JPH0631848B2 - 原子炉冷却水の浄化方法と浄化装置及びそれに使用されるイオン交換樹脂組成物 - Google Patents

原子炉冷却水の浄化方法と浄化装置及びそれに使用されるイオン交換樹脂組成物

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JPH0631848B2
JPH0631848B2 JP61156074A JP15607486A JPH0631848B2 JP H0631848 B2 JPH0631848 B2 JP H0631848B2 JP 61156074 A JP61156074 A JP 61156074A JP 15607486 A JP15607486 A JP 15607486A JP H0631848 B2 JPH0631848 B2 JP H0631848B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は原子力発電所における原子炉の冷却水を浄化す
る原子炉冷却水浄化方法と浄化装置及びそれに使用され
るイオン交換樹脂に関するものである。
〔発明の背景〕
近年、原子力発電所の稼働基数増加に伴い、通常運転時
及び定期点検時の作業員の被ばく量低減が強く望まれて
いる。このため、原子炉冷却水中の放射性物質、すなわ
ちクラッドと呼ばれる酸化鉄を主成分とする微粒子(粒
径3μm程度)や60Co2+59Fe2+などの放射性金属
イオンを効率的に除去することが必要となる。従来、沸
騰水型原子炉において、タービンを駆動し、復水器によ
り回収された冷却水は、粉末状のイオン交換樹脂をプリ
コートした濾過脱塩器と、粒状の陽イオン交換樹脂と陰
イオン交換樹脂を混床で用いた通常の脱塩器とにより浄
化され原子炉へ給水されている。濾過脱塩器で使用する
粉末状のイオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂と陰イオン
交換樹脂とを粉砕して粉末状としたものである。なお通
常は、濾過脱塩器と脱塩器を総称して、原子炉冷却水浄
化装置と呼んでいる。原子炉冷却水浄化装置が作業員の
被ばく量低減に大きな効果をもつ理由を以下詳しく説明
する。被ばくの主原因は、放射性のクラッドや放射性の
60Co2+が配管に付着し、配管線量率を上昇させている
ためである。また、放射性のクラッドや60Co2+を生成
する原因は、復水器や配管から冷却水中に溶出した非放
射性の鉄やコバルトが、原子炉内で中性子照射を受け放
射化するためである。したがって、放射性,非放射性を
問わず、冷却水中の鉄やコバルト(クラッドとイオン両
者を含む)を除去することにより、被ばく量の低減を計
ることができる。このため、従来は濾過脱塩器と脱塩器
を組み合せた原子炉冷却水浄化装置が用いられていた。
この装置において、上流に設けられた濾過脱塩器では、
冷却水中の放射性物質であるクラッドと金属イオンを同
時に除去し、脱塩器では濾過脱塩器で完全に除去されな
かった残りの金属イオンを除去するようにしている。ま
た、前記従来例では濾過脱塩器及び脱塩器に粉末状また
は粒状のイオン交換樹脂として、陽イオン交換樹脂がベ
ンゼンスルホン酸型樹脂,陰イオン交換樹脂が四級アン
モニウム型樹脂を用いている。多種類のイオン交換樹脂
の中から、陽イオン交換樹脂として、ベンゼンスルホン
酸型樹脂,陰イオン交換樹脂に4級アンモニウム型樹脂
を用いている理由は、これらが耐熱性・耐放射線性にす
ぐれ、かつベンゼンスルホン酸型樹脂は強酸性で、4級
アンモニウム型樹脂は強塩基性であるため、冷却水中に
NaClなどの中性塩が存在(これは復水器から海水が
リークした時に起こる)しても、これを除去する能力が
高いためである。
上述したように、冷却水浄化装置(濾過脱塩器と脱塩器
の併用)を用いれば、原子力発電所内での作業員が被ば
く量をかなり低減することができる。しかし、最近では
より一層の被ばく量低減が望まれている。
従来、特開昭58−76146 号公報により弱酸性のイオン交
換樹脂例えばカルボキシル基をイオン交換基として有す
る陽イオン交換樹脂を原子炉冷却水の浄化装置に用いる
方法が提案されている。ところが、本発明者が種々検討
した結果、非放射性金属イオンを結合した弱酸性陽イオ
ン交換樹脂の一部がリークし、後に詳述するように、ベ
ンゼンスルホン酸型陽イオン交換樹脂の場合と同じよう
に、燃料棒に付着し、前記非放射性金属イオンが放射化
され、再び冷却水中に溶出し、これが配管に付着し、放
射線線量率の上昇につながることを発見した。そこで、
本発明者らは、その原因を明らかにするために、種々研
究した結果、次の点が明らかになった。即ち、弱酸性陽
イオン交換樹脂のうち、イオン交換基がベンゼン環に直
接結合したようなものは、イオン交換基の結合エネルギ
ーが比較的大きいため、前記スルホン酸型の樹脂と同様
の現象を示すことが明らかになった。そして、さらに検
討の結果、特にイオン交換基としてカルボキシル基を有
し、このカルボキシル基が高分子の主鎖に結合している
陽イオン交換樹脂のみが原子炉冷却水の浄化に特に有効
であることを確認し、本発明を見出すことに成功したも
のである。また、カルボキシル基を有するイオン交換樹
脂は廃棄処理するに当って燃焼性の点では、スルホン酸
型樹脂よりも優れているものの、それでも助燃剤例えば
灯油を添加して焼却しなければならないという欠点があ
った。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、原子力発電所での作業員の被ばく量を
低減でき、かつ廃棄物処理が容易なイオン交換樹脂を用
いた浄化方法と装置を提供することにある。
〔発明の概要〕
本発明の原子炉冷却水の浄化方法は、(a)芳香族環を
含む高分子の主鎖に結合しているカルボキシル基をイオ
ン交換基として有する陽イオン交換樹脂,(b)陰イオ
ン交換樹脂及び(c)植物繊維及び有機合成繊維から選
ばれる少なくとも1種の繊維とを含むイオン交換樹脂組
成物を用い、原子力プラントの復水器下流において前記
樹脂組成物に原子炉冷却水を通水し、該冷却水中のクラ
ッドまたは陽イオンを除去することを特徴とする。
本発明者らは現在使用されている原子炉冷却水浄化装置
を改良することにより、更に作業員の被ばく量を低減で
きることを見出した。本発明者等は、濾過脱塩器には粉
末状イオン交換樹脂を用いているが、この粉末状のイオ
ン交換樹脂の平均粒径は50μm程度であるものの、そ
の粒径分布が大きく、最も細かいものでは粒径が5μm
以下である。このような粉末状イオン交換樹脂(陽イオ
ン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の混合物)を濾過脱塩器
に用いた場合、粒径が5μm以下と小さいものは、その
一部が濾過脱塩器からリークして冷却水中に混入する。
リークした粉末状イオン交換樹脂はそのまま原子炉内に
持ち込まれ、これが作業員の被ばく量を増加させること
を確認した。以下、第3図及び第4図を用いて詳細に説
明する。最初に、冷却水3中にリークしたイオン交換樹
脂がなく、配管等から溶出したコバルトなどの非放射性
の金属イオンのみが冷却水中に含まれ、この冷却水が原
子炉内に流入した場合を考える。原子炉内には燃料棒8
が装荷されており、この燃料棒8の表面は酸化膜でおお
われている。炉内に流入した金属イオン7と燃料棒8表
面の電荷状態を考えると、金属イオンは当然プラスに帯
電しており、燃料棒8表面も表面電位はプラスになって
いる。この理由は、一般に知られているように、pH5
〜8の水中では酸化膜のゼータ電位がプラスになるため
である。この状態では金属イオン7も燃料棒8の表面も
プラスに帯電しているため、第3図に示すように金属イ
オン7が燃料棒8表面にほとんど付着しない。次に、第
4図に示すように、冷却水3中に濾過脱塩器からリーク
したイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂9および陰イオ
ン交換樹脂10)が混入した場合を考えると、陽イオン
