JPH0696985A - 薄膜コンデンサ - Google Patents

薄膜コンデンサ

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JPH0696985A
JPH0696985A JP24187392A JP24187392A JPH0696985A JP H0696985 A JPH0696985 A JP H0696985A JP 24187392 A JP24187392 A JP 24187392A JP 24187392 A JP24187392 A JP 24187392A JP H0696985 A JPH0696985 A JP H0696985A
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JP
Japan
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thin film
dielectric
composition
perovskite
perovskite type
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Withdrawn
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JP24187392A
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English (en)
Inventor
Kazuhide Abe
和秀 阿部
Shuichi Komatsu
周一 小松
Yohachi Yamashita
洋八 山下
Kenya Sano
賢也 佐野
Takashi Kawakubo
隆 川久保
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 単純ペロブスカイト型酸化物の固溶系や、複
合ペロブスカイト型酸化物を誘電体薄膜として用いた薄
膜コンデンサの低周波領域における誘電損失の向上や、
高周波領域における誘電率の低下および誘電損失の増大
等の抑制を図る。 【構成】 一般式 ABO3 で表されるペロブスカイト型結
晶構造を有し、かつその一般式中の A元素および B元素
の少なくとも一方が 2種以上の元素からなるペロブスカ
イト型酸化物組成を満足する誘電体薄膜と、この誘電体
薄膜を挟持するように設けられた一対の電極とを具備す
る薄膜コンデンサである。誘電体薄膜は、組成が異なる
2種類以上のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物
の層が膜厚方向に周期的に積層されてなり、その一周期
内の組成が上記ペロブスカイト型酸化物組成を満足して
いる。また、一周期に相当する膜厚は 5nm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペロブスカイト型結晶
構造を有する誘電体薄膜を用いた薄膜コンデンサに関す
る。
【0002】
【従来の技術】ペロブスカイト型結晶構造は、 2種類以
上の金属元素を含む複合酸化物の代表的な結晶構造の一
つであり、そのうち最も基本となる単純ペロブスカイト
型結晶構造においては、構成元素の組成比が一般式 ABO
3 で表されることが知られている。この単純ペロブスカ
イト型結晶構造では、構成元素として含まれる 2種類の
金属原子はそのイオン半径や電気的な価数に応じて、結
晶内で A元素の位置(Aサイト)、もしくは B元素の位置
(Bサイト)のどちらかの位置を占めている。このような
ペロブスカイト型酸化物の中には、非常に大きな誘電率
を有するものがあり、以前より小型で大容量のコンデン
サ用の誘電体材料として広く用いられている。
【0003】単純ペロブスカイト型結晶構造をとる代表
的な化合物としては、 BaTiO3 、SrTiO3 、 PbTiO3
PbZrO3 等を挙げることができる。これらの化合物は、
それぞれ単体として安定に存在し、それぞれコンデンサ
用の誘電体材料として利用することもできるが、これら
の材料を任意の比率で混合して反応させ、固溶体を形成
