JPH0634344Y2 - 炭素繊維強化セメント複合材料 - Google Patents

炭素繊維強化セメント複合材料

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JPH0634344Y2
JPH0634344Y2 JP10022090U JP10022090U JPH0634344Y2 JP H0634344 Y2 JPH0634344 Y2 JP H0634344Y2 JP 10022090 U JP10022090 U JP 10022090U JP 10022090 U JP10022090 U JP 10022090U JP H0634344 Y2 JPH0634344 Y2 JP H0634344Y2
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reinforced cement
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昭 小島
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【考案の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本考案は炭素繊維強化セメント/コンクリート複合材
料、特に曲げ強度および層間剪断強度の優れた上記複合
材料に関する。
(従来の技術) これまでセメント系材料の欠点を補強するために、アス
ベスト、ガラス繊維、鋼繊維及び炭素繊維等が試験的に
用いられたり、あいは実際に使用されたりしてきた。そ
の中でも、アスベストは古くから使用されてきたが、発
ガン性物質を含む点から現在では使用が規制され、やが
ては禁止されようとしている。また、ガラス繊維は、耐
アルカリ性のものでも、使用してから1〜2年の材令で
強度は半減するために広く使用されるに至っていない。
鋼繊維は、密度が高いことや、使用した際に、腐蝕が生
じこれによってセメント材料にひび割れが発生するため
に、防錆処理が必要となり、コスト高になる等の問題が
ある。
それに対し、炭素繊維は、軽量で高い引っ張り強度をも
ち、耐蝕性に優れていることから、フリーアクセスフロ
アーの床材料や、ビルディングの外装材に最近使用され
るようになった。これら従来の炭素繊維強化セメント複
合材料の製造方法を第2図に示す。同図において、複合
材料は、長さ2mm〜10mm程度の炭素短繊維を、オムニミ
キサーでモルタル中に分散、混合し、型枠中に流しこん
だのちオートクレーブ中で養生することによって製造さ
れる。この方法で、汎用炭素繊維(弾性率4.1×103kg/m
m2)を使用して作られた炭素繊維強化セメント複合材料
は、2vol%〜5vol%の炭素繊維混入率で、70kg/cm2〜21
0kg/cm2程度の曲げ強度を示し、また、高性能炭素繊維
(弾性率38×103kg/mm2)を用いて同様の方法で製造し
た炭素繊維強化セメント複合材料の曲げ強度は、1vol%
〜5vol%の炭素繊維混入率で、200kg/cm2〜700kg/cm2
度である。しかしながら、これら炭素繊維強化セメント
複合材料中のセメント水和物と炭素繊維との接着性は良
好でなく、炭素繊維の特性を十分に発揮していないのが
現状である。
この点を改善するための一つの試みとして、炭素繊維の
表面を硝酸で酸化し、カルボキシル基などの含酸素基を
導入すること、あるいは濃硫酸、発煙硫酸またはクロス
ルホン酸などのスルホン化剤によるスルホン化処理を施
しスルホン酸基を導入することによって、炭素繊維の表
面を改質し、炭素繊維強化セメント複合材料の強度を増
強しようとすることが行われた(例えば、特開昭60-137
860号公報)。しかしながら硝酸またはスルホン化剤に
よる酸化は、繊維表面だけにとどまらず繊維内部にまで
及ぶために、炭素繊維自体の強度が低下し、炭素繊維強
