JPH0668637B2 - 光受容部材 - Google Patents

光受容部材

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JPH0668637B2
JPH0668637B2 JP24278685A JP24278685A JPH0668637B2 JP H0668637 B2 JPH0668637 B2 JP H0668637B2 JP 24278685 A JP24278685 A JP 24278685A JP 24278685 A JP24278685 A JP 24278685A JP H0668637 B2 JPH0668637 B2 JP H0668637B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の属する技術分野〕 本発明は、光(ここでは広義の光で紫外線、可視光線、
赤外線、X線、γ線等を示す)の様な電磁波に感受性の
ある光受容部材に関する。さらに詳しくは、レーザー光
などの可干渉性光を用いるのに適した光受容部材に関す
る。
〔従来技術の説明〕
デジタル画像情報を画像として記録する方法として、デ
ジタル画像情報に応じて変調したレーザー光で光受容部
材を光学的に走査することにより静電潜像を形成し、次
いで該潜像を現像するか、更に必要に応じて転写、定着
などの処理を行なう、画像を記録する方法が知られてお
り、中でも電子写真法による画像形成法では、レーザー
として、小型で安価なHe-Neレーザーあるいは半導体レ
ーザー(通常は650〜820nmの発光波長を有する)を使用
して像記録を行なうのが一般的である。
ところで、半導体レーザーを用いる場合に適した電子写
真用の光受容部材としては、その光感度領域の整合性が
他の種類の光受容部材と比べて優れているのに加えて、
ビツカース硬度が高く、公害の問題が少ない等の点から
評価され、例えば特開昭54-86341号公報や特開昭56-837
46号公報にみられるようなシリコン原子を含む非晶質材
料(以後「a-Si」と略記する)から成る光受容部材が注
目されている。
しかしながら、前記光受容部材については、光受容層を
単層構成のa-Si層とすると、その高光感度を保持しつ
つ、電子写真用として要求される1012Ωcm以上の暗抵抗
を確保するには、水素原子やハロゲン原子、或いはこれ
等に加えてボロン原子とを特定の量範囲で層中に制御さ
れた形で構造的に含有させる必要性があり、ために層形
成に当つて各種条件を厳密にコントロールすることが要
求される等、光受容部材の設計についての許容度に可成
りの制限がある。そしてそうした設計上の許容度の問題
をある程度低暗抵抗であつても、その高光感度を有効に
利用出来る様にする等して改善する提案がなされてい
る。即ち、例えば、特開昭54-121743号公報、特開昭57-
4053号公報、特開昭57-4172号公報にみられるように光
受容層を伝導特性の異なる層を積層した二層以上の層構
成として、光受容層内部に空乏層を形成したり、或いは
特開昭57-52178号、同52179号、同52180号、同58159
号、同58160号、同58161号の各公報にみられるように支
持体と光受容層の間、又は/及び光受容層の上部表面に
障壁層を設けた多層構造としたりして、見掛け上の暗抵
抗を高めた光受容部材が提案されている。
ところがそうした光受容層が多層構造を有する光受容部
材は、各層の層厚にばらつきがあり、これを用いてレー
ザー記録を行う場合、レーザー光が可干渉性の単色光で
あるので、光受容層のレーザー光照射側自由表面、光受
容層を構成する各層及び支持体と光受容層との層界面
(以後、この自由表面及び層界面の両者を併せた意味で
「界面」と称する。)より反射して来る反射光の夫々が
干渉を起してしまうことがしばしばある。
この干渉現象は、形成される可視画像に於いて、所謂、
干渉縞模様となつて現われ、画像不良の原因となる。殊
に階調性の高い中間調の画像を形成する場合にあつて
は、識別性の著しく劣つた阻画像を与えるところとな
る。
また重要な点として、使用する半導体レーザー光の波長
領域が長波長になるにつれ光受容層に於ける該レーザー
光の吸収が減少してくるので、前記の干渉現象が顕著に
なるという問題がある。
即ち、例えば2若しくはそれ以上の層(多層)構成のも
のであるものにおいては、それらの各層について干渉効
果が起り、それぞれの干渉が相乗的に作用し合つて干渉
縞模様を呈するところとなり、それがそのまゝ転写部材
に影響し、該部材上に前記干渉縞模様に対応した干渉縞
が転写、定着され可視画像に現出して不良画像をもたら
してしまうといつた問題がある。
こうした問題を解消する策として、(a)支持体表面をダ
イヤモンド切削して、±500Å〜±10000Åの凹凸を設け
て光散乱面を形成する方法(例えば特開昭58-162975号
公報参照)、(b)アルミニウム支持体表面を黒色アルマ
イト処理したり、或いは、樹脂中にカーボン、着色顔
料、染料を分散したりして光吸収層を設ける方法(例え
ば特開昭57-165845号公報参照)、(c)アルミニウム支持
体表面を梨地状のアルマイト処理したり、サンドブラス
トにより砂目状の微細凹凸を設けたりして、支持体表面
に光散乱反射防止層を設ける方法(例えば特開昭57-165
54号公報参照)等が提案されるている。
これ等の提案方法は、一応の結果はもたらすものの、画
像上に現出する干渉縞模様を完全に解消するに十分なも
のではない。
即ち、(a)の方法については、支持体表面に特定の凹凸
を多数設けていて、それにより光散乱効果による干渉縞
模様の現出が一応それなりに防止はされるものの、光散
乱としては依然として正反射光成分が残存するため、該
正反射光による干渉縞模様が残存してしまうことに加え
て、支持体表面での光散乱効果により照射スポツトに拡
がりが生じ、実質的な解像度低下をきたしてしまう。
(b)の方法については、黒色アルマイト処理では、完全
吸収は不可能であり、支持体表面での反射光は残存して
しまう。また、着色顔料分散樹脂層を設ける場合は、a-
Si層を形成する際、樹脂層より脱気現象が生じ、形成さ
れる光受容層の層品質が著しく低下すること、樹脂層が
a-Si層形成の際のプラズマによつてダメージを受けて、
本来の吸収機能を低減させると共に、表面状態の悪化に
よるその後のa-Si層の形成に悪影響を与えること等の問
題点を有する。
(c)の方法については、例えば入射光についてみれば光
受容層の表面でその一部が反射されて反射光となり、残
りは、光受容層の内部に進入して透過光となる。透過光
は、支持体の表面に於いて、その一部は、光散乱されて
拡散光となり、残りが正反射されて反射光となり、その
一部が出射光となつて外部に出ては行くが、出射光は、
反射光と干渉する成分であつて、いずれにしろ残留する
ため依然として干渉縞模様が完全に消失はしない。
ところで、この場合の干渉を防止するについて、光受容
層内部での多重反射が起らないように、支持体の表面の
拡散性を増加させる試みもあるが、そうしたところでか
えつて光受容層内で光が拡散してハレーシヨンを生じて
しまい結局は解像度が低下してしまう。
特に、多層構成の光受容部材においては、支持体表面を
不規則的に荒しても、第1層表面での反射光、第2層で
の反射光、支持体面での正反射光の夫々が干渉して、光
受容部材の各層厚にしたがつて干渉縞模様が生じる。従
つて、多層構成の光受容部材においては、支持体表面を
不規則に荒すことでは、干渉縞を完全に防止することは
不可能である。
又、サンドブラスト等の方法によつて支持体表面を不規
則に荒す場合は、その阻面度がロツト間に於いてバラツ
キが多く、且つ同一ロツトに於いても粗面度に不均一が
あつて、製造管理上問題がある。加えて、比較的大きな
突起がランダムに形成される機会が多く、斯かる大きな
突起が光受容層の局所的ブレークダウンをもたらしてし
まう。
又、支持体表面を単に規則的に荒らしたところで、通
常、支持体の表面の凹凸形状に沿つて、光受容層が堆積
するため、支持体の凹凸の傾斜面と光受容層の凹凸の傾
斜面とが平行になり、その部分では入射光は、明部、暗
部をもたらすところとなり、また、光受容層全体では光
受容層の層厚の不均一性があるため明暗の縞模様が現わ
れる。従つて、支持体表面を規則的に荒しただけでは、
干渉縞模様の発生を完全に防ぐことはできない。
又、表面を規則的に荒した支持体上に多層構成の光受容
層を堆積させた場合にも、支持体表面での正反射光と、
光受容層表面での反射光との干渉の他に、各層間の界面
での応射光による干渉が加わるため、一層構成の光受容
部材の干渉縞模様発現度合より一層複雑となる。
更にまた、こうした多層構成の光受容部材における反射
光による干渉現象の問題は、その表面層に関係するとこ
ろも大である。即ち、上述したところから明らかなよう
に、表面層の層厚が均一でないと、該層とそれに接して
いる感光層との界面での反射光による干渉現像が起き
て、光受容部材の機能に障害を与えてしまう。
ところで、表面層の層厚が不均一である状態は、表面層
の形成時に抑もたらされる他、光受容部材の使用時にお
ける摩耗、特に部分的摩耗によつてももたらされる。そ
して特に後者の場合、上述したように、干渉縞模様で現
出を招く他、光受容部材全体の感度変化、感度むら等を
もたらすところとなる。
こうした表面層に係る問題をなくす意味で表面層の層厚
をできるだけ厚くする試みがなされているが、そのよう
にした場合、残留電位が増大する要因が形成されてしま
うことの他、表面層にはかえつて層厚むらが増大されて
しまい、そうした表面層を有する光受容部材は、その形
成時既に感度変化、感度むら等の問題をもたらす要因を
具有するわけであり、それを使用したとなれば初期画像
から採用に価しないものを与えてしまう。
〔発明の目的〕
本発明は、主としてa-Siで構成された光受容層を有する
光受容部材について、上述の諸問題を排除し、各種要求
を満たすものにすることを目的とするものである。
すなわち、本発明の主たる目的は、電気的、光学的、光
導電的特性が使用環境に殆んど依存することなく実質的
に常時安定しており、耐光疲労に優れ、繰返し使用に際
しても劣化現象を起こさず耐久性、耐湿性に優れ、残留
電位が全く又は殆んど観測されなく、製造管理が容易で
ある、a-Siで構成された光受容層を有する光受容部材を
提供することにある。
本発明の別の目的は、全可視光域において光感度が高
く、とくに半導体レーザーとのマツチング性に優れ、且
つ光応答の速い、a-Siで構成された光受容層を有する光
受容部材を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、高光感度性、高SN比特性及び
高電気的耐圧性を有する、a-Siで構成された光受容層を
有する光受容部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、支持体上に設けられる層と支持体
との間や積層される層の各層間に於ける密着性に優れ、
構造配列的に緻密で安定的であり、層品質の高い、a-Si
で構成された光受容層を有する光受容部材を提供するこ
とにある。
本発明の更に他の目的は、可干渉性単色光を用いる画像
形成に適し、長期の繰り返し使用にあつても、干渉縞模
様と反転現像時の斑点の現出がなく、且つ画像欠陥や画
像のボケが全くなく、濃度が高く、ハーフトーンが鮮明
に出て且つ解像度の高い、高品質画像を得ることのでき
る、a-Siで構成された光受容層を有する光受容部材を提
