JPH0675807B2 - 放電加工装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、工具電極と被加工物とで形成される加工間
隙に休止時間を置きながら加工電圧を印加して加工を行
う際、加工状態の異常が検出された場合に電極定時引上
動作条件を変更することにより加工状態の異常を回避す
る放電加工装置に関するものである。

［従来の技術］ 第５図は従来の放電加工装置を示す概略図であり、図に
おいて（１）は電極、（２）は被加工物、（３）はＸク
ロステーブル、（４）はＹクロステーブル、（５）は電
極（１）と被加工物（２）で形成される加工間隙にパル
ス状電流を供給する加工電源、（６）は電極（１）の上
下方向駆動を行うアクチュエータ、（７）はＸクロステ
ーブル（３）の駆動を行うアクチュエータ、（８）はＹ
クロステーブル（４）の駆動を行うアクチュエータ、
（9a），（9b），（9c）は上記アクチュエータ（６），
（７），（８）に電流を供給するサーボアンプ、（10）
は加工間隙の電圧を検出する極間電圧検出回路、（11）
は電圧を印加してから放電が発生するまでの経過時間
（以下、無負荷時間Td）に相当するパルス信号を発生す
るTdパルス発生器、（12）はTd計測器、（13）はTd計測
器（12）の計測結果から各放電パルスを即放電（D1）、
正常放電（D2）およびオープン（D3）の３種に分類した
出力信号を発生する放電波形分類器、（14），（15），
（16）は放電波形分類器（13）にて出力された信号を３
種のグループごとにカウントするカウンタ、（17）は即
放電（D1）のカウント数から加工状態が正常か異常かを
判別する加工状態判別器、（18）はカウンタ（14），
（15），（16）のカウント数から電極送り制御を行う電
極送り制御装置、（19）は加工状態判別器（17）の結果
から休止時間などの制御を行う、電気条件制御装置であ
る。

次に動作について説明する。加工電源（５）は電極
（１）と被加工物（２）で形成される加工間隙にパルス
電圧を供給し、加工間隙に放電を発生させつつ、電極
（１）および被加工物（２）の相対位置を変化させて加
工を行うものである。電極（１）の上下動はアクチュエ
ータ（６）、被加工物（２）の移動はX,Yクロステーブ
ル（３），（４）を駆動するアクチュエータ（７），
（８）によって行われる。加工中の加工間隙の電圧は極
間電圧検出回路（10）により検出され、Tdパルス発生器
（11）は電圧を印加してから放電が発生するまでの無負
荷時間Tdに相当するパルス信号を発生する。第６図は極
間波形とTdパルス信号及び極間電圧が無負荷電圧より低
い第１の基準電圧と放電電圧より高い第２の基準電圧と
の間にある時間（以下、Tcとする）Tcパルス信号を模式
的に示したものである。Td計測器（12）はTdパルス信号
のパルス幅すなわち放電波形個々の無負荷時間Tdを計測
し、その結果から放電波形分類器（13）は各放電パルス
個々を即放電（D1）、正常放電（D2）およびオープン
（D3）の３種に分類し出力信号を発生する。ここで、 （ｉ）D1:0＜Td＜T1・・・短絡が発生したかあるいは加
工間隙の絶縁耐力が回復していない場合。

（ii）D2:T1＜Td＜T2・・・適当な時間の無負荷電圧が
存在し加工への寄与度が最も大きい場合。

（iii）D3:T2＜Td＜T3・・・無負荷電圧印加時間が比較
的長い場合。

である。

加工間隙における電圧波形としてはある程度より長くな
い時間を持った無負荷電圧が存在するような放電の発生
形体が望ましく、電極送り制御装置（18）はカウンタ
（14），（15），（16）によりカウントされた即放電
（D1）、正常放電（D2）およびオープン（D3）の頻度に
より電極サーボ送りを行う。

以上のような電極送り制御の他に、極間における加工ス
ラッジ濃度の上昇に伴って異常加工へ移行するのを防止
するため、加工状態判別器（17）は即放電（D1）の頻度
により加工状態が正常か異常かを判別し、制御装置（1
9）はその結果から電極定時引上動作条件の切り換え制
御を行うことにより異常加工の回避を行う。

［発明が解決しようとする問題点］ 従来の放電加工装置は以上のように構成されているの
で、異常加工状態の判別は短絡、即放電の頻度のみで行
われ、安定加工から異常加工への変遷を的確に判別・予
測して加工条件を制御することができず、電極面積・加
工電気条件などがことなる場合については判別レベルを
変更することが必要であった。また、判別レベルを固定
とした場合、異常加工の回避が最適に行われない、すな
わち条件の変更が早過ぎたり遅過ぎたりすることによる
加工効率の低下、あるいは定常アーク放電による被加工
物の損傷が発生するなどの問題があった。

