JPH0624887A - 高エネルギー含有固体推進薬 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃料結合剤の主成分がアジド基含有ポリマー
である固体推進薬の低温物性を向上させること。 【構成】 燃料結合剤の主成分がアジド基含有ポリマー
である固体推進薬において、成分としてエステル結合と
エーテル結合とを有する脂肪族可塑剤を含むことを特徴
とするアジド基含有固体推進薬。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は固体推進薬に関する。詳
しくは、アジド基を含有して高エネルギー化されたポリ
マーに、他化合物を併用することにより、燃焼特性を改
良した固体推進薬に関する。

【０００２】

【従来の技術】固体推進薬は、液体燃料に比べ、長期保
存が可能であり、かつ、即時発射が可能であるという利
点を有し、軍用のロケット弾やミサイルに利用されてい
る。

【０００３】固体推進薬は、酸化剤と燃料の各成分を混
合して成型した混成質系のコンポジット推進薬と、ニト
ログリセリンとニトロセルロースを主成分とし、不揮発
性溶剤をもちいた火薬であるダブルベース推進薬とに大
別される。

【０００４】コンポジット推進薬に使用される酸化剤と
しては、過塩素酸アンモニウムやニトラミン及び硝酸ア
ンモニウム等が使用され、燃料結合剤としてはポリブダ
ジエン、ポリウレタン等が使用され、助燃剤としてアル
ミニウム粉末などが用いられている。燃料性能の改善
は、これら各成分の燃焼特性を改良、向上させることに
より達成できる。

【０００５】しかし、前記物質により構成された推進薬
は、現状では、すでに理論的に期待できる燃焼性能の約
９５％が達成されており、これ以上の性能向上の余地は
少なく、高性能化のためにいくつかの高エネルギー物質
の応用が検討されている。

【０００６】酸化剤や助熱剤は、安定性、安全性の制約
により、実用面では前記物質に限定されることもあり、
バインダー主成分となるプレポリマー自体を高エネルギ
ー化した推進薬の研究がなされている。

【０００７】米国特許４２６８４５０号ではプレポリマ
ーとして下記（１）式で表わされるアジド基を含有した
末端水酸基ポリエーテルが開示されている。

【０００８】

【化１】

【０００９】（式中、Ｘは１０〜６０の整数、Ｒは（Ｃ
Ｈ₂）_nＮ₃又は−ＣＨ₂ＣＨＮ₃ＣＨ₂Ｎ₃、前記ｎはｎ＝
１〜５を表わす）このポリエーテルは推進薬の性能向上
のためアジド基を含有させることにより、下記の利点を
得ている。

【００１０】一つには生成熱を高めることにより推進薬
の比推力の向上、又同時に密度が高まることも比推力の
向上につながる。更にアジド基の分解に伴う窒素ガス量
の増大およびバインダー中の窒素量を高めることで、相
対的に炭素、水素の比率を下げることにつながり、推進
薬中の酸化剤の量を低減でき、感度を下げることが可能
となり、安全性の向上がはかれる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】固体推進薬の燃焼性能
を向上させるため、現状用いられているポリマーをアジ
ド基含有ポリマーで置換することは推進薬燃焼性能向上
に有効である。

【００１２】ところが推進薬の燃焼性能向上のために導
入しようとするアジド基含有ポリマーを用いた硬化体
は、ガラス転移温度が高く、実用に供する場合に非常に
問題であった。

【００１３】固体推進薬は軍用においては、冬季上空を
飛翔する場合を想定し、低温下においても良好な物性を
示すことが要求される。特に固体推進薬は点火の際、急
激な圧力の上昇をともなうことから、この圧力上昇を緩
和するためゴム状の伸びを持つことが、固体推進薬を、
急激な圧力上昇による破壊から守るために極めて重要で
ある。このゴム状の伸びを示す温度の示標がガラス転移
温度であり、ガラス転移温度は低いほど好ましい。

【００１４】本発明はこうした実情の下に燃焼性能が高
く、かつ、アジド基含有ポリエーテルを含む固体推進薬
のガラス転移温度を低下させた固体推進薬を提供するこ
とを目的とするものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の問題
点を考慮して鋭意研究した結果、エステル結合とエーテ
ル結合とを有する脂肪族可塑剤をアジド基含有ポリマー
を用いる固体推進薬に添加して使用することにより、ガ
ラス転移温度を低下できるという特性を見い出し、本発
明を完成するに至った。

【００１６】すなわち、本発明は、燃料結合剤の主成分
がアジド基含有ポリマーである固体推進薬において、成
分としてエステル結合とエーテル結合とを有する脂肪族
可塑剤を含むことを特徴とする高エネルギー含有固体推
進薬に関する。

