JPH0710819A - 新規蛍光性化合物及びその錯体 - Google Patents

新規蛍光性化合物及びその錯体

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JPH0710819A
JPH0710819A JP17757393A JP17757393A JPH0710819A JP H0710819 A JPH0710819 A JP H0710819A JP 17757393 A JP17757393 A JP 17757393A JP 17757393 A JP17757393 A JP 17757393A JP H0710819 A JPH0710819 A JP H0710819A
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Japan
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rare earth
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JP17757393A
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English (en)
Inventor
Kazumi Sasamoto
一美 佐々本
Daikichi Horiguchi
大吉 堀口
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DOUJIN KAGAKU KENKYUSHO KK
Original Assignee
DOUJIN KAGAKU KENKYUSHO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 水系で十分な強度の蛍光を発し且つ蛍光寿命
の長い安定な錯体を希土類金属イオンと形成する蛍光性
化合物を提供する。 【構成】 EDTA類似の化合物の分子内にβ- ジケトン基
を導入し、且つ蛋白質に結合可能な置換基を有する一般
式Aの化合物。 【効果】 蛍光測定法、特に時間分解蛍光測定法に有用
であり、特異的結合体に結合させて用いることができ
る。その希土類金属錯体はEDTAの添加によっても分解せ
ず高い蛍光強度を保つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蛍光測定に用いられる
新規な蛍光性化合物及びその希土類金属イオンとの錯体
に関するものである。本発明の蛍光性化合物及びそれを
配位子とする希土類金属イオンとの錯体は、蛍光分析法
における標識剤として用いることができる。
【0002】
【従来の技術】生体試料中の被分析物を定性的又は定量
的に測定するに際し、該被分析物に競合又は特異的に結
合する物質であって特定の信号を発する標識剤が結合せ
られた物質を用いる技術は、従来からよく知られてい
る。
【0003】このような用途に用いられる標識剤のひと
つとして、放射性同位体が知られており、放射性同位体
の使用により、被分析物を高い測定感度で検出すること
が可能となった。しかし、放射性同位体は、その貯蔵、
使用、処理に際して危険を伴うという大きな欠点があ
り、標識剤としての放射性同位体の使用は年々減少する
傾向にある。そして、近年になり、放射性同位体に替っ
て非放射性の標識剤の使用が急激に増加している。
【0004】非放射性標識剤の代表的なもののひとつと
して、酵素標識剤があり、特に、免疫測定法において
は、酵素標識剤を使用する方法が多く用いられるように
なってきた。しかしながら、酵素標識剤の使用には、い
くつかの大きな問題がある。
【0005】すなわち、酵素は温度等の外的環境に影響
されやすく不安定であるため、酵素標識剤を用いた測定
法は、その結果の再現性が低いこと、市販されている酵
素が概して高価であること等が挙げられる。また、免疫
測定法においては、酵素標識剤は被分析物と競合あるい
は特異的に結合する特異的結合体に結合されて用いられ
るが、酵素標識剤を特異的結合体に結合させることによ
り、酵素及び特異的結合体の活性が低下してしまうとい
う欠点がある。
【0006】酵素以外の非放射性標識剤としては、蛍光
物質があり、従来から標識剤として使用されてきた蛍光
物質としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル
クロライド、ウンベリフェロン等が挙げられる。
【0007】蛍光物質を標識剤として使用する測定法
は、蛍光現象、すなわち、ある励起光の照射により、あ
る化合物がその化合物の電子準位に基づく固有の放射光
を発する現象を利用した測定方法であり、原理的には高
感度が期待できる方法である。
【0008】しかしながら、この蛍光物質の標識剤とし
ての使用にも問題があり、励起光が引き起こすレイリー
散乱によってバックググラウンドノイズが発生してしま
うこと、血清、尿等の生体試料中に存在する被分析物を
測定する際には標識剤以外の物質に由来する多くの蛍光
