがクラッチピストン１の受圧面１Ａ
側に戻るのを許容する。

【００１１】このように構成したクラッチ組立体におい
ては、ねじ部材３の螺合状態によりクラッチ４に設ける
すき間の調整が終ったところで、例えば図２に示すよう
にしてねじ孔２のねじ込み側の周囲部２Ａをかしめ等に
より変形させ、ねじ部材３を調整された状態に固定する
ことができる。また、このようにねじ孔２に固定された
ねじ部材３にあっては図３に示すようにクラッチ４の側
からクラッチピストン１に対してクラッチプレート４Ａ
からの反力Ｆが作用するのに対してクラッチピストン１
の受圧面１Ａ側からはねじ部材３に油圧Ｐが作用するの
でこれら相反する方向の作用力によるねじ孔２およびね
じ部材３のねじ形成部同士の圧接によってシール効果が
得られ、殊更にシールを設けなくて済む。

【００１２】図４は本発明の第２の実施例を示す。本例
は、図１に示した形態のクラッチ機構において、そのク
ラッチピストン１を、クラッチ４の接続およびしゃ断に
かかわり中筒部材６の内周面に沿って摺動する外側の第
１ピストン部材１１Ａと、復帰ばね７の一端を保持し、
クラッチドラム５の内筒部５Ａ外周面に沿って摺動する
内側の第２ピストン部材１１Ｂとに分割し、同心に形成
したこれらのピストン部材１１Ａの内周面とピストン部
材１１Ｂの外周面とを軸方向に螺合することで一体化す
るようにしたものである。１２はその双方の螺合部であ
り、螺合部１２を介して双方のピストン部材１１Ａと１
１Ｂとを螺合するにあたり、第２ピストン部材１１Ｂに
対する第１ピストン部材１１Ａの軸方向の相対位置を螺
合時に調整することで、第１ピストン部材によるクラッ
チ操作時のクラッチ４に求められるすき間を適切に調整
することができる。

【００１３】よって、その調整後は、図５に示すよう
に、螺合部１２において例えば第１ピストン部材１１Ａ
側のねじ孔の周囲に設けたフランジ部１３Ａの一部を第
２ピストン部材１１Ｂの凹部１３Ｂに向けてかしめ込む
ことにより第１ピストン部材１１Ａと第２ピストン部材
１１Ｂとを上述の状態に位置決めし、一体化させること
ができる。なお、本例においても図３によって説明した
と同じ作用で螺合部１２自体を液密に保つことができる
のはいうまでもない。

【００１４】図６は本発明の第３の実施例を示す。な
お、本例は、クラッチドラム１５内に第１クラッチ１４
Ａと第２クラッチ１４Ｂとの２組のクラッチが組込まれ
ている場合の適用例が示されている。２１Ａは第１クラ
ッチ１４Ａおよび第２クラッチ１４Ｂの接続・しゃ断に
かかわる第１クラッチピストン、２１Ｂは第２クラッチ
１４Ｂのみの接続・しゃ断にかかわる第２クラッチピス
トンである。また、２３はクラッチドラム１５にその外
筒部２３Ａが螺合され、チェック弁として機能するドリ
フトオンボールであり、その詳細を図７に示す。なお、
本例では第２クラッチピストン２１Ｂにもその軸方向に
同様のドリフトオンボール２３が組込まれている。

【００１５】このように構成したクラッチ組立体におい
ては、上述したようにクラッチドラム１５に設けたドリ
フトオンボール２３を介してオイルを第１クラッチピス
トン２１Ａの受圧面に供給することで復帰ばね７のばね
力に抗して第１クラッチピストン２１Ａおよび第２クラ
ッチピストン２１Ｂを付勢し、第１クラッチ１４Ａおよ
び第２クラッチ１４Ｂを接続させて、対応する不図示の
変速機構要素を駆動することができる。また、オイル供
給路を介してオイルを第２クラッチピストン２１Ｂと第
１クラッチピストン２１Ａとの間に送給することで第２
クラッチピストン２１Ｂのみを付勢し、第２クラッチ１
４Ｂのみを接続させて対応する変速機構要素を駆動する
ことができる。