交換樹脂9はマイナスに、陰イオン交換樹脂10はプラ
スに帯電している。燃料棒8の表面はプラスに帯電して
いるため、マイナスに帯電した陽イオン交換樹脂9の一
部は燃料棒8の表面に付着する。付着した陽イオン交換
樹脂9には、非放射性のコバルトなどの金属イオンがイ
オン吸着されている。また、この陽イオン交換樹脂9
は、通常、金属イオンを飽和状態で吸着しているわけで
はないので、冷却水3中に浮遊している金属イオン7も
イオン吸着してしまう。このように、冷却水中に陽イオ
ン交換樹脂がリークすると、燃料棒8の表面に付着する
非放射性の金属イオンの量が増加することがわかった。
すなわち、冷却水中に陽イオン交換樹脂がリークする
と、非放射性金属イオンの原子炉内での平均滞留時間が
長くなることがわかった。冷却水3中に含まれる非放射
性の金属イオンの代表的なものとしてはコバルト59(
59Co)があるが、この59Coは原子炉6内で中性子照
射を受けるとその一部が放射性のコバルト60(60
o)に変化する。このように、冷却水3中に陽イオン交
換樹脂9がリークすると、59Coなどが原子炉内での滞
留時間が長くなり、その結果、60Coなど放射性金属の
生成量が増加することがわかった。このため作業員の被
ばく量が増加する結果となっていた。
以上説明したように、陽イオン交換樹脂が濾過脱塩器か
らリークすることにより、原子炉内での放射性金属の生
成量が増加し、また、放射化した金属の一部は燃料棒8
から剥離して再び冷却水中に溶出する。この結果、冷却
水の放射能濃度も高くなる。冷却水中の放射性金属イオ
ンはその一部が配管に付着するため、配管の線量率が高
くなる。また、配管への放射性金属イオンの付着量も、
第3図及び第4図で説明したものと同じ理由で、陽イオ
ン交換樹脂が存在することにより増加する。このよう
に、冷却水中に陽イオン交換樹脂がリークすると放射性
金属の生成量が増加し、また、配管への放射性金属の付
着量も増加する。この結果、作業員の被ばく量が増加す
ることになる。なお、前記陰イオン交換樹脂10はプラ
スに帯電しているため、燃料棒表面や配管(いずれも表
面はプラスに帯電)には付着しにくく陽イオン交換樹脂
のような害はない。
本発明者らは、次のような実験によって本発明の知見を
得た。すなわち、第5図に示す実験装置を用い、純水1
1を加熱装置12により280℃,70気圧に加熱して
沸騰水型原子炉の炉水条件に相当する環境を作り、ポン
プ13により配管14に通水した。また、純水11中に
は1ppb程度の60Coを溶かしておき、通水後、配管1
4に付着した60Co量を測定した結果、純水中に0.1
ppm程度の陽イオン交換樹脂を混入すると、60Coの配
管への付着量が1.5〜2倍に増加することを確認し
た。また、陰イオン交換樹脂を混入させた場合には、60
Coの配管への付着量増加は見られなかった。上述の結
果から、作業員の被ばく量を低減するためには、冷却水
中への陽イオン交換樹脂のリークを防止することが有効
であることがわかる。なお、イオン交換樹脂は、原子炉
冷却水浄化装置を構成する濾過脱塩器と脱塩器の両者で
用いられており、いずれも陽イオン交換樹脂と陰イオン
交換樹脂を混合して使用しているが、脱塩器においては
粒径が約500μm程度と大きい粒状イオン交換樹脂を
用いているため、イオン交換樹脂の冷却水中へのリーク
はほとんど生じない。これに対し、濾過脱塩器において
はイオン交換樹脂の平均粒径が約50μm程度を小さ
く、かつ粒径分布が数μmから100μm程度と大きく
分布しているため、粒径の小さいイオン交換樹脂が冷却
水中にリークしやすい。このため、濾過脱塩器における
陽イオン交換樹脂のリーク防止策が必要となる。リーク
防止策としては、粉末状イオン交換樹脂として一定粒径
以上(例えば5μm以上)のもののみを用いる方法が考
えられる。この方法はリーク防止上有効ではあるが、コ
スト的に不利である。すなわち、粉末状イオン交換樹脂
は、粒状イオン交換樹脂を粉砕して製造するため、粒径
が1μm程度のものが混入することは避けられず、その
中から一定粒径以上のものだけを使用したい場合には製
造した粉末状イオン交換樹脂の中から一定粒径以下のも
のをふるい分ける工程が必要となる。また、ふるい分け
るべき粒径が数μmと小さいため、この工程はきわめて
複雑となり、コストが高くなる。そこで本発明者らは、
冷却水中へ陽イオン交換樹脂がリークしても、作業員の
被ばく量を増加させない陽イオン交換樹脂の存在を検討
した。その結果、陽イオン交換樹脂中のイオン交換基が
ベンゼン環を構成する炭素以外の元素と結合した陽イオ
ン交換樹脂が有効であることを見出した。以下、これに
ついて詳述する。
前述したように、陽イオン交換樹脂が冷却水3中にリー
クすると、陽イオン交換樹脂が燃料棒の表面に付着し、
これに伴い非放射性金属イオン(59Co等)の原子炉内
での平均滞留時間も長くなり、放射性金属の生成量が増
加する。従来、陽イオン交換樹脂としてはイオン交換基
(SO3-)がベンゼン環に直接結合したベンゼンスルホ
ン酸型樹脂が用いられていたが、これは耐熱性・耐放射
線性が高く、原子炉一次系で使用しても分解しにくいこ
とがわかった。陽イオン交換樹脂が燃料棒8に付着しや
すい理由は、陽イオン交換樹脂9がマイナスに帯電して
いるためであるが、陽イオン交換樹脂がマイナスに帯電
している理由は次の通りである。すなわち、高分子基体
(スチレンとジビニルベンゼンの共重合体)は電気的に
中性であるが、イオン交換基が電気的にマイナスの性質
をもっているため、陽イオン交換樹脂全体としてもマイ
ナスになるためである。ところで、陽イオン交換樹脂は
原子炉内に入ると、高温,高放射線下にさらされるた
め、分解しやすくなるが、陽イオン交換樹脂が分解する
順序は化学的な結合エネルギーの最も小さいイオン交換
基の部分からであり、化学式で表わすと次のようにな
る。
上式のように、陽イオン交換樹脂が分解した場合を仮定
すると、電気的に中性の高分子基体と、マイナス帯電し
た亜硫酸イオン(SO3 2-)になる。このうち、亜硫酸
イオンは可溶性のため直ちに冷却水3中に移動し、残っ
た高分子基体は電気的に中性となるから、燃料棒8の表
面に付着しにくくなる。仮りに、付着してもイオン交換
能力がないため冷却水中の非放射性の金属イオンを燃料
棒表面に長期間滞留させるようなことはなくなる。ま
た、イオン交換基が分解した後の陽イオン交換樹脂は電
気的に中性のため配管にも付着しにくなっており、この
結果、放射性金属(60Coなど)の配管付着を促進する
こともなくなる。
以上、陽イオン交換樹脂からイオン交換基が分解した場
合を説明したが、従来は陽イオン交換樹脂として耐熱性
及び耐放射線性の高いベンゼンスルホン酸型樹脂を用い
ていたため、陽イオン交換樹脂からイオン交換基が分解
しにくく、上述した作業員の被ばく低減効果が得られな
い。したがって、熱的に分解しやすい陽イオン交換樹脂
を用いれば、作業員の被ばく低減効果を達成することが
できる。
次に、熱的に分解しやすい陽イオン交換樹脂について説
明する。
陽イオン交換樹脂は、イオン交換基が結合している元素
により、次の2つに大別することができる。1つはイオ
ン交換基がベンゼン環を構成する炭素原子と結合してい
るもので、以下これをベンゼン環型と呼ぶ。第2は、イ
オン交換基がベンゼン環を構成する炭素原子以外の元素
と結合しているもので、以下これを直鎖型と呼ぶ。第1
表は、ベンゼン環型と直鎖型の陽イオン交換樹脂の例を
示したものである。
第1表に示した6種類の陽イオン交換樹脂を用いて、熱
的に弱い樹脂を実験的に調べた。
実験方法は、6種類の陽イオン交換樹脂を各々280
℃,70気圧の高温水中に浸せきし、イオン交換基が時
間と共にどのように分解するかを調べるため、イオン交
換容量変化を求めた。第6図にその実験結果を示す。図
において、横軸は高温水中での浸せき時間、縦軸はイオ
ン交換容量の変化を対数で示している。この結果から、
熱的に分解しやすい陽イオン交換樹脂はE及びFであ
り、第1表から直鎖型のイオン交換樹脂が熱的に分解し
