JPH0694185A - 延性破壊の伝播防止装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 パイプに生じたクラックが伝播性に延長する
のを防止する軽量で耐食性のき裂防止装置を提供する。 【構成】 ガラス繊維などの非腐食性且つ軽量で引張り
強度の高い非金属繊維１６をエポキシ、アスファルトエ
ナメル、コールタールエナメル等の樹脂２７にて被覆さ
せるなどして樹脂マトリックス中に封入させ、パイプ１
２を包囲拘束する帯状体とするき裂防止装置１０。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の背景】高い応力を受ける金属またはその他の材
料製のエレメントは、フリーランニングクラック（自由
伝播き裂）と呼ばれる１以上の伝播性の延性破壊が生じ
ることによって破断する傾向をもっている。そのような
伝播する延性破壊を生じるエレメントの種類は、極めて
多く、ここに全てを網羅することはできないが、例とし
て、圧縮ガスボンベ、ファンおよび風車の羽根、自動車
の車軸、パイプなどが挙げられる。伝播性の延性破壊に
よる問題で最も大きな潜在的な困難に直面している分野
の１つは、パイプ、特にパイプラインに使用される大径
のパイプである。

【０００２】鋼その他の金属製のパイプによって形成さ
れる比較的大径のパイプラインは、天然ガス、炭酸ガス
およびその他の揮発性流体などの搬送に益々重要な役割
を果している。例えば、国内のガス備蓄が増大し、それ
に対応して天然ガスの使用が増大すると、ガスを集積パ
イプラインで搬送するために、また、ガスを長距離輸送
管で送るために、パイプラインの需要が増大する。

【０００３】この種のパイプは、特に割れや損傷が生じ
た場合、比較的高圧の流体を搬送しているときは、伝播
性の延性破壊（フリーランニングクラック）を受け易く
なる。そのようなき裂は１２２〜２７４ｍ／秒の速さで
伝播される。このき裂が発生する確率は、パイプライン
内の流体がガス自体またはガスに含まれる水分のために
腐食性である場合に、特に高くなる。また、き裂の発生
する確率は、多量の硫化水素（水素脆化を惹起すること
が知られている）を含む天然ガスを搬送する鋼製パイプ
の場合にも高くなる。また、ガスに含まれている水分
や、ＣＯ₂から発生した炭酸が鋼製パイプを損傷させる
場合もある。この破断の問題は、寒冷の地域においては
一層複雑になる。また、伝播性の延性破壊（フリーラン
ニングクラック）は、溝堀機がパイプラインに偶発的に
ぶつかること又は地震その他の外力による衝撃によって
惹起されることがある。

【０００４】パイプその他のエレメントが伝播性の延性
破壊によって破断する傾向は、一般に、そのエレメント
の素材の性質と、その素材がエレメントを形成するため
の該素材の加工形態又は形状に依存する。一例として、
パイプライン用の多くのパイプは、金属ブロック例えば
ローラ対間に通すことによって一の方向に他の方向より
も大きく伸長させた金属ブロックから作製される。この
方法によって金属板が形成され、この金属板は、次に、
その長手方向軸線の回りに曲げることによって、Ｕ字形
に形成される。このＵ字形の板は、Ｕ字形の両辺を突合
せ、長さに沿って側面同士を例えば溶接によって互に接
合し、実質的に真直な長手方向のシームを形成すること
によって、円筒状に折曲げられる。このようなパイプに
おいては、固有弱み軸線を画定する円周方向即ちフープ
方向よりも、長手方向の強度の方が相当に高いので、パ
イプは、フープ方向よりも長手方向により大きな応力に
耐えることができる。従って、そのようなパイプが破損
するのは、中間の幅の或るフープが破損し、次にその破
損したフープの両端が分離することの結果である。次
に、この最初のフープに隣接したフープが、最初のフー
プの破損の結果として破損し、これらの破損したフープ
の分離端を結ぶ線がパイプに沿って長手方向に移動し、
伝播性の延性破壊を惹起する。

