JPH0674030B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents

車両の制動制御装置

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JPH0674030B2
JPH0674030B2 JP12492785A JP12492785A JPH0674030B2 JP H0674030 B2 JPH0674030 B2 JP H0674030B2 JP 12492785 A JP12492785 A JP 12492785A JP 12492785 A JP12492785 A JP 12492785A JP H0674030 B2 JPH0674030 B2 JP H0674030B2
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braking
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brake
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宏明 倉岡
直人 大岡
勝廣 大羽
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日本電装株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の目的 [産業上の利用分野] 本発明は車両の制動制御装置に関し、詳しくは、車両の
制動に関する系の動的なモデルに基づき車両制動時のブ
レーキ液圧を最適に制御する車両の制動制御装置に関す
るものである。
[従来の技術] 従来より、車両制動時の車輪ロックによる安全性の低
下、即ち車両前輪のロックにより操縦不能になったり、
車両後輪のロックにより尻振り現象(スキッド)を生ず
るといったこと、を防止するため、車両各車輪のスリッ
プ率S[(車体速度−車輪回転速度)/車体速度]を15
〜20%に制御してタイヤと路面との摩擦力が最大となる
よう車輪の回転速度を制御する車輪の制動制御装置、い
わゆるアンチスキッド制御装置が知られている(例えば
特開昭58-16949号公報等)。この種のアンチスキッド制
御装置では車両制動時に車輪ロックを生じず、しかもタ
イヤと路面との摩擦力が最大となって車両が速やかに停
止できるよう、通常、各車輪毎に回転数を検出し、その
回転数から定まる速度(以下、回転速度と呼ぶ)が、例
えば車体速度Vsを基に次式 V=Vs(1−S) (但しSはスリップ率0.15〜0.2) より求められる基準速度Vを上・下した時ブレーキ油圧
を加・減圧制御することによって、車輪の回転速度が基
準速度となるよう制御している。つまり、車輪の回転速
度が基準速度を下回ったとき車輪のブレーキ圧力を減圧
し、その後回転速度が基準速度を上回るとブレーキ圧力
を加圧するといったブレーキ圧制御をくり返し行なうこ
とによって、車輪の回転速度を基準速度に近づけるよう
に構成されている。
ところで、車輪の制動は通常ブレーキ液圧を制御するこ
とによって、各車輪に設けられたホイールシリンダを駆
動し、制動部材、例えばブレーキシューやディスクに力
を伝達して行なわれる。従って、従来のアンチスキッド
装置等の制動制御装置では、ブレーキペダルに連動して
液圧を発生するマスタシリンダから制動部材を直接制御
しているホイールシリンダ等までの液圧系統に対して、
そのブレーキ液圧を減圧・加圧ないし保持する液圧調整
装置を設けて制動力の制御を行なうのである。
[発明が解決しようとする問題点] しかしながら上記従来の車両の制動制御装置では、次の
ような問題が、猶、残されており、改善が強く望まれて
いた。
(1)車輪にロック等が生じたと判断された時には、そ
のブレーキ液圧を減圧するような制御が、ロックが解除
されて制動力が要求される時にはブレーキ油圧を加圧す
る制御が、各々行なわれるが、こうした液圧系統を介し
た制御には、応答の遅れ時間(Dead Time)が必ず存在
する。上記の液圧系統の応答遅れは一切検出できない
為、従来の車両の制動制御装置では、制御の対象である
車輪のスリップ率あるいはその回転角速度等からブレー
キ液圧をフィードバック制御していると、過制御を生じ
てしまうという問題があった。即ち、アンチスキッド制
御が行なわれると、ブレーキ液圧がオーバーシュート,
アンダーシュートを繰り返すことになり、ドライブフィ
ーリングを悪化させる要因となっていた。
(2)良好な操作性・ドライフィーリングを確保する為
に、ブレーキ液圧の制御を緩慢にすれば、過制御の問題
を回避することができるが、この場合にはその制動特性
を犠牲にしなければならないという問題があった。即
ち、スリップ率を最適に制御することができず、制動距
離が長くなってしまうのである。
上記(1),(2)の問題は、ブレーキ液圧の減圧を、
液圧系統に設けられた減圧ピストンを用いて体積的に行
なうものであって、減圧ピストンの作動を別に設けられ
た電磁弁等のアクチュエータの開・閉弁動作によって制
御するものでは、制御上の応答遅れ時間が看過しえず、
特に問題となることが考えられた。
(3)また、従来のアクチュエータ制御では、車速が充
分低下した時、制動力が高くなると、車両が急停止して
しまうことがあるので、一定の車速以下ではアンチスキ
ッド制御をわざわざ解除してやらねばならないという問
題もあった。
そこで、本発明は上記の問題を解決し、制動を行なう液