化セメント複合材料の強度増強には効果的ではなかっ
た。
一方低温プラズマによる各種材料の表面処理技術が最近
発達してきた。この低温プラズマによる表面処理は、エ
レクトロニクス産業を中心にして発達したもので、極め
て精密かつ微細な処理を、室温付近の低い温度で、クリ
ーンに行うことが可能であると共に、短時間で大量に処
理することのできる技術である。特公昭47-24978号公報
には、炭素繊維に低温プラズマ処理を施し、繊維表面を
清浄化、凹凸化するとともに活性化して炭素繊維と、特
にプラスチック母材との密着性、接着性を改良し、補強
材料としての機能を向上させる発明が開示されている。
この公報にはセラミックスに関する僅かな示唆が見られ
るものの、広義のセラミックスに属する各種窯業製品、
すなわち、焼結性セラミックス、熱溶融無定形ガラス、
あるいは水硬性セメントなどのうち、特定種に関する具
体的開示は皆無である。セメント類は他のセラミックス
とは、物理的・科学的に、また用途において全く相違
し、技術的課題の解決手段も異なる。従ってこれまでに
プラズマによる表面処理が、炭素繊維強化セメント複合
材料の製造に利用されたことはないと云うことができ
る。
(考案が解決しようとする問題点) 本考案者は上記の低温プラズマ処理によって炭素繊維表
面を改質し、炭素繊維のセメント水和物に対する濡れ性
を高め、上述の問題点を解決することに成功したもので
ある。
すなわち、本考案の目的は、著しく増大した曲げ強度、
たわみ性および層間剪断強度を有する炭素繊維強化セメ
ント複合材料を提供するにある。
本考案の別の目的は耐熱性並びに上記強度特性において
極めて優れた炭素繊維強化セメント複合材料を提供する
にある。
更に別の目的は、強固な堅牢度を恒久的に維持し且つ軽
量なセメントコンクリート構造物を比較的安価に提供す
ることにある。
(問題点を解決するための手段) 上述の目的は、酸素、アルゴン、二酸化炭素、アンモニ
アおよび窒素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の
気体の低温プラズマ処理により表面を親水性に改質され
た炭素繊維を強化材としてセメントマトリックス中に実
質的に均一な配置且つ緻密な接着状態で含有してなるこ
とを特徴とする炭素繊維強化セメント複合材料によって
達成される。かゝる複合材料は、炭素繊維を酸素、アル
ゴン、二酸化炭素、アンモニアおよび窒素よりなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の気体の低温プラズマで表面
処理して表面に親水性を付与した後、水−セメント比が
20〜100重量%のセメントペーストと合体して上記炭素
繊維を上記セメントペースト中に実質的に均一に配置し
た成形体となし、該成形体を硬化せしめることによって
製造することができる。
以下、本考案の構成をその作用とともに、添付図面を参
照して詳述する。
本考案による炭素繊維強化セメント複合材料の製造工程
フローシートを第1図に示す。
原料の炭素繊維は、ポリアクリルニトリル(PAN)繊維
等から出発した所謂、高性能炭素繊維および、タール・
ピッチを出発原料とする所謂、汎用炭素繊維の何れでも
よいが、経済性のみを考慮すれば後者が好ましい。
かゝる炭素繊維は、繊維径5〜20μm程度の連続繊維ま
たはその織布、網状物、あるいは60mm以下のチョップス
トランド等の短繊維をそのまま、あるいはランダムに配
置した厚さ0.1mm〜1mm、望ましくは約0.3mmのシート、
または、厚さ1mm〜10mm、望ましくは約5mmのフェルトな
いしはチョップドストランドマットとして使用する。
炭素繊維の表面改質は、繊維表面に親水性を付与させる
ことから、炭素プラズマ、アルゴンプラズマ、二酸化炭
素プラズマ、アンモニアプラズマまたは窒素プラズマを
単独または併用した低温プラズマ処理を常法に従って施
す。適用するガスとしては酸素、アルゴン、二酸化炭素
が特に好ましい。
