JPH0673034A - 不斉還元法による光学活性ベンゾチアゼピン類の製法 - Google Patents

不斉還元法による光学活性ベンゾチアゼピン類の製法

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JPH0673034A
JPH0673034A JP34175492A JP34175492A JPH0673034A JP H0673034 A JPH0673034 A JP H0673034A JP 34175492 A JP34175492 A JP 34175492A JP 34175492 A JP34175492 A JP 34175492A JP H0673034 A JPH0673034 A JP H0673034A
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泰彦 尾崎
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−
オン類〔II〕を、光学活性α−アミノ酸と金属水素化
物との反応生成物で不斉還元することを特徴とする、光
学活性シス−3−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロ−1,
5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン類化合物
〔I〕の製法。 【化18】 〔式中、環A及び環Bは置換基を有していてもよいベン
ゼン環、R1 は水素原子又はジ低級アルキルアミノアル
キル基、R4 は水素原子又は低級アルカノイル基を表
す。〕 【効果】 ラセミ型1,5−ベンゾチアゼピン−4(5
H)−オン類〔II〕から、医薬品の中間体として重要
な光学活性1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン類〔I〕を、高い光学収率で合成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は不斉還元法による光学活
性ベンゾチアゼピン類の製法に関し、さらに詳しくは光
学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3−
ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン類の新規な製法に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明の目的化合物である光学活性シス
−3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−
1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン類は、冠
血管拡張剤として有用な塩酸ジルチアゼムやその他各種
医薬品の中間体として重要な化合物である。
【0003】3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3−
ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン類は、2位および3位に二つの不斉炭素を有している
ため四つの立体異性体が存在している。例えば2−(p
−アルコキシフェニル)−3−アシルオキシ−5−(ω
−ジアルキルアミノアルキル)−2,3−ジヒドロ−
1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オンは、冠血
管拡張作用、脳波覚醒化作用を有することが知られてい
るが、四種の立体異性体のうち(2S,3R)および
(2R,3S)の立体配置を持つトランス体の作用は弱
く、シス体のうち(2S,3S)の立体配置を持つ異性
体が強い冠血管拡張作用を、(2R,3R)の立体配置
を持つ異性体が脳波覚醒化作用を有することが知られて
いる。(特公昭53−18038号)。
【0004】従って、目的とする立体異性体のみを選択
的に得る製法が重要であり、上記公報ではベンゾチアゼ
ピン誘導体の合成中間体であるラセミ型トレオ−2−ヒ
ドロキシ−3−(p−アルコキシフェニル)−3−(o
−ニトロフェニルチオ)プロピオン酸をシンコニジン、
エフェドリン、キニンの如き光学活性有機塩基を用いて
光学分割し、光学活性ベンゾチアゼピン誘導体に導く方
法が開示されている。
【0005】又、特開昭59−20273号及び特開平
3−193770号には5−(2−ジメチルアミノエチ
ル)基置換もしくは非置換−2−(4−メトキシフェニ
ル)−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5
H)−ジオン類を水素化ホウ素化合物で還元してラセミ
型3−ヒドロキシベンゾチアゼピン誘導体を得る方法が
それぞれ開示されている。
【0006】しかしながら上記方法では、ラセミ型の合
成中間体から必要な光学活性体は最高でも50%しか得
られず、またこれらの合成中間体を100%利用しよう
とすれば、不要な光学活性体の回収や再ラセミ化といっ
た煩雑な工程が必要であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来法