供することにある。
〔発明の構成〕
本発明者らは、従来の光受容部材についての前述の諸問
題を克服して、上述の目的を達成すべく鋭意研究を重ね
た結果、下述する知見を得、該知見に基づいて本発明を
完成するに至つた。
即ち、本発明の光受容部材を、支持体上に、シリコン原
子を母体とする非晶質材料で構成された感光層と、シリ
コン原子と、酸素原子、炭素原子及び窒素原子の中から
選ばれる少なくとも一種とを含有する非晶質材料で構成
された表面層とを有する光受容層を備えた光受容部材で
あって、前記感光層と前記表面層との界面において光学
的バンドギャップが整合しており、前記支持体の表面
に、窪みの幅Dが500μm以下で窪みの曲率半径Rと幅
Dとが0.035≦D/Rとされた複数の球状痕跡窪みによる凹
凸を有し、かつ前記球状痕跡窪み内に更に0.5〜20μm
の微小凹凸が形成されていることを特徴とする。
ところで、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、得た知
見は、概要、以下に記述するところである。
即ち、支持体上に表面層と感光層とを有する光受容層を
備えた光受容部材にあつては、表面層と感光層との界面
において、表面層の有する光学的バンドギャップと、該
表面層が直接設けられる感光層の有する光学的バンドギ
ャップとが整合するように構成した場合、表面層と感光
層との界面における入射光の反射が防止され、表面層の
形成時における層厚むら又は/及び表面層の摩耗による
層厚むらによつてもたらされるところの干渉模様や感度
むらの問題が解消されるというものである。
また、支持体上に複数の層を有する光受容部材におい
て、前記支持体表面に、複数の球状痕跡窪みによる凹凸
を設け、かつ、該球状痕跡窪み内に更に微小な複数の凹
凸形状を設けることにより、画像形成時に現われる干渉
縞模様の問題が著しく解消されるというものである。
ところで後者の知見は、本発明者らが試みた各種の実験
により得た事実関係に基づくものである。
このところを、理解を容易にするため、図面を用いて以
下に説明する。
第1図は、本発明に係る光受容部材100の層構成を示す
模式図であり、微小な複数の球状痕跡窪みによる凹凸形
状を有し、かつ、該球状痕跡窪み内に更に微小な複数の
凹凸形状を有する支持体101上に、その凹凸の傾斜面に
沿つて、感光層102及び表面層103とからなる光受容層を
備えた光受容部材を示している。
第2及び4図は、本発明の光受容部材において干渉縞模
様の問題が解消されるところを説明するための図であ
る。
第3図は、表面を規則的に荒した支持体上に、多層構成
の光受容層を堆積させた従来の光受容部材の一部を拡大
して示した図である。該図において、301は感光層、302
は表面層、303は自由表面、304は感光層と表面層の界面
をそれぞれ示している。第3図に示すごとく、支持体表
面を切削加工等の手段により単に規則的に荒しただけの
場合、通常は、支持体の表面の凹凸形状に沿つて光受容
層が形成されるため、支持体表面の凹凸の傾斜面と光受
容層の凹凸の傾斜面とが平行関係をなすところとなる。
このことが原因で、例えば、光受容層が感光層301と、
表面層302との2つの層からなる多層構成のものである
光受容部材においては、例えば次のような問題が定常的
に惹起される。即ち、感光層と表面層との界面304及び
自由表面303とが平行関係にあるため、界面304での反射
光R1と自由表面での反射光R2とは方向が一致し、表面層
の層厚に応じた干渉縞が生じる。
第2図は、複数の球状痕跡窪みによる凹凸形状を有する
支持体上に、多層構成の光受容層を堆積させた光受容部
材の一部を拡大して示した図である。該図において、20
1は感光層、202は表面層、203は自由表面、204は感光層
と表面層との界面をそれぞれ示している。第2図に示す
ごとく、支持体表面に複数の微小な球状痕跡窪みによる
凹凸形状を設けた場合、該支持体上に設けられる光受容
層は、該凹凸形状に沿つて堆積するため、感光層201と
表面層202との界面204、及び自由表面203は、各々、前
記支持体表面の凹凸形状に沿つて、球状痕跡窪みによる
凹凸形状に形成される。界面204に形成される球状痕跡
窪みの曲率半径をR1、自由表面に形成される球状痕跡窪
みの曲率半径をR2とすると、R1とR2とはR1≠R2となるた
め、界面204での反射光と、自由表面203での反射光と
は、各々異なる反射角度を有し、即ち、第2図における
θ1、θ2がθ1≠θ2であつて、方向が異なるうえ、第2
図に示す123を用いて123で表わさ
れるところの波長のずれも一定とはならずに変化するた
め、いわゆるニユートンリング現象に相当するシエアリ
ング干渉が生起し、干渉縞は窪み内で分散されるところ
となる。これにより、こうした光受容部材を介して現出
される画像は、ミクロ的には干渉縞が仮に現出されてい
たとしても、それらは視覚にはとられられない程度のも
のとなる。
即ち、かくなる表面形状を有する支持体の使用は、その
上に多層構成の光受容層を形成してなる光受容部材にあ
つて、該光受容層を通過した光が、層界面及び支持体表
面で反射し、それらが干渉することにより、形成される
画像が縞模様となることを効率的に防止し、優れた画像
を形成しうる光受容部材を得ることにつながる。
第4図は、第1図に示す本発明の光受容部材における支
持体表面の一部を拡大した図である。第4図に示すごと
く、本発明の光受容部材における支持体表面は、球状痕
跡窪み403内の表面の一部分乃至全体に、更に微小な凹
凸乃至凹凸群404が形成されている。この様な更に微小
な凹凸乃至凹凸群404を設けた場合、第2図を用いて記
述したところの干渉防止効果に加えて、該微小凹凸404
による散乱効果がもたらされて、これにより干渉縞模様
の発生がより一層確実に防止される。
ところで、従来技術においては、前述したごとく、支持
体表面をランダムに荒らすことで乱反射させ、干渉縞模
様の発生を防止していた。しかし、この様な場合充分な
干渉縞模様の発生を防止する効果が得られないばかりで
なく、画像転写後のクリーニングにおいて、例えばブレ
ードを用いてクリーニングする場合にも問題が生ずる。
即ち、光受容層の表面は、支持体上に設けられた凹凸に
沿つた凹凸が生ずるため、ブレードが光受容層の凹凸の
凸部に主としてあたり、クリーニング性が悪く、また、
光受容層の凸部とブレード表面の摩耗が大きくなり、結
果的に両者の耐久性がよくなく問題がある。
これに対し、本発明の光受容部材においては、散乱効果
をもたらす微小な凹凸形状が、球状痕跡窪み(凹部)内
に存在するため、クリーニング時において、ブレードが
光受容層の凹部に接触するということがなくなり、ブレ
ードや光受容層表面に大きな負荷がかからないという利
点も有している。
さて、本発明の光受容部材の支持体表面に設けられる球
状痕跡窪みによる凹凸形状の曲率半径、幅、及び該球状
痕跡窪み内の更に微小な凹凸の高さは、こうした本発明
の光受容部材における干渉縞の発生を防止する作用効果
を効率的に得るについて重要である。本発明者らは、各
種実験を重ねた結果以下のところを究明した。
即ち、球状痕跡窪みによる凹凸形状の曲率半径をR、幅
をDとした場合、次式: を満足する場合には、各々の痕跡窪み内にシエアリング
干渉によるニユートンリングが0.5本以上存在すること
となる。さらに次式: を満足する場合には、各々の痕跡窪み内にシエアリング
干渉によるニユートンリングが1本以上存在することと
なる。
こうしたことから、光受容部材の全体に発生する干渉縞
を、各々の痕跡窪み内に分散せしめ、光受容部材におけ
る干渉縞の発生を防止するためには、前記D/Rを0.035、
好ましくは0.055以上とすることが望ましい。
また、D/Rの上限は、望ましくは0.5とされる。というの
は、D/Rが0.5より大きくなると、窪みの幅Dが相対的に
大きくなり、画像ムラ等を派生し易い状況となるためで
ある。
また、痕跡窪みによる凹凸の幅Dは、大きくとも500μ
m程度、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μ
m以下とするのが望ましい。Dが500μmを超えると、
画像ムラを派生しやすくなるとともに、解像力をこえて
しまうおそれがあり、こうした場合には、効率的な干渉
縞防止効果が得られにくくなる。
球状痕跡窪み内に形成される微小凹凸の高さ、即ち、球
状痕跡窪み内の表面粗さγmaxは、0.5〜20μmの範囲で
あることが好ましい。γmaxが0.5μm以下である場合に
は散乱効果が十分に得られず、また20μmをこえると、
球状痕跡窪みによる凹凸と比較して、球状痕跡窪み内の
微小凹凸が大きくなりすぎ、痕跡窪みが球状をなさなく
なつたりして、干渉縞模様の発生を防止する効果が充分
に得られなくなる。また、こうした支持体上に設けられ
る光受容層の不均一性を増長することともなり、画像欠
陥を生じやすくなるため、好ましくない。
上述のごとき特定の表面形状を有する支持体上に設ける
本発明の光受容部材の光受容層は、感光層と表面層とか
らなり、該感光層は、シリコン原子を母体とするアモル
フアス材料、特に好ましくはシリコン原子(Si)と、水素
原子(H)又はハロゲン原子(X)の少なくとも一方を含有す
るアモルフアス材料〔以下、「a-Si(H,X)」と表記す
る。〕、あるいは、酸素原子、炭素原子及び窒素原子の
中から選ばれる少なくとも一種を含有するa-Si(H,X)で
構成されており、該感光層には、さらに伝導性を制御す
る物質を含有せしめることが好ましい。そして、該感光
層は多層構造を有していることもあり、特に好ましく
は、前記伝導性を制御する物質を含有する電荷注入阻止
層又は/及び電気絶縁性材料から成るいわゆる障壁層を
構成層の一つとして有するものである。
また、前記表面層は、シリコン原子と、酸素原子、炭素
原子及び窒素原子の中から選ばれる少なくとも一種とを
含有する非晶質材料、特に好ましくはシリコン原子(Si)
と、酸素原子(O)、炭素原子(C)及び窒素原子(N)の中か
ら選ばれる少なくとも一種と、水素原子(H)及びハロゲ
ン原子(X)の少なくともいずれか一方とを含有するアモ
ルフアス材料〔以下、「a-Si(O,C,N)(H,X)」と表記す
る。〕で構成されている。
本発明の光受容部材の光受容層の作成については、本発
明の前述の目的を効率的に達成するために、その層厚を
光学的レベルで正確に制御する必要があることから、グ
ロー放電法、スパツタリング法、イオンプレーテイング
法等の真空堆積法が通常使用されるが、これらの他、光
CVD法、熱CVD法等を採用することもできる。
以下、図示の実施例にしたがつて本発明の光受容部材の
具体的内容を説明するが、本発明の光受容部材はそれら
の実施例により限定されるものではない。
第1図は、本発明の光受容部材の層構成を説明するため
に模式的に示した図であり、図中、100は光受容部材、1
01は支持体、102は感光層、103は表面層、104は自由表
面を示している。
支持体 本発明の光受容部材における支持体101は、その表面が
光受容部材に要求される解像力よりも微小な凹凸を有
し、しかも該凹凸は、複数の球状痕跡窪みによるもので
あり、かつ、該球状痕跡窪み内には更に微小な複数の凹
凸が形成されているものである。
以下に、本発明の光受容部材における支持体の表面の形
状及びその好適な製造例を、第4及び5図により説明す
るが、本発明の光受容部材における支持体の表面形状及
びその製造法は、これらによつて限定されるものではな
い。
第4図は、本発明の光受容部材における支持体の表面の
