JPH0664191B2 - 放射性クラッドを化学的に溶解するための汚染除去方法 - Google Patents

放射性クラッドを化学的に溶解するための汚染除去方法

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JPH0664191B2
JPH0664191B2 JP61104335A JP10433586A JPH0664191B2 JP H0664191 B2 JPH0664191 B2 JP H0664191B2 JP 61104335 A JP61104335 A JP 61104335A JP 10433586 A JP10433586 A JP 10433586A JP H0664191 B2 JPH0664191 B2 JP H0664191B2
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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は放射性クラツドの化学的溶解方法に関するもの
で、特にクロムを含有するクラツドの溶解方法である。
原子炉一次冷却系内で発生した腐食により生成した物質
は原子炉運転中に炉心の燃料集合体表面に付着し、また
中性子により放射化される、主たる放射性核種は60Co、
58Co、54Mn等で、これらの一部は懸濁粒子あるいはイオ
ンとして燃料集合体表面から脱離し、炉心外一次系配管
内の表面酸化物上へ付着・析出し、放射性クラツドを形
成する。これが放射線源となり、原子炉の定期検査や修
理等の作業時における作業員の被曝線量(マン・レム)
の増大をまねいている。従つて本発明は、これらの放射
性核種を含む表面酸化物、すなわちクラツドを溶解除去
することにより放射線被曝線量の低減化をはかることに
関するものである。
従来の技術 原子炉一次冷却系で形成されるクラツドは沸騰水型原子
炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)とでその組成は大きく異
なる。
BWRにおける放射性クラツドは、ヘマタイト(α−Fe
2O3)およびマグネタイト(Fe3O4)を中心とする鉄酸化物
が大部分を占め、組成比でみると鉄80〜90%、クロムと
ニツケルで10〜20%である。一方、PWRにおける放射性
クラツドは、Fe3O4の一部の鉄(Fe)がクロム(Cr)とニツ
ケル(Ni)に置換された酸化物、すなわちCrxNiyFe3-x-yO
4(x+y<3)で表わされる化合物から成り、クロム
とニツケルで60〜80%を占める。この為に、BWRクラツ
ドの化学的溶解は、クラツドの主成分である3価の鉄を
2価に還元する溶解方法により行われており、シュウ
酸、クエン酸、ヒドラジン、アスコルビン酸、ギ酸、ホ
ルムアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の有
機酸、還元剤およびキレート化剤を適当に組合せた混合
溶液が使用されている。一方、PWRクラツドは上記の溶
液で溶解除去することは困難である。従つて、クロム含
有量の高いクラツドに対する既存の化学的溶解方法は、
先ずi)クロムのみを3価から6価に酸化して溶解(酸化
前処理工程)、ii)残存している酸化剤を分解するため
の薬品添加、iii)クロム以外の未溶解クラツド組成(主
として3価の鉄)を溶解するための還元剤の添加、等の
いくつかの工程に分けて溶解する方法が一般に適用され
ている。これはi)の酸化前処理工程において、AP(alkal
i-permanganate)法(NaOHとKMnO4の水溶液を溶解液とし
て使用する方法)あるいはNP(nitric-acid permanganat
e)法(NHO3とKMnO4の水溶液を溶解液として使用する方
法)いずれを行うにしても、クラツド中のクロム成分の
みを溶解し、鉄とニツケルをほとんど溶解しないため
に、高い除染係数(DF)を得るには、上記のような多段階
処理を必要としている。そのために除染工程が複雑にな
り、除染廃液量も増えるという欠点を持つている。
本発明の硫酸−セリウム系溶液と類似の硝酸−セリウム