することによって、個々の材料固有の特性を平均化し、
用途に応じた所望の電気的特性を有するコンデンサを形
成することができる。このような性質を利用して、複数
の単純ペロブスカイト型化合物を混合した組成によっ
て、用途に応じた誘電率、誘電率の温度係数等が実現さ
れている。
【0004】このような単純ペロブスカイト型酸化物の
2成分の固溶系の例としては、(1-x)BaTiO3 - xSrTiO3
や(1-x)PbZrO3 - xPbTiO3 (0< x<1)等が挙げられる。
これらの固溶系の表記としては、 (Ba1-x Srx )TiO3
Pb(Zr1-x Tix )O3 等と表されることも多い。前者の固
溶系は、誘電率が大きいことを利用して、コンデンサ材
料として使用されている。また、後者の固溶系は、強誘
電体として、圧電素子、焦電素子等に使用されており、
さらに強誘電性を利用した不揮発性メモリにも使用され
ている。
【0005】大きな誘電率を有するペロブスカイト型酸
化物としては、上述した単純ペロブスカイト型酸化物や
その固溶系の他に、複合ペロブスカイト型と呼ばれる酸
化物群が存在することが知られている。複合ペロブスカ
イト型酸化物は、ペロブスカイト型結晶構造の Aサイト
もしくは Bサイトが 2種類以上の金属元素で構成されて
いる点では、上述の単純ペロブスカイト型酸化物の固溶
系と同じであるが、単純ペロブスカイト型酸化物の固溶
系は、同じサイトを占める 2つの金属元素の比率を任意
に選ぶことができるのに対し、複合ペロブスカイト型酸
化物はペロブスカイト型結晶構造を形成するために、こ
れら金属元素の比率がある決った値をとる点で異なって
いる。
【0006】このような複合ペロブスカイト型酸化物の
例としては、 Ba(Zn1/3 Nb2/3 )O3や Pb(Zn1/3 Nb2/3 )
O3 等が知られている。これらの例において、 Bサイト
の 2種類の金属元素(ZnとNb)の比率は、電気的な中性
条件を保持するために 1:2でなければならない。このよ
うな複合ペロブスカイト型酸化物の応用としては、例え
ば前者は高周波における誘電損失が小さいことからマイ
クロ波誘電体として、また後者は誘電率が大きいことを
利用して積層セラミックコンデンサ等として使用されて
いる。
【0007】従来、上述したような単純ペロブスカイト
型酸化物を組み合せた固溶系や、複合系のペロブスカイ
ト型酸化物を作製する方法としては、原料となる酸化物
の粉末を適切な比率でよく混合し、この混合粉を高温で
反応処理する方法が一般に用いられてきた。この方法は
固相反応法と呼ばれている方法である。また、上記固溶
系や複合系のペロブスカイト型酸化物の薄膜を作製する
場合には、上記固相反応法により作製した焼結体等が、
膜形成源例えばスパッタターゲットとして使用されてい
る。この場合、上記したような固相反応法で作製した固
溶系や複合系のペロブスカイト型酸化物は、全体の平均
的な組成については所望の比率が実現している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たような固相反応法による固溶系や複合系のペロブスカ
イト型酸化物においては、微細な領域に個々に注目する
と、必ずしも均一な組成が実現されているとは限らな
い。すなわち、ある微細領域ではある金属元素が多く、
また別の領域では他の金属元素が多いといった現象が、
透過型電子顕微鏡を使った観察で確認されている。ま
た、一般には同じサイトを占める複数の金属元素が規則
正しく配列されず、結晶内でランダムに存在している。
これらは、薄膜とした場合においても、同様に見られる
現象である。
【0009】そして、上記したような組成の均一性や規
則性が悪い固溶系や複合系のペロブスカイト型酸化物か
らなる誘電体においては、外部から印加された電界によ
って誘起される誘電分極が局所的に不均一になりやすい
という問題がある。すなわち、ペロブスカイト型結晶構
造においては、大きい誘電率の起源が構成元素の相対的
な位置の変位であると考えられているため、構成元素の
組成不均一や不規則配列は、イオン変位量やイオン分極
の不均一を引き起こし、これが誘電損失の上昇、さらに
高周波領域における誘電分散による誘電率の低下および