の欠点を克服し、ラセミ型の合成中間体から、必要な光
学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3−
ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン類を選択的に合成する新規製造方法を提供するもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、一般式
〔I〕
【0009】
【化9】
【0010】(但し、環A及び環Bは置換基を有してい
てもよいベンゼン環、R1 は水素原子又は式:
【0011】
【化10】
【0012】で示される基、R2 及びR3 は同一又は異
なって低級アルキル基又は低級アルコキシ基置換フェニ
ル低級アルキル基、Qは低級アルキレン基を表す。)で
示される光学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル
−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4
(5H)−オン類は、一般式〔II〕
【0013】
【化11】
【0014】(但し、R4 は水素原子又は低級アルカノ
イル基、他の記号は前記と同一意味を有する。)で示さ
れる2−フェニル−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5
H)−オン類を、光学活性α−アミノ酸と金属水素化物
との反応生成物で不斉還元することにより立体選択的に
製造することができる。
【0015】本発明方法は、原料化合物〔II〕の環A
及び環Bが、置換基を有している場合でも、置換基のな
い場合と同様に実施できる。そのような置換基の例とし
ては、低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン
原子などがあげられる。また具体的には、環Aの置換基
としては4位におけるメチル基、メトキシ基、クロル等
であり、環Bの置換基としては8位におけるメチル基、
メトキシ基、クロル等がある。
【0016】又、上記原料化合物〔II〕の内、R4
水素原子である化合物〔II−b〕は、下式:
【0017】
【化12】
【0018】(但し、記号は前記と同一意味を有す
る。)で示されるように、化合物〔II−a〕と互変異
性体の関係にあり、いずれも原料化合物〔II〕に含ま
れるものである。本発明の不斉還元剤は、光学活性α−
アミノ酸と金属水素化物とを反応させることにより得ら
れるものである。光学活性α−アミノ酸としては一般式
〔III〕
【0019】
【化13】
【0020】(但し、R5 は低級アルキル基を表す。)
で示されるアミノ酸があげられるが、低級アルキル基R
5 は直鎖状のものよりも分岐しているものが好ましい。
特に好ましいα−アミノ酸としては、バリン、イソロイ
シン、tert−ロイシン等があげられ、とりわけte
rt−ロイシンが好ましい。
【0021】又、光学活性α−アミノ酸としてL−アミ
ノ酸を用いた場合とD−アミノ酸を用いた場合とでは、
生成する光学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル
−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4
(5H)−オン類〔I〕の2位及び3位の立体配置が逆
になり、L−アミノ酸では(2S,3S)体が、D−ア
ミノ酸では(2R,3R)体が得られる。従って、L−
あるいはD−アミノ酸を任意に選択することにより必要
とする立体配置の目的物〔I〕を得ることができる。
【0022】一方、金属水素化物としては、水素化ホウ
素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムの如き水素化ホウ
素アルカリ金属が好ましい。又、光学活性α−アミノ酸
と金属水素化物との使用モル比は3:1から1:2、好
ましくは1.5:1から1:1、とりわけ1:1である
のが好ましい。
【0023】又、両成分は、不活性ガス(例えば、窒
素、アルゴン等)雰囲気下、適当な溶媒(例えば、テト
ラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム、ジグライ
ム、イソプロピルアルコ−ル、tert−ブチルアルコ
−ル等)中、反応させるのが好ましい。反応は室温から
溶媒の還流温度、例えば25−65℃で適宜実施するこ
とができる。かくして得られる反応生成物は、反応液か
ら単離してもよいが、単離せずそのまま不斉還元反応に
使用することもできる。
【0024】本発明の不斉還元反応は、原料化合物〔I
I〕に上記で得られた光学活性α−アミノ酸と金属水素
化物との反応生成物を作用させて実施することができ
る。光学活性α−アミノ酸と金属水素化物との反応生成
物の使用量に特に制限はないが、原料化合物〔II〕に
対して金属水素化物として1−5倍モル、好ましくは1
−3倍モル用いるのがよい。
【0025】本反応は通常、反応に悪影響を及ぼさない
不活性溶媒中で実施される。このような不活性溶媒とし
ては、例えば、エーテル、イソプロピルエーテル、テト
ラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム又はジグラ