やすいものであることがわかった。直鎖型が熱的に分解
しやすい理由は、イオン交換基と高分子基体との結合エ
ネルギーによるものと考えられる。すなわち、ベンゼン
環の炭素と結合したイオン交換基(ベンゼン環型)は、
結合エネルギーが大きいために熱的に分解しにくく、こ
れに対し、ベンゼン環の炭素以外の元素と結合したイオ
ン交換基(直鎖型)は、結合エネルギーが小さいため
に、熱的に分解しやすくなるものと考えられる。なかで
も、カルボキシル基が直鎖に結合した第1表Fの陽イオ
ン交換樹脂は第6図に示すように、特に分解しやすい。
以上のことから、作業員の被ばく量をより低減するため
に、濾過脱塩器4に用いる陽イオン交換樹脂としてカル
ボキシル基をイオン交換基として有する陽イオン交換樹
脂(以下、単にカルボン酸型樹脂と称す。)を使用する
ことが有効である。なお、陽イオン交換樹脂として10
0種類以上のものが知られているが、現在使用されてい
るものの大半はベンゼン環型であり、直鎖型は少ない。
カルボキシル基を有する直鎖型の陽イオン交換型樹脂と
しては次のようなものがあり、いずれも被ばく低減効果
を有する。
(1) アクリル系カルボン酸型:第1表Fに示すタイプの
もの。
(2) メタクリル系カルボン酸型:このタイプの分子構造
は次の通り。
(3) 芳香族系カルボン酸型:このタイプの分子構造は次
の通り。
次に、第1図に示した濾過脱塩器4と脱塩器5にどのよ
うなイオン交換樹脂を用いるのが最適かを、以下詳細に
述べる。
冷却水中に含まれる不純物としてはクラッドなどの微粒
子状のもの(以下、不純物aと称す。)、材料の腐食に
よるCO2+,Fe2+,Mn2+などの陽イオン(以下不純
物bと称す。)、炭酸イオンやケイ酸イオンなどの陰イ
オン(以下不純物cと称す。)があり、さらに復水器2
から海水がリークした場合にはNaClなどの中性塩
(以下不純物dと称す。)が不純物として存在する。
従来は、前述のように濾過脱塩器に強酸性イオン交換樹
脂であるベンゼンスルホン酸型樹脂と強塩基性イオン交
換樹脂である4級アンモニウム型樹脂を混合して用いて
おり、この場合には前記不純物a〜dのすべてを濾過脱
塩器で除去することができ、脱塩器は補助的意味あいで
設置されていた。これに対し、本発明においては、脱塩
器が重要な役割を果す。即ち、直鎖型の陽イオン交換樹
脂は、一般に弱酸性イオン交換樹脂のため、不純物d
(中性塩)を分解(NaCl→Na++Cl-)してイオ
ン吸着する能力が低い。このため、復水器2から海水が
リークした場合、濾過脱塩器4で陽イオン交換樹脂とし
て直鎖型イオン交換樹脂を使用するとこの濾過脱塩器で
は中性塩を完全に除去することはできくなる。したがっ
て、復水器2から海水がリークする可能性がある場合に
は、脱塩器5において、ベンゼンスルホン酸型樹脂など
の強酸性粒状イオン交換樹脂と、4級アンモニウム型樹
脂などの強塩基性粒状イオン交換樹脂を用いるのがよ
い。これによって、脱塩基5において、中性塩を完全に
除去することができる。
なお、上述の説明では、濾過脱塩器4で使用する粉末状
イオン交換樹脂のうち、陰イオン交換樹脂についてはほ
とんど言及していないが、陰イオン交換樹脂は冷却水3
中にリークしても作業員の被ばく量を増加させる結果と
ならないので、従来と同じ4級アンモニウム型樹脂を用
いてもよいし、これ以外の樹脂を用いても全く不都合は
ない。前記以外の陰イオン交換樹脂としては1〜3級ア
ンモニウム型陰イオン交換樹脂などがあり、以下の構造
式(a)〜(c)に示すようなものがある。
従来、濾過脱塩器に用いる陰イオン交換樹脂としては4
級アンモニウム型樹脂が用いられてきたが、この4級ア
ンモニウム型樹脂は強塩基性イオン交換樹脂であるた
め、強酸性のベンゼンスルホン酸型樹脂と混合して使用
すると、濾過脱塩器での中性塩の除去率が高くなるため
である。しかし、本発明では、中性塩(不純物d)の除
去は脱塩器5で行うこととしているから、これによって
濾過脱塩器4に使用する陰イオン交換樹脂は4級アンモ
ニウム型樹脂に限る必要はない。
以上述べたように、粉末状イオン交換樹脂を用いる濾過
脱塩器4において、陽イオン交換樹脂として、カルボキ
シル基がベンゼン環を構成する炭素以外の元素と結合し
たものを用いることにより、作業員の被ばく量を大幅に
低減することが可能となる。
さらに、本発明によれば、前述した構成とすることによ
って、次のような効果も得られる。
濾過脱塩器4にプリコートされている粉末状イオン交換
樹脂は、長期間(10〜50日)使用されると、冷却水
3中のクラッドを捕捉して樹脂層が目づまりを起こし、
濾過層の圧力損失が増大する。圧力損失が一定値に達す
ると、逆洗してイオン交換樹脂だけを新しいものと交換
するが、使用済のイオン交換樹脂は放射性廃棄物とな
る。現在、沸騰水型原子炉から発生する放射性廃棄物の
うち約半分は、この濾過脱塩器4から発生する使用済イ
オン交換樹脂(以下、廃樹脂と称す。)で占められてい
る。廃樹脂の体積を減少させる手段として熱分解法や焼
却法が開発されている。しかし、本発明のイオン交換樹
脂を用いることにより、前記熱分解法や焼却法などによ
る廃樹脂処理を容易に行うことができる。その理由を、
ベンゼンスルホン酸型樹脂(第1表A)とアクリル系カ
ルボン酸型樹脂(第1表F)とを熱分解処理した場合を
比較して説明する。
第7図は、ベンゼンスルホン酸型樹脂(曲線A)とアク
リル系カルボン酸型樹脂(曲線F)を窒素雰囲気中で熱
分解処理した場合の熱重量変化を示す図である。この図
から明らかなように、ベンゼンスルホン酸型樹脂は耐熱
性が高いため、500℃以上で熱分解しても、50wt
%程度の残渣が残る。これに対し、アクリル系カルボン
酸型樹脂は、耐熱性が低いために450℃以上で熱分解
した場合95wt%以上分解でき、わずかの残渣しか残
らない。本発明で使用する廃樹脂を熱分解処理した場
合、廃棄物量を著しく低減できることを示している。
また、本発明に基づく他の陽イオン交換樹脂についても
熱分解特性を調べた結果、窒素雰囲気において500℃
で熱分解を実施すると、メタクリル系カルボン酸型樹脂
及び芳香族系カルボン酸型樹脂は95wt%以上分解し
た。本発明で使用する陽イオン交換樹脂はいずれもベン
ゼンスルホン酸型樹脂よりも熱分解しやすくなる。
酸素含有雰囲気中で焼却処理した場合も結果は同じにな
る。即ち、従来のベンゼンスルホン酸型樹脂は高耐熱性
のためなかなか焼却できず、かつ生成した残渣の一部が
炉壁に付着して炉材の寿命を短くする。これは焼却が8
00℃以上で行われるため、イオン交換樹脂の一部が溶
融して炉壁付着が起こりやすいためである。これに対
し、本発明で使用される陽イオン交換樹脂は容易に焼却
することができる。
また、従来使用されていたベンゼンスルホン酸型樹脂を
熱分解あるいは焼却すると、樹脂中に硫黄を含んでいる
ため、H2SやSOxなどの有害ガス発生する。これに
対し、本発明に基づくアクリル系カルボン酸型樹脂や芳
香族系カルボン酸型樹脂などは硫黄原子を含まないた
め、これを熱分解あるいは焼却処理した場合でもH2
やSOxを発生せず、ガス処理系を簡単化できると共
に、H2S等による材料腐食も防止できる。
このように、本発明に基づく前記陽イオン交換樹脂を濾
過脱塩器4に用いると、作業員の被ばく量を低減できる
のみでなく、放射性廃棄物の処理も容易となる。なお、
脱塩器5に用いる粒状の陽イオン交換樹脂としては従来
と同様ベンゼンスルホン酸型樹脂を使用しているためそ
の廃棄物処理が容易となる効果はないが、脱塩器5から
発生する廃棄物量は、濾過脱塩器4から発生する廃棄物
量に対し1/10以下であり、問題はない。また、脱塩
器5から発生する廃樹脂と濾過脱塩器4から発生する廃
樹脂とを混合して処理(熱分解や焼却処理など)するこ
とにより、脱塩器5から発生するベンゼンスルホン酸型
樹脂の処理時の弊害を緩和することができる。即ち、ベ
ンゼンスルホン酸型樹脂から発生するSOxやH2Sの
濃度が混在処理により相対的に低下するために、単独で
処理した場合に比べ、材料腐食などの問題が緩和される
ことになる。
