JPH0665693A - 高強度低合金焼結鋼及びその製造方法 - Google Patents

高強度低合金焼結鋼及びその製造方法

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JPH0665693A
JPH0665693A JP24429192A JP24429192A JPH0665693A JP H0665693 A JPH0665693 A JP H0665693A JP 24429192 A JP24429192 A JP 24429192A JP 24429192 A JP24429192 A JP 24429192A JP H0665693 A JPH0665693 A JP H0665693A
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JP
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powder
sintered steel
iron
alloy sintered
alloy
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JP24429192A
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English (en)
Inventor
Yoshiaki Ito
嘉朗 伊藤
Kozo Ito
耕三 伊藤
Yoshinobu Takeda
義信 武田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高密度化を図らなくても空孔を残したまま延
性を改善し、従来よりも更に強度及び靭性を向上させた
低合金焼結鋼、及びその製造方法を提供する。 【構成】 炭素量が0.55〜0.85重量%であり、残
部が鉄又は鉄を主成分とする低合金焼結鋼であって、そ
のマトリックスが焼戻しマルテンサイトで且つその旧γ
結晶粒の粒径が10μm以下であり、理論密度比が85
%以上96%未満である高強度低合金焼結鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粉末冶金法によって製
造される低合金焼結鋼、特に高密度化なしに優れた強度
並びに靭性を有する低合金焼結鋼、及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金法によって製造される低合金焼
結鋼からなる焼結機械部品は経済性に優れるという点か
ら、例えば自動車部品、事務機器、家電製品、農機具等
に広く利用されており、その需要は年々増加している。
この需要の増加に伴って、低合金焼結鋼に要求される特
性も次第に厳しくなってきている。
【0003】この要求を満たすため各種の研究が行わ
れ、例えば低合金焼結鋼の組成では古くからのFe−C
u−C系ばかりでなく、Fe−Ni−Mo−C系、Fe
−Ni−Cu−Mo−C系、Fe−Cr−Mn−Mo−
C系等が開発されている。又、原料粉末の点では、従来
の還元粉末から高密度が得やすいアトマイズ粉末が主流
となりつつあり、合金元素の添加方法も従来の混合粉末
から均一性と高密度化の両立を図った合金粉末、部分拡
散合金粉末等が開発されている。更に、焼結プロセスと
しては、変成ガスのメッシュベルト炉から、より高温で
の焼結が可能な窒素雰囲気のプッシャー炉や真空炉が用
いられるようになり、合金元素の選択範囲の拡大、高密
度化、精密な炭素量のコントロール等が可能になった。
【0004】これらの技術開発により低合金焼結鋼の強
度は大幅に改善され、その引張強度は一般の機械構造用
鋼に匹敵する水準に達しつつある。しかしながら、空孔
に対する依存性が高い特性、即ち延性、衝撃強度、疲労
強度等が不十分であるため、高い信頼性が要求される機
