JPH06331504A - 車両用故障検出装置 - Google Patents

車両用故障検出装置

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JPH06331504A
JPH06331504A JP5126363A JP12636393A JPH06331504A JP H06331504 A JPH06331504 A JP H06331504A JP 5126363 A JP5126363 A JP 5126363A JP 12636393 A JP12636393 A JP 12636393A JP H06331504 A JPH06331504 A JP H06331504A
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time
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model
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正信 木村
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正敬 大澤
Masanori Yamamoto
真規 山本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 車両に発生する故障または異常を確実に検出
する。 【構成】 車両の走行状態を表す物理量を所定時間毎に
検出し、メモリに車両データとして時系列に記憶する。
また、前記車両データに基づいて車両が正常な状態のと
きの車両データを推定する(選択図の正常モデルのデー
タ)と共に、車両に予め想定した故障または異常が発生
したときの車両データを推定する(選択図ではアクチュ
エータの故障モデル、コーナリングパワーの変動モデル
のデータ)。これらのデータの変化のパターンを比較す
ることによって、車両に故障または異常が発生している
か否かを判断する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用故障検出装置に係
り、特に、車両の操舵角等の各種の物理量の検出結果に
基づいて車両の故障または異常を検出する車両用故障検
出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の走行中における安全性を向上させ
るために、車両に発生する僅かな故障や異常であっても
確実に検出することができる故障検出装置が求められて
いる。車両の故障検出方法の一例として、特開昭 62-14
6780号公報には、4輪操舵車両の前輪操舵角の検出値
が、車速に応じて設定される故障検出のしきい値以上と
なったときにセンサに故障が発生したと判断し、後輪操
舵角を0にするフェイルセーフ装置が開示されている。
【0003】また、動的システムの故障診断を行なう方
法として、発生すると想定される故障を含む複数の運動
モデルを定め、各運動モデルの状態を推定して得た推定
値と実際のシステムの状態を検出して得た検出値との残
差に基づいて故障の有無及び故障箇所を判定する一般化
尤度比較検定方法が知られている(A.S.Willsky & H.L.
Jones , "A Generalized Likelihood Ratio Approach t
o Derection and Estimation of Jnmps in Linear Syst
ens,"IEEE Trans. AC-21,No.1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術のいずれも、ある時刻における検出値または残差
量を用いて故障の検出を行なっているため、検出値にノ
イズが混入していることを想定して統計的な処理を行な
ったとしても誤検出を防止するためには、故障検出のし
きい値、または残差のしきい値として大きな値を設定す
る必要がある。このため、車両の挙動に大きな影響を与
え検出値が大きく変化するような故障が発生しないと、
故障として検出することができないという問題があっ
た。
【0005】また、故障を含む運動モデルの状態の推定
値を用いる方法では、運動モデルの状態の推定値の演算
に状態推定器またはカルマンフィルタを用い、ある時刻
における状態の検出量を用いて所定時間後の状態を予測
するものであるが、状態推定器の原理として検出値と推
定値との誤差、すなわち偏差を少なくするよう前記偏差
にフィルターゲインを乗じて推定値にフィードバックす
るため、繰り返し(例えば所定周期毎に)推定を行う場
合には各周期において検出値が取込まれ偏差が少なくな
るようにフィードバックされ、推定値から故障による重
畳成分が徐々に減少されることになるので、前記と同様
に、車両の挙動に大きな影響を与えない僅かな故障を検
出することは困難であった。
【0006】本発明は上記事実を考慮して成されたもの
で、車両に発生する故障または異常を確実に検出するこ
とができる車両用故障検出装置を得ることが目的であ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明は、車両に故障または異常が発生
した場合に正常時と異なる成分が重畳される所定の物理
量を含む車両の走行状態を表す物理量を検出する物理量
検出手段と、前記物理量検出手段によって検出された車
両の走行状態を表す物理量の検出値を時系列データとし
て記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された時系
列データに基づいて、車両に故障または異常が発生した
ときの時系列データを推定する故障状態推定手段と、前
記記憶手段に記憶された時系列データに基づいて、車両
が正常な状態のときの時系列データを推定する正常状態
推定手段と、前記記憶手段に記憶された時系列データと
前記故障状態推定手段によって推定された時系列データ
と前記正常状態推定手段によって推定された時系列デー