低温プラズマで処理した炭素繊維表面は、肉眼的にも、
走査型電子顕微鏡的にも変化はみられないが、極めて親
水性に改質される。特に、酸素プラズマの場合には、炭
素繊維表面に含酸素基が導入される。これらのプラズマ
処理した炭素繊維シートまたはフェルトは、セメントと
水とからなるセメントペースト中に含浸させる場合、プ
ラズマ処理なしの炭素繊維に比べてその含浸速度が著し
く早められ、生成した炭素繊維強化セメント複合材料中
におけるセメントマトリックスとの緻密な接着状態が得
られる。
本考案複合材料の他方の原料であるセメントとしては、
ケイ酸カルシウムを主成分とする通常のポルトランドセ
メント、またはアルミナセメント、スラグセメントを始
め、プラスター類まで何れも適用可能であるが、就中、
耐熱性良好なアルミナセメントは耐熱性複合材料を与え
るという点で特に好ましい。これらセメントの水性ペー
ストを織布、シート、フェルト等の炭素繊維構造物中に
充分に含浸させるには、セメント粒子は極力細かいこと
が良く、特にアルミナセメントは、比表面積にして3,00
0〜9,000cm2/g、望ましくは7,500〜8,500cm2/gの微細粉
状のものを使用するのが効果的である。
炭素繊維強化セメント複合材料の強度は、セメントペー
ストの水−セメント比すなわちセメント重量に対する水
の重量百分率によって影響される。水−セメント比が大
きすぎると、セメントペーストの流動性は高くなり、炭
素繊維シートまたはフェルトへの含浸は容易になるが、
製造された炭素繊維強化セメント複合材料の強度は低
い。それに対し、水−セメント比が低すぎると、凝結速
度は速いが流動性が小さいために、炭素繊維シートや炭
素繊維フェルトの空隙内に、セメントペーストは含浸さ
れないので、得られる複合材料中のセメントマトリック
スと炭素繊維との緻密な接着が達成されず、強度の高い
複合材料は製造できない。従って、セメントペーストの
望ましい水−セメント比は、製造時の作業性と炭素繊維
強化セメント複合材料の強度の点から25〜40%である。
また、セメントペースト中に砂、ケイ砂等の細骨材を使
用すること、減水剤やその他の混和剤を添加することも
できる。
上記炭素繊維またはそのシート状繊維構造物は、セメン
トペーストと合体されセメントペースト中に実質的に均
一に配置される。既述の通り、炭素繊維はプラズマ処理
によってその表面のセメント水性ペーストに対する濡れ
性すなわち親和性が増大しているため、合体は頗る迅速
容易に行なわれる。かゝる合体は、セメントペースト中
に、その型込め、注入等の成形に先立って炭素短繊維を
均一に混入分散せしめたプレミックスとなすこと、セメ
ントペーストを吹き付ける際、噴出嘴近傍で、短繊維を
混入すること、炭素繊維織布、シート、マット等の繊維
構造物に予めセメントペーストを含浸させプリプレグに
よりシートモールディングコンパウンドとなすこと、ハ
ンドレイアップ法によること、ストランド状プリプレグ
によりフィラメントワインディングとなすこと等、通常
繊維強化樹脂の製造に慣用されている方法に準じて行な
うことができる。
この際、プラズマ処理したチョップドストランド状の炭
素繊維のセメントペースト中への均一分散は、従来法の
ようにオムニミキサーを使用する必要はなく、通常のモ
ルタルミキサーで十分可能である。
炭素繊維強化セメント複合材料中の炭素繊維混入率は、
炭素繊維シートまたはフェルトの積層枚数によって、あ
るいはセメントペースト中に分散させる炭素繊維量によ
って調節できる。これによって、製造される複合材料の
強度やたわみ等の諸特性も制御される。
本考案の炭素繊維強化セメント複合材料は、従来法と同
様、オートクレーブ中で養生し得ることは勿論、単なる
水中養生だけで高強度となすことができる。
具体的には、例えばアルゴンプラズマで処理した炭素繊
維シートを用い、極微粉のアルミナセメント(比表面積
8000cm2/g)から作られた、炭素繊維強化セメント複合
