JPH0693358A - Ti−Ni−Cu系機能性合金 - Google Patents
Ti−Ni−Cu系機能性合金Info
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- JPH0693358A JPH0693358A JP27170291A JP27170291A JPH0693358A JP H0693358 A JPH0693358 A JP H0693358A JP 27170291 A JP27170291 A JP 27170291A JP 27170291 A JP27170291 A JP 27170291A JP H0693358 A JPH0693358 A JP H0693358A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 超弾性及び防振(振動吸収)性に優れるのみ
ならず、繰り返し使用中に超弾性効果の低下を生じず極
く強い酸性・アルカリ性極限環境下や生体内部での長期
使用によっても生体毒物の発生がないTi−Ni−Cu
系機能性合金を提供する。 【構成】 Ti−Ni−Cu合金溶湯を、高純度Ar雰
囲気中で、試料誘導加熱用コイルが巻回された石英ノズ
ルから直接回転双ロールに溶射して、溶湯接触部におい
て急速に冷却凝固させて急冷凝固リボンを得た。その
際、ロール(直径=200mm)回転速度を100〜1
000rpmとした。得られたTi−Ni−Cu系機能
性合金リボンの寸法は、板厚が0.06〜0.3mm、
幅が5.0mm、長さが100mmであった。
ならず、繰り返し使用中に超弾性効果の低下を生じず極
く強い酸性・アルカリ性極限環境下や生体内部での長期
使用によっても生体毒物の発生がないTi−Ni−Cu
系機能性合金を提供する。 【構成】 Ti−Ni−Cu合金溶湯を、高純度Ar雰
囲気中で、試料誘導加熱用コイルが巻回された石英ノズ
ルから直接回転双ロールに溶射して、溶湯接触部におい
て急速に冷却凝固させて急冷凝固リボンを得た。その
際、ロール(直径=200mm)回転速度を100〜1
000rpmとした。得られたTi−Ni−Cu系機能
性合金リボンの寸法は、板厚が0.06〜0.3mm、
幅が5.0mm、長さが100mmであった。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、急冷凝固法により作
製したTi−Ni−Cu系機能性合金に関するものであ
り、特にCu含有量および急冷速度を最適に調整したT
i−Ni−Cu系機能性合金に関するものである。
製したTi−Ni−Cu系機能性合金に関するものであ
り、特にCu含有量および急冷速度を最適に調整したT
i−Ni−Cu系機能性合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、Ti−Ni−Cu機能性合金は、
溶解・熱間加工プロセスにより最終形状の製品素材を得
るのが一般的であった。この溶解・熱間加工プロセスに
よれば、高周波真空溶解、又はプラズマ溶解法等によっ
て作られた鋳塊をプレス、圧延、鍛造等の熱間加工手段
により所要の形状に加工して用いるものであった。
溶解・熱間加工プロセスにより最終形状の製品素材を得
るのが一般的であった。この溶解・熱間加工プロセスに
よれば、高周波真空溶解、又はプラズマ溶解法等によっ
て作られた鋳塊をプレス、圧延、鍛造等の熱間加工手段
により所要の形状に加工して用いるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この溶解・熱
間加工プロセスによりTi−Ni−Cu系機能性合金を
得る場合には、Ti−Ni合金は難加工性ゆえに、生体
などに使用するにあたって、細線(ワイヤー)や薄板等
に加工するのは困難であった。また、溶解加工材料は、
それを構成する結晶粒径が最小でも10ミクロン内外の
粗粒で、その方位もランダムのため、材料強度が低く、
材料全体にわたる、材料全体にわたる変態時期が場所に
よりずれたり、局所部分で塑性ひずみを生じ、その結
果、変態点が不明瞭になり、超弾性特性が低下し、材料
使用規格化に不都合が生じることとなる。
