JPH0629043Y2 - 油圧式車高調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） 本考案は、車両用の油圧式車高調整装置に関するもので
ある。

（従来の技術） 従来、この種の装置としては実開昭６１−１８９１２号
公報に開示されている。

このものは、圧縮コイルスプリングの上端部を支持する
アツパスプリングシートをロツドに上下摺動可能に嵌挿
し、内部に油圧ピストンを嵌挿した油圧シリンダをロツ
ドの上部に固定し、該油圧ピストンの下端面がベアリン
グを介してアツパスプリングシートの上面を支持した構
造になつており、油圧シリンダと油圧ピストンとの間に
形成される油室に適宜油圧源から圧油を供給することに
より油圧ピストンを介してアツパスプリングシートを上
下動させることにより車高を調整可能としている。そし
て転舵時及びコイルスプリングの上下方向撓み時にアツ
パスプリングが回転した時にそれに伴つて油圧ピストン
が回転運動し、油圧シリンダ内周と油圧ピストン外周と
の摺接面の摩耗が生じ、それにより油洩れが生じる恐れ
をなくすために油圧シリンダの内周面下部に圧入固着さ
れて油圧ピストンの最下降位置を規制するストツパリン
グに油圧ピストンの回動を拘止する回り止め手段を構成
したものである。

（考案が解決しようとする課題） 上記した従来装置においては、ストラツトの全長の短縮
化を図るために油圧調整機構をスプリングの取付長内に
収容させるがためスプリングシートを上方へ移動させよ
うとすると、スプリングと油圧シリンダの下端が干渉す
る恐れがある。そのため、油圧シリンダの下端を縮径し
て干渉を防ごうとするとストツパリングの径も縮小され
るために、油圧ピストンの回り止めに対するその固定強
度が低下し、油圧シリンダとの結合が外れストツパ及び
回り止めの両機能が阻害される恐れがあつた。

そこで本考案は、油圧式車高調整器の最下降位置を規制
するストツパ機能及び油圧ピストンと油圧シリンダとの
相対回転を防止する回り止め機能が阻害されることな
く、ストラツトの全長の短縮化をはかることを、その技
術的課題とする。

〔考案の構成〕

（課題を解決するための手段） 上記した技術的課題を解決するために講じた技術的手段
は、下部を車輪支持部材に固定される筒状部材と、該筒
状部材に摺動可能に嵌挿されその上部を弾性部材から成
るマウントを介して車体に固定されるロツドと、該ロツ
ドを前記筒状部材より突出する側に付勢するよう前記ロ
ツドと筒状部材との間に張設されるスプリングとを備え
たストラツト型車輪懸架装置において、前記ロツド上を
液密的に上下方向に摺動可能でその下端にフランジ部を
有した油圧ピストンがその内部に液密的に摺動可能に嵌
挿されて内部に油室を形成すると共にその下端に鍔部を
有する油圧シリンダを前記ロツドの上部に固定すると共
に、該油圧ピストンのフランジ部にその外周に前記スプ
リングの上端を支持するアツパスプリングシートが固定
され且つ前記油圧シリンダの外周を包囲するスリーブを
固定し、該スリーブの上端開口内に前記油圧シリンダの
鍔部に当接して前記油圧ピストンの最下降位置を規制す
るストツパ及び前記油圧シリンダの前記油圧ピストンに
対する回動を拘止する回り止め部材を固定したことであ
る。

（作用） 上記した構成にれば、アツパスプリングシートの回転が
回り止め部材を介して油圧シリンダに伝わると共に油圧
ピストンにスリーブを介して伝わるため、油圧ピストン
と油圧シリンダとが相対回転することはない。また油圧
ピストンの最下降位置を規制するストツパはスリーブの
上端に設けられており、スプリングと油圧ピストンが干
渉するのを抑制するために油圧ピストンを縮小したとし
てもそのストツパの固定強度が低下することはない。よ
つて、油圧式車高調整器の最下降位置を規制するストツ
パ機能及び油圧ピストンと油圧シリンダとの相対回転を
防止する回り止め機能が阻害されることなく、アツパス
プリングシートをストラツト短縮のために上方へ移動さ
せることができる。

