JPH06246915A - インクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットヘッド

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Publication number
JPH06246915A
JPH06246915A JP3788193A JP3788193A JPH06246915A JP H06246915 A JPH06246915 A JP H06246915A JP 3788193 A JP3788193 A JP 3788193A JP 3788193 A JP3788193 A JP 3788193A JP H06246915 A JPH06246915 A JP H06246915A
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JP
Japan
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film
protective film
electrode
groove
sinx
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JP3788193A
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English (en)
Inventor
Yumiko Ohashi
弓子 大橋
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Brother Industries Ltd
Original Assignee
Brother Industries Ltd
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Publication date
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2202/00Embodiments of or processes related to ink-jet or thermal heads
    • B41J2202/01Embodiments of or processes related to ink-jet heads
    • B41J2202/10Finger type piezoelectric elements

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 保護特性の優れた無機不動態系保護膜を形成
し、製品品質の優れたインクジェットヘッドを安定的に
供給することを目的とする。 【構成】 インクジェットヘッド内のインク溝に形成す
る無機不動態系保護膜の密度を1.8g/cm3以上と
する。 【効果】 無機不動態系保護膜形成において、密度を適
正値に保つことで緻密で耐酸性等に優れた保護膜が形成
でき、製品品質に優れたインクジェットヘッドが安定的
に供給できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク液室を構成する
少なくとも1つの壁が圧電セラミックス素子からなるイ
ンクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、圧電セラミックス素子を用いたイ
ンク噴射装置として、例えば、ドロップオンデマンド方
式のインク噴射装置が提案されている。これは、圧電セ
ラミックスの変形によって圧電セラミックス素子に設け
られた溝の容積を変化させることにより、その容積減少
時に溝内のインクをノズルから液滴として噴射し、容積
増大時にインク導入路から溝内にインクを導入するよう
にしたものである。そして、このようなノズルを多数互
いに近接して配置し、所要の印字データに従って所要の
位置のノズルからインク液滴を噴射させることにより、
ノズルと対向する紙面上等に所望する文字や画像を形成
するものである。
【0003】この種のインク噴射装置としては、例えば
特開昭63−247051号公報、特開昭63−252
750号公報及び特開平2−150355号公報に記載
されているものがある。図1乃至図4にそれら従来例の
概略図を示す。
【0004】以下、インク噴射装置の断面図を示す図1
参照して、従来例の構成を具体的に説明する。複数の溝