形状の典型的一例を、その凹凸形状の一部を部分的に拡
大して模式的に示すものである。
第4図において401は支持体、402は支持体表面、403は
球状痕跡窪みによる凹凸形状、404は該球状痕跡窪み内
に設けられた更に微小な凹凸形状を示している。
さらに第4図は、該支持体表面形状を得るのに好ましい
製造方法の1例をも示すものでもあり、403′は、表面
に微小な凹凸形状404′を有する剛体球を示しており、
該剛体球403′を支持体表面402より所定高さの位置より
自然落下させて支持体表面402に衝突させることによ
り、窪み内に微小な凹凸形状404を有する、球状痕跡窪
みによる凹凸形状403を形成しうることを示している。
そして、ほぼ同一径R′の剛体球403′を複数個用い、
それらを同一の高さhより、同時あるいは逐時、落下さ
せることにより、支持体表面402に、ほゞ同一の曲率半
径R及びほゞ同一の幅Dを有する複数の球状痕跡窪み40
3を形成することができる。
第5図は、前述のごとくして表面に、複数の球状痕跡窪
みによる凹凸形状の形成された支持体のいくつかの典型
例を示すものである。該図において、501は支持体、502
は支持体表面、503は、窪み内に複数の更に微小な凹凸
形状を有する球状痕跡窪み(なお、第5図においては球
状痕跡窪み内に形成される更に微小な複数の凹凸形状は
図示していないが、球状痕跡窪み503内には各々更に微
小な凹凸形状を有しているものとする。)、503′は表
面に微小な凹凸形状を有する剛体球(同様にして、表面
の微小な凹凸形状は図示していないが、剛体球の表面に
は、微小な凹凸形状を有しているものとする。)をそれ
ぞれ示している。
第5(A)図に示す例では、支持体501の表面502の異なる
部位に、ほぼ同一の径の複数の球体503′、503′、…を
ほぼ同一の高さより規則的に落下させてほぼ同一の曲率
半径及びほぼ同一の幅の複数の痕跡窪み503、503、…を
互いに重複し合うように密に生じせしめて規則的に凹凸
形状を形成したものである。なおこの場合、互いに重複
する窪み503、503、…を形成するには、球体503′の支持
体表面502への衝突時期が、互いにずれるように球体50
3′、503′、…を自然落下せしめる必要のあることはい
うまでもない。
また、第5(B)図に示す例では、異なる径を有する二種
類の球体503′、503′、…をほぼ同一の高さ又は異なる
高さから落下させて、支持体501の表面502に、二種の曲
率半径及び二種の幅の複数の窪み503、503、…を互いに
重複し合うように密に生じせしめて、表面の凹凸の高さ
が不規則な凹凸を形成したものである。
更に、第5(C)図(支持体表面の正面図および断面図)
に示す例では、支持体501の表面502に、ほぼ同一の径の
複数の球体503′、503′、…をほぼ同一の高さより不規
則に落下させ、ほぼ同一の曲率半径及び複数種の幅を有
する複数の窪み503、503、…を互いに重複し合うように
生じせしめて、不規則な凹凸を形成したものである。
以上のように、本発明の光受容部材の支持体の表面に球
状痕跡窪みによる凹凸形状を形成せしめ、かつ、該球状
痕跡窪み内に更に微小な複数の凹凸形状を形成せしめる
については、表面に微小な凹凸形状を有する剛体球を支
持体表面に落下させる方法が、好ましい例として挙げら
れるが、この場合、剛体球の径、落下させる高さ、剛体
球と支持体表面の硬度、剛体球の表面の凹凸の形状及び
大きさ、あるいは落下せしめる剛体球の量等の諸条件を
適宜選択することにより、支持体表面に所望の平均曲率
半径及び平均幅を有する球状痕跡窪み、あるいは該球状
痕跡窪み内に所望の大きさ及び形状の凹凸を、所定の密
度で形成することができる。即ち、上記諸条件を選択す
ることにより、支持体表面に形成される凹凸形状の凹凸
の高さや凹凸のピッチ、あるいは凹凸形状の凹部に形成
される更に微小な凹凸形状の凹凸の高さや凹凸のピッチ
等を、目的に応じて自在に調節することが可能であり、
所望の凹凸形状を有する支持体を得ることができる。
そして、光受容部材の支持体を凹凸形状表面のものにす
るについて、旋盤、フライス盤等を用いたダイヤモンド
バイトにより切削加工して作成する方法の提案がなされ
ていてそれなりに有効な方法ではあるが、該方法にあつ
ては切削油の使用、切削により不可避的に生ずる切粉の
除去、切削面の残存してしまう切削油の除去が不可欠で
あり、結局は加工処理が煩雑であつて効率のよくない等
の問題を伴うところ、本発明にあつては、支持体の凹凸
表面形状を前述したように球状痕跡窪みにより形成する
ことから上述の問題は全くなくして所望の凹凸形状表面
の支持体を効率的且つ簡便に作成できる。
本発明に用いる支持体101は、導電性のものであつて
も、また電気絶縁性のものであつてもよい。導電性支持
体としては、例えば、NiCr、ステンレス、A、Cr、Mo、
Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pb等の金属又はこれ等の合金が挙げ
られる。
電気絶縁性支持体としては、ポリエステル、ポリエチレ
ン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプ
ロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ
スチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフイルム又はシー
ト、ガラス、セラミツク、紙等が挙げられる。これ等の
電気絶縁性支持体は、好適には少なくともその一方の表
面を導電処理し、該導電処理された表面側に光受容層を
設けるのが望ましい。
例えば、ガラスであれば、その表面に、NiCr、A、C
r、Mo、Au、Ir、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pd、In2O3、SnO2、ITO(In2O3+S
nO2)等から成る薄膜を設けることによつて導電性を付与
し、或いはポリエステルフイルム等の合成樹脂フイルム
であれば、NiCr、A、Ag、Pb、Zn、Ni、Au、Cr、Mo、Ir、Nb、T
a、V、T、Pt等の金属の薄膜を真空蒸着、電子ビーム
蒸着、スパツタリング等でその表面に設け、又は前記金
属でその表面をラミネート処理して、その表面に導電性
を付与する。支持体の形状は、円筒状、ベルト状、板状
等任意の形状であることができるが、用途、所望によつ
て、その形状は適宜に決めることのできるものである。
例えば、第1図の光受容部材100を電子写真用像形成部
材として使用するのであれば、連続高速複写の場合に
は、無端ベルト状又は円筒状とするのが望ましい。支持
体の厚さは、所望通りの光受容部材を形成しうる様に適
宜決定するが、光受容部材として可撓性が要求される場
合には、支持体としての機能が充分発揮される範囲内で
可能な限り薄くすることができる。しかしながら、支持
体の製造上及び取扱い上、機械的強度等の点から、通常
は、10μ以上とされる。
次に、本発明の光受容部材を電子写真用の光受容部材と
して用いる場合について、その支持体表面の製造装置の
1例を第6(A)図及び第6(B)図を用いて説明するが、本
発明はこれによつて限定されるものではない。
電子写真用光受容部材の支持体としては、アルミニウム
合金等に通常の押出加工を施して、ボートホール管ある
いはマンドレル管とし、更に引抜加工して得られる引抜
管に、必要に応じて熱処理や調質等の処理を施した円筒
状(シリンダー状)基体を用い、該円筒状基体に第6
(A)、(B)図に示した製造装置を用いて、支持体表面に凹
凸形状を形成せしめる。
支持体表面に前述のような凹凸形状を形成するについて
用いる球体としては、例えばステンレス、アルミニウ
ム、鋼鉄、ニツケル、真鍮等の金属、セラミツク、プラ
スチック等の各種剛体球を挙げることができ、とりわけ
耐久性及び低コスト化等の理由により、ステンレス及び
鋼鉄の剛体球が望ましい。そしてそうした剛体球の硬度
は、支持体の硬度よりも高くても、あるいは低くてもよ
いが、球体を繰返し使用する場合には、支持体の硬度よ
りも高いものであることが望ましい。
本発明の支持体表面に前述のごとき特定形状を形成する
には、上述のような各種剛体球の表面に凹凸を有するも
のを使用する必要があり、こうした表面に凹凸を有する
剛体球は、例えばエンボス、波付け等の塑性加工処理を
応用する方法、地荒し法(梨地法)等の粗面化方法な
ど、機械的処理により凹凸を形成する方法、酸やアルカ
リによる食刻処理等化学的法により凹凸を形成する方法
などを用いて剛体球を処理することにより作製すること
ができる。また更にこの様に凹凸を形成した剛体球表面
に、電解研摩、化学研摩、仕上げ研摩等、又は陽極酸化
皮膜形成、化成皮膜形成、めつき、ほうろう、塗装、蒸
着膜形成、CVD法による膜形成などの表面処理を施して
凹凸形状(高さ)、硬度などを適宜調整することができ
る。
第6(A)、(B)図は、製造装置の一例を説明するための模
式的な断面図である。
図中、601は支持体作成用のアルミニウムシリンダーで
あり、該シリンダー601は、予め表面を適宜の平滑度に
仕上げられていてもよい。シリンダー601は、回転軸602
に軸支されており、モーター等の適宜の駆動手段603で
駆動され、ほぼ軸芯のまわりで回転可能にされている。
604は、軸受602に軸支され、シリンダー601と同一の方
向に回転する回転容器であり、該容器604の内部には、
表面に凹凸形状を有する多数の剛体球605が収容されて
いる。剛体球605は、回転容器604の内壁に設けられてい
る突出した複数のリブ606によつて担持され、且つ、回
転容器604の回転によつて容器上部まで輸送される。回
転容器の回転速度がある適度の速度の時に、容器壁につ
いて容器上部まで輸送された剛体球605は、シリンダー6
01上に向け落下し、シリンダー表面に衝突し、表面に痕
跡窪みを形成する。
なお、回転容器604の壁に均一に孔を穿つておき、回転
時に容器604の外部に設けたシヤワー管607より洗浄液を
噴射するようにし、シリンダー601と剛体球605及び回転
容器604を洗浄しうる様にすることもできる。このよう
にした場合、剛体球どうし、又は剛体球と回転容器との
接触等により生ずる静電気によつて付着したゴミ等を、
回転容器604外へ洗い出すこととなり、ゴミ等の付着が
ない所望の支持体を形成することができる。該洗浄液と
しては、洗浄液の乾燥むらや液だれのないものを用いる
必要があり、こうしたことから不揮発性物質単独、又は
トリクロルエタン、トリクロルエチレン等の洗浄液との
混合物を用いるのが好ましい。
感光層 本発明の光受容部材において、感光層102は前述の支持
体101上に設けられるものであつて、a-Si(H,X)又は酸素
原子、炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少なくと
も一種を含有するa-Si(H,X)で構成されており、好まし
くはさらに伝導性を制御する物質が含有されているもの
である。
感光層中に含有せしめるハロゲン原子(X)としては、具
体的にフツ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、特にフ
ツ素、塩素を好適なものとして挙げることができる。そ
して、感光層102中に含有される水素原子(H)の量又はハ
ロゲン原子(X)の量又は水素原子とハロゲン原子の量の
和(H+X)は通常の場合1〜40atomic%、好適には5〜30a
