JPH0642655Y2 - フック付歯科矯正用ブラケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本考案は、例えば歯列矯正の一手段としての抜歯等によ
り、隣接する歯同士間に間隙が生じたような場合に、該
隙間を歯の移動で矯正するため、或いは抜歯せずとも、
歯の移動により、全歯を理想的な歯列弓に矯正するため
に、患者の歯面に固定されて使用されるフック付歯科矯
正用ブラケットの改良に関するものである。

「従来の技術」 従来のこの種歯科矯正用ブラケットとして、第４図乃至
第５図に示すものが存在する。

そして、前者の歯科矯正用ブラケットは、第４図Ａ・Ｂ
に示す如く、ブラケット本体１の中央部に、アーチワイ
ヤーを係留するＵ字状のスロット２を形成すると共に、
本体１の上下両側部に、結紮具を係止する一対のウイン
グ3a・3bを形成する一方、、斯る一対のウイング中、歯
肉側に位置するウイング3aにフック片４を一体に延設
し、該フック片４の両側に２個の引掛用凹部５・５を形
成して、歯を所定方向に牽引移動させる手段、即ちゴム
製・樹脂製の弾性リング体又はコイルスプリング等を引
っ掛けるフック部を構成している。

又、後者の歯科矯正用ブラケットは、第５図Ａ・Ｂに示
す如く、ブラケット本体１の中央部に、アーチワイヤー
を係留するスロット２を形成し、本体１の上下両側部
に、結紮具を係止する一対のウイング3a・3bを形成する
点においては、上記前者のものと同様であるが、異なる
ところは、一対のウイング3a・3bを分割溝６を介して左
右に２分割して、所謂ツインブラケットの形態を付与す
る一方、歯肉側に位置する左右いずれか一方の分割ウイ
ング3aにフック片４を一体に延設し、該フック片４の内
側に１個の引掛用凹部５を形成して、上記牽引移動手段
を引っ掛けるフック部を構成している。

そして、実際の治療に際しては、具体的には図示しない
が、いずれのブラケットにあっても、フック片４が歯肉
側に位置する状態を得て、ブラケット本体１を接着剤を
介して歯面に固定し、アーチワイヤーを結紮具を介して
スロット２内に縛着して、該アーチワイヤーの負荷荷重
を矯正したい歯に加えると同時に、ブラケットのフック
片４と別途設けられているフック手段間に、牽引移動手
段たる弾性リング体又はコイルスプリング等を引っ掛け
ることにより、該牽引移動手段の牽引力で、ブラケット
が固定された歯を所定方向に移動させるものである。

「考案が解決しようとする課題」 然し乍ら、前者のブラケットにあっては、フック片４に
２個の引掛用凹部５・５を形成する関係で、該各引掛用
凹部５を選択することにより、１個のブラケットを用い
るだけで、歯を遠心方向にも近心方向にも移動させるこ
とができる利点を有するが、反面、該フック片４が自ず
と大型化して、特に該フック片４の両側端縁が頬粘膜に
あたって、患者に不快感や傷みを与えてしまう問題点を
有していた。

更に、前者のブラケットは、歯を二方向に移動させるこ
とができると雖も、牽引移動手段を引っ掛ける２個の引
掛用凹部５・５を、単にフック片４の両側に形成してい
るだけであるから、歯に対するブラッシングにより、或
いは食事中の咬合運動等により、牽引移動手段がフック
片４から外れ易いと言う問題点をも併せて有していた。

他方、後者のブラケットにあっては、分割溝６の存在に
より、ツインブラケットの形態を備えているので、アー
チワイヤーを左右いずれか一方のウイング側に縛着すれ
ば、矯正力のローテーションコントロールが可能となる
と共に、片側の分割ウイング3aのみにフック片４を延設
するものであるから、前者のものと比較すると、フック
片４自体を小型化できる利点を有するが、該小型のフッ
ク片４の内側に１個の引掛用凹部５を形成するだけであ
るから、今後は逆に、歯を遠近心方向の一方向にしか移
動させることができないと言う問題点を有している。