12を有し、かつ矢印4の方向に分極処理を施した圧電
セラミックス素子1と、セラミックス材料または樹脂材
料等からなるカバープレート2とを、エポキシ系接着剤
等からなる接合層3を介して接合することで、前記複数
の溝12が複数のインク流路として構成される。インク
流路は長方形断面の細長い形状であり、側壁11はイン
ク流路の全長にわたって伸びている。側壁11の天頂部
上の接着層3付近の側壁上部から側壁中央部までの両表
面には、駆動電界印加用の金属電極13が形成されてい
る。電極13をカバーするように保護膜20が形成され
ている。全てのインク流路内には、インクが充填され
る。
【0005】次に、インク噴射装置の断面図を示す図2
を参照して、従来例の動作を説明する。該インク噴射装
置において、所要の印字データに従って例えば溝12b
が選択されると、金属電極13eと13fに急速に正の
駆動電圧が印加され、金属電極13dと13gは接地さ
れる。これにより側壁11bには矢印14bの方向の駆
動電界が、側壁11cには矢印14cの方向の駆動電界
が作用する。このとき駆動電界方向14b及び14cと
分極方向4とが直交しているため、側壁11b及び11
cは、圧電厚みすべり効果によって溝12bの内部方向
に急速に変形する。この変形によって溝12bの容積が
減少してインク圧力が急速に増大し、圧力波が発生し
て、溝12bに連通するノズル32(図3)からインク
液滴が噴射される。また、駆動電圧の印加を徐々に停止
すると、側壁11b及び11cが変形前の位置に戻るた
め溝12b内のインク圧力が徐々に低下し、インク供給
口21(図3)からマニホールド22(図3)を通して
溝12b内にインクが供給される。
【0006】尚、実際の製品としては、上記噴射動作の
前に駆動電圧を上記と逆方向に印加することにより先に
インクを供給させ、その後この駆動電圧を急激に停止さ
せ側壁11b及び11cを元の状態に戻すことによって
インクを噴射させるようにすることもある。
【0007】次に、インク噴射装置の斜視図を示す図3
によって、従来例の構成及び製造法を説明する。圧電セ
ラミックス素子1に、薄い円板状のダイヤモンドブレー
ド等を使用した切削加工によって、溝12を形成する。
溝12は圧電セラミックス素子1のほぼ全域で同じ深さ
の平行な溝であるが、端面15に近づくにつれて徐々に
浅くなり、端面15付近では浅く平行な浅溝部16であ
る。この溝12の内面、側壁上に、前記金属電極13を
周知の技術スパッタリング等によって形成する。さらに
電極13を被覆するように溝12の内面に保護膜20を
乾式または湿式に成膜する。
【0008】他方、カバープレート加工であるが、セラ
ミックス材料または樹脂材料等からなるカバープレート
2に、研削加工または切削加工等によって、インク導入
口21及びマニホールド22を作製する。次に、圧電セ
ラミックス素子1の溝12が加工されている面とカバー
プレート2のマニホールドが加工されている面とを、エ
ポキシ系接着剤等によって接着する。次に、圧電セラミ
ックス素子1及びカバープレート2の端面に、各溝12
に対応した位置にノズル32が設けられたノズルプレー
ト31を接着する。さらに、圧電セラミックス素子1の
溝12が加工された面とは反対側の面には、各溝12に
対応した位置に導電層のパターン42が設けられた基板
41を、エポキシ系接着剤等によって接着する。そし
て、溝12の浅溝部16の底面に形成されている金属電
極13と導電層のパターン42を、ワイヤボンディング
によって導線43で接続する。
【0009】次に、制御部のブロック図を示す図4を参
照して、従来例の制御部の構成を説明する。基板41に
設けられた導電層のパターン42は各々個々にLSIチ
ップ51に接続され、クロックライン52、データライ
ン53、電圧ライン54及びアースライン55もLSI
チップ51に接続されている。LSIチップ51は、ク
ロックライン52から供給された連続するクロックパル
スに基づいて、データライン53上に現れるデータか
ら、どのノズルからインク液滴を噴射するべきかを判断
し、駆動する溝12内の金属電極13に導通する導電層
のパターン42に、電圧ライン54の電圧Vを印加す
る。また、前記溝12以外の金属電極13に導通する導
電層のパターン42にアースライン55の電圧0vを印
加する。
【0010】このような機構を有するインクジェットヘ
ッドにおいては、電極13を絶縁保護するためや電極自
身の腐食防止のために保護膜20が設けられるが、この