tomic%とされるのが望ましい。
また、本発明の光受容部材において、感光層の層厚は、
本発明の目的を効率的に達成するには重要な要因の1つ
であつて、光受容部材に所望の特性が与えられるよう
に、光受容部材の設計の際には充分な注意を払う必要が
あり、通常は1〜100μとするが、好ましくは1〜80
μ、より好ましくは2〜50μとする。
ところで、本発明の光受容部材の感光層に、酸素原子、
炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少くとも一種を
含有せしめる目的は、主として該光受容部材の高光感度
化と高暗抵抗化そして支持体と感光層との間の密着性の
向上にある。
本発明の感光層においては、酸素原子、炭素原子及び窒
素原子の中から選ばれる少くとも一種を含有せしめる場
合、層厚方向に均一な分布状態で含有せしめるか、ある
いは層厚方向に不均一な分布状態で含有せしめるかは、
前述の目的とするところ乃至期待する作用効果によつて
異なり、したがつて、含有せしめる量も異なるところと
なる。
すなわち、光受容部材の高光感度化と高暗抵抗化を目的
とする場合には、感光層の全層領域に均一な分布状態で
含有せしめ、この場合、感光層に含有せしめる炭素原
子、酸素原子及び窒素原子の中から選ばれる少くとも一
種の量は、比較的少量でよい。
また、支持体と感光層との密着性の向上を目的とする場
合には、感光層の支持体側端部の一部の層領域に均一に
含有せしめるか、あるいは、感光層の支持体側端部にお
いて、炭素原子、酸素原子、及び窒素原子の中から選ば
れる少くとも一種の分布濃度が高くなるような分布状態
で含有せしめ、この場合、感光層に含有せしめる酸素原
子、炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少くとも一
種の量は、支持体との密着性の向上を確実に図るため
に、比較的多量にされる。
本発明の光受容部材において、感光層に含有せしめる酸
素原子、炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少くと
も一種の量は、しかし、上述のごとき感光層に要求され
る特性に対する考慮の他、支持体との接触界面における
特性等、有機的関連性にも考慮をはらつて決定されるも
のであり、通常は0.001〜50atomic%、好ましくは0.002
〜40atomic%、最適には0.003〜30atomic%とする。
ところで、感光層の全層領域に含有せしめるが、あるい
は、含有せしめる一部の層領域の層厚の感光層の層厚中
に占める割合が大きい場合には、前述の含有せしめる量
の上限を少なめにされる。すなわち、その場合、例え
ば、含有せしめる層領域の層厚が、感光層の層厚の2/5
となるような場合には、含有せしめる量は通常30atomic
%以下、好ましくは20atomic%以下、最適には10atomic
%以下にされる。
次に本発明の感光層に含有せしめる酸素原子、炭素原子
及び窒素原子の中から選ばれる少くとも一種の量が、支
持体側においては比較的多量であり、支持体側の端部か
ら表面層側の端部に向かつて減少し、感光層の表面層側
の端部付近においては、比較的少量となるか、あるいは
実質的にゼロに近くなるように分布せしめる場合の典型
的な例のいくつかを、第7図乃至第15図によつて説明す
る。しかし、本発明はこれらの例によつて限定されるも
のではない。以下、炭素原子、酸素原子及び窒素原子の
中から選ばれる少くとも一種を「原子(O,C,N)」と表記
する。
第7乃至15図において、横軸は原子(O,C,N)の分布濃度
Cを、縦軸は感光層の層厚を示し、tBは支持体と感光層
との界面位置を、tTは感光層の表面層との界面の位置を
示す。
第7図は、感光層中に含有せしめる原子(O,C,N)の層厚
方向の分布状態の第一の典型例を示している。該例で
は、原子(O,C,N)を含有する感光層と支持体との界面位
置tBより位置t1までは、原子(O,C,N)の分布濃度CがC1
なる一定値をとり、位置t1より表面層との界面位置tT
では原子(O,C,N)の分布濃度Cが濃度C2から連続的に減
少し、位置tTにおいては原子(O,C,N)の分布濃度が実質
的に0となる。
第8図に示す他の典型例の1つでは、感光層に含有せし
める原子(O,C,N)の分布濃度Cは、位置tBから位置tT
いたるまで、濃度C3から連続的に減少し、位置tTにおい
て濃度C4となる。
第9図に示す例では、位置tBから位置t2までは原子(O,
C,N)の分布濃度Cが濃度C5なる一定値を保ち、位置t2
ら位置tTにいたるまでは、原子(O,C,N)の分布濃度Cは
濃度C′5から徐々に連続的に減少して位置tTにおいて
は原子(O,C,N)の分布濃度Cは実質的にゼロとなる。
第10図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度Cは位置t
Bより位置tTにいたるまで、濃度Cから連続的に徐々
に減少し、位置tTにおいては原子(O,C,N)の分布濃度C
は実質的にゼロとなる。
第11図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度Cは、位
置tBより位置t4の間においては濃度C7の一定値にあり、
位置t4から位置tTの間においては、濃度C7から実質的に
0となるまで、一次関数的に減少する。
第12図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度Cは、位
置tBより位置t5にいたるまでは濃度C8の一定値にあり、
位置t5より位置tTにいたるまでは濃度C9から濃度C10
なるまで一次関数的に減少する。
第13図に示す例においては、原子(O,C,N)の分布濃度C
は、位置tBから位置tTにいたるまで、濃度C14から実質
的にゼロとなるまで一次関数的に減少する。
第14図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度Cは、位
置tBから位置t5にいたるまで濃度C15からん濃度C16とな
るまで一次関数的に減少し、位置t5から位置tTまでは濃
度C16の一定値を保つ。
最後に、第15図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度
Cは、位置tBにおいて濃度C17であり、位置tBから位置t
6までは、濃度C17からはじめはゆつくり減少して、位置
t6付近では急激に減少し、位置t6では濃度C18となる。
次に、位置t6から位置t7までははじめのうちは急激に減
少し、その後は緩かに徐々に減少し、位置t7においては
濃度C19となる。更に位置t7と位置t8の間では極めてゆ
つくりと徐々に減少し、位置t8において濃度C20とな
る。また更に、位置t8から位置tTにいたるまでは、濃度
C20から実質的にゼロとなるまで徐々に減少する。
第7図〜第15図に示した例のごとく、感光層の支持体側
の端部に原子(O,C,N)の分布濃度Cの高い部分を有し、
感光層の表面層側の端部においては、該分布濃度Cがか
なり低い部分を有するか、あるいは実質的にゼロに近い
濃度の部分を有する場合にあつては、感光層の支持体側
の端部に原子(O,C,N)の分布濃度が比較的高濃度である
局在領域を設けること、好ましくは該局在領域を支持体
表面と感光層の界面位置tBから5μ以内に設けることに
より、支持体と感光層との密着性の向上をより一層効率
的に達成することができる。
前記局在領域は、原子(O,C,N)を含有せしめる感光層の
支持体側の端部の一部層領域の全部であつても、あるい
は一部であつてもよく、いずれにするかは、形成される
感光層に要求される特性に従つて適宜決める。
局在領域に含有せしめる原子(O,C,N)の量は、原子(O,C,
N)の分子濃度Cの最大値が500atomic ppm以上、好まし
くは800atomic ppm以上、最適には1000atomic ppm以上
となるような分布状態とするのが望ましい。
さらに、本発明の光受容部材においては感光層に伝導性
を制御する物質を、全層領域又は一部の層領域に均一又
は不均一な分布状態で含有せしめることができる。
前記伝導性を制御する物質としては、半導体分野におい
ていういわゆる不純物を挙げることができ、P型伝導性
を与える周期律表第III族に属する原子(以下単に「第I
II族原子」と称す。)、又は、n型伝導性を与える周期
律表第V族に属する原子(以下単に「第V族原子」と称
す。)が使用される。具体的には、第III族原子として
は、B(硼素)、A(アルミニウム)、Ga(ガリウ
ム)、In(インジウム)、T(タリウム)等を挙げる
ことができるが、特に好ましいものは、B、Gaである。
また第V族原子としては、P(燐)、As(砒素)、Sb
(アンチモン)、Bi(ビスマン)等を挙げることができ
るが、特に好ましいものは、P、Sbである。
本発明の感光層に伝導性を制御する物質である第III族
原子又は第V族原子を含有せしめる場合、全層領域に含
有せしめるか、あるいは一部の層領域に含有せしめるか
は、後述するように目的とするところ乃至期待する作用
効果によつて異なり、含有せしめる量も異なるところと
なる。
すなわち、感光層の伝導型又は/及び伝導率を制御する
ことを主たる目的にする場合には、感光層の全層領域中
に含有せしめ、この場合、第III族原子又は第V族原子
の含有量は比較的わずかでよく、通常は1×10-3〜1×
103atomic ppmであり、好ましくは5×10-2〜5×102at
omic ppm、最適には1×10-1〜2×102atomic ppmであ
る。
また、支持体と接する一部の層領域に第III族原子又は
第V族原子を均一な分布状態で含有せしめるか、あるい
は層厚方向における第III族原子又は第V族原子の分布
濃度が、支持体と接する側において高濃度となるように
含有せしめる場合には、こうした第III族原子又は第V
族原子を含有する一部の層領域あるいは高濃度に含有す
る領域は、電荷注入阻止量として機能するところとな
る。即ち、第III族原子を含有せしめた場合には、光受
容層の自由表面が極性に帯電処理を受けた際に、支持
体側から光受容層中へ注入される電子の移動をより効率
的に阻止することができ、また、第V族原子を含有せし
めた場合には、光受容層の自由表面が極性に帯電処理
を受けた際に、支持体側から光受容層中へ注入される正
孔の移動をより効率的に阻止することができる。
そして、この場合の含有量は比較的多量である。具体的
には、一般的には30〜5×104atomic ppmとするが、好
ましくは50〜1×104atomic ppm、最適には1×102〜5
×103atomic ppmである。そして、該効果を効率的に奏
するためには、一部の層領域あるいは高濃度に含有する
層領域の層厚をtとし、それ以外の感光層の層厚をt0
した場合、t/t+t0≦0.4の関係式が成立することが望ま
しく、より好ましくは、該関係式の値が0.35以下、最適
には0.3以下となるようにするのが望ましい。また、該
層領域の層厚は、一般的には3×10-3〜10μとするが、
好ましくは4×10-3〜8μ、最適には5×10-3〜5μで
ある。
次に感光層に含有せしめる第III族原子又は第V族原子
の量が、支持体側においては比較的多量であつて、支持
体側から表面層と接する側に向つて減少し、表面層と接
する付近においては、比較的少量となるかあるいは実質
的にゼロに近くなるように第III族原子又は第V族原子