誘電損失の増大の大きな原因となっている。
【0010】上述したような誘電体としての電気的な諸
特性に関する問題は、固溶系や複合系のペロブスカイト
型酸化物を、例えば 0.5μm 以下程度に薄膜化したとき
に顕著になる。このようなことから、ペロブスカイト型
について、誘電体薄膜の膜厚に比較して十分に小さい領
域に着目した場合であっても、誘電体薄膜の膜厚方向
に、できる限り均一な大きさの電気変位を誘起し得るよ
うな良質の誘電体薄膜が強く求められている。
【0011】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、単純ペロブスカイト型酸化物の固溶
系や、複合ペロブスカイト型酸化物を誘電体薄膜として
用いた薄膜コンデンサの電気的な諸特性、具体的には低
周波領域における誘電損失や高周波領域における誘電率
および誘電損失等を改善した薄膜コンデンサを提供する
ことを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜コンデンサ
は、一般式 ABO3 で表されるペロブスカイト型結晶構造
を有し、かつ前記一般式中の A元素および B元素の少な
くとも一方が 2種以上の元素からなるペロブスカイト型
酸化物組成を満足する誘電体薄膜と、この誘電体薄膜を
挟持するように設けられた一対の電極とを具備する薄膜
コンデンサにおいて、前記誘電体薄膜は、組成が異なる
2種類以上のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物
の層が膜厚方向に周期的に積層されてなり、かつ、その
一周期内の組成が前記ペロブスカイト型酸化物組成を満
足すると共に、前記一周期に相当する膜厚が 5nm以下で
あることを特徴としている。
【0013】本発明の薄膜コンデンサは、薄膜コンデン
サのなかでも、 2つの導電体からなる電極と、これら 2
つの電極の間に設けられた誘電体薄膜とから構成される
ものを対象としている。また、薄膜コンデンサにおける
誘電体薄膜とは、膜厚 1μm以下の誘電体を指すことが
多いが、本発明による効果は、さらに誘電体薄膜を薄く
した領域、例えば膜厚 0.2μm 以下というような誘電体
薄膜を用いる場合に顕著となるため、本発明はこのよう
な誘電体薄膜に適用することが好ましい。
【0014】また、本発明における誘電体薄膜は、単純
ペロブスカイト型酸化物の固溶系、複合ペロブスカイト
型酸化物、さらには単純ペロブスカイト型酸化物と複合
ペロブスカイト型酸化物との間の固溶系、複合ペロブス
カイト型酸化物どうしの固溶系等からなるものを対象と
している。また、単純もしくは複合ペロブスカイト型酸
化物を単成分とする 2成分の固溶系から、 3成分、 4成
分、… n成分の固溶系に適用することも可能である。
【0015】すなわち、本発明における誘電体薄膜は、
薄膜全体として、一般式 ABO3 で表されるペロブスカイ
ト型結晶構造を有し、この一般式中の A元素および B元
素の少なくとも一方が 2種以上の元素からなるペロブス
カイト型酸化物組成を満足するものである。このような
誘電体薄膜の平均的な組成は、 (A1X1A2X2…AMXM)(B1Y1B2Y2…BNYN)O3 ……(1) (ただし、X1+X2+…+XM=1 およびY1+Y2 …+YN=1 を満足
し、かつ、A1,A2,…AMの価数をa1,a2,…am、B1,B2,…BN
の価数をb1,b2,…bnとしたとき、 (a1・X1+a2・X2+…
…+am・XM)=2 および (b1・Y1+b2・Y2+……+bnYN)=
4 を満足する)で表される。
【0016】本発明における誘電体薄膜は、薄膜全体と
して、上記 (1)式で表されるようなペロブスカイト型酸
化物組成(以下、薄膜基本組成と記す)を満足させた上
で、組成が異なる 2種類以上のペロブスカイト型結晶構
造を有する化合物(以下、単位化合物と記す)の層(以
下、積層単位層と記す)を、膜厚方向すなわち電界が印
加される方向に、周期的に積層した構造を有するもので
ある。
【0017】すなわち、上記した単位化合物は、積層単
位層による一周期内の組成が上記薄膜基本組成を満足す
るように選択されており、その積層構造は理想的にはペ
