JPH07102153B2 - 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法 - Google Patents

血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法

Info

Publication number
JPH07102153B2
JPH07102153B2 JP4042223A JP4222392A JPH07102153B2 JP H07102153 B2 JPH07102153 B2 JP H07102153B2 JP 4042223 A JP4042223 A JP 4042223A JP 4222392 A JP4222392 A JP 4222392A JP H07102153 B2 JPH07102153 B2 JP H07102153B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
thin film
cancer cells
vascular endothelial
cancer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP4042223A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05211893A (ja
Inventor
知子 岡田
洋明 奥野
洋司 三井
美枝子 小林
Original Assignee
工業技術院長
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 工業技術院長 filed Critical 工業技術院長
Priority to JP4042223A priority Critical patent/JPH07102153B2/ja
Publication of JPH05211893A publication Critical patent/JPH05211893A/ja
Publication of JPH07102153B2 publication Critical patent/JPH07102153B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な血管内皮モデル
調製用器及び当該器を用いる新規な癌細胞の転移能の測
定方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】医療技
術の飛躍的な進歩にもかからわらず癌で死亡する人が後
を絶たないのは、癌の転移を十分に抑制できないという
点が大きい。癌の転移機構を解明するための基礎実験で
は、実験動物に癌細胞を投与して、転移形成臓器の転移
結節数を計測する方法が広く行われているが、大抵の癌
細胞では転移巣形成までに最も短くても2−3週間、多
くの場合4−6週間を要するので、測定に非常に時間が
かかり不都合である。
【0003】そこで、これよりも早期に結果のわかる試
験管内における測定系が用いられるようになった。例え
ば、Terranova らが穴のあいた膜でチェンバーを上下に
区切り、上のチェンバーに細胞を入れ下のチェンバーに
走化性化学物質を入れて細胞を誘引し、一定時間後に膜
を取り出して固定染色し、誘引されて膜の穴を通過しよ
うとしている細胞数を計測する方法を報告している (Pr
oc. Natl. Acad. Sci., USA. Vol.83, pp.465-469, 198
6)。また癌細胞の運動能の測定法としては、同様のチェ
ンバーを使用して、膜を細胞外マトリクス成分の未精製
混合物であるマトリゲルでコートし、癌細胞を加えて培
養して膜の穴を通過中の細胞を計測する方法が広く用い
られている。しかしながら、かかる既存の方法において
は、癌細胞固有の運動性のみが考慮されており、癌の転
移において非常に重要な血管内皮細胞との相互作用につ
いては全く考慮されておらず、生体内での癌細胞の動態
を的確に反映しているとはいい難い。
【0004】そこで実験動物を用いることなく、試験管
内でも迅速・的確に生体内の癌細胞の動態を把握するこ
とのできる測定方法の確立が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
ついて鋭意検討を重ねた結果、細胞外マトリクスをコー
ティングした薄層に血管内皮細胞を一層培養することで
血管内皮類似の状態をつくり出すことが可能であり、さ
らに、かかる血管内皮モデルを用いることにより、癌細
胞の体内動態をより的確に反映して転移能を測定し得る
ことを見出し本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、細胞外マトリクス成