械部品には未だ用いられていない現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に、機械構造用の
低合金焼結鋼の引張強度は炭素量0.5重量%程度で最
大となり、それ以上炭素を添加しても引張強度は向上し
ない。即ち、通常の溶解鍛造法で作製された鋼では炭素
量0.8重量%程度まで強度の向上が得られるのに対し
て、焼結鋼では0.5重量%程度で最大値となり、それ
以上の炭素量で強度は低下する。このような現象が起こ
るのは、焼結鋼の内部に数%の空孔があるため溶解鍛造
材と比べて延性が少なく、材料が本来持っている強度に
達する前に破壊する、いわゆる低応力破壊が起こるため
である。
【0006】従って、低合金焼結鋼の延性を向上させる
ことができるならば、更に強度及び靭性を改善向上させ
ることができると考えられる。焼結鋼において延性を改
良する最も有効な方法は空孔を減らし、密度を向上させ
ることであり、そのための方法として高温焼結、2回プ
レス2回焼結(ドッペル法)、焼結鍛造法、液相焼結
法、疑HIP法等が提案され、一部実用化されている。
しかし、これらの方法では、良好な寸法精度、形状の自
由度、コストメリット等の焼結機械部品が本来持ってい
る優れた特長を損なう場合が多かった。
【0007】本発明はかかる従来の事情に鑑み、上述の
ような高密度化を図らずに、空孔を残したまま延性を改
善し、従来よりも更に強度及び靭性を向上させた低合金
焼結鋼、及びその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明においては、炭素量が0.55〜0.85重量
%であり、残部が鉄又は鉄を主成分とする低合金焼結鋼
であって、そのマトリックスが焼戻しマルテンサイトで
且つその旧γ結晶粒の粒径が10μm以下であり、理論
密度比が85%以上96%未満であることを特徴とする
高強度低合金焼結鋼を提供する。
【0009】本発明における高強度低合金焼結鋼の製造
方法は、鉄又は鉄を主成分とする鉄合金粉末を不活性ガ
ス雰囲気中にて乾式ミルで処理し、処理粉末に炭素量が
合計で0.55〜0.85重量%となるように黒鉛粉末を
混合した後、冷間成形し、成形体を1120〜1300
℃で焼結し、得られた焼結体をオーステナイト域まで加
熱し焼入れした後、焼戻しすることを特徴とする。
【0010】ここで、低合金焼結鋼とは、従来から知ら
れている鉄と炭素からなる炭素鋼及び鉄と炭素と他の合
金元素からなる低合金鋼であって、原料粉末の焼結によ
り得られたものを意味する。
【0011】
【作用】本発明者らは、マトリックスを通常よりも微細
なマルテンサイトにすることにより、空孔を残したまま
でも、低合金焼結鋼の延性が改善されることを見いだし
た。即ち、マトリックスである微細マルテンサイトの旧
γ結晶粒の粒径を10μm以下とすることで、空孔を残
した高密度化されていない低合金焼結鋼であっても、マ
トリックスの靭性が高くなり、空孔による切り欠き感度
を下げ、延性を向上させることができる。
【0012】尚、旧γ結晶粒子は、本発明の低合金焼結
鋼中の結晶粒で且つ焼入れ加熱時のオーステナイト域に
おいてγ結晶粒であったものを意味し、一般に焼入れ鋼
の結晶粒径の比較はこの旧γ結晶の粒径により行われ
る。
【0013】このような微細マルテンサイトのマトリッ
クスを得るためには、焼入れ加熱時のオーステナイトの
結晶を微細にする必要がある。その方法としては、原料
粉末の鉄又は鉄を主成分とする鉄合金粉末を乾式ミルで
長時間処理して多量の転位を導入し、それを核として再
加熱によって微細な再結晶粒を得る方法が有効であるこ
とも判った。
【0014】即ち、本発明方法では、前記鉄又は鉄合金
粉末をアルゴン等の不活性ガス雰囲気中において乾式ミ
ルで1時間以上処理し、処理粉末に黒鉛粉末を混合した
後、冷間成形した成形体を焼結し、更に得られた焼結体
をオーステナイト域まで加熱し焼入れした後、焼戻しす
る。乾式ミルでの処理時間が1時間未満では転位の導入