（実施例） 以下、本考案に従つた油圧式車高調整装置の一実施例に
ついて図面に基づき説明する。

第１図において、１０は下線部を図示しない車輪支持部
材に固定された筒状部材、１１は筒状部材に摺動可能に
嵌挿されたロツドであり、該ロツド１１の上端部は後述
するマウント部材１２を介して車体１３に固定されてい
る。

マウント部材１２はロツド１１の上端部が圧入されナツ
ト１８により締結されるボールベアリング１４の外輪が
圧入固定される内筒１２ａと内筒１２ａの外周に溶接等
により固定されるインナブラケツト１２ｂと該インナブ
ラケツト１２ｂにその内面を接着されるマウントゴム１
２ｄとマウントゴム１２ｄの外面が接着されると共にボ
ルトにより車体１３に固定されるアウタブラケツト１２
ｃとから構成されており、車輪の上下動に伴うロツド１
１の上下方向振動をマウントゴム１２ｄのインナブラケ
ツト１２ｂとアウタブラケツト１２ｃ間の剪断方向の弾
性変形にて吸収し、車体１３への上記振動の伝達を低減
する。

１５は筒状部材１０とロツド１１間に両者を離間する方
向に張設された圧縮スプリングであり、該圧縮スプリン
グ１５の下端は筒状部材の外周に溶接等により固着され
たロアスプリングシートに係止されており、上端はロツ
ド１１と一体的に軸方向へ移動可能な後述するアツパス
プリングシート１６に係止されている。

マウント部材１２の下方にはロツド１１上にその内部に
シリンダ内孔１７ａを有すると共にシリンダ内孔１７ａ
の開口端外周に外方へ拡径する鍔部１７ｂを有した油圧
シリンダ１７がＯリング１８を介して液密的に嵌合され
ており、該油圧シリンダ１７は上端をベアリング１４に
よりまた下端をロツド１１上に形成された段部１１ａに
より係合され、ロツド１１の上端部にナツト１８を螺合
することによりベアリング１４とロツド１１の段部１１
ａの間に油圧シリンダ１７が挟持され、油圧シリンダ１
７のロツド１１の軸方向の移動が不能とされている。油
圧シリンダ１７のシリンダ内孔１７ａ内には、その内周
面がその内周面に形成された環状溝内に嵌合されたシー
ルリング２１を介してロツド１１の外周面上をその軸方
向に液密的に摺動可能とされると共に、その外周面が油
圧シリンダ１７の鍔部１７ｂ内周面に形成された環状溝
に嵌合されたシールリング２２を介して油圧シリンダ１
７の内周面を液密的に摺動可能な油圧ピストン１９が嵌
挿されており、油圧ピストン１９によりシリンダ内孔１
７ａ内に油室２０が形成されている。ロツド１１の上端
部には適宜油圧源に切換弁を介して連結された油注入口
２９が配設されている。これにより、油室２０はロツド
１１の上端部の軸心に形成された油連通孔１１ｃ及び油
圧ピストン１９の内周開口に形成される環状溝１９ｄを
介して油注入口２９より油が供給可能となつており、油
室２０内の油圧上昇及び油圧降下により油圧ピストン１
９を油圧シリンダ１７内にてロツド１１の軸方向に移動
可能としている。なお、油圧シリンダ１７のシリンダ内
孔１７ａの底面１７ｃには第２図に示すように楕円の窪
み１７ｄが形成されており、該窪み１７ｄと油圧ピスト
ン１９の段付部１９ｃとの間で第１図に示す油圧ピスト
ン１９の段付部１９ｃがシリンダ内孔１７ａの底面ｃに
当接される車高最低位置状態における環状溝１９ｄから
油室２０への油連通路が確保されている。また、ロツド
１１の段部１１ａの上端部には油圧シリンダ１７の底面
１７ｃに形成される楕円状の窪み１７ｄの短径と同じ巾
の二面巾１０ｂが形成されており、それにより油圧シリ
ンダ１７とロツド１１とは相対回転不能とされている。