が、標識剤に由来する蛍光の検出を大きく妨害してしま
うことなどである。
【0009】これらの問題点の原因としては、一般に、
従来から使用されている蛍光物質は、ストークスシフト
が小さいこと、バックグラウンド蛍光から標識剤由来の
蛍光を区別するための特別な性質は存在しないこと等が
挙げられる。このような問題が解決されるならば、蛍光
物質を標識剤として用いることは、分析分野において極
めて有力な手段となり得る。
【0010】近年になり、ある種の配位子と希土類金属
イオンにより形成される錯体が強い蛍光を発することが
見いだされた。この場合、励起光は配位子により吸収さ
れ、そのエネルギーが配位子の励起三重項状態から希土
類金属イオンに移動することにより、該希土類金属イオ
ンのf軌道電子の遷移に基づく蛍光が観測される。希土
類金属としてはユウロピウム、テルビウム、サマリウム
等が例示され、これら希土類金属自体も、固有の蛍光を
有している。
【0011】このような錯体においては、励起波長は配
位子の種類に依存し、発光波長は希土類金属の種類に依
存する。そして、このような錯体由来の蛍光は、そのス
トークシフトが少なくとも 100nm以上あり、しかも、バ
ックグラウンド蛍光の原因となる蛋白質等に由来する蛍
光の寿命が約10nsであるのに比して、その蛍光寿命は1
μs 以上のオーダーと非常に長いという利点を有する。
従って、この性質を利用すれば、前記錯体由来の蛍光を
他のバックグラウンド蛍光から完全に分解することが可
能であるため、希土類金属を中心金属イオンとする蛍光
性錯体は、標識剤として好ましいものである。
【0012】希土類金属イオンと共に錯体を形成する化
合物は、既にそのいくつかが公知である。
【0013】そのひとつとして、ユウロビウムイオン、
サマリウムイオンと共に錯体を形成するβ- ジケトンが
挙げられる。
【0014】この錯体については、β- ジケトンは、 2
価の配位子であり、ユウロピウムイオンには通常 3分子
以上で配位することをはじめとして、諸性質が報告され
ている(Krishuna C. Joshi et al.: Journal of Fluor
ine Chemistry, 13, p.261-265, 1979; Livingstone S.
E. et al.: Aust. J. Chem., 29, p.1845-1850, 1976;
黄漢国ら: 日本化学会誌、1, p.66-73, 1981等)。
【0015】また、このようなβ- ジケトン錯体を標識
剤として利用する試みとして、特公昭62-18868号公報に
は、β- ジケトンとユウロピウムイオン又はテルビウム
イオンによって形成された錯体を結合させた抗体につい
ての記載がある。
【0016】しかし、β- ジケトン・希土類金属イオン
錯体の安定性は低く、実際に免疫測定等における標識剤
として利用することはきわめて困難である。
【0017】希土類金属イオンとEDTAにより形成される
錯体についても、Nakatani H. らの報告(The Review o
f Physical Chemistry of Japan, 42, p.103-107, 197
2)など数多くの報告がある。
【0018】また、このようなEDTA錯体を標識剤として
利用する試みとして、特開昭 60-500767号公報に、ラン
タニドイオンと強力に配位結合し、得られた錯体を抗原
や抗体に結合させることのできる官能基を有するEDAT誘
導体についての記載がある。
【0019】しかし、EDTA・希土類金属イオン錯体は、
錯体自体の安定度は優れているが、錯体となっても蛍光
増幅性がないという致命的な欠点がある。すなわち、ED
TA・希土類金属錯体においては、EDTAにエネルギーの吸
収伝達能力がなく、且つ希土類金属由来の蛍光は強度が
きわめて小さいので、前記した従来の蛍光物質を使用し
た場合と同様の欠点がある。
【0020】より改良された蛍光性化合物として、Diam
andis E. P. らの報告(Clin. Chem., 33, p.2000, 198
7; Journal of Immunological Methods, 112, p.43, 19
88)中にみられる4,7-ビス(クロロスルフォフェニル)
-1,10-フェナンスロリン- 2,9-ジカルボン酸がある。
【0021】Diamandis らのこの化合物の特徴は、フェ
ナンスロリン環の窒素原子側で希土類金属イオンに配位
し、スルフォニルクロリド基により蛋白質のアミノ基と
結合することにあるが、この化合物と希土類金属イオン
とで形成される錯体の安定度は期待されるよりも小さ
い。さらに、この化合物は、その立体構造から考えても
理解されるように、水性溶媒中において蛍光を測定する
場合に常に懸念される水分子による蛍光消光作用を完全
に取り除くようには設計されていない。
【0022】Alpha B.らや Blasse G.は、クリプタンド
と希土類金属イオンによって形成される錯体の蛍光につ
