JPH06269803A - 塗装鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板 - Google Patents

塗装鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板

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JPH06269803A
JPH06269803A JP5063992A JP6399293A JPH06269803A JP H06269803 A JPH06269803 A JP H06269803A JP 5063992 A JP5063992 A JP 5063992A JP 6399293 A JP6399293 A JP 6399293A JP H06269803 A JPH06269803 A JP H06269803A
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JP
Japan
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steel sheet
coating
area ratio
convex portion
clarity
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JP5063992A
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Motohiro Nakayama
元宏 中山
Tetsuya Nishiura
徹也 西浦
Hiroyuki Kawano
弘之 川野
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、塗装鮮映性とプレス加工性に優れ
た鋼板を提供する。 【構成】 鋼板の表裏両面に散在する凸部頂面の大きさ
が10〜1000μm、凸部のピーク間距離が50〜2
200μm、かつ鋼板の片面側の凹部の粗度Raが0.
8μm以下とし、鋼板片面側に散在する凸部頂点の高さ
が2〜12μm、他面側の凸部高さが3〜20μmの範
囲で片面側より高くし、かつ鋼板片面側の凹部平均面積
率が70〜96%とし、他面側の凹部平均面積率が片面
側より小さくなるように凸部を離散分散させることを特
徴とする表裏において異種プロフィルを有する鋼板。 【効果】 かくすることにより、プレス加工性を改善す
るとともに、加工後の塗装鮮映性の劣化を確実に防止で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車や家電製品の外板
等に使用する鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板類に関
するものである。ここで鋼板類とは、塗装して使用する
板状の製品を意味し、例えば熱延鋼板、冷延鋼板、表面
処理鋼板(電気めっき鋼板、溶融めっき鋼板、合金化処
理溶融めっき鋼板、蒸着めっき鋼板、溶融塩電解めっき
鋼板など)などの鋼板の他に、例えばステンレス鋼板、
アルミニウム板、銅板なども含むものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車のボディーや家電製品の
外板等に使用する鋼板はプレス成形を施すことにより製
品として使用されるが、製品の高精度化と複雑化に伴
い、鋼板類に対する要求が従来以上に高級化、多様化し
つつあり、中でも最近は塗装鮮映性とプレス成形性に関
する要求が高まっている。例えば、製品自体の鮮映性を
向上させるには、塗装膜厚を厚くすることで確実に改善
できるが、塗装費用が高くなる問題がある。このため塗
装膜厚が薄くても塗装鮮映性を確保できる鋼板が強く望
まれている。また現状では塗装鮮映性を確保するため、
3回塗装や4回塗装が施されているが、省工程と塗装費
用削減のため塗装回数を2または3回に省略することが
強く望まれており、これを実現できる鋼板が強く望まれ
ている。こうした要求に応えるために例えば、特開昭6
3−132701号公報の如くレーザーを用いて圧延ロ
ールに微小な凹凸を設け、その圧延ロールを用いて鋼板
類を圧延し、塗装鮮映性に優れた鋼板を得ることが知ら
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】塗装鮮映性を向上させ
るには、鋼板の表面が平坦で鏡面に近いほど有利であ
る。このため表面を細かくする方向で種々の提案がなさ
