JPH0677548A - 炭素クラスター電導体膜およびその製造方法と、これを用いた超電導ジョセフソン素子およびその製造方法 - Google Patents

炭素クラスター電導体膜およびその製造方法と、これを用いた超電導ジョセフソン素子およびその製造方法

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JPH0677548A
JPH0677548A JP4228903A JP22890392A JPH0677548A JP H0677548 A JPH0677548 A JP H0677548A JP 4228903 A JP4228903 A JP 4228903A JP 22890392 A JP22890392 A JP 22890392A JP H0677548 A JPH0677548 A JP H0677548A
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carbon
carbon cluster
conductor film
vacuum
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Yoshinobu Ueha
良信 上羽
Nobuyuki Okuda
伸之 奥田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 空気中で安定な炭素クラスター電導体膜とそ
の製造方法、ならびにこれを利用した、空気中で安定に
作動できて実用性の高い超電導ジョセフソン素子とその
製造方法を提供する。 【構成】 炭素クラスター電導体膜は、アルカリ金属や
アルカリ土類金属より安定な不純物をドープする。炭素
クラスター電導体膜の製造方法は、真空中で炭素クラス
ターC60と上記不純物Snとをほぼ同時に蒸発させて、基
板K上に堆積させる。超電導ジョセフソン素子は、上記
不純物Snがドープされた一対の超電導体層S1、S2間
に、炭素クラスターC60からなる絶縁層Iを介装した。
超電導ジョセフソン素子の製造方法は、炭素クラスター
60と不純物Snとをほぼ同時に堆積させて第1の超電導
体層S1を形成し、炭素クラスターC60のみを堆積させ
て絶縁層Iを形成した後、炭素クラスターC60と不純物
Snとをほぼ同時に堆積させて第2の超電導体層S2を形
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体、常電導体から
超電導体までの任意の導電性を有し、かつ空気中で安定
な炭素クラスター電導体膜およびその製造方法と、これ
を利用した超電導ジョセフソン素子およびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近時、炭素原子60個で構成されたサッ
カーボール状の炭素クラスター分子(C60、いわゆるフ
ラーレンやバックミンスターフラーレン)や、炭素原子
70個で構成されたラグビーボール状の炭素クラスター
分子(C70)等、C2n(但し10≦n≦300)で表さ
れる、π電子共役系を有する炭素クラスター分子の粉末
や薄膜に、真空拡散法によってアルカリ金属をドープし
た電導体が提案された(Haddon R.C. et al. Nature Vo
l.350 ,320-322 ,28 March 1991 およびHebardA.F. e
t al. Nature Vol.350 ,600-601 ,18 April 1991 参
照)。
【0003】前者の論文では、例えばカリウム(K)や
ルビジウム(Rb)をドープしたC60の薄膜において、そ
れぞれ、500S/cm、100S/cmの電導度が得られ
ることが報告されており、後者の論文では、カリウムを
ドープしたC60(K3 60)の粉末が、臨界温度Tc=
18Kの超電導性を示し、同じK3 60の薄膜が、臨界
温度Tc=16Kの超電導性を示すことが報告されてい
る。
【0004】また、ルビジウムをドープしたC60(Rb3
60)の粉末が、臨界温度Tc=28Kの超電導性を示
したとの報告(Rosseinsky M.J. et al. Phys. Rev. Le
tt.,66,2830,1991参照)や、ルビジウムとセシウム