間加工プロセスによりTi−Ni−Cu系機能性合金を
得る場合には、Ti−Ni合金は難加工性ゆえに、生体
などに使用するにあたって、細線(ワイヤー)や薄板等
に加工するのは困難であった。また、溶解加工材料は、
それを構成する結晶粒径が最小でも10ミクロン内外の
粗粒で、その方位もランダムのため、材料強度が低く、
材料全体にわたる、材料全体にわたる変態時期が場所に
よりずれたり、局所部分で塑性ひずみを生じ、その結
果、変態点が不明瞭になり、超弾性特性が低下し、材料
使用規格化に不都合が生じることとなる。
【0004】しかも、結晶組織が粗粒で、基地の転移密
度が小さいために、降伏応力が低く、繰り返し使用中に
材料中に塑性ひずみ(転移等の欠陥)を生じ、超弾性効
果の低下や変態点の変化が起こり、以上のことから機能
性合金の応用範囲を狭めていた。
度が小さいために、降伏応力が低く、繰り返し使用中に
材料中に塑性ひずみ(転移等の欠陥)を生じ、超弾性効
果の低下や変態点の変化が起こり、以上のことから機能
性合金の応用範囲を狭めていた。
【0005】また、耐食性についても、本来、TiNi
系は良いのであるが、加工材料の粗結晶粒や表面不均質
のため極く強い酸性・アルカリ性極限環境下での長期使
用には問題が残され、生体中でのNiイオンの溶出によ
る生体毒性(発ガン性等)も危惧され応用範囲が狭くな
っていた。従って、この発明は以上の従来のTi−Ni
−Cu系機能性合金の有する問題を解消し、細線等の最
終製品を容易に得ることができ、繰り返し使用中に超弾
性効果の低下を生じるようなことはなく、しかも極く強
い酸性・アルカリ性極限環境下や生体内部での長期使用
によっても生体毒物の発生がないTi−Ni−Cu系機
能性合金を提供することを目的とする。
系は良いのであるが、加工材料の粗結晶粒や表面不均質
のため極く強い酸性・アルカリ性極限環境下での長期使
用には問題が残され、生体中でのNiイオンの溶出によ
る生体毒性(発ガン性等)も危惧され応用範囲が狭くな
っていた。従って、この発明は以上の従来のTi−Ni
−Cu系機能性合金の有する問題を解消し、細線等の最
終製品を容易に得ることができ、繰り返し使用中に超弾
性効果の低下を生じるようなことはなく、しかも極く強
い酸性・アルカリ性極限環境下や生体内部での長期使用
によっても生体毒物の発生がないTi−Ni−Cu系機
能性合金を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】従来の溶解加工機能性合
金(主としてTi−Ni系)の欠点をできるだけ少なく
するためには、その材料組織自体の改善が必要なことが
解る。即ち、基地組織を急冷凝固処理により微細化・均
質化させ、降伏強度レベルを上げて、材料変形に伴い発
生する基地の塑性ひずみ(不可逆永久変形)をできるだ
け抑え、繰り返し使用に対する疲労劣化も抑制させるよ
うな金属組織変化を与える必要がある。また、できれば
その材料を構成する結晶の方位をできるだけ特定の方向
に揃えた方が大きな超弾性ひずみや完全な結晶変態を起
こさせるのに都合がよい。また、これらの金属組織改変
により、材料の防振性(内耗、各周波数振動に対する動
的減衰性など)の向上が期待できる。また、材料形状も
バルク複合材料化を考えて応用範囲を拡大させるために
は、より薄くしたり細いワイヤー状にして、よりしなや
かさを出す必要がある。
金(主としてTi−Ni系)の欠点をできるだけ少なく
するためには、その材料組織自体の改善が必要なことが
解る。即ち、基地組織を急冷凝固処理により微細化・均
質化させ、降伏強度レベルを上げて、材料変形に伴い発
生する基地の塑性ひずみ(不可逆永久変形)をできるだ
け抑え、繰り返し使用に対する疲労劣化も抑制させるよ
うな金属組織変化を与える必要がある。また、できれば
その材料を構成する結晶の方位をできるだけ特定の方向
に揃えた方が大きな超弾性ひずみや完全な結晶変態を起
こさせるのに都合がよい。また、これらの金属組織改変
により、材料の防振性(内耗、各周波数振動に対する動
的減衰性など)の向上が期待できる。また、材料形状も
バルク複合材料化を考えて応用範囲を拡大させるために
は、より薄くしたり細いワイヤー状にして、よりしなや