ロブスカイト型結晶構造の単位格子 1層分をそれぞれ積
層単位層とし、これらを所定の周期で積層したものであ
る。ただし、各積層単位層の膜厚および積層構造一周期
内の積層単位層の層数は、一周期内の組成が薄膜基本組
成を満足し、後に詳述するように、一周期に相当する膜
厚が 5nm以下であれば特に限定されず、例えば上記単位
格子 2層分またはそれ以上を積層単位層としてもよく、
また積層単位層の配列についても種々に選択することが
可能である。
【0018】上記単位化合物は、それぞれペロブスカイ
ト型結晶構造が保持されるように、A元素と B元素と酸
素元素の比率が 1:1:3の化合物からなるものであるが、
例えば 2成分の固溶系((A1,A2)BO3 )を薄膜基本組成と
して考えた場合、単純にA1BO3 化合物とA2BO3 化合物と
に限らず、薄膜基本組成におけるA1元素とA2元素との比
率に応じて、上記薄膜基本組成とはA1元素とA2元素の比
率が異なる (A1,A2)BO3 化合物とA2BO3 化合物との組み
合わせ等、種々の化合物を選択することができる。これ
は、複合ペロブスカイト型酸化物の場合も同様である。
また、単位化合物は、必ずしも電気的中性条件を満たし
ていなければならないものではない。すなわち、構成元
素をイオンとして見なした場合、各積層単位層内の陽イ
オンの価数の和と陰イオンの価数の和を、必ずしも一致
させなければならないものではない。
【0019】ただし、複数の積層単位層による一周期内
の平均的な組成に関しては、電気的中性条件が満足され
る。すなわち、一周期内の組成に関しては、陽イオンの
価数の和と陰イオンの価数の和は一致していなければな
らず、上記した薄膜基本組成を満足するものとする。こ
れは、ペロブスカイト型結晶構造を維持するためであ
る。
【0020】また、上記積層単位層の積層周期、すなわ
ち積層単位層による一周期に相当する膜厚は 5nm以下と
する。これは、積層周期が 5nmを超えると、例えば複合
ペロブスカイト型化合物では、個々の層で電気的中性条
件が崩れることになり、一周期内の平均組成が電気的中
性条件を満たしていても、電気的な不安定性が大きくな
りすぎ、ペロブスカイト型結晶構造を維持することが困
難になるためである。また、ペロブスカイト型結晶構造
を維持することが可能であったとしても、積層周期が 5
nmを超えると、低周波領域における誘電損失、高周波領
域における誘電率や誘電損失等の電気的な諸特性の改善
効果を十分に得ることができない。
【0021】本発明において、上述したような単位化合
物の層を周期的に積層する方法としては、例えば通常の
薄膜プロセスを適用し、一定の時間毎に組成を換えなが
ら順に堆積する方法が挙げられる。薄膜プロセスとして
は、CVD法では例えば塩化物、臭化物等と O2 、NO等
を反応性ガスとする常圧または減圧CVD法、有機金属
ガスを分解して O2 、NO等と反応させるMOCVD法、
プロズマCVD法等が挙げられ、一方PVD法では、ス
パッタ法、反応性スパッタ法、IVD(Ion Ir-radiatio
n Vapor DepositionあるいはIon Beam and Vapor Depos
ition)法、R−IVB(Reactive-IVD)法、R−ICB(R
eactive Ionized Cruster Beam Deposi-tion) 法、およ
びそれらの組み合わせ等が挙げられる。誘電体薄膜の作
製には、上記の方法のいずれを用いてもよい。
【0022】
【作用】本発明の薄膜コンデンサにおいては、単純ペロ
ブスカイト型酸化物の固溶系、複合ペロブスカイト型酸
化物、あるいはそれらの固溶系等からなる誘電体薄膜を
組成の異なる 2種類以上の化合物の層の積層構造とし
て、結晶構造はペロブスカイト型結晶構造を保ちなが
ら、組成については電界が印加される膜厚方向に一定の
周期性を付与したものである。本発明では、このような
積層構造の誘電体薄膜を用いることによって、第1に誘
電損失の低減、第2に誘電率および誘電損失の高周波特
性の改善、第3に誘電特性の経時変化の安定化を図るこ
とができる。
【0023】まず第1に、ペロブスカイト型結晶構造の
誘電体の組成に、原子レベルで周期性をもたせることに