(Cs)をドープしたC60(Rb 2 Cs1 60)の粉末が、臨
界温度Tc=33Kの超電導性を示したとの報告(Inag
aki K. et al. Nature Vol.352,222 ,18 July 1991参
照)もある。
【0005】さらにアルカリ金属以外の不純物として、
アルカリ土類金属であるカルシウム(Ca)をドープした
60が超電導性を示したとの報告もなされている(Natu
re Vol.355,529 ,6 February 1992 参照)。上記炭素
クラスターは、真空蒸着法等の通常の気相成長法により
簡単に薄膜化できる上、形成された炭素クラスター薄膜
には、真空拡散法等の通常の拡散法によってアルカリ金
属やアルカリ土類金属をドープするだけで、上記のよう
に臨界温度Tcが比較的高い超電導特性を付与できるの
で、たとえば一対の超電導体層が絶縁膜を介して積層さ
れた薄膜型の超電導ジョセフソン素子等の実用化に大き
く貢献するものとして注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところがアルカリ金属
やアルカリ土類金属をドープした炭素クラスター薄膜
(炭素クラスター電導体膜)は、真空中もしくは酸素や
水の存在しない不活性雰囲気下では安定に存在するが、
空気中では不安定で、短期間に電気伝導度が低下してし
まうという問題があり、このことが、上記超電導ジョセ
フソン素子等の実用化の大きな妨げとなっている。
【0007】これは、アルカリ金属やアルカリ土類金属
が周知のように反応性が高く不安定である上、これらの
ドープにより生成される化合物も不安定であり、空気中
の酸素や水と反応しやすいことが原因と考えられる。最
近になって、スズ(Sn)をドープしたC60の粉末が超電
導性を示し、しかも空気中でも安定であることが報告さ
れた(Solid State Comm. Vol.82,No.3,167-170 ,19
92)。
【0008】しかし現在のところ、スズをドープしたC
60は粉末状のものしか得られておらず、薄膜化に成功し
たとの報告例はない。この原因はスズの蒸気圧が低いこ
とによると考えられる。つまり、真空拡散法等でスズを
炭素クラスター薄膜にドープする際には、スズを蒸発さ
せるために550〜600℃といった高温が必要で、そ
の熱で炭素クラスター薄膜が気化あるいは分解してしま
うため、スズがドープされた炭素クラスター電導体膜が
得られないのである。
【0009】本発明は以上の事情に鑑みてなされたもの
であって、アルカリ金属やアルカリ土類金属より安定な
スズ等の不純物がドープされた、空気中で安定な炭素ク
ラスター電導体膜とその製造方法、ならびにこれを利用
した、空気中で安定に作動できて実用性の高い超電導ジ
ョセフソン素子とその製造方法を提供することを目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】上記課題を解
決するための本発明の炭素クラスター電導体膜は、π電
子共役系を有する炭素クラスターと、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属より安定な不純物とを真空中で交互また
は同時に蒸発させ、基板上に堆積させて形成したことを
特徴とし、本発明の炭素クラスター電導体膜の製造方法
は、上記炭素クラスターと不純物とを真空中で交互また
は同時に蒸発させて、基板上に、不純物がドープされた
炭素クラスターの薄膜を堆積させることを特徴とする。
【0011】本発明によれば、炭素クラスターと不純物
とをほぼ同時に加熱、蒸発させ、基板上に堆積させて、
不純物がドープされた炭素クラスター電導体膜を形成す
るので、あらかじめ形成した炭素クラスター薄膜にあと
から不純物をドープする場合のように、一旦形成された
炭素クラスター薄膜が、不純物拡散時の熱によって気化
したり分解したりするおそれがない。
【0012】よって本発明によれば、アルカリ金属およ
びアルカリ土類金属より安定なスズ等の不純物がドープ
された、空気中で安定な炭素クラスター電導体膜が得ら
れる。本発明の超電導ジョセフソン素子は、上記炭素ク
ラスターと不純物とを真空中で交互または同時に蒸発さ
せ、堆積させて形成した一対の超電導体層と、この一対
