JPH0690293B2 - 放射線検出素子 - Google Patents

放射線検出素子

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JPH0690293B2
JPH0690293B2 JP62186679A JP18667987A JPH0690293B2 JP H0690293 B2 JPH0690293 B2 JP H0690293B2 JP 62186679 A JP62186679 A JP 62186679A JP 18667987 A JP18667987 A JP 18667987A JP H0690293 B2 JPH0690293 B2 JP H0690293B2
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JP62186679A
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義倫 岩瀬
正治 野村
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Japan Energy Corp
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、放射線検出素子に関するものであり、特には
放射線の吸収割合即ち計数率を犠牲とすることなく、エ
ネルギー分解能を向上した放射線検出素子に関する。本
発明は、素子の厚さをキヤリアーの移動しうる距離によ
つて決まる最適範囲に選択したことを特徴とする。本発
明の放射線検出素子は、高分解能を必要とする計測分
野、例えばγ線のスペクトルメータ、X線計測器用検出
素子、医用放射線検出素子に応用できる。
発明の背景 放射線検出素子材料として、1960年代よりSiやGe等が実
用化され、幅広い分野で使用されている。これらSiおよ
びGeの放射線検出素子は分解能が良い反面、バンドギヤ
ツプが小さいため、室温では熱励起によるノイズが大き
く、低温に冷却しなければならない。
そこでCdTe、HgI2,GaAs等の化合物半導体が注目され、
多くの研究が進行しつつある。これら化合物半導体は、
SiやGeに較べて原子番号が大きく、そのため放射線の吸
収係数が大きい。従つて、小型で高計数率を得ることの
できる検出素子の作製が可能である。また、これらの化
合物半導体はバンドキヤツプが大きく、放射線検出素子
として常温で使用できるという優れた特徴を有してい
る。とりわけ、CdTeに大きな関心が向けられている。
従来技術と問題点 従来からの半導体放射線検出素子、例えばCdTe放射線検
出素子は、単結晶インゴツトを平板状に適宜切出し、そ
の表面を研摩またはエツチング処理した後電極形成を行
うことにより作製されている。放射線の入射によつて生
成したキヤリアーが電極により収集されて放射線検出信
号となる。
このような半導体放射線検出素子は、その性能面で解決
すべき課題は多いが、その重要なものは、放射線検出時
のエネルギー分解能の向上である。エネルギー分解能向
上のためには、リーク電流の低減等幾つかのアプローチ
が考慮しうるが、中でもキヤリアー収集効率の向上は重
要な要素である。
本件出願人は、素子の厚さをキヤリアーの移動しうる距
離より小さくすることによりキャリアーの収収効率の向
上を図ることを先に提唱した。しかしながら、素子の厚
さを薄くする程、放射線の吸収割合つまり計数率も同時
に減少する。従つて、そうした薄い厚さの放射線検出素
子は、計数率を犠牲にしても高分解能を必要とする用途
に限つて用いるか或いは計数率の減少を防止する別途の
対策を必要とする。
従つて、放射線の吸収割合を犠牲にせず、適当なエネル
ギー分解能を得ることの出来る放射線検出素子の開発が
改ためて要望されている。
発明の目的 上記要望に答えて、本発明は、エネルギー分解能の向上
と計数率の維持という相反傾向にある2つの要件を同時
に満足しうる放射線検出素子を開発することを目拠とす
る。
発明の概要 上記目的に向け、本発明者等は、半導体結晶内でのキヤ
リアーの挙動について原理的考察を進めた。
エネルギー分解能は、放射線の入射によつて生成される
キヤリアーの収集効率に大きく依存する。
ここで、キヤリアーの収集効率は次式で表わされる: ここでλ、λ:電子及び正孔の移動しうる距離(c
m)即ち、キヤリアーが捕獲されるまでに電界のかかつ