本発明では、濾過脱塩器4で使用する粉末状陽イオン交
換樹脂として、イオン交換基がベンゼン環を構成する炭
素以外の元素と結合したものが望ましいことを説明した
が、製造法などの理由でイオン交換基の一部がベンゼン
環を構成する炭素と直接結合したものを使用することは
やむを得ない。
以上述べた本発明の好適な例をまとめると次の通りであ
る。
(1) 原子炉冷却水浄化装置の濾過脱塩器に用いる粉末状
の陽イオン交換樹脂として、イオン交換基がベンゼン環
を構成する炭素以外の元素と結合したもの(直鎖型)を
用いる。
(2) 原子炉冷却水浄化装置の脱塩器に使用する粒状イオ
ン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂としてベンゼン
スルホン酸型樹脂を、陰イオン交換樹脂としては4級ア
ンモニウム型樹脂を混合して用いる。
以下、本発明の具体的実施例を図面を引用して詳細に説
明する。
実施例1 第1図及び第2図は本発明の第一実施例を示すもので、
第1図は沸騰水型原子炉における冷却水浄化装置を示す
系統図、第2図は該系統に用いられた濾過脱塩器の一部
詳細断面図である。
タービン1を駆動し復水器2により回収された原子炉冷
却水3は、濾過脱塩器4と脱塩器5により浄化され、給
水ポンプ15と給水加熱器16を通って原子炉6内に戻
る。前記脱塩器5においては、前記粒状のベンゼンスル
ホン酸型樹脂と4級アンモニウム型樹脂を2:1の割合
で混合して装荷している。また、濾過脱塩器4には、粉
末状イオン交換樹脂がプリコートされている。即ち、ま
ずプリコートタンク17に、粉末状陽イオン交換樹脂と
して平均粒径約30μmのアクリル径カンボン酸型樹脂
(第1表F)と、粉末状陰イオン交換樹脂として粒径約
30μmの4級アンモニウム型樹脂とを重量比で2:1
の割合で投入し、さらに、水溶性の高分子電解質例えば
ポリアクリル酸,重合マレイン酸などを若干(0.05
〜1wt%程度)添加して、撹拌機18により撹拌す
る。その結果、陽イオン交換樹脂9と陰イオン交換樹脂
10とが混合されたフロックが形成される。このフロッ
クをバルブ19を介してプリコートポンプ20により、
濾過脱塩器4に送る。濾過脱塩器4内にはナイロン製ま
たはステンレス製の濾過エレメント21が図のように設
けられており、ここに前記フロック22がプリコートさ
れる。
以上のような冷却水浄化装置を有する沸騰水型原子炉を
1年間運転し、各種配管での表面線量率を測定した結
果、再循環配管23での線量率が最も高く、20mR/
hであった。なお、濾過脱塩器4にベンゼルスルホン酸
型樹脂と4級アンモニウム型樹脂を使用した従来の冷却
水浄化装置を用いた場合には、再循環配管23の表面線
量率は30mR/hであった。また、濾過脱塩器4に用
いる粉末状イオン交換樹脂の種類を種々変化させて原子
炉6を運転し、再循環配管の表面線量率を測定した結
果、第2表に示す結果が得られた。
この第2表から明らかなように、本発明によれば作業員
の被ばく量を従来のものより1/3低減できる。因み
に、再循環配管の表面線量率が20mR/hになると、
作業員の年間被ばく量は60〜100マンレム程度にな
る。
また、本発明によれば、濾過脱塩器4で使用する粉末状
イオン交換樹脂の寿命を伸ばすこともできることがわか
った。以下これを第8図により説明する。図において、
破線の曲線Aはアクリル系カルボン酸型樹脂と4級アル
モニウム型樹脂を2:1の割合で混合してプリコート
し、原子炉冷却水3を浄化した場合の差圧上昇曲線であ
り、実線の曲線Bは、従来の粉末状イオン交換樹脂(ベ
ンゼンスルホン酸型と4級アンモニウム型樹脂との混合
物)を用いた場合の差圧上昇曲線である。この図から本
発明の方が差圧上昇カーブの立上がりが遅くなり、寿命
が約1.5倍に伸びることがわかる。したがって、本発
明によれば、粉末状イオン交換樹脂の濾過寿命が長くな
り、コスト低減を計れるだけでなく、樹脂を長期間使用
できることによって廃樹脂の発生量も少なくなるから、
放射性廃棄物も低減できる効果がある。なお、上述の説
明では濾過脱塩器4に使用する粉末状イオン交換樹脂と
して、アクリル系カルボン酸型樹脂と4級アンモニウム
型樹脂との組み合わせの場合を例にとり説明したが、本
発明に基づく他の種類のイオン交換樹脂の組み合わせで
あっても同等の効果が得られる。即ち、粉末状陽イオン
交換樹脂として、アクリル系カルボン酸型樹脂,メタク
リル系カルボン酸型樹脂など3種類,粉末状陰イオン交
換樹脂として、4級アンモニウム型樹脂,3級アンモニ
ウム型樹脂など4種類を選び、任意の組み合せとし、そ
の濾過寿命を実験的に求めた。その実験により第3級の
結果を得た。第3表は、従来の粉末状イオン交換樹脂を
使用した場合の濾過寿命を1とし、本発明における各組
合せにおける濾過寿命をその相対値で示している。
この第3表から明らかように、本発明においてはいずれ
の組み合せを用いても濾過寿命を1.2〜1.8倍に伸
ばすことができる。
以上説明したように、本実施例によれば、作業員の被ば
く量を従来と比べて1/3程度低減することができるだ
けでなく、濾過脱塩器におけるイオン交換樹脂の寿命も
1.5倍程度伸ばすことができるため、コスト及び放射
性廃棄物の発生量も1/3程度低減できる。なお、本発
明装置において、復水器2から冷却水3中に海水がリー
クした場合を想定して実験を行ったが、トラブルは発生
しなかった。復水器2から海水がリークしたとき、従来
装置における濾過脱塩器4では、原子炉冷却水中のNa
Clなどの中性塩を除去することができるが、本発明で
は、濾過脱塩器4に弱酸性の陽イオン交換樹脂を使用し
ているため、中性塩を除去することはできない。しか
し、この実施例では脱塩器5に、強酸性のベンゼンスル
ホン酸型樹脂と強塩基性の4級アンモニウム型樹脂を使
用しているので、濾過脱塩器4で除去できなかった中性
塩も、脱塩器5で完全に除去することができるから、海
水リークが起こっても何ら問題は生じない。
本実施例では、プリコートタンク17において陽イオン
交換樹脂と陰イオン交換樹脂と高分子電解質の三者を混
合したが、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両者
あるいはそのどちらか一方に、表面処理等によりあらか
じめ高分子電解質を添加したものを使用すればプリコー
トタンク17では陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂
の二者を混合するだけで良い。
実施例2 本実施例における基本構成は前記実施例1と同じである
が、濾過脱塩器4で用いる粉末状の陽イオン交換樹脂と
陰イオン交換樹脂の割合を前記実施例の場合とは変えた
場合の実施例である。
前記実施例1において、本発明によれば、濾過脱塩器4
で使用する粉末状イオン交換樹脂の寿命を長くできるこ
とを述べた。本実施例では粉末状の陽イオン交換樹脂と
陰イオン交換樹脂との割合を変え、寿命の変化を検討し
た。実験の方法は、第8図の場合と同様であり、差圧上
昇曲線を実験的に調べて、寿命を求めた。第9図はその
実験結果を示す図で、横軸は樹脂の割合、縦軸は濾過寿
命を示した。縦軸の濾過寿命は、従来装置における濾過
脱塩器の粉状イオン交換樹脂(ベンゼンスルホン酸型樹
脂を67wt%,4級アンモニウム型樹脂を33wt%
で混合したもの)の寿命を1とした場合に対する相対寿
命で示している。図において、実線の曲線Cは、アクリ
ル系カルボン酸型樹脂と4級アルモニウム型樹脂を組み
合わせた粉状イオン交換樹脂の場合、破線の曲線Dはメ
タクリル系カルボン酸型樹脂と3級アンモニウム型樹脂
を組み合わせた粉状イオン交換樹脂の場合を示してい
る。第9図から明らかように、濾過寿命を長くするため
には、陽イオン交換樹脂の割合を50wt%以上90w
t%以下(陰イオン交換樹脂は50wt%以下10wt
%以上)にすれば良いことがわかった。陰陽両イオン交
換樹脂の混合割合によって濾過寿命が変化する理由は次
のように考えられる。即ち、冷却水3中に含まれる不純
物はCo2+,Fe2+などの陽イオンが陰イオンに比べて