の超電導体層間に介在させた、不純物がドープされてい
ない炭素クラスターからなる絶縁膜とを備えることを特
徴とする。
【0013】上記構成からなる本発明の超電導ジョセフ
ソン素子は、超電導体層が、空気中で安定な本発明の炭
素クラスター電導体膜の構成を有しているため、酸素や
水分を遮蔽する必要がなく空気中で安定に作動でき、実
用性が高い。また、従来の酸化物高温超電導体からなる
超電導ジョセフソン素子が、材料の基本特性であるコヒ
ーレンス長の短さゆえに絶縁膜の作製が困難であったの
に対し、本発明の超電導ジョセフソン素子は、超電導体
層が炭素クラスター電導体膜からなるため、従来のもの
に比べてコヒーレンス長が長く、絶縁膜の膜厚がコヒー
レンス長による制約を受けないので、絶縁膜の形成が容
易であるという利点もある。
【0014】しかも本発明の超電導ジョセフソン素子に
おいては、絶縁膜も炭素クラスター分子で構成されるた
め、従来の酸化物系の絶縁膜に比べて極薄で、かつピン
ホールのない良質の絶縁膜を簡単に形成できるという利
点もある。たとえばC60は粒径約7Åの球状粒子である
ため、このC60の単分子層(ML)を数層積層すれば、
膜厚20Å程度、すなわち炭素クラスターをベースとし
た超電導体層のコヒーレンス長程度、あるいはそれ以下
の膜厚の、ピンホールのない良質の絶縁膜を形成するこ
とができる。
【0015】さらに本発明の超電導ジョセフソン素子に
おいては、超電導体層と絶縁膜とが同じ炭素クラスター
をベースとした材料により構成されるので、超電導体層
と絶縁膜との接合部で結晶格子の乱れを殆ど生じること
なく良好な接合状態を達成でき、良好なトンネル電流が
得られる。しかも、スズをドープした炭素クラスターの
超電導体層を例にとると、最高で80K程度までの臨界
温度Tcを実現できるので、液体ヘリウムを用いなくて
も、冷凍機等により超電導状態を実現できる。
【0016】したがって本発明によれば、特性にすぐ
れ、高感度でしかも広範囲に応用できる超電導ジョセフ
ソン素子を実現できる。さらに本発明の超電導ジョセフ
ソン素子の製造方法は、上記炭素クラスターと不純物と
を真空中で交互または同時に蒸発させて、基板上に第1
の超電導体層を形成し、この第1の超電導体層上に炭素
クラスターのみを堆積させて絶縁膜を形成した後、炭素
クラスターと不純物とを、真空中で交互または同時に蒸
発させ、上記絶縁膜上に堆積させて、第2の超電導体層
を形成することを特徴とする。
【0017】上記本発明の製造方法によれば、3層構造
の超電導ジョセフソン素子を1バッチで連続的に製造で
きるので、効率的で生産性にすぐれる上、各層を別バッ
チで形成する場合のように各層の表面が汚染されて層間
の接合が阻害されるおそれがない。したがって本発明の
製造方法によれば、前述したように超電導体層と絶縁膜
とが同じ炭素クラスターをベースとした材料により構成
され、接合部で結晶格子の乱れを殆ど生じないことと相
俟って良好な接合状態を達成でき、高感度でしかも広範
囲に応用できる超電導ジョセフソン素子を製造すること
ができる。
【0018】以下に本発明を説明する。まず本発明の炭
素クラスター電導体膜およびその製造方法について説明
する。本発明の炭素クラスター電導体膜を、本発明製造
方法により製造するには、たとえば図1(a) に示すMB
E装置等が使用される。図のMBE装置は、真空チャン
バー1内の上方に、ヒータ10aを内蔵したサセプタ1
0を配置するとともに、このサセプタ10に対向させ
て、真空チャンバー1内の下方に、炭素クラスターの分
子線を発生させる分子線源(Kセル)11と、不純物の
分子線(または原子線)を発生させる分子線源(Kセ
ル)12とを配置したものである。
【0019】サセプタ10は基板Kを保持するととも
に、保持された基板Kをヒータ10aによって所定の温
度に加熱するためのもので、その下方には、基板Kの表
面を選択的に覆い、膜の堆積個所を制限するためのマス
ク13が配置されている。また分子線源11,12は、
内部に収容された炭素クラスターや不純物を、抵抗加熱
により加熱して蒸発させるとともに、蒸発分子または原
子をコリメートして分子線または原子線を発生させるも
ので、その上方には、各分子線源からの分子線(原子
