JPH0655350U - アワビ類の飼育装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 飼育水槽におけるアワビ類の生息域の海水を
常に清浄にして飼育することができ、また、飼育装置等
にカキやフジツボを付着させることがない装置の提供。 【構成】 残餌等が通過可能な内部床１３を設けて２重
底１４を形成すると共に底部排水口１２を有する飼育水
槽１と；吸入側３１を前記飼育水槽１の低部に連通させ
たサイホン管３０の上部流路３５に一端側３４を連通し
他端側３６を前記飼育水槽１内に高さ調整自在に配置し
た空気吸入管３３を有する水位自動調整部３と；生物濾
過を行うサンゴ層４６を通した海水を前記飼育水槽１に
供給する濾過槽４と；を備えたアワビ類の飼育装置。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、アワビ，トコブシ，サザエ等を陸上で飼育する装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、この種の飼育装置では、図５に示すように、底が一重に形成された飼育 水槽６と、砂や木炭で濾過層を形成した濾過槽６０と、を備えており、また、略 Ｌ字状に形成した排水パイプ６１の一方を略水平にして飼育水槽の排水口６２に 回動自在に連通させたものがあった。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

アワビ類を飼育する場合、まず、網状体で形成した籠１５に多数のアワビを収 容した状態で前記飼育水槽６に複数個浸漬して飼育する。 しかしながら、この従来の飼育水槽では、水槽の底に２重底が形成されるよう になっていなかったため、籠１５の底が水槽６の内底に直接接触した状態となっ て底側の海水の移動を阻害していた。このため、アワビ類に与えた餌の残餌や排 泄物が底側に滞留しアワビ類の飼育に悪影響を与えているという問題があった。 この飼育水槽に供給される海水は、濾過槽が生物濾過層を有していなかったた め、天然海水中に浮遊するカキやフジツボ等の幼生までは除去することができず 、飼育装置等にこの幼生によるカキやフジツボ等が付着してしまうという問題が あった。

【０００４】 また、飼育水槽は、温度調節や水位調節、残餌や排泄物の排出時等に、排水パ イプの立上り部を水位より下方となるように回動させて排水させることにより行 っていたが、これでは排水用パイプにおける回動部の構造も複雑となるし、傾斜 状態での残餌や排泄物の排出は、効率が悪いという問題点があった。

【０００５】 本考案は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであってその目 的とするところは、飼育水槽におけるアワビ類の生息域に残餌や排泄物が滯らず 生息域における海水の清浄度をいつも良好に保持することができ、飼育装置等に カキやフジツボ類が付着せず、また、飼育水槽内の温度調節や水位調節を簡単な 構造で自動的に行うことができ、また、残餌や排泄物を効率よく排出することが できるアワビ類の飼育装置を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

前記目的を達成するための手段として本考案請求項１記載のアワビ類の飼育装 置では、残餌等が通過可能な内部床を設けて２重底を形成すると共に底部排水口 を有する飼育水槽と；吸入側を前記飼育水槽の低部に連通させたサイホン管の上 部流路に一端側を連通し他端側を前記飼育水槽内に高さ調節自在に配置した空気 吸入管を有する水位自動調節部と；生物濾過層を通した海水を前記飼育水槽に供 給する濾過槽と；を備えた構成とした。

【０００７】 また、請求項２記載のアワビ類の飼育装置では、請求項１記載のアワビ類の飼 育装置において、前記サイホン管の吸入側を前記底部排水口と連通させると共に 該吸入側と流出側とを連通して底部排水路を形成し、かつ該サイホン管の吸入側 と流出側との間における底部排水路に止水栓を設けた構成とした。

【０００８】

【作用】

請求項１記載のアワビ類の飼育装置では、飼育水槽の床が２重底となるように 形成されており、残餌や排泄物はアワビ類を収容した籠からすり抜けて下の床に 溜るため、残餌や排泄物の横移動が可能となって槽外への排出が良好に行われる から、アワビ類の生息域における海水をいつも清浄にしておくことができる。 海から取り込んだ天然海水にカキやフジツボ等の幼生が浮遊していても濾過槽 の生物濾過層で除去するので、飼育装置等にカキやフジツボ等が付着することが ない。 飼育水槽内の海水はサイホン管によって排出されるが、空気吸入管の他端側高 さを調節しておくことにより、水位がその高さになると空気吸入管が露出または 水没して空気を吸入または吸入停止し、サイホン管の上部流路の水圧を大気圧ま たは負圧にするから、海水の排出を停止または作動させることができる。このた め、飼育水槽内の海水の温度調節や水位調節を自動的に行うことができる。

