JPH0647124B2 - クラツドパイプ圧延用ロール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、傾斜圧延法に使用されるクラツドパイプ圧延
用ロールに関するものである。

〔従来の技術及びその課題〕

傾斜圧延法は、マンドレル又はプラグからなる芯部材を
金属製のパイプ素材に挿入し、このパイプ素材の外周面
に軸線を傾斜させた圧延用ロールを圧接させ、パイプ素
材に所定の送りを与えながら芯部材との間で圧延する方
法である。このような傾斜圧延法は、異種の金属を積層
したクラツドパイプの圧着圧延製造に適している。

従来のこの種のクラツドパイプ圧延用ロールは、一般
に、第３図に示す構造を有している。符号５０はクラツ
ドパイプ圧延用ロールを示し、機能的に分類して入側か
ら順次に、噛込部５０ａ、次第に拡径する肉厚圧下部５
０ｂ、リーリング部５０ｃ及びリリーフ部５０ｄが形成
されている。このようなクラツドパイプ圧延用ロール５
０は、芯部材５１を挿入したクラツドパイプ素材５２の
外周に周方向に等間隔にて３個配置し、通常所定のコン
バージエンス角αを与えて回転駆動される。ここで、コ
ンバージエンス角αとは、クラツドパイプ圧延用ロール
５０の回転軸線が芯部材５１の中心軸線に対して傾斜す
る角であり、第３図のようにリリーフ部５０ｄ側が芯部
材５１に向けて下り傾斜するものを負の角度とする。し
かして、リーリング部５０ｃは、リーリング部５０ｃよ
りも入側において軸線方向に伸長すると共に拡管変形を
生じたクラツドパイプ素材５２に、縮管整形を与える機
能がある。

このような傾斜圧延法に使用されるクラツドパイプ素材
５２は、炭素鋼又は低合金鋼を母材管とし、ステンレ
ス、ニツケル、又はニツケル合金を合材管とするもので
あり、特に、高ニツケル合金であるインコネル６２５、
インコロイ８２５等の難加工性材を合材管とする高合金
クラツドパイプは、ラインパイプ用として需要が増大傾
向にあるが、低延性であり、適正な圧着圧延が容易でな
い。すなわち、高合金クラツドパイプは、圧着圧延作業
中に母材管と合材管とのはく離及び割れを生じ易い。

従来、このはく離防止に関する技術としては、母材管及
び合材管の合せ面の清浄活性化を図ると共に合せ面間の
残留空気を排除し、充分な圧延比、具体的には伸長比で
１．８以上となる圧下率で圧延することが提案されてい
る。しかし、圧延比の増大は割れを促す。

一方、３ロールの傾斜圧延機の使用によつて所謂もみ割
れが防止できるため、クラツドパイプ素材の傾斜圧延に
おいて問題となる割れは、クラツドパイプ素材５２のね
じれに起因するものと考えられている。傾斜圧延法によ
れば、圧延前のクラツドパイプ素材５２の外径に対し、
圧延後のクラツドパイプ５３の外径は縮小される。この
ため、一般に、クラツドパイプ素材５２のロール５０へ
の入側と出側とのロール５０径対クラツドパイプ素材５
２径の比が異なり、クラツドパイプ素材５２の回転速度
が相違してねじれを生ずる。このねじれ防止の技術とし
ては、．ロール５０の送りのための傾斜角（送り角）
を大きくし、かつ１パス当たりの圧下量を大きくして圧
延することが提案されているが、クラツドパイプ素材５
２が各ロール５０間に膨出するフレアリングの発生を招
来してかえつて割れを助長する、．ロール５０に負の
コンバージエンス角を付与してロール５０出側のロール
径を小さくし、クラツドパイプ素材５２のロール５０へ
の入側と出側との回転速度差を縮小して、ねじれ角を減
少することが提案されているが、同様にフレアリングの
発生を招来してかえつて割れを助長する、．割れの原
因となるフレアリングの減少のために、ロール５０出側
の圧延速度を高めることが有効であるとし、ロール５０
に正のコンバージエンス角を付与してクラツドパイプ素
材５２のロール５０出側の圧延速度ひいては引張力を増
加させて膨出を抑制させているが、前述のようにねじれ
ひいては割れを助長している。