圧系統の応答遅れによる過制御を生じることなく、最適
のスリップ率で制動を行なう車両の制動制御装置を提供
することを目的としてなされた。
発明の構成 [問題点を解決するための手段] かかる目的を達成すべく、本発明は問題点を解決するた
めの手段として次の構成をとった。即ち、第1図に示す
ように、 車両の各車輪M1のスリップ率を検出するスリップ率検出
手段M5と、 上記各車輪M1毎に設けられ、与えられた駆動信号に従っ
て、上記各車輪M1の制動部材U2に伝達されるブレーキ圧
力を各々調整するブレーキ圧力調整手段M4と、 上記検出された各車輪M1のスリップ率が予め設定された
目標スリップ率となるように上記各車輪M1のブレーキ圧
力調整手段M4を各々制御する制動制御手段M6と、 を備えた車両の制動制御装置であって、 上記各車輪M1のブレーキ圧力を検出するブレーキ圧力検
出手段M3を備え、 上記制動制御手段M6を、 当該車両の制動に関する系の動的なモデルに基づき予め
設定されたパラメータを用いて、上記制動制御手段M6に
よってブレーキ圧力調整手段M4を制御する際の目標ブレ
ーキ圧力と上記検出したブレーキ圧力とから、当該系の
制御上の応答遅れを表わす状態変数量を推定する状態観
測部M7と、 上記スリップ率検出手段M5で検出されたスリップ率と上
記目標スリップ率との偏差を求め、該偏差の積分値を算
出する累積部M8と、 上記検出されたスリップ率と、上記推定された状態変数
量と、上記算出された積分値と、当該車両の制動に関す
る系の動的なモデルに基づき予め設定された最適フィー
ドバックゲインとから、上記制動部材の目標ブレーキ圧
力を決定するブレーキ圧力決定部M9と、 を備えた付加積分型最適レギュレータとして構成してな
ることを特徴とする車両の制動制御装置の構成がそれで
ある。
[作用] 上記のように構成された本発明の車両の制動制御装置に
いおては、各車輪M1に設けられたブレーキ圧力調整手段
M4が、制動制御手段M6によって、各車輪M1のスリップ率
が目標スリップ率となるように各々制御される。
また制動制御手段M6は、付加積分型最適レギュレータと
して構成されており、状態観測部M7において、ブレーキ
圧力調整手段M4を制御する際の目標ブレーキ圧力とブレ
ーキ圧力検出手段M3により検出された実際のブレーキ圧
力とから、車両の制動に関する系の制御上の応答遅れを
表わす状態変数量を推定し、累積部M8において、スリッ
プ率検出手段M5により検出されたスリップ率と予め設定
された目標スリップ率との偏差の積分値を算出し、ブレ
ーキ圧力決定部M9において、スリップ率検出手段M5によ
り検出されたスリップ率と、状態観測部M7において推定
された状態変数量と、累積部M8において算出された偏差
の累積値と、車両の制動に関する系の動的なモデルに基
づき予め設定された最適フィードバックゲインとから、
制動部材M2の目標ブレーキ圧力を決定する。
すなわち、本発明の車両の制動制御装置においては、従
来装置のように、各車輪のスリップ率が目標スリップ率
となるように各車輪の基準速度を求め、この基準速度と
各車輪の実際の回転速度との偏差のみからブレーキ圧力
調整手段の制御量を決定するのではなく、車両の制動に
関する系の制御上の応答遅れを表わす状態変数量を推定
し、この推定した状態変数量と、各車輪のスリップ率と
目標スリップ率との偏差の累積値と、各車輪のスリップ
率と、予め設定された最適フィードバックゲインとに基
づき、制動部材M2の目標ブレーキ圧力,換言ればブレー
キ圧力調整手段M4の制御量を決定する。このため、車両
の制動系の制御上の応答遅れを考慮にいれつつ、各車輪
M1のブレーキ圧力を制御することができ、各車輪M1のス
リップ率を目標スリップ率に速やかに収束させることが
できる。
[実施例] 以下、本発明の実施例について説明するが、本発明を適
用した具体的実施例の説明に入る前に、上記のように構
成された本発明の概要について説明する。
まず、車輪M1の制動部材M2としては、ドラムブレーキで
はブレーキシュー、ディスクブレーキではディスクと摩
擦パット等がよく知られている。こうしたブレーキシュ
ー等は各車輪M1に設けられたホイールシリンダ等によっ
て駆動されるが、ホイールシリンダ等は車両運転者の操
作、例えばブレーキペダルの踏込に応じて発生されるブ
レーキ圧力を伝達されて駆動されている。ブレーキ圧力
を伝達する圧力系統はエアー等の気体あるいは油圧等の
液体によって力を伝達するよう構成されている。もとよ
り倍力装置等を用いて所謂パワーブレーキとして構成し
てもよい。
ブレーキ圧力調整手段M4とは、この圧力系統のブレーキ
油圧を加圧・減圧ないし保持するよう調整するものであ
って、例えば圧力系統にとって有効な所定体積を有し、
減圧時には、この体積を膨脹させて制動部材M2に伝達さ
れる力を低下し、加圧時にはこの逆の制御を行なう構成
や、圧力源となるポンプとリザーバ及び切換弁を有し、
直接圧力系統のブレーキ圧力を増減ないし保持制御する
構成など種々のものが考えられる。
スリップ率検出手段M5は、車輪M1のスリップ率を検出す
るものであって、通常は車輪M1の回転数から定まるその
速度Voと車体の速度Vとにおいて、 SL=(V−Vo)/Vとして定義されるスリップ率SLを求め
るものである。従って、車体速度センサや加速度センサ
等を用いて車体の速度Vを検出するか、あるいは車輪M1
に設けられた回転数センサによって検出された車輪M1の
回転数から車体の速度Vを推定する等し、これと実際の