系溶液はウランおよびプルトニウム酸化物の溶解に使用
されており、当然クロムを含有しているクラツドの溶解
への適用が考えられ、本発明者も溶解試験を試みたが、
硫酸−セリウム系溶液より劣ることが明らかになつた。
第1に硝酸溶液中での4価のセリウムは不安定で水と反
応して3価のセリウムに還元される速度が非常に大き
く、クロムに対する酸化溶解能力が低下する。これを解
決するためには、硝酸濃度を数モル/と高くするか、
同一系内で電気化学的にセリウムを3価から4価に酸化
再生する方法が必要となる。第2にセリウムの析出は硫
酸より硝酸溶液中の方で起こりやすい。
発明が解決しようとする問題点 上記の如く、従来行われている放射性クラツドの溶解処
理は、その処理工程が多工程になつて複雑であり、その
処理廃液量が多量であるという問題点があり、また上記
の硝酸−セリウム系溶液を使用する放射性クラツドの従
来の処理方法にあつては、硝酸濃度を1モル/以下に
すると処理過程で溶液中からのセリウムの析出が生ずる
という問題点があつた。
問題点を解決するための手段 本発明はクロムを一部含有するクラツドに対し、硫酸−
セリウム系溶液(セリウムは硫酸セリウムとして溶解し
ている)を溶解液として使用することにより、実質的に
は一段階でクロムのみならず鉄とニツケルをも同時に溶
解し、かつ高DFを得ることのできる新しいクラツド溶解
による汚染除去法である。本発明は40〜90℃という比較
的低温で十分に適用可能であるという特徴を有すると共
に、セリウムの析出防止法を発見したことにより、硫酸
濃度および温度の制約がとりはらわれた。
クラツド溶解の観点からは温度の上昇と共に溶解速度は
増大することから、温度は高いほど好ましい。一方、硫
酸溶液中でのセリウム(Ce4+/Ce3+)の酸化還元電位は1.2
2V(VS Ag/AgC)と高いため、4価のセリウムが水
と反応して3価のセリウムに還元される。すなわちクロ
ムに対する酸化溶解能力が低下する。このセリウムの4
価から3価への還元反応は温度が高くなるほど速くなる
と共に、セリウム酸化物を生成し析出が起こる。この現
象はクラツドの溶解を阻害するため好ましくない。セリ
ウムの析出は主として硫酸濃度と温度により支配され、
硫酸濃度が低下するにつれて、また温度が高くなるにつ
れて析出しやすくなる。硫酸濃度が0.5mol/と高い場
合には90℃でもセリウムの析出は起こらないが、硫酸濃
度を0.1mol/前後に低下すると、80〜90℃で数時間〜
10時間後にセリウムの析出が起こり、クラツドの溶解を
阻害する。セリウムの析出を抑制するためには硫酸濃度
をある程度高くするか、あるいは温度を低くするかで解
決できるが、硫酸濃度を高くすると廃液処理に負荷がか
かり、また低温にすると溶解速度が遅くなり長時間を要
する。
また、本発明ではクロムの溶解がほぼ終了した時点(第
2図のA点)で還元剤を添加して残存している4価のセ
リウムを3価に還元することにより、セリウムの析出を
完全に防止できると共に、例え析出が起きたとしても還
元剤の添加により析出物を短時間に再溶解できる。さら
に、クラツド中のクロムの溶解速度は鉄およびニツケル
の溶解速度に比較してはるかに大きいため、クラツドの
溶解開始後1時間〜数時間でクロムはほとんど溶解する
(第2図)。この時点で還元剤を添加すると未溶解の鉄
の溶解が促進され、硫酸−セリウム系溶液のみの場合に
比べて高いDFが得られる。
上記還元剤とはセリウム(Ce4+/Ce3+)の酸化還元電位よ
り低い(卑の)電位を有するもので、セリウムの析出を
発生させない物質である。BWRクラツドの溶解に使用さ
れている薬品ならばほとんど使用可能で、例えばシユウ
酸、クエン酸、アスコルビン酸、ヒドラジン、エチレン
ジアミン四酢酸(EDTA)、過酸化水素等である。ギ酸およ
びホルムアルデヒドはセリウムの析出を発生し好ましく
ない。
作用 クラツドを溶解除去するための汚染除去剤の条件として
は、高DFであり、母材に対して低腐食性であるとともに
除染廃液処理が容易であることが重要である。ところ
で、本発明において硫酸−セリウム系溶液を汚染除去剤
として使用する場合、硫酸濃度を高くしてセリウムの析