油圧ピストン１９には、その下端に油圧シリンダ１７の
鍔部１７ｂの径よりも小径のフランジ部１９ａが形成さ
れており、該フランジ部１９ａの外周には油圧ピストン
１９の外周及び油圧シリンダ１７の外周を包囲する筒状
部２３ａを有する第３図に示すスリーブ２３の下端部２
３ｂが螺合固定されている。スリーブ２３は筒状部２３
ａが大径で下端部２３ｂが小径となつており、筒状部２
３ａと下端部２３ｂ間にはテーパ部２３ｃが形成されて
いる。そしてスリーブ２３の筒状部２３ａの外周面には
アツパスプリングシート１６の筒部１６ａが溶接により
固定されている。

スリーブ２３の筒状部２３ａの開口端近傍の内周面には
第３図に示すように、その内径が大径となつた大径部２
３ｄが形成されており、該大径部２３ｄの内周面には環
状溝２３ｅが形成されている。大径部２３ｄ内には環状
のストツパ２６が大径部２３ｄと筒状部２３ａとの内径
との間の段部にその一端面が当接するまで組み付け時に
おいて挿入されており、その後環状溝２３ｅ内にストツ
パ２６の他端面に係合可能なＣリング２７が嵌着され、
ストツパ２６のスリーブ２３からの抜け止めがなされて
いる。またスリーブ２３の開口端には等間隔に４個の切
り欠き２３ｆが形成されていて、更に油圧シリンダ１７
の上端外周面には二面巾が形成されており、大径２３ｄ
内に各切り欠き２３ｆに挿入される突出部２８ａがその
外周部に形成されると共にその内周部に油圧シリンダ１
７の上端外周面に形成される二面巾に対応した二面巾が
形成された第４図に示す回り止め部材２８が挿入されて
いる。回り止め部材２８はスリーブ２３の開口端部に形
成された薄肉部を等間隔で４ヶ所内方へかしめることに
より、スリーブ２３からの抜け止めがなされている。こ
れにより、ナツト１８の締付け時におけるロツド１１の
回り止めが、ロツド１１と相対回転不能とされている油
圧シリンダ１７が回り止め部材２８により、アツパスプ
リングシート１６が溶接されているスリーブ２３と相対
回転不能とされているので圧縮スプリング１５の取付荷
重により油圧シリンダ１７の回転が阻止されることによ
り成される。また、転舵時（フロントサスペンシヨンの
場合）及び圧縮スプリング１５の上下方向撓み時等にお
いて、アツパスプリングシート１６がロツド１１に対し
回転しようとする時はアツパスプリングシート１６の回
転がスリーブ２３を介して油圧ピストン１９に伝わると
共に、スリーブ２３，回り止め部材２８及び油圧シリン
ダ１７を介してロツド１１に伝えられるため、油圧シリ
ンダ１７と油圧ピストン１９は共にロツド１１と一体回
転する。そのため、油圧シリンダ１７と油圧ピストン１
９とが、もしくは油圧ピストン１９とロツド１１とが相
対回転して、シールリング２１，２２のシール面が摩耗
し、油室２０から油洩れが発生することを抑制してい
る。

アツパスプリングシート１６は、第３図に示すようにそ
の外周端に下方へ屈曲された屈曲部１６ｂを有してお
り、それにより筒部１６ａと屈曲部１６ｂとの間に上方
へ突出する座部１６ｃが形成されている。座部１６ｃの
凹部内にはゴムブツシユ２４を介して、圧縮スプリング
１５の座巻部が係止されていて、座部１６ｃの凸部側端
面にはその外周部に等間隔に６個の係止爪２５ａを有し
たリング２５が溶接等により固定されている。また係止
爪２５ａの先端には突出部２５ｂが形成されている。