いて述べている(Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26,
p.266-267, 1987; Chemistry of Materials, 1, p.294-
301, 1989)。
【0023】クリプタンドは、錯体としたときの安定度
や蛍光性において比較的好ましい性質を有している化合
物であるが、その基本構造中に、蛋白質と結合するため
の官能基を導入することが困難であるという問題があ
る。また、クリプタンドの基本構造の中心に金属イオン
が取り込まれてしまえば、形成された錯体は安定である
が、錯体を形成させる工程、すなわちキレート化させる
工程として、高温で長時間反応させるなどの操作を組み
込まなければならない等の問題がある。
【0024】前述の公知の化合物の他にも、キレート剤
となり得る大環状化合物として、例えばクラウンエーテ
ルや大環状ポリアミン等の化合物が知られている。
【0025】これら環状構造を有する化合物は、金属イ
オンと共に比較的安定な錯体を形成し得るが、環のコア
サイズと配位すべき中心金属のイオン半径とが一致して
いなければならないため、中心金属と環状構造を有する
化合物との組合せは著しく限定されてしまう。さらに、
ビスジピリジルや大環状ポリアミン等は、比較的平面的
な構造をとるため、二次元的に中心金属に配位すること
しかできず、三次元的に配位できるEDTA等を配位子とす
る錯体よりも、錯体としての安定性が低いことが予想さ
れる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
実情に鑑みてなされたものであり、水系でも十分な強度
の蛍光を発し、蛍光寿命の長い安定な錯体を希土類金属
イオンと共に容易に形成できる蛍光性化合物と、該化合
物と希土類金属イオンによって形成される錯体を目的と
する。
【0027】
【課題を解決するための手段】β- ジケトンは先にも述
べているように二価の配位子であるため、希土類金属と
の錯体の安定度が極めて低く、時間分解蛍光測定法に使
用するには使い難い化合物である。一方EDTAは錯体の安
定性は極めて高いものの紫外光の吸収能がないため、希
土類金属との錯体の蛍光強度が低い。
【0028】本発明はβ- ジケトンの持つ高エネルギー
伝達能を保持したまま、EDTA のような錯体の安定性の高
い化合物の開発を行なった。その結果、EDTA 類似の化合
物の分子内にβ- ジケトン基を導入することにより、水
溶液中で希土類金属と非常に安定な錯体を形成し、極め
て高い蛍光強度を発する配位化合物を合成することに成
功した。
【0029】すなわち、本発明は、下記の一般式Aで示
される新規蛍光性化合物である。
【0030】
【化5】
【0031】式A中、R1及びR2は下記式B、R3は水素原
子又は下記式C、R4はそれぞれ独立に水素原子、アルキ
ル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カル
ボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ
基、アミド基、スルフォンアミド基、スルフィド基、ス
ルフォキシド基、スルフォン基、ニトロ基、ハライド原
子、メルカプト基、又はカルボニル基である。なお、R4
は、隣接するR4同士が結合して縮環し、フェニル環の二
つ又は三つの炭素原子を含む芳香環又は複素環となって
いてもよい。
【0032】
【化6】
【0033】ここでR5は化8に示す蛋白質に結合可能な
置換基から選択される。
【0034】
【化7】
【0035】ここで、R5は上記式Bにおけるものと同じ
く化8に示す蛋白質に結合可能な置換基から選択され
る。
【0036】
【化8】
【0037】本発明の化合物は、以下の実施例に示すよ
うに N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジア
ミン等を原料として公知の反応を利用して合成できる。
【0038】
【実施例】実施例1〜3の化合物は図1〜3に示す合成
経路に従い合成した。
【0039】実施例1 N,N'- ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン
-N,N'-ビス(3-フェニルプロパン-1,3- ジオン)(化合
)の合成(図1):文献〔L'Epalattenier,F., Mur
ase,I. & Martell,A.E.: J. Am. Chem. Soc.,89, p.837
-843(1967) 〕に従って合成した N,N'-ビス(2-ヒドロ
キシベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸ジエチル
(化合物)4.4gとアセトフェノン2.4gをTHF 20mlに溶
解し、水酸化ナトリウム(油性、60 %)2.5gを加えた。
60℃で 1時間加熱した後、室温まで冷却して酢酸4 mlを
添加した。エバポレート後クロロホルム 100mlに溶か
し、水 100mlで洗った。有機相を脱水濃縮後、残分にメ