この発明は上記のような問題点を解決するためになされ
たもので、安定加工から異常加工への変遷を適確に予測
・判別して加工条件を制御することにより、異常加工を
回避し、きわめて安定かつ効率の良い加工を行うことの
できる放電加工装置を得ることを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ この発明に関わる放電加工装置は、上記加工電圧が無負
荷電圧より低い第１の基準電圧より低く、かつ放電電圧
より高い第２の基準電圧より高い経過時間に相当するパ
ルス信号を発生するパルス発生手段と、上記パルス信号
のパルス幅を計測する計測手段と、この計測手段による
計測値を所定時間若しくは所定パルス数だけ記憶するメ
モリと、このメモリに記憶された上記計測値の分散値を
計算する分散値計算手段と、この分散値計算手段により
計算された分散値と基準値とを比較し、その分散値が基
準値を越えた場合に加工状態を異常として判断する加工
状態判別手段と、この加工状態判別手段より加工状態が
異常である信号が出力されたとき、電極定時引上げ動作
条件を異常加工を回避するよう変更制御する制御手段と
を備える構成としたものである。

［作用］ この発明における放電加工装置は、分散値計算手段によ
り、メモリに記憶された上記計測値の分散値を計算し、
また加工状態判別手段により、分散値計算手段により計
算された分散値と基準値とを比較し、その分散値が基準
値を越えた場合に加工状態を異常と判断する。そして制
御手段により、加工状態判別手段より加工状態が異常で
ある信号が出力されたとき、電極定時引き上げ動作条件
を、異常加工を回避するよう変更制御する。

［発明の実施例］ 以下、この発明の一実施例を図にもとずいて説明する。

第１図において（１）は電極、（２）は被加工物、
（３）はＸクロステーブル、（４）はＹクロステーブ
ル、（５）は電極（１）と被加工物（２）で形成される
加工間隙にパルス状電流を供給する加工電源、（６）は
電極（１）の上下方向駆動を行うアクチュエータ、
（７）はＸクロステーブル（３）の駆動を行うアクチュ
エータ、（８）はＹクロステーブル（４）の駆動を行う
アクチュエータ、（9a），（9b），（9c）は上記アクチ
ュエータ（６），（７），（８）に電流を供給するサー
ボアンプ、（10）は加工間隙の電圧を検出する極間電圧
検出回路、（11）は電圧を印加してから放電が発生する
までの経過時間（以下、無負荷時間Td）に相当するパル
ス信号を発生するTdパルス発生器、（12）はTdパルスの
パルス幅を計測するTd計測器、（13）はTd計測器（12）
の計測結果から各放電パルス即放電（D1）、正常放電
（D2）およびオープン（D3）の３種に分類した出力信号
を発生する放電波形分類器、（14），（15），（16）は
放電波形分類器（13）にて出力された信号を３種のグル
ープごとにカウントするカウンタ、（18）はカウンタ
（14），（15），（16）のカウント数から電極送り制御
を行う電極送り制御装置、（25）は加工電圧が無負荷電
圧より低い第１の基準電圧よりも低く、かつ放電電圧よ
り高い第２の基準電圧よりも高い経過時間Tcに相当する
パルス信号を発生する、Tcパルス発生手段であるTcパル
ス発生器、（26）はTcパルスのパルス幅を計測する、Tc
計測手段であるTc計測器、（27）は上記Tc計測器の計測
値を一時的に記憶するメモリ、（28）は該メモリ（27）
に記憶されたTcの分散値を計算する、Tc分散値計算手段
であるTc分散値計算器、（29）はTc分散値計算器（28）
の結果から加工状態が正常か異常かを判別する、加工状
態判別手段である加工状態判別器、（30）は該加工状態
判別器（29）の結果から電極定時引上動作条件（JUMPパ
ラメータ）を切換える、制御手段である制御装置であ
る。

次に動作について説明する。

第１図において、従来例同様、Td計測器（12）はTdパル
ス信号のパルス幅、すなわち放電波形個々の無負荷時間
Tdを計測し、その結果から放電波形分類器（13）は各放
電パルス個々を即放電（D1）、正常放電（D2）およびオ
ープン（D3）の３種に分類した出力信号を発生し、電極
送り制御装置（18）はカウンタ（14），（15），（16）
によりカウントされた即放電（D1）、正常放電（D2）お
よびオープン（D3）の頻度により電極サーボ送りを行う
ものである。

一方、Tc計測器（26）により計測された放電波形個々の
Tcパルスは所定パルス数分または所定時間分だけ一旦メ
モり（27）に記憶され、Tc分散値計算器（28）により分
散値が計算される。なお、分散値Vtcは、 Vtc＝Σ（Tc−Mtc）^２/n Mtc:Tcの平均値 n:計算パルス数 によりもとめられる。