【０００９】 また、請求項２記載のアワビ類の飼育装置では、サイホン管の下部と飼育水槽 の底部排水路が一体に形成されており、止水栓を開くことにより、飼育水槽内の 底部に滞留した残餌や排泄物をこの底部排水路から直接排出させ、止水栓を閉じ てもサイホン管を経由して排出させることにより、飼育水槽内の残餌や排泄物を 効率よく排出させることができる。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。 図１は本実施例のアワビ類の飼育装置を示す説明図、図２は水位調節の要領を 示す説明図、図３は濾過槽を示す断面図である。 まず実施例の構成を説明する。 本実施例のアワビ類の飼育装置Ａは、飼育水槽１と、底部排水路２と、水位自 動調節部３と、濾過槽４と、を主要な構成としている。

【００１１】 前記飼育水槽１は、上面開口し底部１０と接した状態で一端側壁面１１に底部 排水口１２が開設されている。そして、前記底部１０は、排水口１２側のレベル が下るように傾斜して形成されている。 また、内部には、底部１０と適宜隙間を有し前記底部排水口１２の上方位置に 、網状体による内部床１３を設けることにより、２重底１４が形成されている。 図中、１５は網状体で箱形に形成した籠であって、内部にはアワビ５が吸着す る山形状の波板１６が設けられている。

【００１２】 前記底部排水路２は、床部１０上に滞留した残餌や排泄物を海水と共に排出さ せるものであって、止水栓２０を有するパイプの一端が前記飼育水槽１の底部排 水口１２に連通されている。

【００１３】 前記水位自動調節部３は、飼育水槽１内の温度調節や水位調節を自動的に行う ものであって、略逆Ｕ字状に形成されたサイホン管３０の吸入側３１が、前記底 部排水路２であって止水栓２０の上流側に一体に連通され、流出側３２が止水栓 ２０より下流側の底部排水路２に一体に連通されている。 また、前記サイホン管３０には、略Ｌ字状に形成された空気吸入管３３が連通 されている。この空気吸入管３３の一端側３４は、水平状態でサイホン管３０の 上部流路３５に連通され、他端側３６は折曲部３７で回動自在に形成されると共 に飼育水槽１内で垂直方向に回動可能に配置されている。図中３８は他端側３６ に開口した吸入口である。

【００１４】 前記濾過槽４は、ポンプ４０で汲み上げた天然海水４１を濾過して給水管４２ から飼育水槽１内に供給するものであって、上架タンク４３内の下部に２重底用 の網４４が張設され、該網４４から上部に向けて木炭層４５、砂状のサンゴ層４ ６、砂層４７、マット４８が設けられ、このマット４８の上部に前記天然海水４ １の散水管４９が設けられている。 そして、前記底部排水路２や給水管４２等は、適宜ＦＲＰ等による複合管や合 成樹脂製継手等を使用している。

【００１５】 次に作用を説明する。 まず、濾過槽４では、ポンプ４０で汲み上げた天然海水４１が、散水管４９で マット４８上に散水される。マット４８と砂層４７で微細なゴミ等が除去された 海水は、次のサンゴ層４６でカキやフジツボ等の幼生を吸着する生物濾過が行わ れた後、木炭層４５で不純物の最終的な吸着が行われる。

【００１６】 飼育水槽１では、籠１５が内部床１３上に載置されており、この籠１５内の波 板１６には多数のアワビ５が吸着している。そして、このアワビ５による残餌や 排泄物等が、籠１５の目と内部床１３の目を介して２重底１４間に次々と落下す ることになる。この２重底の底部１０に落下した残餌や排泄物等は、底部１０の 傾斜に従って底部排水口１２側に集合してくる。 また、この飼育水槽１では、図２に示すように、空気吸入管３３の他端側３６ を折曲部３７から回動して、吸入口３８を必要水位位置に配置させることにより 、濾過槽４からの給水で水位がサイホン管３０の上部流路３５より高位になった 場合、サイホン管３０は、吸入側３１から飼育水槽１の２重床１４内の海水を吸 入し、上部流路３５を介して流出側３２から外部に排出する。このとき残餌や排 泄物も同時に排出される。この水位が下って空気吸入管３３の吸入口３８が水面 から露出すると、吸入口３８を介して空気が上部流路３５に供給されるから、こ の上部流路３５における水圧が大気圧と同一になることで飼育水槽１からの吸引 が中止される。これによって水位が自動的に調節される。 また、海水の供給を継続することにより、サイホン管３０は間欠的に古い海水 の排出を行うから、水位の調節や新しい海水による温度調節を行うことができる 。 止水栓２０を開けると、２重底１４内に滞留した残餌や排泄物を直接排出した り飼育水槽１内の海水を一気に全部抜くことができる。