れている。ただし単に鏡面化すると鋼板類の製造工程に
おいて、熱処理工程やめっき工程において疵が顕在化し
易くまた、鋼板類の切断後のパイリングやプレス加工時
に表面疵が発生し、表面欠陥となるため種々の工夫が提
案されている。ところで製品を製造する際にはプレス加
工が前提となるが、この場合に加工後表面外観改善のた
め砥石掛けされることがあり、このため砥石掛け模様が
塗装後に浮き出る問題がある。またプレス加工により鋼
板粗度が変化するため、加工度が厳しくなるほど鮮映性
が劣化する問題がある。このため加工後も良好な塗装鮮
映性を維持できる鋼板が強く望まれている。
【0004】加工による塗装鮮映性の劣化の原因には、
2種類がある。すなわち素材の結晶粒度が大きい場合
に、変形の不均一が原因で粗度が変化してうねり成分が
増加することに起因して塗装鮮映性が劣化する場合、も
う一つはポンチと接触する他面側の粗度が高面圧により
その反対面である片面側に浮き出るために、片面側の塗
装鮮映性が劣化する場合がある。いずれにしろ最近は高
い鮮映性が要求されるため、このような加工後の塗装鮮
映性の劣化の小さいことが強く望まれている。
【0005】また最近では複雑な形状の部品をプレス加
工することから、成形時の摺動性が良好であることが望
まれている。とりわけ亜鉛めっき鋼板や合金化処理溶融
亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板は、高面圧下ではダ
イスとめっき層が凝着し易く、摩擦抵抗が増大するた
め、成形時に板破断し易くかつ成形適性範囲が狭い問題
がある。本発明は、上述したような鮮映性鋼板に要求さ
れる品質課題に的確に応えるため、プレス成形時の摺動
特性を改善し、かつプレス加工後も良好な鮮映性確保を
確保できる鋼板類を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼板の表裏両
面において、散在する凸部頂面の大きさが10〜100
0μm、凸部ピーク間距離が50〜2200μm、凹部
の粗度Raが0.8μm以下、かつ鋼板片面側の凹部の
平均面積率が70〜96%、鋼板他面側の凹部の平均面
積率が片面側より小さくなるように凸部に離散分散さ
せ、かつ鋼板片面側に散在する凸部頂点の高かさが2〜
12μmの範囲により、鋼板他面側の凸部高さが3〜2
0μmの範囲で片面側より高くすることを特徴とする塗
装鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板を提供するもので
ある。すなわち、本発明は表裏で異なる粗度プロフィル
を付与することで、プレス成形時の摺動性を改善すると
同時に、プレス成形後も良好な塗装鮮映性を確保するこ
とを特徴とするものである。
【0007】本発明の粗度プロフィルの形態に関して次
に詳細に説明する。我々は加工前後においても良好な塗
装鮮映性を維持し、かつプレス成形性を格段に改善する
ための粗度プロフィルの条件について種々検討した結
果、次に述べるように、鋼板表面の大部分を占有する平
坦な凹部と、離散的に散在する微少な凸部からなる粗度
プロフィルを最適に構成することが重要であり、かつ確
実に改善できることを見いだした。
【0008】特に最近では、過酷なプレス成形性が要求
されるため、一層の成形性改善が望まれており、塗装鮮
映性とプレス加工性の両者を改善しうる最適な鋼板表面
の構造について検討した結果、本発明に到達した。加工
しなければ問題はないが、加工すると従来技術では塗装
鮮映性が劣化する問題がある。プレス加工後も良好な塗
装鮮映性を確保するためには、鋼板の表裏においてプレ
ス成形時に内面側となる他面の凸部の高さを、外面とな
る片面側の凸部高さより高くし、かつ片面側の凹部平均
面積率を70〜96%とし、他面側の凹部平均面積率を
片面側より小さくすることで解決できることを見いだし
た。
【0009】次に本発明の要点を、鋼板片面側と他面側
とに関して順次説明することとし、まずは片面側に関し
て述べる。鋼板の片面側は製品となった場合に、人の目
に直接ふれる外面側となることから、塗装の仕上がり
性、中でも塗装鮮映性が重要品質となる。塗装鮮映性は
鋼板凹部の粗度と面積率に関係する。したがって、凹部
の粗度としては極力平坦で鏡面に近いことが望ましい
が、工業的に有利に製造するにはRaで0.8μm以下
であれば塗装鮮映性を充分確保でき満足しうるものであ
る。また凹部の面積率は高いほど塗装鮮映性向上に有利
であるが、凹部面積率が70〜96%範囲で確保するこ