圧倒的に多く、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の
割合を等しくしておくと、陽イオン交換樹脂が陰イオン
交換樹脂に比べ多数のイオンを吸着することになる。陰
陽イオン交換樹脂のうち少なくともいずれか一方が多量
のイオンを吸着すると、濾過性能は低下すると考えら
れ、したがって濾過寿命を長くするには、陽イオン交換
樹脂の割合を50wt%以上にした方が良い。従来は濾
過脱塩器4で海水リーク時のNaClなどの中性塩も除
去することを考えており、このため、陽イオン(N
+)と陰イオン(Cl-)を等量除去しなければなら
ず、陽イオン交換樹脂の割合をあまり大きくすることは
できなかった。しかし、本発明では、中性塩を濾過脱塩
器4で除去せず、脱塩器5で除去するようにしているか
ら、濾過脱塩器4での陽イオン交換樹脂の割合を相当大
きくしても問題ない。なお、第9図から、陽イオン交換
樹脂の割合が90wt%以上になった場合も、濾過寿命
は短くなることが分る。これは、陰イオン交換樹脂が少
なすぎるために濾過に最適なフロック(陽イオン交換樹
脂と陰イオン交換樹脂の凝集体)を形成できないためで
ある。
以上説明したように、粉末状の陽イオン交換樹脂と陰イ
オン交換樹脂の割合は前者が50〜90wt%、好まし
くは60〜85wt%であることが望ましく、これによ
り濾過寿命を相当伸ばすことが可能となる。
実施例3 この実施例は、加圧水型原子炉の冷却水浄化装置に本発
明を実施した場合の実施例で、その系統図を第10図に
示す。原子炉6で加熱された冷却水3は、蒸気発生器2
4,一次冷却水ポンプ25を介して、原子炉6に循環さ
れるが、原子炉冷却水3の一部は熱交換器26を介して
濾過脱塩器4に供給される。
濾過脱塩器4には粉末状イオン交換樹脂として、下記
(a)及び(b)の分子構造をもつ陽イオン交換樹脂と
陰イオン交換樹脂を3:1の割合で混合して用いた。
従来、加圧水型原子炉では濾過脱塩器4の代りに、粉状
イオン交換樹脂を用いた混床式脱塩器を使用していた
が、本実施例のように濾過脱塩器を用いることにより、
冷却水3中のクラッドの除去性能が大幅に向上し、作業
員の被ばく量を大幅に低減できる。
本発明の浄化装置は、沸騰水型原子炉の炉水浄化系にも
適用することができる。従来、沸騰水型原子炉では原子
炉再循環系の冷却水の一部を濾過脱塩器により浄化して
いたが、濾過脱塩器には粉末状イオン交換樹脂として、
ベンゼンスルホン酸型樹脂と4級アンモニウム型樹脂を
混合して用いていた。しかし、この濾過脱塩器でもイオ
ン交換樹脂の一部が冷却水中にリークし、その結果作業
員の被ばく量を増加させる可能性がある。したがって、
再循環系の冷却水の一部を浄化する炉水浄化系の濾過脱
塩器に本発明に基づくイオン交換樹脂を使用すれば、イ
オン交換樹脂がリークした場合でも、作業員の被ばく量
増加を最少にすることができる。また、前記実施例と同
様に、炉水浄化系に用いる濾過脱塩器の寿命も伸ばすこ
とができ、廃棄物処理も容易になる。
実施例4 実施例1では、原子炉冷却水浄化装置として、濾過脱塩
器4と脱塩器5をシリーズに組合せて用いた例を示した
が、脱塩器5は必ずしも必要なものではなく、濾過脱塩
器4のみとすることも可能である。即ち、濾過脱塩器4
でも脱塩器5と同様にイオン交換樹脂を用いており、濾
過脱塩器4の部分で大半のイオンとクラッドを除去する
ことが可能であって、脱塩器5はバックアップ的機能し
か持っていないためである。しかし、本発明に基づくイ
オン交換樹脂を濾過脱塩器4に用いた場合、中性塩を完
全に除去することはできないから、脱塩器5を省略して
使用するのは、復水器2からの海水リークの可能性がき
わめて低い場合例えば復水器に耐食網などの材料を採用
した場合や、その可能性が全くない場合例えば復水器用
の冷却水として海水ではなく河川水や井戸水を使用する
場合に限った方がよい。上記実施例によれば、実施例1
と同等の効果が得られる他、脱塩器5を省略できる。
実施例5 浄化装置に用いられたイオン交換樹脂が寿命になると、
それは使用済イオン交換樹脂として放射性廃棄物にな
る。このような放射性廃棄物は現在原子力発電所内に貯
蔵保管されているが、この廃棄物量は年々増加する傾向
にある。本実施例は実施例1に示した濾過脱塩器4から
発生する使用済イオン交換樹脂(廃樹脂)を熱分解処理
する場合の実施例であり、第11図に示す処理系統図に
より説明する。廃樹脂27は濾過脱塩器4から逆洗操作
により廃棄されるためスラリー状になっており、これは
廃樹脂タンク28に一時貯蔵される。廃樹脂タンク28
内の廃樹脂は約10%のスラリー状態でバルブ29を介
してスラリーポンプ30により熱分解装置31に定量供
給される。また、本実施例で使用した廃樹脂の組成は、
アクリル系カルボン酸型樹脂が60wt%,4級アンモ
ニウム型樹脂が30wt%,クラッドなどの不純物が1
0wt%であった。熱分解装置31は連続処理方式のロ
ータリーキルンであり、運転温度は500 ℃になってい
る。また、熱分解装置31内は窒素ガスでパージされ不
活性雰囲気になっている。この熱分解装置31に供給さ
れた廃樹脂27は乾燥と熱分解が同時に行われ、熱分解
残渣32となって粉体ホッパー35に一時貯蔵される。
また、熱分解時に発生する水蒸気と炭化水素を主成分と
する排ガスは、バルブ33を介して排ガス処理装置34
に送られ、処理される。熱分解残渣32は粉体ホッパー
35に一時貯蔵された後、混練器36内でセメント37
またはプラスチックなどと混合され、混合終了後、バル
ブ38を介してドラム缶39に注入して固化体にする。
次に本実施例による作用,効果を説明する。まず、廃樹
脂27を熱分解装置31により熱分解したところ、廃樹
脂27は重量で20wt%,容量で10vol%にまで減
少できた。これに対し、廃樹脂27中の陽イオン交換樹
脂が従来のベンゼンスルホン酸型樹脂である場合には、
熱分解しても、廃樹脂全体で重量が40wt%、容積も
25vol%にまでしか減少しなかった。さらに、本実施
例で用いた廃樹脂の場合は、熱分解により発生するガス
が炭化水素のみであるのに対し、ベンゼンスルホン酸型
樹脂の場合には、前記構造から明らかなように、硫黄原
子を含むため、熱分解により炭化水素の他にSOxやH
2Sを発生する。SOxやH2Sは有害ガスのため、これ
を除去するためにアルカリスクラバー等が必要となり、
排ガス処理装置34が複雑になるが、本実施例において
はそのような欠点がない。
このように、本発明に基づくイオン交換樹脂を用い、こ
れを熱分解することにより、廃樹脂を大幅に減容できる
だけでなく、排ガス処理装置も簡単化することができる
という効果が得られる。
本実施例では沸騰水型原子炉の濾過脱塩器から発生する
廃樹脂を処理する例を示したが、実施例3に示した加圧
水型原子炉の濾過脱塩器から発生する廃樹脂の処理に対
しても同様に適用できる。
実施例6 実施例5では廃樹脂27を熱分解処理する場合を示した
が、熱分解の代りに焼却処理しても同様の効果が得られ
る。この場合には、熱分解装置31の代りに焼却炉を用
い、空気雰囲気中で600 ℃以上で廃樹脂を焼却すれば良
い。本発明に基づくイオン交換樹脂であれば大幅減容が
可能であり、かつ排ガス処理装置も簡略化できる。
本実施例ではさらに次のような効果もある。焼却の場合
には600℃以上、通常は800〜1500℃にて廃樹脂を
処理するため、廃樹脂の一部が溶融してこれが炉壁に付
着し、焼却炉の寿命を縮めるという問題があったが、本
発明に基づくイオン交換樹脂を用いれば、耐熱性が低い
ため、600℃以下で容易にガス化でき、ほとんど溶融
しない。このため、炉壁への廃樹脂付着という問題も著
しく軽減でき、焼却炉の寿命を伸ばすことができる。
実施例7 前記実施例では、粒状の直鎖型陽イオン交換樹脂を濾過
脱塩器に用いた例を示したが、繊維状の直鎖型のイオン
交換樹脂を用いてもよく、このようなイオン交換樹脂を
用いれば、濾過脱塩器からのリークをより少なくできる
効果を奏する。繊維状のイオン交換樹脂を陽イオン交換