を分布させる場合の典型的例は、前述の感光層に酸素原
子、炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少なくとも
一種を含有せしめる場合に例示した、第7図乃至15図の
例と同様の例によつて説明することができる。しかし、
本発明は、これらの例によつて限定されるものではな
い。
そして、第7〜15図に示した例のごとく、感光層の支持
体側に近い側に第III族原子又は第V族原子の分布濃度
Cの高い部分を有し、感光層の表面層側においては、該
分布濃度Cがかなり低い濃度の部分あるいは実質的にゼ
ロに近い濃度の部分を有する場合にあつては、支持体側
に近い部分に第III族原子又は第V族原子の分布濃度が
比較的高濃度である局在領域を設けること、好ましくは
該局在領域を支持体表面と接触する界面位置から5μ以
内に設けることにより、第III族原子又は第V族原子の
分布濃度が高濃度である層領域が電荷注入阻止層を形成
するという前述の作用効果がより一層効率的に奏され
る。
以上、第III族原子又は第V族原子の分布状態につい
て、個々に各々の作用効果を記述したが、所望の目的を
達成しうる特性を有する光受容部材を得るについては、
これらの第III族原子又は第V族原子の分布状態および
感光層に含有せしめる第III族原子又は第V族原子の量
を、必要に応じて適宜組み合わせて用いるものであるこ
とは、いうまでもない。例えば、感光層の支持体側の端
部に電荷注入阻止層を設けた場合、電荷注入阻止層以外
の感光層中に、電荷注入阻止層に含有せしめた伝導性を
制御する物質の極性とは別の極性の伝導性を制御する物
質を含有せしめてもよく、あるいは、同極性の伝導性を
制御する物質を、電荷阻止層に含有される量よりも一段
と少ない量にして含有せしめてもよい。
さらに、本発明の光受容部材においては、支持体側の端
部に設ける構成層として、電荷注入阻止層の代わりに、
電気絶縁性材料から成るいわゆる障壁層を設けることも
でき、あるいは、該障壁層と電荷注入阻止層との両方を
構成層とすることもできる。こうした障壁層を構成する
材料としては、A、SiO、Si等の無機
電気絶縁材料やポリカーボネート等の有機電気絶縁材料
を挙げることができる。
表面層 本発明の光受容部材の表面層103は、前述の感光層102の
上に設けられ、自由表面104を有している。該表面層
は、酸素原子(O)、炭素原子(C)及び窒素原子(N)の中か
ら選ばれる少なくとも一種、好ましくはさらに水素原子
(H)及びハロゲン原子(X)の少なくともいずれか一方を含
有するa-Si〔以下、「a-Si(O,C,N)(H,X)」と表記す
る。〕で構成されていて、光受容部材の自由表面104に
おける入射光の反射をへらし、透過率を増加させる機能
を奏するとともに、光受容部材の耐湿性、連続繰返し使
用特性、電気的耐圧性、使用環境特性および耐久性等の
諸特性を向上せしめる機能を奏するものである。
そして、本発明の光受容部材にあつては、表面層103と
感光層102との界面において、表面層の有する光学的バ
ンドギヤツプEoptと、該表面層が直接設けられている感
光層102の有する光学的バンドギヤツプEoptとが、整合
するか、あるいは表面層103と感光層102との界面におけ
る入射光の反射を実質的に防止しうる程度に整合するよ
うに構成される必要がある。
さらに、上述の条件に加えて、表面層103の自由表面側
の端部においては、表面層の下に設けられている感光層
102に到達する入射光の光量が充分に確保できるように
するため、表面層103の自由表面側の端部においては、
表面層の有する光学的バンドギヤツプEoptを充分に大き
くするように構成されることが望ましい。そして、表面
層103と感光層102との界面において光学的バンドギヤツ
プEoptが整合するように構成するとともに、表面層の自
由表面側の端部において光学的バンドギヤツプEoptを充
分に大きくするように構成する場合、表面層の有する光
学的バンドギヤツプが、表面層の層厚方向において連続
的に変化するように構成される。
表面層の光学的バンドギヤツプEoptの層厚方向における
値を前述のごとく制御するには、光学的バンドギヤツプ
の調整原子であるところの酸素原子(O)、炭素原子(C)及
び窒素原子(N)の中から選ばれる少くとも一種の表面層
に含有せしめる量を制御することによつて行なわれる。
具体的には、感光層の表面層と接する側の端部において
酸素原子(O)、炭素原子(C)及び窒素原子(N)の中から選
ばれる少なくとも一種〔以下、「原子(O,C,N)」と表記
する。〕が含有されていない場合には、表面層の感光層
と接する側の端部におる原子(O,C,N)の含有量をゼロ又
はゼロに近い値とし、感光層の表面層と接する側の端部
において原子(O,C,N)が含有されている場合について
は、表面層の感光層と接する型の端部における原子(O,
C,N)の含有量と、感光層の表面層と接する側の端部にお
ける原子(O,C,N)の含有量とが同じか、あるいは実質的
に差がないようにする。そして、表面層の感光層側の端
部から自由表面側の端部に向かつて、原子(O,C,N)の量
を連続的に増加させ、自由表面側の端部付近において
は、自由表面における入射光の反射を防止するのに充分
な量の原子(O,C,N)を含有せしめる。以下、表面層にお
ける原子(O,C,N)の分布状態の典型的な例のいくつか
を、第16乃至第18図によつて説明するが、本発明はこれ
らの例によつて限定されるものではない。
第16乃至第18図において、横軸は原子(O,C,N)およびシ
リコン原子の分布濃度C、縦軸は表面層の層厚tを示し
ており、図中、tTは感光層と表面層との界面位置、tF
自由表面位置、実線は原子(O,C,N)の分布濃度の変化、
破線はシリコン原子(Si)の分布濃度の変化を示してい
る。
第16図は、表面層中に含有せしめる原子(O,C,N)とシリ
コン原子(Si)の層厚方向の分布状態の第一の典型例を示
している。該例では、界面位置tTより位置t1まで、原子
(O,C,N)の分布濃度Cがゼロより濃度C1となるまで一次
関数的に増加し、一方、シリコン原子の分布濃度は、濃
度C2から濃度C3となるまで一次関数的に減少し、位置t1
から位置tFにいたるまでは、原子(O,C,N)およびシリコ
ン原子の分布濃度Cは各々濃度C1および濃度C3の一定値
を保つ。
第17図に示す例では、原子(O,C,N)の分布濃度Cは界面
位置tTより位置t3まではゼロから濃度C4まで一次関数的
に増加し、位置t3より位置tFにいたるまで、濃度C4の一
定値を保つ。一方、シリコン原子の分布濃度Cは、位置
tTより位置t2までは濃度C5から濃度C6まで一次関数的に
減少し、位置t2より位置t3までは、濃度C6から濃度C7
で一次関数的に減少し、位置t3から位置tFにいたるまで
は、濃度C7の一定値を保つ。表面層の形成の初期におい
て、シリコン原子の濃度が高い場合、成膜速度が速くな
るが、この例のようにシリコン原子の分布濃度を2段階
で減少することにより、成膜速度を補正することができ
る。
第18図に示す例では、位置tTから位置t4までは、原子
(O,C,N)の分布濃度はゼロから濃度C8まで連続的に増加
し、一方シリコン原子(Si)の分布濃度Cは、濃度C9から
濃度C10まで連続的に減少し、位置t4から位置tFにいた
るまでは、原子(O,C,N)の分布濃度およびシリコン原子
(Si)の分布濃度は、各々濃度C8および濃度C10の一定値
を保つ。この例のごとく、原子(O,C,N)の分布濃度を徐
々に連続して増加せしめる場合には、表面層の層厚方向
の屈折率の変化率をほぼ一定とすることができる。
本発明の光受容部材の表面層は、第16乃至18図に示した
ごとく、表面層の感光層側の端部においては原子(O,C,
N)の分布濃度を実質的にゼロに近い濃度とし、自由表面
側に向かつて連続的に増加させ、表面層の自由表面側の
端部においては、比較的高濃度である層領域を設けるよ
うにすることが望ましい。そして、この場合の該層領域
の層厚は、反射防止層としての機能および、保護層とし
ての機能を果たすため、通常は0.1μm以上となるよう
にされる。
表面層にも、水素原子又はハロゲン原子の少なくとも一
方を含有せしめることが望ましく、含有せしめる水素原
子(H)の量又はハロゲン原子(X)の量、あるいは水素原子
とハロゲン原子の量の和(H+X)は、通常1〜40atomic
%、好ましくは5〜30atomic%、最適には5〜25atomic
%とする。
また、本発明において、表面層の層厚も本発明の目的を
効率的に達成するための重要な要因の1つであり、所期
の目的に応じて適宜決定されるものであるが、該層に含
有せしめる酸素原子、炭素原子、窒素原子、ハロゲン原
子、水素原子の量、あるいは表面層に要求される特性に
応じて相互的かつ有機的関連性の下に決定する必要があ
る。更に、生産性や量産性をも加味した経済性の点にお
いても考慮する必要もある。こうしたことから、表面層
の層厚は通常は3×10-3〜30μとするが、より好ましく
は4×10-3〜20μ、特に好ましくは5×10-3〜10μとす
る。
本発明の光受容部材は前記のごとき層構成としたことに
より、前記したアモルフアスシリコンで構成された光受
容層を有する光受容部材の諸問題の総てを解決でき、特
に、可干渉性の単色光であるレーザー光を光源として用
いた場合にも、干渉現象による形成画像における干渉縞
模様の現出を顕著に防止し、きわめて良質な可視画像を
形成することができる。
また、本発明の光受容部材は、全可視光域に於いて光感
度が高く、また、特に長波長側の光感度特性に優れてい
るため殊に半導体レーザーとのマツチングに優れ、且つ
光応答が速く、さらに極めて優れた電気的、光学的、光
導電的特性、電気的耐圧性及び使用環境特性を示す。
殊に、電子写真用光受容部材として適用させた場合に
は、画像形成への残留電位の影響が全くなく、その電気
的特性が安定しており高感度で、高SN比を有するもので
あつて、耐光疲労、繰返し使用特性に長け、濃度が高
く、ハーフトーンが鮮明に出て、且つ解像度の高い高品
質の画像を安定して繰返し得ることができる。
次に本発明の光受容層の形成方法について説明する。
本発明の光受容層を構成する非晶質材料はいずれもグロ
ー放電法、スパツタリング法、或いはイオンプレーテイ
ング法等の放電現象を利用する真空堆積法によつて行わ
れる。これ等の製造法は、製造条件、設備資本投下の負
荷程度、製造規模、作製される光受容部材に所望される
特性等の要因によつて適宜選択されて採用されるが、所
望の特性を有する光受容部材を製造するに当つて条件の
制御が比較的容易であり、シリコン原子と共に炭素原子
及び水素原子の導入を容易に行い得る等のことからし
て、グロー放電法或いはスパツタリング法が好適であ
る。そして、グロー放電法とスパツタリング法とを同一
装置系内で併用して形成してもよい。
例えば、グロー放電法によつて、a-Si(H,X)で構成され
る層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供
給し得るSi供給用の原料ガスと共に、水素原子(H)導入
用の又は/及びハロゲン原子(X)導入用の原料ガスを、
内部が減圧にし得る堆積室内に導入して、該堆積室内に
グロー放電を生起させ、予め所定位置に設置した所定の
支持体表面上にa-Si(H,X)から成る層を形成する。
前記Si供給用の原料ガスとしては、SiH4、Si2H6、Si3H8、S
i4H10等のガス状態の又はガス化し得る水素化硅素(シ
