JPH0629474B2 - 摺動用部材 - Google Patents

摺動用部材

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JPH0629474B2
JPH0629474B2 JP60094880A JP9488085A JPH0629474B2 JP H0629474 B2 JPH0629474 B2 JP H0629474B2 JP 60094880 A JP60094880 A JP 60094880A JP 9488085 A JP9488085 A JP 9488085A JP H0629474 B2 JPH0629474 B2 JP H0629474B2
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fiber
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、互いに当接して相対的に摺動する二つの部材
よりなる摺動用部材に係り、更に詳細には一方の部材が
アルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を強化繊維とす
る複合材料にて構成され他方の部材が表面に軟窒化層を
有する鋼にて構成された摺動用部材に係る。
従来の技術 各種機械の構成要素や部材に於ては、部分的に特別な機
械的特性を要求されることが多い。例えば、自動車用エ
ンジンに於ては、エンジンの性能に対する要求が高くな
るにつれて、ピストンの如き部材はその比強度や剛性が
優れていることに加えて、その摺動面が耐摩耗性に優れ
ていることが強く要請されるようになってきた。かかる
部材の比強度や耐摩耗性等を向上させる一つの手段とし
て、それらの部材を各種の無機質繊維等を強化材として
アルミニウム合金の如き金属をマトリックスとする複合
材料にて構成することが試られている。
かかる繊維強化金属複合材料の一つとして、本願出願人
と同一の出願人の出願にかかる特願昭60−09487
7号に於て、アルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を
強化繊維とし、アルミニウム合金などをマトリックスと
する繊維強化金属複合材料が既に提案されており、かか
る繊維強化金属複合材料によれば、それらにて構成され
た部材の比強度や耐摩耗性等を向上させることができ、
またアルミナ繊維等を強化繊維とする複合材料に比して
低廉な複合材料を得ることができる。
発明が解決しようとする問題点 しかし、互いに当接して相対的に摺動する二つの部材よ
りなる摺動用部材に於て、その一方の部材を上述の如き
繊維強化金属複合材料にて構成した場合には、その他方
の部材の材質によってはその他方の部材の摩耗が著しく
増大し、従ってそれらを互いに当接して相対的に摺動す
る摺動用部材として使用することはできない。
本願発明者等は、互いに当接して相対的に摺動する二つ
の部材よりなる摺動用部材であって、その一方の部材が
強度及び剛性に優れたアルミナ繊維及びアルミナ繊維に
比して遥かに低廉であるアルミナ−シリカ繊維を強化繊
維としアルミニウム合金の如き金属をマトリックスとす
る繊維強化金属複合材料にて構成され、その他方の部材
が鋼にて構成された摺動用部材に於凍て、それら両方の
部材の摩耗量を最小限に抑えるためには、それらの材質
や性質の組合せとしては如何なるものが適切であるかに
ついて種々の実験的研究を行なった結果、それぞれ特定
の特徴及び特定の性質を有するものでなければならない
ことを見出した。
本発明は、本願発明者等が行なった上述の如き実験的研
究の結果得られた知見に基づき、一方の部材がアルミナ
繊維及びアルミナ−シリカ繊維を強化繊維としアルミニ
ウム合金の如き金属をマトリックスとする繊維強化金属
複合材料にて構成され、その他方の部材が鋼にて構成さ
れた互いに当接して相対的に摺動する二つの部材よりな
る摺動用部材であって、それら両方の部材の互いに他に
対する摺動面に於ける摩耗特性が改善された摺動用部材
を提供することを目的としている。
問題点を解決するための手段 上述の如き目的は、本発明によれば、互いに当接して
相対的に摺動する第一の部材と第二の部材とよりなる摺
動用部材にして、前記第一の部材の少なくとも前記第二
の部材に対する摺動面部は80wt%以上のAl
残部実質的にSiOなる組成を有するアルミナ繊維
と、35〜65wt%Al、65〜35wt%SiO
なる組成を有するアルミナ−シリカ繊維との実質的に
均一な混合物よりなるハイブリッド繊維を強化繊維と
し、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉛、スズ
及びこれらを主成分とする合金よりなる群より選択され
た金属をマトリックス金属とし、前記ハイブリッド繊維
の体積率が1%以上である複合材料にて構成されてお
り、前記第二の部材の少なくとも前記第一の部材に対す
る摺動面部は軟窒化処理された鋼にて構成されていこと
を特徴とする摺動用部材、又は互いに相対して当接的
に摺動する第一の部材と第二の部材とよりなる摺動用部
材にして、前記第一の部材の少なくとも前記第二の部材
に対する摺動面部は80wt%以上のAl、残部実
質的にSiOなる組成を有するアルミナ繊維と、35
〜65wt%Al、65〜35wt%SiO、10
wt%以下のCaO、MgO、NaO、Fe、C
、ZO、TiO、PbO、SnO、Zn
O、MoO、NiO、KO、MnO、B
、CuO、Coの一種以上の金属酸化物
なる組成を有するアルミナ−シリカ繊維との実質的に均
一な混合物よりなるハイブリッド繊維を強化繊維とし、
アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉛、スズ及び
これらを主成分とする合金よりなる群より選択された金
属をマトリックス金属とし、前記ハイブリッド繊維の体
積率が1%以上である複合材料にて構成されており、前