樹脂を陰イオン交換樹脂の両方であってもよい。また、
繊維状のイオン交換樹脂がナイロンやステンレス製の濾
過エレメントを通過しない程度の長い繊維を用いれば、
陽イオン交換樹脂単独でもよい。即ち、除去対象のクラ
ッドは正に帯電しており、また、Coなどのイオンも陽
イオンであるから、陽イオン交換樹脂のみでそれらを除
去することができる。このようにすれば、陰イオン交換
樹脂を使用しなくてもよく、廃棄物発生量を大幅に低減
できる。
実施例8 本発明に基づくイオン交換樹脂は、その粒径を最適化し
たり、繊維を添加したりすることにより、濾過脱塩器4
の性能を向上させることができる。濾過脱塩器4で要求
される性能は以下の2点である。第1点は、濾過寿命が
長いことである。即ち、濾過時間が長くなると、プリコ
ート層でクラッドが吸着除去ささる量が増加するため
に、プリコート層で目詰まりが起こり、濾過差圧が上昇
する。この差圧が一定値(通常は1.75kg/cm2)に
達すると、プリコート材である粉末状イオン交換樹脂を
逆洗,廃棄し、新しいプリコート材と取換える。したが
って、コスト低減及び廃棄物発生量低減のためには、差
圧の上昇が遅いこと、つまり、濾過寿命が長いことが望
ましい。第2の要求性能は被処理水である原子炉炉水か
らのクラッド除去率が高いことであり、通常、除去率は
90%以上が必要とされている。基礎実験の結果、本発
明に基づく陽イオン交換樹脂を用いた場合には、濾過寿
命は従来の強酸性のスルホン酸型樹脂より長くなり望ま
しい結果となるが、濾過の過程でプリコート層にクラッ
クを発生しクラッド除去率が60〜90%と低くなり、
そのままでは濾過脱塩器に使用するのが不適当な場合の
あることがわかった。カルボン酸型樹脂としては、メタ
クリル系カルボン酸型樹脂,アクリル系カルボン酸型樹
脂などが知られているが、これらをプコート材として用
いた場合の性能はほぼ同等であるため、以下では一括し
てカルボン酸型樹脂と呼ぶ。また、カルボン酸型樹脂
は、粒径が500μm程度のいわゆる粒状樹脂が知られ
ている。しかしこのような粒状樹脂では粒子径が大きい
ためにプリコートに適さないばかりか、濾過効果は不十
分であり、かつそのイオン交換反応の効率が低いため実
用的でない。
そこで、カルボン酸型樹脂を粉砕して平均粒径50μm
の粒末状カルボン酸型樹脂を製造し、これと粉末状の陰
イオン交換樹脂を2対1の割合で混合し、さらに若干量
の高分子凝集剤(ポリアクリル酸アミド等)を添加し、
プリコート材とした。これを用いて、クラッドを含む、
水の濾過処理を行った。その結果を、陽イオン交換樹脂
として従来のスルホン酸型樹脂を用いた場合と比較し
て、第12図に示す。これより、濾過時間と共に濾過差
圧は上昇するが、カルボン酸型樹脂ではスルホン酸型樹
脂より濾過差圧の上昇がゆるやかで、濾過寿命が約1.
5倍(但し、濾過差圧が1.75kg/cmとなる時点で
の、濾過時間、またはクラッド捕捉量を濾過寿命と定義
する)となり、好ましい結果の得られることがわかる。
しかし、クラッド除去率は濾過時間と共に低下し、カル
ボン酸型樹脂では濾過差圧が1.75kg/cm2となる時
点では、約75%となり、一般に必要と考えられている
90%以上を確保できない。この原因は、濾過時間の経
過と共に、プリコート層にクラックを発生するためであ
ることがわかった。この詳細を第13図により説明す
る。
一般には濾過エレメント21上に厚さ2〜20mmのプリ
コート層41を形成した後、被処理水42の濾過が行わ
れる。このプリコート層は、濾過時間の経過と共に収縮
するため、第13図(b)に示すようにクラック43を
発生し、クラッド除去率が低下する。このような現象
は、従来のスルホン酸型樹脂に対しても知られており、
クラック43の防止策としては、繊維添加が有効である
ことも知られている。なお、第13図のスルホン酸型樹
脂に対する結果も、繊維を添加したものである。従来の
スルホン酸型樹脂では、繊維の添加量は30〜60wt
%が適当であり、好適には50wt%が望ましいことが
知られている。そこで、カルボン酸型樹脂と陰イオン交
換樹脂を混合した後、さらに繊維の割合が50wt%と
なるよう、アクリル系繊維(太さが約10μm,長さが
数100μm)を添加し、これをプリコート材に用いて
濾過実験を行った。この結果を、繊維無添加の場合と比
較して第14図に示す。これより、繊維添加物によりク
ラッド除去率を大幅に向上でき、かつプリコート層での
クラック発生も防止できることがわかる。しかし、スル
ホン酸型樹脂で最適と考えられている繊維割合50wt
%の時でも、第14図より明らかなように、一般に必要
と考えられているクラッド除去率90%以上を常時は達
成できないとの問題がある。そこで、本発明者はこの原
因を明らかにすると共に、対策方法を見出した。
カルボン酸型樹脂を用いた場合に、プリコート層でクラ
ックを発生する原因を明らかにするため、まず、従来の
スルホン酸型樹脂でクラックを発生する原因を調べた。
その結果、クラック発生原因は、プリコート層41の収
縮に起因しており、また、プリコート層41が収縮する
原因は、以下の2つの因子の相乗効果であることがわか
った。即ち、第1の因子は、イオン交換樹脂は、粒子の
表面は陽イオン交換樹脂ではマイナス、陰イオン交換樹
脂ではプラスに帯電しており、両者を混合して用いてい
るプリコート層では電気的な反発力により、フロック状
とよばれる疎な層を形成している。しかし、クラッドを
吸着すると表面荷電が打ち消されるために、電気的反発
力が減少し、プリコート層は収縮すると共に、ち密な層
となる。第2の因子は、従来のスルホン酸型樹脂はクラ
ッドを吸着すると樹脂粒子が収縮する収縮性樹脂である
ため、これによってもプリコート層が収縮し、クラック
発生原因となる。このように、従来のスルホン酸型樹脂
では、クラッド吸着時の電気的反発力の低下と、樹脂自
身の収縮性により、クラックを発生し、これを防止する
ための方法として、繊維を添加していることがわかっ
た。これに対し、カルボン酸型樹脂ではクラック発生機
構が異なることが新たにわかった。即ち、前記した第1
の因子(電気的反発力の低下)は全く同じであるが、第
2の因子が異なる。即ち、カルボン酸型樹脂はクラッド
を吸着しても、樹脂粒子は収縮せず、むしろ膨張する膨
張性樹脂である。このため、第2の因子はプリコート層
の収縮を緩和する方向に働き、カルボン酸型樹脂はスル
ホン酸型樹脂よりもプリコート層収縮量が小さいことが
わかった。このため、スルホン酸型樹脂では繊維の好適
な割合が30〜60wt%であるのに対し、もっと少な
い繊維割合でもカルボン酸型樹脂ではプリコート層での
クラック発生を防止できるのではないかと考えた。そこ
で繊維割合を変化して濾過実験を行った。第15図はプ
リコート層での濾過差圧が1.75kg/cm2になった時
のクラッド除去率を、繊維割合の関数として示したもの
である。スルホン酸型樹脂では繊維割合が30wt%以
下では、プリコート層にクラックを生じクラッド除去率
が急激に低下するのに対し、カルボン酸型樹脂では予想
通り繊維割合がすなくてもクラックが発生せず、繊維割
合10wt%でもクラッド除去率が90%となることが
確認できた。一方、繊維割合が大きい領域でも、第15
図に示すようにクラッド除去率が再び低下する。この原
因は、繊維割合が増加するに従い、高い濾過性能を有す
るイオン交換樹脂の割合が低下するためである。また、
スルホン酸型樹脂の場合には、繊維割合が60wt%以上
でクラッド除去率が90%以下となるが、カルボン酸型
樹脂では繊維割合40wt%以上で除去率が90%を切
る。この理由は、スルホン酸型樹脂は強酸性樹脂である
ためにクラッド除去能力が高く、そのため繊維割合が少
々大きくなっても所定の性能を維持できるのに対し、カ
ルボン酸型樹脂は弱酸性樹脂であるためにクラッド除去
能力が若干低く、そのため繊維割合をあまり大きくでき
ない。
以上示したように、カルボン酸型樹脂とスルホン酸型樹
脂はその物性が異なるために最適な繊維の添加量も異な
ることがわかった。即ち、カルボン酸型樹脂では、繊維