タとに基づいて車両の故障または異常を検出する故障検
出手段と、を含んで構成している。
【0008】また請求項1記載の発明において、故障検
出手段は、記憶手段に記憶された時系列データと故障状
態推定手段によって推定された時系列データと正常状態
推定手段によって推定された時系列データとに基づき、
各時系列データの履歴を比較することによって車両の故
障または異常を検出することが好ましい。
【0009】また請求項1記載の発明において、故障状
態推定手段は、記憶手段に記憶された過去の所定時刻か
ら現時刻までの区間の前記所定の物理量に対応する時系
列データの一部を用い、車両に故障または異常が発生し
たときの過去の所定時刻から現時刻までの区間の時系列
データを推定することが好ましい。
【0010】また請求項1記載の発明において、正常状
態推定手段は、記憶手段に記憶された過去の所定時刻か
ら現時刻までの区間の前記所定の物理量に対応する時系
列データの一部を用い、車両が正常な状態のときの過去
の所定時刻から現時刻までの区間の時系列データを推定
することが好ましい。
【0011】
【作用】以下、本発明の原理を説明する。故障または異
常が発生している車両の状態を表す物理量の検出値は、
車両が正常な状態のときの検出値に前記故障または異常
に対応する成分が重畳された値となることが知られてい
るが、本願発明者等は、この故障または異常に対応する
重畳成分の時系列的な変化が、故障または異常が発生し
た部位毎に特有のパターンとなることを見出した。
【0012】一例として、前輪の操舵量に応じてアクチ
ュエータによって後輪を操舵させると共に、車両のヨー
レートを検出するヨーレートセンサから出力された信号
をアクチュエータにフィードバック制御する4輪操舵装
置では、故障または異常が発生していない正常な状態で
操舵を行なったときには、ヨーレートセンサの信号及び
車両幅方向に沿った加速度(以下、横加速度という)を
検出する横加速度センサの出力信号は各々図1(A)及
び(B)に実線で示されるように変化する。
【0013】これに対し、ヨーレートセンサの故障によ
りステップ状のオフセットが生じた場合には、各センサ
の出力信号は図1(A)及び(B)に破線で示すように
変化する。また、アクチュエータにステップ状のオフセ
ットが生じた場合には、各センサの出力信号は一点鎖線
で示すように変化する。このように、同じステップ状の
オフセットであっても、故障または異常が発生した部位
によって時系列的な変化のパターンが全く異なっている
ことが理解できる。
【0014】このため請求項1記載の発明では、車両に
故障または異常が発生した場合に正常時と異なる成分が
重畳される所定の物理量を含む車両の走行状態を表す物
理量を検出手段によって検出し、車両の走行状態を表す
物理量の検出値を時系列データとして記憶手段に記憶す
る。そして、記憶手段に記憶された時系列データに基づ
いて、故障状態推定手段により車両に故障または異常が
発生したときの時系列データを推定すると共に、正常状
態推定手段により車両が正常な状態のときの時系列デー
タを推定し、記憶手段に記憶された時系列データと、故
障状態推定手段によって推定された時系列データと、正
常状態推定手段によって推定された車両が正常な状態の
ときの時系列データと、に基づいて車両の故障または異
常を検出する。
【0015】車両に故障または異常が発生した場合に
は、検出手段によって検出される所定の物理量の検出値
に前記故障または異常に対応する成分が重畳される。こ
の重畳成分の時系列的な変化は故障または異常が発生し
た部位に特有のパターンとなり、故障状態推定手段によ
って推定された時系列データと正常状態推定手段によっ
て推定された時系列データとの偏差(時系列値)に等し
い。このため、前記検出値の時系列データの値の変化
は、車両が正常な状態であれば正常状態推定手段によっ
て推定された時系列データの値の変化のパターンと一致
または近似したパターンとなり、車両に故障または異常
が発生していれば故障状態推定手段によって推定された
時系列データの値の変化のパターンと一致または近似し
たパターンとなる。
【0016】また、外乱やノイズ等による成分が検出値
に重畳されていたとしても、この外乱やノイズ等による
成分が、故障または異常が発生した際に検出信号に重畳
される成分の時系列的な変化のパターンと一致したパタ
ーンで時系列的に変化することは非常に稀である。従っ
て、検出手段によって検出されて記憶手段に記憶された
時系列データと故障状態推定手段によって推定された時
系列データと正常状態推定手段によって推定された時系
列データとに基づいて故障または異常を検出することが
でき、単一時刻における検出値と推定値との差に基づい
て故障または異常の検出を行なう場合と比較して、外乱
やノイズ等が混入することによって故障または異常を誤
検出したり、誤検出を防止するためにしきい値を大きく
することによって結果として小さな故障を検出できな
い、という問題が発生することはなく、車両に発生した
故障または異常を確実に検出することができる。
【0017】なお、車両の故障または異常の検出は、例
えば請求項2に記載したように、各時系列データの履歴
を比較することによって行なうことができる。各時系列
データの履歴を比較する方法の一例としては、記憶手段
に記憶された時系列データと正常状態推定手段によって
推定された時系列データとの偏差(時系列値)と、故障
状態推定手段によって推定された時系列データと正常状
態推定手段によって推定された時系列データの偏差(時
系列値)と、を比較することによって行なうことができ
る。また、記憶手段に記憶された時系列データと正常状
態推定手段によって推定された時系列データとの偏差
(時系列値)と、記憶手段に記憶された時系列データと
故障状態推定手段によって推定された時系列データとの
偏差(時系列値)と、を比較するようにしてもよい。
【0018】また故障状態推定手段は、故障検出対象に
おいて故障または異常が発生する可能性のある部位が特