分で上面をコーティングした細孔を有する薄膜を筒状部
分の底面に配置したことを特徴とする血管内皮モデル調
製用器、及びかかる血管内皮モデル調製用器をウェルの
底面と当該調製用器の薄膜部分が接触しないようにウェ
ル上に配置し、配置した当該血管内皮モデル調製用器の
底面の薄膜上に血管内皮細胞を培養液中で一層に培養し
た後、さらにその上に癌細胞を蒔いて培養して、当該血
管内皮細胞間隙と薄膜の細孔とを貫通して下のウェルに
落下する癌細胞の数を計測することを特徴とする、癌細
胞の転移能の測定方法を提供するものである。
【0007】以下、上記発明について詳細に説明する。 (1) 先ず、本願第1の発明である血管内皮モデル調製
用器について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発
明血管内皮モデル調製用器の一実施態様の断面図であ
る。図1において本発明血管内皮モデル調製器Aは、当
該調製器Aの筒状部分2及び薄膜部分3を懸垂するため
の懸垂部1でウェルBの延出部分に支持されて懸垂され
ている。
【0008】また、本発明血管内皮モデル調製器Aの懸
垂部1は、ウェルBの延出部分に支持されて、筒状部分
2及び薄膜部分3を懸垂可能であればその形状・素材は
特に限定されず、例えば形状としてフランジ構造をとる
ことも可能であるし、複数の懸垂腕によって懸垂するこ
とも可能である。また、本発明血管内皮モデル調製器A
の上部に取り外し用の切り込みや突起又は、ウエルに固
定するための突起を設けることもできる。素材として
は、ガラス、金属、合成樹脂等いずれをも用いることが
可能であるが後述する筒状部分2の素材と同じ素材で筒
状部分2と一体として成型されるか、筒状部分2の素材
と接着可能な素材を用いるのが好ましい。筒状部分2は
ウェルB中に当該モデルAを懸垂した場合に薄膜部分3
を、本発明血管内皮モデル調製器の所期の効果を発揮さ
せることができる限りにおいて、その形状・素材は特に
限定されない。例えば形状として円筒構造、すり鉢構造
等を採ることが可能であり、素材もガラス、金属、合成
樹脂等を広く用いることができる。ただし倒立顕微鏡で
観察しやすく、かつ比較的軽量であることを考慮すれば
ガラス又は光透過性を有する合成樹脂が好ましい。薄膜
部分3は、細孔を有する薄膜3'及び細胞外マトリクスを
コーティングしたコーティング部分3"とからなる。細孔
を有する薄膜3'の素材は、透明若しくは半透明であり、
培養する細胞に対して毒性を有さず、かつ培地に対して
不溶で細胞培養に耐え得る強度を有することが条件とさ
れ、その代表的素材としてポリカーボネートを挙げるこ
とができる。また細孔の直径は、6〜10μm 程度であ
り、測定しようとする癌細胞の種類の大きさにある程度
依存する細孔の密度として、1〜2×105 pores/cm2
度のものより用いることができ、可能な限り多数である
のが好ましい。よってメッシュ構造を採ることもでき
る。なお、細孔を有する薄膜は、市販品を用いることも
できるし、所望する細孔を有する薄膜を調製することも
できる。なお、かかる細孔のあけ方は特に限定されず、
通常公知の方法を用いることができる。例えば、ポリカ
ーボネイト膜に電子線を当てて小孔をあけて、かかる小
孔を薬剤で腐食させて拡大する方法を挙げることができ
る。コーティングする細胞外マトリクス成分としては、
通常公知の成分、例えばラミニン、エクストラセルラー
マトリクス、ゼラチン、フィブロネクチン、ヴィトロネ
クチン等を例示することができる。採用する細胞外マト
リクス成分の種類は、企図する血管内皮モデルの種類に
応じて適宜選択されるが、通常の血管内皮環境に近いモ
デルを企図する場合には、種々の細胞外マトリクス成分
の混合物であるエクストラセルラーマトリクスを用いる
ことが好ましい。コーティング方法は上層に培養する内
皮細胞によって異なるがそれぞれ通常公知の方法を用い
ることができる。例えば、内皮細胞としてヒト臍帯由来
血管内皮細胞の培養を予定する場合には、特定の細胞外
マトリクス成分を20μg/ml程度に調製して、これを薄
膜上に50〜100μl程度さらし、乾燥させ、その後、リ
ン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する方法を挙げる
ことができる。
【0009】なお、上記血管内皮モデル調製器Aとウェ
ルBは予め固定されていてもよいし、脱着可能であって
もよい。また、図1における懸垂構造に限定されるもの
でなく、薄膜部とウェルの底部に間隔が設けられている
限りにおいて、その態様を問うものでなく、例えば薄膜
部とウェルの底部を脚構造により固定することもでき