割合が10〜40wt%の範囲にあれば、クラッド除去
率90%以上を確保でき、濾過脱塩器として極めて好ま
しいことがわかった。なお、繊維としては、アクリル系
繊維,ナイロン繊維,植物繊維,炭素繊維等どのような
もので良く、また、繊維の太さは数μmから数十μmの
範囲,長さは数十μmから数mmの範囲であればよいこと
は、従来と同じである。
以上により、最適な繊維の添加量は明らかになったが、
すでに記したようにカルボン酸型樹脂は弱酸性のためク
ラッド除去能力が若干低いとの本質的な欠点がある。即
ち、第15図からもわかるように、カルボン酸型樹脂で
は繊維割合が約20wt%でクラッド除去率が最大値9
3%を示すのに対し、スルホン酸型樹脂では最大97%
となる。この理由を更に詳細に調べるため、プリコート
層内に吸着されたクラッドの分布を調べた。
第16図はその結果を示したものであり、縦軸は吸着さ
れたクラッドの濃度、横軸はプリコート層41の表面か
ら濾過エレメント21の方向にはかった深さを示す。こ
れよりスルホン酸型樹脂では、これが強酸性樹脂のため
クラッド除去能力が高く、プリコート層41の表面近く
でクラッドの大半が吸着されていることがわかった。こ
れに対し、弱酸性樹脂であるカルボン酸型樹脂の場合に
は、クラッドは、プリコート層の全域で吸着されてお
り、クラッドの一部は濾過エレメント21にまで達して
いることがわかった。即ち、カルボン酸型樹脂は弱酸性
のためクラッドをプリコート層で完全に吸着することが
できずに、一部が濾過エレメントに達することからクラ
ッド除去率の低いことがわかった。このようなカルボン
酸型樹脂に、従来のスルホン酸型樹脂と同等のクラッド
除去能力を持たせるには、樹脂の粒径を小さくすること
も良い方法ではないかと発明者は考えた。即ち、従来の
スルホン酸型樹脂はプリコート性等の観点から、60〜
400メッシュ、即ち、平均粒径で50〜150μmの
粉末状樹脂を使用している。しかしクラッド除去能力の
若干低いカルボン酸型樹脂に対しては、粒径をもっと小
さくすることにより反応表面積を増加すれば、実効的な
クラッド除去能力が高くなり、その結果、スルホン酸型
樹脂以上のクラッド除去率が得られるのではないかと考
えた。そこでさらに、カルボン酸型樹脂の粒径を変化さ
せ、濾過実験を行った。その結果を第17図に示すが、
この場合には、繊維割合は常に20wt%とした。
第17図に示したクラッド除去率は、濾過差圧が1.7
5kg/cm2になった時の実験値を示しており、また、濾
過寿命は以下のように定義した。即ち、従来のスルホン
酸型樹脂では60〜400meshの粉末状、好適には特公
昭47−44903 号にあるように100〜200mesh、即
ち、平均粒径80μm程度のものが用いられている。そ
こで平均粒径80μmのスルホン酸型樹脂を用いた場合
の濾過寿命を1とし、それに対する相対値として、カル
ボン酸型樹脂の濾過寿命を示した。第17図より予想通
り平均粒径が小さくなるほど反応表面積が大きくなり、
クラッド除去率は向上することがわかった。また、クラ
ッド除去率が90%以上となるためには、平均粒径は6
0μm以下であることが望ましいこともわかった。一
方、濾過寿命は平均粒径が大きくなるほど長くなるが、
この理由は、平均粒径が小さいほどクラッド吸着時にプ
リコート層での目詰まりが起こりやすく、その結果、濾
過差圧の上昇が速くなることによる。したがって、濾過
寿命を従来のスルホン酸型樹脂と同等以上とするために
は、カルボン酸型樹脂の平均粒径は30μm以上である
ことが望ましい。したがって、クラッド除去率90%以
上でかつ、濾過寿命も従来のスルホン酸型樹脂以上であ
るためにはカルボン酸型樹脂の平均粒径は30〜60μ
mであることが望ましい。
説明をさらに補足すると、従来のスルホン酸型樹脂では
平均粒径50〜150μm(60〜400 mesh)が望まし
いのに対し、カルボン酸型樹脂では30〜60μmが望
ましい理由は以下のようにまとめることができる。即
ち、カルボン酸型樹脂は弱酸性(スルホン酸型は強酸
性)のため、高いクラッド除去率を得るには反応表面積
を大きくしなければならず、そのため従来のスルホン酸
型樹脂よりも平均粒径が小さい方が望ましい。また、ス
ルホン酸型樹脂はクラッドを吸着すると、樹脂粒子が収
縮する収縮性樹脂であるために、平均粒径が50μm以
下になると濾過寿命が急激に短くなるが、カルボン酸型
樹脂は逆の膨張性樹脂のために、平均粒径が30μm程
度でも、従来のスルホン酸型樹脂と同等の濾過寿命が得
られる。なお、第17図には繊維割合20wt%の場合
について示したが、第15図で説明した繊維割合10〜
40wt%の範囲では、やはり平均粒径を30〜60μ
mとすることにより、高い濾過性能の得られることを確
認した。これを第18図により説明する。
まず横軸に示した繊維割合に関しては、これが10wt
%以下になるとクラックが発生しクラッド除去率が90
%以下になり、また、40wt%以上でも相対的にイオ
ン交換樹脂の割合が低下し、クラッド除去率が低くな
る。また、縦軸に示した平均粒径については、60μm
以上では反応表面積が不足しクラッド除去率が低く、3
0μm以下ではプリコート層での目詰まりが起こり濾過
寿命が短くなる。このようにカルボン酸型樹脂は膨張性
かつ弱酸性であり、従来のスルホン酸型樹脂とはその物
性が異なるため、最適な粉末状イオン交換樹脂の条件も
異なることがわかった。
また、粉末状イオン交換樹脂をプリコート材として用い
る場合には、弱酸性の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換
樹脂を一定の比率(通常は陽イオン交換樹脂と陰イオン
交換樹脂の比率は4対1から1対2の範囲)で混合して
用いるが、陰イオン交換樹脂には、粉末状の第4級,第
3級,第2級、または第1級アンモニウム型樹脂などを
用いることができるのは従来と同じである。
〔発明の効果〕
本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1) 59Coなど非放射性金属を原子炉内で長時間滞留さ
せることがなくなり、したがって60Coなどの生成が抑
制され、放射性金属の配管への付着も抑制できるから、
原子力発電所内での作業員の被ばく量を大幅に低減する
ことが可能になる。
(2) 原子炉冷却水中のイオンやクラッドを捕獲しても差
圧上昇やクラックの発生を抑制でき、濾過脱塩器の寿命
を伸ばすことができる。したがって、コスト低減を計れ
るばかりでなく廃棄物の発生量も低減できる。
(3) 本発明で使用する陽イオン交換樹脂は、イオン交換
基の結合エネルギーが小さいために、熱的に簡単に分解
でき、したがって廃棄物処理が容易で大幅な減容が計れ
る。しかもその廃棄物処理時に有害ガスを発生すること
もなく、処理設備を簡単化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す原子力プラントの系統
図、第2図は第1図で用いた濾過脱塩器の一部詳細断面
図、第3図および第4図はそれぞれ原子炉内での金属イ
オンの挙動を説明する図、第5図は本発明を説明するた
めの実験装置を示す系統図、第6図は様々な陽イオン交
換樹脂の耐熱性を説明する図、第7図は陽イオン交換樹
脂の熱分解特性を説明する図、第8図は本発明における
濾過脱塩器の差圧上昇を従来と比較して説明する図、第
9図は陰陽両イオン交換樹脂の混合割合に対する濾過寿
命の関係を示す図、第10図は本発明の他の実施例を示
す原子力プラントの系統図、第11図は本発明で使用し
た使用済のイオン交換樹脂を熱分解処理に用いた廃棄物
処理設備の系統図、第12図はクラッド除去率の経時変
化を示す図、第13図はプリコート層断面の様子を示す
図、第14図はクラッド捕捉量とクラッド除去率との関
係を示す図、第15図は最適な繊維割合を示す図、第1
6図はプリコート層断面のクラッド分布を示す図、第1
7図は最適な粒径範囲を示す図、第18図は最適な平均
粒径と繊維割合との関係を示す図である。 1……タービン、2……復水器、3……原子炉冷却水、