アツパスプリングシート１６と油圧シリンダ１７間に
は、その内周縁３０ａがリング部材３２を介して油圧シ
リンダ１７の外周面に圧入され、その外周縁部３０ｂが
係止爪２５ａを内方へ屈曲することによりリング２５の
端面に密着されるダストカバー３０が掛け渡されてい
る。ダストカバー３０は、その内周縁３０ａの内周には
複数個の環状凸部が形成されており、その外周をＣリン
グ３１によりリング部材３２の外周面に圧着されること
により、リング部材３２の外周面に内周縁部３０ａが密
に嵌着されている。また、その外周縁部３０ｂの下端面
には複数個の環状凸部が形成されており、係止爪２５ａ
を内包に屈曲することにより、等間隔にリング２５の上
端面に密に圧着されている。なお、ダストカバー３０の
内外周縁部３０ａ，３０ｂ間には上方へ凸したベロー部
３０ｃが設けられている。なお、３３は油圧ピストン１
９と筒状部材１０との間にロツド１１上を摺動可能に配
設されたダンパである。

以上の構成から成る本実施例の作用を説明する。

図示しない適宜油圧源からの油圧が図示しない切換弁が
切り換えられ、油注入口２９に油圧が供給されると、油
注入口２９より油連通孔１３ｂを経て油室２０に油が供
給される。それにより、油室２０内圧力が上昇し、該油
圧により油圧ピストン１９と共にアツパスプリングシー
ト１６がロツド１１に対し下降させられ、油圧シリンダ
１７の鍔部１７ｂがストツパ２２に係合した時に、車高
が最高位置とされる。

次に図示しない切換弁が切換えられ、油注入口２９が図
示しないリザーバに連通されると、アツパスプリングシ
ート１６の油圧ピストン１９による支持力がなくなる。
それにより、ロツド１１は車重によつて筒状部材１０に
対し下方に収縮し、アツパスプリングシート１６は圧縮
スプリング１５のスプリング力により支持されているの
でロツド１１に対し油圧ピストン１９と共に相対的に上
方へ変位し、図示の上限位置となつて車高が最低位置と
される。

また、本実施例においてはロツド１１上を液密的に上下
方向に摺動可能な油圧ピストン１９がその内部に液密的
に摺動可能に嵌挿されて内部に油室２０を形成する油圧
シリンダ１７をロツド１１の上端部に固定されるマウン
ト部材１２の下方に固定し、該油圧ピストン１９に固定
され油圧ピストン１９及び油圧シリンダ１７の夫々の外
周を包囲するスリーブ２３に圧縮スプリング１５の上端
部を支持するアツパスプリングシート１６を固定させて
いるため、油圧シリンダ１７及び油圧ピストン１９とか
ら成る油圧機構を圧縮スプリング１５の取付長内に収容
することができ、筒状部材１０，ロツド１１，マウント
部材１２及び圧縮スプリング１５から成るストラツトの
短縮化をはかることができる。ここで、一般にストラツ
トの下部固定端と車輪の接地点とは所定距離だけ離れて
いて、その距離に起因して車輪の上下変動時に筒状部材
１０とロツド１１間の摺動面に偏荷重が作用するのを相
殺するためにストラツトの軸心に対し圧縮スプリング１
５の軸心を所定量傾斜させている。そのため、圧縮スプ
リング１５の取付長内に油圧機構を収容させると、油圧
機構の下端と圧縮スプリング１５が車輪上下変動時等に
干渉する恐れがあるが、本実施例においては油圧ピスト
ン１９の下端に形成されるフランジ部１９ａが油圧シリ
ンダ１７の下端に形成される鍔部１７ｂよりも小径とさ
れ、更にスリーブ２３にはテーパ部２３ｃが設けられて
いるため油圧機構，油圧ピストン１９の下端と圧縮スプ
リング１５が干渉する恐れはない。また、ここで本実施
例においてはストツパ２６はスリーブ２３の上端に設け
られており、更に回り止め部材２８はスリーブ２３の上
端において突出部２８ａにより強固にスリーブ２３の切
り欠き２３ｆに係合されると共に二面巾により強固に油
圧シリンダの外周に係合されているため、油圧ピストン
１９と油圧シリンダ１７とから成る油圧機構の下端を縮
径しても、その係合強度が低下することがない。よつて
油圧ピストン１９の最下降位置を規制するストツパ２６
の機能と油圧シリンダ１７と油圧ピストン１９との相対
回転を防止する回り止め部材２８の回り止め機能とが阻
害されることなく、ストラツトの全長の短縮化を図るこ
とができる。