【０００５】エレメント、特に、パイプラインの延性破
壊の伝播を制限するために、厚肉パイプ、ケーブル、コ
ンクリート支持物、安全弁及び金属スリーブの使用を含
めいろいろの提案が従来からなされているが、それら
は、いずれも、十分に満足なものではなかった。

【０００６】例えば、米国特許第４，１９５，６６９号
は、パイプを囲むように所定の間隔を置いて円周方向の
拘束材としての包囲体を配することによって、延性破壊
の伝播を阻止することを開示している。しかし、この提
案による鋼製のカラー、鋼製のケーブル巻線、鉄筋コン
クリートなどはいずれも非常に重く、取扱いおよび取付
けが困難である。しかも、そのような包囲体とパイプと
の間の間隙や、スチールケーブルの場合はその隣接する
巻線の間の間隙には、塵埃又は水分が浸入し易く、その
結果、割目腐食が生じ、パイプを弱化させる。また、こ
の腐食は、特にケーブルの場合、包囲体自体に対しても
生ずる。

【０００７】米国特許第４，１４８，１２７号および
４，２２４，９６６号は、帯状のき裂防止装置をパイプ
の外面上に嵌合させ、パイプの内面から径方向に圧力を
及ばすことによってその防止装置をパイプに緊密に嵌着
させることを教示している。このき裂防止装置は、パイ
プラインと同じ金属素材の帯状体又はリングであるか
ら、上記米国特許第４，１９５，６６９号の包囲体の場
合と同様に、重さの問題と、取扱いおよび取付困難の問
題がある。しかも、このき裂防止装置の縁部がパイプに
強く嵌着する結果として、該縁部によって係合されるパ
イプ部分に応力が集中する傾向がある。もちろん、応力
の集中はパイプの早期破損につながる。これらの特許
は、帯状体をガラス繊維としてもよいと述べてはいる
が、ガラス繊維の帯状体についてはそれ以上何も教示し
ていない。その帯状体がランダムに配向されたガラス繊
維の典型的な成形リングである場合、き裂を阻止するの
に役立つようにするには、相当な厚みのものとしなけれ
ばならないから、バンドは非常に嵩ばった、取扱いにく
いものとなる。

【０００８】米国特許第３，８７０，３５０号において
は、パイプを囲むように、鋼製の円筒状部材を配設し、
これらの円筒状部材を少くとも部分的に溶接することに
よって、割れ耐性を高くした領域が、パイプに形成され
ている。しかし、これらの鋼製の部材は、非常に重く、
従って、取扱いおよび取付けが困難であり、腐食も生じ
易い。

【０００９】き裂防止装置を設けることのほかに、パイ
プおよびその他のエレメントに、き裂防止装置が設けら
れていない場合にも、腐食保護手段を施すことが望まし
いが、き裂防止装置の設けられる領域においてパイプに
腐食保護を施し、しかも、き裂防止装置の存在との両立
性をもった形態で腐食保護を施すことには、更に困難な
問題がある。

【００１０】

【発明の概要】本発明の目的は、パイプのようなエレメ
ントにおいて伝播性の延性破壊を防止するための、延性
破壊の伝播防止装置を提供することにある。

【００１１】本発明の別の目的は、最少限の労力および
資材で、しかも低コストでエレメントの延性破壊を防止
するための、延性破壊の伝播防止装置を提供することで
ある。

【００１２】本発明の別の目的は、軽量で、耐食性を示
し、エレメントを衝撃から保護することができる上記の
形式の延性破壊の伝播防止装置を提供することである。

【００１３】本発明の更に別の目的は、エレメントのた
めの腐食保護手段を組入れた上記の形式の延性破壊の伝
播防止装置を提供することである。

【００１４】本発明によれば、これらの目的を達成する
ために、１つ以上のき裂防止装置が、パイプのようなエ
レメントの回りに配設され、所定の間隔でエレメントを
包囲して、これと係合される。各々のき裂防止装置は、
樹脂マトリックス中にカプセル化した、一方向性で強度
が高く、軽量の、ひと続きの非金属繊維の帯状体によっ
て形成される。