とが望ましい。凹部面積率が70%より小さいと凹部の
粗度を改善しても、鮮映性を確保することが困難とな
る。また逆に96%より大きいと鮮映性は良好である
が、耐疵性やプレス時の摺動性が劣化するため好ましく
ない。一方、加工後の塗装鮮映性は70%より小さくて
も、96%より大きくても劣化するため上記範囲が最適
である。
【0010】一方、凸部の形態に関しては、凸部頂部の
大きさは10〜1000μmとし、成形部品の外面とな
る鋼板片面側の凸部高さが2〜12μmにする必要があ
る。凸部の大きさが、10μmより小さいと成形した時
にポンチ荷重により容易に潰されることは少なくなる
が、ポンチとの接触面積率が増加して摺動性が劣化す
る。また加工工程や搬送工程において、鋼板表面や塗膜
表面に擦り傷が目立ち易くなる問題がある上に、良好な
塗装鮮映性を確保できなくなる問題がある。
【0011】また凸部の高さに関しては、2μmより低
いと成形時に容易に潰されるため、摺動性が劣化するこ
と、および加工工程や搬送工程において、擦り傷が付き
易くなるため凸部に必要とされる機能が発揮されなくな
る。逆に12μmより高くすると、摺動性や擦り疵性は
改善されるが、塗装後に凸部が浮きでて塗装鮮映性が劣
化する問題が起こる。
【0012】次に加工時にポンチが接触する鋼板他面側
に関して本発明の要点を説明する。鋼板の他面側は人の
目には直接ふれない製品の内面側となることから、塗装
鮮映性は最重要な品質ではなく、むしろ加工時のポンチ
との摺動性を良好に維持し、かつ加工後の片面側の塗装
鮮映性が劣化するのを極力抑制できることが重要であ
る。摺動性を確保するには、前述したように高面圧下に
おいても凸部の潰れを抑制した上で、ダイスとの接触面
積率を極力小さくすることが重要である。このため、他
の品質を劣化させない条件範囲で凸部の高さを大きく
し、かつ凸部の面積率を適正化することが望ましい。こ
の観点から、種々検討した結果、成形部品の内面となる
鋼板他面側の凸部高さは3〜20μmの範囲で片面側よ
り高くすること、また凹部面積率を片面側より小さくす
ることで、他面側に必要とされる作用が発揮できること
が判明した。
【0013】さらに詳しく説明すると、他面側の凸部の
頂部の大きさは、前述した片面側と同様の理由により1
0〜1000μmが望ましい。一方、凸部の高さは摺動
性向上作用と加工による片面側の鮮映性の劣化を抑制す
る作用の2点から、3〜20μmが望ましく、3μmよ
り低いと凸部が容易に潰れて、摺動性改善作用がなく、
かつ鋼板他面のうねりが片面側に転写されるため、片面
側の塗装鮮映性が劣化する問題がある。逆に20μmよ
り高いと、摺動性は十分良好に保持されるが、加工後に
反対面である片面側に他面の凸部のパターンが転写され
るため、片面側の塗装鮮映性を劣化させることになり好
ましくない。
【0014】次に加工による塗装鮮映性劣化の観点から
詳細に述べる。熱間圧延、冷間圧延、調質圧延など種々
の圧延を得て板厚制御、材質制御、形状制御が行われる
のが普通である。このため種々のロールによる粗度プロ
フィルが鋼板表面に転写されているため、種々の波長の
粗度のうねり成分が存在する。このうねり成分を除去す
ることは工業的に種々の困難が伴う上にコスト的に安価
な方法で改善できない問題がある。
【0015】プレス加工により鮮映性が劣化するのは、
次の2つの理由による。1つは鋼板を加工すると、素地
結晶粒が変形して進行するが、その際に材料のミクロ的
な不均一変形に起因して「うねり」が増大することに起
因するもの、もう1つは、ポンチによる押し出し加工時
に裏面の粗度が反対面に転写されることにより「うね
り」が増大することに起因するものである。すなわち後
者の事例は、プレス成形すると平滑な表面を有するポン
チにより他面側から高圧下されると、他面側のうねり成
分が片面側に押し出されることになり、片面側の粗度の
うねり成分が増大し、塗装鮮映性が劣化するものであ
る。いずれにしろここでは、これらの問題を「加工によ
るうねりの増大」と呼ぶこととする。
【0016】我々はこれら問題の解決方法について種々
検討した結果、ポンチと接触する他面側の凸部を高く
し、かつ他面側の凹部面積率を片面側より小さくするこ
とで「加工によるうねりの増大」が回避できることを見
いだした。同時にこの凸部がポンチやダイスとのミクロ
的な真実接触面積率を低下させる効果を有するため、高
面圧での摩擦抵抗が減少し、プレス成形時の摺動性を改
善し、成形適性範囲が拡大する有利な点がある。また摺
動性が改善されて、材料の均一変形性が向上するため、