記第二の部材の少なくとも前記第一の部材に対する摺動
面部は軟窒化処理された鋼に構成されていることを特徴
とする摺動用部材によって達成される。
発明の作用及び効果 本発明によれば、第一の部材の摺動面部を構成する複合
材料に於ては、強度及び硬度が高く炭化ケイ素繊維等に
比して低廉であるアルミナ繊維と、アルミナ繊維よりも
更に一層低廉であるアルミナ−シリカ繊維との実質的に
均一な混合物よりなるハイブリッド繊維により体積率1
%以上にてマトリックス金属が強化され、またアルミナ
−シリカ繊維の集合体中に含まれる非繊維化粒子の総量
及び粒径150μ以上の非繊維化粒子含有量がそれぞれ
20wt%以下、7wt%以下に維持され、第二部材の摺動
面部は軟窒化処理された鋼にて構成されるので、互いに
当接して相対的に摺動する二つの部材よりなる摺動用部
材にあって、それら両方の部材の互いに他に対する摺動
面は耐摩耗性に優れており、従ってそれら両方の部材の
それぞれの摺動面に於ける摩耗量を最小限に抑えると共
に、粒子の脱落に起因する異常摩耗を回避することがで
き、しかもその一方の部材は比強度、剛性の如き機械的
性質や機械加工性にも優れ低廉である摺動用部材を得る
ことができる。
一般にアルミナ−シリカ系繊維はその組成及び製法の点
からアルミナ繊維とアルミナ−シリカ繊維に大別され
る。Al含有量が70wt%以上でありSiO
有量が30wt%以下の所謂アルミナ繊維は、有機の粘調
な溶液とアルミニウムの無機塩との混合物にて繊維化
し、これを高温に酸化焙焼することによ製造されてい
る。かかるアルミナ繊維は特にAl含有量が80
wt%以上の場合に安定であり、マトリックス金属の溶湯
との反応やそれに伴う繊維の劣化が少ない。従って本発
明の摺動用部材に於ては、80wt%以上のAl
残部実質的にSiOなる組成を有するアルミナ繊維が
使用される。
また前述の如くアルミナには種々の結晶構造のものがあ
り、これらのうちαアルミナが最も安定な構造であり、
硬さや弾性率も高いことが知られている。例えば耐熱材
として市販されているアルミナ繊維は、耐熱性や寸法安
定性等の点から、αアルミナ含有率(アルミナ繊維中の
全アルミナの重量に対するαアルミナの重量の割合)が
60wt%以上であるものが多い。かかるαアルミナ及び
αアルミナを含有するアルミナ繊維の性質から判断する
と、αアルミナを含有するアルミナ繊維を強化繊維とし
アルミニウム合金等をマトリツクス金属とする複合材料
に於ては、αアルミナ含有率が高くなればなるほどその
複合材料自身の機械的強度、剛性、耐摩耗性等は向上す
るが、相手部材の摩耗量が増大し、また加工性が低下す
るものと推測される。
しかるに本願発明者等が行った実験的研究の結果によれ
ば、上述の如き予想に反し、アルミナ繊維のαアルミナ
含有率が5〜60wt%、特に10〜50wt%の範囲にあ
る場合に複合材料の耐摩耗性や加工性を向上させること
ができ、しかも相手部材の摩耗量を低減することがで
き、更に上述の範囲は疲労強度の如き機械的性質にとっ
ても好ましいという特筆すべき事実が認められた。従っ
て本発明の一つの詳細な特徴によれば、アルミナ繊維の
αアルミナ含有率は5〜60wt%、好ましくは10〜5
0wt%とされる。
一方Al含有量が35〜65wt%でありSiO
含有量が35〜65wt%であるいわゆるアルミナ−シリ
カ繊維は、アルミナとシリカの混合物がアルミナに比し
て低融点であるため、アルミナとシリカの混合物を電気
炉などにて溶融し、その融液をブローイング法やスピニ
ング法にて繊維化することにより比較的低廉に且大量に
生産されている。特にAl含有量が65wt%以上
でありSiO含有量が35wt%以下の場合にはアルミ
ナとシリカとの混合物の融点が高くなり過ぎまた融液の
粘性が低く、一方Al含有量が35wt%以下であ
りSiO含有量が65wt%以上の場合には、ブローイ
ングやスピニングに必要な適正な粘性が得られない等の
理由から、これらの低廉な製造法を適用し難い。
またアルミナとシリカとの混合物の融点や粘性を調整し
たり、繊維に特殊な性能を付与する目的から、アルミナ
とシリカとの混合物にCaO、MgO、NaO、Fe
、Cr、ZrO、TiO、PbO、S
nO、ZnO、MoO、NiO、KO、Mn
、B、Y、CuO、Coなどの
金属酸化物が添加されることがある。本願発明者等が行
なった実験的研究の結果によれば、これらの成分は10
wt%以下に抑えられることが好ましいことが認められ
た。更にアルミナ−シリカ繊維に於ては、アルミナ含有
率が高い程マトリックス金属の溶湯との反応による劣化
及びこれに起因する繊維の強度低下が少なくなる。従っ
て本発明の摺動用部材に於けるアルミナ−シリカ繊維の
組成は35〜65wt%Al、65〜35wt%Si
、又は35〜65wt%Al、65〜35wt%
SiO、10wt%以下のCaO、MgO、NaO、
Fe、Cr、ZrO、TiO、Pb
O、SnO、ZnO、MoO、NiO、KO、M
nO、B、V、CuO、Coの一
種以上の金属酸化物に設定され、好ましくは40〜65
wt%Al、40〜35wt%SiO、又は40〜
65wt%Al、40〜35wt%SiO、10wt
%以下のCaO、MgO.NaO、Fe、Cr
、ZrO、TiO、PbO、SnO、Zn
O、MoO、NiO、KO、MnO、B
、CuO、Coの一種以上の金属酸化物
に設定される。
またブローイング法やスピニング法によるアルミナ−シ
リカ繊維の製造に於ては、繊維と同時に非繊維化粒子が
不可避的に多量に生成し、従ってアルミナ−シリカ繊維
の集合体中には比較的多量(50wt%程度)の非繊維化
粒子が含まれている。本願発明者等が行った実験的研究
の結果によれば、かかる非繊維化粒子は複合材料の機械
的性質及び加工性を悪化させ、複合材料の強度を低下せ
しめる原因となり、更には粒子の脱落に起因して相手材
に対し異常摩耗の如き不具合を発生させる原因ともな
り、かかる不具合は粒径が150μを越える粒子の場合
に顕著である、 非繊維化粒子の総量及び粒径150μ以上の非繊維化粒