【００１５】ある種の非金属繊維は、非常に高い引張強
さを有し、しかも、軽量で、耐食性があり、非常に廉価
である。例えば、ガラス繊維は、鋼の約４倍の引張強さ
を有している。従って、例えば複数の平行な可撓性のガ
ラスストランドから成るロービングのように一方向に整
列させたひと続きの連続ガラス繊維は、その長手と平行
な方向に非常に大きな強度を有している。従って、伝播
性の延性破壊を受け易いエレメントに、そのき裂方向に
対して垂直方向に、複数の平行なロービングとして、一
方向性のひと続きの複数のガラス繊維を巻きつけておく
と、エレメントのフープ強度（円周方向の強度）は、そ
の長手方向の強度と平衡され、エレメントが破損するこ
となく耐えることができる応力が著しく増大する。更
に、円周方向即ちフープ方向に帯状にエレメントに巻き
つけられたガラス繊維は、フリーランニングクラックの
形の破断を、それが開始された後に停止させる働きをす
る。

【００１６】このようなひと続きに連続した一方向のガ
ラス繊維の帯状体は、き裂防止装置としてパイプに適用
するのに適しており、工場でパイプの所定部位に巻きつ
けてもよく、あるいはすでに敷設されているパイプに現
場で巻きつけることもできる。このようなガラス繊維
は、また、パイプの継手部やコーナまたはエルボなど応
力が集中する部位に適用することもできる。また、この
ようなガラス繊維の帯状体は、機械によっても、あるい
は手操作によっても巻きつけることができる。

【００１７】このき裂防止装置においては、連続した一
方向ガラス繊維を、アスファルトエナメル、コールター
ルエナメル、ポリエチレンまたはエポキシなどの樹脂材
料のマトリックス内にカプセル化して封入し、次にこの
マトリックスを硬化させる。ガラス繊維は、軽量であっ
て、腐食されにくく、しかも、硬化された樹脂マトリッ
クス中にこれらの繊維が埋めこまれた後は、このき裂防
止装置は、従来のき裂防止装置の難点であった腐食およ
びその他の環境作用に対する耐性を有したものとなる。
更に、本発明によるき裂防止装置は、エレメントとの結
合部を形成し、パイプに対する腐食保護を供与し、塵埃
および水分の浸入を防止し、割目腐食を防止する。更
に、このき裂防止装置は、弾性を示し、エネルギー吸収
作用を有するので、パイプの外部の衝撃から保護し、パ
イプに応力集中が生じるのを防止する。

【００１８】本発明のき裂防止装置は、裸のパイプに巻
きつけることができ、あるいは、耐食材を全面に被覆し
たパイプに巻きつけることもでき、あるいは耐食材を含
有する包み材を被覆したパイプに巻きつけることもでき
る。このき裂防止装置のガラス繊維には、それをパイプ
に巻きつける際に樹脂浴内を通すことによって樹脂質を
飽和（含浸）させてもよく、あるいは、ガラス繊維をパ
イプに巻きつけた後に塗布ローラ又はスプレーヘッドに
よってガラス繊維に樹脂質を含浸させてもよい。更に別
の方法として、繊維に予め樹脂を含浸させておき、それ
らの繊維を乾燥した状態でパイプに巻きつけ、次いで加
熱して樹脂を流動させるようにすることもできる。ま
た、ガラス繊維を複数のスプールから引出し、パイプに
巻きつける際に平行に整列させるようにしてもよく、あ
るいは、ガラス繊維を予め整列させて横断フィラメント
によって保持してマットを形成し、そのガラス繊維マッ
トをパイプに巻きつけるようにしてもよい。