タノール20mlを加えた。析出した結晶を濾取し、さらに
メタノールより再結晶して N,N'-ビス(2-ヒドロキシベ
ンジル)エチレンジアミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロ
パン-1,3- ジオン)(化合物)2.2gを得た。
【0040】得られた化合物が目的物であることは、赤
外吸収スペクトル(日立270-30型分光光度計)、核磁気
共鳴スペクトル(ブルッカー製 AC-200P型磁気共鳴装
置)及び分子量測定装置(JEOL製JMS-AX505W型)により
確認した。
【0041】実施例2 N,N'- ビス(2-ヒドロキシ- 5-アミノベンジル)エチレ
ンジアミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロパン-1,3- ジオ
ン)二塩酸塩(化合物)の合成(図2):文献〔L'Ep
alattenier,F., Murase,I. & Martell,A.E.: J. Am. Ch
em. Soc.,89, p.837-843(1967) 〕に従って合成した N,
N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,
N'-ジ酢酸(化合物)38.8g を硫酸58ml、硝酸28mlの
混合液に徐々に加え、一夜撹拌した後、反応液を氷水に
注いだ。水酸化ナトリウム水溶液にて中和して、pH 2と
し、析出した結晶を濾取し、乾燥し、 N,N'-ビス(2-ヒ
ドロキシ- 5-ニトロベンジル)エチレンジアミン-N,N'-
ジ酢酸(化合物)31.1g を得た。
【0042】得られた化合物23.9g をとり、エタノー
ル200 mlに溶解し、硫酸5 mlを加え、一夜還流した。エ
バポレーターで濃縮した後、クロロホルム200 mlに溶解
し、水及び 5%炭酸水素ナトリウム水溶液でそれぞれ洗
滌した。もう一度濃縮した後、クロロホルム・メタノー
ルを溶媒として、シリカゲルクロマトグラフィーにより
精製し、 N,N'-ビス(2-ヒドロキシ- 5-ニトロベンジ
ル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸ジエチル(化合物
)14.7g を得た。
【0043】得られた化合物 13.3gをとり、エタノー
ル150 mlに溶解し、 5%パラジウム・カーボンを触媒と
して、水素圧下に撹拌して還元し、 N,N'-ビス(2-ヒド
ロキシ- 5-アミノベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二
酢酸ジエチル(化合物)8.1gを得た。
【0044】化合物7.1gをとり、ジオキサン50mlに溶
解し、二炭酸ジ-tert-ブチル7.2gを加え、ついでトリエ
チルアミン 5mlを加えた。一夜室温にて撹拌後、濃縮
後、水100 mlを加えた。クロロホルム 150mlにて抽出を
行ない、脱水した後濃縮した。残分を酢酸エチル・ベン
ゼンを溶媒としてシリカゲルクロマトグラフィーにて精
製し、 N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルオキシ
カルボニルアミノベンジル)エチレンジアミン-N,N'-ジ
酢酸ジエチル(化合物)6.5gを得た。
【0045】得られた化合物6.1gとアセトフェノン2.
1gを THF80mlに溶解し、水素化ナトリウム(油性、60
%)2.2gを加えた。60℃にて 3時間加熱撹拌後、室温ま
で冷却して酢酸 4mlを添加した。エバポレート後、 クロ
ロホルム 100mlに溶かし、水 100mlで洗った。クロロホ
ルム溶液を脱水、濃縮し、メタノール20mlを加え、析出
した結晶を瀘取し、 N,N'-ビス(2-ヒドロキシ-5-tert-
ブチルオキシカルボニルアミノベンジル)エチレンジア
ミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロパン- 1,3-ジオン(化
合物)2.1gを得た。
【0046】得られた化合物2.0gをTHF 80mlに溶解
し、塩酸10mlを加え、40℃にて 2時間撹拌した。反応溶
液を濃縮し、水50mlを加えて析出した結晶を瀘取した。
N,N'-ビス(2-ヒドロキシ- 5-アミノベンジル)エチレ
ンジアミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロパン- 1,3-ジオ
ン)二塩酸塩(化合物)1.1gを得た。得られた化合物
が目的物であることは、赤外吸収スペクトル、核磁気共
鳴スペクトリル、分子量測定装置により確認した。
【0047】実施例3 N,N'- ビス(2-ヒドロキシベンジル)- 1-(4-アミノベン
ジル)エチレンジアミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロパ
ン- 1,3-ジオン)塩酸塩(化合物)の合成(図3):
文献〔Mathias,C.J., Sun.Y., Welch,M.J., Connett,J.