子の含有量がそれぞれ22wt%、14wt%に低減される
と、非繊維化粒子の総量が約50wt%である場合に比し
て複合材料の被削性が大幅に向上し、例えば切削工具で
あるバイトの摩耗量は約半分に減少するが、特に非繊維
化粒子の総量及び粒径150μ以上の非繊維化粒子の含
有量がそれぞれ17wt%、7wt%に低減されると、バイ
トの摩耗量は非繊維化粒子の総量及び粒径150μ以上
の非繊維化粒子の含有量がそれぞれ22wt%、14wt%
である場合(以下「比較基準」という)の摩耗量の約7
0%に低減され、また非繊維化粒子の総量及び粒径15
0μ以上の非繊維化粒子の含有量がそれぞれ10wt%、
2wt%に設定されると、バイトの摩耗量は比較基準の場
合の摩耗量の約25%に低減され、更に非繊維化粒子の
総量及び粒径150μ以上の非繊維化粒子の含有量がそ
れぞれ7wt%、1wt%に設定されると、バイトの摩耗量
は比較基準の場合の摩耗量の約20%に低減される。
また非繊維化粒子の総量及び粒径150μ以上の非繊維
化粒子の含有量がそれぞれ17wt%、7wt%に低減され
ると、第二の部材、即ち複合材料と摩擦摺動する相手材
の異常摩耗が大幅に減少すると共にスカッフィングの発
生が皆無になり、更に非繊維化粒子の総量及び粒径15
0μ以上の非繊維化粒子の含有量がそれぞれ10wt%、
2wt%に設定されると、相手材の異常摩耗も皆無にな
る。
従って本発明の一つの詳細な特徴によれば、アルミナ−
シリカ繊維の集合体中に含まれる非繊維化粒子の総量は
17wt%以下、好ましくは10wt%、更に好ましくは7
wt%以下に抑えられ、また粒径150μ以上の非繊維化
粒子の含有量は7wt%以下、好ましくは2wt%以下、更
に好ましくは1wt%以下に抑えられる。
また本願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、
アルミナ繊維とアルミナ−シリカ繊維との実質的に均一
な混合物よりなるハイブリッド繊維を強化繊維とし、ア
ルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉛、スズ及びこ
れらを主成分とする合金をマトリックス金属とする複合
材料に於ては、ハイブリッド繊維の体積率が1%程度で
あっても複合材料の耐摩耗性が著しく向上する。従って
本発明の摺動用部材に於ては、ハイブリッド繊維の体積
率は1%以上、特に3%以上、更には10%以上とされ
る。
また本願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、
アルミナ繊維とアルミナ−シリカ繊維とを組合せてハイ
ブリッド化することによる複合材料の耐摩耗性向上効果
は、特に相手材が鋼である場合には後に詳細に説明する
如く、ハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比が
2.5〜80%の場合に、特に10〜70%の場合に顕
著である。また複合材料及びこれと摩擦する相手材の摩
耗量はハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比が2
0〜95%の範囲、特に40〜90%の範囲に於て小さ
い値になる。従って本発明の他の一つの詳細な特徴によ
れば、ハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比は2
0〜95%、好ましくは40〜90%とされる。
また本願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、
相手材が軟窒化処理された鋼であってハイブリッド繊維
中のアルミナ繊維の体積比が上述の好ましい範囲20〜
90%にある場合には、ハイブリッド繊維の体積率が1
%、特に3%以上でなければ複合材料の十分な耐摩耗性
を確保することが困難であり、ハイブリッド繊維の体積
率が30%、特に35%を越えると相手材の摩耗量が増
大する。従って本発明の更に他の一つの詳細な特徴によ
れば、ハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比は2
0〜95%、特に40〜90%でありハイブリッド繊維
の体積率は1〜35%、好ましくは3〜30%とされ
る。
また本願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、
ハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比の如何に拘
らず、アルミナ−シリカ繊維の体積率が22.5%、特
に25%を越えると複合材料の強度及び耐摩耗性が低下
する。従って本発明の更に他の一つの詳細な特徴によれ
ば、ハイブリッド繊維中のアルミナ繊維の体積比の如何
に拘らず、アルミナ−シリカ繊維の体積率は25%以
下、好ましくは22.5%以下とされる。
また本願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、
第二の部材の摺動面部を構成する軟窒化処理された鋼の
表面硬さHv(50g)はその摩耗量を低減するために
は700以上、特に1000以上であることが好まし
く、軟窒化層の厚さは5μ以上、特に10μ以上である
ことが好ましく、第一の部材の摺動面部の摩耗量を過剰
に増大させないためには軟窒化処理された鋼の表面硬さ
Hv(50g)は1300以下、特に1200以下であ
ることが好ましいことが認められた。従って本発明の更
に他の一つの詳細な特徴によれば、第二の部材の摺動面
部の表面硬さHv(50g)は700〜1300、好ま
しくは1000〜1200とされる。
尚第一の部材の構成材料として、強度、耐摩耗性の如き
機械的性質に優れ、しかも相手材に対する摩擦摩耗特性
に優れた複合材料を得るためには、アルミナ繊維は、本
願発明者等が行った実験的研究の結果によれば、短繊維
の場合には0.5〜30μの平均繊維径及び1μ〜50
mmの平均繊維長を有し、長繊維の場合には5〜30μの
