JPH0641744U - 医療用具装着用バルーンカテーテル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 体腔に経皮的に挿入される医療器具を、体表
に安全、確実に気密固定する。 【構成】 先バルーン２と後バルーン３を有するバルー
ン部１と、バルーン部の後端部に連結され、先端側は
先、後バルーン内に夫々開口し、後端側は分岐し夫々逆
止弁１１，１２を有するパイロットバルーン９，１０を
設け、先バルーン２と後バルーン３間の部位に補強用チ
ューブ１７を挿入した先枝チューブ７及び後枝チューブ
８からなる。 【効果】 医療用具に装着して経皮的に刺入し、体腔内
で先バルーンを、体外表面で後バルーンを膨張させるこ
とにより、２つのバルーンで体壁を挟さんで医療用具を
しっかりと固定でき、また、体腔からの気腹ガスの漏れ
を防止できる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、主として体腔内に経皮的に挿入される医療器具を、体表に気密固定 するための医療用具装着用バルーンカテーテルに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

腹腔鏡下における外科手術は、気腹後の腹腔に腹部の皮膚を通して医療器具、 例えばトラカールを刺入し、それを介して腹腔鏡や様々な処置具を挿入して行う ものである。従来から用いられているトラカールには、金属製品の他、繰り返し 使用による針先の切味低下によって刺入感覚が不均一化するのを解消したディス ポーザブル製品があり、刺入直後の針先による腹腔内臓器損傷の防止策や、気腹 状態を手術中維持できるように処置具挿入口の脱気防止弁機構等が工夫され、ほ ぼ満足される器具として術者に提供されている。

【０００３】 手術中、トラカールを通して頻繁に処置具を出し入れしたり、器具に力を加え る必要のあるときなどには、術者の気がつかないうちに自然にトラカールが腹壁 から抜け落ち、再挿入に手間取ることがある。このような問題に対しては、トラ カールに一体成形或いは後加工によりネジ状の構造を持たせ、刺入後、腹壁にね じ込むことにより確実に固定する工夫が知られている。しかしながら、鋭角的構 造物を腹壁にねじ込むことは、腹壁組織の損傷や出血を引き起こし、術後治癒の 遅延や傷口瘢痕の拡大をまねき好ましくない。

【０００４】 また例えば、下腹部手術既往例などでは、腹腔の高度な癒着があり通常の穿刺 が困難で、腹壁の小切開後にトラカールを刺入する。この場合、前述のネジ状構 造物では刺入口が大きすぎて固定できないばかりか、気腹ガスの漏出が発生し、 部分的な縫合など、煩雑な処置が必要とされる。

【０００５】 また、本考案者らは、このような現状に鑑み、円筒状部材の外面に２個のバル ーンを設け、これらをトラカールに装着して腹壁に刺入し、先端側のバルーンが 腹腔内に入ったところでバルーンを膨張させることにより、２個のバルーンの間 に腹壁を挟んでトラカールを固定する用具の考案をなし、実願平３−１０６４１ ０号に開示した。この装着用バルーンカテーテルは、先端側バルーンを膨張、収 縮させるための先枝チューブが、手術中、腹壁部分で強く圧迫されるため、逆止 弁から先バルーンへの流通経路が閉塞して気液流通に障害が起こることがあり、 先バルーンの膨張収縮を確実に行えないという問題があった。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、トラカールを腹壁に固定する手段の、前述のような問題点を解決す るために、種々の検討の結果なされたもので、その目的とするところは、トラカ ールに容易に装着でき、刺入障害がなく、腹壁組織の損傷を軽減し、トラカール を腹壁に安全確実に気密固定できると共に、バルーン部の膨張収縮を確実に行う ことのできるトラカール固定手段を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記の目的を達成するための本考案による医療用具装着用バルーンカテーテル は、肉薄のチューブよりなる内筒と伸縮可能な弾性材料で作られた外筒とを重ね 合わせ、その先端部、後端部及び中央部で内外筒を接着して、先バルーンと後バ ルーンを形成させたバルーン部、先端側が内外筒の間を通って先バルーン内に開 口し後端側はバルーン部の後端部で分岐した先枝チューブ、及び、先端部が内外 筒の間を通って後バルーン内に開口し後端側はバルーン部の後端部で分岐した後 枝チューブより構成され、両枝チューブの後端部には各々接続用コネクターを有 する気液開閉装置を付設すると共に、先枝チューブ内の先バルーンと後バルーン 間の部位に補強用チューブを挿入した構造を特徴とする。