加えて、このような従来のクラツドパイプ圧延用ロール
５０にあつては、肉厚圧下部５０ｂから直線的にリーリ
ング部５０ｃを形成し、このリーリング部５０ｃのクラ
ツドパイプ素材５２との接触線を芯部材５１の軸線と平
行に配置している。そして、クラツドパイプ素材５２の
縮管変形に際し、肉厚の増加を伴うため、このリーリン
グ部５０ｃにおいても再圧延が繰り返されることとな
り、リーリング部５０ｃの縮管整形が円滑になされなか
つた。更に、リーリング部５０ｃの入側と出側とにおけ
るロール５０と芯部材５１との周速が不適正になるた
め、せん断力を生じ、クラツドパイプ５３のはく離、割
れ等の原因となつていた。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもの
であり、その構成は、入側から順次に、噛込部、次第に
拡径する肉厚圧下部及びリーリング部が形成され、芯部
材を挿入したクラツドパイプ素材を傾斜圧延法によつて
クラツドパイプに圧延するクラツドパイプ圧延用ロール
において、前記リーリング部に、該肉厚圧下部の大径端
に接続し、該芯部材の軸線に対してクラツドパイプ素材
との接触線がほぼ平行をなす大径部、該接触線が次第に
離間する逃がし部及び該接触線がほぼ平行をなす小径部
を順次に形成し、クラツドパイプ素材の縮管整形に伴う
肉厚増加を該逃がし部によつて吸収するクラツドパイプ
圧延用ロールである。

〔作用〕

このようなクラツドパイプ圧延用ロールは、３ロールの
傾斜圧延機に備えさせて、クラツドパイプ素材の圧着圧
延に供される。芯部材を挿入したクラツドパイプ素材が
圧延用ロールの噛込部に進入すると、クラツドパイプ素
材は噛込力を受けて順次に押し込まれる。このように噛
込力を受けたクラツドパイプ素材が、肉厚圧下部を通過
して圧延され、リーリング部の大径部に至つて充分に圧
下され、母材管と合材管とが圧着する。その際、クラツ
ドパイプ素材は、軸線方向に伸長すると共に周方向の拡
管変形を生ずる。

次いで、リーリング部、つまり大径部、逃がし部及び小
径部を通過して縮管整形され、圧着圧延成形されたクラ
ツドパイプが送り出される。このような縮管圧延過程に
おいて、大径部を通過したクラツドパイプ素材は、接触
線が次第に離間する逃がし部に進入し、過大な圧下から
解放されるので、クラツドパイプ素材の肉厚増加が良好
に許容され、縮径変形が円滑に進行する。その結果、フ
レアリングが軽減し、割れが抑制される。

そして、クラツドパイプ素材は、肉厚増加量が良好に吸
収された状態で、大径部とほぼ同様に傾斜する小径部に
入り、整形される。このように、リーリング部、特に逃
がし部以降での強度の再圧延が抑制されるので、縮管整
形が良好になされ、また、リーリング部全体における圧
延用ロールとマンドレルとの周速をほぼ一致させること
ができ、クラツドパイプ素材にせん断力が作用せず、一
旦圧着した母材管と合材管との間にはく離を生ずること
が良好に抑制されると共に、割れが抑制される。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。

第１，２図は、１実施例を示す。図中において符号１
は、圧延用ロール（最大径が４００mm）を示し、入側か
ら出側に向けて順次に、ほぼ同径の噛込部１ａ、急激に
拡径する肉厚圧下部１ｂ、リーリング部１ｃ及び次第に
縮径するリリーフ部１ｄが形成されている。ｈはハンプ
高さ（約７mm）であり、肉厚圧下部１ｂの最大半径と噛
込部１ａの半径との差である。そして、リーリング部１
ｃは、肉厚圧下部１ｂの大径端に接続し、緩徐に縮径す
る大径部１ｅと、大径部１ｅから角度を増大させて次第
に縮径する逃がし部１ｆと、逃がし部１ｆの小径端に接
続し、大径部１ｅと同程度の角度で緩徐に縮径する小径
部１ｇとからなる。ここで、肉厚圧下部１ｂの大径端の
最大径を前記のように４００mmとして、大径部１ｅの軸
線方向長さは、１０〜３０mm程度を確保すべきである。
また、逃がし部１ｆは、その半径縮小量ｔが０．７mm程
度（第１図では誇張して示す。）、かつ軸線方向長さＬ
が０．５〜１．７mm程度を確保すべきであり、軸線方向
長さＬを短縮すると圧延成形後のクラツドパイプ２表面
に段をなす欠陥部を形成する原因となる。

クラツドパイプ素材２０は、炭素鋼又は低合金鋼を母材
管とし、ステンレス、ニツケル、又はニツケル合金を合
材管とするものであり、芯部材であるマンドレル３を予
め挿入してある。

上記の圧延用ロール１は、周方向に等間隔にて３個配置
し、負のコンバージエンス角α（約５°）を与える。こ
の状態で、リーリング部１ｃの大径部１ｅ及び小径部１
ｇのクラツドパイプ素材２０との接触線がマンドレル３
の軸線とほぼ平行をなし、逃がし部１ｆの接触線が入側
から次第に離間し、噛込部１ａ及びリリーフ部１ｄの接
触線が傾斜の緩いＶ字状をなしている。この圧延用ロー
ル１が、それぞれ図外の駆動源にて回転駆動されて３ロ
ールの傾斜圧延機を構成する。