【００１７】本発明において使用されるアジド基含有ポ
リマーとしては、アジド基を含有するポリマーであれば
とくに制限はないが、好ましくはポリエーテルとくに下
記（２）式で表わされる如き、アジドメチルメチルオキ
セタンモノマーを重合することにより得られたポリエー
テルがとくに好ましい。

【００１８】

【化２】

【００１９】また、本発明に使用するエステル結合とエ
ーテル結合とを有する脂肪族可塑剤としては、例えば

【００２０】

【化３】

【００２１】の如き同一分子内にエステル結合とエーテ
ル結合を有していればよく、何ら制限を受けるものでは
ない。

【００２２】本発明のアジド基含有固体推進薬は、以下
のようにして製造することができる。たとえば、末端水
酸基を有したアジド基含有ポリマーをプレポリマーと
し、これに硬化に必要なイソシアネートおよびトリオー
ル等を必要量加え、加熱により硬化可能な組成分とした
液分を可塑剤と混合する。次いで、この混合物に酸化剤
成分を加え、均一混合させ、推進薬用組成分とし、所定
時間加熱することにより、硬化成形体を得、目的とする
推進薬とすることができる。

【００２３】

【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。

【００２４】（アジド基含有ポリマーの合成）アジド基
含有ポリマーとして、アジドメチルメチルオキセタンを
主成分とするポリマーを以下のように製造した。

【００２５】３−アジドメチル−３−メチルオキセタン
をポリマー化するために、１，４−ブタンジオール１ｍ
ｏｌを０℃以下に保ち、ＢＦ₃エーテル錯体４ｍｏｌを
ジクロルメタンに混合したものを適下し、撹拌後、３−
アジドメチル−３−メチルオキセタンをジクロルメタン
と混合したものを適下し、１０℃以下で撹拌を行う。反
応終了後、ＮａＣｌ飽和溶液を撹拌下投入したのち分液
ロートでジクロルメタン層を採取し、メタノール中に投
入し、液状沈殿物を得た。

【００２６】この液状物の揮発分を除去したものは、核
磁気共鳴装置による解析結果などから、主として下記
（３）式で表わされる構造を含む末端水酸基メチルアジ
ド基含有ポリエーテルであることがわかる。

【００２７】

【化４】

【００２８】このポリマーは、イソシアネート含有化合
物、３官能ＯＨ基含有化合物などと併用し、加熱するこ
とにより硬化でき、また適量の可塑剤を使用すること
で、硬化後の伸び、強度などの調整が可能であり、固体
推進薬用燃料として適するものである。

【００２９】得られたアジド基含有ポリマーを以下の表
１に示す組成比で混合したのち、加熱硬化し、固体推進
薬を得た。

【００３０】

【表１】

【００３１】可塑剤Ａ：ジエチルフタレート 可塑剤Ｂ：ニトログリセリン 可塑剤Ｃ：ジエチレングリコールブチルエーテルとアジ
ピン酸とのジエステル 本硬化物（固体推進薬）を用い以下の方法により、ガラ
ス転移点を調べ、低温化物性の優劣を把握した。

【００３２】硬化体を巾１０ｍｍ、長さ５０ｍｍ、厚さ
３ｍｍの板状体とし、試料として用いた。

【００３３】ガラス転移点測定方法として動的粘弾性測
定方法を用い、測定装置としては、セイコー電子工業
（株）製ＤＭＳ１００粘弾性スペクトロメータを使用し
た。測定条件は以下の如くである。

【００３４】１）測定温度範囲 −７０℃〜＋３０℃ ２）昇温条件 ５Ｋ／ｍｉｎ ３）測定周波数 １Ｈｚ（曲げ測定法） ガラス転移点として損失正接（ｔａｎδ）のピーク値を
示す温度を採用した。得られた結果を表２に示す。

【００３５】

【表２】

【００３６】＊ 測定温度：測定する試料を所定温度に
した恒温槽中に２４時間静置後、直ちに取出し、試験を
行った。

【００３７】

【発明の効果】以上説明したように、燃料結合剤の主成
分がアジド基含有ポリマーである固体推進薬において、
成分としてエステル結合とエーテル結合とを有する脂肪
族可塑剤を含むことにより、推進薬燃焼性能を向上させ
るとともに、ガラス転移点を低下させることができ、固
体推進薬運用上大きな利点を有する。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料結合剤の主成分がアジド基含有ポリ
   マーである固体推進薬において、成分としてエステル結
   合とエーテル結合とを有する脂肪族可塑剤を含むことを
   特徴とする高エネルギー含有固体推進薬。