イム等のエーテル類、イソプロピルアルコ−ル又はte
rt−ブチルアルコ−ル等のアルコール類、あるいはピ
リジン等があげられる。
【0026】又反応は、冷却下から加熱下の広い温度範
囲で実施でき、好ましくは−100℃から60℃、とり
わけ−50℃から15℃の間で実施することができる。
光学活性α−アミノ酸と金属水素化物との反応生成物を
単離しないで本還元反応に使用する場合は、その溶液中
へ原料化合物〔II〕を添加することにより実施しても
よい。
【0027】上記の如くしてラセミ型原料化合物から光
学活性なシス体を製造することができるが、この還元反
応を酸の存在下で実施することにより、更に目的物の収
率、光学純度を向上させることができる。このような目
的で使用しうる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、ハロゲ
ン化水素(例えば、塩化水素、臭化水素など)などの鉱
酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ピバリン
酸、シュウ酸などの炭素数1−6の直鎖又は分岐鎖脂肪
酸、安息香酸などの芳香族カルボン酸、ベンゼンスルホ
ン酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホ
ン酸などの置換又は非置換ベンゼンスルホン酸、メタン
スルホン酸、エタンスルホン酸などの低級アルキルスル
ホン酸など、無機あるいは有機酸のいずれも使用するこ
とができる。
【0028】酸の存在下での還元反応は前記で説明した
と同様の条件下で実施することができる。反応系に存在
させる酸は原料化合物〔II〕に対し0.5−5倍モ
ル、とりわけ1−2倍モル使用するのが好ましい。酸は
反応当初から反応系に添加してもよく、また反応開始後
に添加してもよい。さらに酸は所要量を一度に添加して
もよいが、好ましくは数回に分割して添加するのがよ
い。
【0029】本反応において、原料化合物〔II〕とし
てR4 が低級アルカノイル基である化合物を用いた場合
は、不斉還元と同時に加水分解が生起して、低級アルカ
ノイル基は除去される。反応終了後は常法に従って、目
的物〔I〕を単離することができる。
【0030】上記の方法で得た目的物〔I〕は、公知方
法、例えば特公昭45−16749号、特公昭46−4
3785号、特公昭47−813号、特公昭53−18
038号あるいは特公昭63−13994号に開示の方
法に従って一般式〔IV〕
【0031】
【化14】
【0032】(但し、R6 は低級アルカノイル基又は低
級アルコキシカルボニルメチル基であり、他の記号は前
記と同一意味を有する。)で示される光学活性1,5−
ベンゾチアゼピン誘導体とし、所望により生成物をその
薬理的に許容し得る塩とすることができる。例えば、化
合物〔IV〕は、目的物〔I〕の3位水酸基上に常法に
より基R6を導入後、R1 が水素原子の場合は、一般式
〔V〕
【0033】
【化15】
【0034】(但し、Xはハロゲン原子、他の記号は前
記と同一意味を有する。)で示されるアミノアルキル化
合物と縮合反応させるか、又はアミノアルキル化合物
〔V〕との縮合反応と基R6 の導入反応をその逆の順序
で実施して製造できる。
【0035】本発明に用いる原料化合物〔II〕は特開
昭60−25983号に記載の方法もしくはこれに準じ
て製造することができる。すなわち、原料化合物〔I
I〕の内、R4 が低級アルカノイル基であるものは、一
般式〔VI〕
【0036】
【化16】
【0037】(但し、記号は前記と同一意味を有す
る。)で示される3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,
3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)
−オン類(特公昭45−9383号等)をジメチルスル
ホキシド−無水酢酸を用いて酸化することにより得ら
れ、更に、得られたものを濃アンモニア水又は水酸化ナ
トリウム水溶液で処理することにより、R4 が水素原子
である化合物〔II〕が得られる。上記で得られた化合
物を、必要により更にアミノアルキル化合物〔V〕と反
応させることにより、R1 が式:
【0038】
【化17】
【0039】(但し、記号は前記と同一意味を有す
る。)で示される基である化合物〔II〕が得られる。
なお、本明細書において低級アルキル基、低級アルキレ
ン基及び低級アルコキシ基とは炭素数1−6、好ましく
は炭素数1−4のものを表す。
【0040】
【実施例】実施例中の光学純度、トランス体含有率は、
光学異性体分離カラムを用いて高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)で各異性体を定量し、下式により算出
した。
【0041】
【数1】
【0042】HPLC分析条件 カラム:CHIRALCEL OD (ダイセル化学工
業(株)製) 溶離液:n−ヘキサン/エタノール=85/15(容積
比) 流 速:0.5ml/分 検 出:UV 230nm 温 度:35℃ 。
【0043】実施例1 L−tert−ロイシン393mg、水素化ホウ素ナト
リウム98mg及びテトラヒドロフラン100mlの混