が少なく、焼入れ加熱時にオーステナイトの結晶が微細
にならないため、焼入れ後のマルテンサイトの旧γ結晶
粒の粒径を10μm以下に微細化することが難しい。
【0015】乾式ミルでの処理により多量の転位が導入
された処理粉末は、加熱によって微細な再結晶粒を得る
ことができるが、焼結工程での1000℃を越える高温
にさらされると結晶粒の粗大化が進行しやすい。これを
防ぐためには、微細な分散粒子を用いて粒界の移動をピ
ン止めする方法が有効である。かかる分散粒子として
は、焼結温度域でマトリックスに固溶しないか又は固溶
度の低い酸化物、窒化物又は炭化物、例えばアルミナや
窒化アルミニウム等が有効である。又、かかる分散粒子
の平均粒径は0.5μm以下、望ましくは0.1μm以下
であり、その添加量は処理粉末に対して0.5〜5体積
%程度が適当である。
【0016】かかる分散粒子を鉄又は鉄合金粉末に添加
する方法としては、第1に分散粒子と鉄又は鉄合金粉末
を予備混合した後、乾式ミルで処理する際に同時にメカ
ニカルアロイングにより粒子を鉄又は鉄合金粉末中に均
一に分散させる方法、第2に鉄又は鉄合金に上記酸化
物、窒化物又は炭化物を形成する元素を加えて溶解した
後、粉末とする方法などがある。
【0017】又、乾式ミルで処理した処理粉末は硬さが
上昇し、そのままでは冷間成形が困難であるから、焼鈍
により軟化させて冷間成形性を増加させることが好まし
い。焼鈍は真空中又は非酸化性雰囲気中にて600〜1
100℃の温度で実施する。焼鈍温度が600℃未満で
は軟化が不十分で、冷間成形性を改善することができ
ず、又1100℃を越えると粉末間に焼結が進行し、再
破壊が困難となるため、逆に冷間成形性が劣化する。
【0018】かくして得られた乾式ミルでの処理粉末に
は、黒鉛粉末を混合して炭素量を調整する。炭素は鋼の
特性を支配する重要な合金元素であり、炭素量が増加す
るに従って、強度及び硬さは増加するが延性は低下す
る。従来の低合金焼結鋼では炭素量0.5重量%程度を
越えると強度が急減したが、旧γ結晶粒の粒径が10μ
m以下になると更に高炭素領域でも良好な延性が確保で
きる。従って本発明における炭素量は、従来の低合金焼
結鋼よりも高強度が得られる0.55重量%以上とする
が、0.85重量%を越えるとセメンタイトネットワー
クが形成され、延性が著しく劣化するので、0.55〜
0.85重量%の範囲とする。
【0019】乾式ミルでの処理粉末に黒鉛粉末を混合し
た後、一軸方向から圧力を加える金型プレスやCIP
(冷間等方静水圧成形)等の方法により冷間成形する。
冷間成形の目的は粉末を押し固めることにより粉末に形
状を付与し、製品ないし製品形状に近い形にすることに
ある。得られた成形体は1120〜1300℃で焼結さ
れ、炭素が均一に拡散されると同時に粉末表面の鉄酸化
物が還元され、粉末粒子間に金属結合が促進され、強度
が付与される。尚、焼結雰囲気は真空中又は還元性雰囲
気が好ましい。
【0020】得られた焼結体は、オーステナイト域まで
加熱し焼入れした後、焼戻しする。この焼入れ加熱の際
に、極めて微細なオーステナイトの結晶粒(γ結晶粒)が
得られるので、これが焼入れによりマルテンサイトに変
わっても10μm以下の粒径に保持されることによっ
て、本発明の低合金焼結鋼はマトリックスの靭性が高く
なり、空孔が残存していても延性が向上し、優れた強度
を達成することが可能となる。
【0021】又、焼結体の機械的性質がその密度と密接
な関係にあることは周知のことであり、本発明も例外で
はない。即ち、本発明の低合金焼結鋼も密度が高いほど
良好な機械的性質が得られ、理論密度比が85%以上で
強度及び靭性が共に急激に改善される。従って密度は高
いほど良いが、高密度化のために特殊な手段を取らない
本発明方法では、密度の上昇には成形圧力の増加又は焼
結温度の上昇が必要であり、おのずと経済的な限界が存
在する。本発明の低合金焼結鋼の密度の上限を理論密度