M., Philpott,G.W. &Martell,A.E.: Bioconjugate Che
m., 1, p.204-210(1990)〕に従い合成したN,N'- ビス
(2-トリメチルシリルヒドロキシベンジル)- 1-(4-アミ
ノベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸ジエチル
(化合物)5.8gをエタノール 150mlに溶解し、5 %パ
ラジウム・カーボンを触媒として、水素圧下に撹拌して
還元を行ない、N,N'- ビス(2-ヒドロキシベンジル)- 1
-(4-アミノベンジル) エチレンジアミン-N,N'-ジ酢酸ジ
エチル(化合物)4.9gを得た。
【0048】得られた化合物4.4gをジオキサン50mlに
溶解し、二炭酸ジ-tert-ブチル2.1gを加え、次いでトリ
エチルアミン 5mlを加えた。一夜室温にて撹拌後、濃縮
し、水 100mlを加えた。 クロロホルム 150mlにて抽出を
行ない、脱水後濃縮した。残分を酢酸エチルベンゼンを
溶媒としてシリカゲルクロマトグラフィー精製した。N,
N'- ビス(2-ヒドロキシベンジル)-1-(4-tert-ブチルオ
キシカルボニルアミノベンジル)エチレンジアミン-N,
N'-ジ酢酸ジエチル(化合物)3.5gを得た。
【0049】得られた化合物3.2gとアセトフェノン0.
6gをTHF 30mlに溶解し、水素化ナトリウム(油性、60
%)0.5gを加え,60℃で 3時間加熱撹拌した後、室温ま
で冷却し、酢酸 1mlを添加した。エバポレート後、クロ
ロホルム 50ml に溶かし、水50mlで洗った。クロロホル
ム溶液を脱水、濃縮し、メタノール 100mlを加え、析出
した結晶を瀘取し、N,N'- ビス(2-ヒドロキシベンジ
ル)-1-(4-tert-ブチルオキシカルボニルアミノベンジ
ル)エチレンジアミン-N,N'-ビス(3-フェニルプロパン
- 1,3-ジオン)(化合物)1.5gを得た。
【0050】得られた化合物1.4gをTHF 50mlに溶解
し、塩酸 1mlを加え、40℃にて 2時間撹拌した。反応溶
液を濃縮し、水50mlを加えて析出した結晶を瀘取した。
【0051】N,N'- ビス(2-ヒドロキシベンジル)-1-
(4-tert- アミノベンジル)エチレンジアミン-N,N'-ビ
ス(3-フェニルプロパン-1,3- ジオン)塩酸塩(化合物
)1.2gが得られ、このものが目的化合物であること
は、赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトリル、分
子量測定装置により確認した。
【0052】実施例4 N,N'- ジ(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-
N,N'-ビス(3-フェニルプロパン-1,3- ジオン)(化合
)のユウロピウム錯体蛍光特性の検討。
【0053】(1)吸収スペクトルの測定:実施例1に
て合成した化合物 5.9mgをジメチルスルホキシド10ml
に溶解した溶液0.5ml と塩化ユウロピウム六水和物36.6
mgを水 100mlに溶解した溶液0.5mlとを混合し、0.5Mの
トリス緩衝液(pH8.2 )5ml を加え、水で全量を50mlと
した。この水溶液の紫外吸収スペクトルを緩衝水溶液を
対象溶液として、分光光度計で測定した。また比較とし
て塩化ユウロピウムを含まない溶液を調製して測定し
た。結果は図4に示した。
【0054】図4が示すように、ユウロピウムイオンの
存在により化合物の紫外吸収スペクトルが変化してい
ることをより、化合物はユウロピウムと錯体を形成し
ているがわかる。
【0055】(2)励起及び蛍光スペクトルの測定:化
合物 5.9mgをジメチルスルホキシド10mlに溶解した溶
液50μl と塩化ユウロピウム六水和物36.6mgとを水 100
mlに溶解した溶液50μl を混合し0.5Mトリス緩衝液(pH
8.2 )5ml を加え、水で全量を50mlとした。この水溶液
の励起・蛍光スペクトルを蛍光分光光度計(日立650-60
型スペクトロメーター)で測定した。励起スペクトルを
図5に、蛍光スペクトルを図6に示した。
【0056】図6に見られる蛍光は明らかにユウロピウ
ムの蛍光である。このことにより化合物は希土類金属
に励起エネルギーを伝達するに適した配位子であること
がわかる。
【0057】(3)蛍光のpH依存性の測定:上記の蛍光
スペクトルを測定した溶液と同じ調製法で、添加するト
リス緩衝液のPHのみを変えて溶液を調製し、蛍光スペク
トルを測定した。pHに対する蛍光強度をプロットして、
蛍光強度のpH依存性を見たのが図7である。図7よりpH
7〜10で安定な蛍光強度を示していることが分かる。こ
のpH範囲は生化学的に利用可能な範囲である。
【0058】(4)錯体組成比の測定:化合物 5.9mg
をジメチルスルホキシド10mlに溶解した溶液50μl に塩
化ユウロピウム六水和物36.6mgを水100ml に溶解した溶
液を 0〜100 μl の範囲で添加し、水で50mlとして蛍光
スペクトルを測定した。ユウロピウム濃度の化合物
濃度の比に対する蛍光強度をプロットとしたものを図8
に示す。ユウロピウムと化合物のモル比が1:1のと
ころで蛍光強度がほぼ一定となっていることより、ユウ
ロピウムと化合物は1:1の錯体であることがわか
る。
【0059】(5)蛍光のEDTAによる安定性:化合物
5.9mgをジメチルスルホキシド10mlに溶解した溶液50μ
l と塩化ユウロピウム六水和物36.6mgを水100ml に溶解
した溶液50μl とを混合し、0.5Mのトリス緩衝液(pH8.