線)の発生を制御するためのシャッタ14,15が設け
られている。
【0020】上記装置を用いて、本発明の炭素クラスタ
ー電導体膜を形成するには、まず、サセプタ10に基板
Kを保持させるとともに、分子線源11に炭素クラスタ
ーを、分子線源12にスズ等の不純物を、それぞれ供給
する。つぎに、真空チャンバー1内を所定の真空度に真
空吸引する。真空チャンバー1内の到達真空度はとくに
限定されないが、少なくとも10-7Torr以上の超高真空
であるのが好ましく、とくに10-8〜10-10 Torr程度
であるのがより好ましい。超高真空中では、300〜5
00℃程度の比較的低温の条件で炭素クラスターの分子
線を発生できるので、炭素クラスターの熱による分解を
防いで、純度の高い炭素クラスター電導体膜を形成でき
る。
【0021】つぎに、サセプタ10のヒータ10aに通
電して基板Kを所定の温度に加熱しする。基板加熱は、
基板K、サセプタ10、ヒータ10a、真空チャンバー
1等に吸着したガスの脱着をともない、真空チャンバー
1内の真空度に影響をおよぼすので、真空吸引の開始
後、できるだけ早い時期に開始するのがよい。つぎに、
シャッタ14,15を閉じた状態で分子線源11,12
に通電し、炭素クラスターおよび不純物を所定の温度に
加熱する。そしてシャッタ14,15を同時または交互
に開放すると、炭素クラスターの分子線と不純物の分子
線(原子線)とが同時または交互に発生し、前記マスク
13によって選択的に覆われていない基板Kの表面に堆
積して、本発明の炭素クラスター電導体膜が、マスク1
3の形状に対応した形状に形成される。
【0022】上記製造方法によれば、たとえば数十Åか
ら数千Å程度の炭素クラスター電導体膜を容易に作製で
きる。なお本発明においては、形成された炭素クラスタ
ー電導体膜の特性をさらに向上させるため、必要に応じ
てアニール処理を行うこともできる。炭素クラスターと
しては、前記C2n(但し10≦n≦300)で表され
る、π電子共役系を有する種々の炭素クラスターを使用
することができる。上記炭素クラスターは、原料として
のグラファイトやカーボンから、アーク放電、抵抗加
熱、レーザービーム加熱、マグネトロンスパッタリング
等によって得たスートを、溶媒抽出、カラムクロマトグ
ラフ精製等により、99.9%以上の高純度に精製する
ことで製造される。精製時に用いた溶媒を除去するに
は、精製後の炭素クラスターを10-2Torr以上の真空度
に減圧しつつ、200〜300℃に加熱して1日以上放
置するのがよい。炭素クラスターの具体例としては、C
60、C60とC70の混合物などがあげられる。
【0023】炭素クラスターの薄膜にドープする不純物
としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属より安定で
あれば、種々のものが使用できる。不純物の例として
は、たとえばFe、Co、Ni等の遷移元素;ランタニド系元
素;アクチニド系元素;B、Al、Ga、In等のIII b族元
素;Si、Ge、Sn等のIVb族元素などの、炭素クラスター
にドナーとして作用するもの、あるいはP、As、Sb等の
Vb族元素;S、Se、Te等のカルコゲン元素などの、炭
素クラスターにアクセプタとして作用するものがあげら
れる。これらは単独で使用される他、2種以上を併用す
ることもできる。その場合には、それぞれの不純物に対
応した分子線源が、真空チャンバー1内に設けられる。
【0024】上記各不純物のうち、抵抗加熱によるKセ
ルでは蒸発不可能な不純物を使用する場合には、電子銃
(Eガン)による加熱を利用すればよい。不純物のドー
プ量は、前述したように、目的とする炭素クラスター電
導体膜の導電性(半導体、常電導体、超電導体)に応じ
て任意の量に調整することができる。不純物としてFeや
Co等の磁性体を使用した場合には、磁気特性の制御も可
能である。
【0025】さらに半導体の場合には、ドープする不純
物の種類を選択することで、p型(アクセプターを注
入)またはn型(ドナーを注入)の半導体を形成でき
る。このため、例えばpn接合やpin接合等の各種接
合の素子や、FET等の半導体装置を、極めて容易に製
造することもできる。pin接合のi層は、本発明の超
電導ジョセフソン素子における絶縁膜と同様に、不純物