ている方向へ移動した距離を表し、ドリフト長(driftl
ength)とも表現される。
d:素子の厚さ(cm) x:相互作用の起つた負極からの位置(cm) 更に上記λ及びλは次の通り表わされる: λ=μτE ここでμ=結晶中のキヤリアーのドリフト移動度(cm2/
V・sec) τ=キヤリアーの平均寿命(sec) E=結晶にかかる電界強度(V/cm) また、エネルギー分散スペクトル dN/dE VS Eは、 ここで F(x):x〜x+d−xで相互作用の起こる割合F
(X)=e−μxー μは吸収係数) E:エネルギー(eV) σ:エネルギースペクトルを幅広くさせる原因として、
キヤリアー収集効率以外の要因。ここでは、キヤリアー
生成時の統計的誤差、アンプ系のノイズ等が含まれる。
で与えられる。
本発明者等は、上記関係式のλ、λ、μ(吸収係
数。入射放射線のエネルギーと検出素子材料によつて決
定される)及びd(素子厚)について注目し、これらを
関数としてエネルギー分解能ΔEを求めるシミュレーシ
ョンを行つた。この結果、ΔEは厚さの減少に対して単
調に減少せず、特異な減少挙動を示すとの知見を得た。
ΔEの変化は、電子の移動しうる距離λが正孔の移動
しうる距離λより大きいと仮定すると、(I) λ
<dの領域、(II)λ<d<λの領域及び(II
I)d<λの領域で異つた様相を示し、(II)の領域
では平坦部或いはボトムが存在する。従つて、(II)の
領域では、計数率を左程に犠牲にすることなくエネルギ
ー分解能を向上させることができる。λ>λの場合
でも同様である。
上記知見に基いて、本発明は、放射線検出素子の厚さ
を、キヤリアーとしての正孔の移動しうる距離λとキ
ヤリアーとしての電子の移動しうる距離λとの間の値
として選定したことを特徴とする放射線検出素子を提供
する。エネルギー分解能曲線のボトム(変曲点)近傍に
厚さを選択するのが効果的である。
周辺技術との比較 放射線検出素子の厚さに関する公知文献としては、特開
昭59-100885号及び特開昭60-70774号が挙げられる。特
開昭59-100885号は、複数個の検出素子を基板上に線状
に配置すると共に、線状に配置された素子の相対向する
面にそれぞれ複数個の電極を取りつけて複数個の素子か
ら成るアレイを構成し、相対向する電適間隔を0.1〜0.5
mmとし、パルスの時間巾を縮少して計数率特性の向上を
図つた放射線検出素子アレイを開示する。特開昭60-707
74号は、結晶基板の厚さを一方の面のシヨツトキバリア
ー接合電極下の結晶内に生ずる空乏層が他方の面のオー
ミツク接合電極に達するように選定した放射線検出素子
を開示する。これは、放射線感度及び周波数特性の向上
を図つたものである。両者とも計数律を犠牲にすること
なく分解能を向上するため素子厚とエネルギー分解能の
シミュレーションの結果として生れた本発明と発明思想
を根本的に異にする。
発明の具体的説明 第1(a)及び(b)図は、特定のλ、λ及びμの
場合に対して素子厚dとエネルギー分解能Δとの関係を
示したシミュレーションの結果を示す。第1(a)図
は、λ=0.1cm、λ=0.01cm及びμ=50cm-1の場合
の結果であり、第1(b)図はλ=0.6cm、λ=0.0
01cm及びμ=50cm-1の場合の結果である。第1(a)図
には、各厚さにおける放射線の吸収割合をも併せて示
す。
第1(a)図に示すように、ΔEの変化は、 λ<dの領域 λ<dλの領域 d〜λの領域 d<λの領域 に分けられ、多くの場合領域においてボトムを示す。
〜の場合に対応して厚さの異なる素子におけるキヤ
リアー収集の模式図を第2図に示す。
更に、これらに対応したエネルギー分散のスペクトルを
第3図に示す。
第2及び3図を参照しながら第1図のシミュレーション
結果を説明する。放射線の入射によつて生成される全負
荷をQ0としそして電極に誘起された電荷をQ′とする
と、両者の関係は次の通り表わすことができる: ここでLe、Lhは電子、正孔が結晶中で移動した距離(キ
ャリアーのドリフト長λ、λとは異なる)である。
今、放射線が負極から入射し、結晶と相互作用を起こし
た負極からの距離をxとすると、両者の関係は以下の式
で表わされる: また、Q′/Qは第3図に示すエネルギースペクトルの横
軸、即ちパルス波高に対応している。
d>λの場合 素子厚dがλに対して比較的大きい場合、Q′は小さ