【０００８】

【実施例】

以下、図示した実施例に基づいて、本考案を詳細に説明する。 図１は本考案による医療用具装着用バルーンカテーテルの概観図、図２はバル ーン部の構造を示す断面図で、図３は使用状態を示す概略図である。

【０００９】 本考案による医療用具装着用バルーンカテーテルは、バルーン部（１）、その 後端部に連結された先枝チューブ（７）と後枝チューブ（８）、及び両枝チュー ブの後端に各々連結され逆止弁（１１）（１２）を有するパイロットバルーン（ ９）（１０）で構成されている。

【００１０】 バルーン部（１）は、内筒（１５）に伸縮可能な弾性材料で作られた外筒（１ ６）が重なった構造を持ち、先端接着部（４）、中央接着部（５）及び後端接着 部（６）で内外筒が接着され、各接着部間では内筒（１５）と外筒（１６）が剥 離していて、先バルーン（２）と後バルーン（３）を形成する。また、内筒（１ ５）と外筒（１６）の間には、バルーン部（１）の後端部より、先枝チューブ（ ７）と後枝チューブ（８）が軸方向に各々先バルーン（２）と後バルーン（３） まで気液流通できるように導かれ、各接着部で接着固定されている。そして更に 、先枝チューブ（７）内の先バルーン（２）と後バルーン（３）間の部位に補強 用チューブ（１７）を挿入して、使用時に先枝チューブ（７）がこの部位で潰れ るのを防止し、先バルーン（２）への気液流通をより確実にできるようになって いる。

【００１１】 内筒（１５）は、市販のトラカール外筒（２１）の外径に合った内径寸法を持 つ、厚さ０．１〜２ｍｍの肉薄なチューブであり、例えば、軟質塩化ビニル樹脂 、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴムのような適度な柔軟性と弾力性 をもつ材料により、押出成形もしくはディッピング成形等の方法で作成されるが 、必ずしも柔軟性を有するチューブに限定する必要はない。トラカール外筒（２ １）に装着し腹壁に刺入する時に、刺入孔の周辺組織との摩擦抵抗によりずれな い内径寸法と柔軟性を選択することが肝要である。

【００１２】 また、外筒（１６）は、バルーンを形成する厚さ０．１〜０．５ｍｍのチュー ブ状の弾性部材であり、例えば、シリコーンゴム、天然ゴムのような適度な伸び と復元性をもち伸縮可能な材料によって押出成形もしくはディッピング成形等の 方法で作成される。先端（４）、中央（５）、後端（６）の各接着部で内筒（１ ５）に接着され、接着部と接着部の間がバルーンになる。バルーンの膨張時の盛 り上りは５〜３０ｍｍで、先バルーン（２）と後バルーン（３）の軸方向の長さ はそれぞれ５〜３０ｍｍとするのが適切である。また、両バルーンの間隔、即ち 中央接着部（５）の軸方向長さは、患者の腹壁の厚さに対応するもので通常は１ ０〜１５ｍｍ程度であるが、特に個人差のある皮下脂肪層の厚みを考慮して５〜 ３０ｍｍの間で数種類準備しておくのが好ましい。また、トラカール外筒（２１ ）に接着して腹壁へ刺入する際の刺入孔周辺組織との摩擦抵抗を軽減し、生体組 織の損傷を少なくすることが重要であり、バルーン部（１）の先端部は、丸め処 理するか、或いはテーパー状に加工され、両バルーン収縮時の嵩張りも必要最小 限にするのが好ましい。