がドープされていない炭素クラスターからなる絶縁膜で
構成するのが、工程上からも、また素子の特性上からも
好ましい。
【0026】基板Kとしては、たとえばガラス、石英、
ダイヤモンド、マイカ、Zn Se 等の絶縁体基板、シリコ
ン、Ga As 、InP等の半導体基板、グラファイト、Pt、
Au等の導体基板など、電導体膜の目的、用途等に応じて
各種の基板が使用できる。また基板の表面には、炭素ク
ラスター電導体膜と接続される所定形状の電極層を形成
しておいてもよい。
【0027】以上のように本発明によれば、炭素クラス
ターと不純物とをほぼ同時に基板K上に堆積させるの
で、たとえばスズのように、炭素クラスターが気化ある
いは分解するような高温でないと蒸発しない不純物を使
用した場合でも、当該不純物が所定の比率でドープされ
た炭素クラスター電導体膜を形成することができる。そ
して、形成された本発明の炭素クラスター電導体膜は、
アルカリ金属、アルカリ土類金属よりも安定なスズ等の
不純物がドープされたものゆえ、空気中でも安定で、短
期間に電気伝導度が低下してしまうおそれがない。
【0028】上記本発明の炭素クラスター電導体膜は、
本発明の超電導ジョセフソン素子の超電導体層として使
用できる他、前述したように半導体の場合にはpn接合
やpin接合等の各種接合の素子やFET等の半導体装
置、あるいはストリップ線路や回路部材としてマイクロ
波部品や平面アンテナ等に使用することができる。つぎ
に、本発明の超電導ジョセフソン素子およびその製造方
法について説明する。なお本発明に使用する炭素クラス
ター、不純物、基板は、先に例示したものと同じでよ
い。
【0029】本発明の超電導ジョセフソン素子は、図1
(b) に示すように、基板K上に第1の超電導体層S1、
絶縁膜I、第2の超電導体層S2がこの順に積層された
もので、前記のように各層がいずれも、炭素クラスター
をベースとした材料で構成されている。上記層構成の超
電導ジョセフソン素子を、本発明製造方法により製造す
るには、やはり図1(a) に示すMBE装置を使用するこ
とができる。なお超電導ジョセフソン素子を構成する各
層の形状を、図1(b) に示すように違えるには、マスク
13を複数種用意しておき、それを外部からの操作によ
って交換できるようにするのがよい。
【0030】上記装置を用いて、本発明の超電導ジョセ
フソン素子を製造するには、まず、サセプタ10に基板
Kを保持させるとともに、分子線源11に炭素クラスタ
ーを、分子線源12にスズ等の不純物を、それぞれ供給
する。つぎに、真空チャンバー1内を所定の真空度に真
空吸引する。真空チャンバー1内の真空度は前記と同程
度でよい。
【0031】つぎに、サセプタ10のヒータ10aに通
電して基板Kを所定の温度に加熱しつつ、シャッタ1
4,15を閉じた状態で分子線源11,12に通電し、
炭素クラスターおよび不純物を所定の温度に加熱する。
また基板Kの下方には、最初に形成する第1の超電導体
層S1の形状に対応したマスク13をセットする。そし
てシャッタ14,15を同時または交互に開放すると、
炭素クラスターの分子線と不純物の分子線(原子線)と
が同時または交互に発生し、マスク13によって選択的
に覆われていない基板Kの表面に堆積して、基板K上に
第1の超電導体層S1が形成される。
【0032】つぎに、マスク13を絶縁膜Iの形状に対
応したものに交換し、シャッタ14のみを開放して炭素
クラスターの分子線を発生させると、マスク13によっ
て選択的に覆われていない第1の超電導体層S1および
基板K上に炭素クラスターが堆積して絶縁膜Iが形成さ
れる。つぎに、マスク13を第2の超電導体層S2の形
状に対応したものに交換し、先の第1の超電導体層S1
と同様に、シャッタ14,15を同時または交互に開放
して、炭素クラスターの分子線と不純物の分子線(原子
線)とを同時または交互に発生させると、マスク13に
よって選択的に覆われていない絶縁膜I上に堆積して第
2の超電導体層S2が形成され、本発明の超電導ジョセ
フソン素子が得られる。
【0033】なお本発明においては、形成された超電導
ジョセフソン素子の特性をさらに向上させるため、必要
に応じてアニール処理を行うこともできる。以上のよう