く、Q′/Qの値は第3図に示すように小さくなり、低エ
ネルギー側にピークが存在する。
ΔEは第1図に示すように大きい。
λd>λの場合 素子厚dがλ程度になると、の場合に較べQ′/Q0
が大きくなり、第3図に示すようにパルス波高は増大す
る。パルス波高が増大することによりΔEの値は小さく
なる。
d〜λの場合 素子厚dがλに近づいてくると、キヤリアーの発生す
る場所の違いによりQ′/Q0の値にバラツキが生じる。
電子はそのドリフト長が長いためにキヤリアーの生成が
どこで起つても正極に到達できるが、正孔の場合には負
極側の表面近傍でしか負極に到達できない。つまり、入
射面付近で放射線との相互作用が発生した場合にはQ′
/Q0は1に近いが、入射面と反対面側で相互作用が起る
とQ′/Q0は小さくなる。このQ′/Q0のバラツキは第
3図のスペクトルでいると半値巾の拡がりに対応し、ピ
ークは左側に大きくテールを持つている。このためΔE
は大きくなる。
d<λの場合 dがλより小さくなると、キヤリアーの生成がどこで
起つてもキヤリアーの収集は完全に近くなり、Q′/Q0
はほぼ1となり、バラツキも減少する。ΔEは再び小さ
くなる。
以上の理由によりΔEは厚さの減少に対して単調に減少
せず、λd>λの領域において平坦部或いはボト
ムを示す。ΔEがボトムを持つ条件としては、(a)
負極からの入射、(b) λとλとが2ケタ以上異
なること、及び(c) 入射エネルギーが素子の厚さに
対し吸収される深さが浅いようなものであること(CdTe
の場合200KeV以下のγ線であること)であり、ボトムの
位置及び深さは、λ、λ、d及びμによつて異なつ
てくる(第1(a)図のボトムは浅いが、第1(b)図
のボトムは深い)。ボトムはλλの時及びμが小
さいときには出現しない。
第4図は、ボトムを持つλ、λ及びμの関係を示
す。斜線部より上が有効な領域である。
λ>λの場合にも上記と同様の論議が当てはまる。
従つて、放射線検出素子の厚さdをキヤリアーとしての
正孔の移動しうる距離λとキヤリアーとしての電子の
移動しうる距離λとの間(即ちλ>d>λ或いは
λ>d>λ)の値、好ましくはボトムの近傍とする
ことにより、計数率を犠牲にすることなくエネルギー分
解能の向上を図ることができるのである。
素子厚さをボトムに一致させることによりΔEを非常に
小さくなしうるが、その許容範囲は である。
実施例 厚さの異なる放射線検出素子を作製し、エネルギー分解
能を測定した。この素子における電子ドリフト長λ
0.5cmであり、そして正孔ドリフト長λ=0.001cmであ
る。素子厚0.07〜1.0cmの範囲で幾つかの素子のエネル
ギー分解能を測定した結果を第5図に示す。分解能は素
子厚0.4cmで最小となつた。
発明の効果 本発明では素子における電子ドリフト長、正孔ドリフト
長を知ることにより、最適な素子厚を設定し、計数率を
犠牲にせず良好な分解能が得られる。これらの効率によ
つて、放射線検出素子の品質向上及び適応範囲の拡大が
図れる。
【図面の簡単な説明】
第1(a)図及び第1(b)図は素子厚dとエネルギー
分解能ΔEのシミュレーションの結果を示すグラフであ
り、第2図は第1(a)図の〜に対応してキヤリア
ーの収集状態を表わす説明図、第3図は同じく〜に
対応してのスペクトルの変化を表わすグラフ、第4図は
エネルギー分解能がボトム(変曲点)を持つ条件を示す
グラフ、そして第5図は素子厚を変えた素子におけるエ
ネルギー分解能の実験値を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】放射線検出素子の厚さを、キヤリアーとし
    ての正孔の移動しうる距離λとキヤリアーとしての電
    子の移動しうる距離λとの間の値として選択したこと
    を特徴とする放射線検出素子。
  2. 【請求項2】放射線検出素子の厚さをエネルギー分解能
    (ΔE)曲線のボトム近傍として選択する特許請求の範
    囲第1項記載の放射線検出素子。
  3. 【請求項3】検出素子材料がCdTeである特許請求の範囲
    第1項記載の放射線検出素子。
JP62186679A 1987-07-28 1987-07-28 放射線検出素子 Expired - Lifetime JPH0690293B2 (ja)

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