繊維径を有することが好ましい。一方アルミナ−シリカ
繊維はその構成材料たるアルミナ−シリカ繊維の溶融状
態に於ける粘性が比較的小さく、またアルミナ−シリカ
繊維アアルミナ繊維等に比して比較的脆弱であることか
ら、アルミナ−シリカ繊維は繊維径0.5〜10μ、繊
維長1μ〜約5cm程度の短繊維(不連続繊維)の形態に
て製造されている。従って低廉なアルミナ−シリカ繊維
の入手性を考慮すれば、本発明の複合材料に於て使用さ
れるアルミナ−シリカ繊維の平均繊維径は1〜7μ程度
であり、平均繊維長は10μ〜0.5cm程度であること
が好ましい。また複合材料の製造方法を考慮すると、ア
ルミナ−シリカ繊維の平均繊維長は加圧鋳造法の場合に
は10μ〜0.5cm程度、粉末治金法の場合には10μ
〜3mm程度であることが好ましい。
また本発明に於ける第一の部材を構成する複合材料のマ
トリックス金属としての合金は、それぞれJIS規格で
AC4C、AC8A、AC8B、ADC10、ADC1
2の如きアルミニウム合金、MDC1−A、MC2、M
C7、MC8の如きマグネシウム合金、KJ3、KJ
4、PBC2A、HBsBE1の如き銅合金、ZDC
1、ZDC2の如き亜鉛合金、WJ8、WJ10の如き
鉛合金、WJ1、WJ2の如きスズ合金であってよい。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を実施例について
詳細に説明する。
実施例1 ICI株式会社製のアルミナ繊維(商品名「サフィルR
F」)に対し脱粒処理を行い、繊維集合体中に含まれる
非繊維化粒子の総量及び粒径150μ以上の非繊維化粒
子含有量をそれぞれ0.1wt%、0.02wt%とするこ
とにより、下記の表1に示されている如きアルミナ繊維
を用意した。
また下記の表2に示されたイソライト・バブコック耐火
株式会社製のアルミナ−シリカ繊維(商品名「カオウー
ル」)に対し脱粒処理を行うことにより、繊維集合体中
に含まれる非繊維化粒子の総量及び粒径150μ以上の
非繊維化粒子含有量をそれぞれ0.5wt%、0.1wt%
とした。
次いで上述のアルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を
種々の体積比にてコロイダルシリカ中に分散させ、その
コロイダルシリカを撹拌することによりアルミナ繊維及
びアルミナ−シリカ繊維を均一に混合し、かくしてアル
ミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維が均一に分散された
コロイダルシリカより真空成形法により第1図に示され
ている如く80×80×20mmの繊維形成体1を形成
し、更にそれを600℃にて焼成することにより個々の
アルミナ繊維2及びアルミナ−シリカ繊維2aをシリカ
にて結合させた。この場合、第1図に示されている如
く、個々のアルミナ繊維2及びアルミナ−シリカ繊維2
aはx−y平面内に於てはランダムに配向され、z方向
に積重ねられた状態に配向された。
次いで第2図に示されている如く、繊維成形体1を鋳型
3のモールドキャビティ4内に配置し、該モールドキャ
ビティ内に730℃のアルミニウム合金(JIS規格A
C8A)の溶湯5を注湯し、該溶湯を鋳型3に嵌合する
プランジャ6により1500kg/cm2の圧力に加圧し、
その加圧状態を溶湯5が完全に凝固するまで保持し、か
くして第3図に示されている如く外径110mm、高さ5
0mmの円柱状の凝固体7を鋳造し、更に該凝固体に対し
熱処理Tを施し、各凝固体よりアルミナ繊維及びアル
ミナ−シリカ繊維を強化繊維としアルミニウム合金をマ
トリックスとする複合材料1′を切出し、それらの複合
材料より大きさが16×6×10mmであり、その一つの
面(16×10mm、第1図のx−y平面に垂直)を試験
面とする摩耗試験用のブロック試験片A〜A100を機
械加工によって作成した。尚上述の各複合材料A〜A
100のアルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維の体積
率、強化繊維の総体積率、強化繊維の総量に対するアル
ミナ繊維の体積比はそれぞれ下記の表3に示されている
通りであった。
また比較の目的で、アルミニウム合金(JIS規格AC
8A)のみよりなり熱処理Tが施された同一寸法のブ
ロック試験片Aを作成した。
次いで各ブロック試験片を順次摩擦摩耗試験材にセット
し、相手部材である外径35mm、内径30mm、巾10mm
の軸受鋼(JIS規格SUJ2、表面硬さHv=110
0、軟窒化層厚さ40μ)製の円筒試験片の外周面と接
触させ、それらの試験片の接触部に常温(20℃)の潤
滑油(キャッスルモータオイル5W−30)を供給しつ
つ、接触面圧20kg/mm2、滑り速度0.3m/ secに
て1時間円筒試験片を回転させる摩耗試験を行なった。
この摩耗試験の結果を第4図に示す。第4図に於て、上
半分はブロック試験片の摩耗量(摩耗痕深さμ)を表わ
しており、下半分は相手部材である円筒試験片の摩耗量
(摩耗減量mg)を表わしており、横軸は強化繊維の総量
に対するアルミナ繊維の体積化(%)を表わしている。
第4図より、ブロック試験片の摩耗量はアルミナ繊維の
体積比の増大につれて低下し、特にアルミナ繊維の体積
比が0〜60%の範囲に於て著しく低下することが解
る。また円筒試験片の摩耗量はアルミナ繊維の体積比の
増大につれて実質的に線形的に増大することが解る。従
って鋼を相手部材とする場合に於てブロック試験片及び
円筒試験片両方の摩耗量を低減するためには、アルミナ
繊維の体積比は20〜95%、特に40〜90%である
ことが好ましいことが解る。
複合材料は一般に設計可能な材料といわれており、複合
則が成立すると考えられている。今強化繊維の総量に対
するアルミナ繊維の体積比をX%とすれば、X=0%で
ある場合のブロック試験片の摩耗量は53μであり、X
=100%である場合のブロック試験片の摩耗量は10
μであるので、複合材料の摩耗量について複合則が成立