また、本実施例においてはアツパスプリングシート１６
と油圧ピストン１９間にダストカバー３０が掛け渡され
ており、ダストカバー３０はその内周縁部３０ａが油圧
シリンダ１７の外周面に圧入されるリング部材３２の外
周面にＣリング３１によりその内周面を均一に圧着され
ていると共に、その外周縁部３２がアツパスプリングシ
ート１６の座部１６ｃの上端面に固定されたリング２５
の各係止爪２５ａを内方へ屈曲する際、各係止爪２５ａ
が突出部２５ｂの基部で常に屈曲させられることによ
り、均一な面圧分布でもつてアツパスプリングシートの
上面に密着させられている。そのため、外部よりの水，
異物及び粉塵等の油圧シリンダ１７と油圧ピストン１９
との摺動面への侵入が確実に防止されると共に、内，外
周縁部を結ぶベロー部３０ｅが上方に突出しているの
で、該ベロー部３０ｅに水等が溜まることがなく、ダス
トカバー３０の耐久性が低下することが防止される。こ
れにより、ストラツトの短縮化を何ら妨げることなく、
油圧シリンダ１７及び油圧ピストン１９から成る油圧機
構の作動の信頼性を向上させることができる。

〔考案の効果〕

本考案によれば、油圧ピストンの最下降位置を規制する
ストツパの機能と油圧シリンダと油圧ピストンとの相対
回転を防止する回り止め部材の回り止め機構とが阻害さ
れることなく、ストラツトの全長の短縮化を有効に図る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に従つた油圧式車高調整装置の一実施例
を示す縦断正面図、第２図は第１図におけるＡ−Ａ断面
図、第３図は第１図におけるスリーブ，アツパスプリン
グシート及びリングの組立体を示す断面図、第４図は本
考案における回り止め部材を示す図である。 １０……筒状部材、１１……ロツド、１２……マウント
部材、１５……圧縮スプリング、１６……アツパスプリ
ングシート、１７……油圧シリンダ、１９……油圧ピス
トン、２０……油室、２３……スリーブ、２３ｆ……切
り欠き、２６……ストツパ、２８……回り止め部材、２
８ａ……突出部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】下部を車輪支持部材に固定される筒状部材
   と、該筒状部材に摺動可能に嵌挿されその上部を弾性部
   材から成るマウントを介して車体に固定されるロツド
   と、該ロツドを前記筒状部材より突出する側に付勢する
   よう前記ロツドと筒状部材との間に張設されるスプリン
   グとを備えたストラツト型車輪懸架装置において、前記
   ロツド上を液密的に上下方向に摺動可能でその下端にフ
   ランジ部を有した油圧ピストンがその内部に液密的に摺
   動可能に嵌挿されて内部に油室を形成すると共にその下
   端に鍔部を有する油圧シリンダを前記ロツドの上部に固
   定すると共に、該油圧ピストンのフランジ部にその外周
   に前記スプリングの上端を支持するアツパスプリングシ
   ートが固定され且つ前記油圧シリンダの外周を包囲する
   スリーブを固定し、該スリーブの上端開口内に前記油圧
   シリンダの鍔部に当接して前記油圧ピストンの最下降位
   置を規制するストツパ及び前記油圧シリンダの前記油圧
   ピストンに対する回動を拘止する回り止め部材を固定し
   たことを特徴とする油圧式車高調整装置。