素材の結晶粒に起因する問題点も改善される作用があ
る。
【0017】この問題を回避するために、凸部面積率を
高めたり、凸部の頂面の大きさを増加させることなどが
考えられるが、いずれも摺動抵抗を高めたり、「加工に
よるうねりの増大」の防止効果はないか、または逆に劣
化させたりするため有効ではない。我々は種々検討した
結果、鋼板の片面側は本発明範囲とした上で、成形部品
の内面側となる鋼板他面側の凸部高さを3〜20μm範
囲で片面側より高くし、かつ他面側の凹部面積率を片面
側より小さくすることで、「加工によるうねりの増大」
による塗装鮮映性の劣化が抑制できる作用があることを
見いだした。その理由について次に述べる。
【0018】鋼板の他面側は塗装鮮映性は問題でなく、
むしろ成形時の摺動性の確保とプレス加工後の粗度変化
による鮮映性の劣化を抑制するために重要である。すな
わち、プレス成形時にピード部分やしわ押さえ部分で
は、高面圧下で摺動を伴う加工を受けるため、ダイスと
鋼板表面との摩擦抵抗が増大し、摺動性が劣化したり、
表面処理鋼板の場合にはめっき層が剥離したりする問題
がある。この問題を回避するには、ダイスと鋼板表面と
のミクロ的な接触表面積率を低減することが重要で、高
圧下状態において摺動性を確保するには、凸部高さを3
μm以上で20μm以下とし、かつ他面側の凹部面積率
を片面側より小さくすることが望ましい。
【0019】すなわち、片面側は塗装鮮映性が重要のた
め凹部面積率を70〜96%に確保することが重要であ
るが、他面側はむしろ加工時に良好な特性を保持するこ
とが重要である。すなわち、他面側に要求される特性
は、成形時に他面側の凸部が潰れ難いことが重要であ
る。他面側の凸部が成形時に容易に潰されると、2つの
問題、すなわち1つは、ポンチと鋼板の真実接触面積率
が増加するため、摺動性が劣化すること、もう1つは他
面側の粗度が反対面である片面側に転写され易くなり、
片面側のうねりが増大して、塗装鮮映性が劣化するなど
の問題がある。
【0020】このように他面側に必要な機能は、加工時
におけるポンチとの良好な摺動性確保および片面側の塗
装鮮映性の劣化を極力低減することにある。このよう
に、鋼板表裏における機能分担を種々の観点から検討し
た結果、本発明に到達した。鋼板他面側の凸部が成形時
に潰れ難くするには、凸部1個にかかる面圧を小さくす
ること、かつ凸部の高さを極力高くする必要がある。こ
うした理由により、他面側の凸部を3〜20μm範囲で
片面側より高くし、かつ凸部面積率を確保するために、
凹部面積率を片面側より小さくすることで、他面側に必
要とされる作用を発揮できる。またこのような粗度プロ
フィルを有する本発明は、鋼板素地の結晶粒の変形に起
因するミクロ的な不均一変形による塗装鮮映性の劣化も
軽減する効果があり、有利な作用を有する。
【0021】ところで凸部の配置としては、加工時のダ
イス・ポンチによる高面圧に耐えるためには、極力その
面積率を高める必要がある。したがって、他面側の凹部
面積率は、片面側のそれよりも小さくする必要があり、
かつ凸部は50〜2200μmの間隔で離散的に配置す
ることが望ましい。他面側の凹部平均面積率は他面側よ
り小さくすれば良いが、例えば凹部面積率として25〜
90%であればより好ましい。25%より小さいと凸部
の面積率が大き過ぎるため、ポンチとの接触面積率が増
加して摺動性が劣化する。また90%より大きいと凸部
の面積率が低下するため、過酷な成形を行った場合に、
凸部1個あたりの面圧が増大し、潰され易くなるため凸
部による摺動性改善作用が低下する。
【0022】ところで、凸部の配置の間隔に関しては、
50μmより小さくしても摺動性や加工による粗度転写
性に対する改善効果が飽和するのに対して、凸部を付与
する加工コストが増加するため好ましくない。また22
00μmより大きくすると、頂部の間隔が大きすぎるた
め、凹部に擦り傷が入り易い問題があること、また加工
時に1個の凸部にかかる面圧が高くなるため、反対面で
ある片面側に凸部の模様が浮き出易くなり塗装鮮映性が
劣化する問題がある。したがって、凸部の頂部間隔は5
0〜2200μmが望ましく、本発明の作用を有効に発
揮できる。
【0023】なお、鋼板他面側の凹部面積率を片面側よ
り小さくする他の重要な作用について次に述べる。本発
明の鋼板を工業的に安価に製造するには、ロールに凹凸
パターンを設け、当該ロールにより冷間圧延したり、調
質圧延したりして、凹凸を転写して製造することが一般
的であり、有利かつ簡便な方法である。この方法の場
合、ロールの凸部で鋼板表面を圧下し、鋼板の凹部を形