材料(炭素繊維混入率3.3vol%)は530kg/cm2の曲げ強
度を示すことが確認された。この強度は、プラズマ処理
なしの炭素繊維シートから同じ条件で作られた複合材料
よりも約1.3倍高い。また、プラズマ処理した炭素繊維
強化セメント複合材料のたわみは、無処理のものよりも
約2.8倍大きい。
さらに、酸素プラズマで処理した炭素繊維シートを用
い、炭素繊維混入率を4.6vol%と高くした複合材料は、
1000kg/cm2の曲げ強度を示すことも確認された。この強
度は、炭素繊維がランダムに配置された炭素繊維強化セ
メント複合材料であるにもかかわらず、これまでの炭素
繊維強化セメント複合材料よりもはかるかに高いもの
で、プラズマ処理なしの炭素繊維シートから作られた複
合材料(曲げ強度720kg/cm2)よりも1.3倍高い。また、
従来法では実施できなかった厚さ1mm程度の炭素繊維強
化セメント複合材料薄板の製造も可能である。そして、
型枠を使用することによりパイプ、丸棒、角棒またはU
字型等各種形状の炭素繊維強化セメント複合材料も、簡
単な方法で製造できる。
本考案の炭素繊維強化セメント複合材料は、プラズマを
使用しない従来の方法で作られたものよりも、はるかに
大きな曲げ強度、たわみおよび可撓性等を有している。
その他に、炭素繊維強化セメント複合材料は、電気的に
は伝導性を、表面状況は堅牢性と光沢を示している。
更に本考案複合材料は従来の耐アルカリガラス繊維強化
セメントと相違し、その強度、堅牢性は恒久的であり、
また、鋼、鉄補強コンクリートに比し著しく軽量である
という利点もある。
(実施例) 本考案の具体例を、下記の実験例および実施例により説
明する。
実験例1 PAN系の高性能炭素繊維(直径7.5μm、強度300kg/m
m2、弾性率23×103kg/mm2)を長さ20mm程度に切断し、
それをランダムに配列した、厚さ0.3mmのシート(目付3
3g/m2、5cm×5cm)に、二枚の平行平板型電極を有する
プラズマ処理装置を用いて、次の方法により低温プラズ
マ処理を施した。
上記炭素繊維シート1枚をプラズマ処理装置内の下部電
極板上に設置し、酸素ガスを20ml/min流しながら、真空
ポンプで装置内を0.5Torrの減圧にした。電極間に周波
数13.56MHzの高周波を所定出力(5W,10W,25W,50W,150
W)で印加して酸素プラズマを発生させ10分間処理し
た。
処理前の炭素繊維シート上に水を1滴落としたところ、
水滴は半月形になったのに対し、酸素プラズマで処理を
行なった場合には、水滴は瞬時に炭素繊維シートの空隙
内に滲み込んだ。炭素繊維シートが水を吸い込む様子
は、酸素プラズマ処理の有無によって顕著に異なってい
たので、より明確な違いとなって表れる「動的濡れ試
験」を行なった。この方法は、試料を水中に漬けた際の
重量を測定し、それから試料の濡れ張力(濡れやすさ、
親水性)を求めるものである。従って、濡れ易い試料の
場合には、重量が顕著に増加するのに対し、濡れにくい
試料の場合には逆に浮力を受けることによって軽くな
る。
実験は、幅10mm、長さ100cmの炭素繊維シート(上記と
同じもの)を動的濡れ試験装置〔レスカ(株)製、WET-
3000型〕に取り付け、炭素繊維シートの先端部4mmを水
中に沈め、30秒後の濡れ張力を求めた。酸素プラズマ処
理前の炭素繊維シートでは、−131mgを示した。重量が
マイナスであるのは、炭素繊維シートが水に濡れないこ
とを意味している。それに対して、酸素プラズマで処理
した炭素繊維シートでは308mgの濡れ張力になった。こ
れは、炭素繊維シートが極めて水に濡れ易くなり、その
表面が親水性に改質されたことになる。酸素プラズマ処
理前后の相対値を求めると、(131mg+308mg)/131mg=
3.3倍になり、極めて親水性に表面が改質されたことが
わかる。
さらに、酸素プラズマ処理後の炭素繊維シートをデシケ
ーター中に入れ、20日、30日、50日および100日を経過