合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物
を−15℃に冷却し、2−(4−メトキシフェニル)−
1,5−ベンゾチアゼピン−3,4−(2H,5H)−
ジオン599mgを加え、−15℃で48時間撹拌す
る。反応液に1N塩酸10ml及び酢酸エチル20ml
を加え、30分間撹拌後、有機層を分離する。有機層を
水洗し、乾燥後、減圧下に溶媒を留去する。残査にエタ
ノ−ル22mlを加え、加熱下に溶解した後、徐冷晶析
する。析出晶をろ取して、(2S,3S)−3−ヒドロ
キシ−2−(4−メトキシフェニル)−2,3−ジヒド
ロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン37
6mgを得る。 収 率 :62.4% M.P.:203−205℃ [α]D 25 +112°(c=0.5,ジメチルホルム
アミド) シス体についての光学純度 :99.1%ee トランス体含有率 :0% 。
【0044】実施例2 L−イソロイシン289mg、水素化ホウ素ナトリウム
76mg及びテトラヒドロフラン15mlの混合物を窒
素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物を−20
℃に冷却し、2−(4−メトキシフェニル)−1,5−
ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5H)−ジオン29
9mgを加え、同温で20時間撹拌する。反応液に酢酸
600mgを加え、2時間撹拌後、減圧下に溶媒を留去
する。残査に水を加え、析出晶をろ取し、水洗後乾燥し
て、(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−(4−メト
キシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチ
アゼピン−4(5H)−オン263mgを得る。 収 率 :87.4% シス体についての光学純度 :61%ee トランス体含有率 :12% 。
【0045】実施例3 実施例2において、L−イソロイシンの代わりにL−バ
リン258mgを用いる以外はすべて同様の操作、処理
を行い(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−(4−メ
トキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾ
チアゼピン−4(5H)−オン250mgを得る。 収 率 :83.1% シス体についての光学純度 :56%ee トランス体含有率 :11% 。
【0046】実施例4 L−tert−ロイシン433mg、水素化ホウ素リチ
ウム65.4mg及びテトラヒドロフラン28mlの混
合物を窒素雰囲気下で1時間加熱還流する。この混合物
を−10℃に冷却し、2−(4−メトキシフェニル)−
1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5H)−ジ
オン299mgを加え、−10℃で15時間撹拌する。
減圧下に溶媒を留去し、残査に1N塩酸10mlを加
え、析出晶をろ取し、水洗後乾燥して、(2S,3S)
−3−ヒドロキシ−2−(4−メトキシフェニル)−
2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5
H)−オン282mgを得る。 収 率 :93.7% シス体についての光学純度 :62%ee トランス体含有率 :13% 。
【0047】実施例5 L−tert−ロイシン525mg、水素化ホウ素ナト
リウム136mg及びテトラヒドロフラン27mlの混
合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物
を0℃に冷却し、3−アセトキシ−2−(4−メトキシ
フェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−
オン683mgを加え、0℃で5日間撹拌する。反応液
に1N塩酸10ml及び酢酸エチル20mlを加え、3
0分間攪拌後、有機層を分離する。有機層を水洗し、乾
燥後、減圧下に溶媒を留去する。
【0048】残査にメタノール25mlを加え、加熱下
に溶解した後、徐冷晶析する。析出晶をろ取して、(2
S,3S)−3−ヒドロキシ−2−(4−メトキシフェ
ニル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン
−4(5H)−オン270mgを得る。 収 率 :44.8% M.P.:203−205℃ [α]D 25 +112.6°(c=0.5,ジメチルホ
ルムアミド) シス体についての光学純度 :99.8%ee トランス体含有率 :0% 。
【0049】実施例6 L−tert−ロイシン289mg、水素化ホウ素ナト
リウム76mg及びテトラヒドロフラン15mlの混合
物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物を
−15℃に冷却し、8−クロロ−2−(4−メトキシフ
ェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,
5H)−ジオン334mgを加える。反応温度を5℃ま
