JPH068723B2 - ライナ被覆管の厚み測定方法 - Google Patents

ライナ被覆管の厚み測定方法

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JPH068723B2
JPH068723B2 JP7870786A JP7870786A JPH068723B2 JP H068723 B2 JPH068723 B2 JP H068723B2 JP 7870786 A JP7870786 A JP 7870786A JP 7870786 A JP7870786 A JP 7870786A JP H068723 B2 JPH068723 B2 JP H068723B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、核燃料被覆用などに用いられるライナ被覆
管のライナ層厚やその他の厚みを測定するための方法に
関する。
(従来の技術とその問題点) 例えば原子力発電所において原子炉を負荷追従運転して
高効率化をはかるためには、急激な出力上昇や下降を行
なうことが可能でなければならない。ところが核燃料を
封入する被覆管として、従来のようなジルカロイ管を用
いたのでは、上記のような急激な出力変動に耐えられ
ず、被覆管に応力腐蝕割れが発生するおそれがある。そ
こで近年、このような応力腐蝕割れを防ぐものとして、
第10図に示すようにジルカロイ管1の内周面に極薄の
純ジルコニウムライナ層2を形成した被覆管が開発され
ており、このライナ被覆管は数年後には従来の被覆管に
取って替わり全面使用されることが予想されている。
上記ライナ被覆管のライナ層厚は、原子炉の出力急上昇
時の被覆管内面に発生する局部応力歪みを緩和し、応力
腐蝕割れに対する抵抗を高める目的上ある程度厚く形成
する必要がある一方、母材部であるジルカロイ層の層厚
を確保して一定以上の強度を維持する必要上からの制限
も受けるので、このライナ層厚を一定に管理することが
重要な問題となる。
このような2種類の金属類からなら管の厚さを測定する
方法として、破壊的検査と非破壊的検査の2つの方法が
考えられるが、破壊的検査では実際に測定の行なわれる
管の両端部についてしか保証されず、管内部の測定が不
可欠である上記ライナ被覆管にはこの破壊的検査法は有
効でない。一方、非破壊的検査では、超音波法と渦流法
とが考えられるが、超音波法の場合、これをライナ被覆
管の厚み測定に採用しても、管内面でのエコーと、母材
層とライナ層の境界面でのエコーの識別が不可能で適用
できない。これに対し、交流電流を流したコイルを金属
被検体表面に近接配置して、被検体表面に渦電流を流
し、その渦電流により誘起される誘導磁場により被検体
の状況に応じて変化するコイルのインピーダンス変化量
から被検体表面の情報を得る渦流法の場合、上記渦電流
が被検体の厚さ、固有抵抗ρ、透磁率μなどに影響さ
れ、一方、上記ライナ被覆管のライナ層ではμ=1,
ρ=50μΩ・cm、母材層ではμ=1,ρ=70μΩ
・cmであることから両者の導電率σ(σ=1/ρ)に差
があり、その差を利用すれば上記ライナ層厚の測定が可
能である。また同時に全肉厚の測定も可能であり、この
全肉厚からライナ層厚を引けばジルカロイ層が求まる。
一般にライナ被覆管のように2種の金属層から成る管の
場合、その上部層厚変動によってインピーダンス変化量
が変わるのは周知のことであり、またこのような金属管
の全肉厚変動によってもインピーダンス変化量が変わる
のも周知のことである。
そこでこの渦流法を用いて、上記ライナ被覆管の厚み測
定を行う方法として、プローブ型コイルを管内に挿入
し、基準ライナ層厚と渦電流浸透深さとに関連づけた周
波数により上記コイルを励磁し、リフトオフ変動(コイ
ルと管内面との空隙変動)に起因するコイルインピーダ