4……濾過脱塩器、5……脱塩器、6……原子炉、9,
15……給水ポンプ、16……給水加熱器、17……プ
リコートタンク、20……プリコートポンプ、22……
フロック。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小森 至 茨城県日立市森山町1168番地 株式会社日 立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 馬場 務 茨城県日立市森山町1168番地 株式会社日 立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 遊座 英夫 茨城県日立市森山町1168番地 株式会社日 立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 内田 俊介 茨城県日立市森山町1168番地 株式会社日 立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 三浦 英一 茨城県日立市森山町1168番地 株式会社日 立製作所エネルギー研究所内 (72)発明者 安達 哲朗 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 大角 克巳 茨城県日立市幸町3丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 佐藤 知弘 東京都千代田区神田駿河台4丁目6番地 株式会社日立製作所内 (56)参考文献 特開 昭58−76146(JP,A)

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)芳香族環を含む高分子の主鎖に結合
    しているカルボキシル基をイオン交換基として有する陽
    イオン交換樹脂,(b)陰イオン交換樹脂及び(c)植
    物繊維及び有機合成繊維から選ばれる少なくとも1種の
    繊維とを含むイオン交換樹脂組成物を用い、原子力プラ
    ントの復水器下流において前記樹脂組成物に原子炉冷却
    水を通水し、該冷却水中のクラッドまたは陽イオンを除
    去することを特徴とする原子炉冷却水の浄化方法。
  2. 【請求項2】前記陽イオン交換樹脂は平均粒径が30〜
    60μmであることを特徴とする特許請求の範囲第1項
    記載の原子炉冷却水の浄化方法。
  3. 【請求項3】前記イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂5
    0〜90wt%及び陰イオン交換樹脂10〜50wt%
    からなることを特徴とする特許請求の範囲第1項または
    第2項記載の原子炉冷却水の浄化方法。
  4. 【請求項4】前記繊維の割合が10〜40wt%(樹脂
    と繊維との乾燥重量基準)であることを特徴とする特許
    請求の範囲第1項または第2項記載の原子炉冷却水の浄
    化方法。
  5. 【請求項5】陽イオン交換樹脂は、アクリル系カルボン
    酸型樹脂,メタクリル系カルボン酸型樹脂及び芳香族系
    カルボン酸型樹脂の少なくとも1種であることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項または第2項記載の原子炉冷
    却水の浄化方法。
  6. 【請求項6】(a)芳香族環を含む高分子の主鎖に結合
    しているカルボキシル基をイオン交換基として有する繊
    維状の陽イオン交換樹脂及び(b)陰イオン交換樹脂と
    を含むイオン交換樹脂組成物を用い、原子力プラントの
    復水器下流において前記樹脂組成物に原子炉冷却水を通
    水し、該冷却水中のクラッドまたは陽イオンを除去する
    ことを特徴とする原子炉冷却水の浄化方法。
  7. 【請求項7】陰イオン交換樹脂が繊維状であることを特
    徴とする特許請求の範囲第6項記載の原子炉冷却水の浄
    化方法。
  8. 【請求項8】(a)芳香族環を含む高分子の主鎖に結合
    しているカルボキシル基をイオン交換基として有する陽
    イオン交換樹脂,(b)陰イオン交換樹脂及び(c)植
    物繊維及び有機合成繊維から選ばれる少なくとも1種の
    繊維とを含むイオン交換樹脂組成物を用い、原子力プラ
    ントの復水器下流において前記樹脂組成物に原子炉冷却
    水を通水し、該冷却水中のクラッドまたは陽イオンを除
    去すること、及び所定期間使用後、前記イオン交換樹脂
    を取り出し、その一部ないし全部を熱分解または焼却し
    て該樹脂の体積を減少させることを含む原子炉冷却水の
    浄化方法。
  9. 【請求項9】原子力プラントの復水器下流に設置された
    原子炉冷却水浄化装置に、イオン交換樹脂組成物とし
    て、(a)芳香族環を含む高分子の主鎖に結合している
    カルボキシル基をイオン交換基として有する陽イオン交
    換樹脂,(b)陰イオン交換樹脂及び(c)植物繊維及
    び有機合成繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維とを
    含むイオン交換樹脂組成物を装填したことを特徴とする
    原子炉冷却水浄化装置。
  10. 【請求項10】陽イオン交換樹脂は平均粒径が30〜6
    0μmであることを特徴とする特許請求の範囲第9項記
    載の原子炉冷却水浄化装置。
  11. 【請求項11】(a)芳香族環を含む高分子の主鎖に結
    合しているカルボキシル基をイオン交換基として有する
    陽イオン交換樹脂,(b)陰イオン交換樹脂及び(c)
    植物繊維及び有機合成繊維から選ばれる少なくとも1種
    の繊維とを含むイオン交換樹脂組成物からなることを特
    徴とする原子力プラントにおける放射性物質除去用粉状
    イオン交換樹脂組成物。
  12. 【請求項12】陽イオン交換樹脂はイオン交換基がベン
    ゼン環を構成する炭素以外の元素と結合したイオン交換
    樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第11項記
    載の原子力プラントにおける放射性物質除去用粉状イオ
    ン交換樹脂組成物。
  13. 【請求項13】前記繊維の割合が10〜40wt%(樹
    脂と繊維との全乾燥重量基準)であることを特徴とする
    特許請求の範囲第11項または第12項記載の原子力プ
    ラントにおける放射性物質除去用粉状イオン交換樹脂組
    成物。
  14. 【請求項14】陽イオン交換樹脂はイオン交換基がベン
    ゼン環を構成する炭素以外の元素と結合したイオン交換
    樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第11項ま
    たは第12項記載の原子力プラントにおける放射性物質
    除去用粉状イオン交換樹脂組成物。
  15. 【請求項15】前記イオン交換樹脂の平均粒径が、30
    〜60μmであることを特徴とする特許請求の範囲第1
    1項記載の原子力プラントにおける放射性物質除去用粉
    状イオン交換樹脂組成物。
JP61156074A 1985-07-10 1986-07-04 原子炉冷却水の浄化方法と浄化装置及びそれに使用されるイオン交換樹脂組成物 Expired - Lifetime JPH0631848B2 (ja)

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JP60-150251 1986-04-11
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JP8208686 1986-04-11

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