かさを出す必要がある。
【0007】以上の諸条件を充たす新素材開発のため
に、本発明者らはTiNiCu溶湯をノズルから直接C
u冷却ロールに射出して、最終TiNiCu薄板(約2
0〜300ミクロン厚さ)を得る回転急冷凝固法(Me
lt−spinning Technique)を採用
し試みた。その結果、かかる回転急冷凝固法による急冷
効果により、均質で極く微細な異方性(数ミクロン以下
の柱状結晶)組織を得ることができ、さらに、下部組織
は高転位密度となっているため、降伏による塑性ひずみ
が生じ難く、材料特性、超弾性、防振特性等の機械的特
性の向上および長期使用中の機能特性の劣化も抑制さ
れ、耐食性の向上もはかられることを知見し、本発明を
なすに至った。
に、本発明者らはTiNiCu溶湯をノズルから直接C
u冷却ロールに射出して、最終TiNiCu薄板(約2
0〜300ミクロン厚さ)を得る回転急冷凝固法(Me
lt−spinning Technique)を採用
し試みた。その結果、かかる回転急冷凝固法による急冷
効果により、均質で極く微細な異方性(数ミクロン以下
の柱状結晶)組織を得ることができ、さらに、下部組織
は高転位密度となっているため、降伏による塑性ひずみ
が生じ難く、材料特性、超弾性、防振特性等の機械的特
性の向上および長期使用中の機能特性の劣化も抑制さ
れ、耐食性の向上もはかられることを知見し、本発明を
なすに至った。
【0008】すなわちこの発明によれば、Ti(50±
yat%)−Ni(50−y−x)−Cux(0≦y≦
2at%、0≦x≦10at%)系合金溶湯を急冷凝固
させて得られるTi−Ni−Cu系機能性合金が提供さ
れる。
yat%)−Ni(50−y−x)−Cux(0≦y≦
2at%、0≦x≦10at%)系合金溶湯を急冷凝固
させて得られるTi−Ni−Cu系機能性合金が提供さ
れる。
【0009】またこの発明によれば、Ti(50±ya
t%)−Ni(50−y−x)−Cux(0≦y≦2a
t%、0≦x≦10at%)系合金溶湯を回転ロールに
より急冷凝固させるにあたりそのロール回転速度(冷却
速度)を1m/sec(1×102゜C/sec)〜2
0m/sec (1×104℃/sec)とするTi−
Ni−Cu系機能性合金が提供される。
t%)−Ni(50−y−x)−Cux(0≦y≦2a
t%、0≦x≦10at%)系合金溶湯を回転ロールに
より急冷凝固させるにあたりそのロール回転速度(冷却
速度)を1m/sec(1×102゜C/sec)〜2
0m/sec (1×104℃/sec)とするTi−
Ni−Cu系機能性合金が提供される。
【0010】この発明において用いられる急冷凝固法と
しては例えば溶湯を直接Cu冷却板などに吹き付け急冷
し小試験片を作成するガン法、連続薄板作成用の回転ロ
ール(単、双ロール)法、細線作製に適する回転液中紡
糸法、急冷粉末を作るスプレー法がある。
しては例えば溶湯を直接Cu冷却板などに吹き付け急冷
し小試験片を作成するガン法、連続薄板作成用の回転ロ
ール(単、双ロール)法、細線作製に適する回転液中紡
糸法、急冷粉末を作るスプレー法がある。
【0011】以上の各急冷法によって急冷凝固を行うと
きには、その冷却速度は1×102〜1×104℃/s
ecとするのが良い。冷却速度が1×102℃/sec
未満である場合には急冷金属組織(特に、結晶粒径)が
粗大化し、かつランダム方位化し超弾性効果の低下を生
じ、多結晶の様に超弾性効果、耐疲労劣化性、耐腐食性
が低下してしまう。逆に冷却速度が1×104℃/se
cを越えるようになると、材料強度・延性は向上するも
のの動的周波数に対する材料減衰能が低下し始める。
きには、その冷却速度は1×102〜1×104℃/s
ecとするのが良い。冷却速度が1×102℃/sec
未満である場合には急冷金属組織(特に、結晶粒径)が
粗大化し、かつランダム方位化し超弾性効果の低下を生
じ、多結晶の様に超弾性効果、耐疲労劣化性、耐腐食性
が低下してしまう。逆に冷却速度が1×104℃/se
cを越えるようになると、材料強度・延性は向上するも
のの動的周波数に対する材料減衰能が低下し始める。
【0012】この発明において、Cuの含有量xは0≦