で上げ、同温で5日間撹拌する。減圧下に溶媒を留去
し、残査に水10mlを加え、析出晶をろ取し、水洗後
乾燥して、(2S,3S)−8−クロロ−3−ヒドロキ
シ−2−(4−メトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ
−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン284
mgを得る。 収 率 :84.5% シス体についての光学純度 :72%ee トランス体含有率 :6% 。
【0050】実施例7 D−tert−ロイシン289mg、水素化ホウ素ナト
リウム76mg及びテトラヒドロフラン15mlの混合
物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物を
−10℃に冷却し、8−メチル−2−(4−メチルフェ
ニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5
H)−ジオン297mgのテトラヒドロフラン3ml溶
液を加える。−10℃で17時間撹拌した後、酢酸60
0mgを加え、減圧下に溶媒を留去する。残査に水10
mlを加え、析出晶をろ取し、水洗後乾燥して、(2
R,3R)−3−ヒドロキシ−8−メチル−2−(4−
メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾ
チアゼピン−4(5H)−オン280mgを得る。 収 率 :93.6% シス体についての光学純度 :77%ee トランス体含有率 :9% 。
【0051】上記で得られた結晶をエタノ−ル8mlか
ら再結晶して、精製品125mgを得る。 M.P.:212−214℃ [α]D 25 −129°(c=1,ジメチルホルムアミ
ド) シス体についての光学純度 :99% トランス体含有率 :0% 。
【0052】実施例8 2−(4−メトキシフェニル)−5−〔2−(ジメチル
アミノ)エチル〕−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4
(2H,5H)−ジオンを実施例1と同様に処理して、
(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−(4−メトキシ
フェニル)−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕−
2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5
H)−オンを得る。 塩酸塩 M.P.:225−227℃(分解)。
【0053】実施例9 L−tert−ロイシン721mg、水素化ホウ素ナト
リウム189mg及びテトラヒドロフラン50mlの混
合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物
を−30℃に冷却し、2−(4−メトキシフェニル)−
1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5H)−ジ
オン997mgを加える。25%酢酸/テトラヒドロフ
ラン溶液0.38ml(酢酸として1.67mmol)
を反応開始からそれぞれ3,17,45時間後に加え、
48時間反応後、溶媒を留去し水70mlを加える。析
出晶をろ取し乾燥後イソプロピルアルコール12mlに
懸濁し、80℃で3時間加熱攪拌後5℃まで冷却し5時
間静置する。析出晶をろ取して、(2S,3S)−3−
ヒドロキシ−2−(4−メトキシフェニル)−2,3−
ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン867mgを得る。 収 率 :86.4% シス体についての光学純度 :99.4%ee トランス体含有率 :0.13% 。
【0054】実施例10−17 実施例9と同様にL−tert−ロイシン721mg、
水素化ホウ素ナトリウム189mg及びテトラヒドロフ
ラン50mlから還元剤を調製し、−15℃に冷却した
のち2−(4−メトキシフェニル)−1.5−ベンゾチ
アゼピン−3,4(2H,5H)−ジオン997mgを
加える。下記第1表に示した酸(3.33mmol)を
30分後及び2時間後に分けて添加し同温で反応する。
HPLCで原料の消失を確認後、実施例9と同様に処理
して(2S,3S)−3−ヒドロキシ−2−(4−メト
キシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチ
アゼピン−4(5H)−オンを得る。収率、シス体の光
学純度及びトランス体の含有率を下記第1表に示す。
【0055】
【表1】
【0056】実施例18 L−tert−ロイシン721mg、水素化ホウ素ナト
リウム189mg及びテトラヒドロフラン50mlの混
合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物
を−15℃に冷却し、8−クロロ−2−(4−メトキシ
フェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2
H,5H)−ジオン1113mgを加える。25%酢酸
/テトラヒドロフラン溶液0.38ml(酢酸として