比の96%に限定したのはこの理由による。
【0022】尚、本発明の低合金焼結鋼の組成は、前記
のごとく公知の炭素鋼や合金鋼の組成であって良い。し
かし、粉末冶金法による本発明ではそのプロセス的制約
から好ましい合金組成が存在する。その一例は、Fe−
Ni−Mo−C系、Fe−Cr−Mo−C系、Fe−C
r−Mn−Mo−C系、Fe−Ni−Cr−Mo−C系
等がある。
【0023】Fe−Ni−Mo−C系やFe−Ni−C
r−Mo−C系では、Niは1重量%以上で焼入れ性を
改善するが、3重量%を越えると粉末の冷間成形が困難
になるばかりでなく、熱処理後の残留γ結晶が増え、む
しろ強度や寸法精度を阻害する。Moは少量の添加によ
り焼入れ性を改善し、又炭素と炭化物を形成して耐摩耗
性及び耐熱性を改善する。しかし、Moが0.1重量%
未満ではその効果がなく、1.0重量%を越えると固溶
硬化して粉末が硬くなり成形性を劣化させる。
【0024】又、Fe−Cr−Mo−C系やFe−Cr
−Mn−Mo−C系では、Crは少量の添加により焼入
れ性を大幅に改善すると共に、焼戻し軟化抵抗を増加さ
せる作用を果す。しかし、Crが0.5重量%未満では
焼入れ性改善の効果がなく、3重量%を越えると固溶硬
化により成形性が低下する。Moの効果は前記の通りで
あるが、Moは0.1重量%未満では効果がなく又0.5
重量%を越えると固溶硬化により成形性を劣化させる。
Mnは焼入れ性を改善すると共に、粉末製造時には脱硫
剤、脱酸剤として作用し、粉末中の硫黄量及び酸素量を
低減させる。しかし、Mnが0.2重量%未満では焼入
れ性が改善されず、1.5重量%を越えると固溶硬化に
より粉末の成形性が低下する。
【0025】尚、前記のごとく結晶の粗大化を防止する
ため粒界の移動をピン止めする分散粒子として、焼結温
度域やオーステナイト域で固溶度の低い炭化物を形成す
る元素を原料の鉄合金粉末に添加することも有効であ
る。この方法によればオーステナイト化時の結晶粒の成
長を抑制できるので、旧γ結晶粒の粒径を一層微細化す
ることが可能である。この種の元素としては、アルミニ
ウム、ニオブ、バナジウム、チタン又はタングステンが
有望であり、その添加量は合計で0.02〜3.0重量%
が好ましい。その理由は、0.02重量%未満では結晶
粒の成長抑制の効果がなく、3.0重量%を越えて添加
してももはや結晶粒は細かくならず、むしろ固溶硬化に
より粉末の成形性が低下するからである。
【0026】本発明の低合金焼結鋼の場合、結晶粒が非
常に小さいので焼入れ性が劣化しやすい。ところが、ホ
ウ素はオーステナイト粒界に偏析して粒界のエネルギー
を下げることにより、粒界の核生成サイトとしての機能
を低下させ、パーライト変態の進行を遅らせ、それによ
って焼入れ性を向上させる効果がある。その効果を得る
為には、ホウ素を重量分率で10ppm以上添加する必
要があるが、300ppmを越えると粒界の強度が弱く
なり、脆化するので好ましくない。尚、窒素が不純物と
して含まれると、ホウ素と結合してBNとなり、ホウ素
の粒界偏析の効果を削減させる。その場合、少量のAl
又はTiを添加すれば、窒素をAlN又はTiNとして
固定することができ、窒素の影響を無くすことができ
る。
【0027】
【実施例】実施例1 水アトマイズ法により製造されたAISI 4600組
成(Fe−1.8Ni−0.5Mo)を有する市販の鉄合金
粉末を、高エネルギー乾式ミルを用いてAr雰囲気中で
40時間処理した。得られた処理粉末を、窒素雰囲気中
にて800℃で1時間加熱し、焼鈍軟化させた。
【0028】この粉末に、最終組成で炭素量が0.4重
量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8
重量%及び0.9重量%となるように黒鉛粉末を添加混
合した後、成形密度6.9g/cm3となるように金型プ
レスによりそれぞれ冷間成形した。得られた各成形体を