定の1つの部位に限定される場合には、前記部位に故障
または異常が発生した場合の所定の物理量の時系列値の
みを時系列データとして推定すればよいが、故障検出対
象において故障または異常が発生する可能性のある部位
が複数存在する場合には、各部位に故障または異常が発
生したときの所定の物理量の時系列値を時系列データと
して各々推定することが好ましい。
【0019】前述のように、所定の物理量は、故障また
は異常が発生した部位によって時系列的な変化のパター
ンが異なる。従って、故障状態推定手段によって各部位
に故障または異常が発生したときの所定の物理量の時系
列値を時系列データとして各々推定し、故障検出手段に
おいて、各部位に対応する故障発生時の時系列データの
変化のパターンを検出値の時系列データの変化のパター
ンと各々比較し、一致度の最も高いパターンを求めるよ
うにすれば、故障または異常が発生した部位を高い精度
で特定することができる。
【0020】さらに故障状態推定手段は、請求項3に記
載したように、記憶手段に記憶された過去の所定時刻か
ら現時刻までの区間の所定の物理量に対応する時系列デ
ータの一部を用い、車両に故障または異常が発生したと
きの過去の所定時刻から現時刻までの区間の時系列デー
タを推定することが好ましい。このように、過去の所定
時刻から現時刻までの区間の所定の物理量に対応する時
系列データの一部を用いて前記区間の時系列データを推
定することにより、前述の状態推定器のように検出値と
推定値との偏差を少なくするようなフィードバック量が
少なくなるので、故障状態推定手段によって推定した時
系列データから故障による重畳成分が失われることが防
止され、車両に発生した僅かな故障または僅かな異常で
あっても確実に検出することができる。
【0021】また正常状態推定手段についても、請求項
4に記載したように、記憶手段に記憶された過去の所定
時刻から現時刻までの区間の所定の物理量に対応する時
系列データの一部を用い、車両が正常な状態のときの前
記区間の時系列データを推定することが好ましい。これ
により、前記と同様に検出値と推定値との偏差を少なく
するようなフィードバック量が少なくなるので、車両が
正常な状態における時系列データをより正確に推定する
ことができ、車両が正常な状態か故障または異常が発生
した状態かを正確に判断することができる。
【0022】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。なお、以下では本発明に支障のない数値を
用いて実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に記
載した数値に限定されるものではない。
【0023】〔第1実施例〕図2には、本第1実施例に
おける故障検出対象である4輪操舵車両が示されてい
る。4輪操舵車両は質量m、ヨー慣性Iの車体10を備
えており、この車体10には、操舵装置としてのステア
リング12と、コーナリングパワーCfのタイヤ特性を
持つ前輪タイヤ14と、コーナリングパワーCrのタイ
ヤ特性を持つ後輪タイヤ16と、マイクロコンピュータ
等によって構成され後輪タイヤ16に対する後輪制御量
uを算出するコントローラ18と、後輪制御量uに基づ
いて後輪タイヤ16を操舵、駆動するアクチュエータ4
2と、が取付けられている。
【0024】また車体10には、車体10のヨーレート
θを検出するヨーレートセンサ20と、車両の幅方向の
加速度(以下横加速度という)yを検出する横加速度セ
ンサ22と、前輪操舵角δf を検出する操舵角センサ2
4と、車速Vを検出する車速センサ26と、が取付けら
れている。ヨーレートセンサ20、横加速度センサ2
2、操舵角センサ24及び車速センサ26は信号処理部
28に接続されており、検出結果を信号処理部28へ出
力する。信号処理部28には前述のコントローラ18及
びマイクロコンピュータ等で構成され記憶手段としての
図示しないメモリを備えた故障検出部30に接続されて
おり、信号処理部28は、ヨーレートセンサ20から入
力された信号を増幅してコントローラ18へ出力すると
共に、各センサから入力された信号を増幅して故障検出
部30へ出力する。
【0025】次に本第1実施例の作用を説明する。ステ
アリング12を介して操舵が行なわれると、ヨーレート
センサ20によってヨーレートが検出され、検出信号が
出力される。検出信号は信号処理部28で増幅された後
にコントローラ18に入力される。コントローラ18で
は、入力されたヨーレートに基づいて後輪制御量uを算
出し、アクチュエータ42を介して後輪タイヤ16を制
御する。これにより、操舵に対する応答速度、横風等の
外乱に対する安定性が向上する。
【0026】次に、故障検出部30による故障検出処理
について説明する。故障検出部30は図示しないメモリ
を備えており、このメモリには車両に発生する故障や各
種の車両状態を考慮して定められた5種類の運動モデル
が記憶されている。これらの運動モデルは以下のように
して定められている。
【0027】一般に、車両の運動は次の(1)式及び
(2)式に示す運動方程式によって表される。
【0028】 mV(β'+θ) =−Cf(β+lfθ−δf ) −Cf(β+lrθ/ V-u) ・・(1) Iθ(β'+θ) =lfCf(β+lfθ/ V−δf ) +lrCf(β+lrθ/ V-u) ・・(2) 但し、βは車体のすべり角、lfは車両前方側のヨー慣
性、lrは車両後方側のヨー慣性である。また、すべり角
βに、β≪1[rad] が成り立つ範囲では、横加速度y、
すべり角速度β’、及びヨーレートθの間に次の(3)
式が成り立つ。
【0029】 y=V(β’+θ) ・・(3) 横加速度yは一次遅れ特性をもっており、次の(4)式
のように表すことができる。
【0030】 y”=−(1/T)y’+(1/T)y ・・(4) 但し、Tは時定数である。(1)乃至(4)式を用いて
車両の運動モデルを状態方程式で表すと、
【0031】
【数1】
【0032】となる。本実施例では(5)、(6)式の