1.67mmol)づつを反応開始後20分及び2時間
20分後に添加し、同温で19時間攪拌する。減圧下に
溶媒を留去し残査に1N塩酸(70ml)を加え、析出
した結晶をろ取し水洗後乾燥する。得られた結晶をクロ
ロホルム50mlに懸濁し、65℃で加熱攪拌後、5℃
に冷却し一晩静置する。析出した結晶をろ取し乾燥し
て、(2S,3S)−8−クロロ−3−ヒドロキシ−2
−(4−メトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,
5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン896mgを
得る。 収 率 :80.0% M.P.:238−240℃ [α]D 25 +92.2°(c=0.5,ジメチルホル
ムアミド) シス体についての光学純度 :99.7%ee トランス体含有率 :0.08% 。
【0057】実施例19 D−tert−ロイシン721mg、水素化ホウ素ナト
リウム189mg及びテトラヒドロフラン50mlの混
合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流する。この混合物
を−15℃に冷却し、8−メチル−2−(4−メチルフ
ェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,
5H)−ジオン991mgのテトラヒドロフラン3ml
溶液を加える。25%酢酸/テトラヒドロフラン溶液
0.38ml(酢酸として1.67mmol)づつを反
応開始後25分及び2時間10分後に添加し、同温で2
0時間攪拌する。減圧下に溶媒を留去し残査に1N塩酸
(70ml)を加え、析出した結晶をろ取し水洗後乾燥
する。得られた結晶をイソプロピルアルコール12ml
に懸濁し、80℃で3時間加熱攪拌後5℃まで冷却し5
時間静置する。析出した結晶をろ取し冷イソプロピルア
ルコールで洗浄後乾燥することにより(2R,3R)−
3−ヒドロキシ−8−メチル−2−(4−メチルフェニ
ル)−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−
4(5H)−オン804mgを得る。 収 率 :80.5% M.P.:212−214℃ [α]D 25 −129.9°(c=1,ジメチルホルム
アミド) シス体についての光学純度 :98.7%ee トランス体含有率 :0.1% 。
【0058】実施例20 L−tert−ロイシン721mg、水素化ホウ素ナト
リウム189mg及びテトラヒドロフラン25mlの混
合物を3時間加熱還流した後、室温にもどしテトラヒド
ロフラン25mlを加える。この混合物を−30℃に冷
却し、2−(4−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾ
チアゼピン−3,4(2H,5H)−ジオン997mg
を加える。濃塩酸139μl(塩化水素として1.67
mmol)を反応開始からそれぞれ1、3、5及び22
時間後に添加する。45時間後HPLCで原料の消失を
確認後、減圧下に溶媒を留去し残査に水70mlを加え
る。室温で1時間攪拌後析出した結晶をろ取し、乾燥す
る。得られた結晶をイソプロピルアルコール13mlに
懸濁し、還流下1時間攪拌後5℃に冷却し、一晩静置す
る。析出した結晶をろ取し、冷イソプロピルアルコール
で洗浄後乾燥して、(2S,3S)−3−ヒドロキシ−
2−(4−メトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−
1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン842m
gを得る。 収 率 :83.9% シス体についての光学純度 :99.9%ee以上 トランス体含有率 :0.13% 。
【0059】〔原料化合物の調製〕 参考例1 (1)8−クロロ−2,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ
−2−(4−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾチア
ゼピン−4(5H)−オン36.0g、無水酢酸50m
l、ジメチルスルホキシド100ml、ピリジン3ml
及びトルエン100mlの混合物を室温で3日間攪拌す
る。この混合物に水を加えた後、酢酸エチル抽出し、水
洗後乾燥する。溶媒を留去し、残査にエーテルを加え、
析出晶をろ取して、3−アセトキシ−8−クロロ−2−
(4−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン
−4(5H)−オン24.5gを得る。 収 率 :60.8% M.P.:236−238℃ 。
【0060】(2)本品7.52gを2N水酸化ナトリ
ウム水溶液25ml、メタノール60ml及びジメチル
スルホキシド100mlの混合溶媒に溶かし、終夜攪拌
する。この混合物に2Nの塩酸を加えpH3に調整す
る。酢酸エチル抽出し、水洗後乾燥する。溶媒を留去
し、残査にエーテルを加えて得られる結晶をろ取して、
8−クロロ−2−(4−メトキシフェニル)−1,5−
ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5H)−ジオン6.