る。さらにウェルの素材は外部より観察可能な程度透明
な素材を、例えば、ガラス、アクリル、ポリスチレン等
を用いることが必要である。
【0010】次に、当該血管内皮モデル調製器を用いた
血管内皮モデルの調製は、例えば図1において、当該調
製器Aの薄膜部3の上面まで細胞培養培地5で満たし、
血管内皮細胞4をコーティング部分3"の上面に一層に培
養することによって行なわれる。ここで用いられる血管
内皮細胞の種類は、特に限定されず、例えばヒト臍体由
来血管内皮細胞、ラット胚の形質転換体等を用いること
が可能であり、培養方法としては、通常公知の方法を用
いることが可能であり、例えば、ヒト臍帯由来血管内皮
細胞の場合には、内皮細胞をヒト臍体より「機能細胞の
分離と培養」(丸善(株)、三井洋司他編)に従って分
離して、市販の組織培養培地に、ウシ胎児血清等の血清
成分を15%程度、内皮細胞の増殖因子、及びヘパリン等
を加えた培地で上記コーティング済み薄膜の上に通常の
組織培養条件に従い一層培養することができる。
【0011】この調製された血管内皮モデルは、後述す
る癌細胞の転移能の測定や、血栓形成等の種々の血管内
壁の異常に起因する疾患の機序解明等に広く応用するこ
とが可能である。 (2) 次に、本願第2の発明である上記血管内皮モデル
調製用器を用いた癌細胞の転移能の測定方法について説
明する。
【0012】本測定方法は、前記の血管内皮モデル調製
用器によって調製した血管内皮モデルにおいて、血管内
皮細胞単層培養層の上部に癌細胞を蒔き、これを培養し
て、当該血管内皮細胞間隙と薄膜の細孔とを貫通して下
のウェルの底部に落下する癌細胞の数を計測することに
より行なわれる。本測定方法の対象となる癌細胞は、特
にその種類は限定されず、癌細胞株として確立された細
胞や生検により人体により分離された細胞を用いること
ができる。
【0013】一般に転移能、すなわち浸潤能を有する癌
細胞は、血管内皮細胞間隙と薄膜の細孔とを貫通してそ
の浸潤能に応じてウェルの底部に落下し、転移能を有さ
ない正常細胞は落下しないので、単位時間あたりの落下
細胞数を計測すれば概ね癌細胞の転移能を測定すること
が可能である。かかる測定は、ウェルの細胞数を直接倒
立顕微鏡で計測することにより行なうことができる。こ
の方法は経時的な癌細胞のウェルへの落下を特定するこ
とができ、有利である。
【0014】また、さらにウェルに落ちてきた細胞が、
内皮細胞ではなく癌細胞であることを確認するために、
内皮細胞若しくは癌細胞を特異的に標識する標識体で標
識して確認することもできる。内皮細胞を特異的に標識
する標識体としては、例えばハリエニシダレクチン (UE
A-1;Ulex europeus Agglutinin) のように内皮細胞に
特異的な親和性を有する糖タンパクをFITC等の蛍光
物質に代表される標識物質で標識したものや、内皮細胞
に特異的に結合する抗体を酵素やラジオアイソトープで
標識したものを例示することができる。また、癌細胞を
特異的に標識する標識体としては、測定の対象とする癌
細胞に特異的に結合する抗体を酵素やラジオアイソトー
プで標識したものを例示することができる。計測方法
は、用いた標識体に応じた通常公知の方法に従うことに
より行なうことができる。
【0015】さらに、薄膜上の血管内皮細胞と癌細胞の
様子を直接薄膜をとり出し観察することができる。かか
る観察は走査電子顕微鏡により行なうことができる。標
本の調製は、通常公知の方法、例えば培養済薄膜をグル
タルアルデヒド、オスミウム酸で固定後、50%から100
%のエタノールで順次脱水し、臨界点乾燥後、金蒸着を
行なう方法を採ることができる。
【0016】なお、本発明測定方法に係る測定系におい
ては、癌の転移の促進・抑制に関連すると考えられる種
々の物質の添加を行ない、かかる関連物質の癌転移に対
する影響を調べ、ガン転移抑制薬のスクリーニングにも
用いることが可能である。
【0017】
【実施例】以下、実施例等により、本発明をさらに具体
的に説明する。
【0018】
【実施例1】 本発明血管内皮モデル調製用器の作成 図1に示す本発明血管内皮モデル調製用器Aを以下の手
順で作成した。まず、0.5mmの厚さを有する透明なプラ
スチックス製の一端の外径が1.2cmで、他の一端の外径
が1cm、及び深さが1.5cmのすりばち型の円筒を筒状部
分2として用い、この外径が1.2cmの一端に、2mmの幅
の切れ込みを入れた。同じく0.5mmの厚さを有する透明
なプラスチックス製の内径が1.2cmで外径が1.8cmであ
るドーナツ型円盤を市販の接着剤で接着して、フランジ
1を有するすりばち型の円筒を作成した。そして、フラ
ンジ1を有さない円筒の一端に、細胞外マトリクス成分