車輪M1の回転数から定まる速度Voを知って、スリップ率
を求めるよう構成することができる。スリップ率検出手
段M5はディスクリートな回路として構成することができ
るが、後述する制動制御手段M6と共にマイクロコンピュ
ータ等を用いた論理演算回路として構成することもでき
る。
目標スリップ率は通常、最大の制動力を発揮するような
値に設定されるが、車両の操作に応じて可変することも
できる。例えば、ブレーキペダルの踏込状態に応じて目
標スリップ率を変更する場合などである。第2図にスリ
ップ率SLと摩擦力Mとの関係を示したが、図示するよう
に、スリップ率SLが10〜20%の時に摩擦力Mが最大とな
るので車輪M1は最大の制動力を発揮する。従って、ブレ
ーキペダルの踏込量が大きい時には運転者が大きな制動
力を要求しているものと判断し、車両が最短距離で停止
するようスリップ率を10〜20%に設定し、一方ブレーキ
ペダルの踏込量が小さい時には、運転者が緩やかな減速
を望んでいると判断して、スリップ率を例えば5%等の
小さい値に設定するといったことも考えられる。
次に、制動制御手段M6は、スリップ率検出手段M5により
検出される各車輪のスリップ率が目標スリップ率となる
ように、ブレーキ圧力調整手段M4をフィードバック制御
するものであって、車両の制動に関する系の制御上の応
答遅れを表わす状態変数量を推定する状態観測部M7、及
び、スリップ率検出手段M5で検出されたスリップ率と目
標スリップ率との偏差の積分値を検出する累積部M8を備
え、ブレーキ圧力決定部M9において、スリップ率検出手
段M5で検出されたスリップ率と、状態観測部M7にて推定
された状態変数量と、累積部にて算出された積分値と、
当該車両の制動に関する系の動的なモデルに基づき予め
設定された最適フィードバックゲインとから、制動部材
の目標ブレーキ圧力、延いてはブレーキ圧力調整手段M4
の制御量を決定する、付加積分型最適レギュレータとし
て構成されている。
この付加積分型最適レギュレータの構成の手法は、例え
ば古田勝久著「線形システム制御理論」(昭和51年)昭
昇堂等に詳しく述べられているが、ここで実際の構成の
手法について一通りの見通しを与えることとする。
尚、以下の説明において、 等はベクトル量(行列)を示し、 の如き添字は行列の転置を、 の如き添字-1は逆行列を、更に の如き添字 はそれが推定値であることを、 の如き記号 は制御対象の系から変換等により生成された別の系、こ
こでは状態観測器(以下、オブザーバと呼ぶ)で扱われ
ている量であることを、y*の如き記号は目標値である
ことを、各々示している。
制御対象、ここでは車両の制動制御において、この制御
対象の動的な振舞は、 を車両の制動に関する系の内部状態を表わす状態変数
量、 を制御対象にとっての制御入力諸量、即ちここで油圧
u、 を制御対象の制御出力諸量、ここではスリップ率SL,制
御系の応答遅れに対応した量DLY,実際の油圧P等、とす
ると、 として記述される。式(1),(2)は離散系で記述さ
れており、添字kは現時点での値であることを、k−1
は1回前のサンプリング時点での値であることを、各々
示している。
車両制動系の内部状態を示す状態変数量 は、その制御系における未来への影響を予測するために
必要十分な系の履歴に関する情報を示している。従っ
て、車輪M1について制動を行なう系の動的なモデルが明
らかになり、式(1),(2)のベクトル を定めることができれば、状態変数量 を用いて車両の制動を最適に制御できることになる。
尚、現実の制御では系を拡大する必要が生じるが、これ
については後述する。
ところで、車両の制動制御のように複雑な制御対象につ
いてはその動的なモデルが制御範囲の全域で線形なモデ
ルとならないことがある。しかしながら、車両が所定条
件、例えばある車速で制動制御された場合、その状態の
近傍では線形の近似が成立つと考えることができるの
で、式(1),(2)の状態方程式に則ってモデルを構
築することができる。従って、車両の制動に関する系の
ように、その動的なモデルが非線形の場合には、定常的
な複数の条件に分離することによって線形な近似を行な
うことができ、個々の動的なモデルを定めることができ
るのである。
ここで制動に関する系の動的なモデルは、液圧系の機械
的なモデルを措定して運動の方則等から構築することも
できるが、システム同定を行なって定めることもでき
る。また、制御系の応答遅れ等については過渡応答法に
よって、近似モデルを構築することができる。
動的なモデルが定まれば、状態変数量 と各車輪M1のスリップ率SL(k)とその目標スリップ率
SL*(k)からフィードバック量が定まり各車輪M1のブ
レーキ圧力を制御するブレーキ圧力調整手段M4の制御量 が理論的に最適に定められる。通常車両制動の制御系で
は車両の制動に直接関与する諸量として、例えば各車輪
M1にかかる荷重,加速度,制動部材M2に伝達される油や
ガスの移動速度,制御部材M2の動的挙動、更には液圧系
統M3の応答遅れ等を状態変数量 として扱えばよいのであるが、これらの諸量の大部分は
直接観測することが極めて困難である。
そこで本発明では、制動制御手段M6内に状態観測部M7を
設け、ブレーキ圧力検出手段M3により検出された実際の
ブレーキ圧力とブレーキ圧力調整手段M4を制御する際の
目標ブレーキ圧力とから、車両制動系の制御上の応答遅
れを表わす状態変数量を推定するようにしている。
なお、この状態観測部M7は、現代制御理論におけるオブ
ザーバであり、種々のオブザーバとその設計法が知られ