次に、作用について説明する。

クラツドパイプ素材２０にマンドレル３を挿入して傾斜
圧延法によつてクラツドパイプ２が圧着圧延成形され
る。圧延用ロール１の噛込部１ａに進入したクラツドパ
イプ素材２０は、図上にて右方に押し込まれる。その
際、圧延用ロール１に負のコンバージエンス角αを与え
ると共に噛込部１ａが入側に向けて次第に離間してクラ
ツドパイプ素材２０との接触長が長く確保されているの
で、噛込力つまりクラツドパイプ素材２０の押込力が強
力に得られる。このように強力な噛込力を受けたクラツ
ドパイプ素材２０が、肉厚圧下部１ｂを通過して圧延さ
れ、リーリング部１ｃの大径部１ｅに至つて充分に圧下
され、母材管と合材管とが圧着する。その際、クラツド
パイプ素材２０は、軸線方向に伸長すると共に周方向の
拡管変形を生ずる。次いで、リーリング部１ｃ、つまり
大径部１ｅ、逃がし部１ｆ及び小径部１ｇを順次に通過
して縮管整形され、リリーフ部１ｄから圧延成形された
クラツドパイプ２が送り出される。

このような縮管圧延過程において、各圧延用ロール１に
負のコンバージエンス角αを付与してあり、大径部１ｅ
はこの角αにほぼ対応して次第に縮径しているため、ク
ラツドパイプ素材２０の外径の縮小に対応して、大径部
１ｅが各圧延用ロール１の出側に向けて次第に縮小して
いる。このため、圧延後のクラツドパイプ素材２０の回
転周速度が次第に減速され、ねじれ角が減少した状態で
良好に縮管圧延される。その結果、割れが抑制される。
更に、大径部１ｅを通過したクラツドパイプ素材２０
は、接触線が次第に離間する逃がし部１ｆに進入し、過
大な圧下から解放されるので、クラツドパイプ素材２０
の肉厚増加が良好に許容され、縮径が円滑に進行する。
その結果、フレアリングが、第２図に仮想線にて示す従
来例のものから、実線にて示すフレアリング２０ａへと
軽減され、割れが抑制される。

そして、クラツドパイプ素材２０は、肉厚増加量が良好
に吸収された状態で、大径部１ｅとほぼ同様に傾斜する
小径部１ｇに入り、整形される。このように、リーリン
グ部１ｃ、特に逃がし部１ｆ以降での強度の再圧延が抑
制されるので、縮管整形が良好になされ、また、リーリ
ング部１ｃ全体における各圧延用ロール１とマンドレル
３との周速をほぼ一致させることができ、負のコンバー
ジエンス角αを付与したこととも相俟つて、クラツドパ
イプ素材２０にせん断力が作用せず、一旦圧着した母材
管と合材管との間にはく離を生ずることが良好に抑制さ
れると共に、割れが抑制される。

〔発明の効果〕

以上の説明によつて理解されるように、本発明によれ
ば、フレアリングの発生が著しく軽減されると共に、圧
延によるねじれ変形も減少する。その結果、簡素な構造
により、従来のクラツドパイプ圧延用ロールでは圧着圧
延が困難であつたインコネル６２５などの高合金クラツ
ド鋼管にはく離及び割れを伴わない良好な圧着圧延を施
すことが可能になつた。

【図面の簡単な説明】

第１，２図は本発明の１実施例を示し、第１図は傾斜圧
延機の要部を一部断面にて示す正面図、第２図は同じく
側面図、第３図は従来例を示す概略図である。 １：圧延用ロール，１ａ：噛込部，１ｂ：肉厚圧下部，
１ｃ：リーリング部，１ｄ：リリーフ部，１ｅ：大径
部，１ｆ：逃がし部，１ｇ：小径部，２：クラツドパイ
プ，３：マンドレル（芯部材），２０：クラツドパイプ
素材，ｈ：ハンプ高さ，ｔ：半径縮小量，α：コンバー
ジエンス角。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】入側から順次に、噛込部、次第に拡径する
   肉厚圧下部及びリーリング部が形成され、芯部材を挿入
   したクラツドパイプ素材を傾斜圧延法によつてクラツド
   パイプに圧延するクラツドパイプ圧延用ロールにおい
   て、前記リーリング部に、該肉厚圧下部の大径端に接続
   し、該芯部材の軸線に対してクラツドパイプ素材との接
   触線がほぼ平行をなす大径部、該接触線が次第に離間す
   る逃がし部及び該接触線がほぼ平行をなす小径部を順次
   に形成し、クラツドパイプ素材の縮管整形に伴う肉厚増
   加を該逃がし部によつて吸収することを特徴とするクラ
   ツドパイプ圧延用ロール。