2 )5ml を加え、次いでEDTA二ナトリウム塩二水和物3
7.2mlを水で全量を 100mlに溶解した水溶液を 0〜0.5ml
の範囲で添加し、それぞれ水で50mlとして蛍光スペク
トルを測定した。EDTA濃度の変化に対してユウロピウム
錯体の蛍光強度をプロットしたものが図9である。
【0060】EDTAの添加により蛍光強度が低くならない
ことより、化合物のユウロピウム錯体の安定度は非常
に高いことがわかる。すなわち、EDTAの添加により錯体
が安定であることから、化合物のユウロピウム錯体を
抗原抗体反応等に十分使用可能であることがわかる。
【0061】
【発明の効果】本発明の新規化合物は、蛍光測定法、特
に時間分解蛍光測定法に使用するに際して極めて有用で
あり、特異的結合体に結合させて用いることのできる新
規の蛍光性化合物であり、本発明化合物の希土類金属の
錯体は、EDTA の添加によっても分解することなく極めて
高い蛍光強度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に示す本発明の化合物の合成経路図
である。
【図2】実施例1に示す本発明の化合物の合成経路図
である。
【図3】実施例1に示す本発明の化合物の合成経路図
である。
【図4】化合物及びそのユウロピウム錯体の紫外線吸
収スペクトル図を示す。
【図5】化合物のユウロピウム錯体の励起スペクトル
図である。
【図6】化合物のユウロピウム錯体の蛍光スペクトル
図である。
【図7】化合物のユウロピウム錯体の蛍光強度のpHに
よる相対変化を示す。
【図8】化合物とユウロピウムのモル比変化に対する
錯体の相対蛍光強度の変化を示す。
【図9】EDTA濃度の変化に対するユウロピウム錯体の蛍
光強度の変化を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式Aで示される新規蛍光性化
    合物。 【化1】 〔式A中、R1及びR2は下記式B、R3は水素原子又は下記
    式Cで表わされ、R4はそれぞれ独立に水素原子、アルキ
    ル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カル
    ボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ
    基、アミド基、スルフォンアミド基、スルフィド基、ス
    ルフォキシド基、スルフォン基、ニトロ基、ハライド原
    子、メルカプト基、又はカルボニル基である。なお、R4
    は、隣接するR4同士が結合して縮環し、フェニル環の二
    つ又は三つの炭素原子を含む芳香環又は複素環となって
    いてもよい。〕 【化2】 〔R5は化3に示す蛋白質に結合可能な置換基から選択さ
    れる。〕 【化3】 〔R5は上記式Bにおけるものと同じく化3に示す蛋白質
    に結合可能な置換基から選択される。〕 【化4】
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の蛍光性化合物と希土類
    金属イオンとにより構成される錯体。
  3. 【請求項3】 希土類金属イオンが、ユウロピウムイオ
    ン、テルビウムイオン、サマリウムイオンから選択され
    る一種である請求項2に記載の錯体。
JP17757393A 1993-06-25 1993-06-25 新規蛍光性化合物及びその錯体 Pending JPH0710819A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0794174A3 (en) * 1996-03-08 1997-11-19 Suzuki Motor Corporation Labeled reagents for use in immunoassays and fluorescent compounds and complexes used therein
WO2011125627A1 (ja) 2010-04-01 2011-10-13 日立化成工業株式会社 希土類金属錯体

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EP0794174A3 (en) * 1996-03-08 1997-11-19 Suzuki Motor Corporation Labeled reagents for use in immunoassays and fluorescent compounds and complexes used therein
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