ラン類)が挙げられ、特に、層形成作業のし易さ、Si供
給効率の良さ等の点で、SiH4、Si2H6が好ましい。
また、前記ハロゲン原子導入用の原料ガスとしては、多
くのハロゲン化合物が挙げられ、例えばハロゲンガス、
ハロゲン化物、ハロゲン間化合物、ハロゲンで置換され
たシラン誘導体等のガス状態の又はガス化しうるハロゲ
ン化合物が好ましい。具体的にはフツ素、塩素、臭素、
ヨウ素のハロゲンガス、BrF、CF、CF、BrF5
BrF3、IF7、IC、IBr等のハロゲン間化合物、およびSiF
4、Si2F6、SiC、SiBr4等のハロゲン化硅素等が挙げ
られる。上述のごときハロゲン化硅素のガス状態の又は
ガス化しうるものを用いる場合には、Si供給用の原料ガ
スを別途使用することなくして、ハロゲン原子を含有す
るa-Siで構成された層が形成できるので、特に有効であ
る。
また、前記水素原子供給用の原料ガスとしては、水素ガ
ス、HF、HC、HBr、HI等のハロゲン化物、SiH4、Si2H6、S
i3H8、Si4H10等の水素化硅素、あるいはSiH2 2、SiH2I2、S
iH、SiH、SiH2Br2、SiHBr3等のハロゲン置
換水素化硅素等のガス状態の又はガス化しうるものを用
いることができ、これらの原料ガスを用いた場合には、
電気的あるいは光電的特性の制御という点で極めて有効
であるところの水素原子(H)の含有量の制御を容易に行
うことができるため、有効である。そして、前記ハロゲ
ン化水素又は前記ハロゲン置換水素化硅素を用いた場合
にはハロゲン原子の導入と同時に水素原子(H)も導入さ
れるので、特に有効である。
また、a-Si層中に含有せしめる水素原子(H)又は/及び
ハロゲン原子(X)の量の制御は、例えば支持体温度、水
素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を導入するために
用いる出発物質の堆積室内へ導入する量、放電電力等を
制御することによつて行われる。
反応スパツタリング法或いはイオンプレーテイング法に
依つてa-Si(H,X)から成る層を形成するには、例えばス
パツタリング法の場合には、ハロゲン原子を導入するに
ついては、前記のハロゲン化合物又は前記のハロゲン原
子を含む硅素化合物のガスを堆積室中に導入して該ガス
のプラズマ雰囲気を形成してやればよい。
又、水素原子を導入する場合には、水素原子導入用の原
料ガス、例えば、H2或いは前記したシラン類等のガスを
スパツタリング用の堆積室中に導入して該ガスのプラズ
マ雰囲気を形成してやればよい。
例えば、反応スパツタリング法の場合には、Siターゲツ
トを使用し、ハロゲン原子導入用のガス及びH2ガスを必
要に応じてHe、Ar等の不活性ガスも含めて堆積室内に導
入してプラズマ雰囲気を形成し、前記Siターゲツトをス
パツタリングすることによつて、支持体上にa-Si(H,X)
から成る層を形成する。
グロー放電法、スパツタリング法、あるいはイオンプレ
ーテイング法を用いて、a-Si(H,X)はさらに第III族原子
又は第V族原子、窒素原子、酸素原子あるいは炭素原子
を含有せしめた非晶質材料で構成された層を形成するに
は、a-Si(H,X)の層の形成の際に、第III族原子又は第V
族原子導入用の出発物質、窒素原子導入用の出発物質、
酸素原子導入用の出発物質、あるいは炭素原子導入用の
出発物質を、前述したa-Si(H,X)形成用の出発物質と共
に使用して、形成する層中へのそれらの量を制御しなが
ら含有せしめてやることによつて行なう。
例えば、グロー放電法、スパツタリング法あるいはイオ
ンプレーテイング法を用いて、第III族原子又は第V族
原子を含有するa-Si(H,X)で構成される層又は層領域を
形成するには、上述のa-Si(H,X)で構成される層の形成
の際に、第III族原子又は第V族原子導入用の出発物質
を、a-Si(H,X)形成用の出発物質とともに使用して、形
成する層中へのそれらの量を制御しながら含有せしめる
ことによつて行なう。
第III族原子導入用の出発物質として具体的には硼素原
子導入用としては、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H
12、B10H14等の水素化硼素、BF3、BC、BBr3等のハロ
ゲン化硼素等が挙げられる。この他、AC、GaC
、Ga(CH3)3、InC、TC等も挙げること
ができる。
第V族原子導入用の出発物質として、具体的には燐原子
導入用としてはPH3、P2H4等の水素化燐、PH4I、PF3、PF5
PC、PC、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化燐が挙
げられる。この他、AsH3、AsF3、AsC、AsBr3、AsF5、S
bH3、SbF3、SbF5、SbC、SbC、BiH3、BiC、Bi
Br3等も第V族原子導入用の出発物質の有効なものとし
て挙げることができる。
酸素原子を含有する層又は層領域を形成するのにグロー
放電法を用いる場合には、前記した光受容層形成用の出
発物質の中から所望に従つて選択されたものに酸素原子
導入用の出発物質が加えられる。その様な酸素原子導入
用の出発物質としては、少なくとも酸素原子を構成原子
とするガス上の物質又はガス化し得る物質であればほと
んどのものが使用できる。
例えばシリコン原子(Si)を構成原子とする原料ガスと、
酸素原子(O)を構成原子とする原料ガスと、必要に応じ
て水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を構成原子と
する原料ガスとを所望の混合比で混合して使用するか、
又は、シリコン原子(Si)を構成原子とする原料ガスと、
酸素原子(O)及び水素原子(H)を構成原子とする原料ガス
とを、これも又所望の混合比で混合するか、或いは、シ
リコン原子(Si)を構成原子とする原料ガスと、シリコン
原子(Si)、酸素原子(O)及び水素原子(H)の3つを構成原
子とする原料ガスとを混合して使用することができる。
又、別には、シリコン原子(Si)と水素原子(H)とを構成
原子とする原料ガスに酸素原子(O)を構成原子とする原
料ガスを混合して使用してもよい。
具体的には、例えば酸素(O2)、オゾン(O3)、一酸化窒素
(NO)、二酸化窒素(NO2)、一二酸化窒素(N2O)、三二酸化
窒素(N2O3)、四二酸化窒素(N2O4)、五二酸化窒素(N
2O5)、三酸化窒素(NO3)、シリコン原子(Si)と酸素原子
(O)と水素原子(H)とを構成原子とする、例えば、ジシロ
キサン(H3SiOSiH3)、トリシロキサン(H3SiOSiH2OSiH3)
等の低級シロキサン等を挙げることができる。
スパツタリング法によつて、酸素原子を含有する層また
は層領域を形成するには、単結晶又は多結晶のSiウエー
ハー又はSiO2ウエーハー、又はSiとSiO2が混合されて含
有されているウエーハーをターゲツトとして、これ等を
種々のガス雰囲気中でスパツタリングすることによつて
行えばよい。
例えば、Siウエーハーをターゲツトとして使用すれば、
酸素原子と必要に応じて水素原子又は/及びハロゲン原
子を導入する為の原料ガスを、必要に応じて稀釈ガスで
稀釈して、スパツター用の堆積室中に導入し、これ等の
ガスのガスプラズマを形成して前記Siウエーハーをスパ
ツタリングすればよい。
又、別には、SiとSiO2とは別々のターゲツトとして、又
はSiとSiO2の混合した一枚のターゲツトを使用すること
によつて、スパツター用のガスとしての稀釈ガスの雰囲
気中で又は少なくとも水素原子(H)又は/及びハロゲン
原子(X)を構成原子として含有するガス雰囲気中でスパ
ツタリングすることによつて形成できる。酸素原子導入
用の原料ガスとしては、先述したグロー放電の例で示し
た原料ガスの中の酸素原子導入用の原料ガスが、スパツ
タリングの場合にも有効なガスとして使用できる。
窒素原子を含有する層または層領域を形成するのにグロ
ー放電法を用いる場合には、前記した光受容層形成用の
出発物質の中から所望に従つて選択されたものに窒素原
子導入用の出発物質を加える。その様な窒素原子導入用
の出発物質としては、少なくとも窒素原子を構成原子と
するガス状の物質又はガス化し得る物質であればほとん
どのものが使用できる。
例えばシリコン原子(Si)を構成原子とする原料ガスと、
窒素原子(N)を構成原子とする原料ガスと、必要に応じ
て水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を構成原子と
する原料ガスとを所望の混合比で混合して使用するか、
又は、シリコン原子(Si)を構成原子とする原料ガスと、
窒素原子(N)及ば水素原子(H)を構成原子とする原料ガス
とを、これも又所望の混合比で混合するかして使用する
ことができる。
又、別には、シリコン原子(Si)と水素原子(H)とを構成
原子とする原料ガスに窒素原子(N)を構成原子とする原
料ガスを混合して使用してもよい。
窒素原子を含有する層または層領域を形成する際に使用
する窒素原子(N)導入用の原料ガスとして有効に使用さ
れる出発物質は、Nを構成原子とするか或いはNとHと
を構成原子とする例えば窒素(N2)、アンモニア(NH3)、
ヒドラジン(H2NNH2)、アジ化水素(HN3)、アジ化アンモ
ニウム(NH4N3)等のガス状の又はガス化し得る窒素、窒
化物及びアジ化物等の窒素化合物を挙げることができ
る。この他に、窒素原子(N)の導入に加えて、ハロゲン
原子(X)の導入も行えるという点から、三弗化窒素(F
3N)、四弗化窒素(F4N2)等のハロゲン化窒素化合物を挙
げることができる。
スパツタリング法によつて、窒素原子を含有する層また
は層領域を形成するには、単結晶又は多結晶のSiウエー
ハー又はSi3N4ウエーハー、又はSiとSi3N4が混合されて
含有されているウエーハーをターゲツトとして、これ等
を種種のガス雰囲気中でスパツタリングすることによつ
て行えばよい。
例えば、Siウエーハーをターゲツトとして使用すれば、
窒素原子と必要に応じて水素原子又は/及びハロゲン原
子を導入する為の原料ガスを、必要に応じて稀釈ガスで
稀釈して、スパツター用の堆積室中に導入し、これ等の
ガスのガスプラズマを形成して前記Siウエーハーをスパ
ツタリングすればよい。
又、別には、SiとSi3N4とは別々のターゲツトとして、
又はSiとSi3N4の混合した一枚のターゲツトを使用する
ことによつて、スパツター用のガスとしての稀釈ガスの
雰囲気中で又は少なくとも水素原子(H)又は/及びハロ
ゲン原子(X)を構成原子として含有するガス雰囲気中で
スパツタリングすることによつて形成できる。窒素原子
導入用の原料ガスとしては、先述したグロー放電の例で
示した原料ガスの中の窒素原子導入用の原料ガスが、ス
パツタリングの場合にも有効なガスとして使用できる。
また、例えば炭素原子を含有する層又は層領域をグロー
放電法により形成するには、シリコン原子(Si)を構成原
子とする原料ガスと、炭素原子(C)を構成原子とする原
料ガスと、必要に応じて水素原子(H)又は/及びハロゲ
ン原子(X)を構成原子とする原料ガスとを所望の混合比
で混合して使用するか、又はシリコン原子(Si)を構成原
子とする原料ガスと、炭素原子(C)及び水素原子(H)を構
成原子とする原料ガスとを、これも又所望の混合比で混
合するか、或いはシリコン原子(Si)を構成原子とする原
料ガスと、シリコン原子(Si)、炭素原子(C)及び水素原
子(H)を構成原子とする原料ガスを混合するか、更にま