ンス変化方向のインピーダンス成分Vとそれに直交す
るインピーダンス成分Vを求め、VからあるいはV
をVで補正してライナ層厚を求めるもの(特開昭5
9−67405号公報)が提案されている。
ところが上記方法では、リフトオフ変動に起因するコイ
ルインピーダンス変化方向を決める際にリフトオフを機
械的に一定量変化させる必要がある点に問題がある。
すなわち、第11図はリフトオフの変動量を100μm
と200μmとしたときのリフトオフ変動によるインピ
ーダンス変化方向を正規化インピーダンス平面で示した
ものであるが、リフトオフ変動量が100μmのときに
はAB方向、200μmのときにはAC方向がリフトオ
フ変動によるインピーダンス変化方向となり、リフトオ
フ変動量によってコイルインピーダンス変化方向が変化
している。このことは前記V,Vの方向決定を困難
にする。なお第11図中、Aは基準リフトオフ、Bは基
準リフトオフ+100μm、Cは基準リフトオフ+20
0μm、Rは被検体から無限遠でのコイルの純抵抗、
は被検体から無限遠でのコイルのインダクタンス、
Rは被検体上でのコイルの純抵抗、Lは被検体上でのコ
イルのインダクタンス、ωは角周波数を表わしている。
また第12図はリフトオフ変動量によりインピーダンス
変化量が非線形に変化することを示しており、これから
もインピーダンス変化方向がリフトオフ変動量に応じて
変化することが察知される。つまり前記方法では、リフ
トオフ変動によるインピーダンス変化方向を決める際に
リフトオフ変動を厳格に一定にしなければライナ層厚を
性格に求めることができないものである。ところが実施
上の問題として、リフトオフ変動量を機械的に厳格に一
定量変化させることは極めて困難である。
また上記方法では、ライナ層厚に相当するインピーダン
ス成分Vを、リフトオフ変動量に相当するものとして
求められるインピーダンス成分Vで補正して、ライナ
層厚の測定精度を上げるようにしているが、ライナ層厚
に限らず母材層厚、全肉厚を測定しようとする場合に
は、リフトオフ変動が測定に与える影響と同時に、ライ
ナ被覆管において当然発生するライナ層や母材層の導電
率の変動が測定に与える影響を十分に除去しなければ、
正確な測定結果は期待できない。しかしながら上記方法
では導電率の変動について考慮されておらず、この点か
らも正確な測定結果を得ることは困難である。
(発明の目的) この発明は、従来例における上記問題を解決するために
なされたもので、ライナ被覆管のライナ層厚、母材層
厚、全肉厚を管内面側から同時に精度よく測定すること
のできるライナ被覆管の厚み測定方法を提供することを
目的とする。
(目的を達成するための手段) 管内挿型プローブ内にアクティブコイルを配置し、複数
種類の周波数を用いた渦電流法により前記アクティブコ
イルのインピーダンス変化を検出してライナ被覆管の厚
みを測定する方法であって、上記目的を達成するため、
(a) 当該アクティブコイルとリファレンスコイルとを組
込んだブリッジ回路を用意し、前記複数種類の周波数ご
とに、以下のステップ(a-1) ないし(a-3) を行うことに
よりインピーダンス平面を規定する直交座標系を設定す
るステップと、(a-1) 前記ブリッジ回路のアクティブコ
イル,リファレンスコイル相当部に、これらコイル系に
替えてこれと等価な第1ダミーインピーダンスを与えこ
のときのブリッジ回路出力を測定する一方、同様に前記
コイル系相当部に第1ダミーインピーダンスと少し値の
異なる第2ダミーインピーダンスを与えこのときのブリ
ッジ回路出力を測定するステップと,(a-2) ステップ(a
-1) で測定された前記2つの出力の差から、第1ダミー
インピーダンスから第2ダミーインピーダンスへのイン
ピーダンス変化方向を基準方向としてそれぞれ定めるス
テップと,(a-3) インピーダンス平面を規定する直交座