38gを得る。 収 率 :95.6% M.P.:168−169℃ 。
【0061】参考例2 (1)2,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−8−メチル
−2−(4−メチルフェニル)−1,5−ベンゾチアゼ
ピン−4(5H)−オン30.0g、無水酢酸50m
l、ジメチルスルホキシド100ml、ピリジン3ml
及びトルエン100mlの混合物を室温で4日間攪拌し
た後、参考例1−(1)と同様に処理して、3−アセト
キシ−8−メチル−2−(4−メチルフェニル)−1,
5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン24.0gを
得る。 収 率 :70.6% M.P.:233−235℃ 。
【0062】(2)本品5.1gを、2N水酸化ナトリ
ウム水溶液15ml及びメタノール15mlの混液に溶
解し、2時間攪拌した後、参考例1−(2)と同様に処
理して、8−メチル−2−(4−メチルフェニル)−
1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,5H)−ジ
オン4.2gを得る。 収 率 :94.0% M.P.:141.5−144℃ 。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、工業的に入手容易な光
学活性α−アミノ酸と金属水素化物との反応生成物を不
斉還元剤として用いることによって、ラセミ型原料化合
物から医薬品の中間体として重要な(2S,3S)−あ
るいは(2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−フェニル
−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン類を、
高い光学収率で合成しうるので、工業的に有利な製造法
となるものである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式〔II〕 【化1】 (但し、環A及び環Bは置換基を有していてもよいベン
    ゼン環、R4 は水素原子又は低級アルカノイル基、R1
    は水素原子又は式: 【化2】 で示される基、R2 及びR3 は同一又は異なって低級ア
    ルキル基又は低級アルコキシ基置換フェニル低級アルキ
    ル基、Qは低級アルキレン基を表す。)で示される2−
    フェニル−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
    ン類を、光学活性α−アミノ酸と金属水素化物との反応
    生成物で不斉還元することを特徴とする一般式〔I〕 【化3】 (但し、記号は前記と同一意味を有する。)で示される
    光学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3
    −ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−
    オン類化合物の製法。
  2. 【請求項2】 一般式〔II−a〕 【化4】 (但し、環A及び環Bは置換基を有していてもよいベン
    ゼン環、R1 は水素原子又は式: 【化5】 で示される基、R2 及びR3 は同一又は異なって低級ア
    ルキル基又は低級アルコキシ基置換フェニル低級アルキ
    ル基、Qは低級アルキレン基を表す。)で示される2−
    フェニル−1,5−ベンゾチアゼピン−3,4(2H,
    5H)−ジオン類を、光学活性α−アミノ酸と金属水素
    化物との反応生成物で不斉還元することを特徴とする一
    般式〔I〕 【化6】 (但し、記号は前記と同一意味を有する。)で示される
    光学活性シス−3−ヒドロキシ−2−フェニル−2,3
    −ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−
    オン類化合物の製法。
  3. 【請求項3】 酸の存在下で不斉還元することを特徴と
    する請求項1又は2記載の製法。
  4. 【請求項4】 環A及び環Bが低級アルキル基、低級ア
    ルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいベ
    ンゼン環である請求項1,2又は3記載の製法。
  5. 【請求項5】 光学活性α−アミノ酸が一般式〔II
    I〕 【化7】 (但し、R5 は低級アルキル基を表す。)で示されるア
    ミノ酸である請求項1,2,3又は4記載の製法。
  6. 【請求項6】 光学活性α−アミノ酸がバリン、イソロ
    イシン、tert−ロイシンである請求項1,2,3又
    は4記載の製法。
  7. 【請求項7】 金属水素化物が水素化ホウ素アルカリ金
    属である請求項1,2,3,4,5又は6記載の製法。
  8. 【請求項8】 請求項1,2又は3記載の製法により得
    られた化合物〔I〕を公知方法に従って一般式〔IV〕 【化8】 (但し、環A及び環Bは置換基を有していてもよいベン
    ゼン環、R2 及びR3 は同一又は異なって低級アルキル
    基又は低級アルコキシ基置換フェニル低級アルキル基、
    6 は低級アルカノイル基又は低級アルコキシカルボニ
    ルメチル基、Qは低級アルキレン基を表す。)で示され
    る光学活性1,5−ベンゾチアゼピン誘導体とし、所望
    により生成物をその薬理的に許容しうる塩とすることを
    特徴とする光学活性1,5−ベンゾチアゼピン誘導体又
    はその薬理的に許容しうる塩の製法。
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Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS53105401A (en) * 1977-02-25 1978-09-13 Tanabe Seiyaku Co Ltd New asymmetric reduction
JPS5920273A (ja) * 1982-07-27 1984-02-01 Tanabe Seiyaku Co Ltd ベンゾチアゼピン誘導体の新規製造法
JPS6032779A (ja) * 1983-08-01 1985-02-19 Hamari Yakuhin Kogyo Kk ベンゾチアゼピン誘導体の新規製造法
JPS60161927A (ja) * 1984-01-31 1985-08-23 Ajinomoto Co Inc ケトンの不斉還元方法

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