x≦10at%とするのが良い。xが10at%を越え
ると、急冷材料はできるが、一般にその強度は、飽和、
低下してしまい、超弾性材料などとして不都合な場合が
生じる。
x≦10at%とするのが良い。xが10at%を越え
ると、急冷材料はできるが、一般にその強度は、飽和、
低下してしまい、超弾性材料などとして不都合な場合が
生じる。
【0013】
【作用】一般に溶湯急冷凝固法により金属溶湯を急冷凝
固させる場合、冷却速度(ロール回転速度)を早くする
に従って、金属組織はデンドライト相から微細結晶化さ
れ、等軸柱状結晶をへて超急冷速度(1×106℃/s
ec以上程度)でアモルファスに変化する。Ti−Ni
−Cu溶湯の急冷速度を大きくすると、例えばロール速
度を1m/sec〜10m/secと変えた場合が図1
〜図2に示される様に、その金属組織は次第に微細化
し、板厚方向に結晶軸が揃った微細柱状晶(結晶粒径=
2〜10ミクロン)組織となる。この点につきX線結晶
構造解析を行っても結晶方向がそろっていることが確認
される。従ってこの急冷速度で冷却したTi−Ni−C
u系機能性合金は、このような金属組織を有することか
ら、次のような機能上特性を有するに至る。
固させる場合、冷却速度(ロール回転速度)を早くする
に従って、金属組織はデンドライト相から微細結晶化さ
れ、等軸柱状結晶をへて超急冷速度(1×106℃/s
ec以上程度)でアモルファスに変化する。Ti−Ni
−Cu溶湯の急冷速度を大きくすると、例えばロール速
度を1m/sec〜10m/secと変えた場合が図1
〜図2に示される様に、その金属組織は次第に微細化
し、板厚方向に結晶軸が揃った微細柱状晶(結晶粒径=
2〜10ミクロン)組織となる。この点につきX線結晶
構造解析を行っても結晶方向がそろっていることが確認
される。従ってこの急冷速度で冷却したTi−Ni−C
u系機能性合金は、このような金属組織を有することか
ら、次のような機能上特性を有するに至る。
【0014】柱状晶形成により、結晶方位がそろってい
るために、かかるTi−Ni−Cu系機能性合金では、
全体として同時に均一な変態が生じる。従って、急冷凝
固法により、変態ひずみの大きい結晶方位を材料長手方
向に揃えることにより、全体として超弾性及び防振機能
を大きくすることができる。また、微細柱状結晶のた
め、素材全体として変態が同時に起こり、その結果、変
態温度を明確に規定できることになる。また微細結晶組
織であるため、材料降伏応力が高くなり、負荷応力安定
性が向上する。さらに微細結晶で降伏応力が高く、かつ
結晶方位がそろっている結果として、繰り返し使用に対
して、塑性ひずみ・転位が導入されにくく、繰り返し機
能劣化しにくくなる。
るために、かかるTi−Ni−Cu系機能性合金では、
全体として同時に均一な変態が生じる。従って、急冷凝
固法により、変態ひずみの大きい結晶方位を材料長手方
向に揃えることにより、全体として超弾性及び防振機能
を大きくすることができる。また、微細柱状結晶のた
め、素材全体として変態が同時に起こり、その結果、変
態温度を明確に規定できることになる。また微細結晶組
織であるため、材料降伏応力が高くなり、負荷応力安定
性が向上する。さらに微細結晶で降伏応力が高く、かつ
結晶方位がそろっている結果として、繰り返し使用に対
して、塑性ひずみ・転位が導入されにくく、繰り返し機
能劣化しにくくなる。
【0015】
【実施例】以下にこの発明の実施例を説明する。表1
(Cu=0,10at%の2種類)に示す組成のTi−
Ni−Cu合金溶湯を、高純度Ar雰囲気中で、試料誘
導加熱用コイルが巻回された石英ノズルから直接回転双
ロールに溶射して、溶湯接触部において急速に冷却凝固
させて急冷凝固リボンを得た。その際、ロール(直径=
200mm)回転速度を100〜1000rpmとし
た。得られたTi−Ni−Cu系機能性合金リボンの寸
法は、板厚が0.06〜0.3mm、幅が5.0mm、
長さが100mmであった。かかる合金リボンにつき諸
特性を評価した。また、比較例として従来の溶解加工プ
ロセス材料についてもその機能特性を評価するために実
施例と同一組成の900℃熱間圧延試料を用意した。さ