標の一方の軸を前記基準方向に揃うように直交座標系を
設定するステップと,(b) 前記複数種類の周波数ごとの
前記ステップ(a) で設定した直交座標系におけるアクテ
ィブコイルのインピーダンス測定データの水平および垂
直成分と、ライナ被覆管の所望部位の厚みの実測データ
との関係を回帰分析により求めて、前記ライナ被覆管の
所望部位の厚みを算出するための算出式を準備するステ
ップと、(c) 被測定ライナ被覆管内に前記プローブを挿
入し、前記複数種類の周波数ごとに得られた前記アクテ
ィブコイルのインピーダンス測定値の前記直交座標系に
おける水平および垂直成分を前記ステップ(b) で準備し
た算出式に当てはめて、所望部位の厚みを求めるステッ
プと、を備えている。
(実施例) この発明は、リフトオフ変動による信号、ライナ層の導
電率の変動による信号、母材層の導電率の変動による信
号、ライナ層厚の変動による信号、全肉厚の変動による
信号について認められる下記の性質に基づいている。
(1) リフトオフ変動およびライナ層、母材層の導電率変
動による信号(以下ノイズ信号という)は、ライナ層厚
の変動による信号と全肉厚の変動による信号との感度に
影響する。
(2) ノイズ信号とライナ層厚の変動による信号と全肉厚
の変動による信号とは、周波数に対する依存性が異な
る。
(3) ノイズ信号は、ライナ層厚の変動による信号と全肉
厚の変動による信号とに加算的に合成される。
(4) ノイズ信号は、リフトオフ変動による信号と、ライ
ナ層厚の導電率の変動による信号と、母材層の導電率の
変動による信号とを加算的に合成したものである。
第13図は上記特性を表わしたグラフであり、ライナ層
厚,リフトオフ,ライナ層の比抵抗、母材層の比抵抗の
各変動によるコイルインピーダンスの変化を示してい
る。なお、第11図において、Tzr:ライナ層厚 ρzr:ライナ層(ジルコニウム)の比抵抗 ρzry:母材層(ジルカロイ)の比抵抗 基準点:周波数2MHz,リフトオフ0.1mm,ライナ層
厚90μm,ρzr50μΩ・cm,ρzry70μΩ・cm である。
第1図は上記性質(1)〜(4)に基づくこの発明によ
るライナ被覆管の厚み測定方法の実施に使用されるブリ
ッジ回路を示し、また第2図はこの発明の実施の状態を
示す模式図である。上述した従来技術ではインピーダン
スの変化量をリフトオフ変化方向を基準として測定して
いるが、本実施例ではインピーダンス変化量を測定する
際の基準とする方向を第1図のブリッジ回路を用いて決
定し(決定の方法は後述する)、それに基づいて厚みを
算出するようにしている。
第1図において、ブリッジ回路は、互いに対をなす1組
の純抵抗R,Rと、検出用コイルであるアクティブ
コイル1ならびにこのコイル1と平衡を保つためのリフ
ァレンスコイル2との4つのインピーダンス素子を備え
て構成されており、アクティブコイル1のインピーダン
ス変化はブリッジバランスのくずれによる接点a,b間
の不平衡電圧として検出される。また、スイッチ3によ
り上記アクティブコイル1と切り替えられるインピーダ
ンス素子Zと、スイッチ4により上記リファレンスコ
イル2と切り替えられるインピーダンス素子Zとの組
合せからなる第1ダミー回路5が構成され、さらにスイ
ッチ6によって上記インピーダンス素子Zに並列に接
続可能なインピーダンス素子Zを上記第1ダミー回路
5に付加して第2ダミー回路7が構成されている。上記
各インピーダンス素子Z〜Zは、抵抗,コンデンサ
などの各素子の組合せにより構成され、インピーダンス
素子ZおよびZはそれぞれアクティブコイル1およ
びリファレンスコイル2と等価になるように選定されて
いる。またインピーダンス素子Zについては、インピ
ーダンス素子Zの約100倍程度の値に選定されてい
る。すなわち第2ダミー回路7は、第1ダミー回路5の