をコーティングした孔径10.0μm の細孔を有するポリカ
ーボメイト膜(ニュクリポアー・メンブレンフィルタ
ー、野村マイクロサイエンス社製)を、市販の接着剤で
接着して、円筒の外側にはみ出した余分な部分を切り落
として、薄膜部分3を有する本発明血管内皮モデル調製
用器Aを作成した。
【0019】そして、当該血管内皮モデル調製用器を、
直径1.6cmの24穴プレート(COSTAR社製)のホー
ル部分に乗せて、以下に述べる実施例に供した。なお、
コーティングした細胞外マトリクスは、すべてヒト由来
で、その内ラミニン及びビトロネクチンは宝酒造社製で
あり、フィブロネクチンはSIGMA社製であり、エク
ストラセルラーマトリクスはCollaborative Research I
ncorporated 社製のものを使用した。そして、ラミニ
ン、ビトロネクチン、又はエクストラセルラーマトリク
スをコーティングする場合は各々10μg/mlに、フィブ
ロネクチンをコーティングする場合には 200μg/mlに
調製して、上記ポリカーボネイト膜にコーティングし
て、乾燥後、PBSで2回洗浄して、上記コーティング
処理ポリカーボネイト膜を調製した。
【0020】
【実施例2】 (1)上記実施例1で作成した本発明血管内皮モデル調
製用器の薄膜部分の上面に、継代培養したヒト臍帯血管
内皮細胞を、前記「機能細胞の分離と培養」(丸善
(株)、三井洋司他編)記載の方法に従い、0.02%ED
TA−PBS及びトリプシン−EDTA(Difco 社製)
で処理して分離後、8×104個程度均等に蒔き、その後
MCDB151 培地(SIGMA社製)に15%のFCS
(ウシ胎児血清)、2.5%の内皮細胞の増殖因子である
ECGS、及び5μg/mlの割合でヘパリン(SIGM
A社製)を加えた培養培地で満たしたウエル中で、37℃
・5% CO2 条件下で24時間培養して血管内壁モデルを調
製した。 (2) 上記により得られた種々の細胞外マトリクス成分
をコーティングした薄膜を用いた血管内壁モデルの一層
培養した血管内壁細胞の上部に、肺に高転移性であるこ
とが知られているヒト繊維肉腫細胞HT1080(国立衛生
試験所細胞バンクより入手)を植え付け、MEM培地
(ニッスイ社製)に10%のウシ胎児血清(FCS)と1
%の非必須アミノ酸(GIBCO 社)を加えた培地で上記の
血管内壁細胞の一層培養過程と同一条件で24時間培養し
て、ウエルに落ちてきた顕微鏡一視野当り(1000倍)の
細胞数をその後、経時時にカウントした。結果を表1に
示す。
【0021】
【表1】 この結果、膜のコーティング剤によって浸潤細胞数は大
きく変化することが判明した。すなわち、ラミニン、エ
クストラセルラーマトリクスによって促進され、フィブ
ロネクチン、ヴィトロネクチンによって抑制された。内
皮細胞を一層培養せず、直接HT1080を細胞外マトリク
スでコーティングした薄膜に培養した場合にもこの傾向
は変わらなかった。よってかかる細胞外マトリクスの種
類による浸潤細胞数の違いは、癌細胞の側の性質による
ことが判明した。
【0022】
【実施例3】次に、本発明血管内皮モデル調製用器の薄
膜部分を通過する細胞は、正常細胞は含まず癌細胞の
み、すなわち生体内の血管壁の状態を反映することを示
すために、血管内皮細胞に特異的な親和性を有するハリ
エニシダレクチン (Ulex euro-peus Agglutinin)UEA
−1のフルオレセインイソチアネート (FITC) の標
識体であるFITC-UEA-I (E. Y. Laboratoris 社製) で薄
膜部分を通過した細胞を標識してその蛍光強度をセルソ
ーターEPICS-CS(エピックス社)にて測定した。
【0023】なお、細胞外マトリクス成分としてラミニ
ンを用い、血管内皮細胞としてはヒト臍体由来血管内皮
細胞を用い、その他の条件は実施例2と同一にして、H
T1080細胞培養後又は2日後のウェル底に存在する細胞
に上記FITC-UEA-Iを通常公知の方法に従い結合させて、
その蛍光分布を測定した。結果を図2に示す。図2にお
いて、対照として当該血管内皮細胞及びHT1018にFITC
-UEA-Iを結合させて、それらの蛍光分布の測定結果も同
様に示した。
【0024】その結果薄膜部分を通過した細胞はUEA
−1と親和性が全くなく、当該血管内皮細胞ではなくH
T1018細胞であることが判明した。よって、本発明に係
る血管内皮モデルは、生体内の血管壁の状態を反映し、
本発明方法が癌の転移能の測定において極めてすぐれた
方法であることが示唆された。
【0025】
【実施例4】次に、薄膜上の血管内皮細胞と癌細胞の様
子を直接走査電子顕微鏡で観察した。本実施例におい
て、細胞外マトリクス成分としてラミニンを、癌細胞と