した後の濡れ張力を測定した。その結果を下表に示す。
これらの結果により、酸素プラズマ処理によって、炭素
繊維シートの親水性は3.2倍程度に改質されるととも
に、その機能性(濡れ張力)は処理後100日経過しても
失活することなく持続していた。
実験例2 アルゴンガスを使用し、炭素繊維シートへのプラズマ処
理を行なった。この処理の場合も酸素プラズマの場合と
同様に、炭素繊維シートは親水性に改質された。アルゴ
ンガスの流量を20ml/min、出力を5Wから150Wまで変化さ
せて10分間プラズマ処理を行なった。プラズマ処理時の
出力を増大させると、重量減少率は0.5%から1%へと
僅かに増加したが、酸素プラズマの場合よりは極めて少
なかった。
また、アルゴンプラズマ処理した炭素繊維シートの表面
上を走査電子顕微鏡で観察したが、プラズマ処理によっ
て炭素繊維表面上に形態の変化が見られることはなかっ
た。そして、プラズマ処理によって付与された親水性
は、処理後30日を経過しても消失することはなかった。
実施例1 前記実験例1で用いた炭素繊維シート(但し、5cm×10c
m)を、同じく実験例1で用いたプラズマ処理装置内に
設置し、アルゴンを100ml/min流しながら、真空ポンプ
で装置内を0.5torrの減圧にした。二枚の平行平板型の
電極間に周波数13.56MHzの高周波を出力25Wで印加し、
アルゴンプラズマを発生させ、この状態に10分間保持し
た。プラズマ処理後の炭素繊維シートは親水性を示し
た。
また、同じ処理条件で、酸素プラズマまたは二酸化炭素
プラズマで炭素繊維シートを処理した場合も、親水性を
示した。
上記のアルゴンプラズマで処理した炭素繊維シート12枚
を、アルミナセメント(比表面積8000cm2/g)300gに水1
00gを加えて調製したセメントペースト中に漬けて十分
に含浸させ、型枠(長さ100mm、幅50mm、厚さ6mm)の中
に積層した。炭素繊維とセメント水和物との複合物は、
一日後に脱型し、水中で材令7日まで養生した。作られ
た炭素繊維強化セメント複合材料の嵩密度は、1.9g/c
m3、炭素繊維含有率3.3vol%であった。この複合材料の
曲げ強度測定時の荷重(強度)−たわみ曲線を第3図の
1に示す。この複合材料の曲げ強度は530kg/cm2を示
し、プラズマ処理なし(第3図の3)に比べ1.3倍、ア
ルミナセメント水和物(第3図の4)より8倍も高くな
った。そして、プラズマ処理した炭素繊維強化セメント
複合材料の最大荷重点のたわみは1.7mm、層間剪断強度
は47kg/cm2でプラズマ処理なしの場合に比べ前者では2.
8倍、後者では1.4倍も大きくなった。
実施例2 実施例1と同じ炭素繊維シートをプラズマ処理装置内に
入れ、酸素を100ml/min流しながらプラズマ処理を行っ
た。その他の処理条件は、実施例1と同じである。プラ
ズマ処理後の炭素繊維シートは親水性を、浸漬した水溶
液は酸性をそれぞれ示した。
酸素プラズマで処理した炭素繊維シート12枚を、水セメ
ント比30%のアルミナセメントペースト中に漬け、実施
例2の場合と同じようにして厚さ6mmの炭素繊維強化セ
メント複合材料を製造した。製造された複合材料の嵩密
度は2.0g/cm3で、炭素繊維含有率は3.5vol%であった。
この材料の曲げ強度測定時の荷重(強度)−たわみ曲線
を第3図の2に示す。この複合材料の曲げ強度は480kg/
cm2を示し、プラズマ処理なしの場合に比べて1.2倍も高
くなった。また、プラズマ処理した炭素繊維強化セメン
ト複合材料の最大荷重点のたわみは1.5mmで、プラズマ
処理なしの複合材料の場合(0.6mm)よりも2.5倍程大き
くなった。また、酸素プラズマで処理した炭素繊維強化
セメント複合材料の層間剪断強度は、52kg/cm2で、処理
なしのものに比べ1.2倍も高くなった。
実施例3 実施例1と同じ炭素繊維シートをプラズマ処理装置内に
入れ、酸素を100ml/min流しながらプラズマ処理を行っ