【００１９】樹脂質マトリックス中にカプセル化したガ
ラス繊維の帯状体をパイプの周りに適当な厚さまで巻き
つけた後、マトリックスを硬化させ、硬化した流体不透
過性、耐食性、エネルギー吸収性の軽量の部材を形成す
る。この硬化操作は、加熱、紫外線照射又は触媒などの
適当な手段によって行う。パイプに耐食性を与えるため
の溶融結合エポキシによって、パイプを被覆する場合の
ように、加熱を必要とする工程によってパイプを予め処
理する場合には、ガラス繊維及び樹脂マトリックスは、
この工程の直後に適用してよく、このように、該工程か
らの残留熱を利用して樹脂マトリックスを硬化させるこ
とによって、マトリックスを硬化させる余分の工程が不
要となる。

【００２０】本発明には、樹脂マトリックス中にカプセ
ル化したガラス繊維の帯状体をマンドレル上に巻きつけ
て硬化させた後、マンドレルから取外し、次にそのガラ
ス繊維の帯状体を好都合な時および場所において、パイ
プ上に滑り嵌合させることによって、き裂防止装置をパ
イプとは別個に形成することも含まれる。本発明のき裂
防止装置は、非常に軽量であり、直径何フィートものき
裂防止装置でも１人で持上げ、取付けることができる。
き裂防止装置をパイプに固定するための特別の手段は不
要であり、必要なのは、単にき裂防止装置がパイプに沿
って動くのを防止するための何らかの手段を設けるこ
と、例えばき裂防止装置とパイプとの間の空間をフォー
ムプラスチックのようなフォーム材で充填することであ
る。このようなフォーム材は、パイプとき裂防止装置と
の間の割目腐食を防止する。

【００２１】ガラス繊維の強度と、樹脂のエネルギー吸
収能力とにより、本発明のき裂防止装置は、それが被っ
ているパイプの部分を外部衝撃から保護するとともに、
パイプが破断したとき該き裂防止装置の部分のパイプの
破砕を防止または抑制する。

【００２２】以下に添付図を参照して本発明の実施例を
説明する。

【００２３】

【実施例の説明】第１図から分かるように、本発明によ
るき裂防止装置１０は、回転マンドレル１４に取付けら
れた裸パイプ１２のようなエレメントの周りに巻きつけ
る。第１図には例としてパイプが示されているが、き裂
防止装置は、伝播性の延性破壊を生じるおそれのある圧
縮ガスボンベ、風車の羽根その他のエレメントに巻装す
ることもできる。

【００２４】このき裂防止装置は、各々、例えばガラス
繊維のような多数の連続した、一方向の、軽量、高強
度、非導電性の非金属無機繊維を有する複数のロービン
グ１６で形成した帯状体から成っている。ここではガラ
ス繊維を用いた場合について説明するが、ケブラー（登
録商標）などのような、高い引張強さを有する他の同様
な繊維を用いることができる。これらのロービング１６
は、巻糸軸架２０（クリール）内に収納された複数のス
プール１８から引出し、収集器２２および整列器２４を
通して送給し、次にエポキシ、アスファルトエナメル、
コールタールエナメルまたはポリエチレンのような樹脂
２７の浴２６を通して引出し、ロービング１６に樹脂２
７を含浸させる。ロービング１６は、浴２６からロービ
ング巻きつけ器２８に供給する。巻きつけ器２８は、回
転マンドレル１４に平行に配置した横棒３０上に移動自
在に取付けてあり、ロービングから余剰樹脂を除去する
装置も通常配設されている。巻きつけ器２８は、所定の
範囲内で横棒３０に沿って往復動させることができ、パ
イプ１２上に所望の幅の帯状体を巻きつけることができ
る。適当な厚みを有する帯状体（き裂防止装置１０）が
得られるまで、樹脂マトリックス中にカプセル化した連
続繊維の追加の層をパイプ１２に巻きつけることができ
る。