ている。これらは、例えば古田勝久他著「メカニカルシ
ステム制御」(昭和59年)オーム社等に詳解されてお
り、適応する制御対象、ここでは車両とその制動制御装
置との態様に合わせて最小次元オブザーバや有限整定オ
ブザーバとして設計すればよい。次に制動制御手段M6で
は、こうしたオブザーバとしての状態観測部M7により、
状態変数量 を推定すると共に、累積部M8により、各車輪のスリップ
率と目標スリップ率との偏差の積分値を算出し、ブレー
キ圧力決定部M9により、これら両者と、スリップ率検出
手段M5にて検出されたスリップ率と、予め定められた最
適フィードバックゲインとから、制動部材M2の目標ブレ
ーキ圧力を求め、ブレーキ油圧調整手段M4を制御する。
ここで、累積部M8により求められる偏差の積分値は、各
車輪のスリップ率を目標スリップ率に追従させるのに必
要な量である。即ち、一般にサーボ系の制御においては
目標値と実際の制御値との定常偏差を消去するような制
御が必要となり、これは伝達関数において1/Sl(1次の
積分)を含む必要があるとされる。また、ディジタル制
御のように必ず有限の精度をもってしか制御量を定める
ことができない制御系場合には、制御の安定性も対ノズ
ル安定性の上からも上記の積分量を含むことが望まし
い。
そこで、本発明では、状態観測部M7にて推定した状態変
数量に、累積部M8で求めた偏差の積分値を加えることに
より、制御系を所謂サーボ系に拡大し、これら両者と、
スリップ率検出手段M5にて検出した車輪M1のスリップ率
と、予め定められた最適フィードバックゲインとによ
り、フィードバック量,つまり各車輪M1の目標ブレーキ
圧力を定めるようにしているのである。
次に、最適フィードバックゲインについて説明する。上
記の如く積分量を付加した最適レギュレータでは、評価
関数Jを最小とするような制御入力(ここでは各制動部
材M2のブレーキ圧力制御の諸量)の求め方が明らかにさ
れており、最適フィードバックゲインもリカッチ方程式
の解と状態方程式(1),出力方程式(2)の マトリックス及び評価関数に用いられる重みパラメータ
行列とから求められることがわかっている(前掲書
他)。ここで重みパラメータ は当初任意に与えられるものであって、評価関数Jが車
両の制動制御を行なう系のブレーキ圧力の挙動を制約す
る重みを変更するものである。重みパラメータを任意に
与えて大型コンピュータによるシミュレーションを行な
い、得られたブレーキ液圧の挙動から重みパラメータを
所定量変更してシミュレーションを繰返し、最適な値を
決定しておくことができる。その結果最適フィードバッ
クゲイン も定められる。
従って、本発明の制動制御装置の制動制御手段M6は、予
め決定された車両の制動に関する系の動的モデルを用い
て付加積分型最適レギュレータとして構成され、その内
部におけるオブザーバのパラメータや最適フィードバッ
クゲイン などは、全て、予めシミュレーションにより決定されて
いるのである。
尚、以上の説明において状態変数量 は車両の内部状態を表わす量として説明したが、これは
実際の物理量に対応した変数量である必要はなく、車両
の状態を表わす適当な次数のベクトル量として設計する
ことができる。
以上、本発明の概要について説明したが、次に、本発明
を実際に適用した実施例の制動制御装置について説明す
る。
まず第3図は実施例として4輪の車両に搭載された制動
制御装置の全体の構成を示す概略構成図、第4図は右前
輪に関する制御系統を電子制御ユニットのブロック図と
共に示す制御系統図である。まず全体の構成及び油圧系
統・電気系統の概略について説明する。
図示する如く、車両の各車輪1,2,3,4には制動部材に相
当する油圧ブレーキ装置11,12,13,14が設けられてお
り、右左の前輪1,2には各々その回転数を検出する電磁
ピックアップ方式の回転数センサ15,16が取付けられて
いる。またトランスミッション18の主力軸19の回転をデ
ィファレンシャルギア21を介して受けて回転する後輪3,
4の回転数は、トランスミッション18に設けられた後輪
用の回転数センサ22によって検出される。
各車輪に設けられた油圧ブレーキ装置11ないし14は、ブ
レーキペダル24に連動してタンデム型等のマスタシリン
ダ25が発生する高い油圧をブレーキ油圧として、各車輪
1ないし4の回転を制動するが、マスタシリンダ25から
油圧系統MPSを介して伝達されるこのブレーキ油圧はア
クチュエータ31,32,33によって調整される。アクチュエ
ータ31,32,33は各々右前輪1,左前輪2,左右後輪3および
4のブレーキ油圧を独立に制御するものであって、電子
制御ユニット(ECU)40によって制御されている。アク
チュエータ31ないし33の構成については後で詳述する
が、パワーステアリング用の油圧発生装置43からその油
圧系統(バワーステアリング油圧系統PPS)を介して伝
達される油圧を用いて、各車輪1ないし4のブレーキ油
圧を調整する液圧調整手段として機能している。
右前輪1へのブレーキ油圧の油圧系統RHSの油圧は油圧
センサ51によって、左前輪2の油圧系統LHSの油圧は油
圧センサ52によって、後輪3,4の油圧系統BHSの油圧は油
圧センサ53によって、各々検出される。
ECU40は、これらの油圧センサ51,52,53からの油圧に応
じた信号の他、回転数センサ15,16,22からの回転数信
号、更にブレーキペダル24の操作を検出するブレーキセ
ンサ55からの信号等を入力し、アクチュエータ31,32,33