に本発明によれば、3層構造の超電導ジョセフソン素子
を1バッチで連続的に製造できるので生産性がよい。し
かも、各層を別バッチで形成する場合のように各層の表
面が汚染されて層間の接合が阻害されるおそれもない。
【0034】そして、製造された超電導ジョセフソン素
子は、第1および第2の超電導体層S1,S2がともに
本発明の炭素クラスター電導体膜の構成を有しているた
め空気中で安定に作動することができる上、前記のよう
に特性にすぐれ、高感度でしかも広範囲に応用できるも
のである。本発明の炭素クラスター電導体膜および超電
導ジョセフソン素子を製造するための装置としては、図
1(a) に示すMBE装置の他、蒸発源として通常のルツ
ボやボート等を用いた真空蒸着装置を使用することもで
きる。
【0035】
【実施例】炭素クラスター電導体膜の作製 図1(a) に示すMBE装置を用い、サセプタ10に石英
基板をセットするとともに、分子線源11に精製C
60を、分子線源12に不純物としてのスズを、それぞれ
供給した。
【0036】つぎに、真空チャンバー1内の真空吸引を
開始するとともに、サセプタ10のヒータ10aに通電
して石英基板の加熱を開始した。つぎに、真空チャンバ
ー1内の真空度が10-10 Torr、石英基板の温度が20
0℃に到達した段階で、シャッタ14,15を閉じたま
ま分子線源11,12に通電して、C60側の分子線源1
1のKセル温度を400℃、スズ側の分子線源12のK
セル温度を600℃にした。
【0037】そして、膜厚モニタでC60およびスズの堆
積量を観察しながら、C60とスズの比率がモル比で1:
4になるようにシャッタ14,15を交互に開閉して、
石英基板の表面に、膜厚1000Åのスズドープ炭素ク
ラスター電導体膜(Sn3 60)を堆積させた。形成直後
の炭素クラスター電導体膜の磁化を測定したところ常磁
性を示したが、Ar雰囲気下で500℃、60分間のアニ
ール処理を行った直後の段階では臨界温度Tc=35K
で反磁性を示し、超電導体であることが確認された。
【0038】そこでこの炭素クラスター電導体膜を空気
中で1日以上放置した後、再度磁化を測定したところ、
やはり臨界温度Tc=35Kで反磁性を示し、空気中で
安定であることが確認された。超電導ジョセフソン素子の作製 図1(a) に示すMBE装置を用い、上記炭素クラスター
電導体膜の作製と同様の条件で、Sn3 60からなる膜厚
1000Åの第1の超電導体層S1をMoS2単結晶基
板上に形成した。蒸着速度は、10Å/分とした。
【0039】つぎにシャッタ14を開放しシャッタ15
を閉鎖して、第1の超電導体層S1上にC60のみを堆積
させて、膜厚10Åの絶縁膜Iを形成した。このとき、
基板温度は150℃、蒸着速度は10Å/分とした。つ
ぎに、第1の超電導体層S1と同様の条件で、絶縁膜I
上に、膜厚1000Åの第2の超電導体層S2を形成し
て、図1(b) に示す構造の超電導ジョセフソン素子を得
た。
【0040】作成された超電導ジョセフソン素子のジョ
セフソン接合の特性を、直流4端子法により測定したと
ころ、図2に示すように、ジョセフソン接合に特有のヒ
ステリシスが観測された。また、10GHzのマイクロ波
照射により、シャピロステップが現れることも確認され
た。そこでこの超電導ジョセフソン素子を空気中で1日
以上放置した後、再度その特性を測定したところ、形成
直後と変化はみられず、空気中で安定であることが確認
された。
【0041】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の炭素クラス
ター電導体膜の製造方法によれば、炭素クラスターと不
純物とをほぼ同時に加熱、蒸発させて、基板上に堆積さ
せるので、たとえばスズのように、炭素クラスターが気
化あるいは分解するような高温でないと蒸発しない不純
物を使用した場合でも、当該不純物が所定の比率でドー
プされた炭素クラスター電導体膜を形成することができ
る。
【0042】また、上記本発明の製造方法により形成さ
れた本発明の炭素クラスター電導体膜は、アルカリ金
属、アルカリ土類金属よりも安定なスズ等の不純物がド
ープされているので空気中で安定で、酸素や水分を遮蔽
する必要がなく、種々の分野において実用性にすぐれた