【００１６】また、上述の第１クラッチ１４Ａおよび第
２クラッチ１４Ｂの接続・しゃ断にあたってはこれらの
クラッチ１４Ａ，１４Ｂにおけるすき間の調整が重要と
なるが、本実施例ではクラッチドラム１５および第２ク
ラッチピストン２１Ｂに組込まれるドリフトオンボール
２３の組込み時の螺合状態を図７に示すようにして調整
することで、ドリフトオンボール２３の外筒フランジ部
２３Ａを第１クラッチピストン１５側に向けて突出さ
せ、各クラッチ１４Ａ，１４Ｂにおけるすき間を所定値
に保たれるように設定することができる。また、それぞ
れのすき間が設定されたならば図７の（Ａ），（Ｂ）に
示すようにしてそのねじ込み側のねじ孔２周囲部２Ａを
かしめにより変形させて固定すればよい。

【００１７】なお、本実施例ではクラッチドラムやクラ
ッチピストンに設けるドリフトオンボールの螺合状態を
利用して、これをクラッチピストンの受圧面側に突出さ
せることにより各クラッチにおけるすき間調整を行った
が、クラッチピストンおよびクラッチの数や配置いかん
に応じて第１実施例や第２実施例に示したような調整手
段を適宜混用することが可能なことはいうまでもない。

【００１８】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、クラッチピストンおよび／または前記クラッチドラ
ムに、前記クラッチプレートに関連して前記クラッチに
要求されるすき間の調整が可能な調整手段を設けたの
で、多板型クラッチの仕様によって要求されるすき間量
をクラッチの構成部品の寸法的採択によって設定するよ
うなことがなくてすみ、また構成部品の寸法を最初から
厳しく規制する必要がなく、組立時に自在にすき間量を
調整することが可能となった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例の構成を示す断面図であ
る。

【図２】第１実施例にかかるねじ部材による調整動作を
斜視図（Ａ）、断面図（Ｂ）および調整後のかしめの状
態図（Ｃ）によって示す説明図である。

【図３】第１実施例によって調整部分が液密に保たれる
ことの説明図である。

【図４】本発明の第２実施例の構成を示す断面図であ
る。

【図５】第２実施例による調整動作をねじ締め時（Ａ）
および調整後（Ｂ）の状態で示す説明図である。

【図６】本発明の第３実施例の構成を示す断面図であ
る。

【図７】第３実施例にかかるドリフトオンボールによる
調整動作を斜視図（Ａ）、断面図（Ｂ）および調整後の
かしめの状態図（Ｃ）によって示す説明図である。

【符号の説明】

１ クラッチピストン １Ａ 受圧面 ２ ねじ孔 ３ ねじ部材 ４，１４Ａ，１４Ｂ クラッチ ４Ａ クラッチプレート ５，１５ クラッチドラム ５Ａ 内筒部 ５Ｂ 外筒部 ５Ｃ 環状壁部 ７ 復帰ばね ９ オイル供給孔 １０ チェック弁 １１Ａ，１１Ｂ ピストン部材 １２ 螺合部 ２１Ａ，２１Ｂ クラッチピストン ２３ ドリフトオンボール ２３Ａ 外筒フランジ部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クラッチドラムの内筒部に固定されたク
   ラッチプレートを有し、該クラッチプレートを介してク
   ラッチを接続状態とするためにオイルによって駆動され
   るクラッチピストンを前記クラッチドラム内に摺動自在
   に収容してなる自動変速機のクラッチ組立体において、 前記クラッチピストンおよび／または前記クラッチドラ
   ムに、前記クラッチプレートに関連して前記クラッチに
   要求されるすき間の調整が可能な調整手段を設けたこと
   を特徴とする自動変速機のクラッチ組立体。
2. 【請求項２】 前記クラッチに要求されるすき間の調整
   は、前記クラッチピストンにオイルを供給するために設
   けられるチェック弁の外套の前記オイル供給方向に対す
   る位置決めによって得られることを特徴とする請求項１
   に記載の自動変速機のクラッチ組立体。
3. 【請求項３】 前記クラッチに要求されるすき間の調整
   は、前記クラッチピストンおよび／または前記クラッチ
   ドラムに設けたねじ部材の螺締方向の位置決めによって
   得られることを特徴とする請求項１に記載の自動変速機
   のクラッチ組立体。