らに、以上の実施例、比較例のサンプルに真空中、65
0℃、0.5時間の焼鈍後氷水焼き入れして低温マルテ
ンサイト相とする熱処理を施した。
(Cu=0,10at%の2種類)に示す組成のTi−
Ni−Cu合金溶湯を、高純度Ar雰囲気中で、試料誘
導加熱用コイルが巻回された石英ノズルから直接回転双
ロールに溶射して、溶湯接触部において急速に冷却凝固
させて急冷凝固リボンを得た。その際、ロール(直径=
200mm)回転速度を100〜1000rpmとし
た。得られたTi−Ni−Cu系機能性合金リボンの寸
法は、板厚が0.06〜0.3mm、幅が5.0mm、
長さが100mmであった。かかる合金リボンにつき諸
特性を評価した。また、比較例として従来の溶解加工プ
ロセス材料についてもその機能特性を評価するために実
施例と同一組成の900℃熱間圧延試料を用意した。さ
らに、以上の実施例、比較例のサンプルに真空中、65
0℃、0.5時間の焼鈍後氷水焼き入れして低温マルテ
ンサイト相とする熱処理を施した。
【0016】
【表1】
【0017】以上の回転急冷凝固法により得られたTi
NiCu合金が有する機能特性のうち、超弾性及び防振
・減衰特性を調べた。超弾性については、材料の熱弾性
マルテンサイト変態温度上下にわたる各温度での引張り
応力〜ひずみヒステリシス曲線を求め、そのヒステリシ
ス面積以外の領域から定義されるひずみエネルギー貯蔵
性により評価した。防振・減衰特性については、準静的
範囲での防振性はヒステリシスの面積(=ひずみエネル
ギー吸収能)で評価し、動的減衰能については、11H
zの引っ張り振動型内耗試験機、高周波音波吸収能につ
いては、超音波顕微鏡により測定した。なお、準静的範
囲での引っ張り応力〜ひずみヒステリシス曲線から定義
されるひずみエネルギー吸収能(防振性)Edと貯蔵性
(超弾性)Erの定義を図3に示す。
NiCu合金が有する機能特性のうち、超弾性及び防振
・減衰特性を調べた。超弾性については、材料の熱弾性
マルテンサイト変態温度上下にわたる各温度での引張り
応力〜ひずみヒステリシス曲線を求め、そのヒステリシ
ス面積以外の領域から定義されるひずみエネルギー貯蔵
性により評価した。防振・減衰特性については、準静的
範囲での防振性はヒステリシスの面積(=ひずみエネル
ギー吸収能)で評価し、動的減衰能については、11H
zの引っ張り振動型内耗試験機、高周波音波吸収能につ
いては、超音波顕微鏡により測定した。なお、準静的範
囲での引っ張り応力〜ひずみヒステリシス曲線から定義
されるひずみエネルギー吸収能(防振性)Edと貯蔵性
(超弾性)Erの定義を図3に示す。
【0018】図4は実施例及び比較例の各温度における
応力〜ヒステリシスループを示す。この図4の各温度の
応力〜ひずみヒステリシスループに示されるように、従
来の加工・圧延材では低温マルテンサイト相(Mf以
下、303K=30℃)と高温安定相で応力・ひずみヒ
ステリシス曲線は変化が小さく、RQよりも低応力側で
降伏が起こり、高温側でのヒステリシスが残り、超弾性
特性は低い。これに対し実施例のTi−Ni−Cu系機
能性合金では低温マルテンサイト側では、大きなヒステ
リシスが現れ、この面積の広さで定義される準静的範囲
での材料防振性は大いに向上した。かかる傾向は特に急
冷速度が大きいほどその傾向が強い。また、高温(オー
ステナイト相、Af以上)以上での超弾性特性も実施例
の方が高応力側までヒステリシスはほとんど現れず、こ
の傾向も急冷速度の増加と共に上昇する。以上から図5
に示されるように実施例のものは比較例のものよりも良
好な超弾性(=ひずみエネルギー貯蔵性)及び防振性
(ひずみエネルギー貯蔵性)が認められた。
応力〜ヒステリシスループを示す。この図4の各温度の
応力〜ひずみヒステリシスループに示されるように、従
来の加工・圧延材では低温マルテンサイト相(Mf以
下、303K=30℃)と高温安定相で応力・ひずみヒ
ステリシス曲線は変化が小さく、RQよりも低応力側で
降伏が起こり、高温側でのヒステリシスが残り、超弾性
特性は低い。これに対し実施例のTi−Ni−Cu系機
能性合金では低温マルテンサイト側では、大きなヒステ
リシスが現れ、この面積の広さで定義される準静的範囲