た。酸素プラズマで処理した炭素繊維シート25枚を使用
し、水セメント比30%のアルミナセメントペースト中に
漬け、実施例2の場合と同じようにして型枠(長さ100m
m、幅50mm、厚さ10mm)の中に積層させ、炭素繊維強化
セメント複合材料を製造した。作られた複合材料の嵩密
度は2.1g/cm3、炭素繊維含有率は4.6vol%であった。こ
の複合材料の曲げ強度は1000kg/cm2を示し、プラズマ処
理なしに比べ1.3倍も強度は大きくなった。
実施例4 実施例1に記した炭素繊維シートおよびプラズマ処理装
置を使用した。炭素繊維シート(4cm×8cm)6枚を軽く
積み重ね、プラズマ処理装置内の下部電極上に置いた。
処理槽内を真空ポンプで減圧にした後、酸素ガスを20ml
/min流し、所定出力(10W,25W,50W,100W)を印加してプ
ラズマを発生させ、10分間処理を行なった。さらに、炭
素繊維シート槽の上下を入れ替え、同一条件で10分間プ
ラズマ処理を行なった。
酸素プラズマで処理した炭素繊維シート(4cm×8cm)12
枚を、普通ポルトランドセメントペースト(水/セメン
ト比=40%)中に漬け込み、手でよく含浸させた後、型
枠(厚さ6mm)中に積層した。これを湿潤デシケーター
中に1日間放置後、脱型し、14日間水中養生を行なって
炭素繊維強化セメント複合材料(幅4cm、長さ8cm、厚さ
0.6cm)を作った。作られた炭素繊維強化セメント複合
材料の嵩密度および炭素繊維含有率は、プラズマ処理時
の出力にかかわらず、前者は1.8g/cm3、後者は3.4Vol%
であった。各炭素繊維強化セメント複合材料の曲げ強度
測定時の荷重−たわみ曲線を第4図に示す。
プラズマ処理を行なっていない炭素繊維強化セメント複
合材料の曲げ破壊時の最大荷重は50kgであった。しか
し、50Wの出力でプラズマ処理した場合の破壊荷重はよ
り高くなり、98kgを示した。また、最大荷重時のたわみ
量も、未処理の炭素繊維強化セメント複合材料では0.7m
mであったが、酸素プラズマ処理により0.9mmにまで増大
した。これらの破壊荷重から算出した炭素繊維強化セメ
ント複合材料の曲げ強度は、未処理の場合には30MPaで
あったが、出力50Wのプラズマ処理から作られた炭素繊
維強化セメント複合材料では60MPaにまで増大した。こ
の値は、未処理品の2倍、セメント単味試料の15倍に相
当した。
次に、曲げ試験後の炭素繊維強化セメント複合材料の破
断面を、実体顕微鏡で観察した様子を第5a図および第5b
図に示す。プラズマ処理をしない第5a図の複合材料で
は、炭素繊維とセメントマトリックスの間の空隙が多
い。これに対し、出力50Wで処理した第5b図の炭素繊維
強化セメント複合材料では炭素繊維とセメントマトリッ
クスとの間の空隙が殆ど観察されず、緻密な構造を示し
ていた。
実施例5 シート状炭素繊維のかわりに、フィラメント状の炭素繊
維を使用し、これを一方向に配列することによって、曲
げ強度の極めて高い炭素繊維強化セメント複合材棒を作
製した。
炭素繊維は、特に表面処理をしていないフィラメント状
(3k)を用いた。これを紙枠(15cm×8cm)に巻き付
け、実施例1と同じプラズマ処理装置内に入れ、酸素プ
ラズマ処理した。その際の出力は50W、処理時間は、片
面を10分ずつ、両面では20分であった。酸素プラズマ処
理した炭素繊維フィラメントに、実施例3と同じアルミ
ナセメントペースト(水/セメント比=30%)を含浸さ
せた。余分なセメントペーストを手でしごいて除いた後
に、炭素繊維が一方向に配向するように、20本の炭素繊
維束(3k×20=60k)を型枠(幅6mm、高さ6mm、長さ100
mm)中に充填した。これを油圧プレス下に置き、一日間
加圧(220kg/cm2)し、成形硬化させた。脱型後、4日
間、水中で養生を行ない、棒状の炭素繊維強化セメント
複合材料を作製した。
作られた炭素繊維強化セメント複合材棒は、嵩密度1.8g