インピーダンス値|Z|を1%程度変化させたものと
なっている。
また実施の状態を示す第2図において、被検体であるラ
イナ被覆管8はターニングローラ9に載せられ、軸心回
転するようにされる一方、前記したアクティブコイル1
とリファレンスコイル2(絶対値型)を内蔵するプロー
ブ10がライナ被覆管8内に挿入され、駆動装置11に
よりライナ被覆管8の軸方向に所定速度で移動して、管
内面を螺旋状に走査するように構成されせている。プロ
ーブ10内のアクティブコイル1からの信号は渦流探傷
器12に与えられ、そこでは第1図のブリッジ回路を含
むインピーダンス測定器(渦流探傷器12に内蔵)によ
りアクティブコイル1のインピーダンス変化が測定され
る。測定結果は渦流探傷器12に備えられた表示器によ
り、インピーダンス平面上に表示される。
一方、上記アクティブコイル1に流す交流電流の周波数
として3種類のものが与えられる。この周波数の選定は
次のようにして決められる。
主にライナ被覆管8の全肉厚の測定に用いられる周
波数fとして、渦電流の浸透深さδ ただし ω:角周波数(=2πf) μ:μ×μ μ:比透磁率 μ:真空中の透磁率 (=4π×10-7H/m) σ:導電率(=1/ρ) ρ:固有抵抗(Ω・m) が全肉厚に近い値となるように決める。
主にライナ層厚の測定に用いられる周波数f,f
として、渦電流の浸透深さδがライナ層厚近傍の値と
なるように決める。
このような構成において、ライナ被覆管8の厚み測定は
次のようにして行われる。まず実際の測定に先立ち、次
のようにして基準方向を決定する。すなわち、第1図の
ブリッジ回路のアクティブコイル1およびリファレンス
コイル2をスイッチ3,4で第1ダミー回路5のインピ
ーダンス素子Z,Zと切り替えて接続し、ブリッジ
回路の出力(同期検波出力X,Y;第3図のX−Y
平面上のA点)を測定する。次に、スイッチ6によって
上記第1ダミー回路5にインピーダンス素子Zを接続
し、つまり第2ダミー回路7を接続して、ブリッジ回路
の出力(同期検波出力X,Y;第3図のX−Y平面
上のB点)を測定する。そして、上記2つの操作に伴う
ブリッジ回路出力の変化方向(ベクトル)を、前記
した3種類の周波数f〜fごとにそれぞれ求め、こ
れらを各周波数f〜fに対応する基準方向として定
める。
次に、ベクトルを基準とする直交座標系H−Vを、
各周波数毎に設定する。例えば、上記各周波数f〜f
に対応する基準方向(ベクトル)が渦流探傷器1
2に備えられた上記表示器上のインピーダンス平面の水
平方向に一致するように、各周波数ごとに位相角を調整
してもよい。そしてこのような条件で測定されたインピ
ーダンスの水平成分、垂直成分をそれぞれH,V
,V,H,Vとしたとき、ライナ層厚,全肉
厚,ジルカロイ厚は以下に述べるようにして算出され
る。なお上記水平,垂直成分の名添字は、3重周波数に
おける周波数の違いを表わすものである。
算出にあたっては、まず予め以下の作業が必要である。
(1)ライナ層厚算出式の仮定 ライナ層厚は周波数f,fを用いて算出する。算出
式は例えば、ライナ層厚をTzrとして と仮定する。ただしCijklは係数である。
(2)全肉厚算出式の仮定 全肉厚は周波数f,f,fを用いて算出する。算
出式は例えば。全肉厚をTtotalとして と仮定する。ただしCijklmnは係数である。
(3)ジルカロイ厚算出式の仮定 ジルカロイ厚は全肉厚と同様にして算出することができ
るが、簡単にはジルカロイ厚をTzryとして Tzry=Ttotal−Tzr …(3) として算出することができる。
(4)係数の決定 まず、各種のライナ被覆管について、H,V
,V,H,Vを測定すると共に、同一場所を
破壊検査によりライナ層厚,全肉厚、ジルカロイ厚を実
測しておき、上記(1)〜(3)の算出仮定式を用いて
多変量解析手法により最適な項を選択し、各項の係数を