よって、誘電損失が低減する。これは、ペロブスカイト
型結晶構造を有する誘電体のように、イオン分極が支配
的な誘電体においては、分極に伴ってイオン変位や電歪
が発生する。特に、誘電体薄膜では小さな電圧を印加し
ても、結果的には誘電体に大きな電界が加わり、このよ
うな高い電界のもとでは、イオン変位に関するポテンシ
ャルは高次の非線形が大きくなり、またこれに伴って電
歪が発生し、弾性的な領域と比較して、より大きなエネ
ルギーが散逸する原因となっている。さらに、組成がラ
ンダムな領域では、局所的にイオン変位や電歪がランダ
ムな方向にバイアスされており、原子が規則的に配列し
た領域と比較すると、エネルギーの散逸が著しく生じや
すい状況になっている。そこで、誘電体薄膜の組成に、
原子レベルで一定の周期性を付与することにより、原子
レベルでの規則性が向上し、結果としてイオン変位の非
線形や電歪に起因する誘電損失は低減される。
【0024】第2に、誘電体の構成元素の組成が原子レ
ベルで周期性を持つことにより、誘電率の高周波特性が
改善される。これは、イオン分極が支配的な誘電体にお
いては、赤外領域にイオン分極に起因する誘電分散が観
測される。この誘電分散は、誘電率の実部と虚部で異な
る挙動を示すが、それぞれについて誘電分散の波数付近
におけるピークから徐々に小さくなり、低周波側へ連続
的に変化する。ここで、組成のランダムな領域を多く有
する誘電体では、誘電分散の波数付近での誘電率のピー
クがブロードになり、結果として低周波側での誘電率の
周波数依存性が大きくなる。これに対して、誘電体薄膜
の組成に原子レベルで一定の周期性を付与することによ
り、赤外領域における誘電率の波数依存性のピークが鋭
くなり、低周波側ではほぼ一定の誘電率となる。すなわ
ち誘電率の高周波特性が安定になる。しかも、誘電率の
虚部は誘電損失となるため、周期性を付与した誘電体薄
膜では高周波領域での誘電損失が小さいという特徴を合
せもつ。
【0025】第3に、誘電体組成の構成元素に原子レベ
ルで周期性をもたせることにより、誘電特性の経時変化
が小さくなる。誘電特性の経時変化は、特に強誘電相に
おける誘電体を、不揮発性メモリや強誘電−常誘電の相
転移温度付近の温度領域において高誘電率薄膜として利
用するときに大きな問題となる。これらの誘電特性の経
時変化は、強誘電分域の構造、さらには強誘電微小分域
の生成や成長もしくは消滅に関連すると考えられる。ま
ず、強誘電分域と常誘電分域では誘電率が異なり、さら
に同じ強誘電分域内でも自発分極の方向によって誘電率
が異なる。また分域の大きさ、分域壁の密度によっても
誘電率が異なる。これらをまとめて分域構造の変化と呼
ぶことにすると、誘電特性の経時変化は強誘電分域構造
の時間変化に起因するということができる。分域構造
は、個々の状態の間の僅かな自由エネルギー差に起因し
ており、時間と共に準安定な状態から安定な状態へのゆ
っくりとした変化であると考えられる。
【0026】従って、組成の不均一な誘電体薄膜では、
まず局所的に多くの準安定状態を作り出し易く、これら
が時間と共に安定化する際の誘電率変化が大きくなる。
なおかつ、分域壁の移動をピン止めして妨げるため、全
体的な安定状態への遷移を妨げ、安定状態への移行に要
する時間が長くなる原因となる。これに対して、誘電体
薄膜の組成に原子レベルで一定の周期性を付与すること
により、仮に組成が複雑であったとしても、ある一定の
状態のみが安定化し、また仮に準安定な状態が出現した
後も速やかに安定状態に移行する。すなわち、誘電特性
の経時変化が小さくなる。
【0027】なお本発明では、特に誘電体を薄膜プロセ
スで形成することにより、焼結等の熱平衡プロセスでは
得られない熱力学的に非平衡の原子レベルでの周期性が
付与された結晶構造を形成することができる。また、得
られた誘電体薄膜が配向膜の場合、誘電率の異方性が向
上し、結果として特定の方向における誘電率が向上す
る。この効果は、単結晶膜を用いた場合により顕著であ
る。さらに、単結晶膜を用いた場合は、粒界が存在しな
いことからリーク電流は非常に小さく、絶縁耐圧は極め
て高くなる。
【0028】以上の結果、高耐圧、高絶縁性、大容量の
