JPH0637342B2 - セラミツクス複合体及びその製造方法 - Google Patents

セラミツクス複合体及びその製造方法

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JPH0637342B2
JPH0637342B2 JP5769086A JP5769086A JPH0637342B2 JP H0637342 B2 JPH0637342 B2 JP H0637342B2 JP 5769086 A JP5769086 A JP 5769086A JP 5769086 A JP5769086 A JP 5769086A JP H0637342 B2 JPH0637342 B2 JP H0637342B2
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隆夫 西岡
雅也 三宅
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、耐摩耗性の要求される工具や部品の構成材
料として好適なセラミツクス複合体、詳しくは、硬度と
母材に対する密着性に優れた表面層をもつセラミツクス
複合体とその製造方法に関する。
〔従来の技術とその問題点〕
切削工具に多く見られるように、セラミツクス母材の耐
摩耗性の強化策として、母材表面に、既知の技術、例え
ばCVD法やPVD法により1層又は2層のコーテイン
グ層を設けることは既に行われている。
例えば、特開昭54−1308号公報には、窒化珪素
(以下Si3と記す)質の切削工具母材に酸化アルミ
ニウム(Al2)等の耐摩耗性の高いセラミツクスコ
ーテイング層を設けることで、鋳鉄系材の高速切削条件
下での耐摩耗性を改善する技術が示されている。Si3
は、機械的強度、破壊靭性、耐熱性、耐熱衝撃性に優
れているが、例えば、文献{J.Am.Ceram.Soc.Vol 68
〔1〕C−30−C−31(1985)}に記されてい
るように、鋳鉄材の高速切削では、耐摩耗性の劣化の問
題があり、従つて、母材の寿命を高めるべく、その表面
にAl2等のコーテイング層をCVD法やPVD法等
で生成している訳である。
ところが、既知の方法で得られるコーテイング層は、母
材に対しての接着強度が充分でなく、また、Si3
母材上に直接設けられるAl2等のコーテイング層
は、母材との熱伝導率の相違により、切削熱の流れに厚
み方向の温度勾配を生じ、これに起因した熱応力でき裂
を生じることがあるため、耐久性に問題がある。
そこで、特公昭56−51049号(特許第11066
15号)公報に示されるように、母材と最表面コーテイ
ング層との間に中間コーテイング層を設け、この中間コ
ーテイング層により、切削時に表面コーテイング層に作
用する熱応力、熱衝撃を緩和して母材との接着性を向上
させる例がある。
しかしながら、この方法も、母材に対する中間コーテイ
ング層の接着強度が充分とは云えず、コーテイング層に
よる耐摩効果を長時間持続させるには、依然として改良
の余地が残されている。
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、コーテイン
グ層を母材に対して強固に接着させ得るセラミツクス複
合体の製造方法と、コーテイング層の強固な接着により
耐久性の高められたセラミツクス複合体を提供すること
を目的としている。
〔問題点を解決するための手段〕 この発明のセラミツクス複合体は、母材上に設けた蒸着
膜にイオンを注入して蒸着物とイオン及び母材セラミツ
クスとの化学結合した化合物コーテイング層を生成せし
め、これを第1コーテイング層としてその表面上に硬質
の第2コーテイング層を設けたものである。また、その
複合体を得るための製造方法は、添付図に示すように、
セラミツクス焼結体から成る母材1の表面に、遷移金属
元素の蒸着膜を形成した後、その蒸着膜に、Ar,N,
Ne,He,H,B,C等のイオンの中から選ばれた1種
を注入して蒸着膜を化合物化すると同時に、その膜と母
材との界面部に注入イオンと蒸着物とが母材に浸透した
ミキシング層2を生成せしめ、次いで、イオン注入によ