【００１３】 図２に示した実施例では、内筒（１５）と外筒（１６）は別部品として作られ ているが、例えば、外筒（１６）の形成にシリコーンゴムや天然ゴムのような液 状材料を用いる場合は、内筒（１５）表面のバルーンを形成する部位に剥離剤を 塗布しておくことにより、一体的にディッピング成形することが可能である。ま た、外筒（１６）は、先バルーン（２）と後バルーン（３）がそれぞれ分割され た部品で形成されていても良い。更に、内筒（１５）と外筒（１６）を中央接着 部（５）で接着し、外筒（１６）の各バルーンを形成する部位を予めバルーンの 形状に賦形する方法や、全体を１つのバルーンで形成し、先バルーン（２）と後 バルーン（３）に相当する部位を中央接着部（５）にあたる部位に比べて肉薄化 しておくことにより、局部的膨大部を設ける方法であっても、本考案の機能を満 足できる。そのとき、バルーンを膨張させる導管装置は１つでも良いが、前後の 膨大部を確実に膨張させる工夫が必要である。

【００１４】 先枝チューブ（７）及び後枝チューブ（８）は、図２に示すようにその先端部 が内筒（１５）と外筒（１６）の間を通って、それぞれ先バルーン（２）及び後 バルーン（３）内に開口し、そこからバルーン部（１）の後端部へ気液流通的に 導き出されたチューブである。図１（Ａ）のように各々独立したチューブでも良 いが、図１（Ｂ）に示すようにバルーン部（１）内とその後端部近傍は互に一体 化されたチューブで２つの流通路をもつ２腔チューブ（３）を用い、後方の位置 に分岐部（１４）を設けて枝分かれしても良い。材質としては、例えば、軟質塩 化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴムのような適度な柔軟性 と硬度をもつ材料を使用し、押出成形された内径０．３〜２ｍｍ、実質的肉厚０ ．３〜１．５ｍｍのチューブが好ましい。また、枝チューブの長さは、術者がト ラカールを使って様々な処置具を出し入れするのに支障にならないように、便宜 的長さとして３０〜２００ｍｍ程度が適当である。

【００１５】 更に、先枝チューブ（７）及び後枝チューブ（８）の後端部には、それぞれ気 液開閉装置であるコネクターを有する逆止弁（１１）（１２）、２方コック、も しくは３方コック等が連結されており一般的なバルーンの膨張注入器具である注 射筒の着脱により、簡便に開閉できる構造となっている。また、枝チューブ（７ ）（８）と逆止弁（１１）（１２）の間にはパイロットバルーン（９）（１０） が連結されても良く、この場合、パイロットバルーンは、バルーン部（１）のバ ルーン膨張状況のモニターができるように、例えばシリコーンゴム、天然ゴム等 の適度な柔軟性と弾力性を有する材料で形成されている。これらの部材は、一般 的な２方コックだけでも十分に気液開閉装置の機能を果たすことができる。

【００１６】 先バルーン（２）と後バルーン（３）間の部位は、先バルーン（２）内に開口 している先枝チューブ（７）のみでもよいが、腹壁部分で強く圧迫されるため、 先枝チューブが潰れて逆止弁から先バルーンへの流通経路が閉塞し、気液流通に 障害が起こることがあり、先バルーン（２）の膨張収縮を確実に行えないことが ある。このような事態を防止するため、図２のように、先枝チューブ（７）内に フッ素樹脂等の適度な硬度を有する補強用チューブ（１７）を挿入すると、腹壁 部分で強く圧迫された場合でも、先バルーン（２）への気道が確保でき、より確 実な気液流通の機能を果たし、先バルーン（２）の膨張収縮を確実に行うことが できる。

