JPH0692814A - 性フェロモン化合物の安定化方法 - Google Patents

性フェロモン化合物の安定化方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】本発明は不飽和二重結合を有する性フェロモン
化合物の安定性の向上に有用な添加物の組合せを提供す
る。 【構成】この性フェロモン化合物の安定化方法は、不飽
和二重結合を有する高級脂肪族性フェロモン化合物に、
一般式化3で示されるフェノール系酸化防止剤(式中、
1 はメチル基、t−ブチル基またはt−アミル基、R
2 は水酸基、メチル基またはメトキシ基、R3 およびR
4 はそれぞれ水素原子、t−ブチル基またはt−アミル
基を示す) と、2-(2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチル−
5'-メチルフェニル)-5−クロロベンゾトリアゾールと
を、添加混合するものである。 【化3】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、交信撹乱防除法による
害虫の駆除に有用な、不飽和二重結合を有する高級脂肪
族性フェロモン化合物の安定化方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、殺虫剤等の農薬に対する抵抗性の
増加や農薬を取扱う者に対する毒性が問題となってきて
いる。この問題に対処するため、生物学的害虫防除法が
研究されており、この方法の一つとして害虫の雌が放出
する性フェロモンを化学的に合成し、これを利用する交
信撹乱防除法が提案されている。この防除法においては
特公昭61-16361号公報に記載の徐放体のように性フェロ
モンを長期間一定の量放出させることが必要である。し
かし、リンシ目害虫の性フェロモン物質の多くは不飽和
二重結合を有する高級脂肪族誘導体であるため、長期間
野外条件下に放置すると、二重結合が容易に酸化、異性
化および重合などで変質してしまう。とくに分子内に共
役不飽和結合か、1,4−ペンタジエン系の不飽和結合
を持つもの、さらには不飽和アルデヒド化合物の性フェ
ロモンについては変質し易いことから当初の目的が達成
されなくなるという問題がある。
【0003】これを防ぐため製剤中に酸化防止剤や紫外
線吸収剤を添加する方法が提案された。例えば、Journa
l of Chemical Ecology, Vol.14, No.8, 1659(1988) に
は、酸化防止剤としてブチルヒドロキシトルエンやブチ
ルヒドロキシアニソールを使用し、これに2−ヒドロキ
シ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤を
性フェロモン物質に添加使用すると、さらに安定性が向
上すると報告されている。確かに、特定の酸化防止剤や
紫外線吸収剤では、単独で使用するよりも混合使用の方
が不飽和二重結合を有する性フェロモン化合物の安定性
の向上に役立つが、数多くの酸化防止剤と紫外線吸収剤
をどのように組合せると最も有効かということまでは知
られていない。
【0004】特開平4-164004号公報には不飽和二重結合
を有する高級脂肪族性フェロモンを安定化させる方法と
して、ヒドロキノン系酸化防止剤とベンゾトリアゾール
誘導体との組み合わせによるものが提案されている。ヒ
ドロキノンなどのフェノール系酸化防止剤が優れた酸化
防止効果を示し、ベンゾトリアゾール誘導体との組み合
わせにより、性フェロモン化合物の安定性に対して高い
相乗効果を示す。しかし、ベンゾトリアゾール誘導体は
側鎖の種類により効果もかなり異なり、その構造として
どのようなものが最適であるかということまでは知られ
ていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は不飽和二重結合を有する性フェロモン化合物の安
定性の向上に有用な添加物の組合せを提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による不飽和二重
結合を有する高級脂肪族性フェロモン化合物の安定化方
法は、この性フェロモン化合物に、一般式化2で示され
るフェノール系酸化防止剤(式中、R1 はメチル基、t
−ブチル基またはt−アミル基、R2 は水酸基、メチル
基またはメトキシ基、R3 およびR4 はそれぞれ水素原
子、t−ブチル基またはt−アミル基を示す) と、2-
(2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチル−5'-メチルフェニ
ル)-5−クロロベンゾトリアゾールとを、好ましくはそ
れぞれ前記性フェロモン化合物の0.01〜20重量%の割合
で添加混合することによって達成される。
【化2】
【0007】以下、本発明の詳細を説明する。本発明に
おいて上記一般式化2で示されるフェノール系酸化防止
剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ
−t−アミルヒドロキノン、p−メトキシフェノール、
メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノンなどが例
示される。一般にフェノール系酸化防止剤はビタミンE
やエトキシキンのような酸化防止剤と比べて性フェロモ
ン化合物中の二重結合に対し酸化や重合などの劣化を防
止する上で大変有効である。しかしこれを単独で使用し
ても野外の直射日光下で充分な効果が発揮されない。そ
こで本発明者らは、これらのフェノール系酸化防止剤と
混合して、最も高い相乗効果を発揮できる紫外線吸収剤
を検討したところ、2-(2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチ
ル−5'-メチルフェニル)-5−クロロベンゾトリアゾー
ルとの組合せが最適であることを見出した。
【0008】これらフェノール系酸化防止剤および2-
(2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチル−5'-メチルフェニ
ル)-5−クロロベンゾトリアゾールの使用量は、共に性
フェロモン化合物に対し少なくとも0.01重量%以上必要
で、これ以下では効果が少なく実用的でない。また、直
射日光に曝されるようなところで使用する際には 0.1重