してHT1080を、血管内皮細胞としてヒト臍帯由来血管
内皮細胞を用い、培養条件等は実施例2と同一である。
【0026】具体的には、上記条件でHT1080培養
後1日経過した薄膜部分を、常法によりグルタルアルデ
ヒド、オスミウム酸で固定後、50%から100%のエ
タノールで順次脱水し、臨界点乾燥後、金蒸着装置で2
00オングストロームの厚さに金をコーティングして試
料を作成し、これを走査電子顕微鏡で3500倍の倍率
で観察した。結果を図3及び図4に示す。また、図3及
び図4の模式図をそれぞれ図7及び図8に示す(図7、
図8は、それぞれ図3、図4に対応する)。図3及び図
4において平坦で大きい細胞が内皮細胞でこの端にもぐ
り込んでいるように見えるのがHT1080である。
【0027】この結果は、生体内の血管内壁に癌細胞が
浸潤する態様と、本発明に係る血管内皮モデルにおける
癌細胞の態様が酷似していることを表し、本発明方法
が、癌細胞の転移能を測定するのに極めて優れた方法で
あることを示している。
【0028】
【実施例5】次に、本発明測定方法において、癌の転移
に関係があるとされている物質を用いて、本発明測定方
法が癌転移のメカニズム解明に有用であり、癌転移抑制
剤のスクリーニング等にも用いることができることを示
す。 (1) インターロイキン1 (IL−1) で血管内皮細胞
を刺激すると当該血管内皮細胞の表面上存在するリンパ
球に対する接着分子であるICAM−1(Intercellular
Adhesion Molecule-1)の出現量が増加することが知ら
れている (S. M.Willicome et al., Journal of Immuno
logy, vol.144, 2558-2565, 1990 ) 。さらにかかるI
CAM−1と癌転移の関係が示唆されているが、その関
係を本発明測定方法を用いて検討した。
【0029】細胞外マトリクス成分としてラミニンを用
いた本発明血管内皮モデル調製用器において、実施例2
と同様にして、ヒト臍帯由来血管内皮細胞を一層培養
し、そこにIL−1β (Genzyme 社製) を2ng/ml添
加し、37℃で5%CO2 存在下4.5時間放置して、当該血
管内皮細胞を炎症状態とした。このようにして炎症状態
とした血管内皮細胞の上にHT1080を蒔き、培養してウ
ェルに落ちる細胞数を計測し、炎症状態としない場合の
細胞数と比較した。その結果を図5に示す。この結果、
血管内皮細胞をIL−1βで処理することにより、ウェ
ルに落ちる細胞数が増加すること、すなわちHT1080の
浸潤能が促進されることが判明した。
【0030】(2) さらに、上記 (1) においてIL−
1βで刺激した系を、ICAM−1に対する抗体 (Brit
ish Biotechnology 社)20μgで処理してから、HT10
80を培養した系と、抗体処理をしない系とのウェルに落
下する細胞の数を比較した結果を図6に示す、この結
果、IL−1β刺激によるHT1080の浸潤能は、αIC
AM−1 (抗ICAM−1抗体) の添加により抑制され
ることから、血管内皮細胞のIL−1β刺激によるHT
1080の浸潤能の上昇には、接着分子ICAM−1が関与
している可能性が確かめられた。
【0031】上記 (1)(2) より、本発明測定方法を用
いて、特定物質の癌の転移に対する影響を検討すること
ができることが明らかになった。すなわち、癌転移の防
止薬等のスクリーニングが本発明に係る血管内皮モデル
及び本発明測定方法により可能なことが明らかになっ
た。
【0032】
【発明の効果】本発明により、生体内の血管内壁に近似
した血管内皮モデルの提供と、癌細胞の簡易・迅速かつ
実際的な転移能測定方法の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明血管内皮細胞モデル調製用器の一実施態
様である。
【図2】UEA−1レクチンにより、本発明血管内皮細
胞モデル調製用器の薄膜部を通過する細胞の種類を特定
した図である。
【図3】本発明癌細胞転移能測定法実施時の薄膜部上の
細胞の走査電子顕微鏡写真図である。(生物の形態)
【図4】本発明癌細胞転移能測定法実施時の薄膜部上の
細胞の走査電子顕微鏡写真図である。(生物の形態)
【図5】IL−1βを添加した場合の浸潤能を検討した
図である。
【図6】抗ICAM−1の添加による浸潤能の抑制を検
討した図である。
【図7】図3の模式図である。
【図8】図4の模式図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状部分、細胞外マトリクス成分で上面
    をコーティングした細孔を有する薄膜を配置した底面、
    ならびに懸垂部を含む血管内皮モデル調製用器を、該薄