最小2乗法により求める。これによりライナ層厚,全肉
厚、ジルカロイ厚の算出のための算出式を得る。
このようにして得られた算出式の演算プログラムを第2
図に示す演算装置13に入力しておき、前記ブリッジ回
路のアクティブコイル1およびリファレンスコイル2を
元の接続状態に戻して、第2図の構成により3重周波数
による渦流測定を行う。すなわち、ターニングローラ9
上のライナ被覆管8内にアクティブコイル1(絶対値
型)を内蔵するプローブ10を挿入し、その管内面を螺
旋状に走査することにより、第1図のブリッジ回路を含
む渦流探傷器12においてインピーダンス測定を行い、
上記のようにして設定した直交座標系H−Vでのインピ
ーダンスの水平および垂直成分を求める。このような操
作を各周波数ごとに行い、水平および垂直成分H,V
,H,V,H,Vを求める。こうして求めら
れた水平および垂直成分H,V,H,V
,Vは演算装置13に順次入力され、この入力デ
ータに基づき上記3つの算出式の演算が行われ、ライナ
層厚、全肉厚およびジルカロイ厚が算出される。これら
の算出結果は第2図に示す表示器14に入力され、各算
出値が表示される。
以上の方法をプローブ10内のアクティブコイル1のコ
イル径が約1mmφ、試験周波数500kHz,2MHz,4
MHzの場合に適用した実測結果を第4図,第5図および
第6図に示している。第4図はライナ層厚について、こ
の方法により得られた算出値(縦軸)と破壊的検査によ
り得られた実測値(横軸)の関係を示しており、この方
法による測定結果が実際に値によく一致していることが
確認される。第5図および第6図はそれぞれ全肉厚およ
び母材層(ジルカロイ)厚について同様の関係を示した
もので、いずれも高精度の測定結果が得られていること
が確認される。
以上の実施例では、測定された全肉厚とライナ層厚の差
分から母材層厚を求めるようにしているが、母材層厚に
ついても全肉厚算出の場合と同様にして求めることがで
きる。上記方法によりライナ層厚のみを測定する場合に
は、全肉厚の未知数を減らすことができるため3種類の
周波数は不要で、2種類の周波数で足りる。
ところで、上記算出式に代えて、次のようにして求めた
算出式を用いても良好な結果が得られる。この場合の算
出式の決定方法においては、一般的に、コイルインピー
ダンスを変える要因を2n種とした場合、n種の周波数
を用いたn重渦電流法を適用し、その測定データから2
n種の主成分を抽出して、ライナ層厚などの検出目的厚
さとの回帰分析により算出式を求めるものであるが、以
下にはコイルインピーダンスを変える要因を4種とし
て、2重周波数による渦電流法を適用した場合について
説明する。
すなわち先ず、上述と同様にして、各種のライナ被覆管
についてH,V,H,Vを測定するとともに、
同一場所のライナ層厚Tzrを顕微鏡により実測定する。
次に、このようにして得られた種々のライナ層厚に対応
する(H,V,H,V)のデータ群に基づき、
主成分分析により、第1主成分 第2主成分 第3主成分 第4主成分 を抽出する。
ただし、s〜s,t〜t,u〜u,v
は係数、iはデータ番号である。そして、ライナ層
厚と各主成分との関係を重回帰分析により求めると、 という算出式が得られる。ただしa,b,c,d,eは
係数である。全肉厚の算出式も3周波数(H,V
,V,H,V)を用いて同様にして求めるこ
とができ、また母材層厚の算出式は上記(3)式による
ことができる。第7図は算出式として(5)式を用いた
ライナ層厚の算出値(縦軸)と破壊的検査により得られ
た実測値(横軸)との関係を示しており、この場合の測
定結果が実際の値によく一致していることが確認され
る。
なお、前述したブリッジ回路における第2ダミー回路7
では、第1ダミー回路5のインピーダンスZ側にイン
ピーダンス素子Zが接続される構成であるが、他方の