優れた高周波特性を有する薄膜コンデンサを、繁雑なプ
ロセスを経ることなく得ることが可能となる。
【0029】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。
【0030】実施例1 まず、図1に示すように、表面を鏡面研磨した酸化マグ
ネシウム(MgO) 単結晶の (100)面基板1を 400℃に加熱
し、その上に高周波(RF)マグネトロンスパッタリン
グ法によって、下部電極2として白金(Pt)を約50nmの膜
厚で堆積した。スパッタガスとしてはアルゴン(Ar)を使
用し、ガスの圧力は約 0.8Paとし、高周波電力は300Wと
した。堆積した白金の膜をX線、電子線回折およびRH
EEDで観察したところ、基板1の上にエピタキシャル
成長した白金の薄膜が得られていることが確認された。
【0031】次に、RFマグネトロンスパッタリング法
により、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 ) の層3aと
チタン酸バリウム(BaTiO3 ) の層3bを周期的に交互に
堆積し、誘電体薄膜3を形成した。スパッタリングは、
基板を 400℃に加熱し、約1Paのアルゴンと酸素の混合
ガス(流量比:Ar/O2 =4/1) 中で行った。ターゲットと
しては、それぞれ SrTiO3 と BaTiO3 の焼結体ターゲッ
トを使用し、これらのターゲットにそれぞれ400Wの高周
波電力を供給した。
【0032】具体的には、それぞれのターゲットに取り
付けられている金属板からなるシャッタを25秒毎に交互
に開閉した結果、図2に示すように、約 0.8nmの積層周
期で各層が交互に積層された構造を有する、 SrTiO3
と BaTiO3 層との積層構造を作製することができた。誘
電体薄膜3全体の膜厚は 100nmである。なお、作製した
誘電体薄膜3では、X線回折、RHEED、および電子
線回折法等により、SrTiO3 および BaTiO3 が下部電極
2である白金の膜に対してエピタキシャル成長している
ことが確認された。
【0033】なお、作製した誘電体薄膜3の組成を、ラ
ザフォード後方散乱(RBS)法およびICP法により
定量分析したところ、SrとBaのモル比率がほぼ 1:1で、
かつ(Sr+Ba)とTiのモル比率が同じくほぼ 1:1であるこ
とが確認された。
【0034】この後、上部電極4としてニッケル(Ni)
を、RFマグネトロンスパッタリング法により約 100nm
の厚さで堆積した。スパッタ条件は、基板温度 350℃、
スパッタガスとしてアルゴン(Ar)を使用し、ガスの圧力
は約 0.8Pa、高周波電力は300Wとした。堆積したニッケ
ル膜は電極パターンを形成するために、フォトリソグラ
フィー技術と塩化第二鉄水溶液を使用したエッチングに
より、約 100μm × 100μm の電極寸法に加工した。
【0035】一方、本発明との比較として、従来の方法
によって、すなわち SrTiO3 -BaTiO3 固溶系ターゲット
を用いて、誘電体薄膜の平均的な組成は同一の薄膜コン
デンサを、RFマグネトロンスパッタリング法により作
製した。
【0036】これら実施例による薄膜コンデンサと比較
例によるそれとの電気的特性の比較を行ったところ、以
下に示すような結果が得られた。なお、高周波における
インピーダンスは、ネットワークアナライザと高周波プ
ローブを使用して測定した。まず、1GHzの周波数で測定
した比誘電率は、両者ともほぼ同じ値で約 530〜560で
あった。これに対して誘電損失は、比較例による薄膜コ
ンデンサでは0.5%〜0.7%であったのに対し、実施例の薄
膜コンデンサでは0.3%〜0.5%であった。次に、5.5GHzで
測定した比誘電率は、比較例による薄膜コンデンサにお
いては約470〜 500であったのに対し、実施例による薄
膜コンデンサにおいてはが約 510〜 540であった。ま
た、同じ周波数で測定した誘電損失は、比較例による薄
膜コンデンサにおいては2.2%〜2.8%であったのに対し
て、実施例による薄膜コンデンサにおいては1.2%〜1.5%
であった。
【0037】このように、本発明による薄膜コンデンサ
においては、低周波領域での誘電損失が従来法で作製し