保護膜20としては、不活性な無機不動態膜、具体的に
はシリコンナイトライド(SiNx)およびシリコンオ
キシナイトライド(SiON)の交互膜が好適であっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなインクジェットヘッドの電極を絶縁保護するための
保護膜において、膜の密度等の膜質は、絶縁耐圧特性、
密着性、耐酸性等の保護特性に影響する。保護膜の不良
はヘッドの製品品質安定性に関わり、従来技術において
は保護膜の膜質については何等制約はないために、保護
膜特性や変形特性がヘッド間でばらつき、製品品質 安
定性が著しく不良となり歩留まりが下がるという問題が
あった。
【0012】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、保護膜の密度を規定することに
より保護膜特性を高め、製品品質の優れたインクジェッ
トヘッドを安定的に、歩留まりよく低コストで提供する
ことを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明のインクジェットプリントヘッドにおいては、
電極を絶縁保護するための無機不動態系保護膜を備える
とともに、その保護膜の密度を1.8g/cm3以上で
あることを特徴としている。
【0014】
【作用】上記の構成を有する本発明のインクジェットヘ
ッドは、無機不動態系の保護膜の密度を適性な値に規定
することにより、膜の緻密さが確保されピンホールが少
なく、耐酸性等に優れた保護膜となる。
【0015】
【実施例】以下、本発明を具体化したインクジェットヘ
ッドの一実施例について図5〜8を用いて説明する。
尚、本実施例のインクジェットヘッドの基本的構成は、
図1乃至図4に示した従来のヘッドとほぼ同様であるの
で説明を省略する。
【0016】保護膜20として、無機系の膜、例えばS
iNx(シリコンナイトライド)膜を周知の技術、例え
ばCVD法やスパッタリング法により圧電セラミックス
プレート1の溝12内に形成する。この場合、xは様々
な値をとるが、望ましくは4/3である。
【0017】例えばCVD法によれば、成膜装置は図5
に示すように、チャンバー101及び原料ガス導入管1
02、排気装置103、RF電源104から成る。そし
て成膜は以下のように行われる。チャンバーの中には電
力供給電極105とサンプルホルダー106が数cm程
離れて相対するように配置されている。まず圧電セラミ
ックスプレート1をサンプルホルダー106上に、溝の
形成された面を電力供給電極に向けてホールドし、チャ
ンバー101内を2E−7Torrまで真空引きする。
【0018】次いで、原料ガスとしてSiH4/N2とN
3とN2とをそれぞれ60sccm、180sccm、
900sccm(sccmは窒素換算した、一分当たり
の流量である)の流量で原料ガス導入管102よりチャ
ンバーの中へ導入し、ガスを流しながらチャンバー内1
01を1.2Torrに保ち、電力供給電極105に
0.8kWを印可し、高周波放電を起こす。すると原料
ガスが化学的活性種となり、通常の熱励起で困難な分解
及び化学反応を起こす。この化学反応は、例えば(1)
式に示すような、非平衡な反応であり、約3分の放電で
基板上に1000オングストロームのSiNxが成膜さ
れる。尚、膜厚は放電時間により制御することができ
る。
【0019】 3SiH4+4NH3→Si34+12H2・・・(1) 保護膜20の最低膜厚の把握のためにSiNx膜厚を変
えて行った絶縁破壊試験を行った。具体的には、まずガ
ラス基板上にあらかじめ導電性のアルミニウム膜を周知
の技術スパッタリングにより形成し、ついでアルミニウ
ム上にSiNx膜を上記のようなCVD法により形成
し、それらの上に再びアルミニウム膜を形成する。さら
にレジストをスピンコーターにて回転塗布し、所定パタ
ーンを有するマスクを用いて密着露光、ディッピング現
像により所定レジストパターンが形成される。この場合
の所定パターンは、最表面のアルミニウムをテスター電
極にするためのもので、直径2mm程の円がライン状に
一定間隔で20個並んだものである。つづいてアルミニ
ウムのエッチング液に浸せきし、非レジスト部のアルミ
ニウムをエッチングし最後にレジストを除去すること
で、表面のアルミニウムが直径2mm程の円が一定の距
離をおいて20個並んだ形状に加工する。
【0020】上記のような試験サンプルにおいて、保護
膜であるSiNx膜の膜厚を0.02、0.04、0.