インピーダンス素子Z側にインピーダンス素子Z
接続される構成でもよく、いずれにしても第1ダミー回
路5側のインピーダンス素子Z,Zのいずれかがイ
ンピーダンス素子Zの付加により1%程度変化し得る
ものであればよい。また、上記インピーダンス素子
,Zをアクティブコイル1およびリファレンスコ
イル2と等価になるように調整をする手順は、次のよう
に行うのが望ましい。
先ず、ライナ層厚、全肉厚が標準的な試供管を用意し、
この試供管内に第2図に示す通りにプローブ10を挿入
し、アクティブコイル1、リファレンスコイル2が接続
された状態でのブリッジ回路の出力を測定する。次い
で、第1ダミー回路5のインピーダンス素子Z,Z
として、先ず第1図の純抵抗R,Rと等価な純抵抗
,Rそれぞれ接続し、スイッチ3,4を第1ダミ
ー回路5側に切替え接続してブリッジ回路の出力を測定
する。このあと、更に上記純抵抗R,Rに付加的な
抵抗、コンデンサなどを順次接続し、ブリッジ回路の出
力がコイル系接続時と等しくなるように調整することに
よって、インピーダンス素子Z,Zの値を決定す
る。インピーダンス素子Z,Zの一方に付加される
インピーダンス素子Zは、ZまたはZの約100
倍となるような値に調整し決定する。
コイルインピーダンスの変化の基準方向を決定する上記
第1,第2ダミー回路5,7の各インピーダンス素子Z
〜Zは、上記した抵抗、コンデンサなどの電気素子
を適当に選択することにより、温度,湿度などの外乱要
因の影響を受けることなく上記基準方向を正しく決定で
きる。以上の手順により各インピーダンス素子Z〜Z
を決定することにより、実際にライナ被覆管を測定す
ると時と同一の測定器の感度条件下で基準方向に設定が
でき、測定器のダイナミックレンジを広く取ることがで
きる。
また、上記基準方向を決定する第1ダミー回路5から第
2ダミー回路7への切替え時のブリッジ回路の出力差
(基準電圧と称す)の絶対値は、測定器系の感度の指標
となる。すなわち、経時的に測定器系の感度が変化する
と、それに応じて上記基準電圧に変化が生じる。そこ
で、上記基準電圧を定期的にチェックし、その変化分に
見合う分だけ前述した方法によるライナ被覆管の実測値
を補正することにより、測定器系の感度変化に伴う測定
のずれを校正することができ、測定精度を上げることが
できる。
第8図は、第4図,第5図および第6図に示す実測結果
を得た先の実施例と同じ条件で4ケ月後にライナ被覆管
のライナ層厚について測定した実測結果を示している。
縦軸はこの渦流法による測定値、横軸は破壊的検査によ
り得られた実測値を示す。
一方、先の実施例と4ケ月後の実施例における上記基準
電圧の変化は表1に示す通りである。
第8図に示す実測結果から明らかなように、上記基準電
圧変化分を補正しない場合には、破壊的検査により実測
値(横軸)と渦流法による測定値との間に偏差と多少の
バラツキの増加が認められる。そこで、この基準電圧の
変化割合分だけ、渦流法により得られるコイルインピー
ダンス変化の各成分H,V,H,Vの測定値に
補正を加えて、ライナ層厚を算出した結果が第9図(縦
軸)は渦流法による補正後の測定値、横軸は破壊的検査
により実測値)である。同図を先の第8図と比較して明
らかなように、上記補正が極めて有効であることが確認
される。
(発明の効果) 以上のように、この発明のライナ被覆管の厚み測定方法
によれば、ライナ層厚だけでなく、全肉厚ひいては母材
層厚も同時に測定でき、しかもリフトオフ変動に限らず
ライナ層、母材層の導電率変動にも左右されることなく
高精度の測定が可能となるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の実施に使用されるブリッジ回路の結
線図、第2図はこの発明の実施の状態を示す模式図、第