    膜との間に間隙を設けてウェル上に配置してなる癌細胞
    の転移能の測定装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の測定装置における底面の
    薄膜上に血管内皮細胞を培養液中で一層に培養した後、
    さらにその上に癌細胞を蒔いて培養して、当該血管内皮
    細胞間隙と薄膜の細孔とを貫通してウェルに落下する癌
    細胞の数を計測することを特徴とする、癌細胞の転移能
    の測定方法。
JP4042223A 1992-01-31 1992-01-31 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法 Expired - Lifetime JPH07102153B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4042223A JPH07102153B2 (ja) 1992-01-31 1992-01-31 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4042223A JPH07102153B2 (ja) 1992-01-31 1992-01-31 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05211893A JPH05211893A (ja) 1993-08-24
JPH07102153B2 true JPH07102153B2 (ja) 1995-11-08

Family

ID=12630040

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4042223A Expired - Lifetime JPH07102153B2 (ja) 1992-01-31 1992-01-31 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07102153B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100487133C (zh) * 2002-07-20 2009-05-13 艾森生物(杭州)有限公司 基于阻抗的检测装置和方法
JP4587281B2 (ja) * 2004-06-21 2010-11-24 則男 長尾 癌転移抑制能測定する方法およびその測定器
EP3060654B1 (en) * 2013-10-21 2023-03-15 Hemoshear, LLC In vitro model for a tumor microenvironment
JP6284147B2 (ja) * 2014-03-07 2018-02-28 国立研究開発法人産業技術総合研究所 乳癌の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株の樹立方法
KR102629598B1 (ko) 2020-12-31 2024-01-29 서울대학교병원 암세포 전이능 측정 시스템 및 이를 이용한 암세포 전이능 측정 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05211893A (ja) 1993-08-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Nishida et al. Isolation and characterization of human and rat cardiac microvascular endothelial cells
White et al. Expression and intracellular distribution of stress fibers in aortic endothelium.
Berger et al. CXC and CC chemokine receptors on coronary and brain endothelia
US4446234A (en) Vitro cellular interaction with amnion membrane substrate
Davis et al. An α2β1 integrin-dependent pinocytic mechanism involving intracellular vacuole formation and coalescence regulates capillary lumen and tube formation in three-dimensional collagen matrix
