JPH063571Y2 - 介護用移送具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は寝たきり老人その他起居動作の不自由な病人等
を対象として、ベッド等からストレッチャー等に移床さ
せるのに使用する介護用移送具に関する。

（従来の技術） この目的のために、従来は空気圧により患者を浮上させ
或いはシートで患者を巻き、これを機械的動作で移動さ
せる等の機械的手段が用いられ、また一般的には、介護
人が直接患者を抱き上げて移す、人手による手段が用い
られていた。

（考案が解決しようとする課題） 上記従来手段における、前者の機械的手段によるもの
は、設備が高価となる上にその取り扱いに特別の技術を
要し、また後者の人手による場合は、複数人の協力を必
要とする場合が多く、その介護人に大きな負担がかかっ
ていた。

（課題を解決するための手段） 本考案は上記の人手により移床させる手段において、介
護人の労力を著しく滅じ、しかも患者に衝撃が加わるの
を防止し、苦痛を与えることなく移床させ得るようにし
たもので、その手段は、一端に枕部３を有する基板１と
その上方の傾動床２を、上下方向の長孔６と該長孔６に
支持されて相対的に上下動できる支軸８をもつ軸支装置
４で連結し、該軸支装置４から少くとも一側方に偏位し
た傾動床２の下面に、該傾動床２の半傾斜状態で基板１
に下面10が接する制動体９を突設したことを特徴とす
る。

（作用） 本考案による介護用移送具は、傾動床２を、制動体９の
下面10が基板１に接した半傾斜状態と、側縁2bが基板１
に接する全傾斜状態にすることができる。そして、半傾
斜状態から全傾斜状態に傾斜を増大すると、軸支装置４
においては、長孔６と支軸８は相対的にずれて長孔６の
長径方向に移動するが、同時に制動体９の下面10は基板
１に対して横方向にずれる動きを行い、このとき接触面
の摩擦抵抗により制動作用を受ける。

したがって、傾動床２に患者を乗せてストレッチャ又は
他のベッドへ移すとき、傾動床２を半傾斜状態にした後
は、介護人が患者から離れ反対側へまわることができ
る。そして傾動床を更に傾斜させると制動体９に作用す
る制動力により急激な傾斜の増大は阻止され、介護人が
患者を側方に押して体重を移動させると、傾動床２の回
転力が徐々に増大して、ゆっくりと全傾斜状態になり、
患者を安全に移動させることができる。

（実施例） 本考案による移送具の実施態様を図面によって説明す
る。

本考案による介護用移送具は、使用位置に定置させる基
板１と、該基板１の上部に傾動自在に組合わせる傾動床
２を備える。基板１の一端には枕部３が高く設けられ、
傾動床２には毛布の如き柔軟材2aが装着される。また、
傾動床２の左右両側の側縁2bは、傾動床２の全傾斜時に
基板１に当接できるようになっている。

基板１の中央部において、該基板１と傾動床２との間に
一対の軸支装置４が介設される。軸支装置４の一方の部
材である軸受５は、基板１に固定され、長径を上下方向
とした長孔６があけられている。軸支装置４の他方の部
材である一対の突片７には、前記長孔６、６を通した１
本の支軸８が固定されており、支軸８は長孔６内で上下
方向の移動と回動が可能である。

なお、支軸８を１本の長軸とすることなく、各突片７、
７のそれぞれに固定した２本の短軸としてもよい。

また、基板１の枕部３は基板１と一体的に形成したもの
を示したが、これを基板１に対し可動式として大人、子
供の身長に合わせて伸縮させるようにしてもよく、また
上記柔軟材2aの両側縁は傾動床２の両側縁2bから適当幅
突出するよう延長させて使用を便利にした。

そして、軸支装置４の側方には、傾動床２の下面から下
方に突出する制動体９が固設されている。該制動体９
は、円弧状の下面10をもち、傾動床２が水平のときは該
下面10が基板１から離れた長さであり、傾動床２の側縁
2bが基板１に達しない半傾斜のとき下面10が基板１に接
し、このとき傾動床２は、該制動体９と長孔６内の支軸
８で支持され、その状態を保持することができる。