するとすれば、X=0〜100%の範囲に於けるブロッ
ク試験片の摩耗量は Y=(53−8)X/100+8 であるものと推測される。
第4図に於ける仮想線はかかる複合則に基づくブロック
試験片の摩耗量の推測値を表わしている。また第5図は
かかる複合則に基づくブロック試験片の摩耗量の推測値
と実測値との差ΔYを強化繊維の総量に対するアルミナ
繊維の体積比Xを横軸にとって示している。
第4図及び第5図より、ブロック試験片の摩耗量はアル
ミナ繊維の体積比Xの値に拘らず推測値よりも小さく、
特に体積比Xが5〜2.0%の範囲に於て、更には50
〜60%の範囲に於て推測値より著しく低減され、この
ことは複合材料の摩耗量に関しアルミナ繊維とアルミナ
−シリカ繊維とをハイブリッド化することにより得られ
る効果に他ならない。
実施例2 下記の表4に示されたICI株式会社製のアルミナ繊維
(商品名「サフィル」)と下記の表5に示されたイソラ
イト・バブコック耐火株式会社製のアルミナ−シリカ繊
維(商品名「カオウール」と)を使用して、上述の実施
例1の場合と同一の要領の真空成形法により、互いに均
一に混合された種々の体積比のアルミナ繊維とアルミナ
−シリカ繊維とよりなる80×80×20mmの繊維成形
体を形成した。次いで上述の実施例1の場合と同様の要
領の高圧鋳造法(溶湯温度1100℃、溶湯に対する加
圧力1000kg/cm2)にて、アルミナ繊維とアルミナ
−シリカ繊維とよりなるハイブリッド繊維を強化繊維と
し銅合金(Cu−10wt%Sn)をマトリックス金属と
する複合材料を製造した。次いで各複合材料より大きさ
が16×6×10mmであり、その一つの面(16×10
mm、第1図のx−y平面に垂直)を試験面とするブロッ
ク試験片B〜B100を機械加工によって作成した。尚
上述の各複合材料B〜B100のアルミナ繊維及びアル
ミナ−シリカ繊維の体積率、強化繊維の総体積率、強化
繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積比はそれぞれ下
記の表6に示されている通りであった。
次いで各ブロック試験片について上述の実施例2の場合
と同一の条件にて軟窒化処理された軸受銅(JIS規格
SUJ2、表面硬さHv=1100、軟窒化層厚さ40
μ)製の円筒試験片を相手部材とする摩耗試験を行っ
た。この摩耗試験の結果を第6図に示す。第6図に於
て、上半分はブロック試験片の摩耗量(摩耗痕深さμ)
を表わしており、下半分は相手部材である円筒試験片の
摩耗量(摩耗減量mg)を表わしており、横軸は強化繊維
の総量に対するアルミナ繊維の体積比(%)を表わして
おり、仮想線は複合側に基づくブロック試験片の摩耗量
の推測値を表わしている。
第6図より、この実施例に於てもブロック試験片の摩耗
量はアルミナ繊維の体積比の増大につれて低下し、特に
アルミナ繊維の体積比が0〜40%の範囲に於て大きく
低下し、アルミナ繊維の体積比が60%以上の領域に於
ては実質的に一定の値になることが解る。また円筒試験
片の摩耗量は比較的小さい値の範囲内に於てアルミナ繊
維の体積比の増大につれてごく僅かに増大することが解
る。従ってマトリックス金属が銅合金である場合にも、
鋼を相手部材とする場合に於けるブロック試験片及び円
筒試験片両方の摩耗量を低減するためには、アルミナ繊
維の体積比は20〜95%、特に40〜90%であるこ
とが好ましいことが解る。
また第7図は複合則に基づくブロック試験片の摩耗量の
推測値と実測値ΔYを強化繊維の総量に対するアルミナ
繊維の体積比Xを横軸にとって示す第5図と同様のグラ
フである。第6図及び第7図より、ブロック試験片の摩
耗量はハイブリッド化の効果によりアルミナ繊維の体積
比Xの値に拘らず推測値よりも小さく、特に体積比Xが
2.5〜80%の範囲に於て、更には10〜70%の範
囲に於て推測値より著しく低減されることが解る。
実施例4 αアルミナ含有率が0wt%、4wt%、16wt%、25wt
%、34wt%、48wt%、62wt%、83wt%、100
wt%である点を除き上掲の表1に示されたアルミナ繊維
と同一の諸元のアルミナ繊維と、上掲の表2に示された
アルミナ−シリカ繊維とを使用して、上述の実施例1の
場合と同一の要領及び同一の条件にて、アルミナ繊維と
アルミナ−シリカ繊維とよりなるハイブリッド繊維を強
化繊維とし、アルミニウム合金(JIS規格AC8A)
をマトリックス金属とし、強化繊維の総体積率が7.5
%であり、強化繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積
比が50%である複合材料を製造し、各複合材料に対し
熱処理Tを施した。
次いで各複合材料より摩擦摩耗試験用のブロック試験片
を形成し、上述の実施例1の場合と同一の条件にて軟窒
化処理された軸受鋼(JIS規格SUJ2、表面硬さH
v=1100、軟窒化層厚さ40μ)製の円筒試験片を
相手部材とする摩耗試験を行った。この摩耗試験の結果
を第8図に示す。尚第8図に於て、上半分はブロック試
験片の摩耗量(摩耗痕深さμ)を表わしており、下半分
は円筒試験片の摩耗量(摩耗減量mg)を表わしており、
横軸はアルミナ繊維のαアルミナ含有率(wt%)を表わ
している。
第8図より、ブロック試験片の摩耗量はアルミナ繊維の
αアルミナ含有率が5wt%以上、特に10wt%以上の場
合に小さく、円筒試験片の摩耗量はαアルミナ含有率が
5〜60wt%、特に10〜50wt%の場合に小さく、従
って鋼を相手部材とする場合に於てブロック試験片及び
円筒試験片両方の摩耗量を低減するためには、アルミナ
繊維のαアルミナ含有率は5〜60wt%、特に10〜5
0wt%であることが好ましいことが解る。
実施例4 αアルミナ含有率が8%である点を除き上掲の表1に示
されたアルミナ繊維と同一の諸元のアルミナ繊維及び上
掲の表2に示されたアルミナ−シリカ繊維を使用して、
上述の実施例1の場合と同一の要領及び同一の条件にて
アルミナ繊維とアルミナ−シリカ繊維とよりなるハイブ
リッド繊維を強化繊維とし、アルミニウム合金(JIS