真空中にて1250℃で30分焼結して、密度7.0〜
7.1g/cm3(理論密度比88〜90%)の焼結体を
得た。
【0029】各焼結体を真空中にて850℃で30分間
加熱保持した後、油中に焼入れし、更に200℃で90
分間の焼戻しを行った。このようにして得られた各低合
金焼結鋼の旧γ結晶粒の平均粒径は、いずれも約8μm
であった。又、得られた各低合金焼結鋼について、引張
強度、伸び、衝撃強度を測定し、結果を図1から図3に
示した。
【0030】比較のため、上記の乾式ミルによる処理を
行わず、代わりに通常の混合処理を行った以外は、上記
と同様にして炭素量の異なる低合金焼結鋼を製造した。
これら比較例の低合金焼結鋼の旧γ結晶粒の粒径は平均
で約24μmであった。又、これらの低合金焼結鋼につ
いても引張強度、伸び、衝撃強度を測定し、結果を図1
から図3に併せて示した。
【0031】図1から図3の結果から、乾式ミルでの処
理により旧γ結晶粒の粒径を微細化させることによっ
て、密度が同じであっても伸びが大幅に改善され、それ
に伴って引張強度が向上し且つ引張強度のピークが高炭
素側に移行し、靭性も改善されことが判る。
【0032】実施例2 実施例1で用いたAISI 4600組成(Fe−1.8
Ni−0.5Mo)を有する市販の鉄合金粉末に、平均粒
径0.05μmのアルミナ粉末を体積分率で1%添加
し、その後実施例1と同一条件で、高エネルギー乾式ミ
ルでの処理、焼鈍軟化、黒鉛粉末の混合、成形、焼結、
焼入れと焼戻しを行い、低合金焼結鋼を製造した。
【0033】得られた各低合金焼結鋼の旧γ結晶粒の平
均粒径は4μmと、実施例1よりも更に微細化してい
た。又、各低合金焼結鋼の引張強度、伸び、衝撃強度を
測定し、その結果を実施例1で得た旧γ結晶粒の粒径8
μmのものと併せて、図4から図6に示した。これらの
結果から、旧γ結晶粒の粒径が微細になるほど延性が改
善され、それに伴って強度のピークは高炭素側に移行
し、靭性も改善されることが判る。
【0034】実施例3 水アトマイズ法により、重量分率で0%、0.03%、
0.3%、3%及び5%のNbを含有し、残りの合金元
素がAISI 4600組成(Fe−1.8Ni−0.5M
o)に相当する合金粉末を作製した。この鉄合金粉末
を、実施例1と同様に高エネルギー乾式ミルで処理し、
焼鈍軟化させた。
【0035】得られた粉末を6ton/cm2の圧力で
成形し、粉末中のNb量と成形体の密度の関係を求め、
結果を図7に示した。図7の結果から、Nb量が増すほ
ど成形性が低下し、3重量%を越えると急激に成形性が
低下することが判る。
【0036】次に、上記焼鈍軟化処理した各粉末に、黒
鉛粉末を最終組成で0.6重量%となるように添加混合
し、成形密度が6.9g/cm3となるように冷間成形し
た。得られた各成形体を真空中にて1250℃で30分
焼結し、密度7.0〜7.1g/cm3(理論密度比88
〜90%)の焼結体を得た。各焼結体を850℃で焼入
れし、更に200℃で焼戻しを行った。
【0037】このようにして得られた各低合金焼結鋼の
旧γ結晶粒の粒径を求め、その結果を図8に示した。図
8の結果から、Nbの添加は旧γ結晶粒の微細化に有効
であるが、3重量%を越えてNbを添加しても微細化の
効果はもはや増大しないことが判る。
【0038】実施例4 水アトマイズ法により製造されたAISI 4100組
成(Fe−1Cr−0.2Mo)を有する市販の鉄合金粉
末に、平均粒径0.05μmのアルミナ粉末を体積分率
で1%添加した後、高エネルギー乾式ミルを用いてAr
雰囲気中で40時間処理した。得られた処理粉末を、窒
素雰囲気中にて800℃で1時間加熱し、焼鈍軟化させ
た。
【0039】この粉末に、最終組成で炭素量が0.7重
量%となるように黒鉛粉末を添加混合した後、成形密度
が6.2〜7.0g/cm3の範囲の異なる5つの値とな
るように冷間成形した。各成形体を真空中にて1250