状態方程式を用いて次のような運動モデルを設定してい
る。 正常状態のモデル 正常状態の推定に用いられるモデルは(5)(6)式を
そのまま用いる。なおコーナリングパワーCf 、Cr は
いずれも「1」とする。 アクチュエータ故障のモデル アクチュエータの故障の推定に用いられるアクチュエー
タ故障モデルは、次の(7)式で表される。但し、f2は
アクチュエータ故障で後輪操舵指令値u= 0.1θに重畳
する。
【0033】
【数2】
【0034】 ヨーレートセンサ故障のモデル ヨーレートセンサ20の故障の推定に用いられるヨーレ
ートセンサ故障モデルは、次の(8)式で表される。但
し、f3はヨーレートセンサが故障していないときには
「0」が設定される。
【0035】
【数3】
【0036】 横加速度センサ故障のモデル 横加速度センサ22の故障の推定に用いられる横加速度
センサ故障モデルは、次の(9)式で表される。但し、
f4は横加速度センサがしていないときには「0」が設定
される。
【0037】
【数4】
【0038】 コーナリングパワー変化モデル これは路面のμ(摩擦係数)が減少した場合を想定した
モデルで、正常モデルの式のパラメータA、パラメータ
BのCf,Cr に 0.5を乗じる。このモデルは、故障以外
の要因で車両の運動に変化が生じる要素の一つとして設
定している。
【0039】次に図3のフローチャートを参照して、故
障検出部30で実行されるメインルーチンの処理につい
て説明する。なお、図3のフローチャートは故障検出部
30の電源が投入されると実行される。ステップ100
では信号処理部28から入力されたヨーレート検出信
号、横加速度検出信号、前輪操舵角検出信号及び車速検
出信号をサンプリングし、ヨーレートデータ、横加速度
データをメモリ上に設けられた車両データ蓄積部に車両
データとして格納すると共に、前輪操舵角データをメモ
リ上に設けられた前輪操舵角蓄積部に格納する。また、
車両データは車速データ蓄積エリアに蓄積される。
【0040】なお、ヨーレート、横加速度、前輪操舵角
は本実施例における車両の走行状態を表す物理量に対応
している。また、これらの物理量のうち、ヨーレート及
び横加速度は車両に故障または異常が発生した差異に正
常時と異なる成分が重畳される物理量であり、後述する
ようにセンサやアクチュエータが故障すると、前記異な
る成分が重畳されて値が変化する。
【0041】図4に示すように、車両データ蓄積部及び
前輪操舵角蓄積部は各々9個のデータを格納するために
9個のエリアを備えている。各エリアには便宜的に各エ
リアを識別するために「0番地」〜「8番地」の名称が
付与されている。故障検出部30では、サンプリングし
たデータを各々車両データ蓄積部及び前輪操舵角蓄積部
の「0番地」のエリアに格納する。
【0042】次のステップ102では、所定数(本第1
実施例では9個)の車両データ及び前輪操舵角データを
蓄積したか否か判定する。ステップ102の判定が否定
された場合にはステップ100へ戻り、再びヨーレート
データ、横加速度データ及び前輪操舵角データの取込み
を行なう。なお、ステップ100の処理は所定周期毎
(例えば 8msec毎)に実行され、各周期において各デー
タが取り込まれる。
【0043】車両データ蓄積部及び前輪操舵角蓄積部で
は、新しいデータが取り込まれた場合に古いデータを1
番地シフトし(例えば5番地に格納されていたデータを
6番地にシフト)、新しいデータを0番地に格納する。
また、8番地に格納されていたデータは新しいデータが
取り込まれると消去される。従って、ステップ102の
判定が肯定された後は各蓄積部に常に、現在から遡って
過去9周期分の車両データ及び前輪操舵角データ(検出
値の時系列データ)が保持されていることになる。
【0044】ステップ100及びステップ102を繰り
返すことにより、車両データ蓄積部及び前輪操舵角蓄積
部に9周期分のデータが蓄積されるとステップ102の
判定が肯定され、ステップ104へ移行する。ステップ
104では正常モデル及び故障モデルを含む前述の5個
のモデルについて、各々横加速度y及びヨーレートθの
推定値の時系列データを演算する。なお、以下では、時
間の経過に従って値が変化する変数をコンピュータでの
取扱いが容易な離散時間系で表して演算を行なう。
【0045】最初に、モデル(すなわち正常モデル)
の推定値の時系列データの演算について図5を参照して
説明する。まず、車両データ蓄積部に蓄積されている最
も古いデータ、すなわち8番地に格納されている横加速
度y(8) 及びヨーレートθ(8) を取り出し、次の(1
0)式に示すようなカルマンフィルタを用いて次の周期
(各蓄積部の7番地のデータを取り込んだ周期)におけ
る横加速度y、ヨーレートθ及びすべり角βを推定す
る。
【0046】
【数5】
【0047】上記のように、カルマンフィルタによって
すべり角βを演算するのは、車両の構成上、すべり角の
信号を得ることができないためである。なお、上記演算
に必要な車両に関するデータの具体的な数値の一例を次
の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】一例として、表1に示した具体的な数値を
用いかつデータのサンプリング周期を8msec とすると、
(10)式のマトリクスAk、Bk、Ck、Dkの内容
は次のようになる。
【0050】
【数6】
【0051】上記のようにしてカルマンフィルタで推定
されたすべり角β、ヨーレートθ、横加速度yを初期値
とし、この初期値と前輪操舵角蓄積部の7番地から取り
出した操舵角δf (7) を入力として、次の周期(各蓄積
部の6番地のデータを取り込んだ周期)における横加速
度y、ヨーレートθ及びすべり角βの推定値を演算す
る。なお、次の表1に示す具体的な数値を用いかつデー
タのサンプリング周期を8msec とすると、(6)式のマ
トリクスAd、Bd、Cdは各々次に示す値となる。
【0052】
【数7】
【0053】上記のようなマトリクスAd、Bd、Cd
を、(5)式を離散時間系で表して次のように置き換え