Palade et al. Studies on the endoplasmic reticulum: I. Its identification in cells in situ
Kumar et al. Heterogeneity in endothelial cells from large vessels and microvessels
Cocks et al. Release and properties of endothelium‐derived relaxing factor (EDRF) from endothelial cells in culture
Raz et al. Cell-contact and-architecture of malignant cells and their relationship to metastasis
Pavelic et al. Growth of cell colonies in soft agar from biopsies of different human solid tumors
JP2008022743A (ja) 新規スフェロイド及びスフェロイドの製造方法、薬剤スクリーニング、毒性評価、病体モデル動物の製造へのスフェロイドの使用、スフェロイド細胞培養キット、抗体のスフェロイド形成のための使用、レクチンのスフェロイド形成のための使用、細胞接着分子のスフェロイド形成のための使用
Cai et al. Evaluation of endothelial cell migration with a novel in vitro assay system
Sato et al. Development of capillary networks from rat microvascular fragments in vitro: the role of myofibroblastic cells
CA2184705A1 (en) In vitro angiogenesis assay
Zhao et al. Disrupted endothelial cell layer and exposed extracellular matrix proteins promote capture of late outgrowth endothelial progenitor cells
Bensch et al. Factors controlling the in vitro growth pattern of human microvascular endothelial cells
Yablonka-Reuveni The emergence of the endothelial cell lineage in the chick embryo can be detected by uptake of acetylated low density lipoprotein and the presence of a von Willebrand-like factor
JP2008509678A (ja) 内皮前駆細胞サブセットの単離とそれらの使用方法
JP2001518621A (ja) 血管形成の多細胞インビトロ・アッセイ
JPH07102153B2 (ja) 血管内皮モデル調製用器及びこれを用いた癌細胞の転移能の測定方法
Bazou et al. Self-assembly of vascularized tissue to support tumor explants in vitro
Turel et al. Expression of the cell adhesion molecule E-cadherin by the human bone marrow stromal cells and its probable role in CD34+ stem cell adhesion
Moyer et al. Venular endothelium in vitro: isolation and characterization
Umino et al. Modification of type I collagenous gels by alveolar epithelial cells
Aznavoorian et al. Characteristics of invasive and noninvasive human colorectal adenocarcinoma cells

Legal Events

Date Code Title Description
EXPY Cancellation because of completion of term