/cm3、炭素繊維含有率9.0Vol%で、その曲げ強度は220M
Pa、圧縮強度は160MPaであった。酸素プラズマ処理しな
い炭素繊維から作ったセメント複合材料の場合、その曲
げ強度は200MPa、圧縮強度は100MPaであった。従って、
酸素プラズマ処理によって、セメント複合材料の機械的
強度は、曲げ強度で1.1倍、圧縮強度で1.6倍も高められ
た。圧縮強度が特に高められたのは、炭素繊維の表面を
親水性に改質することによって、セメントマトリックス
との接着性が向上したことによる。
(考案の効果) 本考案による炭素繊維強化セメント複合材料は、炭素繊
維を酸素、アルゴン、または二酸化炭素などの低温プラ
ズマによって、炭素繊維の表面のみを改質し、炭素繊維
とセメント水和物との接着強度を高めたから、従来の炭
素繊維強化セメント複合材料よりも、高強度、高たわみ
性および、すぐれた可撓性等の機械的特性に優れ、軽量
であると共に、その表面は、緻密で光沢のある堅牢性と
耐水性等をもつので、化粧タイル、キッチン用品の天
板、水槽、屋根材、床材、ビルディング外装材、高温用
の濾過材、各種セメント二次製品およびモルタル材料の
補強材料等へ使用できる。また、耐熱性の炭素繊維強化
セメント複合材料はその電導性を利用し、寒冷地の融雪
用や、家畜舎の暖房用あるいは家庭用の面状発熱体、ビ
ルディング外壁の電波遮蔽材料等へも利用できる。更に
比較的安価な汎用炭素繊維を短繊維状で適用したものは
経済的にも可成り有利であり、広汎な利用と普及とが期
待される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本考案による炭素繊維強化セメント複合材料
の製造工程フローシート、 第2図は、従来公知の炭素繊維強化セメント複合材料の
製造工程フローシート、 第3図および第4図は、本考案および従来公知の炭素繊
維強化セメント複合材料並びに非強化セメントコンクリ
ートのそれぞれ荷重−たわみ曲線を示す線図であり、ま
た 第5a図および第5b図は、それぞれ従来公知および本考案
の炭素繊維強化セメント複合材料の破断面を実体顕微鏡
で観察した拡大図である。

Claims (5)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素、アルゴン、二酸化炭素、アンモニア
    および窒素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の気
    体の低温プラズマ処理により表面を親水性に改質された
    炭素繊維を強化材としてセメントマトリックス中に実質
    的に均一な配置且つ緻密な接着状態で含有してなること
    を特徴とする炭素繊維強化セメント複合材料。
  2. 【請求項2】セメントがアルミナセメントである請求項
    1記載の炭素繊維強化セメント複合材料。
  3. 【請求項3】炭素繊維が繊維径約5〜20μmの短繊維で
    ある請求項1記載の炭素繊維強化セメント複合材料
  4. 【請求項4】短繊維が厚さ0.1〜1mmのランダムシートを
    構成する請求項3記載の炭素繊維強化セメント複合材
    料。
  5. 【請求項5】短繊維が厚さ1〜10mmのチョップドストラ
    ンドマットを構成する請求項3記載の炭素繊維強化セメ
    ント複合材料。
JP10022090U 1990-09-27 1990-09-27 炭素繊維強化セメント複合材料 Expired - Lifetime JPH0634344Y2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101306269B1 (ko) * 2011-12-28 2013-09-09 한국건설기술연구원 탄소섬유를 이용한 전도성 콘크리트 조성물, 제품 및 융설장치

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