での材料防振性は大いに向上した。かかる傾向は特に急
冷速度が大きいほどその傾向が強い。また、高温(オー
ステナイト相、Af以上)以上での超弾性特性も実施例
の方が高応力側までヒステリシスはほとんど現れず、こ
の傾向も急冷速度の増加と共に上昇する。以上から図5
に示されるように実施例のものは比較例のものよりも良
好な超弾性(=ひずみエネルギー貯蔵性)及び防振性
(ひずみエネルギー貯蔵性)が認められた。
【0019】次に図6に実施例及び比較例の11Hz縦
振動に対する材料減衰係数(内耗Q−1=tanδ)を
比較して示した。変態点(Ms)以下の低温マルテンサ
イト相において、急冷凝固材料(RQ)は2から3倍程
度の上昇がみられ、低周波数側での動的材料減衰能(防
振性)の向上が認められた。
振動に対する材料減衰係数(内耗Q−1=tanδ)を
比較して示した。変態点(Ms)以下の低温マルテンサ
イト相において、急冷凝固材料(RQ)は2から3倍程
度の上昇がみられ、低周波数側での動的材料減衰能(防
振性)の向上が認められた。
【0020】また、図7に超音波顕微鏡(基本周波数=
215MHz)を用いて実施例及び比較例の急冷Ti
(50)−Ni(40)−Cu(10at%)試料薄板
に集束レンズにより表面波をたて、そのV(起電力)〜
Z(深さ)波形から計算された高周波減衰能を示す。や
はり、急冷凝固速度の上昇にともなって減衰係数αは増
加しており、急冷に伴う形状記憶変態ひずみの増加との
良い対応関係が認められる。この実施例では215MH
zであったが、さらに急冷速度を上昇させれば、さらに
金属組織は微細化するのでさらに高周波側までの減衰能
の向上が期待できる。
215MHz)を用いて実施例及び比較例の急冷Ti
(50)−Ni(40)−Cu(10at%)試料薄板
に集束レンズにより表面波をたて、そのV(起電力)〜
Z(深さ)波形から計算された高周波減衰能を示す。や
はり、急冷凝固速度の上昇にともなって減衰係数αは増
加しており、急冷に伴う形状記憶変態ひずみの増加との
良い対応関係が認められる。この実施例では215MH
zであったが、さらに急冷速度を上昇させれば、さらに
金属組織は微細化するのでさらに高周波側までの減衰能
の向上が期待できる。
【0021】
【発明の効果】以上のようにこの発明のTi−Ni−C
u系機能性合金によれば、均質で極く微細な異方性(数
ミクロン以下の柱状結晶)組織であるため、また、下部
組織は高転位密度となっているため、降伏による塑性ひ
ずみが生じ難く、材料特性、超弾性、防振特性等の機械
的特性の向上および長期使用中の機能特性の劣化も抑制
され、耐食性の向上もはかられるという優れた効果が奏
される。この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金は以
上のような優れた特性を有することから次のような適用
例がある。 1.この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の高温安
定相(Af点以上領域、オーステナイト相)での超弾性
(擬弾性)機能を生かして、しなやかに人体に適合する
服飾材料(メガネフレーム、ブラジャー、肩パッド等)
及び生体医療用材料(例えば歯科矯正用ワイヤー、脊椎
矯正用棒など)に適用することができる。このような用
途に適用する場合、生体環境との適合毒性の有無(耐食
性)、長期使用に伴う材料特性・機能の劣化防止が重要
となり、この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金では
これらの特性が極めて良好であり、その点からも有利で
ある。 2.防振合金 低温マルテンサイト相(Mf点以下)での変態ひずみ〜
温度ヒステリシス曲線の掃く面積から定義される準静的
ひずみエネルギー吸収性が従来の溶解加工材料に比べて
最大2倍程度大きく数Hz〜数十Hzの動的振動に対す
る内耗(内部摩擦、振動減衰性)が最大3倍程度大きい
こと、さらに、超音波域での数百MHzの高周波振動減
衰能も向上していることから、この発明のTi−Ni−
Cu系機能性合金は防振合金や超音波吸収材料、さらに
は電磁波吸収材料として適用することができる。すなわ