規格AC8A)をマトリックス金属とし、強化繊維の総
量に対するアルミナ繊維の体積比が50%であり、強化
繊維の総体積率が1%、10%、20%、30%、35
%である複合材料を製造し、各複合材料に対し熱処理T
を施した。次いで各複合材料より摩擦摩耗試験用のブ
ロック試験片を形成した。また比較の目的でアルミニウ
ム合金(JIS規格AC8A)のみよりなり熱処理T
が施された同一寸法のブロック試験片を形成した。
次いで各ブロック試験片について上述の実施例1の場合
と同一の条件にて軟窒化処理された軸受鋼(JIS規格
SUJ2、表面硬さHv=1100、軟窒化層厚さ40
μ)製の円筒試験片を相手部材とする摩耗試験を行っ
た。この摩耗試験の結果を第9図に示す。尚第9図に於
て、上半分はブロック試験片の摩耗量(摩耗痕深さμ)
を表わしており、下半分は円筒試験片の摩耗量(摩耗減
量mg)を表わしており、横軸は強化繊維の体積率(%)
を表わしている。
第9図より、ブロック試験片の摩耗量は強化繊維の総体
積率が1%以上、特に3%以上、更には10%以上の場
合に小さく、円筒試験片の摩耗量は強化繊維の総体積率
が30%、特に35%を越えると急激に増大することが
解る。従って軟窒化処理された鋼を相手部材とする場合
に於てブロック試験片及び円筒試験片両方の摩耗量を低
減するためには、強化繊維の総体積率は1〜35%、特
に3〜30%であることが好ましいことが解る。
実施例5 上述の実施例1に於て使用されたアルミナ繊維及びアル
ミナ−シリカ繊維を用いて上述の実施例1の場合と同様
の要領にて繊維成形体を形成し、該繊維成形体を強化材
とし、マグネシウム合金(JIS規格MDC1−A)を
マトリックス金属とし、強化繊維の総体積率が10%で
あり、強化繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積比が
50%である複合材料を高圧鋳造法(湯温690℃、溶
湯に対する加圧力1500kg/cm2)にて製造し、該複
合材料より大きさが16×6×10mmであり、その一つ
の面(16×10mm、第1図のx−y平面に垂直)を試
験面とするブロック試験片Cを作成した。
また上述の実施例1に於て使用されたアルミナ繊維及び
アルミナ−シリカ繊維を用いて、上述の実施例1の場合
と同様の要領にて繊維成形体を形成し、該繊維成形体を
強化材とし、亜鉛合金(JIS規格ZDC1)、鉛合金
(JIS規格WJ8)、スズ合金(JIS規格WJ2)
をマトリックス金属とし、強化繊維の総体積率が10%
であり、強化繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積比
が50%である複合材料を高圧鋳造法(それぞれ湯温5
00℃、410℃、330℃、溶湯に対する加圧力50
0kg/cm2)にて製造し、各複合材料より大きさが16
×6×10mmであり、その一つの面(16×10mm、第
1図のx−y平面に垂直)を試験面とするブロック試験
片D〜Fを作成した。更に比較の目的で、マグネシ
ウム合金(JIS規格MDC1−A)、亜鉛合金(JI
S規格ZDC1)、鉛合金(JIS規格WJ8)、スズ
合金JIS規格WJ2)のみよりなる同一寸法のブロッ
ク試験片C〜Fを作成した。
次いでブロック試験片C、Cについては上述の実施
例1の場合と同一の条件にて、また他のブロック試験片
については面圧が5kg/cm2、試験時間が30分にそれ
ぞれ設定された点を除き上述の実施例1の場合と同一の
条件にて、軟窒化処理された軸受鋼(JIS規格SUJ
2、表面硬さHv=1100、軟窒化層厚さ40μ)製
の円筒試験片を相手部材とする摩耗試験を行った。この
摩耗試験の結果を下記の表7に示す。尚表7に於て、ブ
ロック試験片の摩耗量比率とはそれぞれブロック試験片
〜Fの摩耗量(摩耗痕深さmm)に対するブロック
試験片C〜Fの摩耗量(摩耗痕深さmm)の百分率を
意味し、円筒試験片の摩耗量とはブロック試験片C
と摩擦された円筒試験片の摩耗量(摩耗減量mg)を
意味する。尚ブロック試験片C〜Fと摩擦された円
筒試験片の摩耗量は測定不可能なほど小さく、実質的に
0であった。
表7より、アルミナ繊維とアルミナ−シリカ繊維とより
なるハイブリッド繊維にてマグネシウム合金、亜鉛合
金、鉛合金、スズ合金を強化すれば、相手材の摩耗量を
実質的に増大させることなくそれらの合金の摩耗量を大
幅に低減し得ることが解る。この実施例の結果より、マ
トリックス金属がマグネシウム合金、スズ合金、鉛合
金、亜鉛合金であり相手材が鋼である場合に於て、ハイ
ブリッド繊維の体積率、非繊維化粒子の総量、粒径15
0μ以上の非繊維化粒子の含有量、アルミナ繊維のαア
ルミナ含有率などが本発明の範囲に属する場合には、ブ
ロック試験片及び円筒試験片両方の摩耗量が非常に小さ
い値になることが解る。
尚上述の実施例1〜5の摩耗試験と同様の摩耗試験を軟
窒化処理されたクロム鋼(JIS規格SCr420)、
軟窒化処理されたステンレス鋼(JIS規格SUS34
0)、ねずみ鋳鉄(JIS規格FC23)を相手材とし
て各実施例と同一の条件にて行ったところ、それぞれ対
応する各実施例の結果と同様の結果が得られた。
実施例6 次にエンジン用ピストンとピストンリングとの組合せに
対し適用された本発明による摺動用部材の具体的実施例
について説明する。
第10図は上述の実施例を示す解図的縦断面図、第11
図はその要部を示す解図的拡大部分縦断面図、第12図
はピストンリング(トップリング)を拡大して示す解図
的部分縦断面図である。これらの図に於て、11はピス
トンであり、アルミニウム合金(JIS規格AC8A)
にて構成されている。ピストン11の外側外周面12に
は、燃焼ガスがピストン11とシリンダブロック13の
シリンダ壁面との間を経てエンジンの燃焼室より漏洩す
るのを防止するコンプレッションリング14及び15を
受入れる二つのリング溝16及び17と、余分のオイル
を掻落すオイルリング18を受入れるリング溝19とが
形成されている。