た(11-1)式に代入し正常モデルの推定値を演算する。
【0054】
【数8】
【0055】演算された次周期のヨーレートθ及び横加
速度yの推定値は、メモリ上に予め設けられ「0番地」
〜「6番地」の名称が付与された7個のエリアを備えた
推定値蓄積部の6番地に格納される。このように、演算
されたすべり角β、ヨーレートθ、横加速度yの推定値
と前輪操舵角蓄積部から取り出した操舵角δf を入力と
して次の周期の横加速度y、ヨーレートθ及びすべり角
βを推定することを繰り返すことにより、推定値蓄積部
に正常モデルについての各周期におけるヨーレートθ、
横加速度yの推定値が順次格納される。
【0056】他のモデル〜(アクチュエータ故障モ
デル、ヨーレートセンサ故障モデル、横加速度センサ故
障モデル)についても、離散時間系で表現した次の(11-
2)〜(11-4)式を用いて同様に演算する。
【0057】
【数9】
【0058】なお、(11-2)〜(11-4)式において、故障の
発生により重畳される成分に対応するfは図6に示すタ
イミングで印加される。また、モデル(コーナリング
パワー変動モデル)については、推定値の演算に用いる
式は正常モデルの場合と同じであるが、コーナリングパ
ワーCf、Crが低下するため、マトリクスAd、B
d、Cdの値が変化する。一例として、コーナリングパ
ワーCf、Crが正常時の50%に低下したとすると、マ
トリクスAd、Bd、Cdは次のようになる。
【0059】
【数10】
【0060】以上のようにして、各モデルの推定値の時
系列データが求められる。各モデルの推定値の時系列デ
ータの変化のパターンの一例を図7に示す。モデル〜
モデル(以下、これらのモデルを総称して故障モデル
という)の推定値の時系列データは各種の故障(または
異常)が発生した際の車両データの時系列的な変化を推
定したものであるので、車両データの変化のパターンが
いずれかの故障モデルの推定値の時系列データのパター
ンに一致または近似していれば、車両の故障状況を推定
することができる。しかし、車両に発生した故障または
異常の大きさが、各故障モデルで設定した故障量(fの
大きさ)と大きく異なっていた場合には単純に照合した
のみでは正しい判定を行なうことはできない。
【0061】ここで、正常モデルの推定値の時系列デー
タは、故障または異常が発生しなかった場合、すなわち
車両データの車両の走行による変化のみを推定した結果
であることから、図8にも示すように、正常モデルの推
定値の時系列データと各故障モデルの推定値の時系列デ
ータとの偏差が、各故障モデルの推定値に重畳している
故障による成分であると推定できる。このため、次のス
テップ106では、各故障モデルの推定値の時系列デー
タと正常モデルの推定値の時系列データとの偏差を求め
る。具体的には、推定値蓄積部の同じ番地に格納された
正常モデル及び各故障モデルの推定値を取り出し、 故障モデルのヨーレート偏差=故障モデルのヨーレート
推定値−正常モデルのヨーレート推定値 故障モデルの横加速度偏差=故障モデルの横加速度推定
値−正常モデルの横加速度推定値 を各故障モデルについて演算する。これを0番地〜6番
地について行なって、演算結果を推定値蓄積部に格納す
る。また同様にして、車両データについても、 車両のヨーレート偏差=車両のヨーレートデータ−正常
モデルのヨーレート推定値 車両の横加速度偏差=車両の横加速度データ−正常モデ
ルの横加速度推定値 を0番地〜6番地について演算し、車両データ蓄積部に
格納する。
【0062】次のステップ108では、上記で求めた偏
差を互いに比較できるようにレベル及び変化量を合わせ
る操作(以下、合わせ込み操作という)を行なう。この
合わせ込み操作は、まず蓄積部の0番地に格納された故
障モデルnの偏差をZn(0)(但し、nは故障モデルの
番号、例えばアクチュエータ故障モデルが「1」、ヨー
レートセンサ故障モデルが「2」等)、蓄積部の0番地
に格納された車両データをXとし、XとZn(0) の比か
ら合わせ込み係数knを求める。そして故障モデルnの1
番地から6番地に格納された推定値の時系列データZn
(1) 〜Zn(6)に各々合わせ込み係数knを乗じて合わせ
込み後の偏差Zn'(m)(mは0〜6)を求める。
【0063】この合わせ込み操作により、故障モデルn
の0番地に格納された偏差Zn(0)は0番地に格納され
た車両データの偏差と等しくなる。上記合わせ込み操作
を各故障モデルのヨーレートの推定値及び横加速度の推
定値に対して各々行なうことにより、各故障モデルの偏
差のパターンが抽出され、各モデルのパターンを比較す
ることが可能となる。合わせ込み操作の具体例を図9
(A)に、合わせ込み操作を行なった結果を図9(B)
に各々示す。
【0064】次のステップ110では、各モデルの偏差
のパターンを車両データの偏差のパターンと照合し、最
も近いパターンを選択することで故障または異常の判定
を行なう。本第1実施例におけるパターンの照合は、ま
ず次式に従って、車両データの偏差データに対する各モ
デルの偏差データの残差を求める。
【0065】モデルのヨーレート偏差=モデルの合わせ
込み後のヨーレート偏差−車両のヨーレート偏差 モデルの横加速度偏差=モデルの合わせ込み後の横加速
度偏差−車両の横加速度偏差 上記演算を各番地毎に行い、次に(12)式によって各
モデル毎に残差の総和を求める。
【0066】
【数11】
【0067】但し、Zは残差の総和、Dnはn番地の残
差、nmaxはnの最大値である。次に、(12)式に
よって求められるヨーレート残差総和と横加速度残差総
和とは異なる単位の数値であるので、大きさ「1」のス
テップ操舵を入力したときのヨーレート残差総和と横加
速度残差総和とが各々「1」となるような係数を求め、
各残差総和に乗じることによって残差総和を無次元化す
る。さらに無次元化したヨーレート残差総和と横加速度
残差総和とを加算し、合成残差総和を求める。合成残差
総和を求めるまでの演算過程を概念図として図10に示
す。以上の演算を各モデル毎に行なって合成残差総和が