た、シリコン原子(Si)と水素原子(H)を構成原子とする
原料ガスと炭素原子(C)を構成原子とする原料ガスを混
合して使用する。
スパツタリング法によつてa-SiC(H,X)で構成される層ま
たは層領域を形成するには、単結晶又は多結晶のSiウエ
ーハー又はC(グラフアイト)ウエーハー、又はSiとC
が混合されて含有されているウエーハーをターゲツトと
して、これ等を所望のガス雰囲気中でスパツタリングす
ることによつて行う。
例えばSiをウエーハーをターゲツトとして使用する場合
には、炭素原子、および水素原子又は/及びハロゲン原
子を導入するための原料ガスを、必要に応じてAr、He等
の希釈ガスで稀釈して、スパツタリング用の堆積室内に
導入し、これ等のガスのガスプラズマを形成してSiウエ
ーハーをスパツタリングすればよい。
又、SiとCとは別々のターゲツトとするか、あるいはSi
とCの混合した1枚のターゲツトとして使用する場合に
は、スパツタリング用のガスとして水素原子又は.及び
ハロゲン原子導入用の原料ガスを、必要に応じて稀釈ガ
スで稀釈して、スパツタリング用の堆積室内に導入し、
ガスプラズマを形成してスパツタリングすればよい。該
スパツタリング法に用いる各原子の導入用の原料ガスと
しては、前述のグロー放電法に用いる原料ガスがそのま
ま使用できる。
このような原料ガスとして有効に使用されるのは、Siと
Hとを構成原子とするSiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のシ
ラン(Silane)類等の水素化硅素ガス、CとHとを構成原
子とする、例えば炭素数1〜4の飽和炭化水素、炭素数
2〜4のエチレン系炭化水素、炭素数2〜3のアセチレ
ン系炭化水素等が挙げられる。
具体的には、飽和炭化水素としては、メタン(CH4)、エ
タン(C2H6)、プロパン(C3H8)、n−ブタン(n-C4H10)、
ペンタン(C5H12)、エチレン系炭化水素としては、エチ
レン(C2H4)、プロピレン(C3H6)、ブテン−1(C4H8)、ブ
テン−2(C4H8)、イソブチレン(C4H8)、ペンテン(C
5H10)、アセチレン系炭化水素としては、アセチレン(C2
H2)、メチルアセチレン(C3H4)、ブチン(C4H6)等が挙げ
られる。
SiとCとHとを構成原子とする原料ガスとしては、Si(C
H3)4、Si(C2H5)4等のケイ化アルキルを挙げることができ
る。これ等の原料ガスの他、H導入用の原料ガスとして
は勿論H2も使用できる。
グロー放電法、スパツタリング法、あるいはイオンプレ
ーテイング法により本発明の感光層および表面層を形成
する場合、a-Si(H,X)に導入する第III族原子又は第V族
原子あるいは原子(O,C,N)の含有量は、堆積室中に流入
される出発物質のガス流量、ガス流量比を制御すること
により行なわれる。
また、光受容層形成時の支持体温度、堆積室内のガス
圧、放電パワー等の条件は、所望の特性を有する光受容
部材を得るためには重要な要因であり、形成する層の機
能に考慮をはらつて適宜選択されるものである。さら
に、これらの層形成条件は、光受容層に含有せしめる上
記の各原子の種類及び量によつても異なることもあるこ
とから、含有せしめる原子の種類あるいはその量等にも
考慮をはらつて決定する必要もある。
具体的には、支持体温度は、通常50〜350℃とするが、
特に好ましくは50〜250℃とする。堆積室内のガス圧
は、通常0.02〜1Torrとするが、特に好ましくは0.5〜
0.5Torrとする。また、放電パワーは0.005〜50W/cm2
するのが通常であるが、より好ましくは0.01〜30W/c
m2、特に好ましくは0.01〜20W/cm2とする。
しかし、これらの、層形成を行うについての支持体温
度、放電パワー、堆積室内のガス圧の具体的条件は、通
常には個々に独立しては容易には決め難いものである。
したがつて、所望の特性の非晶質材料層を形成すべく、
相互的且つ有機的関連性に基づいて、層形成の至適条件
を決めるのが望ましい。
ところで、本発明の光受容層に含有せしめる酸素原子、
炭素原子、窒素原子、第III族原子又は第V族原子、あ
るいは水素原子又は/及びハロゲン原子の分布状態を均
一とするためには、光受容層を形成するに際して、前記
の諸条件を一定に保つことが必要である。
また、本発明において、光受容層の形成の際に、該層中
に含有せしめる酸素原子、炭素原子、窒素原子、あるい
は第III族原子又は第V族原子の分布濃度を層厚方向に
変化させて所望の層厚方向の分布状態を有する光受容層
を形成するには、グロー放電法を用いる場合であれば、
酸素原子、炭素原子、窒素原子あるいは第III族原子又
は第V族原子導入用の出発物質のガスの堆積室内に導入
する際のガス流量を、所望の変化率に従つて適宜変化さ
せ、その他の条件を一定に保ちつつ形成する。そして、
ガス流量を変化させるには、具体的には、例えば手動あ
るいは外部駆動モータ等の通常用いられている何らかの
方法により、ガス流路系の途中に設けられた所定のニー
ドルバルブの開口を漸次変化させる操作を行えばよい。
このとき、流量の変化率は線型である必要はなく、例え
ばマイコン等を用いて、あらかじめ設計された変化率曲
線に従つて流量を制御し、所望の含有率曲線を得ること
もできる。
また、光受容層をスパツタリング法を用いて形成する場
合、酸素原子、炭素原子、窒素原子あるいは第III族原
子又は第V族原子の層厚方向の分布濃度を層厚方向で変
化させて所望の層厚方向の分布状態を形成するには、グ
ロー放電法を用いた場合と同様に、酸素原子、炭素原
子、窒素原子あるいは第III族原子又は第V族原子導入
用の出発物質をガス状態で使用し、該ガスを堆積室内へ
導入する際のガス流量を所望の変化率に従つて変化させ
る。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例1乃至10に従つて、より詳細に説
明するが、本発明はこれ等によつて限定されるものでは
ない。
各実施例においては、光受容層をグロー放電法を用いて
形成した。第19図はグロー放電法による本発明の光受容
部材の製造装置である。
図中の1902、1903、1904、1905、1906のガスボンベには、本
発明の夫々の層を形成するための原料ガスが密封されて
おり、その一例として、たとえば、1902はSiH4ガス(純
度99.999%)ボンベ、1903はH2で稀釈されたB2H6ガス
(純度99.999%、以下B2H6/H2と略す。)ボンベ、1904
はCH4ガス(純度99.999%)ボンベ、1905はNH3ガス(純
度99.999%)ボンベ、1906はH2ガス(純度99.999%)ボ
ンベである。
これらのガスを反応室1901に流入させるにはガスボンベ
1902〜1906のバルブ1922〜1926、リークバルブ1935が閉
じられていることを確認し又、流入バルブ1912〜1916、
流出バルブ1917〜1921、補助バルブ1932、1933が開かれ
ていること確認して、先ずメインバルブ1934を開いて反
応室1901、ガス配管内を排気する。次に真空計1936の読
みが約5×10-6torrになつた時点で、補助バルブ1932、1
933、流出バルブ1917〜1921を閉じる。
基体シリンダー1937上に光受容層を形成する場合の一例
をあげる。ガスボンベ1902よりSiH4ガス、ガスボンベ19
03よりB2H6/H2ガスの夫々をバルブ1922、1923を開いて出
口圧ゲージ1927、1928の圧を1kg/cm2に調整し、流入バ
ルブ1912、1913を徐々に開けて、マスフロコントローラ1
907、1908内に流入させる。引き続いて流出バルブ1917、1
918、補助バルブ1932を徐々に開いてガスを反応室1901
内に流入させる。このときのSi4ガス流量、B2H6/H2ガス
流量の比が所望の値になるように流出バルブ1917、1918
を調整し、又、反応室1901内の圧力が所望の値になるよ
うに真空計1936の読みを見ながらメインバルブ1934の開
口を調整する。そして基体シリンダー1937の温度が加熱
ヒーター1938により50〜400℃の範囲の温度に設定され
ていることを確認された後、電源1940を所望の電力に設
定して反応室1901内にグロー放電を生起せしめるととも
に、マイクロコンピユーター(図示せず)を用いて、あ
らかじめ設計された変化率線に従つて、B2H6/H2ガス流
量とSiH4ガス流量とを制御しながら、基体シリンダー19
37上に先ず、硼素原子を含有するa-Si(H,X)で構成され
た感光層を形成する。
感光層の上に表面層を形成するには、上記の操作に引き
続き、例えばSiH4ガスとCH4ガスの夫々を、必要に応じ
てHe、Ar、H2等の希釈ガスで希釈し、所望のガス流量で反
応室1901内に流入し、マイクロコンピユーター(図示せ
ず)を用いて、あらかじめ設計された変化率線に従つ
て、SiH4ガスとCH4ガスのガス流量を制御しながら、炭
素原子を含有するa-Si(H,X)で構成された表面層を形成
する。
感光層および表面層を形成する際、原料ガスの流量をマ
イクロコンピユーター等を用いて制御するが、この際、
各原子導入用の原料ガスとともに希釈ガスを用いること
により、反応室1901内のガス圧を安定させ、安定した成
膜条件を確保することができる。
また、夫々の層を形成する際に必要なガスの流出バルブ
以外の流出バルブは全て閉じることは言うまでもなく、
又夫々の層を形成する際、前層の形成に使用したガスが
反応室1901内、流出バルブ1917〜1921から反応室1901内
に至るガス配管内に残留することを避けるために、流出
バルブ1917〜1921を閉じ補助バルブ1932、1933を開いて
メインバルブ1934を全開して系内を一旦高真空に排気す
る操作を必要に応じて行なう。
試験例1 径0.6mmのSUSステンレス製剛体球に化学的処理を施して
表面を食刻して凹凸を形成せしめた。使用する処理剤と
しては、塩酸、フツ酸、硫酸、クロム酸等の酸、苛性ソ
ーダ等のアルカリを挙げることができる。本試験例にお
いては、濃塩酸1に対して純水1〜4の容量比で混合し
た塩酸溶液を用い、剛体球の浸漬時間、酸濃度等を変化
させ、凹凸の形状を適宜調整した。
試験例2 試験例1の方法によつて処理された剛体球(表面凹凸の
高さγmax=5μm)を用い、第6(A)、(B)図に示した装
置を用いて、アルミニウム合金製シリンダー(径60mm、
長さ298mm)の表面を処理し、凹凸を形成させた。
真球の径R′、落下高さhと痕跡窪みの曲率半径R、幅
rとの関係を調べたところ、痕跡窪みの曲率半径Rと幅
rとは、真球の径R′と落下高さh等の条件により決め
られることが確認された。また、痕跡窪みのピツチ(痕
跡窪みの密度、また凹凸のピツチ)は、シリンダーの回
転速度、回転数乃至は剛体真球の落下量等を制御して所
望のピツチに調整することができることが確認された。
更に、RおよびDの大きさについて検討した結果、R
が、0.1mm未満であると、剛体球を小さく軽くして落下
高さを確保しなければならず、痕跡窪みの形成をコント
ロールしにくくなるため好ましくないこと、Rが2.0mm
を超えると、剛体球を大きく重くして、落下高さを調節
するため、例えばDを比較的小さくしたい場合に落下高
さを極端に低くする必要があるなど、痕跡窪みの形成を
コントロールしにくくなるため好ましくないこと、更
に、Dが0.02mm未満であると剛体球を小さく軽くして落
下高さを確保しなければならず、痕跡窪みの形成をコン
トロールしにくくなるため好ましくないことが、夫々確