【００２５】パイプ１２にき裂防止装置１０を巻きつけ
るための図示の装置は、単に例として示したものであ
り、ロービング１６の形のガラス繊維を樹脂なしでパイ
プ１２に巻きつけ、パイプ１２に巻装されたガラス繊維
の巻きにコーティングローラ、スプレーノズルその他の
適当な装置によって樹脂２７を塗布するようにしてもよ
い。ロービング１６をエレメントの回りに巻きつける前
にロービング１６に樹脂２７を適用しておくことには、
樹脂２７の粘着性によりロービング１６がエレメントに
接着され、それによって繊維の巻きつけの開始を容易に
するという利点がある。いずれにしても、き裂防止装置
１０が、樹脂２７のマトリックス中にカプセル化された
連続的な一方向性ガラス繊維によって構成され、エレメ
ントに対する連続した途切れのない結合部を形成し、そ
れによってエレメントとき裂防止装置の間に腐食を起す
ような塵埃や水分が浸入する間隙を残さないようにする
のに十分な量の樹脂を適用する。

【００２６】き裂防止装置１０は、第１図に示された回
転マンドレル１４に取付けられたパイプ１２の他に、静
止したエレメントに、他の巻きつけ装置によって巻きつ
けることもでき、また回転するエレメントまたは静止し
たエレメントに手操作によって巻きつけることもでき
る。ある種の巻きつけ装置機は、き裂防止装置１０を工
場ででも、現場ででも巻きつけるのに適している。き裂
防止装置１０がエレメント上の所定位置に巻きつけられ
たら、加熱、紫外線放射、触媒または他の適当な手段に
よって樹脂２７を硬化させ、流体不透過性、耐食性、エ
ネルギー吸収性の、軽量の部材を形成する。

【００２７】ガラス繊維に予め樹脂２７を含浸させてお
き、乾燥した状態でガラス繊維をパイプ１２に巻きつけ
るようにしてもよい。樹脂２７を予備含浸させたガラス
繊維をパイプ１２上の所定位置に巻きつけたら、ガラス
繊維を加熱して樹脂２７を流動させ、樹脂マトリックス
中にカプセル化されたガラス繊維の単一体を形成する。
更に熱を加えると、前記の他の硬化方法の場合と同様に
して樹脂が硬化される。

【００２８】本発明に従ってパイプをき裂防止処理する
に先立って、サンドブラストまたはグリットブラストに
より、あるいは機械的な削り落しおよびワイヤブラシに
よってパイプ１２を浄化し、パイプの表面から油、グリ
ス、塵埃、水分、非接着性の圧延皮膜などを除去してお
くことが好ましい。第２図は、き裂防止装置１０がパイ
プ１２上の所定位置に結合された状態を示している。第
２図のパイプ１２は裸パイプであるが、き裂防止装置１
０は、例えば耐食被覆を備えたパイプのような被覆パイ
プに適用することもできる。例えば、本出願人の米国特
許願第３１２，９５８号に開示されているようにパイプ
の粗面塗りされた外表面にコールタールエナメル、アス
ファルトエナメルのような比較的粘性の高温の物質を被
覆しておくこともできる。あるいは、パイプの予め加熱
された外表面に静電法などによって流動状のエポキシ粉
末を吹付けることによってパイプを被覆しておくことも
できる。更にはまた、押出ポリエチレンの被覆をパイプ
の外表面に慣用の態様で被覆することもできる。

【００２９】第３図は、き裂防止装置１０′が被覆パイ
プ１２′の周りに部分的に巻きつけられた状態を示して
いる。このき裂防止装置１０′の連続ガラス繊維は、複
数のロービング１６′の形とし、それらのロービングを
横断フィラメント３２によって結合してマット３４の形
としてある。このマット３４に樹脂２７を含浸させ、パ
イプ１２′の周りにマット３４を巻きつける。ここに例
示したマット以外の形態のマットを用いることもでき
る。

【００３０】本発明によるき裂防止装置を第３図の実施
例のように被覆されたパイプに適用する場合において、
き裂防止装置１０′が被覆されたパイプ１２の回りに巻
きつけられる場合には、被覆工程には、パイプ１２を加
熱することが含まれる。この場合には、き裂防止装置１
２′の巻きつけは、被覆の直後に行ない、被覆工程から
の残留熱によってき裂防止装置１０′の樹脂マトリック
スが硬化されるようにすると、樹脂マトリックスを硬化
させるための特別の工程が不要になる。