最も小さいモデルを選択する。この合成残差総和が最も
少ないモデルが、現在の車両の状態を表すモデルである
と判断できる。
【0068】次のステップ116では、故障を検出した
か否か、すなわち合成残差総和の最も小さいモデルが故
障モデルであるか否か判定する。合成残差総和の最も小
さいモデルが正常モデルであった場合には車両の状態は
正常であり、ステップ116の判定が否定されてステッ
プ114へ移行する。なお、合成残差総和の最も少ない
モデルが、コーナリングパワー変動モデル等のように、
故障または異常以外に車両の運動に変化が生じる要因を
モデル化したものであった場合にも、車両に故障または
異常が発生していないと判断し、ステップ114へ移行
する。ステップ114ではステップ100と同様に車両
データの取込みを行った後にステップ104へ戻り、上
記の故障判定処理を繰り返す。
【0069】一方、合成残差総和の最も小さいモデルが
故障モデルであった場合には、車両に故障または異常が
発生したと判断し、ステップ116で故障量の推定値を
演算する。故障量の推定値は次の(13)式に従って求
める。
【0070】故障量推定値fx =故障モデルに設定した
故障量fn×係数kn ・・(13) 次のステップ118では、検出した故障または異常の状
況(故障または異常の発生部位、故障または異常の大き
さ)を車両のドライバ等に報告する。この報告は、一例
として車両のイントルメントパネルに設けられたディス
プレイに、次のような数値を表示することによって報告
することができる。
【0071】[0] 故障発生無し [1] アクチュエータ故障発生 [2] ヨーレートセンサ故障発生 [3] 横加速度センサ故障発生 また、故障または異常の大きさは、数値またはグラフ等
によって視覚的に表示することによって伝達することが
できる。ステップ118で故障の報告が終了すると、ス
テップ114で車両データを取り込んだ後にステップ1
04に戻り、上記故障検出処理を繰り返す。
【0072】なお、本実施例では故障検出装置として記
載しているが、本実施例と同一の構成により路面のμの
推定を行なうことができる。本実施例では故障モデルの
他にコーナリングパワー変化モデルを有している。これ
は路面のμが減少した場合を想定したモデルで、検出結
果がコーナリングパワー変化を示した場合、走行中の路
面のμが低いと判断できる。この機能を応用すれば、操
舵時にただちに路面のμを検出することができるので、
車両が限界状態を超える前に車両が安定した状態となる
よう制御することができる。また、横風等の外乱を受け
た場合の車両運動モデルを付加することにより、横風等
の外乱を検出することができる。これにより、横風等の
外乱による車両の乱れを修正するような制御を行なうこ
とができ、車両の安定性を向上させることができる。
【0073】以上のように、本発明を車両状態の推定、
検出装置として利用することも可能であり、車両制御系
と組み合わせ、車両の安定性が向上するように制御を行
なうことにより、車両の安全性の向上を図ることができ
る。
【0074】〔第2実施例〕次に本発明の第2実施例を
説明する。なお、第1実施例と同一の部分には同一の符
号を付し、説明を省略する。本第2実施例では、故障モ
デル及び正常モデルを次のような伝達関数形式で表す。
【0075】y(k) =G(k) ・u(k) このような伝達関数形式で表すと、周期kにおける各モ
デルの推定値は次の(14)式で表される。
【0076】 θ(k) =m11δf(k-1)+m12δf(k-2)+m13δf(k-3)+m14δf(k-4) +m21δr(k-1)+m22δr(k-2)+m23δr(k-3)+m24δr(k-4) -(d1 θ(k-1)+d2 θ(k-2)+d3 θ(k-3)+d4 θ(k-4)) y(k) =n11δf(k-1)+n12δf(k-2)+n13δf(k-3)+n14δf(k-4) +n21δr(k-1)+n22δr(k-2)+n23δr(k-3)+n24δr(k-4) -(d1 y(k-1)+d2 y(k-2)+d3 y(k-3)+d4 y(k-4)) δr = 0.1θ ・・(14) 表1に示した具体的な数値を用いると、上記(14)式
の各パラメータは、正常モデル、アクチュエータ故障モ
デル、ヨーレートセンサ故障モデル、加速度センサ故障
モデルにおいては次のようになる。
【0077】 d1= 1.5563 ,d2= -6.2763×10-1 d3= 6.6977×10-3 ,d4= -7.7931×10-711= 1.0626 ,n11= -2.0175 m12= -5.2247×10-1 ,n12= 1.5063 m13= -1.9422×10-1 ,n13= 1.6730×10-114= 2.2857×10-5 ,n14= -1.9893×10-321= 7.7092×10+1 ,n21= 9.1683×10+122= -1.2359×10+2 ,n22= -1.8030×10+223= 5.4191×10+1 ,n23= 8.1792×10+124= -6.3739×10-3 ,n24= -8.6608×10-1 また、コーナリングパワー変動モデルにおいては、コー
ナリングパワーCf、Cr= 0.5とすると、上記パラメ
ータは次のようになる。
【0078】 d1= 1.7679 ,d2= -8.0073×10-1 d3= 8.5705×10-3 ,d4= -9.9724×10-711= 5.5320×10-1 ,n11= -1.0842 m12= -3.3369×10-1 ,n12= 8.8206×10-113= -1.2198×10-1 ,n13= 1.0581×10-114= 1.4356×10-5 ,n14= -1.2500×10-321= 4.0558×10+1 ,n21= 5.3903×10+122= -7.2388×10+1 ,n22= -1.0692×10+223= 3.4001×10+1 ,n23= 5.1390×10+124= -3.9993×10-3 ,n24= -5.4490×10-1 (14)式より明らかなように、ヨーレートθ及び横加