を各々制御して、各車輪1ないし4のスリップ率SLの制
御を行なう。
右前輪1,左前輪2,後輪3及び4の制動力の制御は各々独
立に行なわれているので、以下、右前輪1の制御につい
て説明する。第4図は右前輪1の制動を制御する系を中
心に表わした構成図である。図示するように、ECU40
は、イグニッションキー56を介してバッテリ57より電源
電圧の供給をうけてユニット全体に定電圧を供給する電
源部58を備え、周知のCPU61,ROM63,RAM65等を中心に、
出力ポート67,アナログ入力ポート69,パルス入力ポート
71,レベル入力ポート72等をバス73で相互に接続し、論
理演算回路として構成されている。ECU40は、そのメイ
ンリレー74及びアクチュエータ31内の主電磁弁75とサブ
電磁弁76とを駆動することによって、マスタシリンダ25
から減圧シリンダ78,バイパスシリンダ80を介して油圧
ブレーキ装置11に伝達されるブレーキ油圧を制御する。
ブレーキ油圧が上昇すると、油圧ブレーキ装置11は、車
輪1と共に回転するディスク82に摩擦パッド83に押し付
けて、車輪1の回転を止めるように働く。
アクチュエータ31には、パワーステアリング油圧ポンプ
90と図示しないリザーバからなるパワーステアリング油
圧発生装置43からのパワーステアリング油圧が伝達され
ているが、ブレーキ油圧の制御を特に行なわない状態で
は、パワーステアリング油圧系統PPSにおいてオイルは
油圧ポンプ90からアクチュエータ31内のレギュレータ91
とパワーステアリングギアボックス92とを介して循環し
ている。レギュレータ91のレギュレータピストン91aは
端面91bにブレーキ油圧を受けており、ブレーキ油圧が
高くなると、パワーステアリング油圧系統PPSの流路断
面積を絞るように作動し、ブレーキ油圧に応じたパワー
ステアリング油圧系の油圧(以下、ステアリング油圧と
呼ぶ)を高くするように働く。
減圧シリンダ78は、スプリング78aとボール78bとからな
るカット弁78cと減圧ピストン78dを要部として構成され
ている。減圧ピストン78dはブレーキ油圧によってうけ
る力とステアリング油圧によって受ける力とのバランス
によって作動するが、通常は主電磁弁75、サブ電磁弁76
が共にオフ状態であつてステアリング油圧をそのまま減
圧ピストン78dの端に形成された受圧部に受けているこ
とから、減圧ピストン78dは第4図に示す位置まで押込
まれており、カット弁78cは開状態となっている。
同様に、スプリング80aとボール80bとからなる切換弁80
cとバイパスピストン80dとを要部として構成されたバイ
パスシリンダ80も、通常は第4図の位置に押込まれてい
る。従って、この状態でブレーキペダル24が踏込まれて
マスタシリンダ25によりブレーキ油圧が高くなると、そ
のブレーキ油圧は、ブレーキ油圧系統MPSのうちの第4
図に示すI−II−III−IV−Vの通路によって油圧ブレ
ーキ装置11に導かれる。
一方、ECU40が正常に作動しており、メインリレー74が
出力ポート67を介して駆動され、その接点74aが閉成さ
れている状態で、スリップ率の制御が実行されると、ブ
レーキ油圧は次のように制御される。
(1)ブレーキ油圧が高すぎて車輪1が過制動されてお
り、スリップが生じている(例えばS>>0.2)と判断
された時には、ECU40によってアクチュエータ31の主電
磁弁75がオン状態に作動される。この時、主電磁弁75の
弁体75aは第4図の上方へ引上げられるので、減圧シリ
ンダ78へ供給されていたステアリング油圧を遮断する。
この結果、減圧シリンダ78の左室78L内のオイルはオリ
フィスB,オリフィスCを介してステアリング油圧系PPS
のリザーバ(図示せず)へと緩かに排出されていく。従
って、減圧ピストン78dは引き抜かれ、カット弁78cが閉
じる。減圧ピストン78dが引き抜かれるに従って、ブレ
ーキ油圧系PHSの体積は次第に増加してゆくので、ブレ
ーキ油圧は緩かに低下してゆく。
(2)同様の状態でサブ電磁弁76をオン状態とすると、
オリフィスBを迂回するバイパス路76bが形成される
為、減圧シリンダ78の左室78LのオイルはオリフィスC
のみを介して急速に排出され、ブレーキ油圧も急激に低
下してゆく。
(3)一方、主電磁弁75がオフ状態となると、オリフィ
スCを介したオイルの排出は止まり、ステアリング油圧
系PPSよりオリフィスA,バイパス路76bを介してオイルが
急速に流れ込み、減圧シリンダ78の左室78Lの圧力も高
まる。この結果、減圧ピストン78dは急速に押し込ま
れ、ブレーキ油圧も急上昇する。
(4)この状態で更にサブ電磁弁76がオフ状態となる
と、バイパス路76が閉じるので、ステアリング油圧PPS
からのオイルの流入はオリフィスA及びオリフィスBを
介して行なわれ、左室78Lの圧力は緩かに上昇する。こ
の結果、ブレーキ油圧も緩慢に上昇する。
これら電磁弁75,76の状態とブレーキ油圧の関係を第5
図のタイミングチャートに例示した。図示のように、油
圧ブレーキ装置11の油圧は各電磁弁75,76の状態によっ
て、運転者の操作によってマスタシリンダ25に発生した
油圧(Pm)を基に減圧、増圧調整される。従って、第6
図に示すように、必要な油圧P*を実現するには電磁弁7
5,76の開・閉弁時間を制御する必要がある。即ち、現在
の油圧がPoであるとして、時間t2後に必要な油圧がP*
あるとすると、この油圧系統では、4つの制御パター
ン、急増圧a、急減圧b、緩減圧c、急減圧dのうちか