℃で30分焼結し、得られた各焼結体を真空中にて85
0℃で30分間加熱保持した後、油中に焼入れし、更に
200℃で90分間の焼戻しを行った。
【0040】このようにして得られた密度の異なる同一
組成の各低合金焼結鋼について、密度と伸び及び引張強
度との関係を測定し、結果を図9に示した。この結果か
ら、密度が高くなるに従って伸び及び引張強度とも増加
することが判る。尚、密度の上昇に伴い引張強度は直線
的に増加するのに対し、伸びは密度6.78g/cm3
近から急激に増加することから、良好な機械特性を得る
ためには上記密度付近以上、即ち理論密度比85%以上
とすることが必要である。
【0041】実施例5 実施例4で作製したアルミナを含有するAISI 41
00組成(Fe−1Cr−0.2Mo)の粉末を、実施例
4と同様に高エネルギー乾式ミルで処理し、焼鈍軟化処
理した。この粉末に、最終組成でホウ素量が30ppm
及び炭素量が0.7重量%となるようにフェロボロン粉
末と黒鉛粉末を混合した。比較のために、フェロボロン
粉末を添加せずに黒鉛粉末のみを混合した粉末も準備し
た。
【0042】これらの粉末を、成形密度が6.9g/c
3となるように冷間成形し、各成形体を真空中にて1
250℃で1時間焼結した。得られた焼結体から直径2
5.4mm(1インチ)×長さ101.6mm(4インチ)の
丸棒を切り出し、その焼入れ性を評価するためジョミニ
ー(Jominy)試験を行った。得られた水冷端からの距離
に対応する硬さ(ロックウエルC硬さ)の変化曲線を図
10に示した。図10の結果から、本発明の低合金焼結
鋼の焼入れ性は、ホウ素の添加により大幅に改善される
ことが判る。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、高密度化を図らず空孔
を残したままであっても、延性を改善することができ、
従来よりも更に優れた強度及び靭性を有する低合金焼結
鋼、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾式ミルでの処理を行った鉄合金粉末と通常の
混合処理のみを行った鉄合金粉末を用いて、それぞれ製
造した低合金焼結鋼(旧γ結晶粒径が8μmと約24μ
m)の炭素量と引張強度の関係を示すグラフである。
【図2】乾式ミルでの処理を行った鉄合金粉末と通常の
混合処理のみを行った鉄合金粉末を用いて、それぞれ製
造した低合金焼結鋼(旧γ結晶粒径が8μmと約24μ
m)の炭素量と伸びの関係を示すグラフである。
【図3】乾式ミルでの処理を行った鉄合金粉末と通常の
混合処理のみを行った鉄合金粉末を用いて、それぞれ製
造した低合金焼結鋼(旧γ結晶粒径が8μmと約24μ
m)の炭素量と衝撃強度の関係を示すグラフである。
【図4】アルミナ粒子の添加の有無により旧γ結晶粒径
を4μmと8μmとした低合金焼結鋼の、炭素量と引張
強度の関係を示すグラフである。
【図5】アルミナ粒子の添加の有無により旧γ結晶粒径
を4μmと8μmとした低合金焼結鋼の、炭素量と伸び
の関係を示すグラフである。
【図6】アルミナ粒子の添加の有無により旧γ結晶粒径
を4μmと8μmとした低合金焼結鋼の、炭素量と衝撃
強度の関係を示すグラフである。
【図7】鉄合金粉末中のNb量と、その粉末を一定圧力
で成形した成形体の密度との関係を示すグラフである。
【図8】低合金焼結鋼中のNb量と、低合金焼結鋼の旧
γ結晶粒径との関係を示すグラフである。
【図9】旧γ結晶粒径が同じ低合金焼結鋼について、そ
の密度と伸び及び引張強度との関係を示すグラフであ
る。
【図10】ホウ素量の異なる低合金焼結鋼について、ジ
ョミニー試験により得られた水冷端からの距離に対応す
る硬さの変化曲線である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素量が0.55〜0.85重量%であ
    り、残部が鉄又は鉄を主成分とする低合金焼結鋼であっ