【００３１】第４図に示されるように、パイプ１２″に
耐食保護を与えるためにアスファルトまたはその他の耐
食物質で処理した紙、布その他の材料のらせん状の包み
材３５を予め巻きつけたパイプ１２″にき裂防止装置１
０を巻きつけることもできる。包み材３５は、接着材を
被覆したポリエチレンまたはポリプロピレンのテープで
あってもよい。第４図には、第１〜２図のき裂防止装置
１０を包み材３５の上の所定位置に巻きつけたところが
示されているが、樹脂含浸したマット３４によって形成
された第３図のき裂防止装置１０′または以下に述べる
本発明の他の実施形態のき裂防止装置を用いることもで
きる。

【００３２】き裂防止装置は、通常、き裂の伝播を停止
させることができる幅および厚さにまで巻きつけ、パイ
プラインに沿って所定の間隔をおいて配設する。例え
ば、パイプラインの１パイプ分節当り、１つのき裂防止
装置１０を設けることができる。多くの場合、本発明の
き裂防止装置は、伝播するき裂を停止させるには、パイ
プの直径より狭い幅のものでよく、パイプの壁厚より薄
い厚さのもので十分であることが判明している。パイプ
の直径の約２／３の幅を有し、パイプの壁厚の６０％に
相当する厚みを有するき裂防止装置の帯状物を、パイプ
に巻きつけておけば、き裂を停止させることができるこ
とが判明している。

【００３３】このき裂防止装置は、また、樹脂マトリッ
クス中にカプセル化したガラス繊維の１つの帯状体だけ
ではき裂を停止させるのに十分ではないが、１組のその
ような帯状体を設け、それらが共働作用によって、き裂
の伝播を遅らせ、停止させるような形で適用することも
できる。例えば、第５図に示されるように、樹脂マトリ
ックス中にカプセル化したガラス繊維の連続した、らせ
ん状の帯状体３６をパイプ１２の全長に亘って各パイプ
分節１２ａ，１２ｂ，１２ｃ，………の間の継手３８
（通常は溶接部）を横切って巻回することができる。つ
る巻き線のピッチは、その隣接する巻きと巻きの間に空
間ができるように設定する。別の方法として、第６図に
示されるように、き裂の伝播を遅らせ停止させるため
に、複数の小さな帯状体４０を小さな間隔でパイプ１２
に巻きつけることもできる。

【００３４】更に別の実施例として、第７図に示される
ように例えばパイプ分節１２ｂ，１２ｄ………のように
１つ置きのパイプ分節または幾つか置きのパイプ分節
に、樹脂マトリックス中にカプセル化した連続ガラス繊
維を巻きつけ、１つのパイプ分節の全長に亘って延長す
るき裂防止装置４２を形成するようにすることもでき
る。もちろん、この構成では、１つのき裂防止装置でき
裂を防止するのに十分であり、き裂防止処理は、総パイ
プの分節数の１／２またはそれ以下のパイプ分節に施せ
ばよい。

【００３５】通常、本発明のき裂防止装置の巻きは、長
方形の断面形状とするが、長方形以外の形状とすること
もできる。例えば、第８図に示されるように、き裂防止
装置４４の両側縁４５をバベル状としてもよい。第９図
に示される実施例では、き裂防止装置４６の中央部を厚
くし、両側縁４７をテーパ状として円弧状の断面形状と
している。第８および９図ではき裂防止装置４４，４６
の断面にガラス繊維が多数のドットで表わされている
が、実際には、好ましくは直径０．０２５４mmの何千本
ものガラス繊維が一方向に平行に配列されている。本発
明によるき裂防止装置は、ほとんど張力をかけることな
く、ガラス繊維をきちんと巻きつけるのに必要なだけの
張力で巻回させる。従って、このき裂防止装置は、それ
が巻きつけられたパイプに大きな応力を伝えることがな
く、従って、パイプに、特にき裂防止装置の側縁に沿っ
て応力集中を惹起することがない。第８および９図の実
施例のき裂防止装置は、その両側縁とパイプ１２との間
の応力を特に小さくし、それによってき裂防止装置がそ
の両側縁においてパイプに応力集中を惹起する可能性を
排除する。