出を抑制することは除染の際に発生する廃液処理上得策
ではない。そこで、本発明では汚染除去剤による溶解処
理の際に還元剤を添加するセリウムの析出が防止される
ことが発見されたので、100mol/前後の低濃度硫酸溶
液中でもクラツドの溶解が可能となり、その結果、除染
廃液処理は通常のイオン交換樹脂を用いて容易に処理す
ることが可能になり、また除染廃液にNaOHを添加して硫
酸イオンを芒硝として沈澱過除去することも可能とな
つた。
以下に本発明の実施例1〜5を例示するが、本発明はこ
れらの実施例によつて限定されるものではなく、本発明
の技術思想の範囲内で、これらを適宜変更および修正す
ることも可能である。
実施例1. 平均粒子径5〜6μmの3種類の模擬クラツド試料CrxF
e2-xO4(x=0.15、0.3、1.0)5mgとあらかじめ所定濃
度に調製しておいた硫酸−セリウム(Ce4+)溶液10mを
試験管に入れ、60℃の恒温水槽にて、マグネチツクスタ
ラー撹拌条件下で溶解を24時間行つた。その後試料溶液
を0.45μmのミリポアフイルターで過した液を希釈
調製してから、導管結合プラズマ発光分析装置(ICP)
を用いて、クロムと鉄の濃度測定を行い、溶解量(%)
を算出した。試験結果を表1のNO.1からNO.15に示す。
またNO.16からNO.21に比較試験としてx=1の模擬クラ
ツド試料を用いて、硝酸−セリウム系、AP法およびNP法
で行つた結果を示す。硫酸−セリウム系はクロムのみな
らず鉄も溶解し、NO.16からNO.21に示す比較試験データ
より優れていることを示している。
なお、NO.1〜NO.2、NO.6〜NO.7およびNO.10〜NO.11
は、硫酸のみを使用した場合の比較例である。
実施例2. 平均粒子径5〜8μmの4種類の模擬クラツド試料CrxN
i0.6Fe2.4-xO4(x=0.14、0.30、0.60、1.0)について
実施例1と同様に溶解試験を行つた。硫酸−セリウム系
の試験結果を表2のNO.1からNO.19に示す。またNO.20
からNO.24に比較試験としてx=0.6の模擬クラツド試料
を用いて硝酸−セリウム系、AP法およびNP法で行つた結
果を示す。
硫酸−セリウム系では模擬クラツドのクロム含有量が高
くなる(xが増す)につれてクロムは溶解しにくくなる
が硫酸200mmol/、セリウム(Ce4+)10mmol/の濃度
にするとほとんど溶解する。また、クロムのみならず鉄
とニツケルも同時に溶解する能力に優れている。一方、
AP法とNP法ではクロムは溶解するが鉄とニツケルはほと
んど溶解しない。硝酸−セリウム系についてはクロム以
外の鉄とニツケルをある程度溶解するが、全体の溶解量
は硫酸−セリウム系より劣る。なお、NO.1、NO.5、N
O.10およびNO.15は、硫酸のみを使用した場合の比較例
である。
実施例3. 平均粒子径1.74μmの模擬クラツド試料Cr2O3につい
て、実施例1と同様に溶解試験を行つた結果を第1図に
示す。Cr2O3の溶解量は、硫酸濃度60〜500mmol/の範
囲では硫酸濃度の影響にほとんど依存しないで、セリウ
ム濃度の増加と共に増大する。
実施例4. 平均粒子径6μmの模擬クラツド試料Cr0.6Ni0.6Fe1.8O
4の硫酸−セリウム溶液中におけるクロム、ニツケル、
鉄各組成の溶解量(%)の経時変化を第2図に示す。
試験は1000mのガラス製セパラブルフラスコに硫酸250
mmol/、セリウム(Ce4+)10mmol/の溶液700mを入
れ、所定温度に昇温した後、上記模擬クラツド140mgを
投入し溶解を行つた。溶解中はガラス製の撹拌羽根を用
いて撹拌を行つた。所定時間毎に溶液5mをサンプリン
グし、実施例1と同様にしてクロム、ニツケル、鉄の溶
解量(%)を求めた。溶解温度60℃および80℃いずれに
おいても溶解量はクロムが最大で、次いでニツケル、鉄
の順になつている。60℃の場合、クロムの溶解量が100
%に達した後の溶解時間2時間のところで還元剤として
1mol/のアスコルビン酸3mを添加した(第2図A
点)場合も示す。還元剤の添加によりニツケルの溶解は
抑制されるが、鉄の溶解は著しく促進され、全体の溶解