ら、時間0〜t1までを急増圧としその後t2までを緩増圧
とするといった制御パターンを選択することによって、
ブレーキ油圧の制御を行なう必要がある。
次に第7図を用いて本実施例における信号処理とシステ
ム制御の概要について説明する。こうした信号処理は第
4図に示したハードウェア構成において、第8図のフロ
ーチャートに拠って後述する制御プログラムが実行され
ることによって実現されている。従って、第7図はハー
ドウェアの構成を示すものではなく、信号処理の流れを
概念的に図示したものである。
本実施例において、最終的に制御されるものは車輪のス
リップ率SLであって、これを目標スリップ率SL*に一致
させる制御が行なわれる。しかるに、直接検出される物
理量は車輪1ないし4の油圧ブレーキ装置11ないし14の
油圧Pであり、車輪の回転数センサ15,16,22によって検
出されたその回転数Nfr,Nfl,Nr等である。そこで、ECU4
0の内部では、まず車輪の油圧Pに予め実験的に求めら
れた係数K2を乗じて、車輪に対する制動トルクTbを求め
る。一方、車輪と路面との摩擦係数μを用いれば、予め
定めた係数K1を用いて車輪を回転させようとする方向に
路面から受ける回転トルクTfを知ることができる。ここ
で係数K1は、車輪にかかる荷重Wと車輪の回転半径r及
び定数から定まる値である。尚、本実施例では車輪と路
面との摩擦係数μは実測せず、その変化に対して、この
制御システムが充分な対応をとれるように、つまり、摩
擦係数μが実際にとり得る値の範囲、(例えば0.7±0.4
の範囲)で変化しても充分なスリップ率の制御が行える
ようにシステムを構成しているが、摩擦係数μを高精度
に検出できるもの(例えばμセンサ)があれば、それを
使用するこもできる。つまり、本実施例では、摩擦係数
μとして標準的な想定値を使用して回転トルクTfを求め
るようにしているが、摩擦係数μを高精度に検出できれ
ば、その検出結果を使用することにより回転トルクTfを
より高精度に求めることができるようになる。
油圧ブレーキ装置11から車輪1に対して加わる制動トル
クTbと路面から車輪1に加わる回転トルクTfとを差引き
した後の実トルクTr(=Tf−Tb)を用いて、次にスリッ
プ率の変化率が求められる。ここでは回転数センサ(1
5,16,22)によって検出された車輪の回転数から車体の
速度Vが推定される。これを第7図に係数K4として示し
た。車体速度Vは、制動開始直前の遊動輪の回転数から
その時点の車体速度を知って、その後、所定の割合(減
速度G)で車速が低下してゆくとみなして求めればよ
い。
こうして求められた車速Vを用いて、実トルクTrにK3
乗じることによって、車輪スリップ率の変化率Lが求
められる。係数K3はk3′・r/I・Vで定められるが、こ
こでIはイナーシャ、k3′は係数である。ところで、車
速Vの全域に亘る線形近似は困難なので、実際には、車
速Vに応じて線形近似が成立つ一定の範囲を定め、各範
囲内では定常点からの摂動分によって制御モデルを扱っ
ている。従って、この演算L=Tr・(k3′・r/I・
V)においても、実際には所定速度(例えば10Km/hr,30
Km/hr,60Km/hr,100Km/hr)からの摂動分による処理が行
なわれる。
こうしてスリップ率の変化率Lが求まったので、これ
を積分(信号処理を行なうS平面上では1/S)を行なっ
てスリップ率SLを求める。更に、このスリップ率SLと目
標スリップ率SL*との偏差を積分(1/S)して、その累積
値INTSを求める。これは一次の積分要素に相当する。
尚、目標スリップ率は固定した値でもよいし、制御によ
って可変するよう構成してもよい。
一方、オブザーバを構築して、制御出力としての油圧と
実際に検出された油圧Pとから、状態変数として制御上
の応答遅れに相当する変数DLYと油圧PFとを求める。オ
ブザーバの構成例については後述するが、本実施例で扱
う応答遅れ時間の要素はS平面上ではe-LSとして表わす
ことができるので、これをパテーの近似によって状態変
数量DLYとして扱うことができる。パテー近似として本
実施例では2次近似を考えるものとする。
上記の信号処理によって求められたスリップ率SL、累積
値INST,および変数DLY,油圧PFに、予め定められた最適
フィードバックゲイン を乗じて、制御を行なう油圧系統の油圧の制御量uを求
める。油圧は実際には主電磁弁75及びサブ電磁弁76の開
閉弁動作によって制御されるので、制御量設定部におい
て、油圧の実際の制御量を求め、これを、制御を行なう
系に出力する。
以上の説明を状態方程式(1),出力方程式(2)に戻
って考えると、本実施例では拡大した系の状態変数量 制御対象への制御出力 制御対象の出力 として、 として扱うことになる。
次に、第8図のフローチャートに拠ってECU40が実際に
行なう制御について説明する。尚、以下の説明では現実
の処理において扱われている量を添字(k)付で、サン
プル時間T以前に行なわれた前回の処理において扱われ
た量を添字(k−1)付きで表わすことにする。
CPU61は、当該車両走行時に車両運転者がブレーキ24を
踏込むことによって制動指示がなされると、第8図に示
す制動制御処理を開始し、ブレーキペダル24が踏込まれ
なくなるまでの間この処理をくり返して実行する。
まずスリップ100では、制動が開始される直前の車輪の
回転数から現在の車速Vを求める処理が行なわれる。制
動開始前の遊動輪、ここでは右・左前輪1,2の回転数Nf
r,Nflは車速を反映しているので、これを基に、その後