又、後者のブラケットは、フック片４が小型化されてい
るので、前者のもの程、フック片４が頬粘膜にあたっ
て、患者に不快感や傷みを与える心配はないが、逆に、
この小型化が禍して、硬いものを噛んだような時などに
は、フック片４が折損してしまう問題点を有すると共
に、前者のものと同様に、ブラッシングにより、牽引移
動手段が外れ易いことも否定できなかった。

この為、当該分野においては、上記従来の各ブラケット
の利点を生かしつつ、その欠点を有効に解決できるフッ
ク付歯科矯正用ブラケットの出現が強く熱望されてい
る。

「課題を解決するための手段」 而して、本考案は、斯る要請に応えるために開発された
もので、ブラケット本体の中央部にアーチワイヤーを係
留するスロットを形成すると共に、本体の上下両側部に
結紮具を係止する一対のウイングを形成し、且つ該各ウ
イング中、歯肉側に位置するウイングにフック片を設け
る構成のフック付歯科矯正用ブラケットを前提として、
上記フック片は、歯肉側に位置するウイングから一体に
延設されて、その中央部に開口部を有する１個の引掛用
孔を形成する構成を採用した。

「作用」 依って、本考案にあっては、フック片が歯肉側に位置す
る状態を得て、ブラケット本体を接着剤を介して歯面に
固定し、アーチワイヤーを結紮具を介してスロット内に
縛着して、該アーチワイヤーの負荷荷重を矯正したい歯
に加えると同時に、該ブラケットのフック片と別途設け
られているフック手段間に、牽引移動手段を引っ掛けれ
ば、当該フック付ブラケットが固定された歯を、遠心方
向にも近心方向にも牽引移動させることが可能となる。

「実施例」 以下、本考案を図示する実施例に基づいて詳述すれば、
該実施例に係る歯科矯正用ブラケットも、第１図Ａ・Ｂ
に示す如く、ブラケット本体11の中央部に、アーチワイ
ヤーを係留するスロット12を形成すると共に、本体11の
上下両側部に、結紮具を係止する一対のウイング13a・1
3bを形成し、且つ該各ウイング中、歯肉側に位置するウ
イング13aにフック片14を設けることを前提とするもの
であるが、特徴とすることろは、以下の点にある。

即ち、本実施例にあっては、上記フック片14を歯肉側に
位置するウイング13aから一体に延設し、該フック片14
の先端側中央部に、狭巾な開口部15aを有する１個の引
掛用丸孔15を形成して、該１個の引掛用丸孔15を兼用す
ることにより、牽引移動手段を二方向に引っ掛けること
ができる構成となすと共に、斯る１個の引掛用丸孔15の
形成に際しては、構造上可能な限り、スロット12側に近
接した状態で形成して、フック片14の歯肉側への突出量
を極力抑え、フック片14の折損を防止できる構成となし
ている。

又、本実施例にあっては、フック片14の両側先端部縁に
円弧形状16を積極的に施こして、上記フック片14の突出
量の抑制と相俟って、患者に不快感や傷みを与えない構
成となすと共に、ブラケット本体11の底面に、接着剤の
流入を許容する複数の凹部17を形成する構成となしてい
る。

従って、斯る構成のフック付ブラケットを用いて、歯の
矯正治療を行なう場合には、第２図に示す如く、上記フ
ック片14が歯肉側に位置する状態を得て、ブラケット本
体11の底面を接着剤を介して歯面に固定し、アーチワイ
ヤー18を結紮具19を介してスロット12内に縛着して、該
アーチワイヤー18の負荷荷重を矯正したい歯に加えると
同時に、該ブラケットのフック片14と別途設けられてい
るフック手段間に、弾性リング体等の牽引移動手段20を
引っ掛ければ、当該フック付ブラケットが固定された歯
を、遠近心二方向の内、いずれかの方向に牽引移動させ
ることが可能となる。