【００１７】 本考案によるバルーンカテーテルの使用に当たっては、例えば図３に示すよう に、トラカール外筒（２１）に、必要に応じて潤滑剤を塗してバルーン部（１） を装着し、トラカール内針を利用して腹壁（１９）に穿刺し、先バルーン（２） の部位が腹腔（２０）内に入った所で、逆止弁（１２）から空気または生理的食 塩水を注入することにより膨張させる。ここで、トラカール把持部（１８）を引 いて腹壁（１９）内側に先バルーン（２）を密着させた後、後バルーン（３）を 同様にして体外で膨張させ腹壁（１９）を先バルーン（２）と後バルーン（３） の２つのバルーン膨張部で挟み込むようにして、気密的にトラカール外筒（２１ ）を体表に固定する。

【００１８】

【作用】

本考案の医療用具装着用バルーンカテーテルは、体腔に経皮的に挿入される医 療器具、例えばトラカールに容易に装着でき、その適度な柔軟性と弾力性により トラカール外筒に密着して、また、刺入抵抗となる嵩張りが少ないため、位置ず れすることなく安全、容易に経皮的挿入ができる。

【００１９】 また、２個のバルーン膨張部をもち、体腔内と体外表面で膨張させることによ り、経皮的挿入口を体内・外から挟み込むように固定できるため、トラカールを 確実に固定でき、柔軟性と弾力性をもつ膨張バルーンが体壁に接触するので組織 の損傷を最小限に少なくし、且つ術者のトラカール操作角度に追随して膨張バル ーンが自在に変形するので、挿入口とトラカールの間隙を確実に気密シールする ことができる。更に、症例により小切開した挿入口で、トラカール外径よりも挿 入口の方が大きく間隙が多くとも、バルーン膨張径を大きくすることにより容易 に確実に気密シールすることができる。

【００２０】 また、補強用チューブを挿入している先枝チューブは、腹壁で強く圧迫された 場合でも潰れることがなく、先バルーンへの気液流通気道が確保でき、先バルー ンの膨張収縮を確実に行うことができる。

【００２１】

【考案の効果】

以上の通り、本考案の医療用具装着用バルーンカテーテルを用いると、医療用 具に容易に装着できて経皮的な挿入に支障がなく、挿入口周辺組織の損傷を軽減 し、不必要な出血が少なく患者に与える負担を軽減できる。また、トラカールの 挿入時にはバルーンが確実に膨張して固定できると共に、術中の自然抜け落ちや 、気腹ガスの漏出を防止でき、トラカールの再挿入や術野の確保等、術者を不必 要な煩雑さから開放し、より手術の安全性を高めることができる。従って、腹腔 鏡下外科手術における体腔に経皮的に挿入される医療器具、例えばトラカールを 体表に気密固定する医療用具装着用バルーンカテーテルとして有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例となる医療用具装着用バルー
ンカテーテルの構成を示す概観図である。

【図２】本考案の医療用具装着用バルーンカテーテルの
バルーン部の構造を示す断面図である。

【図３】本考案の医療用具装着用バルーンカテーテルの
使用状態を示す概略図である。

【符号の説明】

１ バルーン部 ２ 先バルーン ３ 後バルーン ４ 先端接着部 ５ 中央接着部 ６ 後端接着部 ７ 先枝チューブ ８ 後枝チューブ ９，１０ パイロットバルーン １１，１２ 逆止弁 １３ ２腔チューブ １４ 分岐部 １５ 内筒 １６ 外筒 １７ 補強用チューブ １８ トラカール把持部 １９ 腹壁 ２０ 腹腔 ２１ トラカール外筒

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 肉薄のチューブよりなる内筒と伸縮可能
   な弾性材料で作られた外筒とを重ね合わせ、その先端
   部、後端部及び中央部で内外筒を接着して、先バルーン
   と後バルーンを形成させたバルーン部、先端側が内外筒
   の間を通って先バルーン内に開口し後端側はバルーン部
   の後端部で分岐した先枝チューブ、及び、先端部が内外
   筒の間を通って後バルーン内に開口し後端側はバルーン
   部の後端部で分岐した後枝チューブより構成され、両枝
   チューブの後端部には各々接続用コネクターを有する気
   液開閉装置を付設すると共に、先枝チューブ内の先バル
   ーンと後バルーン間の部位に補強用チューブを挿入した
   ことを特徴とする医療用具装着用バルーンカテーテル。