06、0.08、0.10、0.12、0.14μmと
変化させたものを作製し、以下のように絶縁耐圧を測定
した。SiNx膜を挟んで両側に存在するアルミニウム
膜にテスターの端子を接触させて、100Vの電圧を印
可し、1分間保持して電流計の最小目盛りである1μA
以上の電流が流れたときを絶縁破壊とした。尚、100
Vという電圧値は、本発明のインクジェットヘッドの保
護膜に必要とされる耐圧の数倍を見込んだ値である。
【0021】1サンプルにつき20ポイントの電極中、
絶縁破壊を起こす数を調べたところ図6に示すように、
保護膜20の膜厚が0.1μmより薄いと容易に絶縁破
壊を起こすことがわかった。さらに悪いことには絶縁破
壊が生じたときにその部分にクラックが生じ、電極13
及びPZTの素地そのものがインクに侵される可能性も
きわめて高い。
【0022】他方、SiNx膜厚を厚くしたとき、この
インクジェットヘッドのインク噴出を引き起こす溝壁の
変形状態について調べた。試験サンプル基板として、側
壁の厚み80μm、高さ500μm、溝幅90μmの圧
電セラミックスに、アルミニウム電極膜を真空蒸着等の
乾式法により両側壁面上に2μm作製したものを用意し
た。保護膜であるSiNx膜の厚みと溝壁幅寸法の比が
それぞれ1/100、1/25、1/12、1/8とな
るように該基板の溝12内に膜を上述したCVD法によ
り成膜した。これらのサンプルに前記カバープレートを
接着した後、50Vのパルス電圧を印加し、側壁の変形
状態をレーザ変位計を用いて測定した。尚、溝壁の厚み
に比べて電極膜の厚みが薄いので、溝壁の変形を考慮す
るにあたり電極膜の影響は無視することにする。
【0023】測定結果を隣接する溝容積の容積変化で整
理し、1/100のサンプルの場合の容積変化を1とし
たときの各サンプルの膜厚と規格化変形効率の関係を図
7に示す。図7から明らかなように、保護膜の厚みと圧
電材料の溝壁寸法との比が1/8のサンプルでは変形効
率が著しく低下してしまう。これは圧電材料と保護膜材
料であるSiNxのヤング率の異なるためで、保護膜の
厚みが厚くなると変形に影響を及ぼすようになるためで
ある。
【0024】また、保護膜の許容最大厚みは、内部応力
の増加からも規定できる。Siウェハ上に上述したCV
D法によりSiNx膜を2、4、6、8、10、12μ
mの厚みのサンプルを用意し内部応力を測定した。測定
方法としては、あらかじめ成膜前のSiウェハのそりを
表面形状測定器で測定しておき、成膜後に同じ場所のそ
りを測定し、成膜前後のそりの差をもとに(2)に示す
力学式より求めた。
【0025】 σ=(h2/6d)・{E/(1ーm)}・{2(Δy)/R2}・・・(2) h:ウェハ厚さ(525μm;4インチ) d:SiNx膜の膜厚(2から12μm) m:ウェハのポアッソン比(0.3) R:そり測定の弦の長さの半分(25mm;4インチ) Δy:ウェハ中心部の最大そり変化量 E:ウェハのヤング率(1.60E12dyne/cm
2;結晶方位(111)) 尚、記号説明文末尾の括弧内の値は今実験に用いた4イ
ンチウェハの数値である。
【0026】測定の結果は図8に示すように、厚みが増
すと膜の内部応力(ストレス)の絶対値が増大する傾向
にあり、特にSiNx膜厚が10μm以上においてスト
レスが大きくなることがわかる。膜厚10μmは前述の
保護膜の厚みと圧電材料の溝壁寸法の比が1/8のサン
プルに相当するが、この膜にはクラックが生じており一
部下地からの剥離が起きていた。尚、クラック及び剥離
は光学顕微鏡で観察した。
【0027】さらに、膜厚を厚くすることは、成膜に時
間がかかり生産性を著しく低下させる原因ともなる。上
記CVD法でのSiNx膜の成膜スピードは、条件に依
存するものの、0.01から0.05μm/min程で
あり10μmの成膜に最低200分必要となる。