り得られた化合物第1コーテイング層3の表面に、A
l,Si,IVa 族元素、Va 族元素、VIa 族元素の化合
物、立方晶型窒化硼素、ダイヤモンドの中から選ばれた
1種もしくは2種以上の積層物で成る第2コーテイング
層4を設けることから成る。
遷移金属元素の蒸着膜に、上述したAr 等のイオンを注
入すると、蒸着物とイオンの化学結合により蒸着膜が化
合物化して第2コーテイング層との親和性が高まるだけ
でなく、高エネルギーで注入されたイオンと蒸着物が共
に母材内に浸透して第1コーテイング層と母材との界面
部に3者のミキシング層が形成され、このミキシング層
が、第1コーテイング層の母材に対する接着性を高め
る。
このようにして得られる第1コーテイング層は、それ自
体が非常に強固な層であるが、摩耗の耐久時間をより長
めようとすれば、膜厚を厚くしなければならない。しか
し、厚膜にイオンを注入して上述のミキシング層を得よ
うとすると、コストパフオーマンスの点で問題が残る。
また、より硬質の膜、例えば、Al2膜を第1コーテ
イング層として厚膜に形成すると、Si3等で形成さ
れる母材との熱伝導率が異なるため、温度勾配に起因い
た熱応力によりコーテイング層にき裂が生じると云う問
題も残される。
そこで、この発明では遷移金属元素の化合物から成る第
1コーテイング層上に、CVD法やPVD法と云つた既
知の技術で、耐摩耗性の特に優れる第2コーテイング層
を設け、これによつて耐摩耗性の持続時間を低コストで
延長させるようにしている。
第2コーテイング層は、Al,Si,IVa族元素、Va族
元素、VIa族元素の炭化物、窒化物、酸化物或いはそれ
等の相互固溶体の中から選ばれる1種又は2種以上の化
合物、立方晶型窒化硼素(CBN)、ダイヤモンドと云つ
た硬質材料を使い、その材料の1種から成る単層或いは
2種以上を組合せた複合層となすが、鋳鉄材の切削用途
では、特に、耐摩耗性の高いAl2が有効である。ま
た、第2コーテイング層をAl2で形成する場合の第
1コーテイング層は、Al2膜に作用する熱応力や熱
衝撃の吸収効果が高く、かつ、母材との接着強度も高い
Ti 化合物が有効である。
なお、この発明のセラミツクス複合体は、母材上に接着
強度の大きい化合物第1コーテイング層を介してより硬
質で、しかも、工作物との親和性のない第2コーテイン
グ層を設けてあるので、鋳鉄材の切削工具として使用し
た場合、耐摩耗性、耐久性の増強効果が顕著に発揮され
るが、切削工具以外の耐摩工具、部品等に利用しても、
優れた耐摩性能を示す。
母材は、鋳鉄材の切削用途ではSi3好適であるが、
複合体の用途に応じてSiC,Al2、CBN,ZrO2
云つたあらゆるセラミツクスを任意に選択して使用して
よい。
以下に、この発明の効果を明確にするより具体的な実施
例を挙げる。
〔実施例1〕 まず、母材のSi3として、焼結助剤に5.8重量%
のY23及び12.9重量%のAl2を用い、残部を
Si3とした粉末を湿式混合した後、乾燥した。次
に、この混合粉末をホツトプレスを使つて成形し、か
つ、1850℃で2時間焼結した。そして、得られた焼
結体より14mm×14mm×6mmの試験片を切出し、これ
をダイヤモンド砥石で研削して母材となるJIS SN
G432のスローアウエイチツプを作成した。
次に、そのチツプの表面に、Ti,V,Ta,W,Si の
各金属を0.5μ厚さに蒸着し、さらに、この5種類の
チツプの各々の蒸着膜にイオン注入装置を使つてAr イ
オンを1015dose/ions.cm2注入して化合物第1コーテ
イング層を生成後、その表面にCVD法でAl2の第
2コーテイング層を施した。
また、比較のため、同じスローアウエイチツプに、第1
層としてTi,V,Ta,W,Siの各炭化物を、第2層
としてAl2をコーテイングした。このときの、第1
層はイオン注入を行つていない。
なお、コーテイング層の厚みの制御は、本発明品、比較
例ともコーテイング前後の重量変化を算出して行い、第
1層、第2層ともに2μmの厚さとした。
以上のようにして得られたこの発明の工具と比較例の工
具を、下記の切削条件で切削試験に供し、それぞれの寿
命時間を測定したところ、比較例がいずれも5〜10分