この半傾斜状態から側縁2bが基板１に接する全傾斜の状
態に傾斜させようとするときは、制動体９の下面10を基
板１上で軸受５側へ滑らせ、支軸８を長孔６内で上方に
滑らせなければならず、下面10と基板１の摩擦抵抗が傾
斜の増大に対して抵抗する。このとき長孔６と支軸８の
接触面においても摩擦抵抗は生じるが、制動体９の制動
力に比べると小さい値である。

制動体９は、図示のように軸支装置４の両側に設けると
便利であるが、患者を下す側のみに設けるだけでもよ
い。

第５図に示すように、ベッド11上に上向きに寝ている患
者をストレッチャ12に移すときは、ベッド11とストレッ
チャ12に渡って基板１を乗せ、患者を横転させ、額を枕
部３に乗せたうつぶせ状態にして傾動床２上に乗せか
け、患者の重心がベッド11側の制動体９上を越すと、傾
動床２は半傾斜状態になり、患者を押上げてその重心が
軸支装置４上を越すと、該軸支装置４とストレッチャ12
側の制動体９に支持された半傾斜状態になる。

この状態から、介護人はストレッチャ12側にまわって患
者が上向きになるように再び横転させ、患者の重心がス
トレッチャ12側の制動体９を越すと傾動床２は全傾斜状
態になろうとするが、制動体９の下面10と基板１の摩擦
力によって傾斜の増大は阻止される。

そこで患者の重心を更に移動させると、傾動床２は、前
記摩擦力による傾動阻止作用を受けながらこれに打ち勝
ってゆっくりと全傾斜状態になり、患者が急激に滑落し
たり衝撃を受けたりすることは防止される。

なお、ベッド11側の制動体９も、傾動床２に患者を乗せ
るときに傾動床２に対して制動作用を行い全傾斜から半
傾斜に移るときに支軸８が長孔６の下端に衝突する衝撃
を緩和する。この制動体９は傾動床２の両側に是非必要
というものではなく、傾動床２から他へ移す側のみに制
動体を設けて、移す際の滑落又は衝撃のみを防止するよ
うにしてもよい。

なお、前記実施例では軸受５を基板１に設け、支軸８を
傾動床２に設けているが、これを逆にして軸受５を傾動
床２に設け、支軸８を基板１に設けてもよい。

（考案の効果） 本考案によるときは、傾動床を一旦半傾斜状態で停止さ
せることができることと、半傾斜状態から全傾斜状態に
するときには制動力が作用して滑落が生じないことによ
り、介護人に負担が加わらず、患者にも衝撃は作用しな
い利点を有する。したがって、従来の介護に際して多人
数の労力を要し、著しく困難でかつ患者にも多大の苦痛
を与えていた患者の移動を至極安易にすることができ、
しかも、特に技術を要することなく、１人の介護人で行
えるばかりでなく、患者にも苦痛を与えずに移し変える
ことができ、その装備は簡略で廉価に得られ、軽量で取
り扱い操作も容易である等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は移送具の
斜視図、第２図はその正面図、第３図は一部の拡大正面
図、第４図は側面図、第５図は移送具の使用状態を示す
正面図である。 １…基板、２…傾動床 ３…枕部、４…軸支装置 ５…軸受、６…長孔 ７…突片、８…支軸 ９…制動体、10…下面

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一端に枕部３を有する基板１とその上方の
   傾動床２を、上下方向の長孔６と該長孔６に支持されて
   相対的に上下動できる支軸８をもつ軸支装置４で連結
   し、該軸支装置４から少くとも一側方に偏位した傾動床
   ２の下面に、該傾動床２の半傾斜状態で基板１に下面10
   が接する制動体９を突設したことを特徴とする介護用移
   送具。