速度yを入力することにより次周期におけるヨーレー
ト、横加速度を演算することができるので、第1実施例
のようにカルマンフィルタによってすべり角βを推定す
る処理が不要となる。但し、4周期分の時系列データを
用いて推定を行なうので、第1実施例と比較して車両デ
ータ蓄積部及び前輪操舵角蓄積部には時系列データを3
番地分多く蓄積する必要があり、各蓄積部には0番地〜
9番地の10個のエリアが設けられている。
【0079】第2実施例における推定値の時系列データ
の演算過程を図11に示す。第1周期目の推定値の演算
は、車両データ蓄積部の9番地〜6番地及び前輪操舵角
データ蓄積部の9番地〜6番地に格納されているデータ
を取込み、(14)式に代入して推定値を演算する。求
めた推定値は推定値蓄積部の6番地に格納される。第2
周期目の推定値の演算は、演算に用いるヨーレートθ及
び横加速度yのデータとして、第1周期目の演算で推定
した推定値と車両データ蓄積部の8番地〜6番地に格納
されている車両データとを用い、前輪操舵角のデータと
して前輪操舵角データ蓄積部の8番地〜5番地に格納さ
れている前輪操舵角データを用いて推定値を演算し、求
めた推定値を推定値演算部の5番地に格納する。
【0080】さらに、第3周期目の推定値の演算は、演
算に用いるヨーレートθ及び横加速度yのデータとし
て、第1周期目及び第2周期目の演算で推定した推定値
と車両データ蓄積部7番地〜6番地に格納されている車
両データとを用い、前輪操舵角のデータとして前輪操舵
角データ蓄積部の7番地〜4番地に格納されている前輪
操舵角データを用いて推定値を演算し、求めた推定値を
推定値蓄積部の4番地に格納する。上記演算を繰り返す
ことによってヨーレートθ及び横加速度yの推定値の時
系列データが求められる。
【0081】〔第3実施例〕次に本発明の第3実施例を
説明する。なお、第1実施例及び第2実施例と同一の部
分には同一の符号を付し、説明を省略する。第1実施例
及び第2実施例では1つの故障に対して1つの故障モデ
ルを設定していたが、本第3実施例では1つの故障に対
し故障量の大きさを変えた複数のモデルを設定してい
る。
【0082】本第3実施例における偏差の演算を概念的
に図12に示す。図12に示す例ではアクチュエータの
故障、ヨーレートセンサの故障に対し、各々故障量の大
きさを異ならせたn個のモデルが設定されており、図示
は省略するが、他の故障に対しても同様に故障量の大き
さを異ならせた複数のモデルが設定されている。これら
のモデルによって推定された推定値の時系列データには
故障量の大きさを表す情報が含まれているので、第1実
施例に記載したような合わせ込み操作を行なう必要はな
く、図13にも示すように、残差は車両データと各モデ
ルによって推定された推定値の時系列データとの差を演
算することによって求めることができる。
【0083】そして、車両データとの残差が最も少ない
と判定したモデルが故障モデルのいずれかのモデルであ
った場合には、車両に発生している故障量が、前記モデ
ルに設定した故障量に一致または近似した大きさである
と推定することができる。なお、本第3実施例において
車両に発生している故障量の大きさを正確に求めたい場
合には、1つの故障に対し故障量の大きさを少しずつ異
ならせた多数の故障モデルを設定すれば対応できる。但
し、多数のモデルを設定すると、演算に時間がかかり故
障の検出に要する時間が長くなる、という欠点がある。
【0084】〔第4実施例〕次に本発明の第4実施例に
ついて説明する。本第4実施例では、各モデル毎に計算
した残差の二乗和を計算する((12)式参照)ことに
よって残差の大きさを比較することに代えて、図14に
示すような方法で残差の大きさを比較する。すなわち、
同一時点における各モデルの残差データ(同一番地に格
納された各モデルの残差データ)を比較し、残差の少な
いモデルから順に順位を付し、この順位に応じて各モデ
ルに得点を与える。これを6番地〜0番地に格納された
各モデルの残差データに対して各々行なう。次に各モデ
ルに与えた得点を各モデル毎に合計し、合計得点が最も
高いモデルを現在の車両の状態に合致したモデルである
と判定する。
【0085】〔実験結果の説明〕次に、本願発明者等が
行なった実験の結果について説明する。この実験は故障
検出装置に、故障の発生した車両の車両データに等しい
データを入力し、故障検出装置の応答を観測したもので
ある。アクチュエータ42が故障した車両の車両データ
に等しいデータを入力した実験の結果を図15に示す。
この実験では、図15(A)にも示すように、実験開始
から 0.2秒後にステップ的に前輪操舵角δfを入力し、
さらに 0.2秒後にアクチュエータ42が故障したものと
して後輪操舵角δrに 0.00525〔rad 〕の変化を与え
た。ヨーレートθ及び横加速度yの検出値に前記変化分
に対応する成分が重畳されていることがわかる。
【0086】このときの故障検出装置30による故障判
定結果を図15(B)に示す。図15(B)より明らか
なように、後輪操舵角δrに変化を与えるのとほぼ同時
にアクチュエータ42に故障が発生したことが検出され
ている。なお、前記変化は後輪操舵角δrの最大値の30
%の値であるが、最大値の10%程度の小さな変化であっ
ても故障として検出されることが本発明者等によって確
認されている。
【0087】次に、ヨーレートセンサ20が故障したに
等しいデータを入力した実験の結果を図16(A)及び
(B)に示す。この実験では、前記と同じタイミングで
ヨーレートセンサ20が故障したものとしてヨーレート
センサ20の出力信号に 0.104〔rad 〕の変化を与え
た。この場合も、変化を与えるのとほぼ同時にヨーレー
トセンサ20に故障が発生したことが検出されている。
【0088】さらに、横加速度センサ22が故障したに
等しいデータを入力した実験の結果を図17(A)及び
(B)に示す。この実験では、前記と同じタイミングで