た組成のランダムな薄膜コンデンサと比べて小さく、さ
らには高周波領域における誘電率の低下および誘電損失
の増加も少ないことが確認された。
【0038】実施例2 まず、表面を鏡面研磨した酸化マグネシウム(MgO) 単結
晶の (100)面基板を400℃に加熱し、その上にRFマグ
ネトロンスパッタリング法により、下部電極として白金
(Pt)を約50nmの膜厚で堆積した。スパッタガスとしては
アルゴン(Ar)を使用し、ガスの圧力は約 0.8Paとし、高
周波電力は300Wとした。堆積した白金の膜をX線、電子
線回折およびRHEEDで観察したところ、 MgO単結晶
基板の上にエピタキシャル成長した白金の薄膜が得られ
ていることが確認された。
【0039】次に、RFマグネトロンスパッタリング法
により、誘電体薄膜としてマグネシウムニオブ酸鉛(Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 ) の膜を、 Pb(Mg1/2 Nb1/2 )O3
組成の層と、 PbNbO3 の組成の層が周期的に積層される
ように堆積した。スパッタリングは、基板温度を 400℃
に加熱し、約 1Paのアルゴンと酸素の混合ガス(流量
比:Ar/O2 =4/1) 中で行った。ターゲットとしては、そ
れぞれPb3 Mg2 Nb2 O 10の組成を有する焼結体ターゲッ
トと、Pb3 Nb2 O 8 の組成を有する焼結体ターゲットを
使用し、これらのターゲットにそれぞれ300Wの高周波電
力を供給した。
【0040】具体的には、それぞれのターゲットに取り
付けられている金属板からなるシャッタを、まずPb3 Mg
2 Nb2 O 10のターゲットについて65秒間開いて堆積した
後、続いてPb3 Nb2 O 8 のターゲットについて34秒間開
き、このような間隔で 2つのシャッタを交互に繰り返し
開閉した結果、図3に示すように、約 2.4nmの積層周期
で単位格子 2層分の Pb(Mg1/2 Nb1/2 )O3 と単位格子 1
層分と PbNbO3 が交互に積層された構造を有する、 Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 の膜を作製することができた。誘電
体薄膜全体の膜厚は 400nmである。
【0041】なお、作製した誘電体薄膜は、X線回折、
RHEEDおよび電子線回折法等により、下部電極であ
る白金の膜に対してエピタキシャル成長していることが
確認された。また、作製した誘電体薄膜の組成をラザフ
ォード後方散乱(RBS)法およびICP法により定量
分析したところ、MgとNbのモル比率がほぼ 1:2であり、
かつPbと (Mg+Nb)のモル比率がほぼ 1:1であることが確
認された。
【0042】この後、上部電極としてニッケル(Ni)を、
RFマグネトロンスパッタリング法により約 100nmの厚
さで堆積した。スパッタ条件は、基板温度 350℃、スパ
ッタガスとしてアルゴン(Ar)を使用し、ガスの圧力は約
0.8Pa、高周波電力は300Wとした。堆積したニッケル膜
は電極パターンを形成するため、フォトリソグラフィー
技術と塩化第二鉄水溶液を使用したエッチングにより、
約 100μm × 100μm電極寸法に加工した。
【0043】一方、本発明との比較として、 Pb(Mg1/3
Nb2/3 )O3 焼結体ターゲットを用いて、誘電体薄膜の平
均的な組成は同一の薄膜コンデンサを、RFマグネトロ
ンスパッタリング法により作製した。
【0044】これら実施例による薄膜コンデンサと比較
例によるそれとの電気的特性の比較を行ったところ、以
下に示すような結果が得られた。まず、薄膜コンデンサ
の形成後、初期状態で周波数1kHz、振幅0.2Vの電圧印加
で測定した誘電特性は、比較例による薄膜コンデンサで
は比誘電率4600〜5500、誘電損失2.5%〜3.0%であったの
に対し、実施例による薄膜コンデンサでは比誘電率3900
〜4300、誘電損失1.8%〜2.4%であった。また、周波数1k
Hz、振幅5Vの電圧を約90分間印加した後、周波数1kHz、
振幅0.2Vの電圧印加で測定した誘電特性は、比較例によ
る薄膜コンデンサでは比誘電率1400〜2200、誘電損失1.