第２図は、加工深さに対するTcの平均値と分散値の変化
を電極面積が異なるものについて示したものであるが、
加工深さが深くなるに従い両者ともTc分散値が急激に上
昇していることがわかる。これは、加工深さが深くなる
につれて極間でのスラッジ排出能力が低下するために、
スラッジ濃度が上昇して極間の抵抗値が低下するととも
に漏れ電流が発生し、無負荷電圧が低下するためであ
る。これによりTc分散値は、極間の状態の指標として非
常に有用であるといえる。そして、Tc分散値の変化は非
常に大きく電極面積などが異なる場合についても判別レ
ベルは同一に設定できる。次に加工状態判別器（29）は
Tc分散値が所定のレベルを越えたかどうかにより加工が
異常か正常かを判別し、異常の場合は電極定時引上動作
条件（JUMPパラメータ）を制御する制御装置（30）に信
号を発し、上記動作条件の自動切り換えを行う。

即ち加工状態が異常である場合には、周知の電極定時引
上動作条件（JUMPパラメータ）制御、具体的には電極引
上量の増加、電極引上げ頻度の増加、電極引上げ速度の
増加等を行ってスラッジ排出能力を向上させ、異常加工
を回避する。

なお電極定時引上動作は、電極送り制御とは独立して定
期的に電極（１）を上下動させることにより極間のスラ
ッジを排出するものであり、特に無噴流加工を行う場合
には不可欠である。

また、第３図は電極定時引上動作条件（JUMPパラメー
タ）固定の場合と、自動制御を行った場合において、加
工時間と加工深さの関係を示したものである。JUMPパラ
メータ固定の場合はJUMPパラメータが小さいものほど単
位時間あたりのJUMP時間が小さくなるため加工速度は早
いが、異常加工（加工不能）となる加工深さが浅くな
る。一方、自動制御を行ったものについては、異常加
工、すなわち分散値の急増を検出してJUMPパラメータを
増大させることにより、常に安定加工を行い、加工速度
も約20％増加している。但し、JUMPパラメータとして第
３図ではJUMP UP量を制御する場合について説明した
が、JUMP Down時間やJUMP速度を制御しても良い。

ところで、上記実施例においては電極送り制御を、即放
電（D1），正常放電（D2），およびオープン（D3）の頻
度により行う例を示したが、第４図に示すように極間平
均電圧検出器（23）、Ａ−Ｄ変換器（24）などを設けた
構成として平均電圧制御による電極送り制御としても良
い。

［発明の効果］ 以上のようにこの発明によれば、経過時間Tcの分散値に
より異常加工を判別して電極定時引上動作条件を自動的
に切り換えるように構成したため、正確に加工状態の異
常判別ができて異常加工が完全に回避でき、きわめて安
定かつ効率の良い加工を行い得る放電加工装置が得られ
る効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例における放電加工装置の構
成を示す構成図、第２図は加工深さに対するTcの平均値
と分散値の変化を示した図、第３図は電極定時引上動作
条件固定の場合と自動制御を行った場合における加工時
間と加工深さの関係を示した図、第４図はこの発明の他
の実施例における放電加工装置の構成を示す構成図、第
５図は従来の放電加工装置の構成を示す構成図、第６図
は極間波形とTdパルス信号およびTcパルス信号の模式図
である。 図において（１）は電極、（２）は被加工物、（23）は
極間平均電圧検出器、（24）はＡ−Ｄ変換器、（25）は
Tcパルス発生器、（26）はTc計測器、（27）はメモリ、
（28）はTc分散値計算器、（29）は加工状態判別器、
（30）は制御装置である。 なお、図中、同一符号は同一部分を示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電極と被加工物により形成される極間に加
   工電圧を印加して上記極間に放電を発生させつつ、電極
   と被加工物を相対移動させて加工を行う放電加工装置に
   おいて、上記加工電圧が無負荷電圧より低い第１の基準
   電圧より低く、かつ放電電圧より高い第２の基準電圧よ
   り高い経過時間に相当するパルス信号を発生するパルス
   発生手段と、上記パルス信号のパルス幅を計測する計測
   手段と、この計測手段による計測値を所定時間若しくは
   所定パルス数だけ記憶するメモりと、このメモりに記憶
   された上記計測値の分散値を計算する分散値計算手段
   と、この分散値計算手段により計算された分散値と基準
   値とを比較し、その分散値が基準値を越えた場合に加工
   状態を異常として判断する加工状態判別手段と、この加
   工状態判別手段より加工状態が異常である信号が出力さ
   れたとき、電極定時引上げ動作条件を異常加工を回避す
   るよう変更制御する制御手段とを備えてなる放電加工装
   置。