の減速度と経過時間から車速Vを求めるのである。
続くステップ110では、油圧センサ51によって右前輪1
の制動を行なう油圧系統の油圧P(k)を読み込む処理
を行なう。続くステップ120では、スリップ率の変化率
L(k)を求める処理が行なわれる。スリップ率の変
化率Lは既述したように油圧P(k),車速Vを用い
て、係数K1,K2,K3から定められる。尚、ここでは、車
速に応じて摂動分による計算が行なわれているが、定常
点としては、車速100Km/hr,60Km/hr,30Km/hr,10Km/hrの
4点をとっている。
ステップ130では、ステップ120で求めたL(k)を積
分することにより実スリップ率SL(k)を求める処理
が、行なわれ、、続くステップ140では目標スリップ率S
L*、ここでは0.2からの実スリップ率SL(k)の偏差es
(k)が、 es(k)=SL*−SL(k) …(6) として求められる。続くスリップ150では偏差es(k)
の累積値INTS(k)を、 INTS(k) =INTS(k−1)+T・es(k) …(7) として求める処理が行なわれる。
この後、処理はステップ160へ進み、車速Vに応じて、
ステップ170以下で用いるパラメータ を選択する処理が行なわれる。パラメータ はオブザーバ内部の変数Z(k)の演算に用いられるも
のであり、パラメータ は制御量u(k)の演算に用いられるものであり、車速
Vに応じて線形近似可能な範囲として既述した区分に応
じて選択される。これらパラメータについては後に詳述
する。
ステップ170では、ステップ160で選択されたパラメータ を用いてオブザーバ内の変数Z(k)を求める演算が行
なわれる。オブザーバは、最小次元オブザーバとして設
計され、パテーの2次元近似によって応答遅れに対応し
た変数DLYを推定するが、内部変数をZ(k)と措定す
ると、 として状態変数量 が推定される。ここでパラメータ 等は予め定められた制御系のダイナミックモデル より求められるが、時速60Km/hrの場合、 であった。
続くステップ180では、制御出力u(k)を求める処理
が行なわれる。制御出力u(k)は、最適フィードバッ
クゲイン および状態変数量 から、 として求められるが、制動を行なう系の応答遅れの故に
直接 を用いることができない。ここで、状態方程式(1)か
であるから、 として、既に求められている を用いて近似することができる。従って、 となるが、式(9)よりの状態変数量 はオブザーバの推定値 で置換えることができる。即ち、 として、制御出力u(k)が算出できることになる。こ
こで最適フィードバックゲイン は、 として求められている。式(13)において はリカッチ方程式、 の解であり、 は評価関数、 を最小とするシュミレーションにおいて用いられ、最適
な値として選択されたパラメータである。従って は予め定められており、例えば本実施例では、車速60Km
/hrにおける最適フィードバックゲイン は、 であった。そこで予め、 を求めておくことができる。
既述したように、パラメータ は車速に応じて切換えられる。ここで、車速が低くなる
に従って、システムの収束の早さが鈍くなるように予め
これらのパラメータは定められている。即ち、評価関数
Jのシュミレーションにおいて、 を適宜変更して、車速10Km/hrを定常点とする制御が行
なわれる場合には、外乱等に対する系の収束を比較的遅
くして、回転数センサ15,16,22の検出エラー等に対して
も系を安定に保つよう構成されている。
尚、本実施例では、 は共に1×1の行列、即ちスカラー量となる。
ステップ180ではこの を用いて、 の演算を行なって、制御出力としての油圧u(k)求め
る処理が行なわれる。
続くステップ190では、ステップ180で求めた制御出力u
(k)に基づいて、油圧の制御パターンを求める処理が
行なわれる。即ち、第6図を用いて既に説明したよう
に、サンプリング時間Tのうちに油圧u(k)に到達す
るよう主電磁弁75,サブ電磁弁76の開・閉弁時間を定め
るのである。
ステップ200では、ステップ190で求めた制御パターンに
従って主電磁弁75,サブ電磁弁76を適宜制御した後、ス
テップ210ではサンプリング回数を示すKを1だけイン
クリメントする処理を行なう。
続くステップ220では、レベル入力ポート72を介して読
み込んだブレーキセンサ55の状態をチェックして、制動
中であるか否かを判断し、ブレーキペダル24が猶、踏み
込まれており制動が継続されていれば、処理はステップ
100に戻って上記の処理、ステップ100ないしステップ22
0を繰返す。一方、制動が解除されていればNEXTへ抜け
て本制御ルーチンを終了する。
以上のように構成された本実施例によれば、油圧ブレー
キ装置11のブレーキ油圧を制御する系の応答遅れ時間を
オブザーバによって近似・推定しているので、応答遅れ
による過制御を生じることなく、車輪1のスリップ率SL
を目標スリップ率SL*に制御することができる。従っ
て、ドライブフィーリングを良好に保ったまま、最短の
制動距離で車両を停止させることができる。
第9図は、制動が開始されて目標スリップ率SL*が0.2に
設定された直後の車輪の実スリップ率の制御を本実施例
と従来例とで比較したグラフである。目標スリップ率SL
*(一点鎖線)に対して、本実施例の制動制御装置で
は、実スリップ率SL(実線)は一旦0.27付近までオーバ
ーシュートするが、アンダシュートなしで直ちに0.2に
制御されている。一方、従来例では電磁弁等の動作遅れ