8%〜2.4%であったのに対し、実施例による薄膜コンデン
サでは比誘電率3600〜4000、誘電損失1.1%〜1.4%であっ
た。
【0045】このように、本発明による薄膜コンデンサ
においては、低周波領域における誘電損失が小さい上
に、大振幅電圧の長時間印加による誘電率の低下が、従
来法で作製した組成のランダムな薄膜コンデンサと比べ
て小さいことが確認された。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の薄膜コン
デンサは、微細な領域においても組成の均一性や規則性
に優れた誘電体薄膜を用いているため、従来の組成がラ
ンダムな薄膜コンデンサに比べて誘電損失が小さく、ま
た高周波領域における誘電率の低下や誘電損失の増加が
少ないと共に、誘電率の経時変化が少ない。このよう
に、本発明による薄膜コンデンサは、基本的電子部品で
ある薄膜コンデンサの高周波特性の改善と、誘電特性の
安定化に寄与するものであり、その工業的価値は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による薄膜コンデンサの構造
を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例の薄膜コンデンサにおける誘
電体薄膜の構造を結晶構造の観点から模式的に示す図で
ある。
【図3】本発明の他の実施例の薄膜コンデンサにおける
誘電体薄膜の構造を結晶構造の観点から模式的に示す図
である。
【符号の説明】
1…… MgO単結晶基板 2……下部電極 3……積層構造を有する誘電体薄膜 3a、3b……積層単位層 4……上部電極
フロントページの続き (72)発明者 佐野 賢也 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝総合研究所内 (72)発明者 川久保 隆 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝総合研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 ABO3 で表されるペロブスカイト
    型結晶構造を有し、かつ前記一般式中の A元素および B
    元素の少なくとも一方が 2種以上の元素からなるペロブ
    スカイト型酸化物組成を満足する誘電体薄膜と、この誘
    電体薄膜を挟持するように設けられた一対の電極とを具
    備する薄膜コンデンサにおいて、 前記誘電体薄膜は、組成が異なる 2種類以上のペロブス
    カイト型結晶構造を有する化合物の層が膜厚方向に周期
    的に積層されてなり、かつ、その一周期内の組成が前記
    ペロブスカイト型酸化物組成を満足すると共に、前記一
    周期に相当する膜厚が 5nm以下であることを特徴とする
    薄膜コンデンサ。
JP24187392A 1992-09-10 1992-09-10 薄膜コンデンサ Withdrawn JPH0696985A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113690050A (zh) * 2021-06-30 2021-11-23 中国科学院深圳先进技术研究院 可同时提高储能密度与储能效率的层状复合弛豫铁电材料及其制备方法
CN114256525A (zh) * 2021-12-03 2022-03-29 深圳市波斯曼技术有限公司 一种应用于轨道交通的钠离子蓄能电池系统

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