成することになる。ところが、一般に知られている調質
圧延に本発明を適用した場合には、板の形状や材質特性
を制御する必要から、鋼板の圧下による鋼板伸び率が
0.5〜2.0%に規制される場合が多く、圧下率が小
さいため、鋼板の凹部の面積率の増加とともに鋼板の凸
部高さが減少する問題がある。
【0024】これは、ロール圧下による鋼板の伸び率
は、近似的に下式で表される。 ΔL=Δt×S (ここでΔL:鋼板伸び率、S:凹部平均面積率、Δ
t:板厚平均減少率) このため、所定の鋼板伸び率:ΔLを得るのに対して、
鋼板凹部の面積率:Sの増加とともに、平均板厚減少
率:Δtが小さくなるため、結果として圧下の小さい鋼
板凸部と圧下された凹部との段差、すなわち凸部高さが
小さくなることになる。
【0025】したがって、凸部高さを極力高くするに
は、凹部面積率を小さくすることが望ましい。しかし、
鋼板の他面側は塗装鮮映性確保の観点から、凹面積率を
70〜96%と高くする必要があるため、鋼板他面側の
凹部面積を片面側より小さくすることで凸部高さを高く
することができる。鋼板他面側の凹部面積率が小さいほ
ど、鋼板他面側および片面側の凸部は高くなる作用があ
るが、鋼板他面側の凹部面積率は上述したように25〜
90%で、かつ片面側より小さくすることで、本発明の
鋼板が得られる。
【0026】以上に述べたように、鋼板他面側の凹部面
積率を片面側より小さくすることで、本発明の凸部高さ
を確実にうることができること、また、鋼板の表裏で粗
度プロフィルの機能分担をさせ、それぞれの面に必要と
される条件に最適化することで、本発明の作用(摺動性
向上および加工前後での塗装鮮映性の確保)を確実に発
揮できることが本発明の特徴である。
【0027】上述したように、鋼板表裏の機能分担と最
適化を図ることを目的に、種々の観点から粗度プロフィ
ルを基礎的に検討した結果、本発明に到達した。すなわ
ち、プレス成形時に他面側のうねり成分の片面側への転
写を抑制すること、また鋼板のミクロ的な不均一変形に
よるうねり成分の増大を抑制することの2つの作用によ
り、加工後も片面側の塗装鮮映性を良好に維持すること
ができる。また同時にプレス成形時の摩擦摺動抵抗を減
少させ、良好な加工性を得ることができる。
【0028】本発明の特徴は、鋼板の表裏で高さの異な
る凸部をその大きさ、高さ、配置間隔、面積率を考慮し
て離散的に最適配置することで、鋼板のプレス成形性を
格段に向上させ、かつ加工前後においても鋼板他面の加
工による片面へのうねりの転写作用を軽減し、優れた塗
装鮮映性を確保できることにある。
【0029】本発明の鋼板を得るには、例えばマイクロ
リソグラフィー法を用いて圧延ロールに微細凹凸模様を
つけ、該圧延ロールを用いて鋼板を圧延して得ると有利
である。その方法を図1に示す如く、特定の波長で感光
するレジスト材を塗布したロール表面に特定波長の光を
照射し感光させ、現像した後、化学的エッチングもしく
は気相エッチングによってロール表面をエッチングし、
硬化レジスト部を除去することによって微細な凹凸模様
を設けるようにするものである。このようにして得られ
た鋼板の断面模式図を図3に示す。なお、図中のPは凸
部ピーク間距離、Dは凸部頂部の大きさ、tは凸部高さ
をそれぞれ示す。
【0030】
【実施例】図1に示すように、調質圧延ロール(仕上げ
粗度Ra 2.4μm)にマイクロリソグラフィー法に
より微細な凹凸模様をつけた。そのワークロールを用い
て、通常の連続型溶融亜鉛めっきラインで製造した合金
化処理溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm)を圧下率
1.0%で調質圧延を行った。得られた鋼板について加
工前後で塗装鮮映性、摺動抵抗を比較調査した。なお、
こうして製造した鋼板の凹部のRaはいずれも約0.2
5〜0.80μmの範囲にあった。
【0031】鋼板表面の凸部の頂面のサイズ(D)や凹
部の面積率および凸部の間隔(P)は、光学顕微鏡によ
り写真撮影してから、画像解析装置により定量的に評価
しその平均値を求めた。また凸部高さは触針式粗度計に
より測定した断面プロフィル曲線から、鋼板凸部に対応
したピーク高さの平均値を求めた。なお凸部高さは、凸
部周辺の凹部のプロフィル曲線の山部分の平均高さから
凹部ピーク位置までの高低差で求めた。
【0032】塗装鮮映性の試験方法としては、調質圧延
後の上記鋼板に膜厚約80μmの塗装を施した後、JI
S−Z8741の「鏡面光沢度測定法」により塗装鮮映
性を評価した。摩擦摺動性の評価試験方法としては、図