横加速度センサ22が故障したものとしてヨーレートセ
ンサ20の出力信号に2.94〔m/s2〕の変化を与えた。こ
の場合も、変化を与えるのとほぼ同時に横加速度センサ
22に故障が発生したことが検出されている。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、車両に故
障または異常が発生した場合に正常時と異なる成分が重
畳される所定の物理量を含む車両の走行状態を表す物理
量を検出して時系列データとして記憶手段に記憶し、記
憶手段に記憶された時系列データに基づいて、車両に故
障または異常が発生したときの時系列データを故障状態
推定手段によって推定すると共に、車両が正常な状態の
ときの時系列データを正常状態推定手段によって推定
し、記憶手段に記憶された時系列データと故障状態推定
手段によって推定された時系列データと正常状態推定手
段によって推定された時系列データとに基づいて車両の
故障または異常を検出するようにしたので、車両に発生
する故障または異常を確実に検出することができる、と
いう優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】故障または異常の発生している状態及び正常な
状態で操舵を行なったときの、(A)はヨーレートセン
サから出力される信号、(B)は横加速度センサから出
力される信号を示す線図である。
【図2】本実施例の故障検出対象である4輪操舵車両及
び故障検出装置を示す概略図である。
【図3】本実施例における故障検出処理を説明するフロ
ーチャートである。
【図4】車両データ蓄積部及び前輪操舵角蓄積部の構成
及び各蓄積部へのデータの格納を説明するための概念図
である。
【図5】第1実施例における推定値の時系列データの演
算を説明する概念図である。
【図6】各故障モデルにおいて故障の発生により重畳さ
れる成分に対応するfを印加するタイミングを示す線図
である。
【図7】車両データ及び各モデルの推定値の時系列デー
タの変化のパターンの一例を示す線図である。
【図8】各故障モデルの推定値に重畳している故障によ
る成分を示す線図である。
【図9】(A)は合わせ込み操作の具体例を説明する概
念図、(B)は合わせ込み操作を行なった結果を示す線
図である。
【図10】車両データ及び故障モデルの推定値の時系列
データの偏差の抽出から、合成残差総和を求めるまでの
演算過程を示す概念図である。
【図11】第2実施例における推定値の時系列データの
演算過程を示す概念図である。
【図12】第3実施例における偏差の演算を示す概念図
である。
【図13】第3実施例における残差の演算を示す概念図
である。
【図14】第4実施例における残差の比較方法を示す概
念図である。
【図15】(A)及び(B)はアクチュエータの故障が
発生したに等しいデータを故障発生装置に入力する実験
を行なった結果を示す線図である。
【図16】(A)及び(B)はヨーレートセンサの故障
が発生したに等しいデータを故障発生装置に入力する実
験を行なった結果を示す線図である。
【図17】(A)及び(B)は横加速度センサの故障が
発生したに等しいデータを故障発生装置に入力する実験
を行なった結果を示す線図である。
【符号の説明】
10 車体 20 ヨーレートセンサ 22 加速度センサ 24 操舵角センサ 30 故障検出部 42 アクチュエータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大澤 正敬 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山本 真規 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両に故障または異常が発生した場合に
    正常時と異なる成分が重畳される所定の物理量を含む車
    両の走行状態を表す物理量を検出する物理量検出手段
    と、 前記物理量検出手段によって検出された車両の走行状態
    を表す物理量の検出値を時系列データとして記憶する記
    憶手段と、 前記記憶手段に記憶された時系列データに基づいて、車
    両に故障または異常が発生したときの時系列データを推
    定する故障状態推定手段と、 前記記憶手段に記憶された時系列データに基づいて、車
    両が正常な状態のときの時系列データを推定する正常状
    態推定手段と、 前記記憶手段に記憶された時系列データと前記故障状態
    推定手段によって推定された時系列データと前記正常状
    態推定手段によって推定された時系列データとに基づい
    て車両の故障または異常を検出する故障検出手段と、 を含む車両用故障検出装置。
  2. 【請求項2】 前記故障検出手段は、前記記憶手段に記
    憶された時系列データと前記故障状態推定手段によって
    推定された時系列データと前記正常状態推定手段によっ
    て推定された時系列データとに基づき、各時系列データ
    の履歴を比較することによって車両の故障または異常を
    検出することを特徴とする請求項1記載の車両用故障検
    出装置。
  3. 【請求項3】 前記故障状態推定手段は、前記記憶手段
    に記憶された過去の所定時刻から現時刻までの区間の前
    記所定の物理量に対応する時系列データの一部を用い、
    車両に故障または異常が発生したときの過去の所定時刻
    から現時刻までの区間の時系列データを推定することを
    特徴とする請求項1記載の車両用故障検出装置。
  4. 【請求項4】 前記正常状態推定手段は、前記記憶手段
    に記憶された過去の所定時刻から現時刻までの区間の前
    記所定の物理量に対応する時系列データの一部を用い、
    車両が正常な状態のときの過去の所定時刻から現時刻ま
    での区間の時系列データを推定することを特徴とする請
    求項1記載の車両用故障検出装置。
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