など油圧系統の遅れによるハンチングを生じ、そのスリ
ップ率sl(破線)は長期間に亘って安定しない。しか
も、第9図に示す従来例では、制動特性よりもドライブ
フィーリングを重視している為に、制動距離は本実施例
に較べて長い。第9図から明らかなように、本実施例で
は、応答性・安定性共に極めて優れた特性が得られてい
る。また、本実施例では路面の摩擦係数が広い範囲(μ
=0.7±0.4の範囲)で変化しても、十分安定に車輪1の
制動を制御できるので、路面の摩擦係数が急激に変化す
る路面や左右の車輪の摩擦係数の異なるまたぎ路等で
も、安定にスリップ率を制御して、車両の高い制動特性
を維持することができる。
更に、本実施例では、車速が小さくなるに従って、制御
の収束の早さを遅くしているので、低速時においても安
定に制御することができる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は
この実施例に何等限定されるものではなく、目標スリッ
プ率SL*をブレーキペダルの踏込量によって可変とした
り、車速Vを対地車速センサにより直接検出する構成な
ど、本発明の要旨を変更しない範囲において種々なる態
様にて実施例しえることは勿論である。
発明の効果 以上詳述したように、本発明の車両の制動制御装置は、
車両の制動に関する糸の制御上の応答遅れを表わす状態
変数量を推定し、この推定した状態変数量と、各車輪の
スリップ率と目標スリップ率との偏差の累積値と、各車
輪のスリップ率と、予め設定された最適フィードバック
ゲインとに基づき、各車輪のスリップ率を目標スリップ
率に制御するための目標ブレーキ圧力を決定して、ブレ
ーキ圧力を制御するため、制御上の応答遅れによるブレ
ーキ圧力の過制御を生じることがなく、高い応答性と安
定性を保ったまま、スリップ率制御を最適に行なえると
いう優れた効果を奏する。従って、本発明の車両の制動
制御装置によれば、ドライブフィーリングを良好に保っ
たまま、最短の制動距離で車両を停止させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の基本的構成図、第2図はスリップ率と
摩擦力との関係を示すグラフ、第3図は本発明一実施例
の概略構成図、第4図は右前輪に関する油圧系統を電子
制御ユニット(ECU)の構成と共に示す構成図、第5図
は電磁弁の動作によるブレーキ油圧の制御の一例を示す
タイミングチャート、第6図は油圧の制御パターンを説
明するグラフ、第7図は本実施例における信号処理とシ
ステム制御の概要を説明するシグナルフローチャート、
第8図は実施例における処理手順を示すフローチャー
ト、第9図は実施例における制御特性を従来例と比較し
たグラフ、である。 1,2,3,4……車輪 11,12,13,14……油圧ブレーキ 15,16,22……回転数センサ 18……トランスミッション 25……マスタシリンダ 31,32,33……アクチュエータ 40……ECU 43……油圧発生装置 51,52,53……油圧センサ 61……CPU

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の各車輪のスリップ率を検出するスリ
    ップ率検出手段と、 上記各車輪毎に設けられ、与えられた駆動信号に従っ
    て、上記各車輪の制動部材に伝達されるブレーキ圧力を
    各々調整するブレーキ圧力調整手段と、 上記検出された各車輪のスリップ率が予め設定された目
    標スリップ率となるように上記各車輪のブレーキ圧力調
    整手段を各々制御する制動制御手段と、 を備えた車両の制動制御装置であって、 上記各車輪のブレーキ圧力を検出するブレーキ圧力検出
    手段を備え、 上記制動制御手段を、 当該車両の制動に関する系の動的なモデルに基づき予め
    設定されたパラメータを用いて、上記制動制御手段によ
    ってブレーキ圧力調整手段を制御する際の目標ブレーキ
    圧力と上記検出したブレーキ圧力とから、当該系の制御
    上の応答遅れを表わす状態変数量を推定する状態観測部
    と、 上記スリップ率検出手段で検出されたスリップ率と上記
    目標スリップ率との偏差を求め、該偏差の積分値を算出
    する累積部と、 上記検出されたスリップ率と、上記推定された状態変数
    量と、上記算出された積分値と、当該車両の制動に関す
    る系の動的なモデルに基づき予め設定された最適フィー
    ドバックゲインとから、上記制動部材の目標ブレーキ圧
    力を決定するブレーキ圧力決定部と、 を備えた付加積分型最適レギュレータとして構成してな
    ることを特徴とする車両の制動制御装置。
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US06/847,924 US4774667A (en) 1985-04-04 1986-04-03 Brake control system for vehicle
DE8686302509T DE3676220D1 (de) 1985-04-04 1986-04-04 Fahrzeugbremssteuersystem.
EP86302509A EP0200379B1 (en) 1985-04-04 1986-04-04 Brake control system for vehicle

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