ち、この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金を他の金
属材料やポリマー、セラミックス中に複合材料化させる
ことにより、機械振動・騒音抑制、耐震材料・マット等
機械構造部品や超音波、電磁波吸収機能性建材等に適用
することができる。
u系機能性合金によれば、均質で極く微細な異方性(数
ミクロン以下の柱状結晶)組織であるため、また、下部
組織は高転位密度となっているため、降伏による塑性ひ
ずみが生じ難く、材料特性、超弾性、防振特性等の機械
的特性の向上および長期使用中の機能特性の劣化も抑制
され、耐食性の向上もはかられるという優れた効果が奏
される。この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金は以
上のような優れた特性を有することから次のような適用
例がある。 1.この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の高温安
定相(Af点以上領域、オーステナイト相)での超弾性
(擬弾性)機能を生かして、しなやかに人体に適合する
服飾材料(メガネフレーム、ブラジャー、肩パッド等)
及び生体医療用材料(例えば歯科矯正用ワイヤー、脊椎
矯正用棒など)に適用することができる。このような用
途に適用する場合、生体環境との適合毒性の有無(耐食
性)、長期使用に伴う材料特性・機能の劣化防止が重要
となり、この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金では
これらの特性が極めて良好であり、その点からも有利で
ある。 2.防振合金 低温マルテンサイト相(Mf点以下)での変態ひずみ〜
温度ヒステリシス曲線の掃く面積から定義される準静的
ひずみエネルギー吸収性が従来の溶解加工材料に比べて
最大2倍程度大きく数Hz〜数十Hzの動的振動に対す
る内耗(内部摩擦、振動減衰性)が最大3倍程度大きい
こと、さらに、超音波域での数百MHzの高周波振動減
衰能も向上していることから、この発明のTi−Ni−
Cu系機能性合金は防振合金や超音波吸収材料、さらに
は電磁波吸収材料として適用することができる。すなわ
ち、この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金を他の金
属材料やポリマー、セラミックス中に複合材料化させる
ことにより、機械振動・騒音抑制、耐震材料・マット等
機械構造部品や超音波、電磁波吸収機能性建材等に適用
することができる。
【図1】 この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の
急冷凝固組織(回転ロール速度:1m/sec)の走査
電子顕微鏡(SEM)写真である。
急冷凝固組織(回転ロール速度:1m/sec)の走査
電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】 この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の
急冷凝固組織(回転ロール速度:10m/sec)の走
査電子顕微鏡(SEM)写真である。
急冷凝固組織(回転ロール速度:10m/sec)の走
査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】 準静的範囲での引張り応力〜ひずみヒステリ
シス曲線から定義されるひずみエネルギー吸収能(防振
性)Ed及び貯蔵性(超弾性)Erの説明図である。
シス曲線から定義されるひずみエネルギー吸収能(防振
性)Ed及び貯蔵性(超弾性)Erの説明図である。
【図4】 実施例の急冷凝固材料と比較例の圧延・加工
材の各温度での応力〜ひずみヒステリシス曲線を示す。
材の各温度での応力〜ひずみヒステリシス曲線を示す。
【図5】 各温度での応力〜ひずみヒステリシス曲線か
ら定義される超弾性(Er/Et)と防振性(Ed/E
t)の変化を示す図である。
ら定義される超弾性(Er/Et)と防振性(Ed/E
t)の変化を示す図である。
【図6】 振動数11Hzにおける急冷凝固Ti50N
