JPH0628204B2 - 電波吸収材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 （産業上の利用分野） 本発明は、電波の漏洩または反射を防止するために用い
られる電波吸収材に関する。

（従来の技術） 電波吸収材は、たとえば電子機器またはマイクロ波加熱
機器の筐体材料に使用され、機器内部に発生する電磁波
が機器外部へ漏洩することを防ぐ目的で用いられる。

従来、このような目的に使用される電波吸収材として
は、フェライト成形品またはフェライト粉末をゴムある
いは合成樹脂等に分散させた複合フェライトなどがあ
り、比較的低周波領域の電波吸収を目的とする電子機器
の電波吸収材にはMn−Znフェライト粉末の使用が一般的
であったが、最近ではMn−Znフェライト粉末の組成ある
いは粒径を調節することによって、マイクロ波など高周
波領域の電波吸収への対応が検討されている。

（発明が解決しようとする問題点） 近年、電子機器の小型・高密度化およびマイクロ波照射
装置等電磁波発生源の高出力化などに伴い、電磁波によ
る電子部品の相互干渉あるいは周辺機器への悪影響が問
題化している。これを防止し、機器の信頼性を高めるた
めに従来以上の高度な電波吸収特性を持った電波吸収材
が要望されている。

本発明の目的はこのような要望にこたえるものであり、
従来以上の優れた電波吸収特性を有する電波吸収材を提
供することにある。

〔発明の構成〕

（問題点を解決するための手段） 本発明は、上記目的を達成するために、高密度記録材料
として知られているバリウムフェライト粒子粉末を用い
たものである。すなわち、本発明は、ガラス中に析出し
たバリウムフェライト結晶粒子を含む微細なガラスの薄
片が、高分子材料中に分散されていることを特徴とする
電波吸収材であり、また、前記バリウムフェライト結晶
粒子を含む微細なガラスの薄片の飽和磁束密度が、2000
Gauss以上であることを特徴とする電波吸収材である。

（作用） 一般に電波吸収材料用粉末は、その粒径を小さくすると
高周波領域における電波吸収特性が改善される傾向があ
る。本発明に係る電波吸収材は、原料組成および結晶化
条件を変えることによって粒径の制御が容易なガラス結
晶化法によって製造されるバリウムフェライト粒子粉末
を用いており、目的とする吸収波長に応じて焼結体中に
析出するバリウムフェライト結晶の粒経を選択すれば広
帯域の電波吸収に対応できる。

また、バリウムフェライト粒子は六角板状であるうえ
に、磁化容易軸が板面に対して垂直であるため反磁界の
影響を受けにくく、その飽和磁束密度は、ガラス形成物
質を含んだ焼結体粒子粉末の状態で２０００Ｇａｕｓｓ
以上あれば十分な電波吸収特性が得られる。

さらに、ガラス形成物質とフェライト成分との焼結体の
まま用いることにより、高分子材料と混合した際の表面
状態の滑らかさ、あるいはフェライトシートとした場合
の可撓性などの必要に応じて、焼結体を適当な大きさに
粉砕して使用することができ、焼結体の大きさによって
バリウムフェライト粒子およびその特性は影響されな
い。

（実施例） 次に本発明の実施例について説明する。第１表に本発明
の実施例に係る焼結体の組成および特性を示す。

第１表の組成となるように原料をそれぞれ所定量秤量後
十分混合して白金容器等に収容し、１３００〜１４００
℃で加熱溶解する。この溶融物を白金容器のノズルから
流出させ、水冷ローラにより急速冷却して薄板状の非晶
質体を得る。得られた非晶質体は１〜５mm程度に篩分
し、厚さは３０〜５０μｍとする。さらにこの非晶質体
をステンレス・トレイに入れ昇温速度１００〜２００℃
／Ｈｒで昇温し、それぞれ第１表に示した結晶化温度で
少なくとも４時間熱処理を行ない、冷却後バリウムフェ
ライト焼結体を得る。この焼結体は、ガラス中にバリウ
ムフェライト結晶粒子が析出した微細なガラスの薄片で
ある。次に第２表に示す成分のポリウレタン樹脂１に
対しバリウムフェライト焼結体２〜５Kgを投入し、均一
に混合した後、厚さ１cmの複合フェライトシートを作成
し電波吸収特性の測定試料とした。

この試料について、2.４５GHzにおける電波吸収特性を
測定した結果、本発明の実施例Ａ，Ｂ，Ｃは、減衰量で
それぞれ３5.０dB，２9.０dB，２8.０dBであり、バリウ
ムフェライト粒子粉末の粒経が小さい試料Ａが最も高い
減衰量を示した。これに対し、Mn−Znフェライト粒子粉
末を用いた比較例では、その減衰量は２0.０dBであっ
た。

また、高分子材料として、たとえば第３表にその成分値
を示す樹脂塗料を用い電波吸収性を有する塗料とするこ
とにより、広い面積あるいは複雑な形状の塗布にも対応
できるので、たとえば高層建築物の壁面等に塗布すれば
不要な反射波によるＴ・Ｖ受信障害などの防止に効果が
ある。

（発明の効果） 以上のように本発明の電波吸収材は、原料組成および結
晶化条件を変えることにより、その粒経および磁気特性
の制御が容易なガラス結晶化法によって製造されるバリ
ウムフェライト粒子粉末を導入することによって、高周
波領域までの広帯域の電波吸収に対応でき、しかも優れ
た電波吸収特性を有するので、電子機器またはマイクロ
波照射装置の筐体材料あるいは建築物の壁面等に使用し
た場合、従来よりも薄い膜厚で従来と同程度以上の電波
吸収特性が得られ、現在要望されている電波吸収材とし
て好適である。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ガラス中に析出したバリウムフェライト結
   晶粒子を含む微細なガラスの薄片が、高分子材料中に分
   散されていることを特徴とする電波吸収材。
2. 【請求項２】前記バリウムフェライト結晶粒子を含む微
   細なガラスの薄片の飽和磁束密度が、2000Gauss以上で
   あることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の電波
   吸収材。