【００３６】本発明のき裂防止装置は、現場でパイプに
巻装することができるので、第１０図に符号１０で示さ
れるように、パイプ１２にそれらのパイプ分節１２ａ，
１２ｂ，１２ｃ………の間の継手３８を直接被うように
して装着することができ、それによってき裂防止機能と
同時に、通常は別途の保護手段を必要とする継手３８を
保護する機能をも実現する。第１０図には第１〜２図の
き裂防止装置１０が継手３８を被うように装着されたも
のとして示されている。マット３４を用いた第３図のき
裂防止装置１０′のような本発明の他の実施例のき裂防
止装置も、継手３８を被うようにして装着することがで
きる。

【００３７】第１１図は、分離自在のき裂防止装置４８
を装着したパイプ１２の横断面を示す。き裂防止装置４
８は、前記の他の実施例のき裂防止装置と同じ材料で形
成されるが、例えば回転マンドレル上に巻装して硬化さ
せ、マンドレルから取外すことによって、き裂防止処理
されるエレメント（パイプ）とは別個に形成する。ガラ
ス繊維と樹脂は非常に軽量なため、直径何フィートもの
パイプのためのき裂防止装置も、十分に軽く、１人で持
上げ、パイプに取付けることができる。き裂防止装置４
８は、パイプ１２に滑り嵌合させてそれに固定し、パイ
プ１２の長手に沿って摺動しないようにする。このき裂
防止装置４８をパイプ上の所定位置に保持するための好
適な１つの手段は、パイプ１２とき裂防止装置４８との
間の空間に、例えばプラスチックフォームのようなフォ
ーム充填材５０を充填することである。フォーム充填材
５０は、き裂防止装置４８をパイプ１２に接合するばか
りでなく、き裂防止装置４８とパイプ１２との間の空間
を充填し、塵埃および水分の浸入を防止し、それによっ
て間隙腐食を防止する。

【００３８】以上の説明から明らかなように、本発明
は、伝播する延性破壊を防止する上に大きな利点をもた
らす。本発明は、その精神及び範囲から逸脱することな
く、いろいろな変形が可能であることは、当業者には明
らかであろう。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のき裂防止装置をパイプに巻装する状態
を示す斜視図である。

【図２】裸のパイプに装着された第１図のき裂防止装置
を示す立面図である。

【図３】被覆パイプに巻装された本発明の変形実施例に
よるき裂防止装置を示す立面図である。

【図４】耐食性の包み材が被覆されたパイプに巻装した
第１図のき裂防止装置を示す立面図である。

【図５】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置を
示す立面図である。

【図６】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置を
示す立面図である。

【図７】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置を
示す立面図である。

【図８】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置を
示す立面図である。

【図９】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置を
示す立面図である。

【図１０】別の本発明の変形実施例によるき裂防止装置
を示す立面図である。

【図１１】本発明に従ってパイプとは別途に形成され、
パイプに装着されたき裂防止装置およびパイプを示す横
断面図である。

【符号の説明】

１０，１０′４２，４４，４６，４８ き裂防止装置 １２，１２′，１２″ パイプ １６ ロービング（非金属繊維）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定の方向に高速で伝播される延性破壊
   をパイプが受け易くなるようにするのに十分な圧力の下
   に流体を閉じこめるパイプの該延性破壊を防止するため
   のき裂防止装置であって、 伝播される延性破壊を停止させる停止手段を含み、該停
   止手段は、該パイプを包囲してこれを拘束する帯状体を
   含み、該帯状体は、樹脂マトリックス中にカプセル化し
   た、実質的に一方向性で、引張り強度が高く、非腐食
   性、軽量の、複数の連続した非金属繊維を含み、該非金
   属繊維は、該樹脂マトリックスと共に、流体不透過性部
   材を形成していることを特徴とするき裂防止装置。