量%以上使用するのが望ましいが、20重量%以上使用し
てもこれ以上の効果の向上は見込めない。
【0009】本発明が適用される不飽和二重結合を有す
る高級脂肪族性フェロモン化合物には、Z−7−ドデセ
ニルアセテート、Z−8−ドデセニルアセテート、Z−
9−ドデセニルアセテート、E, Z−7, 9−ドデカジ
エニルアセテート、Z, Z−7, 9−ドデカジエニルア
セテート、E, E−8,10−ドデカジエノール、E−4
−トリデセニルアセテート、Z−9−テトラデセニルア
セテート、Z−9−テトラデセノール、Z−11−テトラ
デセニルアセテート、Z−11−テトラデセナール、Z−
9−ヘキサデセナール、Z−11−ヘキサデセナール、
Z, E−9,11−テトラデカジエニルアセテート、Z,
E−9,12−テトラデカジエニルアセテート、Z−11−
ヘキサデセニルアセテート、Z, Z−7,11−ヘキサデ
カジエニルアセテート、E, E, Z−4, 6,10−ヘキ
サデカトリエニルアセテート、E,E−10,12−ヘキサ
デカジエナール、Z, Z−3,13−オクタデカジエニル
アセテート、E, Z−3,13−オクタデカジエニルアセ
テート、Z,13−イコセン−10−オン、E, E, Z−1
0,12,14−ヘキサデカトリエニルアセテート、E, E,
Z−10,12,14−ヘキサデカトリエナールなどが例示
される。これらの中でも、通常不安定とされている不飽
和二重結合を2個以上含む化合物および不飽和アルデヒ
ド系化合物に対して本発明の安定効果が高い。とりわけ
共役ジエン、共役トリエン化合物などの共役不飽和結合
を持つものや、1,4−ペンタジエン系不飽和化合物に
対してかなりの効果を発揮する。本発明において安定剤
として使用するフェノール系酸化防止剤および2-(2'-
ヒドロキシ−3'-t−ブチル−5'-メチルフェニル)-5
−クロロベンゾトリアゾールは、それらがそれぞれ混合
されることが重要であり、この混合物に他の安定剤をさ
らに混合して使用してもよい。
【0010】
【実施例】以下、本発明の具体的な態様を実施例および
比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。 実施例1〜15、比較例1〜14 内径 0.8mm、外径 1.4mm、長さ20cmのポリエチレンのチ
ューブ内に、表1に示す性フェロモン化合物と安定剤の
混合物80mgを充填した後、両端をヒートシールして野外
の直射日光の当る場所に8月から3ヵ月間曝露した。そ
の後、チューブ内の残存液を抽出し、変性しないで残存
している性フェロモン量を内部標準法ガスクロマトグラ
フィーにより定量して、残存液中の理論値に対する残存
性フェロモン量(残存率%)を求めた。表1より、実施
例の組合せでは比較例に比べ性フェロモンの残存率が高
く顕著な安定化効果のあることが判った。
【0011】なお、各例で用いた性フェロモン、安定剤
は次の通りである。 ・性フェロモン A:E,E−10,12−ドデカジエノール B:E, Z−7, 9−ドデカジエニルアセテート C:Z, E−9,12−テトラデカジエニルアセテート D:Z, Z−7,11−ヘキサデカジエニルアセテート E:Z−11−ヘキサデセナール ・安定剤 HBMCBT:2-(2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチル−
5'-メチルフェニル)-5−クロロベンゾトリアゾール
【0012】(酸化防止剤) TBH:t−ブチルヒドロキノン DBH:ジ−t−ブチルヒドロキノン DAH:ジ−t−アミルヒドロキノン BHT:ジ−t−ブチル−p−クレゾール M H:メチルヒドロキノン M P:p−メトキシフェノール
【0013】(その他) HMBT:2-(2'-ヒドロキシ−5'-メチルフェニル)
ベンゾトリアゾール HDBBT:2-(2'-ヒドロキシ−3',5'-ジ−t−ブ
チルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル HDABT:2-(2'-ヒドロキシ−3',5'-ジ−t−ア
ミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル HOBP:2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェ
ノン V E:ビタミンE EMQ:6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,
2−ジヒドロキノリン
【0014】
【表1】
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、不飽和二重結合を有す
る高級脂肪族性フェロモン化合物、とりわけ分子内に共
役不飽和結合や1,4−ペンタジエン系の不飽和結合を
有するもの、あるいは不飽和アルデヒド系性フェロモン
化合物の安定性の向上に最も有効に作用する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 左口 龍一 新潟県中頸城郡頸城村大字西福島28番地の 1 信越化学工業株式会社合成技術研究所 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】不飽和二重結合を有する高級脂肪族性フェ
    ロモン化合物に、一般式化1で示されるフェノール系酸
    化防止剤(式中、R1 はメチル基、t−ブチル基または
    t−アミル基、R2 は水酸基、メチル基またはメトキシ
    基、R3 およびR4 はそれぞれ水素原子、t−ブチル基
    またはt−アミル基を示す) と、2-(2'-ヒドロキシ−
    3'-t−ブチル−5'-メチルフェニル)-5−クロロベン
    ゾトリアゾールとを、添加混合することを特徴とする性
    フェロモン化合物の安定化方法。 【化1】
  2. 【請求項2】前記フェノール系酸化防止剤および2-
    (2'-ヒドロキシ−3'-t−ブチル−5'-メチルフェニ
    ル)-5−クロロベンゾトリアゾールが、それぞれ前記性
    フェロモン化合物の0.01〜20重量%の割合で添加混合さ
    れていることを特徴とする請求項1記載の性フェロモン
    化合物の安定化方法。
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