図示の実施例に於ては、ピストン11の側部外周面12
に沿うピストンヘッド20よりトップリング溝16の具
面21の下方までの部分は、平均繊維径3.2μ、平均
繊維長2.5mm、αアルミナ含有率30wt%のアルミナ
繊維(95wt%Al、5wt%SiO)と平均繊
維径2.8μ、平均繊維長3.0mmのアルミナ−シリカ
繊維(55wt%Al、45wt%SiO)とを種
々の体積比にて均一に混合し、カサ密度0.18g/cm
3(体積率%に相当)にて実質的に無作為に配向してな
る繊維成形体を強化材とし、ピストン11の他の部分を
構成するアルミニウム合金(JIS規格AC8A)をマ
トリックスとする複合材料22にて構成されている。こ
の複合材料22はトップリング14を受入れるトップリ
ング溝16の壁面を郭定しており、またピストンの側部
外周面12に露出する部分にてトップランド23及びセ
カンドランド24の一部を郭定している。
尚、かかるピストンはそれを鋳造するための鋳型のモー
ルドキャビティ底壁上に繊維成形体を載置し、その鋳型
内にアルミニウム合金の溶湯を注湯し、その鋳型に液密
的に嵌合するプランジャにより溶湯を加圧しつつ凝固さ
せてピストン予成形体とし、それに熱処理Tを施した
後所定の寸法に加工し、更にリング溝16、17、19
を形成することによって製造されてよい。
上述の如きピストン11と互いに当接して相対的に摺動
するトップリング14は、軟窒化処理された軸受鋼(J
IS規格SUJ2、表面硬さHv=1100、軟窒化層
厚さ40μ)にて構成されている。特に図示の実施例は
7゜のキーストンリングとして構成されており、そのシ
リンダブロック13のシリンダ壁面との摺動面部にモリ
ブデン溶射層25が形成されたものである。
上述の如く構成されたピストンとピストンリングとを4
気筒4サイクルディーゼルエンジンに組込み、下記の表
8に示す試験条件にて摩耗試験を行なった。
この摩耗試験の結果、トップリング溝16の上面26及
び下面21の摩耗量はアルミナ繊維の体積比が20wt%
以上の範囲に於ては3.5μ以下であり、特にアルミナ
繊維の体積比が50〜80wt%範囲に於ては2.5μと
小さい値になり、またトップリング14の下面27の摩
耗量はアルミナ繊維の体積比率が0〜80wt%の範囲に
於ては2.7μ以下であるが、アルミナ敷の体積比が8
0wt%以上の範囲に於ては5μと高い値になることが解
った。この試験結果より、上述の実施例によるピストン
とピストンリングとの組合せによれば、現在汎用されて
いるアルミニウム合金(JIS規格AC8A)製のピス
トンと鋳鉄製のピストンリングとの組合せに比較して、
リング溝の摩耗量は約1/8.5に低減され、またピス
トンリング上下面の摩耗量は約1/2.2に低減される
ことが解る。
以上に於ては本発明を本願発明者等が行った実験的研究
の一部との関連に於て種々の実施例について詳細に説明
したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
なく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であ
ることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
第1図はアルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維よりな
る繊維成形体の繊維配向状態を示す斜視図、第2図は高
圧鋳造法による複合材料の製造工程を示す解図、第3図
は第2図の高圧鋳造により形成された凝固体を示す斜視
図、第4図はアルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を
強化繊維としアルミニウム合金をマトリックス金属とす
る複合材料と軟窒化処理された軸受鋼との間にて行われ
た摩耗試験の結果を、強化繊維の総量に対するアルミナ
繊維の体積比を横軸にとって示すグラフ、第5図は第4
図に示されたデータに基づき複合材料の摩耗量の複合則
に基づく推測値と実測値との差を強化繊維の総量に対す
るアルミナ繊維の体積比を横軸にとって示すグラフ、第
6図はアルミナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を強化繊
維とし銅合金をマトリックス金属とする複合材料と軟窒
化処理された軸受鋼との間にて行われた摩耗試験の結果
を強化繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積比を横軸
にとって示すグラフ、第7図は第6図に示されたデータ
に基づき複合材料の摩耗量の複合則に基づく推測値と実
測値と差を強化繊維の総量に対するアルミナ繊維の体積
比を横軸にとって示すグラフ、第8図はαアルミナ含有
率が種々の値に設定されたアルミナ繊維及びアルミナ−
シリカ繊維を強化繊維としアルミニウム合金をマトリッ
クス金属とする複合材料と軟窒化処理された軸受鋼との
間にて行われた摩耗試験の結果をアルミナ繊維のαアル
ミナ含有率を横軸にとって示すグラフ、第9図はアルミ
ナ繊維及びアルミナ−シリカ繊維を強化繊維としアルミ
ニウム合金をマトリックス金属とし強化繊維の総体積率
が種々の値に設定された複合材料と軟窒化処理された軸
受鋼との間に行われた摩耗試験の結果を強化繊維の総体
積率を横軸にとって示すグラフ、第10図はエンジン用
ピストンとピストンとの組合せに対し適用された本発明
による摺動用部材の具体的実施例を示す解図的断面図、
第11図は第10図に示された実施例の要部を示す解図
的拡大部分縦断面図、第12図はピストンリング(トッ
プリング)を拡大して示す解図的部分縦断面図である。 1……繊維成形体,1′……複合材料,2……アルミナ
繊維,2a……アルミナ−シリカ繊維,3……鋳型,4
……モールドキャビティ,5……溶湯,6……プランジ
ャ,7……凝固体,11……ピストン,12……側部外
周面,13……シリンダブロック,14、15……コン
プレッションリング,16、17……リング溝,18…