i50(at%)の動的減衰性(内耗)の向上を示す図
である。
i50(at%)の動的減衰性(内耗)の向上を示す図
である。
【図7】 冷却速度(ロール回転速度)と動的減衰能α
(215MHz)と熱弾性的変態ひずみ幅ΔεSMEの
関係を示す図である。
(215MHz)と熱弾性的変態ひずみ幅ΔεSMEの
関係を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月30日
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】 この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の
急冷凝固組織(回転ロール速度:1m/sec)の走査
電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織写真である。
急冷凝固組織(回転ロール速度:1m/sec)の走査
電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織写真である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】 この発明のTi−Ni−Cu系機能性合金の
急冷凝固組織(回転ロール速度:10m/sec)の走
査電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織写真である。
急冷凝固組織(回転ロール速度:10m/sec)の走
査電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織写真である。
Claims (2)
- 【請求項1】 Ti(50±yat%)−Ni(50−
y−x)−Cux(0≦y≦2at%、0≦X≦10a
t%)系合金溶湯を急冷凝固させて得られることを特徴
とするTi−Ni−Cu系機能性合金。 - 【請求項2】 Ti(50±yat%)−Ni(50−
y−x)−Cux(0≦y≦2at%、0≦x≦10a
t%)系合金溶湯を回転ロールにより急冷凝固させるに
あたりそのロール回転速度(冷却速度)を1m/sec
(1×102゜C/sec)〜20m/sec(1×1
04℃/sec)とすることを特徴とするTi−Ni−
Cu系機能性合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27170291A JP3338464B2 (ja) | 1991-06-17 | 1991-06-17 | Ti−Ni−Cu系機能性合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27170291A JP3338464B2 (ja) | 1991-06-17 | 1991-06-17 | Ti−Ni−Cu系機能性合金 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0693358A true JPH0693358A (ja) | 1994-04-05 |
JP3338464B2 JP3338464B2 (ja) | 2002-10-28 |
Family
ID=17503658
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27170291A Expired - Fee Related JP3338464B2 (ja) | 1991-06-17 | 1991-06-17 | Ti−Ni−Cu系機能性合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3338464B2 (ja) |
-
1991
- 1991-06-17 JP JP27170291A patent/JP3338464B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3338464B2 (ja) | 2002-10-28 |
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