【００１７】 以上、説明してきたように、本実施例にあっては、残餌や排泄物は２重床１４ 内に移動するので、アワビ５の生息域における海水をいつも清浄にしておくこと ができる。 濾過槽４では、サンゴ層４６でカキやフジツボ等の幼生の生物濾過を行うので 、飼育装置やアワビ等にカキやフジツボが付着することがない。 飼育水槽１は、サイホン管３０によって排出され、排出の途中水面から吸入口 ３８が露出することにより排出が停止されるから、水位や温度調節を自動的に行 うことができる。また、水位は吸入口３８の高さ調節を行うだけで良いので、操 作が簡単であるし排水路に複雑な回動部を設けなくてもよい。 飼育水槽１内の残餌や排泄物は、２重底部分に位置する底部排水路２で完全に 効率よく排出させることができる。 サイホン管３０と底部排水路１２とを一体化したので、構造が簡単となり、ま た、排出先も常に同じ場所に行うことができる。 配管や継手等には合成樹脂製品を使用したので、塩水を使用しても錆付きがな い。

【００１８】 以上、本考案の実施例を説明してきたが、本考案の具体的な構成はこの実施例 に限定されるものではなく、考案の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があって も本考案に含まれる。

【００１９】 例えば、実施例では、水位自動調節部３の空気吸入管３３は略Ｌ字状に形成さ れるとしたが、これに限らず、柔軟なチューブで形成してもよい。また、サイホ ン管３０の形状も任意に設定することができる。

【００２０】 濾過槽４は、生物濾過層に砂状のサンゴを使用したが、材料は任意であり、要 は生物濾過ができて通水性の良好なものであればよい。また、他の層の構成や材 料も任意である。

【００２１】 ２重底１４は、飼育水槽１内に網状体による内部床１３を設けることにより形 成されるとしたが、この外に籠１５に脚をつけたり、籠１５を槽内の途中で停止 するように係止させることにより、籠底と底部１０との間に２重底を形成させる こともできる。

【００２２】 給水管４２は、図１に示すような上部給水の他、図４に示すように、給水口４ ２ａを２重底１４内まで延設し、二方向に分岐して下部給水させるようにしても よい。

【００２３】

【考案の効果】

以上説明してきたように本考案請求項１記載のアワビ類の飼育装置にあっては 、前記構成としたため、残餌や排泄物は２重床内に溜るから、アワビ類の生息域 における海水をいつも清浄にしておくことができる。 海から取り込んだ天然海水にカキやフジツボ等の幼生が浮遊していても生物濾 過層で除去するので、飼育装置等にカキやフジツボが付着することがない。 水位が増すとサイホン管と空気吸入管によって一定量海水の排水を自動的に行 うので、飼育水槽の水位調節や温度調節を自動的に行うことができる。 構造が簡単であり、また、水位調節も簡単に行うことができる等の効果が得ら れる。

【００２４】 請求項２記載のアワビ類の飼育装置にあっては、前記構成としたため、飼育水 槽内に滞留した残餌や排泄物を効率よく排出させることができる。また、水槽内 の海水も一気に排出させることができる。 また、サイホン管による流出側と底部排水路とが一体であるから構造や製作が 簡単となり、また排出先も同じ位置で行うことができる等の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例のアワビ類の飼育装置を示す説明図であ
る。

【図２】実施例の水位調節の要領を示す説明図である。

【図３】実施例の濾過槽を示す断面図である。

【図４】他の実施例の給水管４２を示す説明図である。

【図５】従来のアワビ類の飼育装置における飼育水槽を
示す説明図である。

【符号の説明】

Ａ アワビ類の飼育装置 １ 飼育水槽 ２ 底部排水路 ３ 水位自動調節部 ４ 濾過槽 ５ アワビ １０ 底部 １２ 底部排水口 １３ 内部床 １４ ２重底 ２０ 止水栓 ３０ サイホン管 ３１ サイホン管の吸入側 ３２ サイホン管の流出側 ３３ 空気吸入管 ３４ 空気吸入管の一端側 ３５ サイホン管の上部流路 ３６ 空気吸入管の他端側 ３７ 空気吸入管の回動自在な折曲部（高さ調節） ３８ 空気吸入管の吸入口 ４６ 砂状のサンゴ層（生物濾過層）

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 残餌等が通過可能な内部床を設けて２重
   底を形成すると共に底部排水口を有する飼育水槽と；吸
   入側を前記飼育水槽の低部に連通させたサイホン管の上
   部流路に一端側を連通し他端側を前記飼育水槽内に高さ
   調節自在に配置した空気吸入管を有する水位自動調節部
   と；生物濾過層を通した海水を前記飼育水槽に供給する
   濾過槽と；を備えたことを特徴とするアワビ類の飼育装
   置。
2. 【請求項２】 請求項１記載のアワビ類の飼育装置にお
   いて、前記サイホン管の吸入側を前記底部排水口と連通
   させると共に該吸入側と流出側とを連通して底部排水路
   を形成し、かつ該サイホン管の吸入側と流出側との間に
   おける底部排水路に止水栓を設けたことを特徴とするア
   ワビ類の飼育装置。