…オイルリング,19……リング溝,20……ピストン
ヘッド,21……下面,22……複合材料,23……ト
ップランド,24……セカンドランド,25……モリブ
デン溶射層,26……上面,27……下面

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】互いに当接して相対的に摺動する第一の部
    材と第二の部材とよりなる摺動用部材にして、前記第一
    の部材の少なくとも前記第二の部材に対する摺動面部は
    80wt%以上のAl、残部実質的にSiOなる
    組成を有するアルミナ繊維と、35〜65wt%Al
    、65〜35wt%SiOなる組成を有するアルミナ
    −シリカ繊維との実質的に均一な混合物よりなるハイブ
    リッド繊維を強化繊維とし、アルミニウム、マグネシウ
    ム、銅、亜鉛、鉛、スズ及びこれらを主成分とする合金
    よりなる群より選択された金属をマトリックス金属と
    し、前記ハイブリッド繊維の体積率が1%以上である複
    合材料にて構成されており、前記第二の部材の少なくと
    も前記第一の部材に対する摺動面部は軟窒化処理された
    鋼にて構成されていることを特徴とする摺動用部材。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項の摺動用部材に於
    て、前記アルミナ繊維のαアルミナ含有率は5〜60wt
    %であることを特徴とする摺動用部材。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項又は第2項の摺動用
    部材に於て、前記ハイブリッド繊維中の前記アルミナ繊
    維の体積比は20〜95%であり、前記ハイブリッド繊
    維の体積率は1〜35%であることを特徴とする摺動用
    部材。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれ
    かの摺動用部材に於て、前記アルミナ−シリカ繊維の体
    積率は25%以下であることを特徴とする摺動用部材。
  5. 【請求項5】特許請求の範囲第1項乃至第4項のいずれ
    かの摺動用部材に於て、前記アルミナ−シリカ繊維の前
    記集合体中に含まれる非繊維化粒子の総量及び粒径15
    0μ以上の非繊維化粒子含有量はそれぞれ17wt%以
    下、7wt%以下であることを特徴とする摺動用部材。
  6. 【請求項6】特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれ
    かの摺動用部材に於て、前記アルミナ繊維のαアルミナ
    含有率は10〜50wt%であることを特徴とする摺動用
    部材。
  7. 【請求項7】特許請求の範囲第1項乃至第6項のいずれ
    かの摺動用部材に於て、前記第二の部材の前記摺動面の
    表面固さHv(50g)は700以上であることを特徴
    とする摺動用部材。
  8. 【請求項8】互いに当接して相対的に摺動する第一の部
    材と第二の部材とよりなる摺動用部材にして、前記第一
    の部材の少なくとも前記第二の部材に対する摺動面部は
    80wt%以上のAl、残部実質的にSiOなる
    組成を有するアルミナ繊維と、35〜65wt%Al
    、65〜35wt%SiO、10wt%以下のCaO、
    MgO、NaO、Fe、Cr、Zr
    、TiO、PbO、SnO、ZnO、Mo
    、NiO、KO、MnO、B、V
    、CuO、Coの一種以上の金属酸化物な
    る組成を有するアルミナ−シリカ繊維との実質的に均一
    な混合物よりなるハイブリッド繊維を強化繊維とし、ア
    ルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉛、スズ及びこ
    れらを主成分とする合金よりなる群より選択された金属
    をマトリックス金属とし、前記ハイブリッド繊維の体積
    率が1%以上である複合材料にて構成されており、前記
    第二の部材の少なくとも前記第一の部材に対する摺動面
    部は軟窒化処理された鋼にて構成されていることを特徴
    とする摺動用部材。
  9. 【請求項9】特許請求の範囲第8項の摺動用部材に於
    て、前記アルミナ繊維のαアルミナ含有率は5〜60wt
    %であることを特徴とする摺動用部材。
  10. 【請求項10】特許請求の範囲第8項又は第9項の摺動
    用部材に於て、前記ハイブリッド繊維中の前記アルミナ
    繊維の体積比は20〜95%であり、前記ハイブリッド
    繊維の体積率は1〜35%であることを特徴とする摺動
    用部材。
  11. 【請求項11】特許請求の範囲第8項乃至第10項のい
    ずれかの摺動用部材に於て、前記アルミナ−シリカ繊維
    の体積率は25%以下であることを特徴とする摺動用部
    材。
  12. 【請求項12】特許請求の範囲第8項乃至第11項のい
    ずれかの摺動用部材に於て、前記アルミナ−シリカ繊維
    の前記集合体中に含まれる非繊維化粒子の総量及び粒径
    150μ以上の非繊維化粒子含有量はそれぞれ17wt%
    以下、7wt%以下であることを特徴とする摺動用部材。
  13. 【請求項13】特許請求の範囲第8項乃至第12項のい
    ずれかの摺動用部材に於て、前記アルミナ繊維のαアル
    ミナ含有率は10〜50wt%であることを特徴とする摺
    動用部材。
  14. 【請求項14】特許請求の範囲第8項乃至第13項のい
    ずれかの摺動用部材に於て、前記第二の部材の前記摺動
    面の表面硬さHv(50g)は700以上であることを
    特徴とする摺動用部材。
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