認された。
更に、形成された痕跡窪みを試べたところ、痕跡窪み内
には、剛体球の表面凹凸形状に応じた微小な凹凸が形成
されていることが確認された。
実施例1 試験例2と同様にアルミニウム合金製シリンダーの表面
を処理し、第1A表上欄に示すD及びD/Rを有するシリン
ダー状A支持体(シリンダーNO.101〜106)を得た。
次に、該A支持体(試料NO.101〜106)上に、以下の
第1B表に示す条件で、第19図に示した製造装置により光
受容層を形成した。この際、表面層形成時におけるCH4
ガス、H2ガス、SiF4ガスのガス流量は第21図に示す流量
変化線に従つて、マイクロコンピユーター制御により、
自動的に調整した。
さらに、これらの光受容部材について、第20図に示す画
像露光装置を用い、波長780nm、スポツト径80μmのレ
ーザーを照射して画像露光を行ない、現像、転写を行な
つて画像を得た。
得られた画像は、いずれも干渉縞模様は全く観察され
ず、そして極めて良質のものであつた。
なお、第20(A)図は露光装置の全体を模式的に示す平面
略図であり、第20(B)図は露光装置の全体を模式的に示
す側面略図である。図中、2001は光受容部材、2002は半
導体レーザー、2003はfθレンズ、2004はポリゴンミラ
ーを示している。
次に、比較として、従来のダイヤモンドバイトにより表
面処理されたアルミニウム合金製シリンダー(NO.107)
(径60mm、長さ298mm、凹凸ピツチ100μm、凹凸の深さ
3μm)を用いて、前述と同様にして光受容部材を作製
した。得られた光受容部材を電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、支持体表面と光受容層の層界面及び光受容層の表面
とは平行をなしていた。この光受容部材を用いて、前述
と同様にして画像形成をおこない、得られた画像につい
て前述と同様の評価を行なつた。その結果は、第1A表下
欄に示すとおりであつた。
実施例2 第2B表に示す層形成条件に従つて光受容層を形成した以
外はすべて実施例1と同様にして、A支持体(シリン
ダーNO.101〜107)上に光受容層を形成した。なお、感
光層中に含有せしめる硼素原子は、B2H6/SiF4≒100ppm
であつて、該層全層について約200ppmドーピングされて
いるようになるべく導入した。また表面層形成時におけ
るNH3ガス、SiF4ガスおよびH2ガスのガス流量は第22図
に示す流量変化線に従つて、マイクロコンピユーター制
御により、自動的に調整した。
得られた光受容部材について、実施例1と同様にして画
像を形成したところ、得られた画像における干渉縞の発
生状況は、第2A表下欄に示すとおりであつた。
実施例3 第3A表上欄に示す表面凹凸の高さ(γmax)の剛体球を
用いた以外はすべて実施例1と同様にして、球状痕跡窪
み(D=450±50(μm)、 を有するA支持体(シリンダーNO.301〜306)を得
た。
次に該A支持体(シリンダーNO.301〜306)上に、以
下の第3B表に示す条件で、第19図に示した製造装置を用
いて光受容層を形成した。なお、感光層形成時における
B2H6/H2ガス、H2ガス、および表面層形成時におけるNO
ガス、SiF4ガス、H2ガスのガス流量は、各々第23図およ
び第24図に示す流量変化線に従つて、マイクロコンピユ
ーター制御により自動的に調整した。また、感光層中に
含有せしめる硼素原子については、実施例2と同様の条
件で導入した。
得られた光受容部材について、実施例1と同様にして画
像形成を行なつたところ、得られた画像における干渉縞
の発生状況は、第3A表下欄に示すとおりであつた。
実施例4 第4B表に示す層形成条件に従つて光受容層を形成した以
外は、すべて実施例3と同様にして、A支持体(シリ
ンダーNO.301〜306)上に光受容層を形成した。なお、
感光層形成時におけるB2H6/H2ガスおよびH2ガスのガス
流量、および表面層形成時におけるNH3ガス、SiF4
ス、およびH2ガスのガス流量は、各々第25図および第26
図に示す流量変化線に従つて、マイクロコンピユーター
制御により、自動的に調整した。また、感光層に含有せ
しめる硼素原子は、実施例2と同様の条件で導入した。
得られた光受容部材について実施例1と同様にして画像
を形成したところ、得られた画像における干渉縞の発生
状況は、第4A表下欄に示すとおりであつた。
実施例5〜10 実施例1のA支持体(シリンダーNO.103〜106)上
に、第5〜10表に示す層形成条件に従つて光受容層を形
成した以外はすべて実施例1と同様にして光受容部材を
作製した。なお、各実施例において、感光層形成時およ
び表面層形成時における使用ガスのガス流量の変化は各
々、第11表に記載した流量変化図に示す流量変化線に従
つて、マイクロコンピユーター制御により、自動的に調
整した。また感光層中に含有せしめる硼素原子は実施例
2と同じ条件で導入した。
得られた光受容部材について、実施例1と同様にして画
像形成をおこなつた。
得られた画像は、いずれも干渉縞の発生が観察されず、
そして極めて良質なものであつた。
〔発明の効果の概略〕 本発明の光受容部材は前記のごとき層構成としたことに
より、前記したアモルフアスシリコンで構成された光受
容層を有する光受容部材の諸問題の総てを解決でき、特
に、可干渉性の単色光であるレーザー光を光源として用
いた場合にも、干渉現象による形成画像における干渉縞
模様の現出を顕著に防止し、きわめて良質な可視画像を
形成することができる。
また、本発明の光受容部材は、全可視光域に於いて光感
度が高く、また、特に長波長側の光感度特性に優れてい
るため殊に半導体レーザーとのマツチングに優れ、且つ
光応答が速く、さらに極めて優れた電気的、光学的、光
導電的特性、電気的耐圧性及び使用環境特性を示す。
殊に、電子写真用光受容部材として適用させた場合に
は、画像形成への残留電位の影響が全くなく、その電気
的特性が安定しており高感度で、高SN比を有するもので
あつて、耐光疲労、繰返し使用特性に長け、濃度が高
く、ハーフトーンが鮮明に出て、且つ解像度の高い高品
質の画像を安定して繰返し得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の光受容部材の1例を模式的に示した図
であり、第2及び3図は、本発明の光受容部材における
干渉縞の発生の防止の原理を説明するための部分拡大図
であり、第2図は、支持体表面に球状痕跡窪みによる凹
凸が形成された光受容部材において、干渉縞の発生が防
止しうることを示す図、第3図は、従来の表面を規則的
に荒した支持体上に光受容層を堆積させた光受容部材に
おいて、干渉縞が発生することを示す図である。第4及
び5図は、本発明の光受容部材の支持体表面の凹凸形状
及び該凹凸形状を作製する方法を説明するための模式図
である。第6図は、本発明の光受容部材の支持体に設け
られる凹凸形状を形成するのに好適な装置の一構成例を
模式的に示す図であつて、第6(A)図は正面図、第6(B)
図は縦断面図である。第7〜15図は、本発明の感光層に
おける酸素原子、炭素原子および窒素原子の中から選ば
れる少なくとも一種、および第III族原子又は第V族原
子の層厚方向の分布状態を表わす図、第16〜18図は、本
発明の表面層における酸素原子、炭素原子および窒素原
子の中から選ばれる少なくとも一種の層厚方向の分布状
態を表わす図であり、各図において、縦軸は光受容層の
層厚を示し、横軸は各原子の分布濃度を表わしている。
第19図は、本発明の光受容部材の光受容層を製造するた
めの装置の一例で、グロー放電法による製造装置の模式
的説明図である。第20図はレーザー光による画像露光装
置を説明する図である。第21乃至34図は、本発明の光受
容層形成におけるガス流量の変化状態を示す図であり、
縦軸は、横軸はガス流量を示している。 第1乃至3図について、 100……光受容部材、101……支持体、102、201、301……
感光層、103、202、302……表面層、104、203、303……自由
表面、204、304……感光層と表面層との界面
フロントページの続き (72)発明者 小池 淳 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−31144(JP,A) 特開 昭59−58436(JP,A) 特開 昭58−137841(JP,A) 実開 昭57−23544(JP,U) 米国特許4432220(US,A) 米国特許3269066(US,A)

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】支持体上に、シリコン原子を母体とする非
    晶質材料で構成された感光層と、シリコン原子と、酸素
    原子、炭素原子及び窒素原子の中から選ばれる少なくと
    も一種とを含有する非晶質材料で構成された表面層とを
    有する光受容層を備えた光受容部材であって、前記感光
    層と前記表面層との界面において光学的バンドギャップ
    が整合しており、前記支持体の表面に、窪みの幅Dが50
    0μm以下で窪みの曲率半径Rと幅Dとが0.035≦D/Rと
    された複数の球状痕跡窪みによる凹凸を有し、かつ前記
    球状痕跡窪み内に更に0.5〜20μmの微小凹凸が形成さ
    れていることを特徴とする光受容部材。
  2. 【請求項2】前記感光層が、酸素原子、炭素原子及び窒
    素原子の中から選ばれる少なくとも一種を含有している
    特許請求の範囲第1項に記載の光受容部材。
  3. 【請求項3】前記感光層が、周期律表第III族または第
    V族に属する原子を含有している特許請求の範囲第1項
    に記載の光受容部材。
  4. 【請求項4】前記感光層が、多層構成である特許請求の
    範囲第1項に記載の光受容部材。
  5. 【請求項5】前記感光層が、周期律表第III族または第
    V族に属する原子を含有する電荷注入阻止層を構成層の
    1つとして有する特許請求の範囲第4項に記載の光受容
    部材。
  6. 【請求項6】前記感光層が、構成層の1つとして障壁層
    を有する特許請求の範囲第4項に記載の光受容部材。
  7. 【請求項7】前記球状痕跡窪みの凹凸が、同一の曲率半
    径を有する球状痕跡窪みによる凹凸である特許請求の範
    囲第1項に記載の光受容部材。
  8. 【請求項8】前記球状痕跡窪みの凹凸が、同一の曲率半
    径及び幅の窪みによる凹凸である特許請求の範囲第1項
    に記載の光受容部材。
  9. 【請求項9】前記球状痕跡窪みが、前記支持体の表面に
    複数の剛体球を自然落下させて得られた前記剛体球の痕
    跡窪みによる凹凸である特許請求の範囲第1項に記載の
    光受容部材。
  10. 【請求項10】前記球状痕跡窪みは、ほぼ同一径の剛体
    球をほぼ同一の高さから落下させて得られた前記剛体球
    の痕跡窪みによる凹凸である特許請求の範囲第9項に記
    載の光受容部材。
  11. 【請求項11】前記球状痕跡窪みの前記曲率半径Rと前
    記幅Dとが、次式: 0.035≦D/R≦0.5 を満足する値である特許請求の範囲第1項に記載の光受
    容部材。
  12. 【請求項12】前記支持体が、金属体である特許請求の
    範囲第1項に記載の光受容部材。
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