【0028】従って、SiNx保護膜の膜厚は最大は、
溝壁の変形効率や、膜の密着性及び安定性から鑑みて保
護膜の厚みが圧電材料の溝壁寸法の1/8をこえないこ
とが望ましい。またこのことは生産時間短縮、すなわち
低コストにつながり、一層望ましい。
【0029】以上の理由から保護膜の厚みが0.1μm
以上で、最大でも保護膜の厚みと溝壁幅寸法の比が1/
8をこえない値とすることで、絶縁性、耐性、密着性
等、保護膜機能に優れ、かつ良好なインク噴射特性が得
られるような保護膜20が低コストで成膜できる。従っ
て本実施例の構成に於て、安定したインク噴射特性を持
つ高品質なインクジェットヘッドが得られた。
【0030】尚、本実施例においては、無機不動態系の
保護膜として、SiNx膜を例にあげて説明したが、S
iO2などの酸化物や、窒化物と酸化物との混合膜であ
るSiON、さらにそれらの交互膜についても、上述し
た測定結果とほぼ同様の傾向を示した。従って、これら
の膜についても膜厚を上記の範囲とすることで、安定し
たインク噴射特性を持つ高品質なインクジェットヘッド
を得ることができる。
【0031】本発明の保護膜の品質保持は他の様態でも
実施できる。保護膜20として例えば、SiNx膜を上
述したようなCVD法により圧電セラミックスプレート
1の溝12に形成する場合、膜の密度を1.8g/cm
3以上にする。この値は以下に示すような、膜の密度が
異なるSiNx膜に対し行ったピンホール試験、耐バッ
ファードふっ酸(B・HF)性の測定およびFT−IR
(フーリエ変換赤外分光)測定より導かれる。
【0032】ピンホール試験は具体的には、ガラス基板
上に予め導電膜としてニッケル(Ni)膜を周知の技術
スパッタリングにより形成し、ついでNi上にSiNx
膜を上記のようなCVD法により1μmのSiNx膜を
形成して、このとき形成条件、例えばガス圧力、基板温
度等を変化させることでSiNx膜の密度が1.5、
1.8、2.5の膜を作製した。これらのサンプルをア
ルカリ洗浄、水洗したのち、40g/lの硫酸銅と30
cc/l硫酸からなるようなめっき浴に浸せきし、これ
をカソードとし、数cm程離れた位置にアノードとして
電解Cuを配し、電極間に2A/dm2の電流密度で電
流を流してCu電解鍍金を30分間行った。絶縁膜であ
るSiNx膜上には本来Cuは析出しないが、膜中にピ
ンホールがあれば導通が確保され化学反応によりにCu
が析出する。
【0033】このようなピンホールに起因するCu析出
を観察するCuデコレーション法によるピンホール試験
を行った結果、図9に示すとおりで、グラフ横軸は膜の
密度で、縦軸は、一定面積、400μm2中に光学顕微
鏡で確認されたCuの析出数である。図9から明かなよ
うに膜の密度が約1.5、約1.8、約2.5g/cm
3のものを比べると1.5はCuの析出が多数見られ、
1.8および2.5のものは成膜時のダストに起因する
と考えられる程度の少量であった。
【0034】続いて、耐B・HF性であるが、ピンホー
ル試験と同様のサンプルを用いて、1%濃度、24℃の
B・HF溶液にサンプルを浸せきし1分当たりのエッチ
ングレートを測定して評価した。膜減り量は、レジスト
カバー部との段差を表面粗さ計により求めた。結果、図
10に示すとおり膜密度が1.8より低いとエッチング
レートが大きく、1.5については熱窒化膜の10倍以
上になる。さらにFT−IR(フーリエ変換赤外分光)
測定であるが、ピンホール試験と同様のサンプルを用い
て400から4000cm-1(カイザー;波数)測定を
行った。1.5と1.8についての結果は図11に示す
とおりで、横軸は波数、縦軸は透過率である。図11に
よれば、密度1.5の膜ではSi−H結合の吸収ピーク
(3340cm-1)が密度1.8の膜に比べて非常に顕
著に観察され、膜中水素の含有量が多いことがわかる。