量は増す。
実施例5. 本実施例に使用した汚染試験片試料は原子炉(JPDR)浄化
系配管から採取したもので、クラツド付着量は約0.5mg/
cm2、クラツド組成は約クロム20%、ニツケル28%、鉄5
0%である。1回の試験に使用した試験片の表面積は約
5cm2である。実施例4で使用したセパラブルフラスコ
に所定濃度の硫酸−セリウム溶液700mを入れ、上記試
験片を浸漬した後、所定温度に昇温して試験を撹拌条件
下で行つた。24時間後に試験片を取出して放射能測定し
た後、再びセパラブルフラスコ内に試験片を戻し、試験
を継続し、所定時間後に再度試験片の放射能を測定し、
除染係数DFを求めた。結果をまとめて表3に示す。
40℃から90℃の範囲で硫酸−セリウムの濃度を変えて試
験した結果を表3NO.1からNO.8に示す。48時間〜52時
間の場合、80℃でDF57.4(NO.6)、40℃という低温で
もDF13.3(NO.2)が得られた。NO.3とNO.4は硫酸−
セリウムの濃度および温度は同じであるが、NO.4は除
染試験用のガラス製循環ループに汚染試験片にセツト
し、流通系(レイノズル数2500)で試験した場合であ
り、DFは24時間で9.0とNO.3の3.4より大きな値が得ら
れた。
表3のNO.9からNO.14には比較試験の結果を示す。代表
的な除染剤であるCan-DeconLND 101A(商標名)、NS−
1(商標名)(0.7%)等ではDF1.5である。またPWR
クラツド用のPOD(PWR-oxidative decontamination)法で
もDFは4.6でいずれも硫酸−セリウム系によるDFより低
い。
発明の効果 本発明においては、放射性クラツドの溶解除去に当つ
て、硫酸−セリウム系溶液を使用することにより、実質
的には一段階の処理でクラツド中のクロムのみならず、
鉄とニツケルをも同時に溶解除去できるため、その溶解
処理工程が複雑にならず、簡単である。
また、クラツドの溶解処理過程において、還元剤を添加
することにより、セリウムの析出が防止される結果、セ
リウムの析出防止のために高濃度の硫酸を使用する必要
がなく、低濃度の硫酸で溶解処理が行われるので、その
後に生ずる除染廃液の処理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
第1図 Cr2O3模擬クラツドの硫酸−セリウム溶液中における溶
解量を示す図である。 60℃、24hr 硫酸濃度(mmol/):(●)60;(○)100; (△)200;(□)500 第2図 Cr0.6Ni0.6Fe1.8O4模擬クラツドの硫酸−セリウム溶液
中におけるCr、Ni、Fe各組成の溶解量と溶解時間との関
係を示す図である。 試験条件:硫酸250mmol/−セリウム(Ce4+)5mmol/
700m、模擬クラツド140mg (○)Cr;(△)Ni;(□)Fe 還元剤添加後Cr、Ni、Feの溶解量は●、▲、■で示す。 A点:1mmol/アスコルビン酸3m添加

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子炉一次冷却系の腐食により生成した付
    着物であるクロム、鉄、ニッケル及び放射性核種を含む
    放射性クラッドを、硫酸−セリウム系溶液からなる汚染
    除去剤を用いて溶解処理し、クロムの溶解がほぼ終了し
    た時点でセリウムの析出を防止するための還元剤を添加
    することを特徴とする放射性クラッドを化学的に溶解す
    る汚染除去方法。
  2. 【請求項2】還元剤が、シュウ酸、クエン酸、アスコル
    ビン酸、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸(EDT
    A)、及び/又は過酸化水素からなり、セリウム(Ce
    4+/Ce3+)の酸化還元電位より卑の電位を有し、且
    つセリウムの析出を発生させない物質である特許請求の
    範囲第1項に記載の放射性クラッドを化学的に溶解する
    汚染除去方法。
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