で寿命に至つたのに対し、この発明の工具は30〜80
分と6〜8倍に寿命が延長された。
切削条件 加 工 機:池具鉄工製NC旋盤25kw 被 削 材:FC25 300φ×1000L ホルダー:FN11R−44A 切削速度:500m/分 送 り:0.36mm/rev 切 込 み:2.0mm 寿命判定:VB=0.2mm 〔実施例2〕 母材、第1コーテイング層、第2コーテイング層の材料
を第1表に基いて組合せたコーテイングチツプを作成
し、それ等の切削性能を確かめた。スローアウエイチツ
プの作成方法及び切削条件は実施例1と同じである。
以上の組合せ36種のスローアウエイチツプは、いずれ
も、従来法で得られた比較例のチツプに比べて切削寿命
が5〜10倍に改善された。
〔効果〕
以上の通り、この発明によれば、セラミツクス母材の表
面に、遷移金属元素の蒸着とそれに対するイオン注入を
併用して第2コーテイング層の熱応力、熱衝撃に対する
保護効果をもち、しかも、母材に対する接着性に優れた
化合物第1コーテイング層を生成し、その表面上により
硬質の第2コーテイング層を設けるので、母材のもつ靭
性や耐熱衝撃性などの機械的特性を何ら損わずに、従来
指摘されていたコーテイング層の耐久性の悪さの問題を
解決し得ると云う効果が得られ、寿命の長い、かつ、コ
ストパフオーマンスの充分に改善された経済的なセラミ
ツクス複合体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
添付図は、この発明に係るセラミツクス複合体の一例を
示す部分的な拡大断面図であつて、1は母材、2はミキ
シング層、3は化合物第1コーテイング層、4は第2コ
ーテイング層を示している。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラミツクス焼結体から成る母材の表面
    に、遷移金属元素の蒸着膜に対してAr,N,Ne,H
    e,H,B,C等のイオンの中から選ばれた1種を注入
    して形成される化合物第1コーテイング層と、Al,S
    i,IVa族元素、Va族元素、VIa族元素の化合物、立方晶
    型窒化硼素、ダイヤモンドの中から選ばれた1種もしく
    は2種以上の積層物で形成されて第1コーテイング層を
    覆つた第2コーテイング層とを備え、第1コーテイング
    層と母材との界面部に、注入イオンと蒸着物とが母材に
    浸透して形成されるミキシング層が存在しているセラミ
    ツクス複合体。
  2. 【請求項2】上記第2コーテイング層の化合物が、A
    l,Si,IVa族元素、Va族元素、VIa族元素の炭化物、
    窒化物、酸化物又はそれ等の相互固溶体から成る群の中
    から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特
    徴とする特許請求の範囲第(1)項記載のセラミツクス複
    合体。
  3. 【請求項3】上記母材が、窒化珪素、炭化珪素、酸化ア
    ルミニウム、立方晶型窒化硼素、酸化ジルコニウムのい
    ずれかを主成分としたものであることを特徴とする特許
    請求の範囲第(1)項又は第(2)項記載のセラミツクス複合
    体。
  4. 【請求項4】セラミツクス焼結体から成る母材の表面
    に、遷移金属元素の蒸着膜を形成した後、その蒸着膜
    に、Ar、N,Ne,He,H,B,C等のイオンの中か
    ら選ばれた1種を注入して蒸着膜を化合物化すると同時
    に、その膜と母材との界面部に注入イオンと蒸着物とが
    母材に浸透したミキシング層を生成せしめ、次いで、イ
    オン注入により得られた化合物第1コーテイング層の表
    面に、Al,Si,IVa族元素、Va族元素、VIa族元素の
    化合物、立方晶型窒化硼素、ダイヤモンドの中から選ば
    れた1種もしくは2種以上の積層物で成る第2コーテイ
    ング層を設けることを特徴とするセラミツクス複合体の
    製造方法。
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