水素が多いということは耐酸性の劣化を意味し、この結
果は前述の耐B・HF測定と一致する。
【0035】以上の試験および測定より、密度が1.8
g/cm3より低いとSiNx膜はピンホールが多く膜の
堆積がち密でない、不純物水素の含有量が多く耐酸性が
悪い、等の膜質が劣化していることが判明した。
【0036】従って、保護膜SiNx膜の密度を1.8
g/cm3以上にすることで、ピンホール、不純物の少な
い、緻密で耐酸性に優れた保護膜14の成膜が可能とな
り、安定した製品品質のインクジェットプリンターヘッ
ドが得られた。
【0037】尚、本実施例においては、無機不動態系の
保護膜として、SiNx膜を例にあげて説明したが、S
iO2などの酸化物や、窒化物と酸化物との混合膜であ
るSiON、さらにそれらの交互膜についても、上述し
た測定結果とほぼ同様の傾向を示した。従って、これら
の膜についても、膜の密度を上記の範囲とすることで、
高品質なインクジェットヘッドを得ることができる。
【0038】本発明の保護膜の品質保持は他の様態でも
実施できる。図12に示すように、保護膜20、例えば
SiNx膜を周知の技術、CVD法により圧電セラミッ
クスプレート1の溝12内に形成した場合、電極膜の腐
食を防ぎ、良好な噴射特性をもたらすために、図12に
示すように、少なくともSiNx膜は電極上に堆積する
ことが必要で、望ましくは溝12内の全域にわたり途切
れなく覆う方が良い。これは以下に述べる実験、測定に
より把握される。
【0039】保護膜の保護特性評価として、腐食環境下
での電極の腐食度の測定を、また加速環境下での電極膜
の比抵抗変化の測定を行った。具体的には以下の手順で
行った。まず、腐食試験であるが、一般的に周知なポテ
ンショスタットを用いた分極特性測定法で行った。サン
プルは側壁の厚み80μm、高さ500μm、溝幅90
μmの溝を10チャンネル形成し、さらに側壁上に電極
膜としてアルミニウム(Al)を蒸着により作製したセ
ラミックス基板に対し、上述したCVD法の作製条件
の、主としてデポジション圧力に関する条件をコントロ
ールして、保護膜が溝12内の溝壁半分すなわち電極上
のみを被覆するもの(電極被覆)と、ステップカバリッ
ジを改善し、溝12内全域で途切れなく被覆したもの
(連続被覆)を平均膜厚0.2μm作製した。この2種
類のサンプルを0.1規定(N)の食塩水中に配し、対
抗電極として白金(Pt)を照合電極として銀/塩化銀
(Ag/AgCl)を数cm離れた位置に配して、保護
膜下の電極膜に電圧を徐々に印加し、サンプル電極での
電流の流れ方を測定した。
【0040】結果は図13に示すとおり、保護膜が電極
上のみ被覆のサンプルはある電位で電流が急激に流れ出
し、保護膜が劣化して電極金属膜が腐食されだしたこと
を示した。一方、連続被覆膜のサンプルは、前者のよう
な電流の立ち上がりを持たない。腐食環境では保護膜が
電極上のみサンプルでは保護膜の境界の端面が存在する
ため、端面から腐食溶液が侵入し金属電極膜が腐食した
と思われる。すなわち保護膜が電極上のみサンプルは、
環境からの刺激に対する保護膜機能が劣り電極膜の腐食
が進行し易く、端面を持たない連続被覆は腐食環境に対
する保護膜機能が優れている事がわかる。また保護膜が
無いときは電圧印加直後に電流が流れ出し、速やかに腐
食が始まったことを示した。
【0041】次に、環境加速試験としては、腐食試験と
同様のサンプルを用いて、温度60℃、湿度90%の環
境下に30日間曝した後、保護膜下の金属電極膜の比抵
抗変化を調べたところ、保護膜が電極上のみのサンプル
は比抵抗が約1.5倍に増加し、連続被膜サンプルの比
抵抗は約1.1倍と殆ど増加していなかった。1.5倍
の増加の原因は、過剰に存在する水分が保護膜端面から
侵入し電極膜の一部を酸化させたと思われる。一般にイ
ンクジェットプリンターに於てインクの噴射は壁の変形