ものとなる。また本発明の超電導ジョセフソン素子は、
超電導体層が本発明の炭素クラスター電導体膜の構成を
有しているため空気中で安定に作動することができる
上、絶縁膜も炭素クラスター炭素クラスター分子で構成
されるため超電導体層と絶縁膜とが良好に接合される
等、ジョセフソン素子としての特性にすぐれており、高
感度でしかも超電導体層の臨界温度か高いこともあっ
て、広範囲に応用できるものとなっている。
【0043】さらに本発明の超電導ジョセフソン素子の
製造方法によれば、1バッチで超電導ジョセフソン素子
を製造できるので生産性がよいだけでなく、各層を別バ
ッチで形成する場合のように各層の表面が汚染されて層
間の接合が阻害されるおそれがないので、素子の特性を
さらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(a) は本発明の製造方法に使用されるMB
E装置の一例を示す概略断面図、同図(b) は上記装置に
よって製造される本発明の超電導ジョセフソン素子の、
基本的な層構成の一例を示す断面図である。
【図2】実施例の超電導ジョセフソン素子における電圧
−電流特性を示すグラフである。
【符号の説明】
Sn 不純物(スズ) C60 炭素クラスター K 基板 S1 第1の超電導体層 S2 第2の超電導体層 I 絶縁膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 39/22 ZAA A 8728−4M

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリ金属およびアルカリ土類金属より
    安定な不純物がドープされた炭素クラスター電導体膜で
    あって、π電子共役系を有する炭素クラスターと上記不
    純物とを真空中で交互または同時に蒸発させ、基板上に
    堆積させて形成したことを特徴とする炭素クラスター電
    導体膜。
  2. 【請求項2】π電子共役系を有する炭素クラスターと、
    アルカリ金属、アルカリ土類金属より安定な不純物とを
    真空中で交互または同時に蒸発させて、基板上に、不純
    物がドープされた炭素クラスターの薄膜を堆積させるこ
    とを特徴とする炭素クラスター電導体膜の製造方法。
  3. 【請求項3】π電子共役系を有する炭素クラスターと、
    アルカリ金属、アルカリ土類金属より安定な不純物とを
    真空中で交互または同時に蒸発させ、堆積させて形成し
    た一対の超電導体層と、この一対の超電導体層間に介在
    させた、不純物がドープされていない炭素クラスターか
    らなる絶縁膜とを備えることを特徴とする超電導ジョセ
    フソン素子。
  4. 【請求項4】π電子共役系を有する炭素クラスターと、
    アルカリ金属、アルカリ土類金属より安定な不純物とを
    真空中で交互または同時に蒸発させて、基板上に第1の
    超電導体層を形成し、この第1の超電導体層上に炭素ク
    ラスターのみを堆積させて絶縁膜を形成した後、炭素ク
    ラスターと上記不純物とを真空中で交互または同時に蒸
    発させ、上記絶縁膜上に堆積させて、第2の超電導体層
    を形成することを特徴とする超電導ジョセフソン素子の
    製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08175813A (ja) * 1994-12-26 1996-07-09 Nec Corp フラーレン系インターカレーション化合物薄膜およびその作製方法
JPH08175812A (ja) * 1994-12-22 1996-07-09 Nec Corp 炭素クラスター化合物を用いた物性制御方法および炭素クラスター化合物およびその製造方法

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JPH08175812A (ja) * 1994-12-22 1996-07-09 Nec Corp 炭素クラスター化合物を用いた物性制御方法および炭素クラスター化合物およびその製造方法
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