2に示すL字引張りの角型ビード試験装置を使用し、引
張り試験機により押さえ荷重と引張り荷重の関係を求め
た。ここでは摩擦係数でなく、板破断が生ずる限界の押
え荷重(Pc)で比較評価し、このPcの値が大きいほ
ど摩擦抵抗が少なく摺動性が良好と判断できる。試験条
件としては、各押さえ荷重毎に1本の供試鋼板を使用
し、その板巾17mm、摺動長さ250mm、引張り速
度500mm/分、潤滑油として通常の亜鉛めっき鋼板
用の防錆油(粘度6cst 40℃)を塗布量で1g/
2塗布してから試験に供した。
【0033】加工後の鮮映性評価方法としては、750
mm角型ポンチで深絞り加工を行い、ポンチ肩半径10
0mmにより押し出し加工した。なお、鋼板の片面側を
評価面とし、他面側がポンチ側としてプレス加工し、ポ
ンチと接触する部分に相当する加工品の肩部分におい
て、加工品の外面側となる片面側に塗装を施し、塗装鮮
映性を目視評価方法により比較評価した。 目視評点:(良)○−△−×(劣) 試験結果を表1に示す。
【0034】この結果、本発明により製造された鋼板
は、本発明の比較例および加工前後における塗装鮮映性
が高位に維持されておりかつ、摩擦摺動性も良好に維持
されていることから、本発明が塗装鮮映性と摺動性の両
面において格段に優れていることが明かである。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】本発明は鋼板表面の凸部形態およびその
配置分布を表裏の各々の面で最適範囲に限定することに
より、プレス成形前後での塗装鮮映性を高位に維持する
効果と同時に、摺動抵抗を低減することでプレス成形性
を改善する効果も有する優れた鋼板が得られるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)、(c)および(d)図はリソ
グラフィー法による本発明の凹凸付与加工工程の一例を
示す説明図、
【図2】鋼板の摺動抵抗を測定する試験装置を示す模式
図、
【図3】本発明により得られた鋼板の断面模式図であ
る。
【符号の説明】
1 ホッパー 2 液状感光樹脂 3 エアー 4 感光樹脂供給器 5 感光性樹脂層 6 レーザー発振器 7 レーザー 8 スリット 9 チョッパー 10、10´ 感光硬化部 11 噴霧器 12 溶解剤 13 露出部 14 凸型ビード 15 試験用鋼板 16 受け型ダイス

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表裏両面に散在する凸部頂面の大
    きさが10〜1000μm、凸部のピーク間距離が50
    〜2200μm、かつ鋼板の片面側の凹部の粗度Raが
    0.8μm以下とし、鋼板片面側に散在する凸部頂点の
    高さが2〜12μm、他面側の凸部高さが3〜20μm
    の範囲で片面側より高くし、かつ鋼板片面側の凹部平均
    面積率が70〜96%とし、他面側の凹部平均面積率が
    片面側より小さくなるように凸部を離散分散させること
    を特徴とする塗装鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板。
JP5063992A 1993-03-23 1993-03-23 塗装鮮映性とプレス加工性に優れた鋼板 Withdrawn JPH06269803A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7041382B2 (en) * 2002-07-29 2006-05-09 Jfe Steel Corporation Coated steel sheet provided with electrodeposition painting having superior appearance
JP2009226435A (ja) * 2008-03-21 2009-10-08 Kobe Steel Ltd 反射異方性の少ない電子部品用銅合金板

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7041382B2 (en) * 2002-07-29 2006-05-09 Jfe Steel Corporation Coated steel sheet provided with electrodeposition painting having superior appearance
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