    て、そのマトリックスが焼戻しマルテンサイトで且つそ
    の旧γ結晶粒の粒径が10μm以下であり、理論密度比
    が85%以上96%未満であることを特徴とする高強度
    低合金焼結鋼。
  2. 【請求項2】 マトリックス中に酸化物、窒化物及び炭
    化物から選ばれた少なくとも1種からなる平均粒径0.
    5μm以下の粒子が均一に分散していることを特徴とす
    る、請求項1に記載の高強度低合金焼結鋼。
  3. 【請求項3】 ホウ素を重量分率で10〜300ppm
    含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の高
    強度低合金焼結鋼。
  4. 【請求項4】 アルミニウム、ニオブ、バナジウム、チ
    タン及びタングステンから選ばれた少なくとも1種を、
    合計で0.02〜3.0重量%含有することを特徴とす
    る、請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度低合金
    焼結鋼。
  5. 【請求項5】 鉄又は鉄を主成分とする鉄合金粉末を不
    活性ガス雰囲気中にて乾式ミルで処理し、処理粉末に炭
    素量が合計で0.55〜0.85重量%となるように黒鉛
    粉末を混合した後、冷間成形し、成形体を1120〜1
    300℃で焼結し、得られた焼結体をオーステナイト域
    まで加熱し焼入れした後、焼戻しすることを特徴とする
    高強度低合金焼結鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 鉄又は鉄を主成分とする鉄合金粉末に、
    焼結温度域でマトリックスに固溶しないか又は固溶度の
    低い酸化物、窒化物及び炭化物から選ばれた少なくとも
    1種からなる平均粒径0.5μm以下の粒子を混合した
    後、これを乾式ミルで処理することを特徴とする、請求
    項5に記載の高強度低合金焼結鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】 乾式ミルでの処理粉末を、真空中又は非
    酸化性雰囲気中にて600〜1100℃で焼鈍軟化させ
    ることを特徴とする、請求項5又は6に記載の高強度低
    合金焼結鋼の製造方法。
  8. 【請求項8】 乾式ミルでの処理粉末に、黒鉛粉末と共
    に、ホウ素量が重量分率で10〜300ppmとなるよ
    うにフェロボロンを混合することを特徴とする、請求項
    5ないし7のいずれかに記載の高強度低合金焼結鋼の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 鉄合金がアルミニウム、ニオブ、バナジ
    ウム、チタン及びタングステンから選ばれた少なくとも
    1種を含有し、これら元素の合計量を高強度低合金焼結
    鋼の0.02〜3.0重量%とすることを特徴とする、請
    求項5ないし8のいずれかに記載の高強度低合金焼結鋼
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012122127A (ja) * 2010-12-10 2012-06-28 Toyota Central R&D Labs Inc 鉄基焼結鋼材およびその製造方法
JP2018111205A (ja) * 2018-04-24 2018-07-19 住友電工ハードメタル株式会社 切削工具用敷板および切削工具
US11065693B2 (en) 2016-08-19 2021-07-20 Sumitomo Electric Hardmetal Corp. Cutting tool shim and cutting tool

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