3図は基準方向の決定方法を示す説明図、第4図,第5
図,第6図はそれぞれこの発明の方法により測定された
ライナ層厚、全肉厚および母材層厚の値と破壊的検査に
より実測された値との関係を示す図、第7図は第4図の
方法とは別のこの発明の方法により測定されたライナ層
厚と破壊的検査により実測された値との関係を示す図、
第8図は上記実施例より4ケ月経過後におけるこの発明
の方法によるライナ層厚の測定値と破壊的検査により実
測された値との関係を示す図、第9図はこの発明の方法
によるライナ層厚の測定値を基準電圧変化分補正したも
のと破壊的検査により実測値との関係を示す図、第10
図はライナ被覆管の断面図、第11図はリフトオフ変動
によるインピーダンス変化方向を示す図、第12図はリ
フトオフ変動量とインピーダンス変化量の関係を示す
図、第13図はライナ層厚、リフトオフ、ライナ層厚の
比抵抗、母材層の比抵抗の変動によるコイルインピーダ
ンスの変化を示す図である。 1…アクティブコイル、 2…リファレンスコイル、5…第1ダミー回路、 7…第2ダミー回路、 8…ライナ被覆管、 10…プローブ、 12…渦流探傷器、 13…演算装置、 14…表示器、 Z〜Z…インピーダンス素子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−67405(JP,A) 特開 昭59−67406(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】管内挿型プローブ内にアクティブコイルを
    配置し、複数種類の周波数を用いた渦電流法により前記
    アクティブコイルのインピーダンス変化を検出してライ
    ナ被覆管の厚みを測定する方法であって、 (a) 当該アクティブコイルとリファレンスコイルとを組
    込んだブリッジ回路を用意し、前記複数種類の周波数ご
    とに、以下のステップ(a-1) ないし(a-3) を行うことに
    よりインピーダンス平面を規定する直交座標系を設定す
    るステップと、 (a-1) 前記ブリッジ回路のアクティブコイル,リファレ
    ンスコイル相当部に、これらコイル系に替えてこれと等
    価な第1ダミーインピーダンスを与えこのときのブリッ
    ジ回路出力を測定する一方、同様に前記コイル系相当部
    に第1ダミーインピーダンスと少し値の異なる第2ダミ
    ーインピーダンスを与えこのときのブリッジ回路出力を
    測定するステップと, (a-2) ステップ(a-1) で測定された前記2つの出力の差
    から、第1ダミーインピーダンスから第2ダミーインピ
    ーダンスへのインピーダンス変化方向を基準方向として
    それぞれ定めるステップと, (a-3) インピーダンス平面を規定する直交座標の一方の
    軸を前記基準方向に揃うように直交座標系を設定するス
    テップと, (b) 前記複数種類の周波数ごとの前記ステップ(a) で設
    定した直交座標系におけるアクティブコイルのインピー
    ダンス測定データの水平および垂直成分と、ライナ被覆
    管の所望部位の厚みの実測データとの関係を回帰分析に
    より求めて、前記ライナ被覆管の所望部位の厚みを算出
    するための算出式を準備するステップと、 (c) 被測定ライナ被覆管内に前記プローブを挿入し、前
    記複数種類の周波数ごとに得られた前記アクティブコイ
    ルのインピーダンス測定値の前記直交座標系における水
    平および垂直成分を前記ステップ(b) で準備した算出式
    に当てはめて、所望部位の厚みを求めるステップと、 を備えることを特徴とするライナ被覆管の厚み測定方
    法。
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