これを具体的に説明すると、例えば犬歯T1を遠心方向に
移動させる場合には、第２図Ａに示す如く、少なくとも
犬歯T1に本ブラケットを固定して、該ブラケットのフッ
ク片14に形成されている引掛用丸孔15と、大臼歯T2に固
定されたモーラチューブ21のフック部21a間に、開口部1
5aを介して、弾性リング体等の牽引移動手段20を引っ掛
ければ、該牽引移動手段20の牽引力で、当該犬歯T1を遠
心方向（図中矢印方向）に移動させることが可能とな
る。

又、小臼歯T3を近心方向に移動させる場合には、第２図
Ｂに示す如く、小臼歯T3に本ブラケットを固定して、該
ブラケットのフック片14に形成されている引掛用丸孔15
と、アーチワイヤー18に固定されているフック体22間
に、牽引移動手段20を引っ掛ければ、同様に、当該小臼
歯T3を近心方向（図中矢印方向）に移動させることが可
能となる。

尚、上記の治療例はあくまでも一例に過ぎず、その他の
治療に対しても、引掛用丸孔15を兼用すれば、１個のブ
ラケットを用いて、歯を二方向に対して選択的に移動さ
せることができることは言うまでもないが、治療目的等
によっては、隣接するブラケットのフック片14同士間
に、牽引移動手段20を引っ掛けることも可能である。

又、本実施例にあって、フック片14の中央部に１個の引
掛用丸孔15を形成することは、牽引移動手段20が、該引
掛用丸孔15内において確実に保持されることとなるの
で、例え歯をブラッシングしても、従来の如く、牽引移
動手段20がフック片14から簡単に外れる心配が全くなく
なるばかりか、一対のウイング13a・13bを分割溝で左右
に２分割しなくとも、引掛用丸孔15自体の存在により、
ツインブラケットとしての機能も十分に発揮できること
となる。

尚、本考案は、上記実施例に示す形態のブラケットに限
定されるものではなく、例えば第３図に示す如く、スロ
ット12に対してブラケット本体11の遠近心側がある一定
の角度に傾いた形態の犬歯用ブラケットに対しても、容
易に実施応用できることは言うまでもない。

「考案の効果」 以上の如く、本考案のフック付歯科矯正用ブラケットに
よれば、フック片の中央部に形成された１個の引掛用孔
の存在により、１個のブラケットを用いて、歯を遠心方
向にも近心方向にも移動させることが可能となるばかり
か、牽引移動手段は上記引掛用孔内に確実に引っ掛けら
れることとなるので、ブラッシング等によっても、従来
の如く、フック片から容易に外れる心配も全くなくな
る。

その上、１個の引掛用孔は、上記利点の他に、ブラケッ
ト自体にツインブラケットとしての機能をも付与できる
ので、アーチワイヤーから得られる矯正力をローテーシ
ョンコントロールすることも十分に可能となる。

従って、本考案にあっては、従来ブラケットの利点を生
かしつつ、その欠点を有効に解決することのできるフッ
ク付ブラケットを提供できることとなった。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａは本考案の実施例に係るフック付ブラケットを
示す斜視図、同図Ｂは同ブラケットの断面図、第２図Ａ
は犬歯を遠心方向に移動させる治療例を示す説明図、同
図Ｂは小臼歯を近心方向に移動させる治療例を示す説明
図、第３図は犬歯用ブラケットに対する応用例を示す正
面図、第４図Ａ・Ｂ乃至第５図Ａ・Ｂは従来のフック付
ブラケットを示す正面図及び断面図である。 11……ブラケット本体、12……スロット、13a・13b……
ウイング、14……フック片、15……引掛用丸孔（引掛用
孔）、15a……開口部、18……アーチワイヤー、19……
結紮具、20……牽引移動手段、T1……犬歯、T2……大臼
歯、T3……小臼歯。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ブラケット本体の中央部にアーチワイヤー
   を係留するスロットを形成すると共に、本体の上下両側
   部に結紮具を係止する一対のウイングを形成し、且つ該
   各ウイング中、歯肉側に位置するウイングにフック片を
   設ける構成の歯科矯正用ブラケットにおいて、上記フッ
   ク片は、歯肉側に位置するウイングから一体に延設され
   て、その中央部に開口部を有する１個の引掛用孔を形成
   したことを特徴とするフック付歯科矯正用ブラケット。