によるものであり、電気的に見た場合コンデンサーの充
放電現象で、τ=cR(τ:時定数、c:側壁の静電容
量、R:電極の比抵抗)が成立している。インクの噴射
には急激な変形、すなわちある値以下のτが必要であ
る。Rの増加はτの増加となり、インク噴射に対し不利
になる。腐食試験の結果と同様、連続保護膜が電極上の
みの保護膜より優れていることが理解できる。以上の実
験から保護膜は少なくとも電極上に堆積することが必要
で、望ましくは溝12の全域にわたり途切れなく連続的
に被覆することで外部からの刺激に強く耐蝕性に優れ、
良好な噴射特性をもたらす保護膜20となる事が判明し
た。
【0042】従って、本実施例の連続被覆保護膜におい
て耐久性に優れ、安定した噴射特性を持つインクジェッ
トプリンターヘッドが得られた。
【0043】尚、本実施例においては、無機不動態系の
保護膜として、SiNx膜を例にあげて説明したが、S
iO2などの酸化物や、窒化物と酸化物との混合膜であ
るSiON、さらにそれらの交互膜についても、上述し
た測定結果とほぼ同様の傾向を示した。従って、これら
の膜についても、膜の被覆状態を上記の範囲とすること
で、高品質なインクジェットヘッドを得ることができ
る。
【0044】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本
発明によれば、インクジェットヘッド内の保護膜として
無機不動態系の膜を用い、その密度を1.8g/cm3
以上とすることで、ピンホールや不純物の少ない耐酸性
等の安定性に優れた保護膜となり、製品安定性に優れた
インクジェットヘッドが供給できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来及び本発明の一実施例のインクジェットヘ
ッドの構成を示す断面図である。
【図2】従来及び本発明の一実施例のインクジェットヘ
ッドの構成を示す断面図である。
【図3】従来及び本発明の一実施例のインクジェットヘ
ッドの構成を示す断面図である。
【図4】従来及び本発明の一実施例のインクジェットヘ
ッドの制御部のブロック図である。
【図5】本発明における保護膜の成膜に用いたCVD装
置の概略図である。
【図6】本発明における保護膜の膜厚と絶縁破壊個数の
グラフである。
【図7】本発明における保護膜の膜厚と規格化変形効率
のグラフである。
【図8】本発明における保護膜の膜厚と内部応力のグラ
フである。
【図9】本発明における保護膜の密度とCu析出数のグ
ラフである。
【図10】本発明における保護膜の密度とB・HFに対
するエッチングレートのグラフである。
【図11】本発明における保護膜のFT−IRの測定チ
ャートである。
【図12】本発明におけるインクジェットヘッドの構成
を示しす断面図である。
【図13】本発明における保護膜を用いたときの電極膜
の分極特性のグラフである。
【符号の説明】
1 セラミックス素子 11 側壁 12 溝 13 金属電極膜 20 保護膜

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インク液室を構成する少なくとも1つの
    壁が圧電セラミックス素子からなり、その圧電セラミッ
    クス素子を駆動する電極が前記インク液室内に設けられ
    たインクジェットヘッドにおいて、 前記電極を絶縁保護するための無機不動態系保護膜を備
    えるとともに、その保護膜の密度が、1.8g/cm3
    以上であることを特徴とするインクジェットヘッド。
JP3788193A 1993-02-26 1993-02-26 インクジェットヘッド Pending JPH06246915A (ja)

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